産科クリニックで活用する 助産実践能力習熟段階 (クリニカ...

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産科クリニックで活用する 助産実践能力習熟段階 (クリニカルラダー) かみや母と子のクリニック 助産師長 日本看護協会助産師職能委員 大城洋子 45日本看護協会 ヘルスプロモーション 平成26828特別レポート

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  • 産科クリニックで活用する 助産実践能力習熟段階 (クリニカルラダー) かみや母と子のクリニック 助産師長

    日本看護協会助産師職能委員

    大城洋子

    第45回 日本看護協会 ヘルスプロモーション 平成26年8月28日 特別レポートⅠ

  • 名称 : かみや母と子のクリニック 診療内容 : 産婦人科(外来・入院) 助産外来 (保健指導外来・助産師健診・母乳外来)

    小児科(外来・病児保育) 病床数 : 19床(有床診療所) 年間分娩件数 : 807 件(2013年) 帝王切開率: 95件(11.8%) 助産師: 20名 勤務体制: 3交代勤務

    施設の概要 (平成26年8月1日現在)

  • 妊娠・出産・育児までチームワークで支えます

    * 産科と小児科の連携

    *助産外来(助産師健診・保健指導外来)

    *母乳育児支援

    BFH(Baby Friendly Hospital)認定施設

    * 臨床心理士との連携

    *病児保育

    *他職種で妊娠・出産・育児を支える

  • 各種クラス

    出産前教育クラス

    ・マタニティクラス(お産のクラス)

    ・おっぱいクラス

    ・パパクラス

    ・マタニティビクス

    ・マタニティヨーガ

    ・トコちゃんクラス

    ・体ほぐし体操

    産後クラス・育児クラス

    アフタービクス

    育児サークル

    No Body‘s Perfect Program

    ペアレンティング プログラム

  • 助産外来

    ・バースプラン

    ・保健指導

    ・受け持ち制による継続支援(曜日チーム制)

    ・小児科、臨床心理士、地域との連携

    助産師による妊婦健診(助産師健診)

    ・ローリスク・本人の希望

    助産師の役割

  • 分娩とその前後のケア

    産後の育児支援

    母乳外来

    ・母乳育児のトラブルへの対応

    ・継続した母乳育児支援

    地域保健師との連携

    後輩育て:プリセプターとして後輩を育てる

    助産実習指導

    助産師の役割

  • 当院でのクリニカルラダー 活用の試み

  • 助産師のキャリアパス・クリニカルラダー 開発の目的 (日本看護協会)

    質の高い助産ケアの実践を提供できる助産師を育てる (ALL JAPANで)

    直接助産ケアを行う質の高い助産実践家を認める

    院内助産システムで活用する助産実践のレベルを区別する

    助産実践への期待を明確にする。助産師の評価のための手引きとする

    様々な教育背景、混合病棟問題など、助産師に求められる 業務内容の複雑化

    助産師の実践能力が深化されにくい環境・実践を強化できる 環境の脆弱化

  • 1.助産実践能力を高める

    2.助産師個人の目標設定を明確にする

    3.助産師個人のキャリア開発を最大限に支援する

    4.適正人材配置、適正人材活用の参考資料として

    活用する

    5.助産実践能力の保証

    助産師クリニカルラダー活用の目的

    (日本看護協会)

  • 助産実践能力の強化とは 院内助産システムで、妊産褥婦と新生児の助産ケアができること

    *「助産師として正常な妊娠・分娩・産褥・新生児の

    助産ケアを責任もっておこなえる」(日本看護協会)

    *「助産師が責任を持ってローリスク妊娠・分娩が取り扱える。

    ハイリスクの早期発見と医師との共同ができる実践力のある

    助産師を育てたい」

    (かみや母と子のクリニック)

    地域や施設間の格差なく、どの場所でも実践力の高い助産師を

    育てるための教育の仕組みづくり

    なぜ当院でクリニカルラダーを 活用するのか

  • ①各施設の実状に合った助産実践能力習熟段階

    (クリニカルラダー)の作成

    ②助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)活用ガイドを

    活用した助産師の評価

    ③ポートフォリオの準備・作成

    ④クリニカルラダーとリンクした助産師教育プログラム

    ⑤クリニカルラダーに向けた施設内外での教育体制

    クリニカルラダー活用の

    チェックポイント(日本看護協会)

  • 1.自施設にあったクリニカルラダーを 作成したか?

    実はそのまま使っています。

    ひと通り使ってみてから、ゆっくりと改訂必要か所を

    考えることにしました。

    ALL JAPAN標準で評価しました。

  • クリニカルラダーをアレンジする際の留意点

  • 助産実践能力習熟段階 (クリニカルラダー)の評価の実際

    医療機関における助産ケアの質評価

  • 8, 40%

    3, 15%

    4, 20%

    5, 25%

    5年未満

    5年~10年

    10年~15年

    15年以上

    当院助産師の 就職後年数

    4, 20%

    2, 10%

    5, 25%

    3, 15%

    6, 30% 1年~5年

    5年~10年

    10年~15年

    15年~20年

    20年以上

    当院助産師の 助産師職歴年数

    当院助産師の 助産師歴年数と就職後年数

  • 「新人助産師研修ガイド」 マタニティケア能力チェックリスト

    助産師暦1年~3年・自己評価で1か2をつけた項目

    2 1 1 1 1 1

    2 1 1 1

    2 1 1 1

    0 1 2

    緊急時・救急カート・AEDを持ってこれる

    ICLSの手順がわかる

    羊水穿刺・自己血の貯血

    周産期の代表的疾患のケアができる

    胎児異常・胎児死亡の母親や家族の精神的フォロー

    母体搬送受け入れ、送り出しのケア

    妊産婦の心肺停止における救命処置

    死産のケア

    マタニティブルーの早期発見、支援

    母子愛着形成障害、児の虐待ハイリスク要因をアセスメント・対処

    新生児の蘇生法・人工呼吸と胸骨圧迫

    施設や地域との連携

    新生児の緊急・異常児への対処と母親・家族への援助

    胎児心拍数のレベル分類の理解

    1 2

  • 1.「知識でわかる」の段階にとどまっている項目が多い。

    2.積極的に取り組むべき項目が明らかになった。

    3.「新生児の蘇生」はNCPRの研修を受けているが「演習が

    できる」どまりである、

    4.難しい対応を必要とする項目については、常に熟練した先輩が

    役割を担っている可能性がある。

    5.「難しい対応を要する」項目を明確にして、学習とシミュレーションを

    重ね、「補助があればできる」まで計画的に経験させる必要がある。

    6.「妊産婦の救急蘇生」については、おきることを想定に、

    シミュレーションを中心とした教育を行う必要がある。

    「新人助産師研修ガイド」 マタニティケア能力チェックリスト

    助産師暦1年~3年生・自己評価に1と2をつけた項目からの考察

  • 「新人助産師研修ガイド」 マタニティケア能力チェックリスト

    助産師暦10年以上・自己評価に1・2をつけた項目

    0 1 2

    胎児のwell-beingが傷害されている恐れのある基準が理解できる

    胎児心拍数波形のレベル分類を理解できる(レベル1~5)

    Ressuringの判定基準を理解し判読できる

    産婦人科ガイドラインに基づき、CTG装備の適応がわかる

    高濃度酸素投与の問題点が理解できる

    新生児に関連する解剖生理が理解できる

    妊産婦の特殊性を考慮した心肺蘇生ができる

    妊婦に行われる処置・羊水穿刺・自己血貯血

    周産期の代表疾患の病態生理、観察項目についての理解

    妊婦に関連する解剖生理が理解できる

    緊急時、救急カート・AEDなど必要なものを持ってくることができる

    ICLSの手順がわかる

  • ICLS(緊急蘇生法)、妊産婦の特殊性を考慮した心肺蘇生に ついて自信がない人が多い。

    常に産科、ローリスク分野にいることで、妊婦の救急蘇生に遭遇 しない為、経験値が低いままである。

    ICLSの講習を比較的最近受けた人は、緊急蘇生法に高い点が付けられている。

    NCPRの講習はほぼ全員受けているためと、経験値も高いため、新生児の蘇生に関しては高い点がついている。

    妊婦の特殊性を考慮した蘇生法の講習会がなかなかないため、講習会での積み上げも不十分なままである。

    この3つの学習は必頇であり、繰り返し、シミュレーション教育で 獲得する必要がある。

    「新人助産師研修ガイド」 マタニティケア能力チェックリスト

    助産師暦10年以上・自己評価に1と2をつけた項目からの考察

  • 妊婦の解剖生理、新生児の解剖生理、周産期の代表的疾患に ついてなど、自分の知識に自信がないかも、と思える項目がある。

    産婦人科ガイドラインに基づく・・・など新しい学習項目に対して、 積極的に学習の機会を設ける必要がある。

    いくつかの積み残し項目がそれぞれに明らかになることで、 改めて取り組む項目が確認された。

    「新人助産師研修ガイド」 マタニティケア能力チェックリスト

    助産師暦10年以上・自己評価に1と2をつけた項目からの考察

  • 「医療機関における助産ケアの質評価」 助産歴10年以上・自己評価で2をつけた項目

    「2」は、ひとりでケアを実践できる

    *胎児の成長と健康度をみる

    *妊婦の健康診査

    *褥婦の健康診査

    *新生児の健康診査(成熟度評価)

    *産後の生活、家族計画、育児指導の企画実地

    *母子の愛着障害、児の虐待ハイリスク要因の有無が判断できる

    *ケアの継続性、ケアの評価

    *対象とその家族の満足

    ほとんどの項目は3または4/助産師健診が始まったことで慎重な評価

  • レベルⅢ

    正常な妊娠・分娩・産褥・新生児の助産ケアを責任もって行うこと

    助産師の臨床実践能力

    総合評価シート

  • 総合評価

    助産師 い ろ は に ほ へ と ち り ぬ る

    ケアリング A B A A A A A B B B B

    助産実践能力 B B C A B A A B B B B

    教育 B B C A B A A B B B B

    研究 B B D C D B A B D D D

    コミュニケーション B B A A B B A A B B B

    倫理 B A B B A A A B B B B

    安全 C B C C C B B C C B C

    経済性 C C C C C B B B C B C

    リーダーシップ B B C B C B B B B B B

    総合評価 C C C C C B B C C C C

    総合評価 クリニカルラダーレベルⅢ

  • 安全管理

    *レベルⅢでは、中心的な役割を担っているか?が問われている。

    ①自らが調整する側に立っているか?

    ②安全を提供できるような行動や、考え方をしているか?

    ③PL法(備品、医療材料に関する法令)に関心を持っているか?

    経済性

    *レベルⅢでは、

    ①物流システムの理解

    ②診療報酬などの医療政策に関心を持つことが問われている。

    !師長や管理者だけの仕事ではなく、スタッフみんなで学び

    考えること

    評価点の低い項目に関して

  • 研究

    *自主性に任せるだけではなく、計画的に、楽しく、できれば家族にも負担がないくらいの研究も取り入れて、全員が何かに取り組めるようにしたい。

    *現在取りかかっている研究も環境を整えて支援していきたい。

    リーダーシップ

    *ラダーを用いて段階的に、計画的にリーダーシップを育てる

    ことをしていきたい

    評価点の低い項目に関して

  • ポートフォリオの活用

  • 各レベルに対応した教育内容(日本看護協会)

  • 分娩の記録

    助産師Aの

    助産師A

    他の助産師

    年月日

    年齢

  • 3年目助産師の5年目助産師健診を始めるための自主的プラン

  • クリニカルラダー認証システム概念図

    申請書類提出 客観的試験

    認証 日本助産 評価機構

    レベル新人

    レベルⅠ

    レベルⅡ

    レベルⅢ

    レベルⅣ

    研修カード(活用ガイドP24参

    照)を活用し

    研修・実践を積む

    看護部長の承認 ポートフォ リオの活用

  • レベルⅢ申請に向けた教育プログラム

    *個人的にクリニカルラダーに沿いながら、一つ一つ確かめて

    獲得していく。

    *来年の8月の申請に向けて、足りていない分の学習を行う

    *ICLS,妊婦の特殊性を考慮した蘇生法、NCPRなどの

    シミュレーション学習

    *共同研究なども視野に入れた、研究の実施

    *管理的項目の改善や取り組み「安全・経済性」

  • 評価項目 チェック

    1 助産実践能力認証審査申請書類 確認用紙

    2 助産師免許証の写し(A4サイズ に縮小コピー)

    3 助産実践能力認証願

    4 申請書

    5 助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)レベルⅢ承認証

    6 妊婦健康診査実施例数承認書(200例以上) ○

    7 分娩介助件数承認書(100例以上) ○

    8 新生児健康診査実施例数承認書(200例以上) ○

    9 産褥期健康診査実施例数承認書(200例以上) ○

    10 プライマリーケース実施例数承認書(20例以上) ○

    11 NCPR(Bコース)以上認定証 ○

    12 分娩期のモニタリング(分娩監視装置)に関する研修終了証

    13 フィジカルアセスメントに関する研修終了証または研修記録

    14 陣痛促進剤(輸液ポンプの使用)に関する研修終了証

    15 記録に関連した研修終了証または研修記録

    16 助産師および後輩教育などに関連した研修終了証

    17 出血時の対応に関する研修終了証または研修記録 ○

    18 倫理に関連した研修終了証または研修記録

    19 学術集会参加記録(発表した場合は、抄録のコピー)

    「レベルⅢ」認証申請用書類一覧

  • クリニカルラダーⅢ申請に向けた 施設内外での教育体制

  • 1.院内で学習会の企画

    座学、シミュレーション、振り返りを合わせて90分

    受講票もしくは資料をのこす

    2.産科出血に関する学習会の実施

    ALSOに参加した医師とスタッフ、他学習会スタッフで企画:

    1回目は座学で産科的大出血の勉強会+院内コンセンサス会議

    2回目は物品を使って、シミュレーション型教育+振り返り

    このシミュレーションをほぼ全員が受けられるように2回実施

    院内学習会の工夫

  • 1.他科の学習会との共同企画

    院外の学習会との共同企画

  • 沖縄県看護協会の企画

    平成25年企画

    平成25年10月6日

    *妊娠期のフィジカルアセスメント*胎児モニタリング

  • 6月~12月 フィジカルアセスメント(成人)

    医療安全・感染管理・看護職の倫理・シミュレーション教育

    8月15日

    産科的救急について・産科医療補償制度・沖縄県の母子保健の動向

    9月27日

    「分娩施設における災害発生時対応マニュアル作成ガイド」の活用

    10月5日

    「助産に関連する法律と記録」

    「静脈注射・陣痛促進剤の正しい使用方法・輸液ポンプの使い方」

    11月14日・12月20日

    衛星放送学習会「クリニカルラダー基礎編」「クリニカルラダー実践編」

    平成27年1月18日

    産科救急のシミュレーション学習会

    平成26年

    沖縄県看護協会の企画

  • お産:気持ちがいいお産ができるように、産婦さんが 最後まで大事に見てもらった感があるお産。女性を大切に、 お産を大切に扱いたい

    産後を大切に見ていきたい:産後事業もありかも

    若年や女性全般の健康・予防教育をしたい

    母乳育児はとても大切、しっかりと支援したい

    正常の妊娠出産をしっかり見れる、ハイリスクを見逃さない力をつけた集団になりたい

    家庭と仕事の両立も大切(チームで受け持ち制をさらに)

    中堅は伸びしろがいっぱい

    一番大切な 「私たちはどんな働きをしたいのか」

    カンファレンス

  • 専門職として基盤になる学習や体験は、人によってまちまちではいけないのであろう

    このように医療の中で専門性が問われる中で、基本となる力を 兼ね備えたうえで、応用編である更なる専門性に飛び込んでいくことが必要である。

    すべての助産師が基本となる「ラダーⅢ」レベルの力を当たり前に備えることを目標にALL JAPANで学びあうことが始まった。

    ラダーⅢはゴールではなく更なる専門性への中間地点

    何のためにクリニカルラダーを 活用するのか