社会科(歴史的分野)学習指導案 - kumamoto-kmm.ed.jp€¦ ·...
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6年生 内容⑴ク
「戦後の日本」
日本国憲法の制定
東京オリンピック
を中心に。
2年生 歴史的分野
内容⑸キ 「近現代の日本と
世界」
第二次世界大戦後の民主化と
国際社会への参加について。
3年生 公民的分野
内容⑴ア 「現代日本の歩み
と私たちの生活」
内容⑶ア 「人間の尊重と日
本国憲法の基本的原則」
社会科(歴史的分野)学習指導案
日 時 平成 20 年2月5日(火)5校時
指導学級 2年1組 男子 16 名 女子 20 名 計 36 名
場 所 熊本市立藤園中学校 2年1組教室
指 導 者 教諭 松 島 孝 司
1 単元名 「第二次世界大戦後の日本と世界」 (教育出版 p180~187)
2 単元について
⑴ 単元観
第二次世界大戦で,日本はポツダム宣言を受け入れて無条件降伏した。この結果,日本は約6
年半に及ぶ,連合国軍総司令部(GHQ)による占領を受けることとなった。GHQの占領政策は,日
本の非軍事化,民主化を進めることにあった。財閥解体や農地改革をはじめとする諸改革が,GHQ
の方針に従ってすすめられていった。なかでも,GHQ及び日本政府共に心血を注いだのが,日本
国憲法の制定である。日本国憲法は,国民主権・象徴天皇制や軍隊の放棄,基本的人権の尊重と
いう三大原則を含んだ形で制定され,制定前の日本とは大きく異なる新生日本が出発した。日本
国憲法の制定は,まさに大日本帝国の崩壊といえる。
一方,第二次世界大戦後の世界は,冷戦による二極化が進んだ時期といえる。アメリカの日本
占領政策も冷戦により大きく変化し,特に朝鮮戦争の勃発により極端な反共政策が進められ,日
本はアメリカの世界戦略に巻き込まれることとなった。
アメリカの影響下で,単独講和か全面講和かという議論の中,早期・寛大な講和条件を勝ち取
るために,吉田茂の決断によって,日米安全保障条約と合わせた形でサンフランシスコ講和条約
が締結され,日本は国際社会に復帰することとなった。現在の日本の枠組みが,ここで決まった
といえる。
⑵ 系統観
本単元における,学習系統は次の通りである。
小学校 中学校
⑶ 生徒の実態(アンケート実施数35名)
本学級は,知的好奇心が高い生徒が多く,歴史事象の背景についての話を好む生徒も多い。本
単元に関する,生徒の実態は次の通りである。
A.歴史の学習が好きですか
○好き・まあまあ好きと答えた生徒の主な理由
昔の事や流れがわかる,授業がおもしろい
知らないことがわかる,人物の考えがわかる
まめ知識,プロジェクターやビデオでわかりやすい
2
○あまり好きではない・好きではないと答えた生徒の主な理由
難しすぎてわからなくなることがある,覚えるのが苦手
B.最近の社会科授業は? (4段階)4:とてもあてはまる ⇔ 1:全然あてはまらない
①基本的用語は,だいたい覚えている
②自分の考えを持つことができている
③資料の読み取りができている
④授業内容に興味関心を持っている
⑤自分の考えを発表することができている
⑥友だちとしっかり話し合いができている
⑦授業の後で満足感を味わっている
C.次の語句をどれぐらい知っているか?
【連合国軍総司令部,労働組合法,日本国憲法,財閥解体,農地改革,教育基本法
国際連合,冷たい戦争,中華人民共和国,朝鮮戦争,警察予備隊
サンフランシスコ平和条約,日米安全保障条約】
日本国憲法,国際連合,中華人民共和国については,ほとんどの生徒が内容まで知ってい
ると答えている。逆に,財閥解体,農地改革,冷たい戦争,朝鮮戦争,警察予備隊について
は,ほとんどの生徒が知らないまたは聞いたことはあるがよく知らないと答えている。
⑶ 指導観
① 「なぜ,日本の独立には6年半もかかったのだろうか」という学習問題を単元当初に設定し,
学習問題を意識させながら学習を進め,日本・アメリカ・ソ連や中国それぞれの要因を調べさ
せることで,日本の独立には,日本の講和内容への思惑,GHQの占領方針の転換や,東西冷戦
の激化など,様々な要因が関係していたことをつかませるようにする。
② 現在の日本の方向性が決まったこの時期について,生徒がより具体的イメージを持てるよう
にするために,吉田茂の発言,当時の映像資料,高齢者への聞き取りや当時のアンケート結果
等を使って学習を進めるようにする。
③ 「一人一人に自分の考えを持たせる」ために,学習問題についての予想結果でジグソーグル
ープを形成し,小単元ごとに課題に対する考えをジグソーグループや個人で確認させる場面を
位置づける。また,ジグソーグループでお互いに協力し合いながら調べ学習を行わせて,調べ
方が苦手な生徒,自分の考えを持つのが苦手な生徒への個別指導を行い,一人一人に調べた内
容を整理させた上で,ホームグループでの説明や意思決定をさせるようにする。
3 単元の目標
○第二次世界大戦後,国際社会に復帰するまでのわが国の動きを,当時の様子をイメージできるように,意欲的に調べさせる。
○わが国の民主化と再建の過程や国際社会への参加について,日本・アメリカ・ソ連などの要因
を調べたり吉田茂の考えにふれさせたりすることで,わが国が複雑な国際情勢の中で国際社会
に復帰できた理由を,多面的・多角的に考察させる。
○敗戦から国際社会復帰までの日本と世界の動きを,問題解決の予想に基づき目的意識を持たせ
て,問題解決に必要な資料を取捨選択させながら調べさせる。
○敗戦から国際社会復帰までの日本と世界の様子を概観させ,わが国は複雑な国際情勢の中,ア
メリカの強い影響下のもと国際社会復帰を果たし,民主国家として生まれかわったことを理解
させる。
4 3 2 1
3
4 指導計画とおもな手だて(6時間扱い)
4
【本校研究主題】
共に生きる生徒の育成をめざして ~授業で勝負~
基礎学力の充実と個に応じた指導法の工夫 特別支援教育の推進
第二次世界大戦後のわが国の独立までの学習において,次のような手だてをとれば,一人
一人に自分の考えを持たせ,考えをお互いに認め合わせながら,日本の国際社会への復帰に
ついて,時代のイメージを持たせながら認識を深めさせることができるであろう。
【手だて】(太字は本時における手だて)
⑴ 一人一人に自分の考えを持たせお互いの考えを認め合わせるために,単元を貫く学習問
題(独立までに6年半かかったのはなぜか)を設定して,一斉学習→ジグソーグループに
よる調べ学習→ホームグループでの話し合い→全体での話し合いという学習過程を設定す
る。
⑵ 一人一人に自分の考えを持たせ認識を深めさせるために,一斉学習で毎時間の後半に,
相互教授学習や学習問題について確認する時間を位置づける。
⑶ 一人一人に自分の考えを持たせお互いの考えを認め合わせるために,調べ学習や意思決
定場面にジグソー学習やバズ学習を取り入れる。
【研究員社会科部会研究主題】
小中学校社会科学習における,個を大切にする問題解決学習の学習過程と手だての研究
(個を大切にする)とは・一人一人に自分の考えを持たせること。
・一人一人の考えを教師が把握し,その考えを生かすこと。
・一人一人の考えをお互いに認め合わせること。
5 単元の研究仮説
6 本時の学習
⑴ 本時の目標
○「なぜ,日本の独立は6年半かかったのか」という学習問題の答えを話し合うことで,わが国
が民主化を進め,複雑な国際情勢の中,アメリカの強い影響のもと国際社会に復帰したことを
理解し,説明することができる。
○吉田茂の発言に対しての意見を話し合うことで,吉田茂の決断が現在の日本の進路に大きな影
響を与えていることに気付くことができる。
⑵ 本時の展開(5,6 ページ)
⑶ 本時の評価
○ 「なぜ,日本の独立は6年半かかったのか」という学習問題の答えを,自分の意見として答
えることができたか。
(ホームグループでの評価表)
○ 吉田茂の決断が,現在の日本の進路に影響を与えていることに気付くことができたか。
(最終意見カードへの記述内容チェック:授業後)
5
学習内容と活動 時間 予想される生徒の反応 教師の指導・支援 備考
1 本時の活動内容を
確認する。【一斉】
2 自分の調べをもと
に,学習問題の答えにつ
いて話し合い,グループ
の意見をまとめて発表
する。
【ホームグループ】
○日本国内の要因
○アメリカの要因
○ソ連や中国の要因
・一人1分程度で
・他の立場について質
問や意見をする。
・グループの意見をま
とめて発表する。
3 全体で学習問題に
ついて話し合う。
【一斉】
○当時の世論(新聞アン
ケート,聞き取り)
4日米安全保障条約に
ついて確認する。【一斉】
○条約の内容
○調印時の様子
5 吉田茂のことばを
聞き,発言についての意
見を書き,話し合う。
【一斉】
秘書・松野頼三への言葉
導入
2分
展開
10分
18分
8
分
12
分
・日本政府は,世界の国々
に認められるために,民主
化や非軍事化を受け入れ
て,軍事化には消極的だっ
たから。
・GHQ の占領方針は,最初
非軍事化だったのに,朝鮮
戦争頃から軍事化に変わ
っているから。
・アメリカよりの政策を行
っていた日本の独立を,ソ
連などが認めようとしな
かったため。
・日本国内の状況,アメリ
カの考え,ソ連や中国の考
えなど,複雑な状況の中で
日本は独立したんだ。
・当時の人々は,独立を強
く願っていたんだ。
・ 全面講和を望んでいる人たちもいたんだ。
・吉田茂が一人だけで調印
したんだ。
・今も続いている条約だ。
・この条約は結ぶべきだっ
たのかな。
○吉田茂がいろいろ迷っ
て決断したおかげで,今の
日本があるのだと思う。
○後の人が直すなんて,少
し無責任なようにも思え
○わかりやすいように,
本時の流れを板書する。
○大きく,3つの立場に
わけ,それぞれの調べ学
習に基づいて,意見を自
由に出し合わせる。
○ホームグループは,意
見の異なる生徒が混在す
るように,4~5名で構
成させる。
○ホームグループでの意
見交換をふまえてグルー
プの意見をまとめさせ,
ホワイトボードに記入さ
せる。
○米ソの対立の中,一日
も早い独立と,全面講和
とが両立できない難しさ
を実感させたい。
○当時のアンケートや聞
き取りによって,当時の
人々の様々な思いをイメ
ージさせたい。
○学習活動2を参考にさ
せながら,学習問題につ
いての答えをまとめる。
○日米安保の内容と締結
時の様子を通して,吉田
茂が様々なことを迷いな
がら,決断すべきところ
は決断して,独立を勝ち
取り,安保条約の調印に
臨んだ事を実感させた
い。
○まずは,時間を決めて
自分の意見をワークシートに書
かせる。
フラッシュカー
ド
ワ ー ク シ ー ト
報告用
記録用
資料集
聞 き 取
り内容
ワークシート
資料集
プロジェク
ター
ワークシート
なぜ,日本の独立には6年半もかかったのだろうか。
吉田茂の発言について話し合おう
6
(1951 年 12 月,首相官
邸にて)
「俺の力ではこれぐら
いのことしかできない。
もっとしたいが,米国の
言うことを聞くしかな
いんだ。この後は若い人
たちが,これを直してい
くんだろうよ。」
る。
○吉田茂の期待に応えら
れるよう,自分たちもがん
ばっていかなければなら
ないと思う。
○多くの人たちが苦労し
たおかげで日本が独立で
き,現在の繁栄があること
に感謝しなければいけな
いと思う。
○日本国憲法の制定,サ
ンフランシスコ平和条約
による独立と日米安全保
障条約など,吉田茂が行
った事が現在の日本の基
礎となっていることを確
認して,授業を終わる。