理科がめざす アクティブ・ラーニング · 4 (2)「対話的な学び」...
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教授用資料小学校理科教授用資料
船尾 聖 帝京平成大学教授
理科がめざすアクティブ・ラーニング
目 次
はじめに ……………………………………………………………………………………………………………………1
アクティブ・ラーニングとは …………………………………………………………………………2
理科におけるアクティブ・ラーニングの3つの視点 …………………………2 (1)「主体的な学び」 ……………………………………………………………………………………………… 3
(2)「対話的な学び」 ……………………………………………………………………………………………… 4
(3)「深い学び」 ……………………………………………………………………………………………………… 5
アクティブ・ラーニングによる理科授業例1 A 物質・エネルギー 第3学年「ものの重さをしらべよう」 ・・・6
アクティブ・ラーニングによる理科授業例2 B 生命・地球 第4学年「わたしたちの体と運動」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
アクティブ・ラーニングによる理科授業例3 A 物質・エネルギー 第6学年「てこのはたらき」 ・・・・・・・・・・・・・・・・12
アクティブ・ラーニングQ&A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
新しい時代に必要となる資質・能力の育成
学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養
く第3の柱>
生きて働く知識・技能
の習得く第1の柱>
�
未知の状況にも対応できる
思考カ・判断力・ 表現力
等の育成く第2の柱>
�
新しい時代の必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し ◯小学校の外国語教育の教科化など ◯学習内容の削減は行わない
「各教科における見方・考え方」を働かせて,「各教科で育成する資質・能力」を育てること
主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善◯ 生きて働く知識・技能の習得など,新し
い時代に求められる資質・能力を育成◯ 知識の量を削減せず,質の高い理解を図
るための学習過程の質的改善
1
はじ め に
中央教育審議会においては,平成26年11月に文部科学大臣から学習指導要領改訂における諮問が行われ,平成27年8月26日教育課程企画特別部会で「論点整理」としてまとめが発表されました。 この「論点整理」の冒頭には,「将来の変化を予測することが困難な時代」と書かれています。将来を予測することが困難だから,どのような時代になっても適応し,自分の力で生きていくことができる資質・能力をもった人を育てなければならないという考えです。 そのことを受け,平成28年8月26日中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会において「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」が取りまとめられました。改訂の中核は「資質・能力」の育成です。 その中で,「何ができるようになるか」では,
「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」を下記のような3つの柱で示されています。
「何ができるようになるか」
また,「何を学ぶか」では,新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標の見直しが行われてきました。
「何を学ぶか」
さらに,「どのように学ぶか」では,主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善が示されています。
「どのように学ぶか」
本稿においては,アクティブ・ラーニングを切り口に,「どのように学ぶか」を具体的に実践例も含め述べていきたいと思います。
第 3 柱
第1柱 第2柱
主体的な学び
対話的な学び
深い学び
2
アクティブ・ラーニングとは
アクティブ・ラーニングは,学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称と言われています。学習者が授業に自ら主体的・協働的に参加することをめざしています。 そんなことは,今までの授業でも「班で話し合わせたり,児童の意見を大事にして話し合いを行ってきた」と考えたりしているところがあるのではないでしょうか。 新しい時代における育てたい資質・能力の育成では,「どのように学ぶか」が資質・能力の育成の大きなポイントになっています。 学習の目標に向かって,教材を通して児童に教え込む指導や,児童を受け身にさせる教師の一方的な説明や一斉・画一的な教師中心の授業から,アクティブ・ラーニングによって児童が友達と一緒に,学習材を通して学び取ったり学び合ったりする,児童主体の授業へ,授業スタイルを転換していくことが重要なポイントだと言えます。 したがって,児童主体の授業にするためにどのような学習活動を行えばよいのか,授業実践を通して改善していくことが今後の大きな課題だと考えます。 そのためには授業のスタイルを「主体的な学び」「対話的学び」「深い学び」の3つの視
点からアクティブ・ラーニングを取り入れた授業にしていくことが大事であると考えます。 それでは,アクティブ・ラーニングの視点である「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の3つについて理科ワーキングにおける審議の取りまとめから具体的に考えてみましょう。
理科におけるアクティブ・ラーニングの3つの視点
理科の学習では,現行学習指導要領の目標にもあるように,自然に親しみ,見通しをもって観察,実験を行い,その結果を整理し考察する問題解決の学習活動を重視してきました。 「アクティブ・ラーニング」の視点は,知識・技能を生きて働くものとして習得することを含め,育成すべき資質・能力を身に付けるために必要な学習過程を実現するためのものです。 3つの視点を明確にすることにより,授業改善に向けた取り組みの活性化をするものです。 下記の図のように,アクティブ・ラーニングの3つの視点である「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」を理科の学習でどのように取り入れていけばよいか「理科ワーキンググループにおける審議のまとめ」を通してみていきましょう。
学びを人生や社会に生かそうとする
学びに向かう力・人間性等の涵養
学びに向かう力・人間性等
未知の状況にも対応できる
思考力・判断力・表現力等の育成
思考力・判断力・表現力等
知識・技能次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ 補足資料より
主体的な学び
「アクティブ・ラーニング」の3つの視点からの学習過程の質的改善
対話的な学び
深い学び 生きて働く知識・技能の習得
3
(1)「主体的な学び」 理科における学習過程と「主体的な学び」
学習過程(追究の過程)
問題の把握
(発見)
自然事象に対する気付き扌
問題の見いだし扌
問題の探究
(追究)
予想・仮説の設定扌
検証計画の立案扌
観察・実験の実施扌
結果の整理扌
問題の解決
考察や結論の導出
学ぶことに興味や関心をもち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
学ぶことに興味や関心をもち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
理科において「主体的な学び」を実現していくためには,例えば,○ 自然の事物・現象から問題を見いだし,見
通しをもって課題や仮説の設定や観察・実験の計画を立案したりする学習場面を設けること
○ 観察・実験の結果を分析・解釈して仮説の妥当性を検討したり,全体を振り返って改善策を考えたりする学習場面を設けること
○ 得られた知識や技能をもとに,次の課題を発見したり,新たな視点で自然の事物・現象を把握したりする学習場面を設けること
などが考えられます。
A.「アクティブ・ラーニングの視点である主体的な学び」を実践していくには,上記の図にある学習過程(追究の過程)を児童自らが「見通し」をもったり,学習したことの「振り返り」をしたりしながらより妥当な考えを導く学び方を身に付けていくことがポイントになります。
(1) 「問題の把握(発見)」では,学ぶことに興味 • 関心をもたせることが大切です。自然に親しむ場面や事象提示の場面などの導入時においては,友達と交流する活動を行って,不思議さや気付きを見つけ,その体験が今後の問題把握(発見)や予想の根拠につながるようにします。
(2) 「問題の探究(追究)」では,共有化された予想や仮説をもとにして,結果を見通し,それらを検証するための観察や実験の計画(検証計画の立案)を立てます。自分の考えた計画と友達の考えた計画を比較し,話し合い,改善・修正し,結果を見通した主体的な観察・実験になるようにします。
(3) 「問題の解決」では,考察するにあたって,結果の分析,解釈する場面を設け,児童の考えを出し合い,予想と結果を比較したり,視点に沿って振り返り,関連付ける活動を行うようにします。
AA..「アクティブ・ラーニングの視点である主体的な学び」を実践していくには,上記の図にある学習過程(追究の過程)を児童自らが「見通し」をもったり,学習したことの「振り返り」をしたりしながらより妥当な考えを導く学び方を身に付けていくことがポイントになります。
(1) 「問題の把握(発見)」では,学ぶことに興味 • 関心をもたせることが大切です。自然に親しむ場面や事象提示の場面などの導入時においては,友達と交流する活動を行って,不思議さや気付きを見つけ,その体験が今後の問題把握(発見)や予想の根拠につながるようにします。
(2) 「問題の探究(追究)」では,共有化された予想や仮説をもとにして,結果を見通し,それらを検証するための観察や実験の計画(検証計画の立案)を立てます。自分の考えた計画と友達の考えた計画を比較し,話し合い,改善・修正し,結果を見通した主体的な観察・実験になるようにします。
(3) 「問題の解決」では,考察するにあたって,結果の分析,解釈する場面を設け,児童の考えを出し合い,予想と結果を比較したり,視点に沿って振り返り,関連付ける活動を行うようにします。
Q. 「主体的な学び」を実現させるためには,授業を行う際にどのような指導をしていけばよいのでしょうか。
見 通 し
振り返り
4
(2)「対話的な学び」
子供同士の協働,教員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
子供同士の協働,教員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
理科において「対話的な学び」を実現していくためには,例えば,〇 問題の設定や検証計画の立案,観察・実
験の結果の処理,考察・推論する場面などでは,あらかじめ個人で考え,その後,意見交換したり,議論したりして,自分の考えをより妥当なものにする学習場面を設けること
などが考えられます。
自分の考えをわかりやすく説明したり,友達の考えを聞くことで,自分の考えを広げたり,深めたり,新しい考えをもったりすることができます。下記の話し合いのポイントを参考にして指導していくことが大切です。
❶ 話し合いのねらいは何かを明確にするには,児童一人ひとりに自分の考えをしっかりもたせるように指導しましょう。
❷ 自分の考えをずっと主張するだけではなく,友達の考えもきちんと聞き,話し合いをすることを指導しましょう。
❸ 友達の考えのよいところを認めること,友達の考えと違うところをわかりやすく説明することを指導しましょう。
❹ 大きな声ではっきりと相手に伝わるように話すよう指導しましょう。
A.「対話的な学び」をしていくには,話し合いをする場合,学年の発達段階,話し合いの目的等で「となりの席の友達と 2 人で行う場合」,「グループで行う場合」,「学級全体で行う場合」があります。学習過程の場面によって,より効果的な方法を活用しましょう。
● 友達の考えを聞いて,自分の考えとどこが同じで,どこが違うのかを整理しながら聞いたり,話したりすると考えが深まります。
● 自分の考えを発表できない児童には,となり同士で話し合いをしておくと自信をもって発表するきっかけづくりになります。
● グループの話し合いでは,友達の考えを聞きながら,メモを取るように助言するとよいでしょう。
● グループの考えを一つにするにはどうすればよいかを意識するよう助言し,ホワイトボード,付箋紙などを活用するなどして,まとめていけるよう支援しましょう。
● グループ毎に話し合ったことを発表する場合は,毎回同じ児童が発表者にならないようにしましょう。
● 各グループの発表で共通点や差異点を整理し,クラスの考えの共有化を図り,深める支援をしましょう。
AA..「対話的な学び」をしていくには,話し合いをする場合,学年の発達段階,話し合いの目的等で「となりの席の友達と 2 人で行う場合」,「グループで行う場合」,「学級全体で行う場合」があります。学習過程の場面によって,より効果的な方法を活用しましょう。
● 友達の考えを聞いて,自分の考えとどこが同じで,どこが違うのかを整理しながら聞いたり,話したりすると考えが深まります。
● 自分の考えを発表できない児童には,となり同士で話し合いをしておくと自信をもって発表するきっかけづくりになります。
● グループの話し合いでは,友達の考えを聞きながら,メモを取るように助言するとよいでしょう。
● グループの考えを一つにするにはどうすればよいかを意識するよう助言し,ホワイトボード,付箋紙などを活用するなどして,まとめていけるよう支援しましょう。
● グループ毎に話し合ったことを発表する場合は,毎回同じ児童が発表者にならないようにしましょう。
● 各グループの発表で共通点や差異点を整理し,クラスの考えの共有化を図り,深める支援をしましょう。
話し合いのポイント
Q. 「対話的な学び」を実現させるためには,授業を行う際にどのような指導をしていけばよいのでしょうか。
5
(3)「深い学び」
習得・活用・探究という見通しの中で,教科等の特質に応じて育まれる「見方・考え方」を働かせて思考・判断・表現し,学習内容の深い理解や資質・能力の育成,学習への動機付け等につながる「深い学び」が実現できているか。
習得・活用・探究という見通しの中で,教科等の特質に応じて育まれる「見方・考え方」を働かせて思考・判断・表現し,学習内容の深い理解や資質・能力の育成,学習への動機付け等につながる「深い学び」が実現できているか。
このような学びを実現していくためには,例えば,○ 観察・実験などの学習の過程を振り返っ
て変容を自覚したり表現したりする学習場面を必要に応じて設けること
などが考えられます。
理科においては,自然の事物・現象について,「理科の見方・考え方」を働かせて,探究の過程を通して学ぶことにより,資質・能力を獲得するとともに,「見方・考え方」も成長するものであると考えられます。さらに,獲得した資質・能力や成長した「見方・考え方」を次の学習や日常生活などにおける問題発見・解決に活用することによって,
「深い学び」につながっていくものと考えられます。
小学校理科の各領域における特徴的な見方エネルギー 粒 子 生 命 地 球
自然の事物現象を主として,量的・関係的な視点で捉える
質的・実体的な視点で捉える
多様性と共通性の視点で捉える
時間的・空間的な視点で捉える
(例)豆電球の明るさについて,電池の数(量)や直列・並列つなぎの関係で捉えているという見方
(例)物の性質について,形が変わっても重さは変わらないことから,実体として存在することを捉えるという見方
(例)昆虫や植物の成長や体のつくりについて,多様性と共通性の視点で捉えるという見方
(例)土地のつくりや変化について,侵食・運搬・堆積の関係を時間的・空間的な視点で捉えるという見方
小学校理科の考え方●理科の学習における考え方(思考の枠組み)については,問題の把握(発見),問題の探究(追究),問題の解決という探究の過程を通じた学習活動の中で「比較したり,関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて事象の中から何らかの関連性,規則性,因果関係等について考えること」
A.アクティブ・ラーニングはともすると深まりを欠く表面的な活動に陥りやすい面もあります。アクティブ・ラーニングの視点である「深い学び」において,学びの「深まり」の鍵になるものは各教科の特性に応じた「見方・考え方」です。理科の場合の「見方・考え方」については,上記に記載してある表を参照してください。
アクティブ・ラーニングを深い学びにしていくには,「見方・考え方」を働かせた学びを通じて,資質・能力が育まれ,それによって「見方・考え方」がさらに豊かなものにしていくことが大切です。したがって,この「見方・考え方」が話し合いの深まりを高めていく指導をポイントにして支援していくことがきわめて大切です。
例えば,4年「電池のはたらき」の単元では,「見方」として,エネルギー領域において電池の量をエネルギーとして捉え,つなぎ方との関係性をもとに,それを解決する「考え方」として,比較したり,関係付けたりするなどして規則性,因果関係などを導き出すような活動にします。このような「見方・考え方」を働かせ,話し合いを深めていく支援が大切です。
AA..アクティブ・ラーニングはともすると深まりを欠く表面的な活動に陥りやすい面もあります。アクティブ・ラーニングの視点である「深い学び」において,学びの「深まり」の鍵になるものは各教科の特性に応じた「見方・考え方」です。理科の場合の「見方・考え方」については,上記に記載してある表を参照してください。
アクティブ・ラーニングを深い学びにしていくには,「見方・考え方」を働かせた学びを通じて,資質・能力が育まれ,それによって「見方・考え方」がさらに豊かなものにしていくことが大切です。したがって,この「見方・考え方」が話し合いの深まりを高めていく指導をポイントにして支援していくことがきわめて大切です。
例えば,4年「電池のはたらき」の単元では,「見方」として,エネルギー領域において電池の量をエネルギーとして捉え,つなぎ方との関係性をもとに,それを解決する「考え方」として,比較したり,関係付けたりするなどして規則性,因果関係などを導き出すような活動にします。このような「見方・考え方」を働かせ,話し合いを深めていく支援が大切です。
理科における「見方・考え方」について
Q. 「深い学び」を実現させるためには,授業を行う際にどのような指導をしていけばよいのでしょうか。
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■ 何を学ぶか(単元のねらい) ■● 物と重さについて興味・関心をもって追究する。
● 物の形や体積,重さなどの性質の違いを比較する能力を育て,それらの関係を理解する。
● 物の性質についての見方や考え方をもてるようにする。
■ 何ができるようになるか(評価の観点) ■① 自然事象に関する知識・技能● てんびんや自動上皿はかりを適切に使って,安全に実験やものづくりができる。
● 物の形や体積と重さの関係について体感をもとにしながら調べ,その過程や結果を記録できる。
● 物は,形が変わっても重さは変わらないことを理解できる。
● 物は,体積が同じでも重さは違うことがあることを理解できる。
② 科学的な思考力・判断力・表現力● 物の形を変えたときの重さや,物の体積を同じにしたときの重さを比較して,それらについて
予想や仮説をもち,表現できる。
● 物の形を変えたときの重さや,物の体積を同じにしたときの重さを比較して,それらを考察し,
自分の考えを表現できる。
③ 自然事象に対する主体的な学習態度● 物の形や体積と重さの関係に興味・関心をもち,進んで物の性質を調べることができる。
● 物の形や体積と重さの関係を適用し,身の回りの現象を見直すことができる。
■ どのように学ぶか(アクティブ・ラーニングの要点) ■
(全6時間)
ものの重さをしらべよう3年A (1)
● 日常的に感じている知識とは異なる考え
が多く身に付けられる単元である。実験ご
とに予想を友達と伝え合い,自分の考えを
表現することで,予想との違いに着目した
考察を行う。
● 友達と協力したり話し合ったりしながら,
物の重さを正確にはかり,比べていくこと
で,物と重さの関係を理解する。
● 結果についてグループや全体で話し合い
ながら共有することで,全体の正確な実験
結果をもとに考察を行う。
アクティブ・ラーニングによる理科授業例 1 〜「学習問題を見いだす場面」と「計画を立てる場面」を中心にした活動事例〜
A 物質・エネルギー 第3学年「ものの重さをしらべよう」
(全6時間)
7
3 年
A
物質・エネルギー
3 年
B
あああああ
4 年
A
あああああ
4 年
B
あああああ
5 年
A
あああああ
5 年
B
あああああ
6 年
A
あああああ
6 年
B
あああああ
3年 A (1)ものの重さをしらべよう
31
鉄 木
ガラス プラスチック
■ 指導計画(全 6 時間) ■
おもな学習活動 中心となるアクティブ・ラーニングの視点
◆第 1 次 物の重さと形 (4 時間)
① 身の回りの物の重さ比べ(1 時間)●� 身の回りにあるいろいろな物を手に持って重さを比べ,気付いたことを話し合う。
② 身の回りの物の重さ調べ(1 時間)●� はかりや天びんの使い方を知り,身の回りの物の重さを調べる。
③④ 物の重さと形(2 時間)●� いろいろな形に変えたり,小さく分けたりする活動を通して,重さを予想し,実験を計画する。●� いろいろな形に変えたときの物の重さを調べる。
◆第 2 次 物の重さと種類 (2 時間)
⑤⑥ 同じ体積の物の重さ(2 時間)●� 同じ体積で,種類の違う物の重さについて,経験をもとに予想し,実験を計画する。●� 同じ体積で,種類の違う物の重さを比べる。
【問題の発見】●�身の回りの物を手で持ち,重さを比べる体感から気付いたことを話し合い,学ぶ問題を発見する。 ⇒活動事例❶
【予想・仮説】●�これまでの経験を想起し,図や言葉で表現する。
【考察】●�予想に立ち返った考察を行い,気付いたことを発表し合うことで,正確な器具を用いて実験を行う有効性に気付く。
【考察】●�体積が同じで種類の違う物の重さをはかった結果を,手ごたえの判断とともにグループで話し合い,全体に発表する。
【計画】●�予想を確かめるには,どのような形の重さを調べる必要があるか,個人の予想をもとにグループで計画を立てる。 ⇒活動事例❷
【考察】●�様々な形に変えた物の重さの結果をカードに書き出し,全体で話し合う。
8
第3章 アクティブ・ラーニングによる理科授業例
32
1.身の回りにある物を一人ひとり手に
持って,重さ比べを行う。
2.グループで,個人が考えた予想や理
由を話し合う。
3.気づいたことをもとに全体で考えを
分類・整理して,物の重さをくわし
く調べていこうという学習問題を設
定する。
1.グループで児童一人ひとり
が予想を発表する。
2.グループで,全員の予想が
確かめられる実験計画を話
し合う。
3.話し合ったことを全体で整
理し,実験方法を確認する。
活動事例❷ 計画を立てる場面(3時間目/全6時間)
活動事例❶ 学習問題を見いだす場面(1 時間目/全 6 時間)
児童は,見た目に影響を受けて重さを判断しやすいので,様々な物を用意し,体感をさせましょう。そのなかで,体感だけではどちらが重いかわからないような物,重さは同じで形が異なる物などを用意しましょう。自分の考えと友達の考えの違いを見つけ,もっと正確に調べたいという意欲を高めた上で学習問題を設定できるような主体的・協働的な活動を行いましょう。
ここがポイント
全員が予想を友達と発表し合ったうえで,実験計画を立てることで,考察の意欲につなげましょう。また,児童の多くは形が変わると重さが変わると思っているため,その考えを明確にしたうえで実験をすると,児童の記憶に残りやすくなります。形を変えても重さは変わらないことを確かめるには,1つのかたまりを様々な形に変化させていく必要があることに,話し合いのなかで気付かせていきましょう。
ここがポイント
■ アクティブ・ラーニングの実際例 ■
同じ大きさなら重さは同じか,調べてみたい。
形が変わると重さは変わるのか,正確に調べてみたい。
グループごとに調べたいことを整理し,全体で問題をつくってみましょう。
形を変えると重さは変わると思うから,同じ粘土を使って丸い形や長細い形の重さを比べてみたい。
形を変えても重さは変わらないと思う。紙を丸めたり,切ったりして重さを比べたい。
976
■ 何を学ぶか(単元のねらい) ■● 人や他の動物の骨や筋肉の動きについて興味・関心をもって追究する。
● 人や他の動物の体のつくりと運動とを関係付ける能力を育て,それらについて理解する。
● 人の体のつくりと運動との関わりについての見方や考え方をもてるようにする。
■ 何ができるようになるか(評価の観点) ■① 自然事象に関する知識・技能● 自分の体に直接触れたり,映像や模型などを活用したりして,人の体の骨や筋肉とその動きを
観察できる。
● 人の体の骨や筋肉とその動きを調べ,その過程や結果を記録できる。
● 人の体には骨と筋肉があることを理解できる。
● 人が体を動かすことができるのは,骨,筋肉の働きによることを理解できる。
② 科学的な思考力・判断力・表現力● 骨の位置や筋肉の存在,骨と筋肉の動きを関係付けて,それらについて予想や仮説をもち,表
現できる。
● 骨の位置や筋肉の存在,骨と筋肉の動きを関係付けて考察し,自分の考えを表現できる。
③ 自然事象に対する主体的な学習態度● 骨や筋肉の動きに興味・関心をもち,進んで人や他の動物の体のつくりと運動との関わりを調
べることができる。
● 人や他の動物の体のつくりと運動に生命のたくみさを感じ,観察することができる。
■ どのように学ぶか(アクティブ・ラーニングの要点) ■
(全7時間)
わたしたちの体と運動4年B (1)
● 自分の体という身近なものについて,児
童はあまり正確には知らない。そのずれを
児童に意識させることで,調べてみたいと
いう気持ちを高める。
● 自分の体を使ったり,学校の飼育動物を
活用したりするなど,体験的な活動を工夫
して取り入れる。
● 人や動物の体のつくりやしくみについて
調べたことを自分なりに図や言葉などを
使ってまとめたり,調べたことを友達と説
明し合ったりする。
● 動物の体について調べたことやなぜその
ような体なのか考えたことをまとめること
で,その動物の体の特徴の意味を考える。
アクティブ・ラーニングによる理科授業例 2 〜「学習問題を見いだす場面」と「考察する場面」を中心にした活動事例〜
B 生命・地球 第4学年「わたしたちの体と運動」
(全7時間)
10
3 年
A
物質・エネルギー
3 年
B
あああああ
4 年
A
物質・エネルギー
4 年
B
生命・地球
5 年
A
あああああ
5 年
B
あああああ
6 年
A
あああああ
6 年
B
あああああ
4年 B (1)わたしたちの体と運動
77
■ 指導計画(全 7 時間) ■
おもな学習活動 中心となるアクティブ・ラーニングの視点
◆第 1 次 人の骨と筋肉 (4 時間)
① 運動するときの体(1 時間)●� これまでの経験から,腕を動かすしくみがどのようになっているか話し合う。
② 腕の骨と筋肉(1 時間)●� 腕の骨と筋肉がどこにあるか調べる。
③ 腕のしくみ(1 時間)●� 腕が動くときの筋肉の様子を調べる。
④ 人の体のつくりやしくみ(1 時間)●� 体の骨や筋肉,関節を調べる。
◆第 2 次 動物の骨と筋肉 (3 時間)
⑤⑥⑦ 動物の体のつくりやしくみ(3 時間)●� 動物の骨や筋肉,関節を調べ,つくりやしくみについてまとめる。
【問題の発見】●�物を持ち上げたり,腕相撲をしたりするなどの運動を行い,腕の動かし方によって,腕の様子の変化を実感させ,学ぶ問題を発見する。 ⇒活動事例❶
【予想・仮説】●�腕の骨や筋肉がどこにあるのか予想するとき,自分の腕を触れながら予想する。
【観察・実験】●�水を入れたペットボトルを持ち,腕を曲げたりのばしたりしながら,腕の内側と外側の筋肉を触り,筋肉のかたさやふくらみをペアで比較・観察し,お互いに話し合って表にまとめる。
【考察】●�調べた動物の体の特徴をかき,その理由をグループでお互いに伝え合い,自分の考えを深める。 ⇒活動事例❷
【考察】●�前時に学習した腕を動かすしくみをもとに,腕以外の体の部分について調べ,わかったことを図や言葉を使って自分なりに表現したり,友達と説明し合ったりすることで理解を深める。
11
第3章 アクティブ・ラーニングによる理科授業例
78
1.腕に力を入れたときの様子を観
察し,腕に起きている変化につ
いて話し合う。
2.実際に「物を持ち上げる・体を
支える・腕相撲をする」など腕
を動かして,気付いたことを付
箋に書く。
3.気付いたことの書かれた付箋を
分類・整理して学習問題を設定
する。
1.調べた動物ならではの特徴をウェ
ビングマップの中心付近にかく。
2.なぜそのような体の特徴がある
のか,考えたことや調べてわかっ
たことを関連付けながらウェビ
ングマップにかき加える。
3.同じ動物を調べた友達と発表し
合い,新たに考えたことをかき
加える。
活動事例❷ 考察をする場面(6 時間目/全 7 時間)
活動事例❶ 学習問題を見いだす場面(1 時間目/全 7 時間)
力を入れているときと入れていないときを比較して,腕にどのような変化が起きているか意識させましょう。また,「物を持ち上げる・体を支える・腕相撲をする」などのいろいろな動きを行うことで,動き方によっても違いがあることを捉えさせます。これらの共通体験から気付いたことを付箋に書き,分類・整理することでクラスとしての問題にしましょう。
ここがポイント
調べたことを一人でまとめるのではなく,同じ動物を調べた友達に発表し,質問をし合うなどして,ウェビングマップを更新させていきます。また,時間に余裕がある場合は,動物の種類ごとにチームを組ませ,クラスで発表会を行うといった活動も行うとより考えが深められます。
ここがポイント
■ アクティブ・ラーニングの実際例 ■
腕の中は,どのようなつくりになっているのかな。
どのようなしくみで,腕を曲げたりのばしたりしているのかな。
12
3 年
A
物質・エネルギー
3 年
B
あああああ
4 年
A
あああああ
4 年
B
あああああ
5 年
A
あああああ
5 年
B
あああああ
6 年
A
物質・エネルギー
6 年
B
あああああ
133
■ 何を学ぶか(単元のねらい) ■● 生活に見られるてこについて興味・関心をもって追究する。
● てこの規則性について推論する能力を育て,それらについて理解する。
● てこの規則性についての見方や考え方をもてるようにする。
■ 何ができるようになるか(評価の観点) ■① 自然事象に関する知識・技能● てこの働きを調べる工夫をし,てこの実験装置などを操作し,安全で計画的に実験やものづく
りをすることができる。
● てこの働きの規則性を調べ,その過程や結果を定量的に記録できる。
● 水平につり合った棒の支点から等距離に物をつるして棒が水平になったとき,物の重さは等し
いことを理解できる。
● 力を加える位置や力の大きさを変えると,てこを傾ける働きが変わり,てこがつり合うときに
はそれらの間に規則性があることを理解できる。
● 身の回りには,てこの規則性を利用した道具があることを理解できる。
② 科学的な思考力・判断力・表現力● てこがつり合うときのおもりの重さや支点からの距離を関係付けながら,てこの規則性につい
て予想や仮説をもち,推論しながら追究し,表現できる。
● てこの働きや規則性について,自ら行った実験の結果と予想や仮説を照らし合わせて推論し,
自分の考えを表現できる。
③ 自然事象に対する主体的な学習態度● てこやてこの働きを利用した道具に興味・関心をもち,自らてこのしくみやてこを傾ける働き,
てこがつり合うときの規則性を調べることができる。
● てこの働きを適用してものづくりをしたり,日常生活に使われているてこの規則性を利用した
道具を見直したりすることができる。
■ どのように学ぶか(アクティブ・ラーニングの要点) ■
(全10時間)
てこのはたらき6年A (3)
● 砂袋を持ち上げたときの手ごたえの違い
について興味・関心をもって問題を見いだ
し,主体的に追究する活動を行う。
● 手ごたえをもとに考えた自分の予想から
結果の見通しをもつ。
● 実験の条件を整理する必要があることに
気付き,友達と話し合って計画を見直し,
協力して実験ができる。
アクティブ・ラーニングによる理科授業例 3 〜「観察・実験の場面」と「考察する場面」を中心にした活動事例〜
A 物質・エネルギー 第6学年「てこのはたらき」
(全 10 時間)
13
第3章 アクティブ・ラーニングによる理科授業例
134
■ 指導計画(全 10 時間) ■
おもな学習活動 中心となるアクティブ・ラーニングの視点
◆第 1 次 てこの働き (4 時間)
① てこの 3 つの点(1 時間)●� 棒をどのように使うと,小さな力で大きな力を出すことができるか話し合う。
②③④ てこの3つの点と手ごたえ(3時間)●� 物を小さな力で持ち上げるにはどうすればよいか,調べる。
◆第 2 次 てこの働きを利用した道具 (1 時間)
⑤ てこの働きを利用した道具(1 時間)●� てこの働きを利用した道具の支点,力点,作用点を調べる。
◆第 3 次 てこのつり合いと傾き (5 時間)
⑥ てこの傾き(1 時間)●� 実験用てこを使って,うでの傾きを調べる。
⑦⑧ てこがつり合うときのきまり(2 時間)●� 実験用てこがつり合うときには,どのようなきまりがあるのかを調べる。●� 実験結果から,てこがつり合うときのきまりについてまとめる。
⑨⑩ ものづくり(2 時間)●� つり合いを利用しておもちゃを作る。
【観察・実験】●�複数の児童で実験をする場合は,てこの操作・記録などの役割を交替しながら実験する。結果をグループで共有する。
【観察・実験】●�変える条件と変えない条件,実験結果がわかるように表を用いて記録し,結果をグループで共有する。 ⇒活動事例❶
【調べる】●�グループごとに身の回りにあるてこを利用した道具を探し,支点・力点・作用点に印をつけ,分類,整理し,表にまとめる。
【考察】●�実験の結果からどんなことが言えるか個々に考え,個の考えをグループで話し合い,全体でまとめる。
⇒活動事例❷
【活用】●�てこのどのような性質を利用したおもちゃか友達に説明する。
【問題の発見】●�指で押す,指で引く,おもりをつるす活動を個々に十分体感させ,友達と考えを話し合い,問題を見いだす。
【問題の発見】●�重い砂袋を直接持ち上げたり,棒を使って持ち上げたりして手ごたえの違いを十分に体感し,気付いたことを話し合うことで,学ぶ問題を発見する。
14
6 年
A
物質・エネルギー
6年 A (3)てこのはたらき
135
1.支点と作用点の位置を固定し,力点
の位置を変えて手ごたえの変化を調
べる。交替をしながら全員が体感し
て,結果を自分の表現方法で個々に
記録する。
2.支点と力点の位置を固定し,作用点
の位置を変えて手ごたえの変化を全
員が調べる。
3.自分の予想と手ごたえによって得た結
果を照らし合わせて個々に推論し,グ
ループで結果を整理し,共有化を図る。
1.結果をもとに,うでが水平になっ
てつり合うときのきまりを整理
し,一人ひとりが考える。
2.グループで発表し合い,自分の
考えを主張したり,他の児童の
考えに質問したりして,互いに
理解を深めながら,グループと
しての考えをまとめる。
3.グループごとの考察のまとめを
全体で発表し合い,結論を導く。
活動事例❷ 考察をする場面(8 時間目/全 10 時間)
活動事例❶ 観察・実験をする場面(3 時間目/全 10 時間)
支点,力点,作用点の位置関係に着目することが重要です。計画通りに条件制御が行われているか,互いに確認したり役割を交替したりしながら実験を行います。結果は手ごたえによる個人の感覚なので,グループでの十分な共有が必要です。
ここがポイント
自分の予想,結果の見通しが結果と一致しているか,不一致なのかを判断し,妥当となる見方や考え方を見いだします。つり合いのきまりがかけ算で表されることに気付くようにうながします。グループで話し合い,各自の考察を修正,改善し,高めていきましょう。
ここがポイント
■ アクティブ・ラーニングの実際例 ■
支点と力点が近いほうが,一気に持ち上げられるので,力も小さいと予想したけど逆だった。
力の大小を数字で表すことができれば,手ごたえの違いがはっきりするね。
左右の重さと目もりが同じならつり合うよ。
つり合いのきまりが,かけ算で表せるよ。
手ごたえと同じように,目もりの数が小さくなると重さが大きくなっている。
左うでが30×2で,右うでが 20×3でつり合う。
私は小さな力と感じるけど,他の人も同じなのか聞いてみたい。
作用点の考え方も同じかな。
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アクティブ・ラーニング Q&A
Q1 アクティブ・ラーニングを取り入れた授業改善でICT機器を活用すると効果的だと聞きましたが,具体的にどのようなICT機器が活用できるのでしょうか。
A1 今回,理科ワーキンググループの審議の取りまとめでも「主体的な学びや対話的な学びの過程でICTを活用することも効果的であり,授業時間の効率的な活用に資する」とあります。 アクティブ・ラーニングにおける授業改善においてICTを活用し,学びを深めていくことは大変重要だと考えます。 ICTとは「Information and Communication Technology」の略で情報通信技術のことです。 「学校教育におけるICT活用」とは,学校教育において,電子機器や通信機器を使って情報・知識の交流をするという意味です。ここでは,主なICT機器の活用例を紹介します。
(1)プロジェクターと実物投影機の活用 5年「天気の変化」の考察する場面で,グループで話し合った結果を考察し,実物投影機とプロジェクターを使って全体で共有化を図り,学びを深め合っている活用例です。
(2)電子黒板の活用 電子黒板を使った活用例では,5年「流水の働き」において,流水実験の様子を自分たちでデジタルカメラで撮り,観察結果を説明し,共有化を図っている活用例です。教師がデジタルカメラの動画機能で流れていく様子を撮影し,みんなで確認することにも有効です。
(3)タブレットPCの活用 6年「土地のつくりと変化」の問題把握と発見の場面で,数枚の地層の写真をタブレットで見ながら,大きくしたりして様子を観察させたり,インターネットで情報を収集したりして,グループごとに共通点や差異点を話し合い学習する問題を発見している活用例です。また,自分たちが実験している場面を写し,再現して考えを深めることできます。
このように,ICT機器を活用することによって視覚的に考えを共有化したり,振り返ったりして考えを深めていくと効果があるでしょう。
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Q2 アクティブ・ラーニングではグループの話し合いで,よく「ホワイトボード」や「付箋紙」などが活用されていることがありますがどんな効果があるのでしょうか。
A2 教師が「話し合ってみよう」「どんなことが言えるかな」などの発問をしてもなかなか話し合いが深まらない場面を見かけることがあります。 「ホワイトボード」は,グループでの話し合いを行うとき,互いの考えを可視化することで共通理解が図れ,話し合いを深めていくのに有効です。また,「付箋紙」「カード」などは,自由に移動でき,児童自ら考えを分類・整理・集約して話し合いを深めていくのに役立ちます。いくつかの具体例を紹介しましょう。
(1)問題づくりの場面で付箋紙を活用 4年「わたしたちの体と運動」については,前ページでも記載しましたが,別案で付箋紙を活用して問題把握・発見の場面を紹介します。ここでは,自分の腕を観察し,気付いたことを一人ひとりが付箋紙に書きます。その後,グループで各自が説明しながら画用紙に印刷した腕の図に互いに貼り,分類・整理・集約して話し合いまとめていく活用例です。
(2)観察の場面でホワイトボードと 付箋紙を活用 5年「物の溶け方」の単元で,観察した結果をグループで話し合い,ホワイトボードにまとめて考察しているところです。ホワイトボードは,表現した後でも,修正したり,加
えたりすることができるので,振り返りながら考えを深めるのに役立つ活用例です。
(3)分類・整理・集約にカードを活用 カードに自分の考えを書き,全体でまとめていくときの活用例です。カードは,移動が自由にできるので話し合いながら分類・整理・集約して話し合いを深めていくのに便利です。
学習のそれぞれの場面で効果的に活用を図ることは,アクティブ・ラーニングの3つ視点である「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の大きな原動力になると考えます。
<参考・引用文献>大日本図書 「小学校理科アクティブ・ラーニングに
よる理科の授業づくり」日置光久・星野昌治・船尾聖 著
大日本図書 「小学校理科授業づくりの技法」星野昌治・船尾聖 著
文部科学省 「次期学習指導要領等に向けた審議のまとめ」
文部科学省 「理科ワーキンググループにおける審議の取りまとめ」
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