現代建築作品のダイアグラム表現にみる建築の生成イメージ...
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現代建築作品のダイアグラム表現にみる建築の生成イメージ
A Study on the Spatial Formation in the Description of Diagram Drawings by Contemporary Architects
奥山研究室 09M30196 佐藤 剛 (SATO, Takeshi)
Keywords:ダイアグラム、生成イメージ、図面表現、現代建築家diagram, spatial formation, description of drawing, contemporary architect
2.ダイアグラムの配列形式ダイアグラムは、図 1にみられるように複数の図形によって
表現されており、それらのまとまり方からひとつの図として独
立したものを単位図 2) として定義する。ここでは、ダイアグ
ラムを単位図の配列形式とそれらの序列を示す記号の有無から
検討する(図 2)。まず単位図の配列形式をその規則性から整
理し、全ての単位図が一つの軸に沿って並べられたものを【一
軸】、二つの軸に沿って並べられたものを【二軸】、共通した軸
がみられないものを【軸なし】の3つに大別した。次に単位図
間を英数字や文字によって序列を示す文字記号、単位図同士の
関係を示す対応線、矢印を序列記号として捉えた。そして図 2
では単位図の配列形式と序列記号の有無が示されている。その
結果【一軸】が多くみられ、このとき序列記号をもたないダイ
アグラムが比較的多くみられた。
図 3 単位図を構成する図形の種類
図 2 単位図の配列形式と序列記号の関係
・線 ・面 ・線的 ・面的 ・空間的
記号図形平面図形 立体図形・ロゴ ・矢印
LIVING
TERRACE
KITCHENDINING
・添景 イラストレーション
図 1 分析例
No.044 「サイ・トゥオンブリ・ギャラリー」-レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ
単位図1
分析
単位図2
単位図3
単位図4
単位図5
※単位図と図形 単位図6
1軸
立体図形①立体図形②
・立体図形 -複数図形・分節線あり
・立体図形 -単数図形・分節線あり
・立体図形 -単数図形・分節線あり
・立体図形 -複数図形・分節線あり
・立体図形 -単数図形・分節線あり
・立体図形 -複数図形・分節線なし
分節線
序列記号
立体図形③
立体図形④
立体図形⑤立体図形⑥
立体図形⑦立体図形⑧
立体図形⑨
模式化
序列記号
No.9 コーニングの消防署 No.92 House 1 No.29 ポートランド舞台芸術センター
序列記号あり
一軸 (98)
67
78
二軸 (29)
序列記号なし
軸なし (18)単位図の配列形式
序列記号の有無
・矢印
・対応線単位図同士の対応を示すもの
・文字記号単位図同士の序列を示すもの
58
No.11 カルヴァリ ・ーバプティスト教会
40
16
No.113 オフィスビルディングK47
1 2 3
4 5 6
7 8 9
13
No.36 タウエル図書館
4
14
①’
②’
③
④
⑤’
⑥
⑦’
⑧
⑨
ダイアグラムを構成する要素を図形とする。図形の集合で、一つの図として独立したものを単位図とする
ひとつの軸に沿って全ての単位図を並べたもの
ふたつの軸に沿って全ての単位図を並べたもの
全ての単位図の並べ方に共通した軸がみられないもの
1.序建築家は、自身が設計した作品を発表する際に、複数の図によ
り構成されたダイアグラムを用いて、コンセプトを明快に表現
することがある。それらは、建築のかたちを単純な外形線のみ
で描くものや、様々な機能に対応可能である様子を色の変化に
よって示すものなど様々であるが、一つのダイアグラムを構成
する図相互の関係によってそれぞれ独自のコンセプトが表現さ
れているといえる。したがって、このようなダイアグラム表現
には、建築を生成する仕組みに関する建築家のイメージが示さ
れていると考えられる。そこで本研究では、建築作品のダイア
グラムを資料 1) とし、それを構成する複数の図の配列形式と
図相互の表現内容からみた生成に関わる操作との関係を検討す
ることで、設計論理を示す建築の生成イメージの一端を明らか
にすることを目的とする。
-
単位図の組合せNo. No.作品名 作品名 配列単位図の組合せ
ムラグアイダ形図面平
ムラグアイダ形図体立
立+平
記
1軸2軸
1軸
1軸
2軸
なし
1軸
2軸
軸なし
註)1.図形の数については記号図形を除いて考える。
2.複数図形において少なくとも一つの図形が分節線をもつ場合、分節線ありとする。
分節線を持たない単位図を含む 分節線を持つ単位図のみ
LIVING
TERRACE
KITCHENDINING
4
平面図形図形の種類
図形の数
記号なし 記号なし記号あり 記号あり立体図形 記号図形
18
○
37
○*
109
◎
50
◎*
19
◇
26
LACMA
◇*
27
❖
17
❖*
66
●
254
◉29
●*
25
◉*
3
◆*
4
*28
◆
52
*
図 4 単位図の描画形式表 単位図の組合せにみるダイアグラムの性格
082 デンタル・フォス *2 096 ハ-グの複合施設 *2
087 シルベル・タワ- ◎○* ●◇ 4 ◆024 フランクフルト大学生物学センタ-
107 フリ-ダム・タワ- ○* 6●* 12097 カンタブリア美術館 ● *●◇ *◇
◎4013 国立テクニカル大学実験棟◎4035 キャナル・プラス本社ビル◎4043 サンライズ・プレイス◎4046 アリカンテ大学図書館プロジェクト
◎*020 ペ -パ -・ミル劇場 2
089 ホテル・チュリン ◎2
109 ブリュッセルの文化センタ-の改築 ◎*2
125 ミュ-ジアム・プラザ * 4❖
142 ショッピング・モ-ル屋上の集住 ◎*3057 フィリップモリスU S A工場計画 ◎*3
061 ヴィラVPRO ◎7
076 リッチ/ゾ-イ・スタジオ 1997 ◎*4
098 サレルノ裁判所 ◎3
111 黒いアマガエル ◎*5074 液晶ガラスの家 ❖2
095 ロサンゼルス・カウンティ美術館 ◆*2
117 RVBオフィス ◇◇ *3
110 旧市街の住宅 ○3 ◎
126 ソウル国立大学美術館 * 2○2 ❖129 テ・パパ博物館増築計画 ○2 3◎* ❖
131 IKBインタ-ナショナル ○ 2◎2050 2000年の教会 ○* ◎5
062 ユトレヒトの二連戸住宅 ◎4◎ * 5
115 シアトル中央図書館 ◇ ○* *
❖*◎* ◎2○ *007 ノ-スレイク・コミュニティ・カレッジ 2
079 ハムリンのチャペルと図書館 ◎2◇
119 集合住宅VM ◇*4
123 ディ- &チャ-ルズ・ワイリ- シアタ- ◇*2139 オ-トモ-ション博物館 ◇*2140 ア-キテクチュア・ファ-ム ◇*2
145 ベル・ヴュ-・レジデンシィズ ◇*○ 3 2
063 RVUオフィス 1997 ○ ◎2 ❖*◇ ◎○2 2008 S.U.C.N.Y.体育施設
❖6036 コ-ルベ ルク・タウン・センタ-の改築
❖2◎14027 グ アルデ ィオ邸138 ポルシェ博物館 ◎ ❖11
◎9028 ヴ ィラ・メイヤ- 1986091 WTC・マスタ-・プラン ◇ 8 092 House 1 ◎4
060 ジャン・マリ- ・チバウ文化センタ- ◎*6
◎◎ *018 ラ・スペ ツィアのアパ -ト 3124 マックス・マイヤ-邸 ◎5 ◎*4
141 FlexiVilla ◇* ❖*42
○* ❖*◎4 ❖038 ゴ -マン邸
133 まつだい文化村センタ- ○* ❖*2 3
○* ❖2 ❖*021 フランクフルト工芸博物館
◎8○*025 リンゴット工場の改築113 オフィス・ビルディングK47 ○ ◎8
◎2○ *◎*022 サン・アントワ-ヌ 病院中央厨房 1985 22
◎*023 ロワラ・オフィス 4
◎*◎4026 ブ リスベ イン・リヴ ァ-サイド ・センタ- 4100 レイツェンヴェ-ンの高齢者住宅 ◇*6
067 スカイスクレ-パ-・スタディ 1996 ○5
○*18003 資源再生ファウンデ -ション・センタ-
016 共同墓地霊安所 4120 芸術の館 4073 V2-ラボ *2
011 ◉2 ◉*ヴィジタ-・レセプション・センタ-
◉2 017 セメントとガ ラスのパ ビ リオン計画案
◉014 多目的スポ -ツ施設 2
009 ◉2グ リニッジ のプ -ルハウス
106 BAK ◉4
130 新エストニア国立博物館 ◉6
048 ヴァ-ティカル・パ-ク ◆ 3
051 ロサンゼルス車両整備/保管ビル ◉5 3
064 サモラ古代芸術・美術館 ◉2
080 モアレ・ステア・タワ- ◉6
070 ダレサンドロ邸 1998 ◉2 2
◉3010 消防署◉3012 カルヴ ァリ-・バ プ ティスト教会
◉3015 ヘクスタ-彫刻ギ ャラリ-
◉3041 題名のない家
085 ピノ-現代美術館 ◉2102 ア-バン・テトリス ◉2
122 ポリ・ハウス ◉7
128 ヒンツァルト資料館 ◉3
136 ボストン現代美術協会 ◉2
137 メルセデス・ベンツ博物館 ◉10144 ハウスSB ◉*2
053 ビストロ・アンド・バ- ◉2
052 コロンビア大学学生センタ- ◉3
059 ソルトウォ-タ-・パヴィリオン ◉4066 ヴェネツィア建築大学新棟 ◉4
069 グラ-ツのミュ-ジック・シアタ- ◉9
071 ヘイツベリ・レ-ンのミュ-ズハウス ◉3
099 イクタス・ビジネス・センタ- ◉2 3
105 ヘッジ・ビルディング ◉3
◉ *001 ロイヤル ホロウェイ カレッジ化学実験棟
◉ *◉040 ア-バ ン・ア-ムズ
065 イリノイ工科大学学生センタ- * ◉*◆
084 ハウス・オブ・カ-ド住宅協会 ◆ *◆
● ◉033 コンピ ュ-タ・ラボ ラトリ- 3134 ガリシア地方歴史博物館 ◉2● 2◆
118 ヴァイレビル ◆*●* *
◉045 サイ・トゥオンブ リ・ギ ャラリ- 23◆081 王室図書館 ◉3◆
083 パラサイト ◆ ◉2 ● 2
094 ゼ-ダス社の技術開発センタ- ◆● 2
047 スファブルグ広場 1995 ◉4◆
108 30セント・メリ-・アクス ● *◉*
077 ポンピド-センタ- 屋上のレストラン ● ◉
093 ベルラレ・ミュ-ジアム ● **2 ◉ 3
112 タ-ンオン ●*● 4
114 ウィ-ンの住宅Ray-1 ● ◉5
121 クウェ-ト・ス-パ-・ブロック ●4 ●* 6◉
132 掩蔽壕に建つティ-ハウス ◉3●
135 ペニスコラ・コングレス・センタ- ◉4
143 ヨハネ・パウロ2世記念堂 ● ◉2
104 木造の小屋 ●2 ◉2◉*
068 ミルブルックの住宅 ● *◉*2
058 イリノイ工科大学キャンパスセンタ- ●5 ◉
◉3006 パ -ルズ ・レストラン◉3029 ジ ョ-ジ ア・パ シフィック・センタ-
◉6032 シンシナティ大学建築デ ザ イン学部棟
055 サ-ラム・ホ-ル・スク-ル ◉5072 メリフォント修道院博物館 1996 ◉8
103 ボディ・ハウス ◉4
◉5 031 クリック・アンド ・フリック・オフィス
◉3 044 国立通信制大学図書館 3
101 フォ-ルデイング・ウォ-ル ◉3 ◉*054 ロザリンド・フランクリン館 ◉ 2
◉5● 5030 ポ -トランド 舞台芸術センタ-●2 ◉11039 ハ-グ の住宅
056 プライス/オライリ-邸 ● ◉6
●* 3◉*10002 スプ リング ・ポ ンド ・アパ -トメント075 タ-ミナル・ラインの住宅 ●2 ◉*◉2 2
●3 ◉6034 モ-トン・ビ ルデ ィング
078 ミレニアム・ハット ◉2◆
◉5●037 タウエル図書館 2
◉5005 ブ ラックバ -ン
049 リッソン・ギャラリ- 1 1986 ◉5127 ガリシア文化都市 ◉9004 住宅 I ● ◉5
086 2002年スイス万国博覧会スイス館 ●16
116 海辺のユ-ス・ハウス ●* ●2 ◉2◉*3◆
◉2◆042 グ ラマシ-・パ -ク・アパ -トメント 2
088 スラウスハウス ● ◆ ◉2 4◆ ◉ 4019 カサ・フェルダ - 6
090 クゥエ-ト国家警察訓練施設 ◉6◆●5 5
単数図形
分節線なし
分節線あり
分節線なし
分節線あり
複数図形
588
150
438
76
100176
173 130303
400 61461
18 17
88
2 1
2
2
23 36
7 3
7 9
54
4
85
3. 単位図の描画形式にみるダイアグラムの性格3.1 単位図の描画形式 単位図を構成する図形の種類をそ
の内容から、二次元的に表現された平面図形、三次元的に表現
された立体図形、ロゴや矢印などの記号図形で捉えた 3)(図 3)。
それとあわせて図形を分節する線(以下、分節線)の有無も同
時に検討した。こうした、単位図に描かれる図形の種類、数、
分節線の有無の組み合わせから単位図の描画形式を捉えた(図
4)。その結果、平面図形、立体図形ともに記号図形をもたず、
単数図形で分節線をもつものが最も多くみられた。
3.2 単位図の組合せからみたダイアグラムの性格 単位図
の組合せからダイアグラムの性格を捉え、2章で分類した配列
形式との関係を検討した(表)。その結果、平面図形同士の組
合せ(以下、平面図形ダイアグラム)と立体図形同士の組合せ
(以下、立体図形ダイアグラム)で資料のほとんどが捉えるこ
とができた。両者を比較すると、平面図形ダイアグラムにおい
ては、記号図形をもった組合せが多く(36/54 作品)、分節線
をもつ単位図のみの組合せとそれ以外の組合せが同数程度みら
れた。一方で、立体図形ダイアグラムでは記号図形をもった組
合せが少なく(18/85 作品)、分節線をもつ単位図のみの組合
せが多くみられた。これは、ダイアグラムを平面的に捉えると
きには記号を用い、図式的に表現するのに対し、立体的に捉え
るときには分節線を用い、実体に近い表現をする傾向にあると
いえる。また、平面図形ダイアグラムには【二軸】の配列形式
をもつものが多くみられるのに対し、立体図形ダイアグラムに
は【軸なし】の配列形式が多くみられた。
4. ダイアグラムにみる建築の生成モデル4.1 単位図間の操作の種類 3 章で明らかにした単位図の
描画形式をもとに、単位図同士を比較し、変化の内容を読み
取ることで生成に関する操作を捉える(図 5)。操作の種類は、
単位図間において、図形が増えるものを付加、異なる図形同士
が結びつくものを統合、図形の輪郭の変化がみられるものを変
形、図形の分節線が増加するものや複数の図形に分かれるもの
を分割、異なる図形に置き換わるものを置換とし、5つで捉え
た(図 6)。
4.2 単位図間の操作の組合せにみる生成モデル 前節で捉
えた操作の種類をもとに、ダイアグラム全体の操作の組合せを
生成モデルとする(図 7)。生成モデルは、付加、統合の操作
のみによって、複数の単位図が集合してひとつの建築の成り立
ちが示されるものを集成モデル、変形、分割の操作のみによっ
て図形が変化し、建築の生成の段階が示されるものを変成モデ
ル、置換の操作のみによって、ひとつの建築の複数の現れ方が
-
アグラムが多くみられた。これは、それぞれの平面図形が異な
る建築の現れ方を示し、序列とは無関係な意味合いをもつため、
ひとつの軸に並べることで多面性を強調し、図式性の強い表現
を意図するものであると考えられる。最後に複合モデルにおい
ては、序列記号の有無に関わらず【一軸】と【二軸】に一定の
資料がみられた。これは要素に複雑な操作を与える際には、ひ
とつの軸の中で段階的に捉えるだけでなく、無性格な二軸の配
列の中に単位を並べることでそれぞれの操作を整理する傾向に
あると考えられる。
5.2 通時的傾向 さらに、全ての生成モデルと配列形式の
関係を通時的に検討した(図 9)。その結果、複合モデルにお
いて、序列記号があるときには、70~80 年代の作品の割合が
高くなるのに対して(6/11 作品)、序列記号がないときには、
【二軸】の配列形式の中に 00年代の作品の割合が高かった(6/8
作品)。これは、複雑な操作の組合せで建築の生成を捉える際
に、70~80 年代ではその操作の段階を序列記号によって明示
する傾向にあったが、近年においては、序列記号がなく、操作
の段階を明示しないといったそれまでの生成イメージとは異
なった傾向を示すものであると考えられる。さらに、集成モデ
ルにおいては、序列記号ありの【軸なし】に 90年代以外の作
品が少なかった(3/12 作品)。これは、序列記号を用いること
で不規則な配列をもった要素同士の関係を明示し、その集合と
して建築を捉えることが 90年代の集成モデルの捉え方のひと
つの特徴であると考えられる。また変成モデルは、資料の 2/3
が(20/30 作品)00 年代の作品であった。これは、建築を変
示されるものを範列モデルとし、それらが複合するモデル(複
合モデル)で捉えることができた。
5. ダイアグラムにみる建築の生成イメージ5.1 ダイアグラムの配列形式と生成モデルの関係 2 章で
捉えた配列形式、及び序列記号の有無と 4章で捉えた生成モ
デルの関係を検討した(図 8)。まず、最も資料数の多い集成
モデルにおいては、序列記号の有無に関係なく【一軸】の配列
形式に資料が偏り、その大半が立体図形ダイアグラムであった。
これは、建築を要素の集合として捉える際には、ひとつの軸に
沿って配列することで、建築の実体に近い要素の立体的な位置
関係を明示することを意図したものであると考えられる。また
他の生成モデルと比較して、序列記号ありの【軸なし】に資料
が多くみられた。これは本来ひとつの軸では捉えきれない建築
がもつ複雑な部分同士の位置関係を序列記号を用いることで明
確にするものであると考えられる。次に、変成モデルにおいて
は、集成モデルと同様に【一軸】に資料が集中した。これは、
要素を変化させていくことで建築の生成を捉える際には、単位
をひとつの軸に沿って配列することで変化の段階を捉えやすく
することを意図したものであると考えられる。また平面図形ダ
イアグラムと立体図形ダイアグラムの資料の割合を検討する
と、序列記号をもつ場合には平面図形ダイアグラムであるもの
に資料の偏りがみられた。これは、変化させる要素を図式的に
捉えた場合に、配列に加え、序列記号を用いることにより操作
の順序を強調する傾向にあると考えられる。範列モデルにおい
ては、序列記号がない【一軸】に資料が集中し、平面図形ダイ
③
図 5 3章の分析例 図 6 単位図間にみる操作の種類 図 7 操作の組合せにみる生成モデル
AU0504No.118 「ヴァイレビル」 PLOT
付加 集成モデル 複合モデル
変成モデル
範列モデル
変形
分割
統合
置換
変形、分割のみによって関係づけられたモデル
単位図 1
単位図 2
単位図 3
図形の分割
図形の変形
分割
分割
変形
変形
変成モデル記号化
○…単位図を構成する図形の数
◆*
●*
*
●* ◆* *
67
30
21
27
10 1011
919
1
4158
17 19
8
①
①’ ④⑤
⑥⑦
①’ ③’④’
⑤’⑥’
⑦’
②
集成×変成モデル17
7
2
1
2
2 21
5
4
1
1 1
5
集成と変成が複合するモデル
集成と範列が複合するモデル
2
1
変成と範列が複合するモデル
集成と変成と範列が複合するモデル
複合化
置換のみによって関係づけられたモデル
付加、統合のみによって関係づけられたモデル
No.143 「ロ-マ教皇ヨハネ・パウロ2世記念堂」
No.119 「集合住宅VM」
No.007 「S.U.C.N.Y.体育施設」
付加のみ 統合のみ単一操作 複数操作
単一操作 複数操作変形のみ 分割のみ
単位図間において図形が増えるもの
単位図間において異なる図形同士の対応関係がみられるもの
単位図間の図形において輪郭の変化がみられるもの
単位図間の図形において分節線が増加するもの、複数の図形に分かれるもの
単位図間において図形の数が同数で、部分的に異なる図形に置き換わるもの
◆ ◆
◆ ◆
◆ ◆
◆
◆ ◆
-
した場合、序列記号を用いず、図の対応関係や生成の段階を明
示しないといった従来の捉え方とは異なる新たな表現が明らか
になった。このことは、建築を複雑な操作が展開するプロセス
の中で捉えようとする場合に、ひとつの流れの中で捉えるので
はなく、いくつかの操作を並走させることによって捉えようと
する思考の現れであると考えられる。またそれと同時に、変成
によって建築の生成を捉える割合が増えており、建築が生成す
るそのプロセスを重要視するといった近年に特徴的な2つの傾
向が明らかになった。
註 :1)資料は、建築ジャーナリズムにおいて国際的な事例を取り扱っている「a+ u」1972 年から 2009 年を資料対象とし、その中で、複数の図によって構成されたダイアグラム表現が見られる作品 145 作品を資料対象とする。2)単位図は 145 作品の中から、768 の単位図を抽出した。 3)同一の図形が反復するものに関しては群とし、単一の図形として捉える。
化の中で捉えることが近年における建築の生成イメージのひと
つの特徴であることを示すと考えられる。
6. 結以上、ダイアグラム表現にみる建築の生成イメージを単位図の
配列形式と生成モデルとの関係をもとに、描画形式とあわせて
検討した。単位図の描画形式の比較から、ダイアグラムにみる
生成モデルを集成モデル、変成モデル、範列モデルおよびそれ
らの組合せによる複合モデルで捉えることができた。また配列
形式は図をひとつの軸にそって並べるものが最も多くみられ、
それが図形の立体的な位置関係や変化の過程を明示するダイア
グラムの基本的な表現形式であることがわかった。それに対
し、図がグリッド上に配列されるものやランダムに配列される
場合、序列記号を用いることで図の対応関係を明解に示すもの
が多いが、近年においては複雑な操作で建築の生成をイメージ
23
図 8 単位図の配列と生成モデルの関係 図 9 通時的傾向
095 * *
144 ◉* ◉*
096 **
109 ◎* ◎*
062 ◎2 ◎2◎*5
◎◎3098
110 ○2 ○ ◎
063 ○ ◎◎ ❖*
112 ●* ●4134 ◉ ◉ ● ● ◆
131 ○2◎2
058 ●5◉
●*◉*108
077 ●◉065 ◆* ◉*
123 ◇* ◇*
118 ●* ◆* ❖*
104 ●◉●◉*◉
126 ○❖*○❖*
119 ◇* 2 ◇* ◇*
079 ◎ ◎ ◇
❖* 2125 ❖* ❖*
035 ◎◎3057 ◎* ◎* 2
048 ◆ 3❖
089 ◎◎
074 ❖❖
001 ◉❖*
102 ◉◉
073 ❖* ❖*
008 ◇ ◎○2 2007 ❖*◎* 2 ◎2 ○*
117 ◇* ◇* 3111 ◎* ◎* 4
127 ◉3 ◉3 ◉3116 ●* ●◆ ◆2 ● ◉2 ◉*
088 ●◆◉ ❖4 ◉038 ○* ❖* ◎ ❖ ◎3036 ❖ ❖ ❖ ❖3
091 ◇ ◇◇ 2 ◇5
107 ○* 6 ●* 6 ●* 6
018 ◎◎* ◎* ◎*
097 ●* ● ◇*◇090 ◉ ◉5 ◆5●5
021 ○* ❖ ❖ ❖*019 ◉4◆2 ◆2 ◆ ❖2
145 ◇◇ ◇ ○*○*076 ◎* ◎*2 2
120 ❖❖ ❖2
050 ○* ◎ ◎2 ◎ ◎043 ◎ ◎3
013 ◎◎ ◎ ◎
083 ◆◉ ❖ ●2 ◉
024 ◇ 2 ◆
094 ●◆2
004 ●◉◉ ◉ ◉ ◉
025 ◎8○*022 ◎* 2 ○* 2◎2
124 ◎5◎* 4092 ◎◎3060 ◎* ◎* 5
133 ○* 2❖* 3
032 ◉◉5
093 ●* ●* ◉* ◉* ◉*067 ○○4
023 ◎* ◎* 3
026◎* ◎* ◎* ◎* ◎ ◎ ◎ ◎
10
2
1
2
1
42
2
12
2
No.052 コロンビア大学ラーナ-学生センタ-
No.108
30セント・メリ-・アクス
No.034
モ-トンビルディング
○2 ○ ◎- -資料No.操作の種類
単位図の構成と数凡例
016 ❖❖3
085 ◉◉
053 ◉◉
136 ◉◉
122 ◉◉6
137 ◉ ◉9
071 ◉◉2
041 ◉◉2
012 ◉◉2 015 ❖◉3
132 ●◉3 135 ◉◉ 3
143 ●◉2
087 ◎○*●
040 ◉* ◉
064 ◉2❖080 ◉◉ 5
130 ◉6❖
014 ◉2❖011 ◉2❖◉*
047 ◆❖ ◉4051 ❖3◉5045 ◆ ❖3 2◉
106 ◉◉3❖
099 ◉◉❖3 105 ◉◉2
052 ◉◉2
010 ◉◉2
066 ◉◉3
103 ◉◉3
059 ◉◉3046 ◎◎3
069 ◉◉8061 ◎◎6
114 ●◉5142 2◎* ◎*
020 ◎* ◎*
082 **
070 ❖2◉2
009 ◉2❖
017 ◉2❖
115 ◇* ○*
068 ●* ●* ◉*
033 ❖ 3●◉
081 ◆❖ ◉2 ◉
128 ◉2 ◉
24
15 14
67 30 21 27
40
13
14
58
16
67
78
121
129
集成モデル 変成モデル 範列モデル 複合モデル
りあ号記列序
しな号記列序
113 ◎8○
055 ◉◉4
005 ◉◉4
029 ◉3❖
072 ◉◉7056 ●◉6
054 ◉ 2❖044 ❖3◉3
003 ○* ○* 17
031 ◉5❖
101 ◉*❖ ◉3
039 ●2◉11034 ●3◉6
037 ◉5❖2 ●
002 ●*3◉*3 ◉*4 ◉*3
042 ◉◉ ◆◆049 ◉◉4
078 ◆❖◉◉
006 ◉◉2
100 ◇* ◇* 5030 ●5◉5
084 ◆* ◆
4
5
7
1
平面8 立体58 平 17 立 14 平 16 立 4 平 13 立 9
6全体
‘70~
‘80~
‘90~
‘00~
集成 変成 複合範列
145作品
25 23 167
29 475
90年代に多くみられる
028 ◎◎8027 ❖ ◎ ◎ ◎ ◎82 2 2 2
139 ◇* ◇*
140 ◇* ◇*
138 ◎ ❖ ❖10086 ●● 15
70’s
70’s
70’s
70’s
80’s
80’s
80’s
90’s
90’s
90’s
90’s
90’s
90’s
00’s
00’s
00’s
00’s
00’s70’s
70’s80’s
00’s
80’s
80’s
90’s
00’s
90’s
00’s
00’s
90’s
80’s
90’s
00’s
00’s
70’s
90’s
075 ●● ◉* ◉ ◉*◉00’s
00’s
00’s
00’s
70’s
70’s
8
1軸
2軸
軸なし
1軸
2軸
軸なし4
4
9 4 2
2 3 5
67 272130
生成モデルの通時的傾向
70 ~80年代に多くみられる 141
に多くみられる00年代
に多くみられる00年代
◇*❖* ◇*❖* ❖*❖*
○2 3◎* ❖
●●●● ●* ●* ●* ●* ◉3
資料No.図註) は右の図の典型例をあらわす