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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた 提 言 書 国土交通省東北地方整備局 東北圏広域地方計画推進室

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Page 1: 先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた 提 …先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書 5 強み: 〇人口集中地区(DID地区)の面

先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた

提 言 書

国土交通省東北地方整備局

東北圏広域地方計画推進室

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四角形
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四角形
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テキスト ボックス
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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書

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1.提言書策定の背景と目的

(1)東北圏広域地方計画について

■計画区域

青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、

福島県、新潟県

■東北圏の将来像

■将来像の実現に向けた広域連携プロジェクトの推進

広域連携プロジェクトとは・・・

「東北圏の新しい将来像」実現のための、4つの基本方針、7つの戦略目標に対応する

15 の取組のことであり、計画期間において重点的に進めていくこととされている。

そのうち、各圏域で、先行事例の経験を他の広域連携プロジェクト

に応用することで計画の推進を加速・効率化することを目指し、「先

行的なプロジェクト」を選定している。

東北圏広域地方計画とは・・・

平成26年7月に策定された「国土のグランドデザイン 2050」等を踏まえた新たな「国

土形成計画(平成27年8月閣議決定)」に基づき、全国8ブロックについて、国、地方

公共団体、経済団体等で構成する「広域地方計画協議会」における検討・協議を経て、概

ね10年間の国土づくりの戦略を策定(平成28年3月29日 国土交通大臣決定)。

東北圏

<東北圏の位置付け> ・人口:約 1,135 万人 ・圏域内総生産額:約 40 兆円 ⇒日本全体の約1割の人口・経済規模

東北圏の将来像としては、「震災復興から自立的発展へ」とし、震災復興を契機に国内外

に誇れる防災先進圏域の実現を図るとともに、日本海、太平洋2面活用による産業集積、

インバウンド増加により、人口減少下においても自立的に発展する圏域を目指す。

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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書

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■将来像実現を推進するための先行的なプロジェクト

~バイオ・医療産業等を核にした東北圏地域づくり強化プロジェクト~の推進

■取組内容

(2)東北圏における先端産業を核とした地域づくりの意義

先端産業を核とした地域づくりにより、東北圏にもたらされる主な効果としては、次のような

ものが考えられる。

⼈⼝減少・少⼦⾼齢化の進展により、このままだと将来の東北圏は・・・ 都市施設や農⼭漁村集落の存続が困難になり、地域活⼒が低下

地域経済の 活性化

若者をはじめとした転⼊者の増加

交流⼈⼝の 拡⼤

まちなかの にぎわい向上

⼈⼝流出に ⻭⽌め

外国⼈⾼度⼈材の転⼊・定着

先端産業都市としての個性確⽴

雇⽤機会の 増加

東北圏内において、バイオ研究開発拠

点、医療機器産業拠点等の先端産業拠

点整備が進展していることや、リニア

中央新幹線等の整備により、東北圏と

近畿圏等のバイオ・医療産業分野の連

携可能性が拡大している等の背景か

ら、「バイオ・医療産業等を核にした

東北圏地域づくり強化プロジェク

ト」が先行的なプロジェクトに選定さ

れ、以下の取組を推進している。

先端産業の集積 先端産業拠点におけるまちづくり

拠点を中⼼とした 効率的なまちの形成

〇先端産業拠点の整備及び関連する交通インフラ整備の推進

〇先端産業に従事する外国人を含む人材等の来訪・居住に対応した、生活・滞在のしやすいまちづくりの推進

〇先端産業拠点等の整備と合わせ、周辺の人口減少地域における交流人口増加に向けた施策など、広域的な視点からの効率的な地域づくりの推進

都市施設の利便性の 向上

周辺農⼭漁村への 活⼒の波及

東北圏の各地域の⾃⽴的発展の実現

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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書

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(3)本提言書の目的

これまでの、国内及び海外のバイオ・医療産業等の先端産業集積都市の先進事例調査から、そ

こにしかない高い技術水準やキャリアアップの可能性など、高度人材を惹きつける魅力的な職場

があれば、人口減少下の地方都市でも人を呼び込み地域の活力を維持・再生できる可能性がある

ことが分かった。

本提言書では、先端産業の誘致をまちづくりや地域振興の機会と捉え、外国人を含めた多様な

高度人材やその家族等の定住化・交流人口の拡大、及びそれらを通した地域の自立的発展を実現

するための効果的なまちづくりの取組やインフラ整備の具体的方策を提案している。さらに、先

進事例において先端産業を核とした地域づくりに成功している要因分析を踏まえて、東北圏にお

ける先端産業を核とした地域づくりのあり方を提案する。

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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書

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2.先端産業を核とした地域づくりに向けて活かすべき東北圏の強み

◆強み:

〇復興加速のため格子状骨格道路

ネットワークの整備が急速にな

され圏域内での交通アクセスが

強化されている。

〇最寄りの 100 万都市へのアク

セス性が高い。

〇東京までのアクセス性が他の地

方圏と比較し高い。

〇各県に国際航路を持つ空港があ

り、主要都市からそれらへのア

クセス性が高い。

<事業者に対する主なメリット>

圏域内での移動や物流効率化に留まらず、リニ

ア中央新幹線等を含む圏域外も含めた国内の交

通機関の発達・高速化によりスーパー・メガリ

ージョンとの連携が期待できる。

<人材に対する主なメリット> 業務上の移動に留まらず、余暇を含めた日常の移動範囲が広がり、生活環境への満足度向上が期待できる。

◆強み:

〇高速道路や港湾等の交通基盤に近接して、医療

機器産業、自動車関連産業等の集積が進んでい

る。

〇大学・研究所等の高度で多様な知的基盤が形成

されている等、産業集積の拠点となり得る地域

が点在する。

〇世界最先端の国際研究拠点となり得るILC

の誘致にむけた取組が進んでいる。

<事業者に対する主なメリット> 集積による多様な関連産業との相乗効果、それによるイノベーションの促進等、ビジネスチャンスが豊富である他、企業の生産性と競争力の強化が期待できる。

<人材に対する主なメリット> 科学技術への関心や理解の増進の機会が豊富である他、学術都市へと発展することによる居住環境の質の向上が期待できる。

先端産業を誘致し、産業拠点の集積を促進するにあたっては、事業所を対象とした産業

誘致に係る活動のみならず、外国人を含めた多様な高度人材に「選ばれる」地域づくり、

すなわち誰もが働きやすく、住みやすい環境づくりが重要となる。これに向けて事業者や

人材に訴求する強みとなる東北圏の地域特性について取りまとめた。

都市圏・国際空港へのアクセス性の高さ

ものづくり技術・高等教育機関の立地

▲三陸沿岸道路の整備による

南北のアクセス時間の短縮

▲各圏域における

東京までのアクセス性

199  212 

249 225 

241 

0

50

100

150

200

250

300

東北圏 北陸圏 中国圏 四国圏 九州圏

都庁までの平均所要時間

地方圏域平均

(分)

▲医療機器産業の集積

出典:三陸沿岸道路の整備効果

(国土交通省仙台河川国道事務所)

※都庁までの所要時間:Google マップで算出される各都

道府県庁から都庁までのアクセス時間(平日朝 10 時到

着、自動車による移動)で最も短い時間

出典:東北圏広域地方計画 参考資料

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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書

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◆強み:

〇人口集中地区(DID 地区)の面

積規模が全国と比較すると小

さく、市街地の規模が小さい。

〇「通勤時間 1 時間以上の割合」

は全国 14.6%に対し、東北圏

は 4.7%である。

<事業者に対する主なメリット> 従業者に支給する交通費の軽減の他、従業員の通勤ストレス軽減等による生産性向上等が期待できる。

<人材に対する主なメリット> 市街地の規模が比較的小規模なことから、通勤・通学先に近く、生活利便性の高いまちなかでの居住ニーズへの対応が可能となる。

◆強み:

〇格子状骨格道路ネットワークの整備により、

圏域内の高速道路による移動性が向上。

〇高速道路 IC 数は、3大都市圏を除くと最多。

〇復興道路、復興支援道路の大半が無料区間。

<事業者に対する主なメリット> ・移動・物流の効率化 <人材に対する主なメリット> ・業務上・余暇を含めた移動範囲の拡大 ・生活環境全般に対する満足度向上

◆強み:

〇日本海対岸諸国に近接し、北米西岸に面する

ことから、アジア・ユーラシアダイナミズム

と北米航路の振興等効率的な物流網を構築で

きる可能性。

<事業者に対する主なメリット> ・国内外との結びつきの強化 ・物流効率化等による国際競争力の強化 <人材に対する主なメリット> —

◆強み:

〇青森ねぶた、盛岡さんさ踊り、仙台七夕、秋田

竿燈、山形花笠、相馬野馬追、長岡まつり等各

地の祭りが豊富。

〇男鹿のナマハゲや津軽三味線等、伝統や長い

歴史と独特の風土に培われた文化も存在。

<事業者に対する主なメリット> — <人材に対する主なメリット> ・暮らしの豊かさの向上 ・豊富な交流機会の享受

◆強み:

〇東北圏の総面積は約8万㎢(日本全体の約 2 割)

〇水資源賦存量は全国の 2 割弱。太陽光発電や

風力発電など、再生可能エネルギーのポテン

シャルが豊富。

<事業者に対する主なメリット> ・事業用地の確保のしやすさ ・資源の多様な利用可能性 <人材に対する主なメリット> ・暮らしの豊かさの向上

◆強み:

宮城県の商業地を除き、東北圏のいずれの県も

住宅地、商業地、工業地の全国平均を下回って

いる。(「令和元年都道府県地価調査」より)

<事業者に対する主なメリット> ・用地取得にかかるコスト削減 <人材に対する主なメリット> ・生活の基盤を置くのが他地域より容易

職住近接の実現性の高さ

日本海・太平洋の両面活用

豊かな日本文化に身近に触れられる生活

広大な圏土と豊かな自然環境

高速道路の利便性の高さ

4.0%4.9%

8.0%

3.8% 3.7%5.2%

3.5%

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

⻘森県岩⼿県宮城県秋⽥県⼭形県福島県新潟県

全国平均:14.6%

東北圏平均:4.7%

▲東北圏の通勤時間の状況

東北圏,

1123.63

その他, 

11662.69

人口集中

地区総面積

12786.32㎢

▲東北圏の DID 地区面積

地価の低廉性

出典:平成 28 年社会生活基本調査

出典:平成 27 年国勢調査

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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書

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3.先端産業集積から地域振興へと展開するための具体的方策や留意点

ここで提示する具体的方策は、以下を踏まえ取りまとめたものである。

■具体的方策の体系 事例

共通

1.戦略的な都市構造構築、機能配置、交通ネットワーク形成等、防災対策等、都市

全体のマスタープランの作成・推進

まちづくり

2.生活利便施設(買い物環境/余暇・レジャー/公園施設)

職場付近/まちなか居住地付近など、地域に応じた適切な施設誘導 事例①

余暇を楽しむ施設の充実(公園等)

コミュニケーションの場の提供

3.都市機能等(都市基盤整備)

基盤となる都市機能の充実に関する取組

中心市街地のにぎわいを生むまちづくり 事例②

4 住まい(居住地/住居の質/住居形態)

多様なニーズや家族構成に応える住宅の選択肢の充実

交通

5.広域交通(空港/新幹線/高速道路・港湾)

職場や居住地から広域交通結節点間の交通の利便性向上

広域交通手段の低額化、利便性向上

6.地域交通(自家用車/公共交通/徒歩・自転車)

公共交通機関の利用促進による地域公共交通の維持・充実

地域公共交通ネットワークの抜本的改善

歩行者・自転車の通行環境向上

移動環境のバリアフリー化

待合環境の改善や ICT 化等による利便性向上

【参考】

その他ソフト施策

7.生活環境全般 住まい探しや契約、市役所・銀行・通信等手続きに関するサポートの充実 法人契約等による外国人の居住契約の容易化 市役所・病院・銀行・運転免許取得等公共サービスにおける外国語対応、手続きの簡素化 飲食店等各施設における外国語表記対応 外国人居住者やその家族の暮らしやすさ改善に資する取組 日本語習得や地域ルールの学習、地域参加等に係るサポートの充実 高度人材の受入れ・定着を一元的にサポートする組織・体制の構築 8.先端産業集積によるシナジー効果の発揮 行政と大学・研究機関等が連携する推進体制構築 スタートアップからスケールアップまで成長段階に応じた多様な支援 入居企業同士の協業のコーディネートや交流の場の提供

既述の東北圏の強みを活かして、外国人を含めた多様な高度人材が働きやすく、住みや

すい環境づくりを進めるための具体的な方策について今後先端産業集積を進める上でのま

ちづくり分野及び交通インフラ分野で直面し得る可能性のある課題やその具体的方策につ

いて以下の通り提案する。

〇東北地方における外国人高度人材へのヒアリング結果

〇国内外のバイオ・医療等の先端産業拠点を有する地域でのまちの形成過程における課

題の表出とその対応策に関する分析

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職場付近/まちなか居住地付近における地域に応じた適切な施設誘導に関する取組

事例1

◆背景・課題

◆取り組まれた具体的方策

◆事例から得られた示唆

■直面し得る課題:勤務地周辺における生活利便施設のニーズへの対応

■取組上のポイント・留意点

〇長浜サイエンスパークは JR 北陸本線田村駅(以下、田村駅)の西側に位置している。

〇田村駅周辺地域は、長浜市都市計画マスタープランにおいて、人口流出を止めるダム機能と

本市への流入を受け入れる機能を持った都市拠点「文教・産業創造拠点」として位置づけら

れ、計画的な市街化の形成を目指す地域とされている。

〇田村駅は以下のような課題を抱えていた。

・通勤・通学者が 1 日 1,000 人を超え利用は多いものの、地

上駅であることから市街地を分断、駅周辺における人の流

動・回遊性が阻害。

・田村駅周辺には、店舗や日常のサービス施設等の立地がな

く、駅前の生活利便機能が不足。

・駅西側は学術目的の交流は少なくないものの、滞留する機能

的な環境空間がないため、魅力や賑わいに欠けている状況。

上記計画内で以下を実施。

・田村駅を中心に高齢者でも移動可能な範

囲である徒歩 600m 圏内を対象に都市

機能や居住機能を誘導・集約化

・田村駅を中心とするまちづくり事業を検

討するため、駅の将来利用者見込みの算

出による規模・対象の絞り込み、地域住

民や利用者のニーズ把握のためのワー

クショップ、アンケートを実施。

【田村駅利用者の周辺施設・設備に関するニーズ】 ・通勤通学の行き帰りに寄れる「コ

ンビニ」 ・電車の待ち時間を過ごせる「カフ

ェ」「待合所・ベンチ」 ・「公園・緑地」 ・駅の東西を渡れる「自由通路」

(H29 田村駅利用者アンケートより)

居住地周辺に留まらず、勤務地と最寄り駅周辺をつなぐエリアにおける生活利便施設等の

配置を検討することが重要。

勤務地及びその最寄り駅周辺の生活利便性の向上が働きやすさにも資すると考えられる

ため、集積地の従事する人材の多様なニーズを把握することが重要。

▲田村駅を中心とした機能エリア図 「田村駅周辺整備基本計画」(平成 30 年)より作成

田村駅を中心とした周辺地域の計画的な市街

化を誘導するための「田村駅周辺整備基本構

想」「同基本計画」を策定。

【駅周辺における人の流動・回遊性向上】

・高齢者、車いす利用者でも安心・安全に利

用できる東西を結ぶ自由通路の整備

・駅利用者のアクセス性向上に向けた駅への

歩行者ルートの整備 等

【生活利便機能の向上】

・生活利便機能誘導エリアにおける商業施設

の立地誘導

田村山風致エリア

生活利便機能

誘導エリア

学術・新産業

集積エリア

居住誘導エリア

既存集落エリア

【日常的な賑わい創出】

・駅南駐車場整備とイベント等での活用

・駅前広場整備

・既存の卸売市場との連携による魅力づくり等

【滋賀県長浜市の場合】

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中心市街地のにぎわいを生むまちづくりに関する取組

事例2

◆背景・課題

◆取り組まれた具体的方策

【中心市街地メインストリートにおける歩行者ゾーン確保と賑わいづくりのための機能充実】

・中心市街地のメインストリートは車の乗り入れができない歩行者専用のゾーンとし、通りに

は銀行やギャラリー、レストラン、カフェ、路上の図書館などの生活機能に加え、芝生やベ

ンチ等のくつろげるオープンスペースを充実させている。

・屋外エリアではオープンスペースのデザインに関する規定が位置付けられており、ベンチや

植栽の設置など空間形成の留意点について事例、ガイドラインが整理されている。

〇ドイツ・エアランゲンでは、戦後のモータリゼーションの時期には中心市街地のメインスト

リートに自動車が走り、宮殿広場は駐車場として利用されるなど、人々にとって快適な空間

利用がされていなかった。

〇一方で、中世からの市街の名残で、中心市街地はそれほど広くない範囲に市役所機能や広場

等の有効に活用できる機能やスペースが整っており、活用可能性を有していた。

〇先端産業クラスターであるメディカルバレーの拡大に伴い移住者が増加したが、その定着に

向けて、まちの魅力向上や賑わいの場の形成が課題であった。

◆事例から得られた示唆

■直面し得る課題:魅力的なまちの形成による人材の定着

■取組上のポイント・留意点

生活機能の充実や居心地のよい空間形成など、多様な人材にとって魅力的な市街地を生活

圏内に確保し、産業クラスターに従事する人々やその家族、移住者などの定着に寄与する

ような取組が必要。

エアランゲンの医療技術を活かした健康まちづくりの取組例のように、各種機関が連携し、

高齢者や障がい者、子育て世帯など多様な世代に優しいまちづくりを推進するなど、先端

産業を活かした取組が強み・個性となる。

出典:エアランゲン市 HP

▲高齢者にやさしい規格のシニアベンチ

【医療技術産業を活かした健康まちづくりの取組】

・まちの高齢化や滞在者への対応を背景に、特に高齢者に

優しい高さの低い規格のベンチをメインストリートに

設置・増設。

・障がいを持つ方々や子育て世帯でも街歩きが可能とな

るようバリアフリー施設を示した中心市街地のマップ

を発行。

市内の生活者が生活環境で重視する項目は

以下の通り

・清潔さ、飲食店の多さ、ショッピングの快

適さ、対台地としての質・雰囲気、店の種

類、座れる場所 など

メインストリートの歩行者ゾーンに毎週 1

回以上訪れる人は約 41%

出典:ライフ・イン・エアランゲン 2014 より作成 出典:エアランゲン市 HP 公共空間における都市デザインのパンフレット

「BAUREFERAT STADT ERLANGEN」

▲中心市街地の様子/推奨する空間形成のイメージ

【ドイツ/エアランゲンの場合】

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先端産業を核とした東北圏地域づくりに向けた提言書

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4.東北圏における先端産業を核とした地域づくりのあり方

国内外において、先端産業拠点形成から人口増加等の波及効果をもたらしている優良先

進事例には、成功要因と考えられる共通点がある。そのうち、特に重要な4つの要因を踏

まえて、東北圏における先端産業を核とした地域づくりのイメージを示す。

国内外の先進事例にみられる、先端産業拠点形成から人口増加等の波及効果をもたらした

特に重要な4つの要因

① 研究機関や高等教育機関を核に、中小・ベンチャー企業群が生まれる先端産業クラスターが形成

され、コラボレーション・イノベーションが継続的に誘発される仕組みを内包していること。

② 先端産業や研究機関立地に際して、国際空港等の広域交通結節点や母都市への交通アクセス強化、

周辺道路等のインフラ整備や然るべき防災対応がなされたこと。

③ 周辺市街地と一体的な居住や通勤の利便性が向上し、産業クラスターの通勤圏域全体での人口増

加及び母都市のベッドタウンとしての発展等によって、圏域外との相乗効果が生まれ人口が増加

していること。

④ 旧来のまちの雰囲気や環境等を活かしながら、人材の定着に資する魅力的なまちづくりやソフト

施策に取り組んでいること。

東北圏における先端産業拠点を核とした地域づくりのポイント(案)

既存の交通網や他都市との関係性を踏まえ、どの広域交通ネットワークを強化すべきかを見

極める

先端産業拠点と既成市街地が離れてしまう場合は、両者間の交通アクセスの確保に特に留意

する

新たな居住者と元々の住民双方の利便性向上の観点から、先端産業拠点と既成市街地のそれ

ぞれにおいて、生活利便施設や多様な住環境、地域公共交通を充実させる

地域の本来の個性を活かしつつ、災害安全性が確保され、先端産業が地域に調和するまちづ

くりを進める

行政等地元組織と、大学・研究機関等先端産業集積の中心的な機関とが連携し、研究環境・

生活環境の整備・充実に継続的に取り組む

▲東北圏における先端産業を核とした地域づくりのイメージ

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【事例】オランダ/ライデン・バイオ・サイエンスパーク(LBSP)の取組