水だけを用いたイカ中骨からの βキチン製造方法 - …...3 ・発生量...
TRANSCRIPT
1
水だけを用いたイカ中骨からの
βキチン製造方法
一関工業高等専門学校 物質化学工学科
教授 戸谷 一英
(信州大学繊維学部 准教授 長田 光正)
2
キチンとは
O
H
HO
H
OHHO
H OH
H
OCH3
O
H
HO
H
NHHO
H OH
HCn
n
キチン
(基本単位は
N-アセチルグルコサミン) 地球上で2番目に多い
バイオマス資源
セルロース
(基本単位はグルコース) 地球上で一番多い
バイオマス資源
3
・発生量 年間100トン
・貴重なβキチンや
ペプチドを含む
イカ中骨
背 景
スルメイカ
三陸地域の水揚げ量
2万トン/年
加工品(塩辛など)として出荷
イカ中骨の成分
β-キチン
(約30 wt%)
タンパク質
(約70 wt%)
無機成分
(約1 wt%)
4
② N-アセチルグルコサミン
(NAG、関節症痛、美肌効果)
糖転移反応 キトビアーゼ
③ キチン2糖(NAG2) (NN’-ジアセチルキトビオース)
キチナーゼ
イオン交換樹脂
結晶化 SEM, X 60,000
100 nm
図 三陸産イカ中骨を原料とする機能性素材の製造
平行構造,低密度(低結晶性),水和水有り,簡単に水で膨潤,酵素分解容易
生体親和性高い!
イカ中骨
脱灰(酸処理)・除蛋白(アルカリ処理)
β-キチン
④ 各キチンオリゴ糖(2~7糖)
(キチン6糖に抗癌性など)
溶媒沈殿
クロマト分離
Conc. HCl分解
逆平行,高密度(高結晶性),強固な水素結合,水和水無し,水・溶媒に不溶,低反応性
脱灰・除蛋白
α-キチン
カニ殻
湿式解繊処理
粉末β-キチン
β-キチン有効利用
イカ由来の中骨を原料としたβ-キチンナノファイバー(①)を試作しました。均一にナ
ノ分散した透明度と粘性の高いナノファイバーです。機能性食品、化粧品基材、再生医療などへの展開が期待されます。現在サンプル提供中です。
① β-キチンナノファイバー
(β-CNF:2~10wt%)
β-キチン
乾式粉砕
日本キチン・キトサン学会HPより
1 kg ~10億円(研究用) 1 kg 数万円~ 1 kg 数万円~(1~10 wt%)
5
健康美容食
変形性関節症
抗炎症
骨代謝亢進
ヒアルロン酸産生
保湿効果
肌細胞活性化
製造助剤
美容素材
ヒアルロン酸産生
保湿効果
肌細胞活性化
皮膚保護
安定剤
再生医療
創傷治癒シート
培養細胞用基材
分化誘導
DDS
機能性ペプチド
β-キチンナノファイバー(β-CNF)
イカ N-アセチルグルコサミン(NAG)・キチンオリゴ糖
◎ ◎ ◎
◎ ○ ○
◎ ○ ◎
イカβ-キチン → ナノファイバー,N-アセチルグルコサミン
生体に好ましい物性で新素材を創出! ナノファイバー化による表面積増大で機能性増幅 甲殻アレルギーの表示義務なし(カニ,エビ由来品は表示義務有り)
イカ中骨を利用した製品の用途・イメージ
平行構造,低密度(低結晶性),水和水有り,簡単に水で膨潤,酵素分解容易
生体親和性高い! β-キチン
β-キチンナノファイバー
新規性
需 要
イカ由来NAG
機能性ペプチド
キチンオリゴ糖
6
β-キチンナノファイバーの製造 イカ中骨: 三陸産スルメイカ
繊維状β-キチン
粉末β-キチン
β-キチンナノファイバー(β-CNF) (2 - 10wt%)
HCl 処理(脱灰)・NaOH 処理(除蛋白)
乾式粉砕: カッターミル(CM), ハンマーミル(HM), 転動ボールミル(TM), 気流式ミル(CyM, DB)
3~5nm6本
6本 キチンミクロフィブリル
Water jet の力
after 12h
湿式解繊処理: Star Burst (スギノマシン)
急速凍結ディープエッチ・レプリカ法と
高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)
7
従来技術とその問題点
• キチンを抽出するために
酸処理による脱灰、
アルカリ処理による脱タンパク質
を行うため、廃液処理施設も必要となる
• タンパク質はアルカリ廃液とともに
廃棄されてしまう
8
V
β‐キチン
ペプチド
本研究の目的
イカ中骨
高温高圧水処理によりイカ中骨から β-キチンおよびペプチド製造
三陸で大量に発生している イカ廃棄物の有効利用
9
本実験方法
イカ中骨0.1g+蒸留水3~5g
ステンレス製反応器
溶融塩炉
150~250℃
1〜180min反応
0.4~8.6MPa
SUS316製 内容積6ml
冷却後,蒸留水でろ過回収
・固体残渣(βキチン)
・水溶液(ペプチド)
10
分析方法
水溶液
(ペプチド)
・ペプチドの定量(Lowry法)
標準タンパク:イカ中骨由来タンパク質
・炭素量の定量
全有機体炭素計(TOC)
・分子量分布測定(HPLC)
・アンジオテンシン変換酵素
(ACE)阻害活性(HPLC)
固体残渣
(β-キチン)
・XRD測定,IR測定
・分子量測定(HPLC) 溶媒:5%塩化リチウム/ジメチルアセトアミド溶液
11
各種計算について
重量変化率[%]= ×100
タンパク質抽出率[%]= ×100
イカ中骨 固体残渣の重量[g]
仕込んだイカ中骨の重量[g]
仕込んだイカ中骨の重量[g]
抽出されたタンパク質重量[g]
12
0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
重量変化率
[%]
反応時間[min]
150℃
200℃250℃
高温高圧水での処理後のイカ中骨の重量変化
ペプチド
水溶液
固体残渣
(β-キチン)
13 13
固体残渣のXRDパターン (200℃)
2θ [°]
Inte
nsity [-]
処理時間の増大にともない
βキチンのピーク形状に近づく
0 10 20 30 40
20 min
β−キチン
60 min
3 min
未処理
14
新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術の問題点であった
酸処理による脱灰、
アルカリ処理による脱タンパク質
が不要となる
• 本技術により、水のみでキチンを製造可能
• 従来廃棄していたタンパク質も利用可能
15
想定される用途
• 低環境負荷型の αキチン および βキチンの製造
• 本技術は、様々なタンパク質(コラーゲンや
ポリペプチド)の水のみを用いた抽出にも
適用可能な技術
16
実用化に向けた課題
• 現在、実験室レベル(数十グラム)での検討に留まっている
• 実用化のためには、高温高圧水処理の
処理量の向上が必要である
• βキチンおよびポリペプチドの用途開発
17
企業への期待
• 機能性食品素材を取り扱う企業との共同研究を希望。
• 実用化レベルでの高温高圧水処理技術を 有する企業との共同研究も希望。
• βキチンナノファイバーなど新規材料の
機能評価が可能な企業との共同研究を希望。
18
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :有機物の製造装置および製造方法
• 出願番号 :2010-144174
• 出願人 :国立高等専門学校機構
• 発明者 :戸谷一英、長田光正
19
産学連携の経歴
• 2008年-2011年
(独)生物系特定産業技術研究支援センター
「イノベーション創出基礎的研究推進事業」に採択
• 2012年-2015年 JST 復興促進プログラム
(マッチング促進)事業に採択
20
お問い合わせ先
一関工業高等専門学校
地域共同テクノセンター長(コーディネーター)
郷 冨夫
〒021-8511岩手県一関市萩荘字高梨
TEL 0191-24 - 4871
FAX 0191-24 - 2146
e-mail renkei@ichinoseki.ac.jp