新素材キチン・キトサンナノファイバーの 農業・食...
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新素材キチン・キトサンナノファイバーの
農業・食品分野への応用展開
鳥取大学東京ビジネス交流会 2015 2015年10月16日
鳥取大学 農学部 生物資源環境学科
准教授・上中弘典
天然の多糖：キチン・キトサン
キチン
・アセチルグルコサミンが連なった直鎖構造・甲殻類や昆虫の外皮を構成する多糖類・年間合成量は 1×１０９～１０１１トン
・高い親水性・高い反応性・ポリカチオン性・抗菌性キトサン
脱アセチル化
研究の特徴(鳥取とキチン)
キチンの利活用における問題点
大量の廃カニ殻・エビ殻等の廃棄物
産業利用されずに焼却処分されている
キチン
• 水に不溶である＞素材としての加工性・成形性に劣る
• 植物に処理すると病害抵抗性と成長促進効果が誘導される＞効果は弱い
＞多様な機能をもつ天然素材
キチンの利活用を促進するには、素材としての欠点克服と機能を格段に増強可能な革新的技術が必要
殻の主成分であるキチンの有効利用が必須
未利用バイオマスの利活用
新素材キチンナノファイバー
乾燥カニ殻
キチンナノファイバー
← 脱タンパク質（+水酸化ナトリウム）
← 脱カルシウム（+塩酸）
← 脱脂、脱色素（+エタノール）
キチン
← 酢酸
← 解繊処理
キチンナノファイバーの製造方法
PCT/JP2009/061929
1% 分散液
素材としての欠点を克服
キチンナノファイバー・水中に均一に分散・混合・成形が容易に・操作性が劇的に向上
従来のキチン水に対して不溶、沈殿を生じる
SEM写真
1% 分散液
高分子のキチンをナノレベルの繊維にまで細かくほぐした物質
キチンナノファイバー研究グループ
文部科学省 大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)
農水省・農食研究推進事業シーズ創出 他
• 農業分野
• 食品分野
農業分野：植物におけるキチンの作用
キチン：カビの細胞壁の構成成分
病原菌が感染
キチンを認識・病害抵抗性(免疫）の誘導
・成長促進
赤松 明・島本 功：ライフサイエンス 新着論文レビュー(2013)
キチンNFシートの抗菌活性
紙漉で作成したキチンナノファイバーシート
キトサン
キチン
表面キトサン化キチンナノファイバー
キトサンがもつ抗菌性をキチンナノファイバーに付与
キトサン：ＮＦ, 10:0セルロース膜（対照区）
キトサン：ＮＦ, 2:8 キトサン：ＮＦ, 0:10
100 μm
日本ナシ黒斑病菌に対する抗菌活性
抗菌性をもつ
江草 他、Material Stage (2014)
キチンNFによるイネいもち病の抑制
DW Chitin NF0.1％
Chitosan NF 0.01％
Chitosan NF0.1％
Chitin NF0.01％
キチンNFによるアブラナ科植物黒すす病
の抑制（キャベツ）
キチンNFによるトマト萎凋病の抑制
DW Chitin NF 1mg/ml
0
1
2
3
Dis
eas
e in
dex
0：無病徴1：下位葉の黄化2：下位葉が黄化、萎凋している3：植物体上部の葉まで黄化、萎凋している4：植物体全体で黄化、萎凋が認められる5：完全に枯死している
*
DW Chitin NF 1 mg/ml
p<0.05 [Student’s t-test]
キチンNFによるウリ類炭疽病の抑制
DW Chitin powder 1 mg/ml Chitin NF 1 mg/mlLesio
n d
iam
ete
r(m
m)
Chitin NF1 mg/ml
Chitin powder1 mg/ml
DW Chitin NF0.1 mg/ml
Chitin NF 0.1 mg/ml
0
1
2
3
4
5
6
7a a
b
c
p<0.05 [Tukey’s HSD]
キチンNFによる植物の成長促進効果
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
滅菌水 キチンNF キトサンNF
トマト
新鮮重
(g)
ユーイング社・Greenfarm
適用例
農食研究推進事業（H27-H29）
キチンナノファイバーを利用した高機能性農業資材の創出（製品化）
独自のナノファイバー化技術
キチンナノファイバー
独自の農業関連知見PCT/JP2009/061929 PCT/JP2014/078812
ロックウール 紙ポット 不織布
育苗用農業資材
育苗期は農薬の使用が制限されている
優れた物性 優れた機能性
• 国立大学法人鳥取大学
• 積水樹脂株式会社
食品分野：小麦粉の加工製品とそれに適する粉の種類
強力粉＋キチンナノファイバー
強力粉250 g 強力粉200 g 強力粉200 g＋キチンNF（1.5 mg/1 g小麦粉）
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180(mm)
＊
強力粉200 g 強力粉200 g＋キチンNF（1.5 mg/1 g小麦粉）
p<0.05 [Student’s t-test]
パンの高さ
小麦粉使用量を約20%減らすことが可能
田中 他、日本食品科学工学会誌(2015)
薄力粉＋キチンナノファイバー田中 他、日本食品科学工学会誌(2015)
(mm)
パンの高さ 有意差なし
0
20
40
60
80
100
120
140 ＊
p<0.05 [Student’s t-test]
薄力粉 200 g薄力粉 200 g＋キチン粉末（1.5 mg/1 g小麦粉）
薄力粉 200 g薄力粉 200 g＋キチンNF（1.5 mg/1 g小麦粉）
薄力粉＋キトサンナノファイバー
(mm)
0
20
40
60
80[ANOVA 有意差無し p<0.05]
パンの高さ
薄力粉200 g＋キトサン溶解液（１％）30 ml
薄力粉200 g＋キトサンNF（1.5 mg/1 g小麦粉）
薄力粉200 g薄力粉200 g＋キトサン顆粒（1.5 mg/1 g小麦粉）
田中 他、日本食品科学工学会誌(2015)
薄力粉＋表面キトサン化キチンNF田中 他、日本食品科学工学会誌(2015)
薄力粉200 g 薄力粉200 g＋表面キトサンNF（1.5 mg/1 g小麦粉）
(mm)
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180p<0.05 [Student’s t-test]
パンの高さ
薄力粉200 g 薄力粉200 g＋表面キトサンNF（1.5 mg/1 g小麦粉）
＊
表面キトサン化キチンナノファイバーによる
小麦粉生地強度強化の効果が一番高い
機能性食品としてのキトサン
コレステロール改善・脂肪吸収阻害・腸内環境改善
平均値±標準偏差*: p<0.05, vs. HFD, HFD+Chitosan groups
Azuma et al, J. Biomed. Nanotechnol.(2014)
高脂肪食（HFD):HighFatDiet32（日本クレア（株））
通常食（ND):CE-2（日本クレア（株））
CN:キチンナノファイバーsda-CN：表面キトサン化CN
体重変化
表面キトサン化キチンナノファイバーは、
キトサンと同程度の肥満抑制効果を発揮
米粉＋キチンナノファイバー
(mm)
パンの高さ
水220ml＋キチンNF（10 mg/1 g 米粉）
水220 ml 水220 ml＋もち粉と水あめ糊
0
20
40
60
80
100
120
水220ml＋キチンNF（10 mg/1 g 米粉）
水220 ml 水220 ml＋もち粉と水あめ糊
新素材キチン・キトサンナノファイバー
キチン
キトサン
脱アセチル化
ナノファイバー化
キチン・キトサンナノファイバーは、高分子キチン・キトサンがもつ機能をもつだけでなく、ナノファイバー化により新たな機能を獲得している新素材である。
応用が期待できる業界
• 業界：食品、健康食品、食品添加物、病者用食品• 生地の膨らみや堅さ、食感などを改良・改質した様々な食品• 減カロリーと肥満抑制効果を併せもった食品• キトサンの抗菌性を利用した賞味期限の長い小麦粉製品
• 業界：農業資材、農薬、植物工場、包装資材
• 高い病害防除能と成長促進能を併せもった新しい農業用資材、薬剤（成長調整剤）、植物工場で使用する液肥など
• 抗菌性を付与した生分解性資材
農業分野
食品分野
実用化へ向けた課題
• 穀類粉生地強度の評価とパンを用いた検証結果のみ。今後、パン以外の小麦粉製品、グルテン含有製品、米粉製品で検証。
• 表面キトサン化キチンナノファイバーを添加した穀類粉製品の抗菌活性、および肥満防止効果を今後評価。
• 資材に利用した際の効果の検証ができていない。個々の資材を試作し、その機能性を評価する必要がある。
• 圃場レベルでの検証が十分でないので、今後評価を行う。• 作物種の適用範囲の調査を行う必要がある。
農業分野
食品分野
共通 • キチンナノファイバーの低コスト化と大量供給については、別途事業化を行っている。
企業への期待について
• 食品を用いた効果の検証試験は、大学独自で行うには限界がある。試作品等を作成してくれる企業を募集している。
• 小麦粉製品、グルテン含有製品、およびグルテンフリー製品などの高付加価値化を希望する企業との共同研究を希望。
• 新たな機能性食品・健康食品の開発による健康分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
• 農業資材への利用に関しては一部共同研究を行っているが、その他の分野についてはまだ共同研究を行っていない。資材の試作や効果の検証を行ってくれる企業を募集している。
農業分野
食品分野
所有する知的財産権について
• 発明の名称：バイオナノファイバーにより穀物粉生地強度を高める技術
• 出願番号：特願2014-141947• 出願人：鳥取大学• 発明者：上中弘典、田中裕之、伊福伸介、河毛真由美、竹村圭弘
• 発明の名称：ナノファイバー化したキチン・キトサンによる植物の病害抵抗性誘導技術
• 出願番号：PCT/JP2014/078812• 出願人：鳥取大学、理化学研究所• 発明者：上中弘典、河毛真由美、伊福伸介、中神弘史、松井英譲
農業分野
食品分野
お問い合わせ先
鳥取大学 農学部 生物資源環境学科
准教授 上中 弘典 （研究担当者）
ＴＥＬ ：0857-31-5378
ＦＡＸ ：0857-31-5378
e-mail : [email protected]
鳥取大学 産学・地域連携推進機構准教授 山岸 大輔 （担当コーディネーター）
ＴＥＬ ：0857-31-6094
ＦＡＸ ：0857-31-5474
e-mail : [email protected]