理論物理学者が挑む 「生命とは何か」 -...

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理論物理学者が挑む 「生命とは何か」 金子邦彦 (東大総合文化・複雑系生命研究センター) 1.自己紹介 2.力学系/カオスについて 3.理論物理から生命へー普遍生物学 A.細胞複製 B適応 C細胞分化 D.表現型の進化

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理論物理学者が挑む「生命とは何か」

金子邦彦(東大総合文化・複雑系生命研究センター)

1.自己紹介2.力学系/カオスについて3.理論物理から生命へー普遍生物学

A.細胞複製B. 適応C. 細胞分化D.表現型の進化

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2.力学系/カオス 状態の時間発展を力学系で捉える

力学系とは、変数の組 の時間変化が

その変数の組と系のパラメータで決定される系のこと。nxxx ,, 21

),,,(

:

),,,(

),,,(

21

2122

2111

Exxxfdtdx

Exxxfdtdx

Exxxfdtdx

nnn

n

n

ある瞬間の状態が決まれば次の瞬間の状態が求められる。

1x

2x

3x

微分という数学よりも、各点に変化の矢印が与えられてそれにそって動くというのが本質

1x例えば、 などはタンパク質の量で、Eが環境の状態を表すパラメータ。

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1:力学1.1力学を状態空間でみる

• F=ma 力 加速度

(速度の変化)=力(位置);(位置の変化)=速度

dv/dt=F(x)/m; dx/dt=v(x,v)の変化を決めていく; (x,v)=状態空間

その変化を決める矢印=

運動方程式

時間t、x(t),v(t);初期条件x(0),v(o)を与える+ 矢印-→ x(t),v(t)が決まる (決定論)

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例1: 重力下でボールを投げるdv/dt=-mg/m=-g; dx/dt=v

例2:ばねの運動 力F=-kx; (線形ばね; xに比例)dv/dt=(-k/m)x=-Cx; dx/dt=v (単振動)

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エネルギー保存則を考えれば上の軌跡は楕円となる

時間的に振動

なお、 xに比例xが小さい時にはなりたつ近似

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振り子F=-mgsinθ

dv/dt=-mgsinθ; dθ/dt=v

θ小さいと sinθ ~ θ線形ばねと同じ式

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** 振り子の運動vs 単振動

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アトラクター〔力学系理論〕ーー安定性

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ヌルクライン( nullcline )、ある方向の微分が0である集合

fi({xj})=0

固定点 xi*=const. dxi/dt=0fi({xj*})=0

ヌルクラインの交点

固定点、ヌルクライン

dxi/dt=fi({xj})dxi/dt=0

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ヌルクラインと固定点を描いてみよう

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カオス(2重振り子の例)単なる ニュートン方程式なのに 振り子を2つにしただけで複雑な運動 *多様 *周期的でない *初期の小さな違いが増幅

決定論 vs 確率論 への 新たな視点

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ローレンツ方程式のアトラクタ (気象ー熱対流のモデル)

bzxydtdz

yxzrxdtdy

xyadtdx

)(

x y

z

パラメータは:a=10b=2.68 r=28

もとの軌道

矢印で値を微小に(0.00000001だけ)ずらした軌道

初期値の小さな差が(指数関数的に)増大 Butterfly effect

y

時間 t

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ローレンツ プロット

ローレンツ方程式のzの極大値がどのように変化しているかを調べる。

time

znz 1nz

2nz

の極大値を順番にとして、その変化を追ってみる

,,,,, 21 nnn zzzz

bzxydtdz

yxzrxdtdy

xyadtdx

)(

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ローレンツ プロット

time

nz (ある極大値)

1nz (その次の極大値)

極大値の変化を離散的に捉えた写像を取ることによって、系の振る舞いを理解できる。

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3 生命とは何か?への理論物理からの挑戦自然界にある普遍的な状態では? 「普遍生物学」分子の理解だけでなくシステムとしての理解が必要

各要素と全体の関係(cf 熱力学、統計力学)分子過程の枚挙でない 現象論をつくる

複製、遺伝、適応、分化、発生、進化--普遍的な状態の特性

*現在、たまたま地球上で進化した生物に縛られない

(「普遍生物学」by 小松左京)

物理学的、、、

地球での進化タイタン?

構成したもの

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分子生物学 当初は普遍原理を求めたい物理学者

機能をになう要素(分子、遺伝子)をさぐる

枚挙する(***オーム)

膨大なデータベースから モデル作り

(bioinformatics、狭義のシステム生物学)

生命とは何かの理解は?

*問題点

個々の要素の性質や機能は状況による

取り出した要素の性質と全体の中にあるときの性質は

異なる(分子、細胞、個体)

多くの要素が関係する(動的な多対多関係)

マクロな状態が個々の要素に影響を与える

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生命システム と 機械 の違い

--ただし、今の分子生物学は 機械的見方

機械: 揺らぎをできるだけ消すよう制御

計算機 演算にエラーがないようにする

同じ条件ではかならず同じ答え

分子生物学: ある条件(ある化学成分の濃度が

ある値をこえると ある遺伝子が働く(DNAから対応する

タンパクが作られる)

If then… の組み合わせ --機械的考え方

では生物は揺らぎを消したうまくできた機械なのか?

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うまくできた機械?分子 ――― ブラウン運動(デタラメに動く)「濃かったら ある性質になる」

分子が多いとゆらぎがあっても濃淡は変わらない

分子が少ないとゆらぎで濃淡までも変わる

コインを100回投げても50回表 とは限らない

N回投げる

表の割合

0.5+-?

誤差1/√N

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しかも 多くの反応が複雑なネットワークをなす

ゆらぎ+複雑なネットワーク

細胞サイズ

GFP

発現

同一遺伝子の個体(細胞)でもその表現型は大きくゆらぐ

e.g. 遺伝子発現 =あるタンパクの濃度

大腸菌

同一遺伝子の大腸菌の表現型のゆらぎ

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機械 ---部品間の干渉をへらす

生物では?

細胞内: ひどく混雑していて各部品は

大きく影響しあう

Goodsell

多細胞生物;細胞は強く影響しあう

社会;個体は影響しあう

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<<複雑系生命科学>>生命システム 機械

柔軟さ?

大きな揺らぎ

要素(分子、細胞)間の相互作用;無視できない

設計図を自分自身がつくる

答えるべき生命システムへの問い;

*シグナルと同程度の揺らぎの中で数万以上の

部品がいかにして機能するのか?

*なぜ壊れずに自己複製が続きうるのか?

*なぜ揺らぎの中で柔軟に状況に適応し、

高次秩序を進化させていけるのか?

*多細胞生物の安定した複雑な発生過程がなぜ可能か

* 安定でありながら、外界に適応して進化できるのか

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A:分子複製と細胞複製の整合性

B適応:遺伝子発現と細胞増殖の整合性

C発生:1細胞と多細胞の整合性

遺伝子型

触媒反応系

表現型

D:進化

共生

遺伝子発現ネットワーク

分子

細胞

多細胞生物

生態系

ゆらぎダイナミクス

動的複雑システムの理論構成生物学定量的生物学

複製、適応、発生、分化、進化などの生命の普遍的性質を 階層間の整合性 (とその破れ)の動態で理解

(部分全体)

ゆらぎダイナミクス

ゆらぎダイナミクス

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*構成的生物学 (Constructive Biology)単純化した構成を通して生命システムの普遍的論理を抽出

(実験ー理論モデルー 論理の共同作業)vs Synthetic Biology

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

異なる階層での整合性原理A.複製ーゆらぎの制御ー再帰的増殖

論理;分子の複製と細胞の再生産の間の整合性 発現量のゆらぎの普遍法則

問い: 揺らぎのなかでほぼ同じ細胞が再生産され続けるか?実験:人工細胞を作る!?(四方、菅原)

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B: 適応問い: 環境変化へ対応+恒常性実験: 遺伝子ネットワークをうめこんだ大腸菌での適応

論理; ゆらぎを通して高い成長を持つ状態(遺伝子発現ダイナミクス)のアトラクターが選択

C: 発生

問い: 多細胞集団での細胞分化(2)多能性の(不可逆的)喪失 (3)発生過程の安定性論理: 1細胞と多細胞集団が整合する状態が選ばれるD: 進化問い;進化のしやすさの表現?生物の安定性の実現?実験:大腸菌の人工進化実験論理: 遺伝子型と表現型の整合性表現型ゆらぎと進化の関係(揺らぎ ∝ 進化速度)遺伝子変異への安定性と 揺らぎに対する安定性の関係

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A: 複製複雑な反応ネットワーク

しかし、状態を維持しほぼ同じものを複製していく。

●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●●

多成分少数個

ゆらぎ?

細胞サイズ

GFP

発現

細胞内のタンパクの量は大きくゆらぐ

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☆互いに触媒しあう反応ダイナミクスからなる簡単な細胞モデルを考えてみる: 小限の「増える」細胞モデル

(栄養物質)

反応

触媒

細胞

環境

拡散

細胞内にはk種類の物質X0、X1…Xk-1

が存在し、その数をn0 、n1 … nk-1とする。

栄養成分(これは触媒できない)は外から供給され、これは細胞膜を通して入ってくる(拡散の係数Dで)。

細胞膜を透過できる物質がそうでない物質に反応によって転換されることによって、細胞内の物質の総数N=Σniは増加し、それが一定値Nmaxを超えたら細胞は分裂する。

化学反応のルールはランダムに決める。任意の I と j を選んだとき、化学反応Xi+Xj->Xk+Xjが成り立つ確率をpとする。

モデルの概念図

with古澤 力 (現 理研)

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☆増殖速度と複製の忠実度は、あるフロー率Dcで 大

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.001 0.01 0.1 0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

grow

th sp

eed

(a.u

.)

simila

rity

H

diffusion coefficient D

growth speedsimilarity

D = Dc

※similarity is defined from inner products of composition vectors between mother and daughter cells

D

Dc

No Growth

(only nutrients)

Growth

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普遍統計則の発見(理論、実験)増殖できる化学反応ネットワークの特性の発見(理論)

臨界点では タンパク発現量を多い順に並べると、量が順位に逆比例する法則

モデルの詳細(パラメータやネットワーク)によらない:普遍性

number rankX1 300 5X2 8000 1X3 5000 2X4 700 4X5 2000 3…….. (for example)

ni (number of molecules)

rank

n=A/ranklog(n)=log(A)-log(rank)両対数プロット

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1e-05

1e-04

1e-03

1e-02

1e-01

1e+00 1e+01 1e+02 1e+03

rati

o of

mR

NA

rank

Human Liver

Human Kidney

Human Heart

Human Colorectal Cancer

1e-05

1e-04

1e-03

1e-02

1e-01

1e+00 1e+01 1e+02 1e+03 1e+04

rati

o of

mR

NA

rank

1e-04

1e-03

1e-02

1e-01

1e+00 1e+01 1e+02 1e+03 1e+04

rati

o of

mR

NA

rank

1e-04

1e-03

1e-02

1e-01

1e+00 1e+01 1e+02 1e+03

rati

o of

mR

NA

rank

α= -1

遺伝子の発現解析(gene-chip、SAGE)での確認(実験)

だいたい各タンパクの量を順位別にならべたもの(正確にはmRNA)

遺伝子 mRNAーー>タンパク 機能

遺伝子発現:各遺伝子からどれだけ対応するタンパクを作っているか

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• 「ものすごく」単純化したモデルでの結果が複雑な生物でもなりたっている!

• なお、 順位と量の逆比例法則は しばしばみられる

単語の出現頻度 (the and of…)所得の分布。。。。

Zipf則

今の場合、べき分布はなぜ?

順に触媒する構造が生まれる

「臨界点」(転移をする点)ではしばしばべき分布が生まれる

(スケール不変性)(相転移の研究)

Rank of ni

Catalyze chemicals of higher rank mainly

相転移の普遍性の理解:70年代の物理の達成

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☆各成分の量の細胞ごとのゆらぎを調べてみる:成分の量の分布は

大きい方に裾 をひく

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

500 1000 1500 2000 2500 3000

ni (成分の量)

P(n i

)

ni (成分の量)

ni が観測された度数

e.g.cell1 X1 10000cell2 8000cell3 15000cell4 20000

…..histograrm

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各成分の量の細胞ごとのゆらぎ成分の量の分布は大きい方に裾対数をとると ガウス分布(正規分布)

色の違い

成分の違い

LOG SCALE

Furusawa、、、KK,2005

対数正規分布

e.g.cell1 X1 10000cell2 8000cell3 15000cell4 20000

…..histograrm

蛍光タンパクで測定

理論モデル

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対数正規分布はなぜ?

正規(ガウス)分布: デタラメなものをたしあわせると

平均量の分布が近づく (中心極限定理)

今、各成分の量のゆらぎは掛け算で伝播する

d Nx /dt = Ny Nz

掛け算 対数をとると足し算

そこで対数をとったあとで ガウス分布に近づく +増殖

d log( NX )/dt = <NA> + η(t)

d NX /dt = Nx NA

d log( NX )/dt = NA

対数正規分布; 成長する系ではしばしば; 体重 対数正規身長 正規

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複製系の構築ーゆらぎの制御ー再帰的増殖

リポソーム内での多段階遺伝子発現、自己複製を完成ゆらぎの細胞との比較、 少数性の意義(理論)

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B: (一般的な)適応

• 適応 --外界の情報をシグナル伝達系が伝えて 遺伝子発現(タンパクの合成)を変える

• しかし多くの環境に対応してすべて用意できるのか?

• ほかの一般的機構はないのか?

• 人工的遺伝子ネットをくみこんだ構成生物学実験 +

増殖-ゆらぎ系のアトラクター選択理論

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シグナル伝達系なしでの適応

Ptrc

Ptet

rfp tetR folA

lacI gfp glnA

Ptrc

Ptet

rfp tetR folA

lacI gfp glnA

Ptrc

Ptet

rfp tetR folA

lacI gfp glnA

Ptrc

Ptet

rfp tetR folA

lacI gfp glnA

Env. Without glutamine

Ptrc

Ptet

rfp tetR folA

lacI gfp glnA

Ptrc

Ptet

rfp tetR folA

lacI gfp glnA

fluctuation

Metabolic activity

Env. Without Tetrahydro..Rich environment

Gultamine synthetase

Enzyme for Tet

Theory of attractor selection by activity and noise

相互抑制のネットワークを埋め込むーー> 双安定望ましいほうが選ばれる

Mutual inhibition

Kashiwagi,Urabe,KK,Yomo 2006

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•例:Toggleswitch(Bistabilityの例)

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ヌルクラインと固定点

Sui HuangBioessay2008

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• 環境に適応した状態が選ばれる

• 隠れた遺伝子ネットワーク?

NO!: promoterを入れ替えてもできる

・ 半分ずつ落ちた後で選択?

NO!; 細胞分裂以前に起こっている

ーー>新しいメカニズム?

提案: x-遺伝子発現〔タンパクの濃度)

(i)xの時間変化 =

増殖率x(合成ダイナミクス) - (希釈)+ ノイズ(ゆらぎ)

(希釈も増殖率に比例)

適応した状態ーー>相対的にノイズの影響小

よくない状態ーー>相対的にノイズの影響大

ーー>そこからはじかれる

ーー>ノイズによる、適応状態の自発的選択

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0.5 1 1.5 2 2.5 3

0.5

1

1.5

2

2.5

3

1 02 10

NutrientNutrient

1 0d mdt

2 0d mdt

Adaptive Attractor

m1

m2

separatrix

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

m1

act

Attractor1

AttractorW

1 21 2_ _(( ) 1) (( ) 1)1 1 2 2

n n

d proact cons actNut thread Nut threaddtm Nutrient m Nutrient

12

22

( )1 deg( ) 11 2

( )2 deg( ) 21 1

d syn actm act mdt md syn actm act mdt m

6( ) ;deg( ) ;2

actsyn act act actact

Noise strength

Fraction that adaptive attractor is selected

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C:発生過程

多細胞生物の発生での一般的問い

*安定性

大きなノイズ(揺らぎ)の中でも同じ組織ができる?アトラクター描像?

*ES細胞(幹細胞) 他の種類の細胞をつくれる

自分を複製/ 他の細胞へ分化

安定性ー不安定性

*不可逆性: 次第に他のを作れる能力を喪失

戻せる操作と戻せない操作;再生可能性

順序を理解したい (cf iPS細胞)

(cf 不可逆性は熱力学の重要テーマ、ただそれとは異なるレベル)

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Waddington’s Image細胞分化

そr

(cf、浅島group実験データからの地形構築)

それぞれの谷細胞のタイプアトラクター?

他のタイプになりうる

能力の違いはいかに表現されるのか?

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タンパク質P2

タンパク質P3

「力学系」で細胞を捉える

細胞の状態

細胞の時間発展=相空間上の軌道

微分方程式として表現

P1

P2

の関係合成促進/抑制

の関係

P1 P2 P3 P4

タンパク質発現量

N次元相空間上の一点として捉える

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遺伝子発現+細胞分化モデル

細胞内にはn種類のタンパク質が

あり、その発現量は、他のタンパク質による制御によって時間的に変動する。

一部のタンパク質は細胞膜を通じて 細胞外に拡散するとし、その拡散 速度Dは拡散する全てのタンパク質で同一であるとする。

1:

2:

protein secretion

3:

time

cell‐cell interaction

細胞は一定時間間隔で分裂する。初期条件として細胞を1つ環境に導入し、それが2→4→8

‥‥と細胞数が増加 していく過程を調べる

細胞外のタンパク質を通じて、細胞が 相互作用する。空間情報は考えない。

C.Furusawa、N.Suzuki

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遺伝子発現+細胞分化モデル (続)

☆i番目の細胞のk番目のmRNAの発現量 :kim

ki

kj

jij

ki mpWf

dtdm

)(

mRNA合成 分解

zezf 1

1)( with ,シグモイダル関数(on-offswitch)

input z

f(z)

☆i番目の細胞のk番目のタンパク質の発現量 :kip

kiii

ki

ki

ki ppDpm

dtdp

タンパク質合成

分解 細胞内外の拡散による移動

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Type A-I(固定点解⇒分化)約3600

Type A-II(振動解⇒分化) 約10700

Type B-I(振動解⇒軌道不安定化⇒分化) 639個

Type B-II(カオス⇒分化) 12個

5遺伝子ー10パス実現可能な全モデル計算(鈴木)3

1億4526万9760 ネットワーク 分 ( , )分化したもの(14,997)

A: Turing-type(複製+分化を持つstem-cell存在せず)

B:遍歴型カオス+相互作用=>stem cellからの分化

タンパク質3の発現量の重ね描き

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typeII=Stem‐cellからの分化ー不安定振動を経た安定化

シミュレーション結果と分析3

Type B-I(振動解⇒軌道不安定化⇒分化)

Type B-II(カオス⇒分化)

相互作用タンパク質は0

相互作用タンパク質は3

発現量

50 1000

1

時間

全細胞のタンパク質3の発現量の重ね描き

発現量

50 1000

1

時間

全細胞のタンパク質3の発現量の重ね描き

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outubeにこのmovieは出てます。Suzuki,Furusawa,Kanekoでみつかるはず。

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力学系から見出された幹細胞からの分化の形成

(カオス)振動をしている状態細胞が増えると、各細胞の振動のタイミングがずれる細胞間相互作用により、異なる状態を形成

細胞の増加ーー>状態の選択 (古澤、金子2001)

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エッセンスは2遺伝子系(2変数の微分方程式)で理解できる(Goto,KK,submitted)

I相互作用ー>振動の消滅t

ヌルクラインが相互作用によりずれて安定状態をつくる

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理論的予測(1)幹細胞(ES細胞)で遺伝子発現が(不規則)振動、分化するにつれ時間変動の消滅(2) 幹細胞は細胞ごとの違いが大きい(3) 全能性の回復には自由度(発現遺伝子数)を増して不安定性を増加 複数遺伝子導入での多能性回復(cf iPS)最近の実験 Hes蛋白 1~4hrの振動が発見

1細胞計測で確認?

理論の予言が実験で検証??(現在進行中)

Kobayashi et al. Genes Development 2009

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D: 進化ーーゆらぎ、可塑性、遺伝子型表現型対応

• 進化:

遺伝子 表現型 (たとえばタンパクの量)

を決める

遺伝子が子孫に伝わる +遺伝子の突然変異

淘汰は表現型に応じて起こる

適応度(子孫を残す度合い) ーー F(表現型)

しかし遺伝子で決まるのであれば F(遺伝子型)

適応度の高い表現型を決める遺伝子が選ばれる

集団遺伝学

しかし、同じ遺伝子を持った個体でも表現型がゆらぐ

表現型のゆらぎは進化にどう影響するか?

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・・・・・

FACS analysis

Mutagenesis

~2,000 clones

~30 clones

5~8 clones

The highest clone

Spectrofluorometer

Spectrofluorometer

1st screening

2nd screening

Eyes

実験の流れ

バクテリアを用いた人為進化実験 (Sato,Ito,Yomo,Kaneko,PNAS2003)

細胞内でのタンパクの蛍光量が高いものを選択

突然変異

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``同一遺伝子個体での 蛍光(タンパクの働き)の分布

進化速度 分布の幅(分散) ともに小さくなる

大きなゆらぎを持っているほうが進化しやすいらしい

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ゆらぎと応答の関係の理論:Einsteinのブラウン運動理論線形応答理論(久保他)

骨子: 力をかけて、量xが変化する応答率 R= ( x の平均の変化 ) / 力

力をかけないときのxのゆらぎ (分散) VR ∝ V

例:水中での小粒子のうける抵抗 -- ゆらぎ

k T

x

物理のEinsteinの関係を一般化

``応答’ ---- 遺伝子が変異して淘汰された時の表現型の変化度合い応答率 -変異率あたりの進化速度同じ遺伝子をもった個体(クローン)間の表現型ゆらぎ

進化速度 ∝ 揺らぎ進化しやすさー遺伝子を変えずに表現更なる理論、実験

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• 統計物理の揺動応答関係(Einstein)を借用して考える

‘力’への応答 ∝ 揺らぎ 一般化

• P(x;a) x 変数,  a: 制御パラメタ

a の変化 P(x;a)のピーク位置, <x>の平均値がシフト

2 2( ) ( )a a aa

x x x x xa

``応答’’ ---- 遺伝子が変異して淘汰された時の表現型の変化度合い応答率 -変異率あたりの進化速度ゆらぎ ---- 同じ遺伝子をもった個体

(クローン)での表現型ゆらぎ

進化速度 ∝ 揺らぎ

進化しやすさー遺伝子を変えずに表現

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現象論的な表式ーゆらぎと応答

XのGauss分布、 パラメタ a

at a=a0パラメタをa0からaへ変化させる

(1) P(x;a)分布の表式

(仮説) x:表現型a;遺伝子gene(2) 変化が小さいとしてcoupling は Cxa だけ( 高次項は無視)

導出というより、表現。実験でチェック要

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``応答’’ ------ 遺伝子が突然変異と淘汰をへて変化

したときどれだけ表現型が変化するか(たとえば ある機能、たんぱくの量、、)

応答率 ---変異率あたり(塩基置換あたり)での

表現型変化 (進化速度)

ゆらぎ ---- 同じ遺伝子をもった個体(クローン)での

表現型ゆらぎ

進化速度 ∝ 同一遺伝子個体の表現型揺らぎ?

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(Evolution Speed per generation)

Naïve expectation:Just propt to mutation rate

Fluctuation-response relationPhenotype fluct. × mutation rate

Sato,Ito,Yomo,KK, PNAS 2003

理論モデルではきれいな比例関係

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反応ネットワークモデル細胞でも 表現型揺らぎと進化速度の比例は確認

Furusawa,KK 2005

μ=0.010.03

.0.05

Fluctuation of x=log c

Increase in average x

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同一遺伝子個体での分散 Vip∝ 進化速度

更なる謎:自然選択の基本定理(Fisher)との關係?

異なる遺伝子個体での分散 Vg ∝ 進化速度

• Vip ∝Vg??

Gene distribution

phenotype

Isogenic individuals

phenotypeVip Vg

g

x x

(Vnoise)

P(x=表現型, g=遺伝子)の分布関数の存在+

「進化的安定性仮説」 ーー>それらしき説明

遺伝子ー表現型間での整合性(cf ミクロマクロ整合性 Einstein)

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• Vg(遺伝子の差異によるゆらぎ)とVip(遺伝子起源でないゆらぎ)が比例 (モデル、安定性理論) V

安定性仮説

?robustness(安定性)の問題

--ノイズに対して Vip--突然変異に対して →Vg 両者はリンク?

ノイズに対しての安定性が突然変異への安定性をもたらす

Vip

Vg

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大自由度の複雑なdynamics一般ノイズに対して安定性を持つ力学系への進化 進化(遺伝子変化)に対しても安定化

進化

Cf 統計力学(spin glass)からのアプローチ: Sakata,Hukushima,KK(PRL 2009)

KK,PLoS One2006ほか

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まとめ

階層間の整合性原理

‐‐ 分子複製と細胞増殖 普遍統計法則

(べき乗則、対数正規分布でのゆらぎ)

‐‐遺伝子発現と細胞成長 自発的適応

‐‐細胞増殖と多細胞生物としての増殖

〔細胞分化、発生の理論)

‐‐遺伝型と表現型

遺伝子によるゆらぎと内在的ゆらぎの関係

階層を持った増える系の普遍的な法則、原理?

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多次元動態計測革新的技術

t

Inte

nsity

生物情報統計力学

再構成実験

実証

細胞のマクロ現象理論

理論実験

適応可塑性 頑健性

活動性

複雑生命システム動態研究教育拠点の設立(2012から5年) 東大駒場キャンパス (by 文科省)

「生きていることの動的状態論の構築」

数理、物理、化学、生物を結集して生命とは何かに迫る。研究+教育(生命動態プログラムー統合自然科学科)

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CollaboratorsChikara Furusawa

Katsuhiko Satoexperiment

Tetsuya YomoYochiro ItoAkiko Kashiwagi

http://chaos.c.u-tokyo.ac.jp

第2版、2009(初版2003)