日産自動車株式会...

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日産自動車株式会 S-HYBRID 通称名 車両型式 エンジン型式 適用時期 セレナ DAA -HC26 MR20DD -SM23 S-HYBRID 特徴 出典資料 新型車解説書(追補版 1) TOOPB1 VA2J 整備要領書(追補版 1) TOOSM1 VA2J S-HYBRID は,減速時の回生(発電)による電力を 2 つのバッテリに蓄え,アイドリング・ストップ後の発 進加速時にモータによるエンジン・アシストを行うもので,室内空間を犠牲にすることなく燃費の良さとコ ンパクト性を両立させたシンプルなハイブリッド・システムである。 2) 概要 ・アイドリング・ストップ・システムのリスタートに使用しているサブ・スタータ&ジェネレータを用いて, 加速時にエンジンをアシストするエンジン・アシスト・システムである 。サブ・スタータ&ジェネレータは 容量を上げて回生能力を向上し,更にサブ・バッテリを追加してバッテリ容量を上げることによって,エン ジン・アシストに必要な電源を確保している。 -また,エンジン・アシスト時はサブ・スタータ&ジェネレータの出力を ECM が制御し 滑らかな運転性を 実現 している 。 ・エンジン・アシスト中にメイン・バッテリ電源回路とサブ・バッテリ電源回路の接続を遮断するサブ・バッ テリ・リレーを設け,サブ・バッテリに接続されている電装品の電源低下による影響(リセットなど)から保 護している。なお,サブ・バッテリ・リレーは 2 個並列で配置され,交互に使用することによって,システ ムの耐久性,信頼性を向上している 。 3) 性能 エンジン MR20DD +モータ (SM23) を採用した 。 (1) エンジン性能 エンジン型式 MR20DD モータ形式 SM23 総排気量 (μ) 1.997 最高 出力(エンジン) (kW (PS) IrpmJ 108 (1 47) 15600 最大 トルク(エンジン) (N. m (kg -m) IrpmJ 210 (2 l. 4) 14400 最高 出力(モータ) (kW (PSJ l. 8 (2 .4) 最大 トルク(モータ) (N. m (kg -m) J 53.6(5.5) (2) 燃費性能 エンジン型式 モータ形式 燃料消費率 JC08 モード (km/L) MR20DD-SM23 15.2 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値である。実際の走行時の気象,道路,車両,運転, 整備などの条件により燃料消 費率は異なる 。 06

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日産自動車株式会

S-HYBRID

通称名 車両型式 エンジン型式 適用時期

セレナDAA -HC26 MR20DD -SM23 20l2.8~

S-HYBRID

概 要

特徴

出典資料

新型車解説書(追補版1) TOOPB1 VA2J

整備要領書(追補版1) TOOSM1 VA2J

S-HYBRIDは,減速時の回生(発電)による電力を 2つのバッテリに蓄え,アイドリング・ストップ後の発

進加速時にモータによるエンジン・アシストを行うもので,室内空間を犠牲にすることなく燃費の良さとコ

ンパクト性を両立させたシンプルなハイブリッド・システムである。

2) 概要

・アイドリング・ストップ・システムのリスタートに使用しているサブ・スタータ&ジェネレータを用いて,

加速時にエンジンをアシストするエンジン・アシスト・システムである。サブ・スタータ&ジェネレータは

容量を上げて回生能力を向上し,更にサブ・バッテリを追加してバッテリ容量を上げることによって,エン

ジン・アシストに必要な電源を確保している。

-また,エンジン・アシスト時はサブ・スタータ&ジェネレータの出力を ECMが制御し 滑らかな運転性を

実現している。

・エンジン・アシスト中にメイン・バッテリ電源回路とサブ・バッテリ電源回路の接続を遮断するサブ・バッ

テリ・リレーを設け,サブ・バッテリに接続されている電装品の電源低下による影響(リセットなど)から保

護している。なお,サブ・バッテリ・リレーは2個並列で配置され,交互に使用することによって,システ

ムの耐久性,信頼性を向上している。

3) 性能

エンジン MR20DD+モータ (SM23)を採用した。

(1) エンジン性能

エンジン型式 MR20DD

モータ形式 SM23

総排気量(μ) 1.997

最高出力(エンジン) (kW (PS) IrpmJ 108 (147) 15600

最大 トルク(エンジン) (N . m (kg -m) IrpmJ 210 (2l.4) 14400

最高出力(モータ) (kW (PSJ l.8 (2.4)

最大 トルク(モータ) (N . m (kg -m) J 53.6(5.5)

(2) 燃費性能

エンジン型式 モータ形式

燃料消費率 JC08モード(km/L)

MR20DD -SM23

15.2

燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値である。実際の走行時の気象,道路,車両,運転, 整備などの条件により燃料消

費率は異なる。

つ臼06

ー置S;PA

2 構造・機能

1 ) 構成部品の配置及び機能

( 1 ) エンジン・ルーム(図 1-1)

図 1-1 構成部品の配置(エンジン・ルーム)

部品名称 主な機能

下記の状態を検出 してエン ジン・アシス ト可能と判断した場合 エンジン・アシスト許可信号を

CAN通信でECMへ送信する。

①TCM -セレクト・レバーの位置

'CVTフルードのj量度

-ロ ックアップの状態

-故障判定

下記の状態を検出してCAN通信でECMへ送信する。

-リヤ ・ウインド ・デフ ォッガの状態

②IPDM' E/R -ヘッド・ランプの状態

-フロ ント・フ ォグ・ランプの状態

-フ ロント・ワイパの状態

メイン ・バッテ リのマイ ナス側ケーブル部に取り付けられ,メイン ・バッテ リの充放

電流センサ電電流を検出 して ECMに信号を送っている。この信号をもとに.ECMはメイン・パッ

③メイン・バッテリ電流 テリ負荷の状態を判定し発電指令値信号を IPDM'E/RにCAN通信で送り ,オルタ

センサ ネータの発電量を制御する。その結果 エンジン負荷を軽減することができる。

温度センサメイン・バッテリ電流センサに内蔵されており サー ミスタを使用 し温度に応じて変

化する電気抵抗により 雰囲気温度を検知する。

エンジン・アシス ト時, サブ・ス タータ&ジェネレータに電力を供給する。充放電能力と寿命性能

④メイン・バッテ リ を強化したアイドリング・ストップ車専用バッテリである。型式はS-95. 容量は 12-64 (V-Ah)である。

下記の状態を検出 してCAN通信でECMへ送信する。

. ABSの作動状態

⑤ABSアクチュエータ・ . VDCの作動状態

C/U . TCSの作動状態

. EBDの作動状態

-車速

qJ

00

ーヨSJiO

部品名称 主な機能

⑥水温センサ サーミスタを使用し温度に応じて変化する電気抵抗によりエンジン冷却水温度を検知する。

⑦EPS. C/U ステアリングの操舵力を検出してエンジン・アシスト可能と判断した場合,エンジン・アシスト許

可信号を CAN通信でECMへ送信する。

③サブ・バッテリエンジン・アシスト時 電源電圧低下の影響を受ける電装品へ電力を供給する。充放電能力と寿命

性能を強化,アイドリング・ストップ車専用バッテリである。

サブ・バッテリ電流センサはサブ・バッテリのマイナス側ケーブル部に取り付けられ,サブ ・バッ

⑨サブ・バッテリ温度セテリの充放電電流を検出してECMに信号を送っている。この信号をもとに, ECMはサブ・バッテ

リ負荷の状態を判定し発電指令値信号を IPDM'E/RにCAN通信で送り オルタネータの発電量ンサ

を制御する。その結果,エンジン負荷を軽減することができる。サブ・バッテリ温度センサはサブ・

バッテリ電流センサに内蔵されており サブ・バッテリ雰囲気温度を測定している。

(2) 車両側(図 Iー 2)

図 1-2 構成部品の配置(車両側)

84

ー*iuPA

部品名称 主な機能

ECMからの要求(CAN通信)にしたがって. S-HYBRID表示灯を以下のいずれかの条件で

①コンビネーション・メ ータ点灯させる。

(S-HYBRID表示灯)-バッ テリ回生制御中

-アイドリング・ストップ作動中

-エンジン・アシス ト作動中

クランクシャフ ト・ポジション ・センサ lはシリンダ ・ブロ ック後端に取り付けられており,

②クランクシャフト・ポジショエン ジン回転速度とその変動を検出している。

このセンサには永久磁石と半導体素子を使用しており,センサが規定の間隔で切られたシグン・センサl

ナル・プレートの溝を通過する際,センサ付近の磁界に変化が生じる。これによりセンサ出

力電圧が変化するので ECMはこの電圧変化によりエンジン回転速度を検出している。

ECOモータとも呼び,モータの機能と発電機能をもっている。ECMからの指令によりエン

③サブ・ス タータ&ジェネ レージン ・アシスト ,リス タート及び発電電圧制御を行う 。発電指令信号がない場合はサブ・ス

タータ&ジェネレータに入力されるキー・スイッチ信号をもとにして通常の発電を行う 。なタ

お,サブ・スタータ&ジェネレータはベルトを介してエンジンにつながっているのでリスター

ト,アシストが静かにスムーズに行える。

サブ・バッテリ・リレーはECMに制御され,メ イン・ バッテ リ電源回路とサブ・バッテリ

電源回路の接続/遮断を行う 。サブ・ バッテ リ・リレーはこつの リレーを内蔵しており, 一

つのリレーに不具合が発生しても, もう一方のリレーを作動させることにより,通常の状態

④サブ・バ ッテ リ・リレー を維持できるようにしている。

またECMは,サブ・バッテ リ・リレーが内蔵 している二つのリレーを交互に作動させており,

キー・スイ ッチを OFFにしてもそのパタ ーンを継続できる ように,最後にどちらの リレー

を作動させたか記憶している。

⑤ECM 各センサ,及びコン トロール・ユニ ットからの情報をも とに. S-HYBRIDシステムを総合

制御する。

ブレーキ・ペダルには. ASCDブレーキ・スイ ッチ&ス トップ ・ランプ・ スイッチが付いて

おり,ブレーキ・ペダルを踏むと ASCDブレーキ・スイッチはOFFになり,ストップ・ラ

ンプ・スイッチはONになる。ECMは2種類(ON/OFF)の入力で,ブレーキ・ペダルの状

⑥ストップ・ランプ・スイッチ態を検出する。

ブレーキ・ペダル ASCDブレーキ・スイッチ ストップ・ランプ・スイッチ

踏む OFF ON

踏まない ON OFF

⑦アクセル・ペダル・ポジショアクセル・ペダル・ポジション・センサはアクセル・ペダルAss'yの上部に取り付けられて

ン・センサいる。2系統のポテンショ・メータからなっており,アクセル・ペダルの踏み込み量を電圧

信号に変換して ECMに送信する。

③エンジン右側

⑤エンジン左側

。サブ・ バッテ リ下部

⑨フロント・バンパ左奥

型γ、ル周辺

F3

00

2) エンジン・アシスト・システム

(1) システム概要

ーヨa;PA

エンジン・アシスト・システムは サブ・スタータ&ジェネレータでエンジン・トルクをアシストすること

により燃費の向上を図っている。また,サブ・スタータ&ジェネレータの容量を高めることにより,エンジ

ン・アシストに必要な駆動力の確保,及び減速回生能力の向上による発電量の向上を実現している。なお,バッ

テリはメイン・バッテリ,及びサブ・バ ッテリの2バッテリとし,メイン・バッテリ電源回路とサブ・バッ

テリ電源回路をサブ・バッテリ・リレーにより断続することで,エンジン・アシスト時における各システム

への供給電源電圧の低下を防いで、いる。

ECMは,各ユニットやセンサから車両の状態,及び運転者の操作状態を検出し,エンジン・アシストの総

合的な制御を行う 。

エンジン・アシストの作動状態は,コンビネーション・メータ内のS-HYBRID表示灯で示される。関連す

るシステムに異常が発生した場合は,アイドリング・ストップ・システム,及びエンジン・アシスト・シス

テムの制御を解除し アイドリング・ストップ表示灯を低速点滅させることで運転者に警告する。

直至口 サブ・スタータ&ジェネレータでエンジン・トルクをアシストすることを"J..ンジン アシスト"とする D

(2) 基本作動(図 1-3)

車速

エンジン

サブ・スタータ&ジェネレータ

S-HYBRID

表示灯

サブ・バッテリ・リレー

走行中

停止 一一一一一一一一一一一一一一一一一手 に…十一一一;一一

回転 ;一一一- I

停止一一一一一一一一一一一一一一E・E・.....!-------一一一一一…一一一一一十一一十一

エンジン・アシス卜 一一一一一一一一一一一一一一一一一↓一一一一一一一 i -- F 一一.....l

リスタート ー

発電

停止一一一一一一 ーl

点灯一一一一ー

消灯

ON

OFF 一一一一一

図 1-3 基本作動

- 86 -

ーヨS;PA

(3) システム図(図 1-4)

サブ・スタータ&ジェネレータ | ドア・スイ ッチ

A/Cコンフ。レッサ'

BCM

IPDM. E/R

ABSアクチュエータ・C/U

EPS コントロール・ユニット

申ー岡田司司

: /" lスタータ-

iモータ

占 -・一一

トゲ/////////~イ

レろメイン・バッテリ シイ

レケ'/////////ンシイ

A/Cオート・アンフ。

コンビネーション・メータ

TCM

クランクシャフト ・ポジション・センサ2

r---~ ォーテーィ オ 川IIνン///////////シ'1 i

~ ---μ サブ・バッテリ'%1レ////////////うイ

ー -~・ ー ーー ー ーー ーー

エンジン水温センサ

大気圧センサ

~: CAN通信線

一一一一+ エンジン通信線

一+:電源

一一一→ 電気信号線サブ・バッテリ・リレー

図I-4 システム図

(4) 作動概要

サブ ・スタータ&ジ、ェネレータは,アイドリング・スト ップからリスタート後の加速時に, 一定の条件が整

うと最大で1秒間エン ジン・アシストを行う 。サブ・スタータ&ジェネレータ作動時 サブ・バッテリ・リ

レーは OFFになりメイン・バ ッテリ 電源回路とサブ・バ ッテリ 電源回路を遮断する。エンジン・アシスト

中はs-HYBRID表示灯が点灯する。

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ー軍S;PA

(イ) エンジン・アシス卜作動条件

ECMは,下記条件がすべて成立したとき,エンジン・アシストを行う 。

項 目 状態

アイドリング・ストップ表示灯 消灯(システム正常時)

システム状態アイドリング ・ストップを 5秒以上継続

リスタート後に一度もエンジン ・アシストをしていない

車速 14km/h以上, 44km/h未満

開度 ・ l/8~3/8

アクセル ・ペダル リスター トからの発進後全閉にしていない

加速中緩めていない(戻していない)

ブレーキ・ペダル リスタート後に一度も踏んでいない

リヤ・ウインド・デフォッガ・スイッチ OFF

システム正常時

車両状態ABS非作動

ABS/VDC/TCS/EBD VDC非作動

TCS非作動

EBD非作動

ステアリング 操舵していなし¥(操舵力が発生していない状態)

メイン・バ ッテリ 電圧キー・スイッチ ON時 1l .5~ 12.0V以上

メイン・バ ッテリ キー ・スイ ッチで始動時:7 .0~8 .0V 以上

状態 メイン・バッテリ温度 約OOC以上

メイン・バッテリ充電状態 十分充電されている

サブ ・バッテリ電圧 キー・スイッチON時 :12.0 ~ 12.5V以上*1サブ・バッテリ状

サブ・バッテリ温度 約OOC以上,宵u包a、

サブ・バッテリ充電状態 十分充電されている

エンジン回転速度 1000rpm 以上, 2000rpm未満

水温 37 ~ 1000

C

CVT エンジン・アシスト許可信号*2 OK

*1 :キー・スイッチON時における電装品の電気負荷により変化する。

*2: TCMが判断するエンジン・アシスト許可条件は以下のとおりである。

・セレクト・レバー位置がDレンジ

' CVT フルード温度が 15~1l0oC

・ロ ックアップ締結状態

-システム正常時

- 88 -

ー軍S;PA

(口) エンジン・アシスト解除条件

ECMは,下記条件のいずれかが成立したとき,エンジン・アシスト・システムを解除する

項 目 状態

車速 14km/h未満, 44km/h以上

アクセル・ペダル開度 1/8以下, 3/8以上

加速中緩める(戻した状態)

ブレーキ・ペダル 踏む

リヤ・ウインド・デフオツガ・スイ ッチ ON

システム異常時

ABS作動

ABS/VDC/TCS/EBD VDC作動

車両状態 TCS作動

EBD作動

ステアリング 転舵操作をする(操舵力が発生している状態)

メイン・バッテリ電圧 エンジン・アシスト中 バッテリ電圧が低下したメイン・ノくッテリ

メイン・バッテリ温度 約OOC以下状態

メイン・バッテリ充電状態 充電量が所定値以下

サブ・バッテリ電圧 エンジン・アシスト中:バッテリ電圧が低下したサブ・バッテリ状

サブ・バッテリ温度 約OOC以下態

サブ・バッテリ充電状態 充電量が所定値以下

エンジン 回転速度 1000rpm未満, 2000rpm以上

CVT エンジン ・アシスト許可信号* NG

*: TCMが判断するエンジン・アシスト解除条件は以下のとおりである。

・セレクト・レバー位置がDレンジ以外

'CVTフルード温度が15~ llOoC以外

.ロックアップ解除状態

-システム異常時

川 エンジン・アシス 卜・システム使用時の注意

以下のいずれかの状態では,エンジン・アシス トは作動しない。

-アイドリング ・ス トップ表示灯が低速で点滅しているとき

ーアイドリング・ストップを 5秒以上継続していないとき

ーリスター ト後に一度エンジン・アシス トしたとき

一車速が14km/h未満又は44km/h以上のとき

ーアクセル・ペダルが以下の状態のとき

-開度が1/8以下,又は3/8以上

.リスタートからの発進加速後全聞にした

.加速中に緩めた(戻した)

ーブレーキ・ペダルをリスター ト後に踏んだとき

ーリヤ・ウインド・デフォッガが作動しているとき

-ABS/VDC/TCS/EBDシステムが以下の状態のとき

.異常を検出している

.作動している

ーステアリング操作をしているとき

ーメイン・バッテリが以下の状態のとき

-キー・スイッチ ON時の電圧が1l.5~ 12.0V未満

- 89 -

ー軍s;a

-キー・スイッチで始動時の電圧が7.0~8.0V 未満

.エンジン・アシスト中の電圧が低下したとき

・バッテリ温度が約OoC未満

-充電量が所定値以下

ーサブ・バッテリが以下の状態のとき

・キー・スイッチ ON時の電圧が12.0~ 12.5V未満(電装品の電気負荷により変化する)

・エンジン・アシスト中の電圧が1l.5~ 12.0V以下

・バッテリ温度が約OoC未満

-充電量が所定値以下

ーエンジンが以下の状態のとき

-回転数が1000rpm未満, 2000rpm以上

.水温が37-1000

C以外

-TCMが判断するエンジン・アシスト許可条件が以下の状態のとき

・セレクト・レバー位置がDレンジ以外

'CVTフルード温度が15-1100

C以外

.ロックアップ解除状態

・システム異常時

3) サブ・バッテリ・リレー制御

( 1 )概 要

エンジン始動時及びエンジン・アシスト時のバッテリ電圧低下による,各システムへの供給電源電圧の低下

を防ぐため,サブ・バッテリ及びサブ・バッテリ・リレーを設けている。

ECMは,スタータ・モータによるエンジン始動及び,サブ・スタータ&ジェネレータによるリスタート,

エンジン・アシスト時に,サブ・バッテリ・リレーを OFFにして,サブ・バッテリ電源回路と始動,リスター

ト,アシストに用いられるメイン・バッテリ電源回路とを遮断する。これにより,サブ・バッテリ電源回路

に接続されている電装品を電源電圧低下による影響(メモリ・リセットなど)から保護している。

-なお,サブ・バッテリ・リレーは2個並列で配置され, リレー ONの都度交互に使用することによって, シ

ステムの耐久性,信頼性を向上している。

- 90 -

-・竃翫匝~

(2) 作動説明(図 1-5)

(イ) キー・スイッチ OFF時

キー・スイッチがOFFの状態では サブ・バッテリ・リレーがOFFとなっているため メイン・バッテリ

電源回路とサブ-バッテリ電源回路は遮断されている。

スタータ・モータ

サブ・バッテリ電源系統へ

4‘ h

一?斗「斗1午与与与-一一-一-十 -一一一一一-一一一一-一一一一一-一一一一一-一一一一-一一一-一一-一-一一一一一-一一一-一一一-一一-一-一一一一一-一一一-一一一-一一-一-一一一一一-一一一-一一一-一一-一-一一一一-一一一-一一-一-

| 卜サブ一|

サブ・スタータ&ジェネレータ

メイン・バッテリ電源系統へ

メイン・バッテリ

ーーー :メイン・バッテリ電圧ーーー :サブ・バッテリ電圧

図 1-5 作動説明

(ロ) エンジン始動時(図 1-6)

キー・スイッチ OFFの状態からエンジンを始動すると メイン・バッテリからの電力がスタータ・モータ

へ供給される。また,サブ・バッテリ・リレーはOFFのままとなるため,メイン・バッテリ電源回路とサブ・

バッテリ電源回路は遮断された状態となり サブ・バッテリ電源系統へはサブ・バッテリからの電力が供給

される。

スタータ・モータ

サブ・スタータ&ジェネレータ

.. 2

サブ・バッテリ電源系統ヘ..

含i

-肝 i

LLI 含;

| サ ブ パ 刑 |

メイン・バッテリ電源系統ヘ

メイン・バッテリ

ー一一:メイン・バッテリ電圧ーーー・サブ・バッテリ電圧

図 1-6 エンジン始動時

11ム

QJ

ー....

川通常走行時(図 1-7)

正常にエンジンが始動すると, ECMはサブ・バッテリ・リレーの一方を ONにしてメイン・バッテリ電源

回路とサブ・バッテリ電源回路を接続する。これにより,サブ・スタータ&ジェネレータからの発電電力を

すべてのシステムへ供給すると共に,メイン・バッテリ及びサブ・バッテリへの充電を行う 。

ヨ雪訂 このシステムでは,充電が不要なときにジ、エネレータの発電を停止(無発電化)させ,エンジン負荷を低減す

る制御を採用している。その場合,メイン・バッテリの電力がサブ・バッテリ電源系統に共有される。

スタータ・モータ

サブ・バッテリ電源系統ヘサブ・スタータ&ジェネレータ

' ‘・メイン・バッテリ電源系統ヘ

ー- -・ -・s a

メイン・バッテリサブ・バッテリ・リレー

メイン・バッテリ電圧一一ー サブ・バッテリ電圧

図 1-7 通常走行時

(ニ) アイドリング・ストップ作動中(図 1-8)

アイドリング・ストップが作動すると, ECMはON状態となっていたサブ・バッテリ・リレーを OFFにして,

メイン・バッテリ電源回路とサブ・バッテリ電源回路を遮断する。これによりそれぞれの電源系統へ,独立

した電源供給を行う 。

スタータ・モータ

2

サブ・バッテリ電源系統へ..

含iCごコIOFF I

ーーー@田 ー- ~-- -自司自"問自白目白目ーーーー ーーーーーーーーーーーーーーゐ

LLI 倉!

|サブパベ

メイン・バッテリ電源系統ヘ ・-

メイン・バッテリ

ーーー:メイン・バッテリ電庄一一ー:サブ・バッテリ電圧

図1-8 アイドリング・ストップ作動中

つ臼QJ

.圃・翫函量昭・

除) アイドリング・ストップからのリスタート時(図 1-9, 10)

アイドリング・スト ップ作動からのエンジン・リスタート時は,サブ・バ ッテリ・リレーはOFFのままと

なりメイン・バッテリからの電力がサブ・スタータ&ジ、ェネレータ及びメイン・バッテリ 電源系統へ供給さ

れる。また,サブ・バッテリ 電源系統は独立した電源回路となり, リスタート時のバッテリ 電圧低下の影響

を受けることなく,安定した電源供給ができる。

サブ・スタータ&ジェネレータ

スタータ・モータ

E コ IOFF I

サブ・バッテリ電源系統ヘ..

含!

' LLI 含;

メイン・バッテリ電源系統へ ・-

ーーー :メイン・バッテリ電庄一一ー -サブ・バッテリ電圧

メイン・バッテリ

図 I-9 アイドリング・ストップからのリスタート時①

|サブベ

リスタートが正常に完了しエンジン回転状態となると ,ECMは前回 ON状態にならなかったサブ・スタータ・

リレーを ONにして,メイン・バッテリ 電源回路とサブ・バ ッテリ電源回路を接続する。

サブ・スタータ&ジェネレータ

スタータ・モータ

メイン・バッテリ電源系統ヘ

ーーー -メイン・バッテリ電圧一一ー -サブ・バッテリ電圧

サブ・バッテリ電源系統ヘ

、 ' 細川 園砂

S 比.ニコ京司ご工-l=全 I , メイン・バッテリ

図 Iー10 アイドリング・ストップからのリスタート時②

- 93 -

ーヨS;PA

(ベ エンジン・アシスト作動時(図 1-11, 12)

エンジン・アシスト作動条件が成立すると ECMはサブ・バッテリ・リレーを OFFにしてメイン・バッテ

リ電源回路とサブ・バッテリ電源回路を遮断する。これにより,メイン・バッテリからの電力がサブ・スター

タ&ジェネレータ及びメイン・バッテリ電源系統へ供給され,サブ・バッテリ電源系統は独立した電源回路

となり,安定した電源供給ができる。

サブ・スタータ&ジェネレータ

スタータ・モータ

メイン・バッテリ電源系統へ.. 2

サブ・バッテリ電源系統へ

含i~4?~_:~---i

LLI 含)

メイン・バッテリ

|サブベ

メイン・バッテリ電圧ーーー :サブ・バッテリ電圧

図 1-11 エンジン・アシス卜作動時①

エンジン・アシスト作動が終了すると. ECMは前回 ON状態にならなかったサブ・スタータ・リレーを ON

にして,メイン・バッテリ電源回路とサブ・バッテリ電源回路を接続する。

サブ・スタータ&ジェネレータ

スタータ・モータ

‘-メイン・バッテリ電源系統へ .. -・a

メイン・バッテリサブ・バッテリ・リレー

ーーー :メイン・バッテリ電圧一一ー -サブ・バッテリ電圧

図 Iー 12 エンジン・アシスト作動時②

- 94 -

サブ・バッテリ電源系統へ

' ー・ a

ーヨS;PA

3 点検・整備のポイント

1 ) 故障診断のポイン卜

( 1 ) 現象:エンジン・アシストが作動しない

(2) 点検要領

不具合を確認する前に,“全自己診断画面"のDTC有無を確認する。DTCを検出した場合は,該当項目を修

理又は交換する。

DTCが検出されない場合は,不具合を確認の上,現象別故障診断表に基づいて, CONSULTのデータ・モ

ニタを表示し,エンジン・アシスト作動条件を確認する。

直童日詳細は整備要領書を参照すること。

不具合現象CONSULT(デタ・モ タ ・モ ド)

モニタ項目 状態推定不具合部位 対処方法

アシスト許可(EPS) 禁止 EPSが作動しているEPSを作動させない条件で運

転する

アシスト許可(TM) 禁止CVTがロックアップしてい アクセル・ペダルをゆっくり踏

ない み込む

アシスト許可(ペダル) 禁止アクセル・ペダルの踏み込み アクセル・ペダル開度を 8度以

過ぎ,又は踏み込み不足 上, 30度未満の範囲で操作する

エンジンカイテンスウ1000rpm未満, エンジン回転数が低すぎる,

エンジン回転数を 1000rpm以

2000rpm以上 又は高すぎる上, 2000rpm未満の範囲で操作

する

-ア シス ト言午可

エンジン・アシス(メイン・バッテリ)

禁止

トしない-アシスト許可

メイン・バッテリを充電する

(メインB充電量)

車両を以下の状態に した後エン

-メイン・バッテリ,及びサジン ・アシストを作動させる

ブ・バッテリの充電量不足-サブ・バッテリを充電する

-アシスト許可 -減速時の回生制御が十分に-車両を涼しい場所へ移動し,

(サブ・バッテリ)禁止

行われていないキー・スイッチを OFFにし

-アシスト許可てエンジンを冷機する

(サブB充電量)-オート・エアコン・システム

などの電装品を非作動にする

ヨ三日 アイドリング・ストツ

プからエンジン・アシストま

コンビネ

での作動時間を短くする

ンヨ

ン ・メータのイン -コンビネー ション ・メータ

フォメーション・

ディスプレイに S

の故障 車両情報ディスプレイの故障診

-HYBRID"の表

. ECM~ コンビネーション 断を実施する

示が出ない

間の CAN通信異常

2) 点検,整備,取り扱いの注意事項

-サブ・スタータ&ジェネレータは原動機として届出されており,サブ・スタータ&ジェネレータを脱着する

作業は,道路運送車両法施行規則の分解整備に該当する。

-長期間の放置等によりバッテリの放電が進んでいた場合,新品のバッテリであってもエンジン・アシストに

入り難くなる場合がある。その場合は,バッテリの充電をしっかり行う 。

-アイドリング・ストップ・システム専用のバッテリ以外を使用すると S-HYBRIDシステムが作動しづらく,

かつバ ッテ リの早期劣化につながる場合がある。

hd

QJ

ーヨSiPA

-バッテリ放電電流積算クリア

「バッテリ放電電流積算クリアJとは, ECMが記憶しているメイン・バッテリ放電電流の積算値を消去する

作業で,メイン・バッテリを交換したときに実施しする。

-サブ・バッテリ放電電流積算クリア

「サブ・バッテリ放電電流積算クリア」とは ECMが記憶しているサブ・バッテリ放電電流の積算値を消去

する作業で,サブ・バッテリを交換したときに実施する。

-サブ・スタータ&ジェネレータ作動カウンタ・クリア

「サブ・スタータ&ジェネレータ作動カウンタ・クリア」とは, ECMが記憶しているサブ・スタータ&ジェ

ネレータの作動回数を消去する作業で,サブ・スタータ&ジェネレータを交換したときに実施する。

直童日 サブ・スタータ&ジェネレータを交換したときのみ,この作業を行うこと。

参考

(DTC一覧表〉

DTC*l 自己診断項目 アイドリング・

CONSULT*2 ECM*3 (CONSULT表示名)診断 トリ ップ MIL

ストップ表示灯*4SRT

U0101 0101 * 5 CAN通信系 2

U0120 0120 * 5 スタータ/ジェネレータ C/M 2 点滅

U1001 1001 * 5 CAN通信系 2 点滅

U1040 1040 * 5 エンジン通信系統 2 点滅

U1041 1041 * 5 スタータ /ジェネレータ C/M 2 点滅

U1044 1044 * 5 エンジン通信系統 2 点滅

B1910 1910 サブバッテリリレー 2 点滅

B1911 1911 サブバッテリリレー 2 点滅

P0555 555 マスタパック負圧センサ 2 点灯 点滅

P0603 603 ECM電源系統 2 点灯 点滅

P0605 605 ECM 1.又は2 点灯,又は一 点滅

P0607 607 ECM 2 点滅

P0611 611 インジェクタコントロールモジュー

2 jレ

P0620 620 ジェネレータ 2 点滅,又は一 点滅

P062B 062B ECM 2 点灯,又は一

P0643 643 センサ電源 点灯 点滅

P065B 065B ジェネレータ 2 点滅

P0850 850 P/NポジションSW 2 点灯 点滅

POA1E OA1E スタータ /ジェネレータ C/M 2 点滅

POA8F OA8F 14Vパワーモジュールシステム 2 点滅

P1078 1078 EXH VTCカム車由センサB1 2 点灯 点滅

Pl197 1197 燃料切れ 2

P1212 1212 TCS通信 2

P1217 1217 オーバヒート 点灯 点滅

P1220 1220 FPCM

P1225 1225 スロットル全閉学習B1 2

P1226 1226 スロットル全閉学習B1 2

P1513 1513 サブスタータ&ジェネレータ作動カ

2 点滅ウンタ

P1540 1540 バッテリ電流センサB 2 点滅

P1541 1541 バッテリ電流センサB 2 点滅

phv

ny

ーヨSPA

DTC*l 自己診断項目診断トリ ップ

アイドリング・

CONSULT*2 ECM*3 (CONSULT表示名)MIL

ストップ表示灯*4 SRT

P1542 1542 バッテリ電流センサB 2 点滅

P1543 1543 バッテリ電流センサB 2 点滅

P1544 1544 バッテリ電流センサB 2 点滅

P1546 1546 バッテリ電流センサB 2 点滅

P1547 1547 バッテリ電流センサB 2 点滅

P1550 1550 バッテリ電流センサ 2 点滅

P1551 1551 バッテリ電流センサ 2 点滅

P1552 1552 バッテリ電流センサ 2 点滅

P1553 1553 バッテリ電流センサ 2 点滅

P1554 1554 バッテリ電流センサ 2 点滅

P1556 1556 バッテリ電流センサ 2 点滅

P1557 1557 バッテリ電流センサ 2 点滅

P1564 1564 ASCDステアリングSW

P1572 1572 ASCDブレーキSW

*1:1トリ ップ目のDTCは. DTCと同じ。

* 2 :これらの番号は. ]IS D5405 -3 (IS015031-6)によって規定されている。

* 3 :診断テスト・モードII(自己診断結果)ではこれらのDTCが表示される。これらの番号はNISSANによって管理されている。

* 4 :アイドリング ・スト ップ表示灯は, 異常を検出すると低速で点滅する。

* 5 :これらのDTCに対する故障診断には CONSULTが必要である。

* 6 :これらのDTCはイモピライザ関連のDTCである。

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