弊社の食品衛生7sと haccp弊社の食品衛生7sとhaccp...

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~ 1 ~ 皆様こんにちは、株式会社北川本家の松 味利晃です。 弊社は記録の残っている明暦 3 年(1657 年)を創業の年として今年 361 年目を迎え ます。江戸時代初期、宇治川(淀川)沿い 豊後橋(観月橋)の近くで「鮒屋(ふなや)」 という船宿を営んでいた初代・鮒屋四郎兵 衛がお客様にだすための酒を自分でつく りはじめたのが、酒造りの第一歩とされて います。明暦 3 年伏見には 83 軒の造り酒 屋があり、「鮒屋の酒」という銘柄で伏見 の代表的な清酒として、三十石舟に積まれ 大坂(大阪)へ運ばれ、さらに江戸へ送ら れて東人(あずまびと)の舌をとらえたと いわれています。 明治 43 年(1910 年)、10 代北川三右衛 門が、中国の漢詩の中より「富此翁」(富 コレ翁ナリ)の表現をみつけ、酒銘を「富 翁」といたしました。 「富此翁」の「富」は貧富を表すのでは なく、精神的な富をさし「心の豊かな人は、 晩年になって幸せになる」という意味です。 さて、古くから造られている日本酒では、 造りにおいての殺菌工程は最終段階の火 入れであり、これはパスツールより 300 年 早かった「酒に火入れ」の技でした。また 発酵段階においては、殺菌工程は有用微生 物の圧倒的多数による生物的競争で、余計 な微生物を淘汰し生育させないようコン NPO法人食品安全ネットワーク便り 第 133 号 《略称:フーサンだより》 (2018 年 3 月) 発行:NPO法人食品安全ネットワーク(Food Safety Network) 理事長:角野 久史 編集担当:森田 真、平井 由紀 ホームページ:http://www.fu-san.jp/ 事務局:〒541-0056 大阪市中央区久太郎町 1-4-8 堺筋本町ガーデンスクエア イカリ消毒株式会社 TEL.06-6264-2741 FAX.06-6264-2740 弊社の食品衛生7Sと HACCP 特定非営利活動法人食品安全ネットワーク 理事 松味 利晃 (株式会社 北川本家)

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~ 1 ~

皆様こんにちは、株式会社北川本家の松

味利晃です。

弊社は記録の残っている明暦 3年(1657

年)を創業の年として今年 361年目を迎え

ます。江戸時代初期、宇治川(淀川)沿い

豊後橋(観月橋)の近くで「鮒屋(ふなや)」

という船宿を営んでいた初代・鮒屋四郎兵

衛がお客様にだすための酒を自分でつく

りはじめたのが、酒造りの第一歩とされて

います。明暦 3 年伏見には 83 軒の造り酒

屋があり、「鮒屋の酒」という銘柄で伏見

の代表的な清酒として、三十石舟に積まれ

大坂(大阪)へ運ばれ、さらに江戸へ送ら

れて東人(あずまびと)の舌をとらえたと

いわれています。

明治 43 年(1910年)、10代北川三右衛

門が、中国の漢詩の中より「富此翁」(富

コレ翁ナリ)の表現をみつけ、酒銘を「富

翁」といたしました。

「富此翁」の「富」は貧富を表すのでは

なく、精神的な富をさし「心の豊かな人は、

晩年になって幸せになる」という意味です。

さて、古くから造られている日本酒では、

造りにおいての殺菌工程は最終段階の火

入れであり、これはパスツールより 300 年

早かった「酒に火入れ」の技でした。また

発酵段階においては、殺菌工程は有用微生

物の圧倒的多数による生物的競争で、余計

な微生物を淘汰し生育させないようコン

NPO法人食品安全ネットワーク便り 第 133 号 《略称:フーサンだより》 (2018 年 3 月)

発行:NPO法人食品安全ネットワーク(Food Safety Network)

理事長:角野 久史 編集担当:森田 真、平井 由紀

ホームページ:http://www.fu-san.jp/

事務局:〒541-0056 大阪市中央区久太郎町 1-4-8 堺筋本町ガーデンスクエア

イカリ消毒株式会社 TEL.06-6264-2741 FAX.06-6264-2740

弊社の食品衛生7Sと HACCP

特定非営利活動法人食品安全ネットワーク

理事 松味 利晃

(株式会社 北川本家)

~ 2 ~

トロールしています。時代と共に蔵付き酵

母から純粋に分離された優秀な酵母を使

うようになると、殺菌の意味合いや仕込み

自体も変化してきています。

そのような伝統や経験の中で仕事をし

てきましたが、「食品安全ネットワーク」

に参加する事により知ることとなったの

は、漬物業界の7S化による発展に驚いた

ことです。監督官庁が違うこともありまし

たが、圧倒的多数による生物的競争や、高

濃度による微生物淘汰の行われる同じよ

うな部分がある業界なので、食品衛生の環

境も同じであろうと思っていました。とこ

ろが食品安全ネットワークでの工場見学

で、あまりに綺麗な現場を見て相当な焦り

を抱くこととなりました。すぐに弊社でも

トップダウンは出来ませんでしたが、整

理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・しつけ・清

潔の7S活動を開始しました。

一番に効果が出たのは、目に見えての無

駄・無理が減少して時間の短縮効果でした。

機械の構造を知っての洗浄に於いては、い

ままで気づかなかった汚れの発見や、汚れ

だけでなく機械の調整・整備・改造に大変

役立ちました。この7S活動には常に考え、

気づくという行為が自然と生まれてくる

ように思われます。

最近では「整頓」の、あるべき場所に戻

す、定位置・定量管理から後工程も考えた

整頓の習慣付けが出来るように、ステップ

アップを狙っています。

学生時代は「カンニングは駄目」と教わ

り、社会に出ると途端に「仕事は盗め」「見

て覚える」となり戸惑った記憶があります。

食品安全ネットワークでの工場見学や7

S実践実例発表会を参考に、真似出来るこ

とはすぐに真似する事を一番としていま

す。

小さな会社にも ISO や FSSC などのコン

サル案内が沢山届いて、最近は、HACCP ば

かり沢山届いています。

厚生労働省の「食品製造における HACCP

導入のための手引書」の各業界編を見て参

考にしようとしましたが、なかなか酒造業

に合うようなものがありません。

HACCPに 7原則 12手順がありますが、基

準 B であってもその 7 原則 12 手順が基に

なっているので、私共のような企業では人

材不足で荷が重く気も重いです。HACCP は

いまボチボチと進行中ですが、作って終わ

りにしない。食品衛生7Sを基にして現状

の施設や設備はそのままとしてソフト面

を重視した仕組みを作り上げ、ハード面の

改修は事業計画に合わせて対応するのと

同時に、補助金の仕組みについても勉強し

これを取り入れて、ハード面の早期実現を

狙って幾度も改訂していくものとしたい

と考えています。

~ 3 ~

「食品衛生 7S実践事例集10」

を発売しました!

「食品衛生7S実践事例集10」を発売しました。本書は、食品企業で実際に取組まれた

食品衛生7S活動をまとめた実践的な書籍です。また、食品衛生7Sの基本的な考え方に

ついても丁寧に解説していますので、工場で取り組む際の参考だけでなく、従業員教育に

も活用いただけます。

第一部 解説編

第1章 食品衛生7S概要

第2章 食品衛生7Sの構築でHACCPが有効

に働く

第3章 事例のワンポイント解説

第二部 事例編

事例1 (株)伊藤軒

事例2 小川珈琲(株)

事例3 牛信(株)

事例4 (株)かわかみ

事例5 旭給食(株)

食品安全ネットワークでは「食品衛生7S実践事例集」を、定価¥2,700-(税込み)の

ところを会員に限り、

特別価格¥2,000-(税込み) で販売します。

この機会にぜひご購入下さい。

「食品衛生7S実践事例集7、8、9も絶賛発売中です。

~ 4 ~

2017年11月15

日に開催されま

した「第 4回HA

CCPセミナー」

において、第 1

講義を担当させ

ていただきました名畑です。

私が担当させていただいた第 1 講義は「H

ACCPの歴史」「HACCPとは」から始ま

り「従来の品質管理とHACCPによる管理

の違い」などHACCPの基本的なことを説

明し、そのあと「食品衛生7SとHACCP

システムとの関連性」ではHACCPシステ

ムに必要不可欠な「一般衛生管理」と「食品

衛生 7S」の関係性についてお話をさせていた

だきました。その後本題となる「HACCP

7原則と 12手順」の前段階である手順0から

手順5までの説明をして第2講義の安藤理事

にバトンタッチしました。

過去 3 回にわたって行われたHACCPセ

ミナーによってブラッシュアップされた講習

内容を引き継ぎ、あまり練習もできないまま

講義リハーサルの日を迎えました。その反省

会では「いかにわかりやすく受講者の顔を見

ながら講義ができるか、あなた自身が食品工

場で食品衛生7Sの活動を行ってきたことを

どのように上手くお伝えできるのか」を考え

て本番に臨んでくださいとの角野会長をはじ

めとする理事各位からの温かいお言葉をいた

だきました。

そのおかげでセミナー当日は受講者の方の

反応を見ながらお話をすることができました。

食品衛生7Sの活動についてはもう少し現実

に直面した問題点や活動の成果をお伝えでき

ればよかったと思っております。反省点は

多々ありますが、このセミナーの講師をお任

せいただいたことまた、私自身が「食品衛生

7S」と出会い当社が変化していくところを

目の当たりにして実感していることをこれか

ら取り組みされる企業の皆様に伝えられる機

会を与えていただいたことに感謝を申し上げ

ます。

話はセミナーから離れてしましますが、今

年2月に新本社工場に無事移転いたしました。

新しい工場は最新の設備を備えて稼働を行い

ます。しかしながら働く人間がうまく使いこ

なし、整理整頓はもちろんのこと清掃・洗浄・

殺菌もマニュアルどおり行わなければきれい

な工場は維持できません。これから当社が約

8年間「食品衛生7S」を実践してきた成果

が問われることとなります。本年6月の「第

52 回工場見学会」も当社で行われますので是

非ご参加いただきアドバイスをいただければ

幸いです。これからもご指導をよろしくお願

いいたします。

特定非営利活動法人食品安全ネットワーク

理事 名畑和永

(明宝特産物加工 株式会社 専務取締役)

~ 5 ~

総合衛生管理製造過程(マル総)承認制度

が、1995 年(平成7年)7月に食品衛生法改正

として厚生省(現在の厚生労働省)から示さ

れました。

当時、私は乳製品を製造する工場の実務担

当者として、マル総承認事業所第1号グルー

プを目指して社内HACCPチームに加わり、

試行錯誤の展開を続け 1998年(平成 10年)1月

19日に無事目標達成を果たしました。

いま、2020 年の東京オリンピック・パラリ

ンピックを見据えたHACCP制度化(義務

化)の法令改定が明確に示されています。

HACCP制度化により、原材料調達・保

管・加工・製品・包装・出荷・輸送・販売等

のフードチェーン全てに、HACCPの衛生

管理手法を取入れることが求められています。

HACCPに初めて取組む事業所にとって

は、必要性は理解できても仕組みづくりに不

安と負担を憂慮されている経営者並びに実務

担当者様が多くおられると推察いたします。

中、第4回HACCPセミナー講師を担当す

るにあたり、制度化の対応準備を行う各業種

の関係者様への支援を、微力ながら経験を踏

まえてお手伝いできることを心掛け講師を担

当いたしました。

HACCPの仕組みづくりは、7原則 12手

順をベースとしたシステム構築作業が推進さ

れますが、文書作成や記録の管理体制を自前

でつくり込むことは、慣れない作業とは言え、

なかなかの高いハードル越えとなるものです。

しかし、現在営業許可を得て確かな品質の

製品を市場に販売・供給している実績を踏ま

えればHACCP制度化への取組みは、いま

行われている作業の衛生管理体制への見直し

と仕組みを整理する機会と位置づけください。

グループワーキング(GW)中、受講者間

で普段話す機会のない他事業所担当者と情報

交換している場面を見掛けました。異業種の

日常管理や困っている課題等、この場だから

言えることや聞けることがあると思います。

また、セミナー終了後も連絡を取り合うこと

も可能となり、セミナー受講を今後の人脈づ

くりの機会に是非活かしてください。

食品安全ネットワークでは、豊富な実務経

験を持つアドバイザー陣によるシステム構築

支援援体制を整えています。本セミナーを通

じてHACCPを理解していただき、受講後

のシステムづくり及び仕組みの維持管理を懇

切丁寧にご支援できる組織として、皆様にと

って心強いサポート役を果たして参ります。

気軽に食品安全ネットワークが開催する勉強

会に参加してください。お待ちしています。

特定非営利活動法人食品安全ネットワーク

監事 安藤 鐘一郎

(国際衛生 株式会社 サニタリー営業部 アドバイザー)

~ 6 ~

HACCP構築コンサルティングのご案内

-食品衛生7Sを基礎に HACCPを構築しませんか?-

NPO法人食品安全ネットワーク

理事長 角野 久史

厚生労働省は 2016 年 12 月「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会 最

終とりまとめ」で、全ての食品関連業者を対象に HACCP を制度化することを

公表しました。これからの食品安全は HACCP 無しでは語れない時代に入って

きています。

一方、私たち NPO 法人食品安全ネットワークが提唱する「食品衛生 7S」は

「目に見えない微生物レベルの清潔」を目的とし、食品の安全を確保するため

の基礎となる衛生管理手法です。これがきちんと機能していないと HACCP は

有効に機能しません。

そこで、HACCPの構築を希望する食品事業所の皆様に、当法人の経験豊富な

コンサルタントの中から、技術、知識、経験等を考慮し、最適なコンサルタン

トをご紹介いたしますので、ご希望の事業所様は以下の内容でお申込み下さい。

①お申込み 別添の「様式2」に必要事項をご記入の上、当法人事務局 e-mail

[email protected])までお申込み下さい。

②現場訪問 当法人の担当者が直接お伺いし、見積作成に必要な情報(食品

衛生管理状況など)を確認いたします。

③見積・契約 上記②の結果を基にお見積りを作成し、当法人事務局からお見

積り書を作成します。ご承認いただけましたらコンサルティング

契約を締結します。

④コンサルティング

・原則として毎月 1回 2時間訪問で 12か月のコンサルティングです。

・費用は 1時間当たり 30,000円です。

・前半 6 か月で食品衛生7S(一般衛生管理)の構築、後半 6 か月間で

HACCPの構築を行います。

※ご不明な点は、当法人事務局([email protected])まで e-mail にてお問い

合わせ下さい。

~ 7 ~

昨年 9 月に、厚生労働省のホームページ

に公益社団法人 日本食品衛生協会が作成

した『HACCPの考え方に基づく衛生管理の

ための手引書(小規模な一般飲食店業者向

け)』が掲示されました。これは、厚生労働

省が進めている『HACCP制度化』に向けて

の取り組みの一つとして、昨年 3 月に厚労

省が各事業者団体に“その事業形態にあった

HACCP導入のための手引書を作成する”こ

とを推奨したことを受けて、前述の協会が作

成したものです。対象は、小規模、特に数人

程度規模の飲食店であり、そもそも HACCP

とは何かが分からない、という食品衛生の初

心者を対象にした手引書となっています。

大枠としては、概要版と詳細版の 2 種類

あり、概要版は 22 ページ、詳細版は 54 ペ

ージです。内容はほぼ同じですが、詳細版は

概要版の説明部分を手厚くした内容となっ

ています。大まかな流れとしては、日々の作

業の中の衛生的なポイントを“一般的衛生管

理”と“重要管理点”として具体的に挙げ、

その点についてそれぞれ記録を行っていく

ことを推奨しています。厚労省からのガイダ

ンスにも明記されていますが、食品衛生に対

する予備知識のない方に対しては、簡単な言

葉で、ポイントを解説することが重要です。

文章に矛盾や重複がなく、かつわかりやすい

言葉・表現で、簡潔に説明しなければ、現場

にはとっつきにくく、導入に至りません。ま

た、手引書を読んでいただくためには、ペー

ジ数も出来るだけ絞ることが必要です。細か

な解説や説明はあった方が良いですが、ペー

ジ数が多いと、そもそも読む気にもならない

場合があります。これらの点において本手引

書は、簡単な言葉で作られたボリュームの異

なる二種類の手引書を作ることでうまく対

応しているものと感じられました。

またその他今回、私が本手引書を見ていく

上でポイントとした点は、以下の 3点です。

①非常に忙しい飲食店の厨房で、確認・記

録が行うことが出来る、現実的な手順・

ルールであるか、という点

②記録(主に重要管理点)に関して、保健

所への一般消費者からの苦情相談が発

生した際、保健所の担当者が当該の飲食

店へ立ち入りを行った場合に、飲食店側

の作業の正当性を担保出来る資料とな

り得るか、という点。

③その他、余分な作業、ルールがないか、

という点

HACCPの考え方に基づく

衛生管理のための手引書 について 株式会社 大近

品質管理部 田尻 直史

~ 8 ~

①は必須で、出来るだけ手間のない運用方

法にする必要がありますが、②も大切なこと

であり、ある程度の情報量がほしいところで

す。これらの視点で見ると①と②は確認・記

録を行う頻度の点において相反しており、バ

ランスが大切です。

本手引書では、頻度は一般的衛生管理、重

要管理点ともに確認・記録は一日 1 回とな

っており、①に関しては、ほぼ問題なく行え

るレベルであるかと思います。また③に関し

ても、重複などはなく、必要な部分だけが記

載されていたと感じます。ただし、②に関し

ては問題なく記録が機能するか不安です。最

近は、消費者の方の食品衛生への意識が高く

なり、取り巻く環境がよりシビアになってい

ると感じられ、また一部では保健所への相談

も増えていると聞き及んでいます。そういっ

た中で、今後お店(企業)を守るためにも、

手間をかけて行う HACCP 導入は、自分達

を守ってくれるものであることが望まれま

す。管理方法に関しても湯気や色といった、

“見た目”の部分のチェックでも良いと記載

されており、有事の際にはたして自分達の正

当性の証明になるのか、頻度と合わせて少し

情報不足ではないかと感じます。万が一事故

が発生し、怒れる消費者の方が保健所に直接

報告を行った場合、保健所担当が当該施設へ

調査を行い、記録帳票等をもって消費者の方

へ説明することになろうかと思います。そう

いった観点からは、もう少しボリュームを持

たせるべきではないかと感じました。そのた

めには、一つの案として、原材料の大きさや

形、加熱強度の一定化など、前提となる条件

を予め均一化しておき、その上で加熱時間な

どの簡便に測れるものを記録として残すな

どの工夫をすれば、良いかと思います。

(例えば、唐揚げを調理する場合、鶏肉の大

きさと形、保管温度、揚げ油の温度を一定に

しておき、想定される最大の大きさの場合に

でも十分に火が通る時間を予め確かめてお

けば、加熱時間の管理だけである程度の証明

が可能です)

確認・記録は、出来る限り詳細に行った方

が有事の際に自分達の正当性を証明(説明)

できやすくなります。しかし、忙しい現場で

は出来るだけ簡単に手間なく行いたい。手間

という部分では相反する部分であり、手引書

を作成する側にとってはページ数の件と含

めて二重のジレンマであり、ご苦労された点

であったと推察致しますが、手引書が使い易

いものとなり、広く HACCP の考え方が普

及するためには、もっとも重要な部分である

と感じます。手引書を使う側としては、本手

引書に限らず、今後各業界団体から発行され

る手引書について、バランスを大切にし、纏

まったものであることを望みます。

なお、今回の手引き書は、ポイントを絞り

丁寧に説明されているので、HACCP の考え

方を導入する上では非常に有効であると感じ

ましたが、少し文章や表が多く、とっつきに

くい部分がありますので、とりあえずHACCP

を知りたい、という方は厚生労働省が発行し

ている『HACCP の考え方を取り入れた食品

衛生管理の手引き』を参考にされると良いか

と思います。こちらはイラストが多く、文字

も大きいので予備知識なしの方はこちらの方

が分かりやすいつくりとなっていますので、

こちらも合わせてご確認いただければと思い

ます。

~ 9 ~

平成 29年 12

月 2日(土)に

大阪産業創造

館にて開催さ

れました「第 89

回 食品の安

全・安心講座

(米虫塾)」に

参加させてい

ただきました

フードテクノエンジニアリング株式会社 品質保

証部の山本銀河と申します。

弊社は、食品工場や低温物流センターの冷却設

備を中心としたエンジニアリング会社です。また、

急速凍結設備「フリーザー」のメーカーでもあり

ます。平成 29 年 1 月 23 日には、FTE アカデミー

という地球環境とエネルギーをコンセプトとした

研究施設を開設しました。ここでは、地球温暖化

防止とエネルギー問題解決のため、自然冷媒の実

用化・高効率化に取り組んでいます。平成 29年 10

月 14日(土)には、食品安全ネットワークの見学

会でもご使用いただきました。自然冷媒に関する

最新の情報を随時発信して参りますので、ご来場

の際はお気軽にお問い合わせください。

それでは講義内容について、ご報告させていた

だきます。

【講義内容】

演題 1 「冷凍技術と冷凍の食品」

公益社団法人 日本冷凍空調学会

冷凍技士運営委員/食品冷凍技士 後藤康慶 様

冷却及び冷凍の歴史から最新の冷凍技術まで、

幅広くお話しいただきました。日本で食品として

初めてアイスクリームが製造されたのは、1869年

とのことでした。そこから約 50 年後の 1920 年に

アイスクリームフリーザーを使用した工業的なア

イスクリームの生産が始まります。1964年には東

京オリンピックを皮切りに、ホテルやレストラン

での冷凍食品の利用が急速に拡大し、技術の発展

とともに冷凍食品の多様化が進み、今日に至りま

す。

冷凍食品の定義として、4つの要件があります。

具体的には、①前(下)処理している、②急速凍結

している、③適切に包装している、④品温を-18℃

以下で保存している…の 4つです。この内、「②急

速凍結している」が、多種多様な冷凍食品の製造

において最大氷結晶生成温度帯(-1℃~-5℃)を

30分以内で通過させるため、食品の組織破壊を少

なくしています。また、特殊な冷凍技術として、

CAS凍結システムでは、食品中の水分が過冷却状態

を経て一気に凍結するため、より組織破壊を少な

くすることが出来るとのことでした。

最後に、冷凍食品の品質・衛生管理の向上に関

する継続的な指導を行う制度として、「冷凍食品認

定制度」についてご説明されました。認定は、冷凍

食品製造工場認定基準に基づき、第三者認証で行

います。この基準は、①仕事の仕組みに係る基準、

②現場での実施・管理に係る基準、③施設設備・機

械器具に係る基準…の 3 つの基準で構成されてい

るとのことでした。HACCPシステムや FSSC22000の

要求事項を取り入れた構成となっているので、企

業の製造衛生管理に役立つと実感しました。

演題 2 「地球温暖化対策としての新しい冷凍技

術」

フードテクノエンジニアリング株式会社

FTEアカデミー 佐藤徳重

現在の冷媒動向及び弊社の自然冷媒への取り組

みについてご説明いたしました。フロン類の国際

的な動きとしては、①1987年に採択されたモント

リオール議定書でのオゾン破壊防止の動き、

日 時:2017年 12月 2日

場 所:大阪産業創造館

報告者:フードテクノエンジニアリング株式会社

品質保証部 山本銀河

第 89回 食品の安全・安心講座(米虫塾)研修報告

~ 10 ~

②1997 年に採択された京都議定書での地球温暖化

防止の動き…の 2 つの大きな流れがあります。そ

の 2 つの流れのうち、今までオゾン層破壊を焦点

としていたモントリオール議定書に、規制対象で

はなかった代替フロンである HFC が地球温暖化防

止のために規制対象に追加されるという改正が、

2016年 10月に「キガリ改正」として合意され、冷

凍業界内では大きな波紋を呼びました。また、2016

年 11 月には京都議定書のパリ協定が採択されま

した。ここでは 2020年以降の温暖化対策に焦点を

当て、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比

べて 2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑え

る努力を追求することを掲げています。

世界的な冷媒動向を受けて、諸外国では代替フ

ロンの税制化など、フロン類規制の方向に動き始

めています。また我が国でも、フロン排出抑制法

によるフロン類規制を進めようとしています。既

に食品・消費財大手や小売大手が加盟する国際的

な業界団体コンシューマー・グッズ・フォーラム

でも、ミッションとして、サステナビリティ(持続

可能性)の項目で代替フロンの使用・排出禁止を

掲げるなど、食品産業でもフロン類規制の流れが

生まれています。弊社では、自然冷媒である CO2冷

媒(二酸化炭素)を利用した水冷式冷凍機の開発

を進めております。CO2は、温暖化原因の多くを占

める物質であるため温暖化寄与が大きいと誤解さ

れがちですが、フロンに比べ GWPは数千分の 1、毒

性及び可燃性もなく、人と地球に優しい冷媒です。

もし、ご興味がございましたら、お気軽に弊社ま

でお問い合わせ下さい。

演題 3 「低温度管理工場の建設と問題点」

三和建設株式会社

常務取締役 谷直人 様

低温度管理工場の問題点や設計の留意点につい

て、具体例を用いながらお話しいただきました。

低温度管理する上でよく問題となるのが、結露で

す。結露は、温度差が生じたときに発生し、黒カビ

や細菌の発生原因となります。特に、外気をその

まま工場内に給気することでも結露は発生します。

また、凍結や着霜など、水分が凍ることで生じる

問題もあります。マイナス温度帯の冷凍庫では、

前室を適切に施工しなければ空気が庫内に流入し、

着霜します。また、それを長時間放置しておくと、

凍結してしまいます。対策として今回講演の対策

事例では、結露の場合は、外調機を導入すること

で、給気の水分を減らし、結露を防止することが

出来るとのことでした。また、凍結は、前室のイン

ターロックや圧力レベルを調整することで着霜を

防止することが出来る他、床のドライ化や前室を

設けることでも解決出来るとのことでした。

これらの問題が発生しないようにするには、目

的の明確化、庫内での作業内容や機器、冷蔵・冷凍

庫扉の開閉頻度など詳細に至るまで条件を設定す

る必要があります。低温度管理の食品工場の建設

には、多くの配慮が必要であり、難易度が高くな

ってしまいます。これらを踏まえて、食品工場建

設プロジェクトでは、設計者選びが最重要課題と

なります。失敗しないパートナー選びの方法とし

て、事業目的や製品、スケジュールについてなど

の情報を書面でアウトプットし、複数の設計会社

から提案を受けることが重要とのことでした。

2015年 1月出版の FSSC 22000・HACCP対応工場改

修・新設ガイドブックにはこの書式が同梱されて

いますので、活用されるのも良いかもしれません。

今回の講座では、冷凍をテーマとした様々な講

義を聞くことが出来ました。冷凍食品の歴史や実

際の低温食品工場の施工例など、今まで知らなか

った「冷凍」を学ぶことが出来ました。毎回テーマ

ごとに開催されていますので、知らない知識を体

系的に学べる素晴らしい講座だと思いました。私

は、今回初めて受講させていただきましたが、今

後も講座に参加し、更なる知見を広げていきたい

と思います。

最後になりましたが、今回講義いただいた講師

の方や事務局の皆様に厚く御礼申し上げます。あ

りがとうございました。

~ 11 ~

1.日時 2018 年 4 月 11 日(水) 13 時 30 分開始(受付 13 時 00 分より)

2.場所 大阪産業創造館 TEL(06)6264-9887

大阪市中央区本町 1-4-5(12ページをご覧ください)

3.内容

(1)定期総会 13 時 30 分~14 時 20 分

1)挨 拶 特定非営利活動法人 食品安全ネットワーク 理事長 角野 久史

2)議 事 事業・決算報告、監査報告、事業計画・予算審議他

3)事業案内 海外研修他

【休憩】 14 時 20 分~14 時 30 分

(2)特別講演会 14 時 30 分~16 時 00 分

テーマ:

「HACCP 制度化(義務化)における「基準 B」の内容について

(仮題)」

講師:山口大学 共同獣医学部 教授 豊福 肇 氏

【移動】 16 時 00 分~16 時 10 分

(3)情報交換会 16 時 10 分~18 時 00 分

4.お申込み

(1)参加費 お一人様 5,000円

(2)情報交換会 お一人様 3,000円

(3)定 員 90名(会場の都合により、先着順で締め切らせていただきます。)

(4)出欠の連絡 出席される方は 12ページの参加申込書にご記入の上、4 月 2日(月)

までに FAXにてお知らせ下さい。(ホームページからも申し込めます。)

特定非営利活動法人 食品安全ネットワーク

「第2回 NPO 法人定期総会(第 22 回定期総会) と特別講演会」のお知らせ

~ 12 ~

申込み先:イカリ消毒株式会社 食品安全ネットワーク 担当 鴻上 高 宛

FAX:06-6264-2740 (TEL:06-6264-2741) 「第2回 NPO 法人定期総会(第 22 回定期総会)と特別講演会」:2018 年 4 月 11 日(水)

会社名

参加者氏名

情報交換会に 出席 ・ 欠席 します

情報交換会に 出席 ・ 欠席 します

情報交換会に 出席 ・ 欠席 します

情報交換会に 出席 ・ 欠席 します

住所 〒

TEL FAX

注:情報交換会への出欠を必ず記入(○印)して下さい。

「第2回NPO法人定期総会(第 22回定期総会)と特別講演会」

会場案内

~最寄りの駅より会場へ~

●地下鉄堺筋線、堺筋本町駅

12番出口より約5分

●地下鉄中央線、堺筋本町駅

2番出口より約5分

大阪市中央区本町1-4-5

TEL(06)6264-9887