簡易脳波計による学習状態の思考比較分析

　坂本佑太　(湘南工科大学)　吉田幸二　(湘南工科大学)　宮地功　(岡山理科大学)

目次

１．研究の目的

２．簡易脳波計

３．脳波の評価

４．脳波取得プログラム

５．実験

６．考察

７．まとめと今後の課題

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１.　研究の目的

3

本研究では簡易脳波計を用いた脳波計測において，学習状態と脳波データから思考状態の予測をするシステムの構築を検討する

思考

学習

脳波

フィードバック

予測

１.１　脳波を用いる利点

遠隔教育においての学習者側の状況把握

脳波情報を学習者自信にフィードバックすることでモチベーションを維持

脳活動の変化を細かく観察できる

4

１.２　脳波と思考状態の関係

脳波の周波数成分を観察することで人の精神状態の指標にすることができる

知覚作業 信号計測 特徴量抽出

人の脳の活性度を判別

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２.　簡易脳波計NeuroSky社のMindSet耳朶の基準点と額の測定点との基準電極導出

脳波に含まれる各周波数成分を抽出

PCにBluetooth通信で脳波データを送信

図．ＭｉｎｄＳｅｔ　本体

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２.１　脳波計取得データ

周波数成分 周波数帯域(Hz)

δ波 0.5 – 2.75

θ波 3.5 – 6.75

Low α波 7.5 – 9.25

High α波 10 – 11.75

Low　β波 13 – 16.75

High β波 18 – 29.75

Low　γ波 31 – 39.75

mid γ波 41 – 49.75

サンプリング周波数512（Hz）

周波数成分値域

7

３.　脳波の収集分析

α波と若干のβ波が脳波の大部分を占める

心的状態や脳活動に伴って変化

個人差を考慮するためα波とβ波の比率としてβ/αを用いる

参考文献：原著論文上田,石田,松田,福嶋,中道,大平,松本,岡田脳波を利用したソフトウェアユーザビリティの評価ヒューマンインタフェース学会論文誌,Vol.10,No.2,pp.233-242,（２００８）

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３.１　実験目的

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使用する簡易脳波計の特徴や有効性を検証する基礎実験を行った

本研究でも学習中の思考状態が判別可能であるか従来研究と比較しながら試みる

医療型

簡易型

４.　脳波取得プログラム：

ThinkGearConnector

<?phpstream_socket_client(“tcp://127.0.0.1:13854”,・・・)

シリアルポート接続

localhost：127.0.0.1port:13854ソケット通信

Bluetooth Driver 製作した　PHP　program

ＰＣ

Mind Set　

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４.１　プログラム詳細

MindSet本体ＣＳＶ　ファイル

一秒おきに

42byte　バイナリデータ

｛ヘッダ,信号精度,

集中度,瞑想度,

各周波数帯域スペクトル｝

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ThinkGear　Connector Apache http Server(local)

　ＰＨＰプログラム

５．実験

目的

　　簡易脳波計装着時の認知作業中における脳波と思考状態の関係性を分析すること

プロセス

　　認知作業中の脳波を測定し，採取した脳波と思考との関係や周波数特性を観察し，学習状態と脳波の相関関係を検討する

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５.１　実験１

被験者：健常者２０代男性 １名

データの取得範囲：１０分間

認知作業の内容言語的課題

学習難易度(易)学習難易度(中)学習難易度(難)

感覚的課題

音楽鑑賞１（classic）音楽鑑賞２（pops）

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５.２　実験１結果　　平均値

α波平均 β波平均 β/α値 α波標準偏差 β波標準偏差

音楽鑑賞１ 0.51619 0.23421 0.51627 0.55719 0.19889

音楽鑑賞２ 1.09912 0.54248 0.62834 0.98816 0.62451

学習(易) 0.5621 0.41423 1.16329 0.61694 0.41423

学習(中) 1.14498 1.57952 1.60894 1.42728 1.52212

学習(難) 0.7212 1.33357 2.16034 0.83496 1.06381

α波成分β波成分の測定結果により

　・思考が必要なときほど大きくなる

　・落ち着いているときほど偏差は少ない

　・心的負荷がかかると減衰する

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５.３　実験結果　　β/αグラフ

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

10 60 110 160 210 260 310 360 410 460 510 560経過時間(秒)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

10 60 110 160 210 260 310 360 410 460 510 560経過時間(秒)

学習(中)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

10 60 110 160 210 260 310 360 410 460 510 560経過時間(秒)

音楽鑑賞１

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

10 60 110 160 210 260 310 360 410 460 510 560経過時間(秒)

学習(易)

学習(難)

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５.４　実験２

被験者：健常者２０代男性 ２名

データ計測時間１２分間：

（作業前１分、作業中１０分、作業後１分）

データの取得方法は実験１と同様

認知作業の内容

言語的課題

図形的課題

算術的課題

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５.５　被験者Ａの結果とβ/αグラフ被験者

Ａ

データタイプ 算術課題 図形課題 言語課題

α 2.27340 3.78079 2.76655

β 2.00313 4.14193 4.24385

β/α 1.42568 2.55083 2.05388

作業前(１分)

β/α標準偏差

1.26908 2.59668 1.65656

α 1.75858 2.28057 2.58461

β 1.44336 3.62462 4.03772

β/α 1.24275 2.39331 2.31917

作業中(10分)

β/α標準偏差

1.32791 1.91773 1.74474

α 2.22192 2.57526 2.87192

β 1.31775 2.08151 2.26554

β/α 0.91782 1.15162 1.09371

作業後(１分)

β/α標準偏差

0.79220 0.87617 0.83869

作業前

作業後

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５.６　被験者Ｂの結果とβ/αグラフ被験者

Ｂ

データタイプ 算術課題 図形課題 言語課題

α 2.86154 2.87473 3.33371

β 2.10798 1,62203 2.58141

β/α 0.96041 0.85262 1.04459

作業前(１分)

β/α標準偏差

0.57335 0.56307 0.66570

α 3.04778 2.15842 4.39694

β 1.77715 1.69724 5.19762

β/α 0.76998 1.03033 1.51614

作業中(10分)

β/α標準偏差

0.54494 0.75068 1.17917

α 3.11289 2.58336 4.29583

β 1.61951 1.31099 2.44681

β/α 0.77195 0.81063 0.76393

作業後(１分)

β/α標準偏差

0.72368 0.63904 0.47469

作業前

作業後

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６.　考察１

実験１の結果から

　　★落ち着いているときはαおよびβパワースペクトルの値が小さく、変化も安定的

　　★β/α値は思考状態の強さに比例

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６．考察２

実験２の結果から

　　★難易度が高い（取り組みづらい）課題ほどβ波が高い傾向がある

　　★作業前の脳波は試験開始前の緊張や動揺のためにβ値が高かった

　　★課題の出題形式や難易度および学習者のレベルに応じて脳波データが顕著に変化

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７．まとめと今後の課題

まとめβ/α成分は学習中の思考状態の予測に有効簡易脳波計は日常的な脳活動の指標を得るのに効果的

今後の課題１．被験者の数を増やして適応的な思考状態の予測を可能にする

２．脳波を予測するプロトタイプシステムを作成

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以上で発表を終わります

ご清聴ありがとうございました