四種類の波高計の比較 - godac data site -nuunkui-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波...

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海洋科学技術センター試験研究報告 JAMSTECTR 7 (1981) 四種類の波高計の比較 高橋 賢一*1 甲 斐 源 太 郎*1 益 田善雄*l 4種類の波高計,ウェーブ ライダー,ブ イ式波高計,超音波式波高計お よび 船舶式波高計の基本的な性能を比較した。比較に用いたデータは,山形県由良 沖で行った波力発電装置,“海明”の海域実験で取得されたものである。デー タ処理は,平均 波法とスペ クト ル分析法を用いた。この報告は, 4種類の波高 計の原理,構造と仕様,係留システムおよび解析結果に対する考察から構成さ れている。 Kenichi Takahashi*2, Gentaro Kai*2, Yoshio Masuda*2, This paper deals with comparison of fundamental characteristics of four different types of wave gauges: a wave-rider, a buoy-type wave gauge, an ultrasonic wave gauge and a ship-borne wave gauge. The comparison is based on the data obtained in an open sea trial whose purpose was not directly to carry out the comparison but to test the wave power generating system called the "KAIMEI". For this comparison, the averaging method and the spectral analysis method were employed. This paper contains a description of the four different operat- ing principles, the structure and specifications of the wave gauges, the mooring system of each wave gauge and some considerations on the resultsof the data analysis. 1. はじめに 近年,海洋調査をはじめとし,漁業やエネルギ ー資源の開発など,各種の海洋開発が急速に進め られるようになってきた。 これらの研究開発をすすめる際,最初に必要な ことは海の状態,すなわち,波浪の状態である。 波の状態は,古くから,いろいろな方法で観測 し評価されている。 最も簡単な方法は海岸または航行中の船舶上か ら目視で観測する方法がある。この方法は,特別 な観測機器が必要でないが,せいぜい0.5m 単位で しか,測定することができない。 海洋上 で, 波にゆられている船舶,または浮遊 構造上物でも,波が測定できるもの として,船舶 式波高計( タッカー式波高計)が開発され,海洋 波の測定に有力な手段が提供されるようになった。 41 *I 海洋利用技術部 *2 Marine Exploitatin Techno] ogg Department. Comparison of Four Different Types of Wave Gauges

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Page 1: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

海洋科学技術センター試験研究報告 JAMSTECTR 7 (1981)

四種 類 の波 高 計 の比 較

高橋 賢一*1 甲斐源太郎*1 益 田善雄*l

4種類の波高計,ウェーブライダー,ブイ式波高計,超音波式波高計および

船舶式波高計の基本的な性能を比較した。比較に用いたデータは,山形県由良

沖で行った波力発電装置,“海明”の海域実験で取得されたものである。デー

タ処理は,平均波法とスペクトル分析法を用いた。この報告は,4種類の波高

計の原理,構造と仕様,係留システムおよび解析結果に対する考察から構成さ

れている。

Kenichi Takahashi*2, Gentaro Kai*2, Yoshio Masuda*2,

This paper deals with comparison of fundamental characteristics

of four different types of wave gauges: a wave-rider, a buoy-type wave

gauge, an ultrasonic wave gauge and a ship-borne wave gauge.

The comparison is based on the data obtained in an open sea trial

whose purpose was not directly to carry out the comparison but to

test the wave power generating system called the "KAIMEI". For this

comparison, the averaging method and the spectral analysis method

were employed.

This paper contains a description of the four different operat-

ing principles, the structure and specifications of the wave gauges,

the mooring system of each wave gauge and some considerations on

the results of the data analysis.

1. はじめに

近年,海洋調査をはじめとし,漁業やエネルギ

ー資源の開発など,各種の海洋開発が急速に進め

られるようになってきた。

これらの研究開発をすすめる際,最初に必要な

ことは海の状態,すなわち,波浪の状態である。

波の状態は,古くから,いろいろな方法で観測

し評価されている。

最も簡単な方法は海岸または航行中の船舶上か

ら目視で観測する方法がある。この方法は,特別

な観測機器が必要でないが,せいぜい0.5m 単位で

しか,測定することができない。

海洋上で,波にゆられている船舶,または浮遊

構造上物でも,波が測定できるものとして,船舶

式波高計(タッカー式波高計)が開発され,海洋

波の測定に有力な手段が提供されるようになった。

41

*I 海洋利用技術部

*2 Marine Exploitatin Techno] ogg Department.

Comparison of Four Different Types of Wave Gauges

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また,船舶などの大きな浮体を使用することな

く,波の状態をできるだけ正確に知ろうとする試

みから,小形のブイ式波高計が開発され,世界的

に信頼性が評価されてきた。

これ以外にも,波高計には幾種類かの方式があ

る。いずれも,それぞれ使用目的,使用可能な環

境等が,少しずつ,異なる場合が多いぽかりでな

く,計測器としての特徴も相違する。したがって,

海洋とは言うものの,相異なる場所で,少しずつ

特性の異なる波高計で計測されるデータを比較す

る際には,あらかじめ計測器の基本特性を十分知

っておく必要がある。

実際の海洋環境の諸作業の常として,かなりの

経費と労力が必要であるため,一般には幾種類か

の波高計を用いる長期的な海洋実験は容易に実施

できることではない。 しかし,われわれは幸に波

力発電に関する海域実験を実施する機会に恵まれ

たので,原理の異なる波高計の基本特性の比較を

試みた。

この海域実験は実海域における総合実験である

から,測定目的に応じた各種の波高計が利用され

た。したがって,本来,波高計の比較を目的とし

てないため,各種波高計の設置位置などが必ずし

も比較目的に合致しているとは限らないので,十

分に理想的な実験であったとは言えない。また,

比較に利用した波高計はほとんど開発が終わって

いるもの,または,開発中のものなどであり,開

発段階に相違があるため,特性を詳細に比較し,

固定概念を形成するには公平さを欠くことに留意

しなければならない。

なお,この実海域実験は,昭和54年9月から昭

和55年3月までの9箇。月間にわたり,山形県鶴岡

市由良沖で実施した波力発電装置,“海明”の海

域実験で使用した4種類の波高計の比較結果に関

するものである。

また,本報告をまとめるにあたり,日頃ご助力,

ご討議いただいた当センター海洋利用技術部の各

位に心から謝意を表す。

2. 比較に用いた波高計

2.1 波高計の動作原理

今回使用した波高計の原理を大別すると,表1

に示すような3種類のタイプに分類できる。

42

(1) ブイ方式

このタイプは加速度検出方式である。すな

わち,波面の上下運動に敏速に追従するブイ

の垂直変位成分だけを取出して波高を測定す

る。観測対象となる波の周期よりも十分に短

い固有周期を持つブイの上下方向の加速度α

を測定し,この信号を2回積分し,垂直変位

恥)を算出する。

ウェーブライダーとブイ式波高計とは,と

もに,このタイプに属する。

(2) 定置方式

このタイプの装置は,海底に超音波送受波

器が設置されている。この装置から鉛直方向

に発射した超音波パルスの鋭いビームが,大

気と海面との境界層で反射され,海底の受波

器で受信される。その間に要する経過時間が

測定されると,送波器から海面までの距離L

が伝播時間tと超音波の海中伝播速度Cとか

ら,次式によって算出される。

この式で,Cを一定としてtを測定し,こ

のtを時間に比例した電圧に変換すれば,こ

の電圧がLに比例する。

これらの操作が短い時間間隔で連続的に繰

返され,水位の時間的変化が求められる。

(3) 水圧方式

このタイプでは,一般に海底に置かれた水

圧計で,水位変動に伴う微小圧力変化が検出

され,水位変動に変換される.

船舶式波高計では,船側に取付けられた水

圧計で,水位変動R,)が計測され,さらに船体

の垂直変位でこれが補正される.,すなわち.

2。2 波高計の主な仕様および構造

各種波高計の名称を表1に示す。

2.2.1 仕 様

表2は各種波高計の仕様を示す、

この表には周波数特性を周期または周波数で示

JAMSTECTR 7 (1981)

ただし,α*は船体の垂直加速度である。

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表1 各種波高計の原理

方     式

form

名 称 お よ び 記 号

name & symbol

原        理

mechanism

ブ  イ  式

buoy type

ウェーブライダー(WR)

wave-rider

ブ イ式波高計  (BT )

buoy type wave gauge

球型ブィの上下運動の加速度を2回積分して波高を

算出する

安  置  式

fixed type

超音波式波高計 (US )

ultrasonic wave gauge

海底で発射した超音波が,海面で反射され戻ってく

るまでの時間を測定し,水位変動から波高を算出す

水  圧  式

(タッカー式)

pressure type

船舶式波高計  (SB)

Ship-borne wave gauge

船底の水圧を水位変動に変換し,その値を船の上下

方向変位で補正して波高を算出する

表2 各種波高計の仕様

ウ ェ ー ブ ラ イダー

wave-rider

ブ イ 式 波 高 計

buoy type wave

gauge

超 音 波 式 波 高 計

ultrasonic wave

gauge

船 舶 式 波 高 計

Ship borne

wave gauge

測  定  範  囲

determination

range

波高, wave height

10m

周期, wave period

1.5 ~28sec

波高, wave height

0.1~10m

周期, wave preiod

2~30sec

波高, wave height

10m

周期, wave preiod

波高, wave he i ght

0.2~15m

周期,wave preiod

2~15sec

精       度

accuracy

(周波数,

万驚quency

0.065 ~0.500 

) 周波

よ でごLperiod

( 

O~15sec  

土1%

(   ー    )

±10 %

(波周期, wave period)

5sec

土20%

(波周期, wave perid)ー

セ  ン  サ  ー

SenSOr

加  速  度  計

accelerometer

加  速  度  計

( ストレンゲージ)

acce]erometer

(strain gauge)

チ タン 酸 バ リ ウ ム

振動 (200KHz )

vibrator of barium

titanate

水   圧   計

limnimeter

加  速  度  計

accelerometer

外 観 お よ び 寸 法

external show

and dimension

図  1  参  照

see Fig. 1

図  2  参  照

see Fig. 2

図  3  参  照

see Fig. 3

図  4  参  照

see Fig. 4

JAMSTECTR 7 (1981)43

Mechanisms of various wave gauges

Specifications of various wave gauges

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写真1  ウェーブ ライダー

し,測定精度をフルスケールに対する誤差の百分

率で表わした。

2.2.2  各種波高計の構造

ウェーブライダー, WR

写真1はウェーブライダーの設計状況,図

1は内部構造を示す。

WRのブイの本体は, A I S I 316種ステ

ンレス鋼製で,その厚さは2mmであるo係留

索具は電気防食が施され,すべてブイ本体と

同種の材料が使用されている。

ブイの吃水線付近は|坊舷材のゴムフェンダ

ーが取付けられ,さらにブイの安定性を考慮

し, A I S I 316種鋼製の三角形のフレーム

が取付けられている。ブイ 内部の底部にはプ

ラスチック製球型容器に封入された加速度計

が取付けられ,これを取巻くように,電池が

搭載されている。

ブイの上部には夜間標識用フラッシュライ

ト,その上部には測定データを送信するアン

テナが取付けられている。

(2) ブイ式波高計, BT

写真2は球型ブイ式波高計の外観,図2は

その内部構造図を示す。

44

写真2 ブ イ式波高計

BTの外観は耐食アルミニウム合金製であ

り,センサーの取付け部は2段目のフランジ

面を底面とする円筒形の容器になっている。

また,この容器を取巻くように,浮力材とし

て発泡ポリウレタンが充剔されている。

円筒形容器の内部には,底面から加速度計,

波高信号処理装置,タイマー,送信器および,

これらの電源として電池が搭載されている。

最上部のフランジ上には夜間用の標識燈が

取付けられ,内部にはその電池が搭秡されて

いる。

(3) 超音波式波高計, us

写真3および図3は超音波式波高計の外観

を示す。

波高計は円筒型で,海底に設置されている。

装置は,上部には油とともに,ゴムでモール

ドされた振動子が取付けられ,下部のステン

レス鋼製フランジ内にはプリアンプと発振回

路が収納されている。さらに,装置は海底で

波浪および潮流に対して安定させるため,鉄

製アングルとコンクリートシンカーを組合せ

た台座の中央にボルトで固定してある。

(4) 船舶式波高計, SB

JAMSTECTR 7 (1981)

view of floating wave-rider view of buoy type wave-gaug

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JAMSTECTR 7 (1981)

ブイの寸法, Size of the buov:

45

剛 直  径

diameter

( フ ェ ン ダ ー を 含 む 直 径

incl uding fender l   j

0.70m

0.78m

(2) 高さ(アンテナ台座を含む )  L t10 ril

height including antenna base

Cアンテナを含む高さ

ncluding antenna whip 3.10m

(3) 重  量

weight

1.アンテナ, antenna

2. フラッシュライト, flash light

3. ゴムフェンダー, rubber fender

変訓回路プ リント板, modulator

106㎏

スプリングロード, spring rod

プラスチッ ク容器plastic receptacle

電池, battery

静止電極, stationary electrode

図1 ウェーブライダー(WR)

Wave-rider

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(1) 直 径

diameter

(2) 高さ(標識燈を含む)

height including light house

(アンテナの高さ

antenna height

(3) 重

(4) 浮

量, weight

力, buoyancy

0.74m

1.30 m

113kg

220kg

1. アンテナ antenna   2. 標識燈, beacon l ight

3, 標識燈電池, battery for a beacon light

4. 波高処理装置用電池, battery for measurement

of wave height

タイマー, timer 6. 送信機, transmitter

7. 波高処理装置, amplifier and transmitting

circuit etc.

8. 加速度計, accelerometer

図2 球形ブイ方式波高計(BT)

Buoy type wave gauge

JAMSTECTR 7 (1981)

ブ イの寸法, Size of the buoy:

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(1) センサー

Transducer

JAMSTECTR 7 (1981)

写真3 超音波式波高計

Ultrasonic wave gauge

(2) 海底部台座

Sinker

(A) 振動子, transduser

(B) 防水 グランドコネ クター,

図3,超音波式波高計(US )

Ultrasonic wave gauge

47

water proof graund connector

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この波高計は,水圧計と加速度計からなり,

それらの構造を図4に示す。

波力発電装置では,船側に取付けられ,水

圧計は船体を貫通して海水に接触しているた

め,発電装置の浮力室に海水が侵入しないよ

うに,接続部には配慮が払われている。

2。3 各波高計の動作

(1) ウェーブライダー

この波高計に使用されている加速度計は,

一端が固定されたスプリングロットからでき

ており,その自由端がブイの垂直運動に従っ

て振動するのを利用している。

図1に示す球型プラスチック容器中には,

伝導性の液体が封入され,その中に,このロ

ッドが取付けられている。ブイの垂直成分以

外の動きは,球型プラスチック容器を支えて

いるスタビライザー機構(原理的にはシンパ

ルと同じ)で防止している。

加速度計で生じた電圧信号は,ブイ本体内

で増幅され,位相検波されたのち,2回積分

して,波高の信号となる。なお,この信号は

送信周波数26.622MHz のFM信号で,約3km

離れた陸上め計測基地へ送信される。

図5はウェーブライダーのブロックダイヤ

グラムを示す。

(2) ブイ式波高計

この波高計に使用されている加速度計は,

ウェーブライダーのものとは異なり,一般に

広く用いられているズトレーングージ形であ

る。

ブイの垂直成分以外の変位を除くため,制

動油を満したケース内にシンバル装置が取付

けられている。

この加速度計の垂直加速度に比例した信号

は,増幅器を介して重力加速度が減算され,

2回積分ののち,垂直変位信号に変換され,

送信周波数126 MHz のFM信号で,波力発電装

置へ送信される。波力発電装置上で受信され

たFM信号は,復調されて差動増幅器とゼロ

補償器を通して波高に比例した電圧信号に変

換される。

48

なお,ブイ式波高計は電源容量の制約で,

計測は連続的には実行されず,毎3時間のう

ち,1時間だけ動作するようになっている。

図6はブイ式波高計のブロックダイヤグラ

ムを示す。

(3匚 超音波式波高計

超音波発射制御用電気信号が,波力発電装

置上の装置から海底ケーブルを通じ,海底に

設置された送受波器に送られ,同時に,

発振

回路からの強力電気ノリレスが送波器に送られ,

鋭いビームの超音波パルスが発射される。発

射された超音波パルスは,海面で反射し,海

底に戻り,再び超音波受波器で電気信号に変

換され,海底ケーブルを通って,波力発電装

置上の波高計に送られる。

波高計では,信号を発射してから反射信号

が到達するまでの時間を電気的に測定し,直

流電圧信号に変換する。また,送受波器と海

面との間に魚類,浮遊物等が介在する場合は,

波面以外の不正反射信号の影響を取除く,回

路が設けられている。

図7は超音波式波高計のブロッ クダイヤ グ

ラムを示す。

(4) 船舶式波高計

この波高計はタッカー式波高計とも呼ばれ

る。

船側に水圧計と加速度計を設置し,両者の

信号を加算し,波高信号としている。

船体が完全に固定されて静止しているなら

ば,船側に取付けられた水圧計だけで波高を

測定できる。しかし,実際には船体動揺があ

るため,加速度計を同位置に装備し,船体の

垂直変位を検出し,水圧計で得られた信号を

補正している。

水圧計と加速度計のいずれにもストレーン

グージが使用されている。

図8は船舶式波高計のブロックダイヤグラ

ムを示す。

なお,ブイ式波高計,超音波式波高計およ

び船舶式波高計の出力信号は,波力発電装置

JAMSTECTR 7 (1981)

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1. 4芯コード, four-line cord

2. 防水ケース, water proof case

3. 水圧計, pressure gauge

4. 取付板, fixing board

5. パッキング, packing

6. フランジ形玉弁。

H ange type gl obular valve

剛 水圧計

Pressure gauge

亅IAMSTECTR 7 (1981)

1. 4芯コード, four-line cord

2. コネクター, connector

3. ヶ-ス, oase

制動油充添, filled with damping oil

4. 加速度計, accelerometer

5. シンバル, gimbals

6. ウェイトweight

(2) 加速度計,

Accelerometer

図4 船舶式波高計(SB )

Ship borne wave gauge

49

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J○

トー・

§

丶ノ

26.622MH2

A/D 変換器と記録器へ

to A/D converter

and recorder

緩 衝 増 幅 器

buffer amplifier

受 信 器

receiver

加 速 度 計

accelerometer

位 相 検 波

phase modurator

2 回 積 分 器

double integra-

ting circuit

海 上 部

on the sea

図5 ウェーブライダーのブロックダイヤグラム

Block diagram of wave-rider

陸 上 部

on the shore

送 信 器

transmitter

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S

!E!l

m

二刀

トーa

S

トー ●

丶、ノ1

加 速 度 計

accelerometer

演 算 増 幅 器

operational

amp] ifier

2 回 積 分 器

double integrat-

ing circuit

126.42MHz

テレメーター

to telemeter

緩 衝 増 幅 器

buffer amplifier

差 動 増 幅 器

differential

amp] ifier

同波数電圧変換器

F-V convertertransmitter

受 信 器

receiver

波力発電装置の計測定

on the KAIMEI

海 上 部

on the sea

図6 ブイ式波高計のブロックダイヤグラム

Block diagram of buoy type wave gauge

送 信 器

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ノヽ・

卜、 )

S:

i

21

m

q

コ ]

丶 』

トー 亀

トー1

丶ノ

図7 超音波式波高計のブロックダイヤグラム

Block agram of ultrasonic wave gauge

振 動 子

transdusor

送 受 切 換

switcbing

受信前置増幅回路

pre-amplifier

送 信 川 路

transmitter

海 底 部

on thc seabad

高 圧 制 御 回路

high voltage

control circuit

比 較 回 路

comparator

比較増幅回路

amplifier

ATL

ピークホールド回路

peak-hold

circuit

基準信号発生回路

standard signal

generat ingcircui t

サンプリングホー

ルド回路

sample-hold

ci rcuit

波力発電装置土計測室

on the KAIMEI テレメーター

to telemeter

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上甲板 の接 続箱

connection box

on the deck

加 算 器

adder

解 析 装 置

analyzer

加 速 度 計

accelerometer

水 圧 計

pressure gauge

テレメーターへ

to telemeter

計 測 室 内measurment room

図8 船舶式波高計のブロックダイヤグラム

Block diagram of ship-borne wave gauge

on the KAIMEI

上から陸上の計測基地へ, 450MHz の計測用テ

レメーターシステムで伝送した。

2.4 海域における各波高計の設置位置

図9は各波高計の大略位置を示す。

波力発電装置は,係留力を軽減する目的で,西

北西方向を中心に,左右それぞれ約60°振回われ

るよう係留してある。したがって,各波高計の位

置はできるだけ発電装置の船首前方に配置し,さ

らに船体からの反射波によって影響を受けないよ

うに,かなりの距離をとった。

図中に示す波高計間の距離は,測距儀等で測定

された値である。しかし,ウェーブライダーおよ

びブイ式波高計は係留ラインの余長による振回わ

りがかなりあり,また,波力発電装置自体の振回

わり等のため,数回の測定では一定の値が得られ

なかった。

2.4.1 ブイ式波高計の係留

一般に標識用ブイ等のようなロープまたは鎖だ

けの係留ラインは,海表面の吹送流や潮流によっ

てブイが流され,係留ラインが延びきってしまう

ため,波の運動に十分に追従しなくなる。

JAMSTECTR 7 (1981)

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1。 ウェーブライダー,

2. ブイ式波高計,

3. 超音波式波高計,

4. 同 波高計ケーブル

5. 船舶式波高計

wave-rider (WR)

buoy-type wave gauge ( B T )

ultrasonic wave gauge (U S)

cable of US

ship-borne wave gauge (SB)

図9 各種波高計の配置

Arrangement of various wave gauges

JAMSTECTR 7 (1981)

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そこで,ウェーブライダーの係留ラインには,

これを防止するため,ゴムコードが使用されてい

る。このゴムコードは,抗性が小さいので,流れ

によって,ある程度延びるが,さらに十分な反発

力を持っていて,ブイは水の分子運動によく従い,

波の運動に追従できる。

図10はウェーブライダーの係留ラインを示す。

設計条件は,深度45m, 最大波高10m と仮定し

た。スイベル,ジャッグル,ターミナル等はAISI

316種ステンレス鋼を使用し,破断力は1000kgf で

ある。

図11はブイ式波高計の係留ラインを示す。

この図に示すように,中間フロート方式がとら

れている。 5tのコンクリートシンカーと中間フ

ロートとは24mmφのワイヤロープで係留され,さー

らにフロートから14mmφのワイヤロープで,波高

計を係留している。

これは,ブイ式波高計に振回わりの自由度を持

たせるとともに,係留ラインの重量を軽減し,ブ

イが波に極力追従できるように考慮したものであ

る。

2.4.2 定置式および船舶高計

超音波式波高計の送受波器は約3tの台座に納

めて海底に設置し,波力発電装置上の波高計の制

御部と送受波器との間は約300 m の長さの信号伝

送用ケーブルで結合した。

海底部から波力発電装置上へのケーブルの立上

りは,図12に示すように,その形状にダンパー効

果を持たせた。

これは前述のように,波力発電装置がある程度

振回われるように係留したためで,この形状がケ

ーブルに余裕をもたせ,直接張力が掛からないよ

うになっている。

表3はこのときのケーブルの仕様を示す。

船舶式波高計のセンサーは,波力発電装置の船

首に近い,右舷船側のマンホール内に設置したo

センサー出力信号は波力発電装置上の計測室ヘ

ケーブルで導びかれる。図13はその取付け位置を

示す。

3。 海象の概要

実験海域の海象は,日本海特有のものであり,

JAMSTECTR 7 (1981)

冬期は風速10m /sec以上の北西風が卓越すること

がしばしばある。

また,この海域は風の吹き始めてから波の発達

するまでの時間がきわめて短く,風波とうねりの

混在している場合がしばしばあった。

図14は本海域の代表的な海況の二例を示す。

左側1979 年10 月19日~23 日,右側1980 年3月10

日~14 日のものである。この二例はともに19min

連続して測定したデータを基にした1/3有義波

高,平均風速および平均風向を3時間ごとにプロ

ットしたものである。

また,後述の解析には,これらの期間のデータ

を使用し た。

4. 解析および比較

4種類の波高計で観測した同時刻の水位変動は,

水槽で作られる規則波と異なり,不規則波である

ため,単なる水位変動の時系列として見掛け上で

比較することは困難である。そこで,観測した水

位変動の時系列をゼロアップクロス法と平均波法

で処理を行うとともに,さらにFFT法で,その

パワースペクトルを計算した。

なお,以下の・比較は,すべてウェーブライダー

を基準として進めた。

specifications of the corrosion-proof

armored-cable,

頂    目

ite m

仕     様

specifications

全 長

length

外 径

diameter

鎧 莪

armoring

概算重量:

weight

ケ一ブ ル最小破断重量

breaking force 、

400 m

26.8mm

亜鉛めっき鋼線

galvanised steel wire

空気中;  1.730kg/m

in alr

水 中;  1.160kg/m

ln water

4.3トン(ton)

5 5

表3 防食一重外装ケ-ブルの仕様

Page 16: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

ワイヤターミナルwire terminal

1. 鎖(20mm φ, 0.64m, 5.5kg) chain

2. スイペル, swivel

3. ボルト, bolt, M12 ×65

4. ナット, nut, M12

5. 割りピン, spl it pin 2mmφ×30mm

6. ジャッグル, shackle 12mmφ,

7. ゴムコード, rubber cord 15 m

8. ナイロン被覆ワイヤロープ。

Nylon covered steel wire rope 16 m

9。 ワイヤターミナル, wire terminal

10. ナイロンロープ, Nylon rope 67 m

11, 塩化ビニルブイ, polyvinyl chloride bouy

(径, dia. 0.2m, 浮力, buoyancy 3kg)

12. 鎖 chain

13, 沈錘, sinker 300kg,

図10 ウェーブライダーの係留ライン

Wave raider mooring line

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 17: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

1. 18mmφSB  ジャッグル, shackle

2. 14mm φ スイペルピース, swivel

3. 14mm φワイヤロープ, steel wire rope 40 m

4. 中間フロート,buoy(重量, weight,350kg,浮力, buoyancy 1250kg)

5. 30mm φSB  ジャッグル, shackle

6. 24mm φ スイペルピース, swivel

7. 24mmφワイヤロープ, steel wire rope 33mm

8. 5t コンクリート沈錘, concrete sinker

図11 球形ブイ式波高計の保留システム

Mooring system of globular buoy type wave gauge

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 18: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

A.ガイド, guide B 。 タイヤ, tire  C 。 ケーブルチェーン, cable and chain, 40 m

D. ブイ, buoy

a. 5m間隔で鎖に固縛, binded by the chain at interval of 5m

b. 3m 間隔でプイを固縛, binded by bouys at interval of 3m

図12 超音波式波高計ケーブルの敷設

Transmisson cable line of a ultrasonic gauge

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 19: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

A・‥水圧計と加速度計

pressure and acceleration sensor

図13 船舶式波高計取付け位置(海明)

Position of installing shipborne sensor (KAIMEI)

4.1 観測した水位変動

図15の は1979年10月19日21時00分の波高計で

測定した水位変動を示す。

これらの時系列データは,風の吹き始めから約

4時間後のものであり,波はほぼ発達した状態に

あるものと考えられる。

図から明解なように,ウェーブライダー WRの

水位変動の時系列データでは,見掛け上,比較的

高い周波数の波まで観測されている。

図15の(2)は1980年3月10日15時40分の水位変動

を示す。

この図によれば,球形ブイ式のウェーブライダ

ーWRとブイ式波高計BTは,船舶式波高計S B

に比べ,高周波特性を有していることが明らかで

あるO

4.2 平均波法による解析

表4は平均波法で算出した各パラメーターを示す。

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 20: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

日程,  date[昭和54年10月; Oct. 1979]

日程, date

[昭和55年3月; Mar. 1980]

図14 実験海域の波浪と風

Wave and wind on the experimental sea area

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 21: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

この表によれば,波高の比較では船舶式波高計

SBが他の波高計に比べて若干低値,周期はやや

高値となっている。

図16はウェーブライダーの1/3有義波高(Hx

-WR)と他の波高計との比較を示す。図中の実線

は参考に引いたもので,破線は各波高計ごとの回

帰直線である。

図中の(1)のブイ式波高計の1/3有義波高(Hg

-BT) では,回帰式の勾配は若干小さくなって

いるか,ウェーブライダー(Hk-WR) とほぽ一

致した値となっている。

このことは,両波高計ともに,球型ブイ式であ

る共通性からも,容易に理解できる。

(2)の超音波式波高計(Hjs-US) では,有義波

高2.0 m 付近までは,ウェーブライダー(Ha -

WR) の値とほぽ一致する。これよりも高いとこ

ろでは若干高値となっている。しかし,両者の値

はきわめて良く一致している。

(3)の船舶式波高計S B) では,有機波高

2.0m 以下はHs一WRよりも低値,それよ'}高い

ところでは高値となっている。各プロット点は全

般にばらつきが大きく,回帰式の勾配は三者のう

ち,最も大きい。

図17はウェーブライダーの平均周期(Tz-WR)

と他の波高計との比較を示す。

図中の(1)のブイ式波高計の平均周期(Tz-BT)

では,ウェーブライダー(Tz-WR) の値との間

で,きわめて良い一致が見られ,回帰線とプロッ

ト点との間にも,よく現われている。

(2)の超音波式波高計(tz-u s; および(3)の船

舶式波高計(Tz- S B) では, (Tz-WR) との間

では大きな差が認められる。

平均周期の比較では,平均操作による測定値の

片寄りを生ずるため,さらに詳細な周期間の関係

を見出すため,スペクトル分析を行った。

4.3 波浪スペクトル分析による比較

図18および図19は,表4で用いたデータと同一

時間帯のものの一部を用いて計算した波浪スペク

トルであり,波の発達段階別に分類したものであ

る。

なお,波浪スペクトル分析には, FFT 法(Fast

Fourier T ransform)を用いた。 スペ クトル 波

JAMSTECTR 7 (1981)

形は,赤池ウィンドヴのW-1を用い,10回の平

滑化を行った。

4.3.1 1979 年10月19日の波浪スペクトル

図18の(1)は18時OO分のもので,風の吹き始めの

状態である。

そのときのウェーブライダーWRは,表4によ

れば卜 有機波高 U'4 0.57 m , 平均周期Tz 2.36

secである。

スペクトル波形で,最大スペクトル密度を現わ

している部分を第一ピーク,2番目に大きい部分

を第ニピークとする。

0.17Hz(5.9sec) 付近の第ニピークは, WR,

USおよびSBの3種類の波高計と`もに,ほぼ集

中し,船舶式波高計SBのスペ クトル密度がやや

大きくなっている。SBでは最大ピークが,この

第ニピークの位置となっている。

第一ピークは〔〕。40Hz(2.5sec) 付近にある。

SBのピークがこの第一ピークよりも低周波側

にずれ,スペ クトル密度が大幅に小さい。超音波

式波高計USの第ニーピークの高周波側のスペクト

ル密度の減少は,ウェーブライダーWRに比べ,

やや急勾配になっている。

図18の(2)は18時40分のものである。

このときのウェーブライダーWRは, H 'A 1.41

m, Tz2.;95sec である。波高計3種類のスペクト

ルピークは,ほぽOン23Hz 付近に集中している。ま

た, 0.15Hz 付近から低周波側へのスペクトル密

度の減少は,波高計3種類ともに,ほぼ同等程度

である。スペクトルのピークから高周波側には,

船舶式波高計SBが他の二者に比べ,スペクトル

密度が大幅に減少している。

(3)の図は19時40分のものである。

Hhは2.79m, Tz は5.52sec である。各波浪ス

ペクトルのピークが,集中する周波数は0.14Hz

(7.14sec) 付近である。このピークから低周波

側では波高計3種類ともに,きわめて良く一致し,

高周波側では若干の差異が現われている。

すなわち,ウェーブ・ライダーWRのスペクトル

密度が,ピークの高周波側の減少過程で,小さな

凹凸が数箇所現われでいる。また,超音波式波高

計USおよび船舶式波高計SBにも,この凹凸が

僅かに現われている。

61

Page 22: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

経過時間, time (sec)

(2) 昭和55年3月10日(10, Mar. 1980) 15 : 40

Page 23: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

経過時間, time (sec)

(1) 昭和54年10月19日(19, oct. 1979) 21 : 00

図15 各波高計で測定した水位変動

Wave height measured different-type wave gauges

Page 24: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

64

Analysis for mean wave height

18:00

WR

us

S B

1.00

0.75

0.55

0.72

0.58

0.44

0.57

0.47

0.34

0.37

0.31

0.22

2.45

3.10

4.90

2.36

2.89

4.98

18:40

WR

u s

S B

2.40

2.50

1.95

1.70

1.84

1.30

1.41

1.44

1.04

0.91

0.91

0.69

3.74

4.08

4.35

2.95

3.37

3.91

19 : 40

WR

us

S B

4.30

5.10

4.50

3.54

3.93

3.49

2.79

3.05

2.86

1.75

1.81

1.84

5.52

・5.73

6.24

4.18

4.51

5.50

21 : 00

WR

u s

SB

9.80

8.95

10.00

7.21

7.29

8.11

5.61

5.73

6.23

3.46

3.46

4.28

8.29

8,17

8.90

7.41

7.42

8、48

JAMSTECTR 7 (1981)

表4 平均波法による解析

時刻と波高計の種類

time of the dayandwave gauges

波 高 ( m )

wave height周 期(sec)wave period

Page 25: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

1980年3月10日Mar. 1980

時刻と波高計の種類time of the day-

aridwave gauges

波 高(m)

wave height周 期(sec)wave period

H max H^o H T mol Tz

03:40

WR

BT

S B

0.50

0.55

0.20

0.34

0.36

0.16

0.28

0.27

0.12

0.19

0.18

0.08

2.09

2.83

3.83

2.06

2.31

4.28

06:40

WR

B T

S B

2.40

2.45

2.20

1.93

2.14

1.69

1.57

1.72

1.32

1.02

1.11

0.82

3.93

4.59

4.55

3.87

4.10

4.45

09:40

WR

BT

S B

5.35

5.15

4.90

3.49

3.54

3.19

2.80

2.79

2.58

1.73

1.71

1.67

5.58

6.65

6.12

5.06

5.40

5.89

15 :40

WR

B T

S B

5.05

6.05

5.95

4.09

4.27

4.64

3.38

3.42

3.56

2'. 25

2.18

2.31

6.26

6.91

7.07

6.23

6.17

6.62

Page 26: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

―Uy3 SB = H^ WR

-H^ SB

= l.llHi$ WR ―0.22

R = 0.984

(3)船舶式波高計

Shipborne wave gauge

―H%. US = HK3 WR

H % US

1.05Hj$ WR ―0.04

R = 0.995

(2) 超音波式波高計

Ultrasonic wave gauge

―H y3 BT = HH WR

-Hj$ BT

-0.95H/3 WR + 0.06

R = 0.997

(1)ブイ式波高計

Buoy type wave gauge

H% WR (m)

図16 1/3有機波高によるウェーブライダーと他の

波高計との比較

Comparison of

between

wave gauges

significant wave

rider and others

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 27: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

Tz SB ― Tz WR

Tz SB

0.91 Tz+1.39

R = 0.934

(3) 船舶式波高計

pbome wave gauge

―Tz US = Tz WR

-Tz US

=0.83Tz WR+1.46

R = 0.915

(2) 超音波式波高計

Ultrasonic wave gauge

― Tz BT = Tz WR

-Tz BT

― 0.91Tz WR+0.55

R=0.99

(1)ブイ式波高計

Buoy type wave gauge

図17 平均周期によるウェーブライダにと他の

波高計との比較

Comparison of mean wave period (Tz)

between wave-rider other wave gauges

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 28: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

C 丶

(X 〉

JA

STmc

J。R 

 (

198

(3) 19 : 40 (4) 12 : 00

Page 29: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

図18 波浪スペクトル(1979 年10月19日; 19. Oct. 1979) oct.

Wave spectral

Page 30: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

周期, frequency, F (Hz)

(3) 15 : 40

Page 31: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

図19 波浪スペクトル(1980 年3月10日, 10, Mar. 1980)

Wave Spectre

Page 32: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

(4)の図は21 時OO 分の ものである。

H y3 fi5 . 61 m, Tzは7.41sec である。この時間

帯の波は, 風波が十分に 発達した状態 と考え られ

る。 各波高計のスペ クトルのピー クは, 0.10Hz

(lO.Osec) 付近に集中し, この付近で,船舶式波

高計の スペ クトル密度 が若干大 きくなっている。

風波のスペ クト ルの ピー クが0.10H z 付近に 卓

越した とき, ウェーブ ライダー, 超音波式 波高計

お よび船舶式波高計の 3種類の スペ クト ルが, き

わめ てよく一致するのが 見られた。

4.3.2 1980 年3月10日の波浪スペクトル

図19の(1)は06時40分のものである。

1/3有機波高Hsは1.57m, 平均周期T z は

3.87sec である。スペクトルのピークは,ウェー ブ

ライダーWRおよびプイ式波高計BTでは0.21 Hz

(4.76sec) 付近,船舶式波高計SBでは0.19Hz

(5.26sec) 付近に現われている。これらの3種類

のスペクトルは, 0.14 ~0.20 H zできわめてよく

一致している。0.10H z 以下の低周波側では,B

TとSBとに第2ピークが現われている。

この両者の共通性を考えてみると,センサーに

同一型式の加速度計を使用しているため,加速度

計固有の性質があると考えられる。

第一ピークから高周波側には,小さな凹凸が現

われ,WRとBTとはほぽ一致している。

図19の(2)は09時40分のものである。

H g は2.8m ,Tz は5.06sec である。スペ クト

ルのピークが,WRとBTは0.15 Hz (6.67 sec)

付近に現われ,SBは若干低周波側にずれている。

第一ピークから低周波惻では第ニピークを除いて

よく一致している。ピークの高周波側は僅かな凹

凸があり,WRとBTはよく一致しているか,S

Bはスペ クトル密度が低くなっている。

(3)の図は15時40分のものである。

このときの風波は十分に発達したものと思われ

る。H % ii3.38m、

Tz は6.23sec である。WR,

BTおよびSBの3種類の波高計の波浪スペクト

ルのピークは, 0.11 Hz (9.09see) 付近に現われ

ている。このピークの低周波側は 第ニピークを

除き,ほば1一致している。また,高周波側では船

舶式波高計SBが,他の波高計に比べてスペクト

ル密度が小さいが,3種類の波高計ともに,一致

72

している。

なお,比較した各波高計の波浪スペクトルは,

高周波側の僅かな凹凸は,必ずしも一致していな

い。それは各波高計間の位置の相違によって,風

速の分布が異なるためと考えられる。

5. むすび

比較に用いた動作原理の異なる4種類の波高計

は, 1979年9月中旬に設置し,超音波式波高計M

USを除く,3種類のものは翌年3月末まで観測

に使用した。

観測期間中,ウェーブライダーWRと球型ブイ

式波高計BTの係留索は,各1回,大波で切断,

浮体が流出した。切断の原因は,漂流時に係留索

が流失したため,解明できなかった。これらは回

収後,再び設置し,観測に使用した。

超音波式波高計USは, 1979年11月中旬に使用

できなくなった。その原因は,波力発電装置の振

回わりが予想以上に大きく,波高計の信号伝送用

海底ケーブルと同装置の係留索との カラミ″が

生じ,ケーブルが断線したためと思われる。

船舶式波高計SBは,計測信号伝送用テレメー

ターの故障時を除き,全期間を通じて観測に使用

できた6

各波高計で得られたデータの比較結果は,設置

位置の相違から,一概には断定できないが,ウェ

ーブライダーのデータを基準にした結果を,次に

述べる。

(1) 球型ブイ式波高計は, 1/3 有義波高およ

び平均周期ともに,ウェーブライダーのものと良

く一致した。

両者の波浪スペクトルピーク,その低周波側お

よび高周波側のスペクトル密度の減衰領域は良く

一致し,球型浮体方式による波高計の有用性が確

認できた。

なお,球形ブイ式のスペクトル波形に現われる

低周波領域の第二のピークは,サーブビートが観

察されているように見受けられるが,本波高計の

波周期測定範囲から外れているため,加速度計の

性質から生じていると考えられる。これを除去す

るには,高性能の帯域フィルターを用いる必要が

ある。

(2) 超音波式波高計は, 1/3 有義波高がウェ

JAMSTECTR 7 (1981)

Page 33: 四種類の波高計の比較 - GODAC Data Site -NUUNKUI-...ultrasonic wave gauge 船 舶 式 波 高 計 Ship borne wave gauge 測 定 範 囲 determination range 波高, wave height

一ブライダ一によるものと良く一致するが,平均

周期は大きくなっている。

両者の波浪スペ クトルピーク,その低周波側お

よび高周波惻の減衰領域は,ほぼ一致しているか,

高周波領域の小さな凹凸は若干ゆるやかである。

こ れは,本実験の際,水深40m の大水深である

ことを考慮に入れると,超音波式波高計の振動子

の指向角による測定誤差が増大したためと推察さ

れる。

(3) 船舶式波高計は, 1X3 有義波高がウェー

ブ ライダーに比べ,波高の大きいところと小さい

ところで差異が生じている。平均 周期は,ウェーブ

ライダーに比べて大きくなっている。

計算した波浪スペ クトルと,ピーク周波数は全

体的に低周波側に移項している。波浪の状態が

“swell(うねり)”に近い場合は,他の波高計に よ

るスペクトルと良く一致する。

これは船舶式波高計が取付けられている波力発

電装置の浮体が,船型(全長80 m, 幅12m )であ

り,低周波には良く追従するためと考えられる。

この波高計は原理的には絶体静水面の変化を加速

度計の信号で補正しているか,完全に補正しきれ

ていない。したがって,使用に際して,設置した

浮体の運動に十分考慮を払う必要があると考えら

れる。

各波高 計で 観測 し た波 浪は, 必ず し も同一 の もの

であ る とは言 えない。

特 に船舶 式波 高計 のセン サ ーは, 発電装 置 の 右

舷側 に設置 して い るため, 波向 の変 化で, 場合 に

よっ ては, 計 測値 はあ る程度 の影響 を受け て い る

可能性 があ るこ とに留 意す る必要 があ る もの と思

わ れる。

文  献

1) Verhager, C.M., Gerritzen, P.L., Brengel

J.G.A. van, “Operation and service Manual

for   the   waver ider   6,000   series”

Rademarkers, P.J., "Some details on the

accelrometer stabilization as used in the

wave rider ”(26th March 1971)

3) 高橋 智晴, 佐 々木 弘, 菅原一 晃,ほ か, 1973 。

“超 音 波式波 高計 につ い で, 港 湾技術研 究 所報告

12(1), 59

4)“ゼニ ライト 波高計VI-A 型 (海明 用球 型ブ

イ式波 高計 ),取 扱い説 明書;’株式会 社ゼニ ラ イト

5)“ゼニ ライト波高計IV 型 (海明用船 舶 式波高

計 ),構造, 系 統, 回路図;’株 式会 社ゼニ ライト

6) 橋 本  宏, 山口  修, 1979, “海中ブ イ式 波

浪計につい て" Ocean Age (11), 11

7) Crabb, J.A. (10 S Taunton), ‘'Review of

wave measurement  and analysis  methods

relevant to the energy programme ”(4) 本実験では波向を特に考慮しなかったため,

ウェーブライダー波高計(6,000シリーズ)は,

オランダのデータウェル社(Datawell) で製作し

たもので,センサーの安定装置等に関して,いく

つかの特許が公告されている。なお,本波高計は

国外で,波浪データを扱っている研究者の間で標

準波高計として,広く使用されている。日本では

JAMSTECTR 7 (1981)

当センターが初めて使用した。

超音波式波高計は,運輸省港湾技術研究所で開

発され,海上電機株式会社で製作しており,国内

で広く波浪観測に使用されている。

球型ブイ式波高計(Ⅳ-A型)と船舶式波高計

(Ⅳ型)は,株式会社ゼニライトブイで製作した

ものである。

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付   記