磁歪膜,磁歪素子 トルクセンサ,力センサ,圧力センサ および … ·...
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磁歪膜,磁歪素子 トルクセンサ,力センサ,圧力センサ
およびその製造法
信州大学 工学部 准教授 田代 晋久
特任教授 脇若 弘之
SVBL 研究員 大熊 ひとみ
東北大学 金属材料研究所 教授 牧野 彰宏
本技術の概要
① 本件技術は、ゼロ磁界付近で優れた磁歪(※)特性を発揮する軟磁性金属ガラス磁歪膜であり、トルクセンサ、力センサ、圧力センサなどに展開するものである。
(※磁気歪みともいい、磁性体が磁化の方向によってわずかに形状を変える現象)
② 金属ガラス軟磁性材料は、超磁歪材料に比べて歪みの絶対量は小さいが、高いゼロ点再現性と、低磁界でリニアな磁歪特性を持ち、且つ厚膜形成も可能であることから、大幅な感度及び精度を向上させることができる材料である。
金属ガラス溶射磁歪膜 超磁歪材料(TbDyFe)
磁歪特性比較
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本技術に関する知的財産
<0.周辺発明:特願2002-55291> 本発明は、明瞭なガラス遷移と広い過冷却液体域を示して、ガラス形成能が高い、軟磁性・高飽和磁化特性を持つFe-B-Si系金属ガラス合金であり、その中で磁歪を持つ組成を適用している。 <1.基本発明:特願2010-537063(外国出願WO/2011/016399)> 本件基本発明は、ゼロ磁界付近で優れた磁歪特性を発揮できる磁歪膜およびその製造方法を提供する。磁歪膜は、被検体上に溶射形成され、ガラス遷移温度より低く且つ、キュリー点温度以上で熱処理されていることを特徴とした金属ガラスの膜で構成され、-15kA/m以上、+15kA/m以下の磁界範囲のうちの少なくとも一部の範囲内で、磁界と磁歪とが直線特性を示す。
<2.周辺発明6:特願2009-125647>
本発明は、保磁力150A/m以下、酸素濃度0.3質量%以下、鉄濃度30質量%以上、過冷却液体温度領域(ΔTx)30℃以上である金属ガラス粉を溶射に拠り積層した、酸素濃度0.2質量%以下、保磁力100A/m以下であることを特徴とする軟磁性体である。 <3.周辺発明:PCT/JP2005/5528 (外国出願WO/2005/093113) > 本発明は、基材表面に、予め調製されたアモルファス相の金属ガラスを原料として、少なくとも一部が過冷却液体状態で基材表面において凝固及び積層して形成されたものであることを特徴とする、アモルファス相の金属ガラス溶射被膜層が形成された金属ガラス積層体、およびその製造方法である。
<4.周辺発明:特願2006-349088>
本発明は、周辺発明3からモノを分割出願したものである。
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目 次
従来技術とその問題点、本技術の特徴・従来技術との比較、想定される用途
金属ガラス、金属ガラス溶射とは
軟磁性金属ガラス溶射膜の開発
トルクセンサへの展開
実用化に向けた課題、今後の取り組み
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従来の磁歪膜:(例)メッキやアモルファス合金箔
【問題点】厚膜形成が困難で、形成される磁路が短いため、感度が向上しなかった。
金属ガラス溶射磁歪膜:高いゼロ点再現性と、低磁界でリニアな磁歪特性を持ち、且つ厚膜形成も可能であることから、大幅な感度及び精度を向上することが出来る。
表 各種磁歪材料の特徴比較
本技術の特徴・従来技術との比較①
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従来のトルク検出方法:商品化されている磁歪式トルクセンサは、大半がトルクメータ(モータと駆動軸の間に連結して使用)であり、検出部分の径を細くして感度を稼ぐ等の工夫がされている(右図参照)。
→トルクメータは組み込み性の面から実機への適用NGとなる場合が多く
直接部品軸から測定出来る高精度のトルクセンサが望まれている。
本件技術の検出方法:従来の磁歪式トルクセンサと基本的に同じものを適用している。しかし、従来の磁歪膜がメッキやアモルファス合金箔等の薄膜と異なり、本件技術では容易に厚膜を形成して感度を向上させることができる。
本技術の特徴・従来技術との比較②
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図 製品化されている磁歪式トルクセンサ(トルクメータ)の事例
① 既に市場があり、高性能品のニーズが強い、電動アシスト自転車への展開
② 組込性の点からトルクメータでは採用が進まなかった産業機器分野への展開
③ 採用されれば数量の見込まれる、自動車等のパワートレイン分野への展開
想定される用途
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優れた特性
金属ガラスとは
バルクの製造
超高耐食
成型加工性 寸法精度
軟磁気特性
水素吸蔵特性
水素透過特性
超高強度・高弾性
東北大学金属材料研究所で開発された次世代金属材料
原子配列がランダムな構造(アモルファス)で明瞭なガラス遷移と広い過冷却液体域を持つ合金の総称
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相変態の模式図
広い過冷却液体域をもち、この 領域では超塑性加工が可能
出典:イノベーションジャパン2004 「機能性金属ガラス」
延び15000%!!
優れた成型加工性
マイクロギア
ガラス遷移と過冷却液体
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アモルファス合金
~数十μmの粉:箔・線
金属ガラスバルク
数㎜~十数㎜の棒・板・塊
用途は極めて狭い 範囲に限定されていた
スケールアップに限界 材料コスト
実用化への壁
金属ガラス溶射
~∞
金属ガラスの特性を持つコーティング 軽量・低コスト基材との 複合化
優れた特性を持つ金属ガラスの機能を部材 表面に付与できれば応用分野が大きく広がる
金属ガラス溶射開発のメリット
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金属ガラス溶射のコンセプト
出典:Sulzer Metco (Japan) Ltd. HP
バルクに近い特性を持った被膜を実現する。
コストも考え、大気中での施工とする。
酸化を抑え、且つ緻密な被膜を得るためには、金属ガラスの持つ過冷却液体を上手く利用する。
金属ガラス粉末を用いて、低温・高速な溶射法で成膜
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従来溶射法と金属ガラス溶射の違い
金属ガラス溶射プロセス
過冷却
液体
従来溶射プロセス
溶融
酸化
50μm
従来プロセスの被膜例
200m
金属と酸化物が混在したラメラ状の組織
金属ガラス溶射被膜例
ほとんど酸化が無い準バルクの組織
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軟磁性金属ガラス溶射プロセスの検討
出典:Sulzer Metco Japan HP
高速フレーム条件
通常のHVOFでは若干酸素過多の条件を採ることになることから、プラズマ熱源で高速フレーム条件ができる3電極プラズマ溶射を採用した。
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0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100
Sputter Depth(nm)
Rela
tive C
oncentr
ation(%
)
P
B
C
O
Fe
0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100
Sputter Depth(nm)
Rela
tive
concentr
atio
n(%
)
Si
Nb
B
C
O
Fe
0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100
Sputter Depth(nm)
Rela
tive c
oncentr
ation(%
)
Si
P
B
C
O
Fe
酸化層
酸化層
酸化層
汚れ吸着層
粉末 溶射皮膜
HVOF 40
3電極プラズマ(高速) 30
(Fe76P5Si5.7B9.5C3.8)98Cr2 HVOF 3 30
(Fe75B15Si10)96Nb4 3電極プラズマ(高速) - 10
材料組成 溶射方法表面酸化膜厚み(nm)
Fe76P5Si5.7B9.5C3.8 6
Fe76P5Si5.7B9.5C3.8 (HVOF)
Fe76P5Si5.7B9.5C3.8 (3電極プラズマ(高速)) (Fe75B15Si10)96Nb4(3電極プラズマ(高速))
R
ela
tive
Concentr
atio
n(%
) Sputter Depth (nm)
0 20 40 60 80 100
20
40
60
80
0
100
Rela
tive
Concentr
atio
n(%
) Sputter Depth (nm)
0 20 40 60 80 100
20
40
60
80
100
0
Rela
tive
Concentr
atio
n(%
) Sputter Depth (nm)
0 20 40 60 80 100
20
40
60
80
100
0
溶射被膜表面のAES分析
Nb添加材・高速プラズマ溶射に拠り、表面酸化被膜は10nmまで低減された。 2015/3/13 14
保磁力(Hc)と酸素濃度の関係
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0
100
200
Hc(A
/m
)
酸素濃度 (wt%)
HVOF
高速プラズマ溶射
酸化抑制元素を添加
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金属ガラス溶射磁歪膜の特性
金属ガラス
他の磁歪材料と比べて、良好な直線性を示す。
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平面歪センサへの応用
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平面歪センサの出力特性例
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ピックアップ(単極)型トルクセンサ ・外観
10 φ20
コア 方向性電磁鋼板 0.5mmt×4
励磁コイル 1000 ターン
検出コイル 1000 ターン
センサ前面部
・仕様 コア 2mm角
ベタ膜
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0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
0 20 40 60 80 100 120
印加トルク [N・m]
出力
電圧
[m
V]
被膜あり
被膜なし(SUS631)
※φ19シャフト、ベタ膜品での結果
励振電圧:25Vp-p
励振周波数:5kHz
ピックアップ(単極)型トルクセンサの出力結果
SUS631単体でも出力するが、金属ガラス磁歪膜に拠り出力は5倍以上になる。
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プロトタイプ・トルクセンサ (シェブロンパターン・2コイル差動出力)
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-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
-120 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120
印加トルク [N・m]
イン
ダク
タン
ス変
化率
Ld
/L0
[%
]
+トルク(引張応力側)
-トルク(圧縮応力側)
・インダクタンス変化率 Ld/L0 ・差動特性(引張-圧縮)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
0 20 40 60 80 100 120
印加トルク [N・m]
イン
ダク
タン
ス変
化率
Ld
/L0
[%
]
シェブロンパターン・2コイル差動出力
引張・圧縮の主応力方向(45°,135°)にパターンを形成して、2コイルにて差動出力することに拠り、直線的な出力を得ることができる。
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①シャフト径への対応
シャフト径が大きくなると、同じトルクを印可しても、発生する剪断歪が小さくなり、検出が難しくなる。シャフト径毎の検出精度を明確にしながら最適なセンサ構造・仕様を構築する。
②電磁波ノイズ対策
組み込み機器毎にノイズパターンが異なるため、電磁波ノイズ対策を構築する。
③磁歪膜成形コストの低減
溶射は大面積へコーティングをおこなうプロセスであり、小面積である磁性膜はコスト高となる。また、磁性膜はシェブロンパターンをマスキング等で形成することもあり、これもコスト高となる。連携する企業と、溶射精度、パターン形成法及び加工精度を上げ、低コストで均一な磁歪膜の加工技術を共同開発する。
実用化に向けた課題、今後の取り組み
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お問い合わせ先
【ライセンスについて】
科学技術振興機構
知的財産戦略センター 田中 史祥
TEL 03-5214 - 8293
e-mail ftanaka@jst.go.jp
shuuyaku@jst.go.jp
【技術内容について】
株式会社 信州TLO 大澤 住夫
TEL 0268-25 - 5181
e-mail info@shinshu-tlo.co.jp
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