cess 臨床教育支援システム clinical education supporting system · 2020-06-17 ·...

文部科学省記者発表 2019.9.9

ICTが実現する臨床実習改革～地方大学発ベンチャーの挑戦～

国立大学法人福井大学

医学部附属教育支援センター

1

Fukui original

今日のポイント

⚫ 医学教育における臨床実習の改革⚫ 医学教育の国際化（分野別評価・国際認証）へ対応するため、臨床実習に特化したICTシステムの開発。

⚫ 独創的な機能を装備。

⚫ 他大学・施設への展開と期待される波及効果⚫ 大学発ベンチャーとして初めて、全国の大学へ売り込みを図る。すでに京都大学などの視察を受け入れ、数校に導入検討いただいている。

⚫ 学生参加型の臨床実習、教員側の確実なフィードバックなどにより、医学教育の国際化を着実にし、わが国の医療全体のレベルアップに貢献。

⚫ なぜ福井大学が、開発したのか⚫ 新しい臨床実習の国際化へ対応を模索する中、ニーズを深く知る医学部附属教育支援センターとシステム開発の本学発ベンチャーが密接に関わってきたことから、臨床現場の実情にマッチした開発に成功できた。

2

臨床実習⚫ 医学部で最も重要な必修科目。

⚫ 4年次までの医学知識に基づいて、実際の診療現場で患者と接することにより基本的な診療知識・技能・態度を修得する。

⚫ 医学部5〜6年次に、本学附属病院および学外関連病院において各診療科をローテーション（2～4週間）しながら実習する。

3

教育目標

「実際の患者に接することで、卒業後の前期研修に円

滑に移行できる能力を涵養すること。すなわち、情報収

集・臨床推論・臨床決断・患者さんへの適切なアプロー

チを重視し、①情報収集、②診療計画、③診療実施、

④診療の基盤となる態度を修得すること」

（福井大学医学部「臨床実習の概要」より）

アウトカム（学修成果）基盤型教育

医学部における臨床実習改革

入学時：アウトカム設定

卒業時：アウトカム評価

医学教育の国際化（分野別評価・国際認証）への対応

臨床実習卒業試験

臨床実習PCC-OSCE

臨床実習

知識技能態度

臨床実習の質と量の充実が重要4

臨床実習改革の課題～求められていること～

5

⚫ 実習時間数の増加

⚫ 診療参加型実習の導入

⚫ 確実な実習評価

• 従来1年間→約２年間に延長• 医学教育分野別評価基準（国際標準）に準拠

• 医療チームの一員→学生によるカルテ記載• 教員（指導医）による確実なチェック

• アウトカム基盤型教育におけるアウトカム評価• 学生・教員双方向の評価による振り返りとPDCA実施

• 診療に参加している実感を持ち、カルテ記載ができる。• 教員から適切なフィードバックが得られる。• 自身のデータに基づいて実習の振り返りができる。

• 診療業務を妨げずに、実習計画立案と指導ができる。• 個々の学生を特定しながら評価できる。• 学生実習データに基づいて実習内容を改善できる。

課題解決のために

福井大学が開発した臨床実習ICT

6

教員

学生

臨床教育支援システム

CESSClinical Education Supporting System

特許出願中

CESS

7

H科

G科

F科

E科

D科

C科

B科

A科

電子カルテ連携

学生用電子カルテ記載

実習スケジュール計画

診療科評価

病名確認

学生記載参照

学生評価

資料提供

症例提供

E-ポートフォリオ

個人書庫

医行為確認

同意取得

CESS

患者割振り

症例報告

レポート・小テスト

学生

計画実施

評価

教員・学生間コミュニケーション

診療科間情報共有

改善実習の内容改善実習の振り返り

CESSによる実習イメージ

8

学生教員

学生カルテの記載学生カルテのチェック

質問・指導

⚫ カルテ記載の上達⚫ 実習のやりがいを実感

⚫ きめ細かい指導⚫ 学生の学修進度を把握

チャット式ツール

相互評価

CESSの主な開発ポイント

1. 電子カルテとの連携

2. 実習スケジュール策定と患者割振り

3. 学生用電子カルテへの入力と入力部分の抽出

4. 学生‐教員間オンライン・コミュニケーション

5. 学生経験医行為・疾患の記録と達成度可視化

6. 教員による学生評価

7. 学生による診療科評価

8. E-ポートフォリオ、実習IRデータの累積とPDCA9

紙媒体→ICT化実習IRデータの蓄積と活用

CESSと従来法との比較

10

項目 CESS 従来法スケジュール管理スケジュールデータを読み込みシステム管理紙運用

担当患者割り振り電子カルテとオンライン化ー教員による確実な割り振り可能紙運用

学生カルテ記載担当患者一覧から学生用カルテを起動・記載別端末による学生用電子カルテを用意

教員によるチェック・指導

コミュニケーションツールで確認・指導-実習の成果、振り返り教員・学生双方の空き時間に相談・指導

学生の経験医行為・疾患記録

医行為・疾患一覧で経験した項目をクリックして記録紙運用

学生レポート提出課題提出フォルダーにアップロードして提出紙運用

実習評価実習記録を根拠とした複数の教員による学生の評価が可能さらに、学生による診療科評価が可能紙運用

外部評価「ICT化」・「内部質保証」・「臨床実習対応」など、複数の項目に根拠に基づいた対応が可能紙運用

実習データの共有実習記載・医行為・疾患・学生評価・診療科評価・課題などをデータとして蓄積し、すべてを共有してPDCAサイクルを駆動紙運用

学生・教員コミュニケーション

コミュニケーションツールにより、ベッドサイドでは困難な質問や指導などが行え、対面教育や信頼関係を深める

教員と学生の時間共有が困難で対面教育だけでは十分な指導がしづらい

学生用電子カルテ記載

11

Ｓｓ

スケジュール入院外来記載医行為病名学生評価診療科評価提出物参考資料

【担当患者】更新

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司　　2017.04.03 18:28　田中雅人　　2017.04.02 12:25　田中雅人

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司

MRI検査結果が出たら記載しておいてください。

　　2017.04.05 10:50　田中雅人

発熱の影響で気分がすぐれず・・・・MRI検査結果では、○○が疑われ、放射線科の医師からは・・・・と指摘されている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　・・・・・・・・・・・・・　　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　・・・・・・・・・・・・

　　2017.04.05 12:05　田中雅人

特に何について説明してあげれば良いでしょうか？ご本人は、XXXXについて〇〇〇とお考えです。それを払しょくしてあげるのが良いかと思いますが。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・　　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　　2017.04.05 14:23 黒川哲司解熱剤を少し出しても良いと思うよ。それと手術は危険でないことを説明してあげてください。

患者担当医

〇〇　イツコ黒川哲司

〇〇　ケイコ前田〇〇

参記診療用カルテ参照

送信

手術術式について調べたのですが、XXXXXの部分が良くわかりません。実際には・・・・・・

送信

学生用カルテ記載

学生‐教員コミュニケーション・ツール

12

Ｓｓ



　　2017.04.04 10:32 黒川哲司　　2017.04.03 18:28　田中雅人　　2017.04.02 12:25　田中雅人

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司


　　2017.04.05 10:50　田中雅人


　　2017.04.05 12:05　田中雅人



患者担当医



参記

送信

コミュニケーションボード

カルテの写し（グリーン表示）

その日のカルテ記載部分をコミュニケーションボードに抽出・反映

【担当患者】

患者担当医



学生用カルテ

SOAP


13

Ｓｓ



　　2017.04.04 10:32 黒川哲司　　2017.04.03 18:28　田中雅人　　2017.04.02 12:25　田中雅人

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司


　　2017.04.05 10:50　田中雅人


　　2017.04.05 12:05　田中雅人



患者担当医



参記

送信

特に何について説明してあげれば良いでしょうか？ご本人は、××××について〇〇〇とお考えです。それを払しょくしてあげるのが良いかと思いますが。


学生が質問やコメントを入力

学生コメント（ブルー表示）ボードに反映

コメントウィンドウ



14

Ｓｓ



　　2017.04.04 10:32 黒川哲司　　2017.04.03 18:28　田中雅人　　2017.04.02 12:25　田中雅人

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司

　　2017.04.04 10:32 黒川哲司


　　2017.04.05 10:50　田中雅人


　　2017.04.05 12:05　田中雅人



患者担当医



参記

送信

解熱剤を少しだしても良いと思うよ。それと手術は危険でないことを説明してあげてください。


教員が回答やコメントを入力

教員コメント（ピンク表示）

ボードに反映

コメントウィンドウ


学生コメント（ブルー表示）

医行為・疾患の記録と達成度把握

15

経験医行為

経験疾患

自己達成度

自己達成度

自身の達成度を可視化

教員による学生評価

16

本学アウトカムに基づく評価項目

顔写真による学生の特定ワンクリックで

評価入力

複数教員による評価の累積

累積評価に基づく最終合否判定

学生による診療科評価も同様に入力

E-ポートフォリオ：学修履歴と振り返り

17

担当患者履歴

学生評価履歴

診療科評価履歴

各学生の

さまざまな実習データを

年度を超えて蓄積

診　療　科自らコミュニプレゼン周囲臨床知識情報収集後輩の指導診療科項目総　計

全診療科平均 65 70 45 60 55 55 55 70 57

血内/感内 45 60 60 80 60 60 60 40 60

神内/消内 30 60 80 60 80 80 80 60 80

内内/呼内 50 60 80 60 60 60 60 60 60

放射線 30 40 80 80 80 60 80

腎内検査 50 60 80 60 60 60 60 50 60

循環器 30 60 80 60 80 80 80 45 80

小児 45 60 60 80 60 60 60 80 60

神精 30 60 80 60 80 80 80 60 80

泌尿器 50 60 80 60 60 60 60 60 60

消外/乳外 30 40 80 80 80 60 80

心外/呼外 50 60 80 60 60 60 60 50 60

整形 30 60 80 60 80 80 80 45 80

脳外 45 60 60 80 60 60 60 80 60

産婦人科 30 60 80 60 80 80 80 60 80

麻酔 50 60 80 60 60 60 60 60 60

耳鼻 50 60 80 60 60 60 60 60 60

皮膚 30 60 80 60 80 80 80 50 80

眼 45 60 60 80 60 60 60 45 60

総診 30 60 80 60 80 80 80 80 80

救急 50 60 80 60 60 60 60 70 60

実習週学年学籍番号学生氏名ポートフォリオ自ら学ぶコミュニプレゼン周囲への臨床知識情報収集後輩の指導科別１科別2 合否コメント

5 12410011 ○○　○○ ポート 60 60 60 80 80 80 80 60 60 合大変良く勉強できました。

5 12410020 ○○　○○ ポート 60 60 80 20 20 20 20 60 60 合・・・・

5 12410039 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 合・・・・・

5 12410057 ○○　○○ ポート 25 25 80 40 40 40 40 30 30 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・

5 12410084 ○○　○○ ポート 80 80 80 80 80 80 80 80 80 合・・・・・

5 13410857 ○○　○○ ポート 60 60 60 50 50 50 50 60 60 合 SOAPの書き方をマスターしたね。

5 12410137 ○○　○○ ポート 60 60 60 80 80 80 80 60 60 合・・・・・

5 12410164 ○○　○○ ポート 60 60 60 80 80 80 80 60 60 合・・・・・

5 12410173 ○○　○○ ポート 40 40 80 80 80 80 80 60 60 ・・・・・

5 12410182 ○○　○○ ポート 60 60 60 80 80 80 80 60 60 合・・・・・


5 12410020 ○○　○○ ポート 60 60 80 20 20 20 20 60 60 合・・・・

5 12410039 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 合・・・・・

5 12410057 ○○　○○ ポート 25 25 80 40 40 40 40 30 30 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・


5 12410020 ○○　○○ ポート 60 60 80 20 20 20 20 60 60 合・・・・

5 12410039 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 合・・・・・

5 12410057 ○○　○○ ポート 25 25 80 40 40 40 40 30 30 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・


5 12410020 ○○　○○ ポート 60 60 80 20 20 20 20 60 60 合・・・・

5 12410039 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 合・・・・・

5 12410057 ○○　○○ ポート 25 25 80 40 40 40 40 30 30 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・


5 12410020 ○○　○○ ポート 60 60 80 20 20 20 20 60 60 合・・・・

5 12410039 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 合・・・・・

5 12410057 ○○　○○ ポート 25 25 80 40 40 40 40 30 30 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・

5 12410075 ○○　○○ ポート 60 60 60 60 60 60 60 60 60 ・・・・・

18W

19W

15W

16W

17W

14W

2018

診療科別・学生評価平均学生個別・学生評価一覧

年度別・学生評価

PDCA：実習IRデータの集計・解析

18

個々の学生の評価E-ポートフォリオ

学生による診療科評価など、他の実習データも

同様に集計・解析可能

CESSの効果：学生アンケート

19

79.5%が「非常に良い」または「良い」



83.9%が「強く思う」または「思う」

学生カルテ記載についてコミュニケーションツールについて

CESS全体について今後もCESSを継続使用したいか？

CESSにより学生の臨床実習学修環境を大幅に改善

2018年度に運用開始

CESSの効果：自由記述・聞き取り

⚫ 学生⚫ 診療に参加している実感が持てる

⚫ カルテ記入の仕方が身についた

⚫ 疑問点を気軽に質問できた

⚫ 担当医からの返信により患者の病態を多角的に観察することができた

⚫ 患者さんを診察しながら自然と話せるようになった

⚫ 教員⚫ 空き時間にできるので、診療業務の妨げにならない

⚫ 学生への丁寧な返信がやる気を起こさせる原動力となっている

⚫ 学生が迷わないよう、質問を投げかけたり、学生カルテに記述した内容から実行すべきことをはっきり指示できている

20

⚫ 従来の見学型から主体的な診療参加型への転換の実践

⚫ 従来の紙媒体から効率的・機能的な実習指導への改善

非武装地帯

Fire Wall

CESSの展開：学外病院実習での利用⚫ ６年次臨床実習－学外関連病院（約30施設）で８週間

21

CESSの学外病院アクセス機能を開発

統一認証

A病院

B病院

C病院

D病院

学内からできるだけ切り離す

取り扱い情報を制限

利用者を制限

学内サービスに影響を与えることなく、許された範囲内で学内外の情報を共有

DMZVPN

学内CESS

CESSのさらなる展開

22

⚫ 学会発表やデモ展示、本学視察を通して、画期的な臨床実習ICTと

して他大学・他施設からの関心が高い

⚫ 文科省「2017年度医学歯学教育指導者ワークショップ」において

「最も参考にしたい取組み」として参加77校中第1位に選出

⚫ 本システムの基本構造は、教育用ICTとして汎用化が可能

◆製品化を実現し、全国の大学・施設に展開

◆卒前教育用を発展させて、卒後研修医教育用、看護学・リハ

ビリテーション学・歯学・薬学等の教育用を開発し、医療者教

育全般における卒前・卒後に一貫した教育ICTとして展開

我が国の医療全体のレベルアップに貢献

CESSの製品化： F.CESS™

23

CESS⚫ 福井大学で開発したプロトタイプ

⚫ 現在、福井大学で運用中

F.CESS™⚫ CESSの製品版⚫ 他施設にカスタマイズして利用可能

商標登録中

大学発ベンチャー、システム開発企業と共同開発

F.CESS™産学連携プロジェクト

卒後研修医版コメディカル版

へ展開

Fukui Clinical Education Supporting System

福井大学発ベンチャー：JMET

F.CESS™産学連携プロジェクト

24

福井大学医学部附属教育支援センター

学

（株）永和システムマネジメントパナソニックシステムソリューションズ

ジャパン（株）、他

産

（株）日本医学教育技術研究所Japan Medical Education Technology Institute: JMET

代表・田中雅人客員准教授

ベンチャー

2019年ベンチャー認定/CESS特許再実施許諾

ノウハウ相互共有・共創

2014年開発開始

2017年試験運用

2018年運用開始

F.CESSコンセプト作り解決手段の設計

開発バージョンアップ

販売・顧客対応

３者水平連携によるオープンイノベーション

2020年から他大学医学部や医療機関へ

なぜ福井大学で？：地方から発信

縦割りのない文化と

小規模大学ならではのチーム力

臨床技術

教育

福井大学医学部

現場のニーズアイデア発案

カルテ管理エキスパート

教育施策学生目線

オフィシャルマネジメント

ものづくり

（株）永和システムマネジメント福井発祥の

システム開発会社

チーム福井で産学連携

臨床系教員（医師）

システム管理担当教員

教育・学生担当教員学務課

医学部長

リーダーシップ

ベンチャー設立

25

地方大学から全国の医療向上

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