中毒環境因子編 - 石巻赤十字病院 · 中毒総論 解毒薬一覧 中毒各論...
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中毒総論
解毒薬一覧
中毒各論
❶タバコ誤飲
❷急性アルコール中毒
自然現象・環境因子によるもの
❶熱中症
❷一酸化炭素中毒
❸ツブ貝中毒
❹ヘビ咬傷
❺蜂刺症
❻エイ刺症
❼犬咬創・猫咬創
中毒環境因子編第5章目的 ●疑うことが大事です
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第❺章
中毒環境因子編
中毒総論
※入院が必要な急性中毒患者が来院する場合には、 早期に(救急隊からの情報の時点でも)オンコール医師を 呼び出してください
診察のポイント
1、飲んだもの・食べたものの内容と量本人以外に家族、救急隊からも情報収集飲んだと思われる空のPTP、瓶は必ず持ってきてもらう
2、摂取後経過時間血中濃度予測 胃洗浄・活性炭投与の判断 に有効
3、嘔吐の有無摂取総量予想に有効
4、理由自殺企図のきっかけなど今後の対応に有効
5、徴候・症状トキシドロームによる原因薬物の推測に有効
トキシドローム薬物 意識 呼吸 瞳孔 脈拍 血圧 皮膚 痙攣 その他 想定毒物
オピオイド 昏睡 抑制 縮瞳 低 低体温 オピオイド
コリン作動薬副交感神経賦活作用
昏睡 縮瞳 徐脈 発汗筋線維束性攣縮
流涙流涎
気道分泌亢進
有機リンサリンニコチン
抗コリン薬副交感神経遮断作用
興奮幻覚 頻 散瞳 頻脈 高 乾燥
紅潮 尿閉 アトロピン抗ヒスタミン薬
交感神経作動薬
興奮幻覚 頻 散瞳 頻脈 高 発汗 ++ 反射亢進
覚醒剤コカインアンフェタミンカフェインテオフィリンエフェドリン
三環系抗うつ薬 昏睡 抑制 散瞳 QRS
延長 低 +
鎮静薬睡眠薬 昏睡 抑制 正常から
やや縮小 低 低体温 反射減弱
サリチル酸 昏睡 過換気 正常からやや縮小 発汗 + アニオンギャップ
開大アシドーシス
中毒総論診断がついたら⇒救急科 CALL
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第❺章
中毒環境因子編
中毒総論
検査のポイント
可能な範囲で 定性・定量 の検査をする■定性検査●薬物中毒検出用キット『トライエージ』☆測定項目
PCP フェンシクリジン類 COC コカイン系麻薬AMP 覚せい剤 THC 大麻OPI モルヒネ系麻薬 BAR バルビツール酸類BZO ベンゾジアゼピン系 TCA 三環系抗うつ薬
○患者尿数mlで検査○各項目に偽陽性あり 例;AMP・・・風邪薬(エフェドリン、麻黄)、ザンタック OPI ・・・ジヒドロコデイン PCP・・・ジフェンヒドラミン、シメチジン●尿中パラコート パラコート中毒の診断に有効■定量検査●コリンエステラーゼ 有機リン中毒の経過観察に有効
診断のポイント
わからない時は
大阪・つくば 中毒情報センター へ問い合わせる○救命救急センター、医師控え室の院外インターネット用 PC内「お気に入り」に中毒情報センターを登録していて、 薬剤の詳細中毒情報の検索が可能です
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第❺章
中毒環境因子編
中毒総論
治療のポイント
摂取後1時間以内なら■胃洗浄適応 ①毒物を経口的に摂取して、 ②大量服毒の疑いがあるか、毒性の高い物質であり、 ③胃内に多く残留していると推定できる理由(服用1時間 以内、腸管運動抑制する毒薬物など)がある禁忌 ①酸・アルカリ ②灯油・ガソリン ③意識障害・痙攣
胃洗浄キットを使用 救命救急センターに在庫あり左側臥位+head downでお湯を使用チュウブ抜去前に活性炭投与★日本中毒学会『急性中毒の標準治療』活性炭と胃洗浄の比較 「活性炭投与は適応があれば可能な限り早期に投与すべき」 胃洗浄の適応がなければ、速やかに投与することを推奨して
います
■活性炭投与成人用薬用炭(活性炭)50g + ソルビトール125ml(1本) +水道水125ml○救命救急センター内に在庫あり○処方は「投薬」タブ→「チュウドク」もしくは「ヤクヨウスミ」と検索語入力○『(中毒)薬用炭セット=』が立ち上がり、上記の量も自動入力無効 ①酸・アルカリ ②灯油・ガソリン ③アルコール ④重金属-鉄・銅・鉛・水銀など
■最後は本で調べる
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第❺章
中毒環境因子編
中毒総論
当院解毒薬一覧分類 一般名 採用薬品名
(非採用薬品名) 経路 規格 対象中毒
硫酸アトロピン アトロピン硫酸塩0.5mg「タナベ」 注射 0.5mg/mL
有機リン系殺虫剤カーバメート系殺虫剤
サリンネオスチグミン ワゴスチグミン注0.5mg 注射 0.5mg/mL 抗コリン剤ロイコボリンCa ロイコボリン注3mg 注射 3mg/mL メトトレキサートビタミンK1、K2 ケイツーN注10mg 注射 10mg/2mL ワルファリン
ビタミンB6 ピドキサール注10mg 注射 10mg/mL イソニアジド、銀杏
グルコン酸Ca カルチコール注射液 注射 8.5%5mL10mL フッ化物、シュウ酸
チオ硫酸Na デトキソール静注液 注射 2g/20mL シアン、ヒ素ヒドロキソコバラミン シアノキット注射用セット 注射 5g シアン硫酸プロタミン ノボ硫酸プロタミン 注射 100mg/10mL ヘパリンチオプロニン チオラ錠 経口 100mg 水銀
ジメルカプロール バル注 筋注 100mg/mLヒ素、水銀、銅、鉛、
金、ビスマス、クロム、アンチモン
エデト酸Ca・二Na ブライアン注 注射 1g/5mL 鉛、カドミウムD-ペニシラミン メタルカプターゼカプセル 経口 100mg 鉛、水銀、銅スガマデクスNa ブリディオン静注 注射 200mg エスラックス
メシル酸デフェロキサミン デスフェラール注 注射 500mg/V 鉄
乾燥まむしウマ抗毒素 乾燥まむしウマ抗毒素 注射 6000単位 まむし毒乾燥はぶウマ抗毒素 (乾燥はぶウマ抗毒素) 注射 6000単位 はぶ毒塩酸ナロキソン ナロキソン塩酸塩静注 注射 0.2mg/1mL 麻薬、非麻薬
フルマゼニル フルマゼニル注射液 注射 0.5mg/5mL ベンゾジアゼピン系
酒石酸レバロルファン (ロルファン注) 注射 1mg 麻薬
ヨウ化プラリドキシム パム注 注射 500mg/
20mL有機リン系殺虫剤
サリン
亜硝酸アミル 亜硝酸アミル 吸入 0.25mL/A シアン、硫化水素
亜硝酸Na 《院内製剤》 注射 3%10mL シアン、硫化水素N-アセチルシステイン
アセチルシステイン内用液 経口 17.6 %
20mL アセトアミノフェン
L-メチオニン (L-メチオニン注) 注射 100gm/A 全般グルタチオン (タチオン注) 注射 100mg/A 全般
メチレンブルー 1%メチレンブルー 注射 1%10mL 亜硝酸化合物
メトヘモグロビン血症レボフロキサシン クラビット 炭疽菌対策ヨウ化カリウム ヨウ化カリウム丸 経口 50mg 被ばく対策
セファランチン セファランチン 注射 10mg/2mL まむし毒
薬理学的拮抗作用
化学的拮抗作用
受容体拮抗作用
代謝・排泄
促進作用
その他
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第❺章
中毒環境因子編
中毒各論
1、タバコ誤飲・ 誤飲してから4時間経過観察して異常がなければ 問題ない ⇒ 帰宅・明らかに2cm以上飲み込んだ時や、 ニコチンの溶け出した液を飲んだ時 ⇒ 小児科 CALL
2、急性アルコール中毒アルコール血中濃度簡易計算式予想浸透圧=2×Na+血糖/18+BUN/2.8予想血中アルコール濃度=(実測浸透圧-予想浸透圧)×4.6
アルコール血中濃度と臨床症状血中濃度mg/dL
臨床症状
精神 身体
50〜100 気分高揚 協調運動障害
100〜200 品行変化 運動失調
200〜300 傾眠 嘔吐
300〜400 昏睡 反射消失低体温 血圧低下
400< 呼吸抑制 心肺停止
治療
補液意識障害が遷延する時 入院考慮 ⇒ 救急科 CALL
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第❺章
中毒環境因子編
自然現象・環境因子によるもの
1、熱中症
定義 暑熱環境により生じる熱性生体障害
分類新分類 Ⅰ度 Ⅱ度 Ⅲ度
病 態脱水による循環血液量
減少塩分喪失性
脱水高度脱水循環障害
体温調節機能の破綻
体温上昇 ± + +++
発 汗 + + -
症 状 起立性低血圧と同様
低Na血症低K血症痙攣
軽度意識障害 *
重 症 度 軽症 中等症 重症
治 療 外来 入院治療 集中治療
旧 分 類熱失神Heat
syncope
熱痙攣Heat
cramp
熱疲労Heat
exhaustion
熱射病Heat
stroke
*一症状でも該当あれば重症と診断 1)中枢神経症状 意識障害、小脳症状、痙攣発作 2)肝・腎機能障害 GOT,GPT,BUN,Crの上昇 3)血液凝固異常 DICの診断
治療
深部体温を測定しながら可及的速やかに短時間で体温を下げる・冷却輸液点滴…冷蔵庫にソルアセト1L冷やしてあります・体表冷却 ⇒ 霧吹きで微温湯噴射+風による蒸泄
…霧吹き、うちわあります入院適応 ⇒ 救急科 CALL
自然現象・環境因子によるもの
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自然現象・環境因子によるもの
第❺章
中毒環境因子編
2、一酸化炭素中毒
診断
火災・練炭自殺など受傷機転で疑わしければ
⇒ 血液ガス分析で確認 COHb≧10%で確定
治療
なんと言っても ①酸素投与・・・リザーバー10L ②心電図-心筋虚血をモニター
〜高圧酸素療法の適応〜COHbにかかわらず高圧酸素療法は実施したほうがよい➡①軽症 仙石病院②重症 東北大学救命救急センター ⇒ 救急科 CALL
一酸化炭素中毒症例数 2016年~2018年
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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
火災・労災 自傷 こたつ
練炭を使用した堀こたつがまだ残っているので注意
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自然現象・環境因子によるもの
第❺章
中毒環境因子編
3、つぶ貝中毒
エゾバイ科エゾボラ属の巻貝の通称であるつぶ貝を食べて「複視・酔ったような感じ」で受診します
つぶ貝中毒症例数 2016年~2018年
0
1
2
3
4
5
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
キーワード
「自分で調理したつぶ貝」を食べた
原因
?
唾液腺に含まれるテトラミンという神経毒唾液腺を取り除かないで食べることにより発症
治療
対症療法 数時間の経過観察
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第❺章
中毒環境因子編
自然現象・環境因子によるもの
4、ヘビ咬傷
診察のポイント
■いつ咬まれた(受傷から受診までの時間)■蛇の種類 マムシ ヤマカガシ 45〜77cm 太短くずんぐり 100〜150cm 銭型楕円型斑紋 朱色の斑点
毒牙は前 毒牙は奥■腫れの範囲 *咬まれた=毒注入ではない
治療
軽症…局所症状弱い、全身症状(ー)◦洗浄◦破傷風トキソイド筋注重症…数時間で2関節を超える腫脹 全身状態不良⇒ マムシ抗毒素投与(6時間以内) 入院の上、全身管理 ⇒ 救急科 CALL
聞く
▲▲
見る
マムシ咬傷 2016年~2018年
0
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5
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
マムシ咬傷症例数 2016年~2018年
0
1
3
2
4
5
6
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
外来入院
外来入院
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第❺章
中毒環境因子編
自然現象・環境因子によるもの
5、蜂刺症蜂刺症 2016年~2018年
0
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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
外来入院
治療
◦ 軽症リンデロンVG軟膏 5g処方で帰宅
◦ アナフィラキシー対策⇒ 第3章4アナフィラキシー(P.049)に準じる
6、エイ刺症
受傷機転?
エイの尾棘が刺さる
主症状
疼痛
治療
◦ お湯につけると疼痛軽減
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第❺章
中毒環境因子編
自然現象・環境因子によるもの
7、犬咬創・猫咬創犬咬創・猫咬創 2016年~2018年
0
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20
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
犬猫
飛び抜けて多いわけではありませんが夏に多いようです
犬・猫・人 咬創 口腔内には種々雑多な細菌が存在するため ⇒ 高率に感染感染対策が最重要
診察のポイント
■野良か飼育か ⇒ 狂犬病予防接種歴確認 *日本では狂犬病の発症は報告されていない■いつ咬まれた(受傷から来院までの時間) ⇒ 受傷直後は感染兆候がほとんどない
■場所・深さ ⇒ 腱、神経、血管の損傷の有無確認■腫れの範囲
治療
◦ 洗浄 多量の生理食塩水で十分に創内を洗浄 汚れや挫滅がひどい時は、 局所麻酔下でブラッシングも必要◦創傷処置 原則的には縫わないでオープンにする 縫合する時は、 必ず皮下にペンローズドレーンを留置◦抗菌薬内服 オーグメンチンが第一選択◦破傷風トキソイド筋注
聞く
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見る
研修医マニュアル
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