実習アウトライン - kuroda labkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/summer/2014/day1/day1...pc12...

12
現象の特性 微分回路、積分回路、プローブ特性、 アナログデジタル変換、メモリ、振動現象 実習アウトライン これらはシンプルな分子ネットワークの 組み合わせで生まれる! 前向き制御(フィードフォワード) 後向き制御(ポジティブ、ネガティブ フィードバック) Tempo ral rate Ras 微分回路、積分回路 リズムと周波数応答 プローブの問題 分子で作るメモリ アナログデジタル変換 実習アウトライン シミュレーション演習 狙い 初日 イントロ 2日目 プローブと信号 3日目 実験結果からの数理モデル作成 4日目 時間パターンに対する選択的応答 5日目 スイッチ応答とメモリ 6日目 振動現象 シミュレーション演習 狙い 初日 イントロ 2日目 プローブと信号 3日目 実験結果からの数理モデル作成 4日目 時間パターンに対する選択的応答 5日目 スイッチ応答とメモリ 6日目 振動現象

Upload: others

Post on 22-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

現象の特性

微分回路、積分回路、プローブ特性、

アナログデジタル変換、メモリ、振動現象

実習アウトライン

これらはシンプルな分子ネットワークの

組み合わせで生まれる!

前向き制御(フィードフォワード)

後向き制御(ポジティブ、ネガティブ

フィードバック)

Temporal rate

Ras

微分回路、積分回路

リズムと周波数応答

プローブの問題

分子で作るメモリ

アナログデジタル変換

実習アウトライン

シミュレーション演習 狙い

初日 イントロ

2日目 プローブと信号

3日目 実験結果からの数理モデル作成

4日目 時間パターンに対する選択的応答

5日目 スイッチ応答とメモリ

6日目 振動現象

シミュレーション演習 狙い

初日 イントロ

2日目 プローブと信号

3日目 実験結果からの数理モデル作成

4日目 時間パターンに対する選択的応答

5日目 スイッチ応答とメモリ

6日目 振動現象

Page 2: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

5

2. Circuit Engineering Genetic Circuits

1次反応; 例;タンパク質などの分解,放射性同位元素の崩壊

準備体操

生化学反応の基本的なふるまい

dx xdt

0

t

x A e

0 2 4 6 8 100

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

Time

x

ポイント

Memoryless property

その時その時でいつも同じ。履歴を引きずらない

x分解

ただし、t = 0のとき、x=A0

t

x(t)

6

2. Circuit Engineering Genetic Circuits

逐次1次反応;leaky integrator(漏れ積分器)1次反応に外部入力(ステップ刺激)を加える

準備体操

生化学反応の基本的なふるまい

dx I xdt

(1 )t

x I e

x分解

I

0

ただし、t = 0のとき、x = 0

空気抵抗を考えた場合の自由落下の式と同じ。

穴のあいたバケツに水を一定速度で入れるのとも同じ。

Leak(漏れ)

Integrator(積分器)

I

t

x(t)

kf

kbA B AB time

A

time

AB

生化学反応は漏れ積分で近似できる

(1 )dAB kfA AB kbABdt

1AB B ただし、

ifA Kd

dAB kfA kbABdt

シミュレーション演習 狙い

初日 イントロ

2日目 プローブと信号

3日目 実験結果からの数理モデル作成

4日目 時間パターンに対する選択的応答

5日目 スイッチ応答とメモリ

6日目 振動現象

Page 3: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

2008 ノーベル化学賞緑⾊蛍光蛋⽩質の発⾒と開発

細胞

組織 個体

生体を生きたまま非侵襲に染色、可視化できる

望みの部位だけ可視化できる

蛋白質の発現等を定量できる

プローブと信号

1.時定数

時間おくれ、波形がなまる

2.感受性と定量性

3.拮抗阻害

プローブは外乱

何かを壊さないと中身は見れない

kf

kbA B AB

time

A

time

AB

Ca2+イメージング(膵臓ランゲルハンス島)

グルコース刺激した膵臓ランゲルハンス島のカルシウム応答

• すべてのカルシウム応答が⾒えている?• ⽣体内のカルシウム応答(<100nM,数⼗マイクロ秒)

Ca 2+プローブと反応速度定数-バイオプローブ-

• プローブの応答はカルシウム濃度の変化を正しく反映している?⇒必ずしもカルシウム波形が正確に反映されているわけではない

プローブを使う際は応答速度に注意する。

Ca2+ インパルス刺激(※50msec幅の矩形波を仮定)50ms

0.5Hz 1Hz 2Hz

Page 4: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

シミュレーション演習 狙い

初日 イントロ

2日目 プローブと信号

3日目 実験結果からの数理モデル作成

4日目 時間パターンに対する選択的応答

5日目 スイッチ応答とメモリ

6日目 振動現象

分化

増殖

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)EGF

一過性 ERK 活性化

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

NGF

持続性 ERK 活性化TimeEGF

or N

GF

PC12 cells(precursor of neuron)

細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ現象を分子に帰着せさることができない!

ERKの時間波形が異なるだけで異なる現象を制御

エンコード デコード

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

EGFTransient ERK activation

Sustained ERK activation

NGF

RasとRap1によるERK活性の制御 不活性化機構が違いを生み出す !

SOS

TrkA

RasGAP

Ras

GAPi

pR

GEFi GEF

RasRasi

GAP

C3G

TrkA

Rap1GAP

Rap1pR

GEFi GEF

Rap1Rap1i

GAP

Rap1 積分回路

Ras 微分回路

pR dependent

pR independent(constant)

Page 5: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

実験結果からモデルのパラメータを決める

t

yk=a

k=b

t

yk=a

k=b

+ + + + + + + + +<

( )f t ( )f tシミュレーション演習 狙い

初日 イントロ

2日目 プローブと信号

3日目 実験結果からの数理モデル作成

4日目 時間パターンに対する選択的応答

5日目 スイッチ応答とメモリ

6日目 振動現象

分化

増殖

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)EGF

一過性 ERK 活性化

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

NGF

持続性 ERK 活性化TimeEGF

or N

GF

PC12 cells(precursor of neuron)

細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ現象を分子に帰着せさることができない!

ERKの時間波形が異なるだけで異なる現象を制御

エンコード デコード

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

EGFTransient ERK activation

Sustained ERK activation

NGF

RasとRap1によるERK活性の制御

Page 6: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

不活性化が一定

刺激の速さに応答:微分回路 刺激の強さに応答:積分回路

Sasagawa, S. et al, Nat. Cell Biol. 2005, 7 (4), 365-373

Encoders Rap1

t

tt

Ras

速い活性化と遅い不活性化

Growth factorsRas

ReceptorGEF GAP

ERK

Rap1

ReceptorGEF

GAP

ERK

RasとRap1経路の特性の違い Ras のシンプルモデル

Rasのシンプルモデル

GEF

GAP

速い活性化と遅い不活性化

Ras

ReceptorGEF GAP

ERK

incoherent FeedFowared Loop

(iFFL)

→時間変化を捉える!

q < 1: GEF が早い

q > 1 : GEF が遅い

Ras のシンプルモデル

速い活性化と遅い不活性化

Ras

ReceptorGEF GAP

ERK

incoherent FeedFowared Loop

(iFFL)

→時間変化を捉える!

q < 1: GEF が早い

q > 1 : GEF が遅い

刺激のスピードとqの関係に着目!

stimulation (const.)GEF

GAPステップ

stimulation (1 )rte

ランプ

ランプ刺激:刺激の速度を変えよう

r: (rate of pR)

Ras

Page 7: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

刺激の速度に対する一過性ERKの応答

EGF 刺激

Rasのシステムは刺激の速度(強度ではない)を捉えていた。

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40 50 60Time (min)

Phos

phor

ylat

ed E

RK

(%)

EGF

NGF

持続性ERKの活性化

?

?

Inactivation is constant

NGF stimulation

NGFの最終濃度(強度) → 持続性ERKの活性化

NGF刺激の速度を変えてみると Rap1とRasのシンプルモデル

SOS

TrkA

RasGAP

Ras

GAPi

pR

GEFi GEF

RasRasi

GAP

C3G

TrkA

Rap1GAP

Rap1pR

GEFi GEF

Rap1Rap1i

GAP

Rap1

Ras:さっきと同じ

刺激依存

刺激非依存(constant)

違いはたった一つ

Page 8: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

RasとRap1の定常状態

Rap1

0.001

0.01

0.1

1

0.001 0.01 0.1 1 10 100pR

11 Ke

e)e1(1

KpRKpRRap

Rap

1e

1KpR

Rap

Ras

0.001

0.01

0.1

1

0.001 0.01 0.1 1 10 100pR

11 Ke

pRppRpK

Ras

11e1

1

Ras

e11pK

Ras

刺激

ステップ

t

t

t

Ras-like system(微分回路)

Rap1-like system(積分回路)

速い、遅い時間成分

t

パルス

t

t

速い時間成分

t

ランプ

t

t

遅い時間成分

RasとRap1経路の特性の違い

刺激の時間パターンに情報が入っていた!

ON OFF OFFON

Ras/Rap1

Growth factor

分化増殖

Encoder

Decoder1 Decoder2

ERK

gene A gene B gene A gene B

ERKへのエンコード

下流でのデコード

異なる現象(増殖と分化)

刺激の時間情報

活性化ERKの時間情報デコーディング

ノイズで分化したくないベースの変動で増殖したくない

広い意味での周波数応答

分子は媒体

TAKE HOME MESSAGE

Page 9: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

分子自体は情報ではない!分子は媒体

電磁波

周波数、振幅空気振動

音楽、ニュース

成長因子

時間波形細胞増殖

シグナル分子波形

細胞分化

分子やネットワークは媒体

→情報を伝えるもの

分子の「変動パターン」が情報

→分子ネットワークの上を伝わるもの

シミュレーション演習 狙い

初日 イントロ

2日目 プローブと信号

3日目 実験結果からの数理モデル作成

4日目 時間パターンに対する選択的応答

5日目 スイッチ応答とメモリ

6日目 振動現象

大腸菌lacオペロンの双安定性

•大腸菌は糖の濃度を記憶する

•ポジティブ・フィードバックで記憶する

•協調作用

Ozbudak et al. (2004) Nature

記憶(Hysteresis)のある(ない)スイッチ応答

0 20 40 60 80 100 120-5

0

5

10

15

20x 10

-3

0 20 40 60 80 100 1200

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

time time

y(L

acY-

GFP

)

y(L

acY-

GFP

)

記憶なしスイッチ

(ポジティブフィードバックなし)

ヒステリシスありヒステリシスなし

記憶ありスイッチ

(ポジティブフィードバックなし)

Page 10: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

シミュレーション演習 狙い

初日 イントロ

2日目 プローブと信号

3日目 実験結果からの数理モデル作成

4日目 時間パターンに対する選択的応答

5日目 スイッチ応答とメモリ

6日目 振動現象

38Michael B. Elowitz & Stanislas Leibler ,2000,Nature

入力

ネガティブフィードバックのみ

Repressilator

Repressilator

ポジティブ+ネガティブフィードバック

Stim. elecRecd. elec

Action potential (活動電位)

Hodgkin Huxley model

↓FitzHugh-Nagumo model

時間情報コード(ローカル)

ボトムアップ

縮約(単純化)

動作原理

トランスオミクス(グローバル)

トップダウン今回の実習はボトムアップ

最先端ではトップダウンも組み合わせる

Page 11: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

グローバル

ローカル

1.トランスオミクス

生体のホメオスタシス(恒常性)

インスリン作用のシステム生物学

2.時間情報コード

インスリンの作用と標的臓器

炭水化物の全身での代謝を制御

グリコーゲン合成、糖新生、タンパク質合成

血糖を下げる唯一のホルモン

インスリンが作用できなくなると糖尿病に

インスリンの放出

インスリン作用のシステム生物学個別の実験結果を人手で

自分の頭の中で再構築

それをマンガで表現

木を見て森を描く

インスリン作用のシステム生物学個別の実験結果を人手で

自分の頭の中で再構築

それをマンガで表現

ハイスループットに大量計測

計算機を使って再構築を自動化

ルールに基づき表現

これから

木を見て森を描く森を描いてから木を見る

Page 12: 実習アウトライン - KURODA LABkurodalab.bs.s.u-tokyo.ac.jp/class/Summer/2014/Day1/day1...PC12 cells (precursor of neuron) 細胞運命決定機構:増殖と分化のスイッチ

インスリン シグナル伝達

代謝物

リン酸化

アロステリック

制御

インスリン作用の全貌

Phospho-proteome

47

インスリン

リン酸化プロテオミクス

メタボロミクス

トランスオミクス解析によるインスリン作⽤経路の⾃動同定

1. 代謝物

2. 境界酵素

3. 境界酵素のリン酸化

4. インスリンから境界酵素までの経路同定

5. 代謝物によるアロステリック制御