気体を用いたヒートパイプ - jst · q.気体でどうやって熱輸送するのか?...

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1 気体を用いたヒートパイプ 温度域を選ばない無電源熱輸送デバイスの開発 東京農工大学 大学院工学研究院 先端機械システム部門 准教授 上田 祐樹

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Page 1: 気体を用いたヒートパイプ - JST · Q.気体でどうやって熱輸送するのか? A. 熱音響自励振動を利用して, 気体を振動させ,振動気体に熱輸送を行わせる.

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気体を用いたヒートパイプ温度域を選ばない無電源熱輸送デバイスの開発

東京農工大学 大学院工学研究院

先端機械システム部門

准教授 上田 祐樹

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Q.何ができるようになったのか?

高温物体 低温物体

熱輸送

A. 高い温度(300℃以上)の物体からの熱輸送(外部入力なし)

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どのようなニーズに対する解決策なのか

高温物体 低温物体(外気)

熱輸送

高温物体: ある時は温度を上昇させある時は温度を維持しある時は少しだけ温度を下げある時は出来るだけ速やかに温度を下げたい.

例えば炉の中の金属

何が必要か? → 断熱+能力を調整できる熱輸送デバイス

かつ,省エネルギーで

(上昇時はヒーターを使用)

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従来技術とその問題点

既に実用化されている熱輸送デバイスとして、気液相変化を利用したヒートパイプが存在する

作動流体の相変化を利用する為,

・熱源温度が限定される

・熱輸送量の制御が困難

等の問題があり、高温物体からの熱輸送には利用されていない.特殊な熱媒(ナトリウムや液体金属)を用いて温度の問題を解決する例はある.

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新技術

ヒートパイプの作動流体 気液相変化をおこす物質(例えばフロン)新技術の作動流体 気体(例えば窒素)

Q.気体でどうやって熱輸送するのか?A. 熱音響自励振動を利用して,

気体を振動させ,振動気体に熱輸送を行わせる.

ヒートパイプの駆動力 沸騰・凝縮新技術の駆動力 熱音響自励振動

温度の問題を解決

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熱音響自励振動

自由空間を伝わる音波(通常のコミュニケーションに使う音) 断熱狭い空間を伝わる音波 熱的作用有

1 mm程度かそれ以下低温 高温

音波による流体の圧力変動

位置変動 管壁の温度勾配 加熱・冷却

圧縮・膨張

Energy Conversion

音波による エネルギー変換量 > 散逸量(流体の変位・圧力変動に伴う)熱音響自励振動 発生

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熱音響自励振動を利用した従来装置(熱音響エンジン)

こっちの研究も行っています

熱効率 30% !!音波の運ぶエネルギー密度 500 kW/m^2 (太陽光の500倍!!)

(S. Backhaus and G. Swift Nature 399 1999)

負荷

出力(音波)

熱入力放熱

高温

低温

多孔質体(みたいなもの)狭い流路(~ 0.1 mm)

太陽光や排熱を有効利用する装置が世界中で開発されている

加圧気体(30気圧He)

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農工大で作成した熱音響エンジン

800 W の 熱入力

30 W の 出力(音波)

効率は高くない 熱はどこに行った?→ほとんど低温熱交換器から外界へ

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新技術の発想

熱入力 800W (350℃)

放熱 570 W (循環水へ70℃)

放熱(輻射~200 W)

出力30W

0.1 m

0.1 m

W/(K m)

作動流体(窒素)の熱伝導度0.04 W/(m K)の600倍

熱音響エンジンを自己駆動型熱輸送デバイスとして利用する

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新技術の発想

熱音響エンジンを利用することで

有効な熱伝導率を0.04 W/(K m) から 25 W/(K m)まで連続的に変化できる 熱輸送デバイス が製作できる

・外部からのエネルギー入力必要なし(駆動エネルギーは高温物体が持っているエネルギー)

・壊れにくい(可動部が一切存在しない)・高い安全性(窒素が作動流体

設計を変えることでもっと大きくできる可能性あり

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 従来は作動流体の相変化温度で稼働温度が限定されていた問題に対して,作動流体を気体にすることで,幅広い温度域で用いることで解決.(500℃以上の物体からでも特殊な物質を使用することなく熱輸送を実現可能)

• 物理的なスイッチを付加することで,熱輸送量を任意に制御できる可能性あり.

• 課題:熱輸送に寄与しない共鳴管の存在装置が大きくなってしまう(ある程度は装置形状で解決できる)

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新技術の利用イメージ

管(径:長さ = 1 : 10)

断熱層

低温熱源(外気)

高温熱源(温度を下げたいもの)

調整機構により熱輸送量を任意に制御

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想定される用途

• 本技術の特徴を生かすためには、通常時は高温に保っておきたい物体(例えば高温の炉内)の温度を任意のタイミングで下げたい場合の熱輸送デバイスとして利用

• また、従来の研究成果に着目すると、高温物体の持つエネルギーの一部を電力に変換することも可能と思われる。

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実用化に向けた課題

• 現在,数値計算により性能を予測することは可能.しかし,実機は熱輸送デバイスとして開発したものではない.

• 今後,熱輸送デバイスとして設計した実機を製作し,その能力を実証する.

• 従来とは異なる設計目的となるため,新しい設計指針を明らかにする必要がある

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企業への期待

熱源(高温物体,太陽光,排熱源)

熱音響システム

冷却

熱輸送

電力

専門(得意)

どんな熱源が世の中に存在しどんなふうに使いたいのか

熱音響システムに関してではなく,熱音響システムを使ったシステムに関する共同開発を希望

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :熱輸送デバイス• 出願番号 :特許出願済み 未公開

• 出願人 :国立大学法人東京農工大学

• 発明者 :上田 祐樹

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産学連携の経歴

• 2007年- 効率の良い熱音響エンジンに関する共同研究• 2016年- 効率の悪い熱音響エンジンに関する共同研究• 2017年- JST地域産学バリュープログラム事業に応募

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お問い合わせ先

東京農工大学

先端産学連携研究推進センター

TEL 042-388-7550

FAX 042-388-7553

e-mail [email protected]