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革新的衛星技術実証ワークショップ2020 1 粒子エネルギースペクトロメータ (一財)宇宙システム開発利用 推進機構

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Page 1: 粒子エネルギースペクトロメータ...SPMの概要(計測原理) • S1とS2の2枚のPIN型シリコン半導体検出器 とその間の減速材(タンタル:Ta)で構成

革新的衛星技術実証ワークショップ20201

粒子エネルギースペクトロメータ

(一財)宇宙システム開発利用推進機構

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革新的衛星技術実証ワークショップ20202

SPMの概要(計測原理)• S1とS2の2枚のPIN型シリコン半導体検出器とその間の減速材(タンタル:Ta)で構成

• 単純なセンサ構成で広範囲な放射線粒子計測が可能

• 粒子が検出器を通過した際のS1とS2の損失エネルギーの組み合わせにより、エネルギー弁別を行う

ADC (8bit)

Counter 10ch

減速材(Al:200um)

S1:シリコン半導体検出器(250um)

Charge Amp. コリメータ

放射線粒子

損失エネルギー

ADC (8bit)

Charge Amp. 減速材(Ta:2mm)

S2:シリコン半導体検出器(1500um)

ROM Table

(256×256)

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革新的衛星技術実証ワークショップ20203

SPMの概要(諸元)

電源電圧 +12V(45mA), -12V(20mA), +5V(60mA)通信方式 RS-422

計測粒子種/ エネルギー範囲

電子 (0.21MeV~)陽子 (5.5MeV~300MeV)重粒子 (7.12MeV/n~)

視野 41.2度

形状 102mm×132mm×46mm(突起含まず)

質量 0.766kg(本体のみ)消費電力 最大1.1 W

データレート 370bps以上(換算時間1secの場合)

SPM諸元

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革新的衛星技術実証ワークショップ20204

SPMの概要(計測性能)

カウンタ番号 粒子 エネルギー範囲C-0 電子 0.21~4.0 MeVC-1 電子 4.0MeV~C-2 陽子 11~43.6 MeVC-3 陽子 5.5~11 MeVC-4 陽子 43.6~48.6 MeVC-5 陽子 48.6~67 MeVC-6 陽子 67~106 MeVC-7 陽子 106~300 MeVC-8 重粒子 7.12~11.8MeV/nC-9 重粒子 51.5MeV/n~

• 電子0.21MeV~(2CH)

• 陽子5.5~300MeV(6CH)

• 重粒子7.12MeV/n~(2CH)

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革新的衛星技術実証ワークショップ20205

サクセスクライテリア

成功基準 確認結果ミニマムサクセス

軌道上にて放射線計測を実施し、実験テレメトリデータを取得できること。

達成

フルサクセス

電子、陽子、重粒子の弁別およびエネルギー量の観測ができること、およびTEDAと比較し、同傾向の実験テレメトリデータが取得できること。

達成

エクストラサクセス

太陽フレア等、軌道上の放射線環境を同定できる実験テレメトリデータが取得できること。

N/A(対象となる大規模な太陽フレア等のイベントが発生してい

ない)

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革新的衛星技術実証ワークショップ20206

初期運用• 電源電圧電流値確認地上試験時と同等 → SPMは正常に起動

• テレメトリフォーマット確認正しいフォーマットで送信されている

• 校正モード確認地上試験時と同等 → 装置の健全性を

確認• TEDAとの比較同時刻にイベント → 粒子のデータを

取得できている

軌道上にて放射線計測を実施し、実験テレメトリデータを取得できている

↓ミニマムサクセスの達成

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革新的衛星技術実証ワークショップ20207

計測結果(電子)

SPM電子カウンタのカウント数 TEDA電子カウンタのカウント数(*1)

*1:JAXA殿提供のTEDAデータから抜粋

• TEDAとの比較(電子)取得されたデータには同じ傾向が見られ、入射した粒子カウント数も一致している。→SPMとTEDAでは1イベントあたりの処理時間は同等であり、電子計測に対するセンサ視野角や有感領域もほぼ同等であるため、妥当であると判断する。

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革新的衛星技術実証ワークショップ20208

計測結果(陽子)

SPM陽子カウンタのカウント数 TEDA陽子カウンタのカウント数(*1)

• TEDAとの比較(陽子)大きなイベントピークについては、傾向が一致しているがカウント数は異なっている。小さなイベントピークはSPMでのみ見られる。この小さなピークは、電子のカウンタにイベントが発生しているタイミングで発生している。(前項と比較)

*1:JAXA殿提供のTEDAデータから抜粋

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革新的衛星技術実証ワークショップ20209

陽子計測結果への考察• TEDAとの比較(陽子)粒子カウント数の不一致

SPMとTEDAでは、陽子計測に対するセンサ視野角や有感領域が異なるため、カウント数は一致しない。→FLUXに換算して評価を行う。

SPMでのみに見られるイベントTEDAは電子用、陽子/重粒子用のセンサと弁別テーブルを別々に持っている。一方、SPMは1つのセンサで計測対象粒子すべてを計測している。そのため、電子のイベントの一部が、低エネルギーの陽子のカウンタでコンタミとなっていることが推定される。→弁別テーブルを書き換え評価を行う。

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革新的衛星技術実証ワークショップ202010

弁別テーブル書き換え

0B

0A C-2 C-4

09 New

08 New C-6

07

06

05

04 C-0 C-7

03

02

01 C-1

00

00 01 02 03 04 05 06 07

0B

0A C-2 C-4

09

08 C-6

07

06

05

04 C-0 C-7

03

02

01 C-1

00

00 01 02 03 04 05 06 07

Before After

縦軸:S1のA/D値 横軸:S2のA/D値

• 2019年8月の運用時にテーブル書き換えを実施した。(S1とS2の損失エネルギーの組み合わせを参照する弁別テーブルの変更)

• 陽子カウンタへの電子コンタミと思われる領域について、電子のカウンタ領域を拡大した。

• 電子と陽子のカウント数の比から、陽子計測にはほぼ影響しないと考える。

※テーブルは256×256でありその一部を抜粋

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革新的衛星技術実証ワークショップ202011

弁別テーブル書き換え結果

SPM陽子カウンタのカウント数SPM電子カウンタのカウント数

• 書き換え前の、コンタミと考えていたイベントのカウント数は電子イベントのカウント数の1/10程度であった。

• 書き換え後は、電子イベントと同じタイミングで陽子のカウント数が大幅に減っている。(下図)

→テーブル書き換えでコンタミの影響を軽減できた

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革新的衛星技術実証ワークショップ202012

弁別テーブル書き換え結果

SPM陽子カウンタのカウント数 TEDA陽子カウンタのカウント数(*1)

*1:JAXA殿提供のTEDAデータから抜粋

• TEDAとの比較(陽子)SPMでのみ見られた小さなイベントピークは見られない。カウント数の差異については、前述の通りFLUXに換算しての評価を実施する。

(電子については書き換え後もTEDAと同傾向のデータを取得できている)

※TEDAとの比較のため、SPMのデータは前項のグラフとは取得日時が異なる

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革新的衛星技術実証ワークショップ202013

※比較したカウンターはTEDAのカウンターと同じ計測範囲となっているC-2, C-5, C-6とした。

※任意の点でのFLUXの比をグラフにプロットした。

TEDAとの比較(FLUX)• SPMの陽子カウント数をFLUX換算し、TEDAと比較した。(FLUX:単位面積、立体角、時間、エネルギー当たりのカウント数単位:/cm2/sr/s/MeV)

• 下図に示すように任意の点でのFLUXを比較すると、どの点でも凡そ同様の比(2.4)となっており、SPMはTEDAと同傾向のデータが取得できていることが確認できた。

*1:JAXA殿提供のTEDAデータから抜粋

*1

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革新的衛星技術実証ワークショップ202014

計測結果(重粒子)

SPM重粒子カウンタのカウント数 TEDA重粒子(He4)カウンタのカウント数(*1)

*1:JAXA殿提供のTEDAデータから抜粋

• TEDAとの比較(重粒子)取得されたデータには同じ傾向が見られ、カウント数も一致している。→センサ視野角や有感領域の差や、弁別テーブルの設定の違いを考慮して、妥当と考える。

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革新的衛星技術実証ワークショップ202015

計測結果まとめ• 電子、陽子、重粒子の弁別およびエネルギー量の観測ができている。

• TEDAとの比較において、同じ傾向のデータが取得できている。電子、重粒子:カウント数の比較から妥当性を確認陽子:FLUXの比較から妥当性を確認

• 宇宙放射線による機器の誤動作や故障の原因究明、放射線による異常発生回避運用のための放射線環境計測という点においては、十分な計測性能を有していると言える。

• 2020年1月時点での校正モードのデータ確認を行った結果、地上試験時、運用初期と同様の結果が得られており、運用期間中にSPMのセンサと回路系に劣化はなかったことが確認できた。

電子、陽子、重粒子の弁別およびエネルギー量の観測ができ、また、TEDAと比較し、同傾向の実験テレメトリデータが取得できている

↓フルサクセスの達成

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革新的衛星技術実証ワークショップ202016

アウトカムの達成状況• SPMとTEDAの軌道上データを比較・評価した結果、

SPMはTEDAと同じ傾向を示すデータを取得し、放射線環境の同定に使用できる性能を有していることを確認した。本結果により、今後も本機器の有用性をPRしていく。

• SPMのカタログを作成し、明星電気HPへの掲載を実施している。拡販活動のツールとして使用し、問い合わせ対応を行っている。

→2020年2月現在、HP問合せより1件の概算見積依頼あり。

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革新的衛星技術実証ワークショップ202017

アウトカムの達成状況

評価項目 RUAG社NGRM

SSTL社SSTL RM

明星電気SPM SPMとの比較結果

弁別ch数電子:8ch陽子:8ch重粒子:8ch

重粒子:63ch電子:2ch陽子:6ch重粒子:2ch

NGRMは電子用と陽子・重粒子用にそれぞれセンサ部が構成されており、SPMは弁別性能は劣っているが、センサ部が1つの構成となっており、質量寸法面が優位である。SSTL RMは細かく弁別を行なうことが出来るが、計測粒子は限られているため、SPMとの差別化はされている。

電力 2.0W 1.8W 1.0W SPMは他機器と比べて約半分程度の消費電力である。

電源電圧 +50V,+28V +28V ±12V,+5VNGRM,SSTL RMともにバス電源供給と推定される。SPMは2次電源供給である。

質量1.4kg 0.7kg

ケース含まず0.8kg

MLI含むSSTL RMは別途ケースの作成が必要であることを考慮すると、SPMが最も質量的に有利といえる。

寸法132×150×68mm 100×70×65mm

ケース含まず132×102×46mmコリメータ、突起

含まず

SSTL RMは別途ケースの作成が必要であることを考慮すると、SPMが最も寸法的に有利といえる。

通信方式 1553Bother upon request

CAN-SU (or Optional RS422 and RS485) RS422

SPMと海外他社製品の比較

• SPMの競合機器であるESA 開発品のSREM、米RUAG 社のNGRM、英SSTL 社のSSTL Radiation monitor等に十分に対抗し得る小型・軽量・低価格な機器を開発できた。

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革新的衛星技術実証ワークショップ202018

アウトカムの達成状況• 国内・海外の展示会でSPMのPR活動を実施している。• 海外展示会(米国ユタSSC、4Sシンポジウム、APRSAF等)では、カタログの配布、現地PRを実施し、ニーズ調査を実施している。

• 国内展示会・講演会(宇宙科学技術連合講演会)では、モックアップおよびカタログの配布、講演発表を実施した。

• 講演発表では、軌道上での性能・既存機器に対する優位性について質問をいただき、低コスト・小型ながらTEDAと同傾向のデータを取得できる性能を有することに興味を持っていただけていることを確認できた。

• また、SPMを静止軌道上で使えないか検討したい、といった引き合いをいただき、問合せ対応を継続中である。