初級授業にシャドーイングを取り入れる...

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77 初級授業にシャドーイングを取り入れる ―先行研究から学ぶ― 土居 美有紀 要  旨 シャドーイングは外国語学習者のスピーキング力及びリスニング力を向上させて くれる最も効果的で実用的な方法の一つだと言われている。シャドーイング訓練を 行うことにより個々の学習者にどのようなプラスの影響があったかについて様々な 報告がなされている一方、シャドーイングをクラス活動としてどのように授業に取 り入れているかを伝えているものは、日本語教育の分野ではあまり多くない。先行 研究からいろいろなシャドーイングのアイディアを学び、今回初級日本語のクラス で実践したシャドーイングを振り返り、今後の課題と可能性について述べる。 キーワード:シャドーイング、外国語学習、授業、教室活動 1.はじめに 初級のコースでは週に 3 時間 LL のクラスがあり、聞き取り、発音の指導に充てられて いる。発音の指導では、モーラ、アクセントの指導から始めるが、ルール説明に割く時間 が多く、練習自体も単調になりがちである。発音の改善に興味がある学生は多いが、あま り厳しく指摘するとかえってやる気を失わせてしまう。その場ではできても、次の日には また元に戻ってしまうことも多い。また、自然な日本語の発音を身につけるためには、イ ントネーションの指導も重要ではあるが、その指導は難しい。そこで目をつけたのが、最 近外国語教育で取り上げられているシャドーイングだ。シャドーイングは聞こえてくる音 声を遅れないように、できるだけ即座に声に出して繰り返しながらついていく訓練法だ (門田・玉井 2004)。シャドーイングは、音声を正確にまねるだけで自然な発音やイント ネーションが身に付き、しかも音声さえあればいつでもどこでもできるという手軽さもあ る。しかし、シャドーイング訓練の実施が個々の学習者にどのように有益であったかにつ いて様々な報告がなされている一方、シャドーイングをクラス活動としてどのように授業 に取り入れているかについて伝えているものは日本語教育の分野ではあまり多くない。先 行研究からいろいろなシャドーイング方法を学びつつ、今回初級のクラスで実践したシャ ドーイングを振り返り、今後の可能性について述べたい。

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初級授業にシャドーイングを取り入れる―先行研究から学ぶ―

土居 美有紀

要  旨

 シャドーイングは外国語学習者のスピーキング力及びリスニング力を向上させてくれる最も効果的で実用的な方法の一つだと言われている。シャドーイング訓練を行うことにより個々の学習者にどのようなプラスの影響があったかについて様々な報告がなされている一方、シャドーイングをクラス活動としてどのように授業に取り入れているかを伝えているものは、日本語教育の分野ではあまり多くない。先行研究からいろいろなシャドーイングのアイディアを学び、今回初級日本語のクラスで実践したシャドーイングを振り返り、今後の課題と可能性について述べる。

キーワード:シャドーイング、外国語学習、授業、教室活動

1.はじめに

 初級のコースでは週に3時間LLのクラスがあり、聞き取り、発音の指導に充てられて

いる。発音の指導では、モーラ、アクセントの指導から始めるが、ルール説明に割く時間

が多く、練習自体も単調になりがちである。発音の改善に興味がある学生は多いが、あま

り厳しく指摘するとかえってやる気を失わせてしまう。その場ではできても、次の日には

また元に戻ってしまうことも多い。また、自然な日本語の発音を身につけるためには、イ

ントネーションの指導も重要ではあるが、その指導は難しい。そこで目をつけたのが、最

近外国語教育で取り上げられているシャドーイングだ。シャドーイングは聞こえてくる音

声を遅れないように、できるだけ即座に声に出して繰り返しながらついていく訓練法だ

(門田・玉井2004)。シャドーイングは、音声を正確にまねるだけで自然な発音やイント

ネーションが身に付き、しかも音声さえあればいつでもどこでもできるという手軽さもあ

る。しかし、シャドーイング訓練の実施が個々の学習者にどのように有益であったかにつ

いて様々な報告がなされている一方、シャドーイングをクラス活動としてどのように授業

に取り入れているかについて伝えているものは日本語教育の分野ではあまり多くない。先

行研究からいろいろなシャドーイング方法を学びつつ、今回初級のクラスで実践したシャ

ドーイングを振り返り、今後の可能性について述べたい。

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国際教育センター紀要 第12号

2.シャドーイングについて

 シャドーイングは英語教育において注目されているということはよく耳にするが、ここ

ではシャドーイングを行うことにより実際どのような効果が得られるのか、またどのよう

な方法で行われているのか、英語・日本語の先行研究からその手順の例を述べる。

2.1 シャドーイングの利点

①アクセント、イントネーションの改善

 川本(2003)、門田・他(2007)、鳥飼・他(2003)はシャドーイングの利点として、

母語なまりなどの発音の改善、an appleが「アナプル」になるなど、連結などの実際の音

韻現象の習得、プロソディー、ピッチ、ストレス、抑揚、リズム、ポーズなどの改善を挙

げている。また、Acton(1984)が行なった研究には、シャドーイング訓練が、流暢では

あるが発音に不正確さがある非英語母語話者のアメリカ移民の英語のリズムやストレス

パターンを改善したことが述べられており、高橋(2006)も1週間発音を意識したプロソ

ディーシャドーイングを実施した後テキストを音読させると、アクセントやピッチの改

善がみられたと報告している。高橋は、被験者が「音読中に頭の中でモデル音声が聞こえ

る」と述べたことから、シャドーイングで聞いた音を繰り返すことで正しいアクセントが

頭に残り、それが練習後の音読にも影響したのではないかと分析している。また、望月

(2006)も従来の単音、単語レベルの発音指導には欠けていたプロソディーの指導をシャ

ドーイングにより体系的に行える可能性を示唆している。

②聴解力の向上

 聞こえてくる音声をそのまま繰り返せるということは、その音が聞けているというこ

とであり、聞けない音を自分で音声化することは困難である。川本(2003)や鳥飼・他

(2003)は、シャドーイング訓練により目標言語の速度についていけるようになること、

復唱により短期記憶に残った音声が、意味理解の手掛かりを与え、その結果理解力を促進

するということを述べている。また、唐澤(2010)は、シャドーイング実験後に行なった

質問で被験者が、「母語に置き換えて理解する方法から、目標言語のまま理解する方法に

変わった」と述べたと報告している。これらのことから、シャドーイング訓練により脳内

での外国語情報処理能力が向上し、その結果、聴解力の伸長へとつながるということが言

える。

③スピーキング力の向上:流暢に発話できるようになるための橋渡し

 シャドーイングにより、リスニング練習とスピーキング練習が同時に可能であるという

ことは、川本(2003)や鳥飼・他(2003)に述べられているが、岩下(2010)は、リピー

ティングとシャドーイングの効果について次のように述べている。岩下によると、相手の

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言葉を即座に理解し、自分の言いたいことをすぐに流暢に発話するためには、聞こえたら

すぐに発話するという即時的な処理を伴う練習が必要である。そして、その「聞こえたら

すぐに発話する」方法にはリピーティングとシャドーイングがあるが、モデル音声を聞き

終えた後に再生するリピーティングよりも、モデル音声を聞きながら再生するシャドーイ

ングの方が即時的な処理が要求されるので、自分の言いたいことを流暢に話せるようにな

るためには、シャドーイング練習の方が効果的であるというのだ。

④語彙、表現の習得

 船山(1998)は、目だけでは覚えにくい語彙もシャドーイングによる音声刺激を受ける

ことによって、より記憶に残りやすくなることを示唆している。また唐澤(2010)は、学

習者にシャドーイング練習の感想を聞いたところ、「文章の音を覚えて、難しいことばを

覚えられる。」、「専門用語など言葉を増やして、どんなフレーズでも聞こえるようになる

と確信している。」という声が得られたと報告している。

⑤自主学習ができる

 荻原(2007)は、「モデル音声をよく聞いて、その高低に注意してシャドーイングをす

る」というように注意点だけ伝えておけば、教師が手鳥足取り発音指導しなくても、学習

者は自分でどんどんシャドーイングを行い自らアクセントを身につけていくことができる

と述べている。またシャドーイングをする音声さえあれば、いつでもどこでも好きな時に

手軽に練習できる。不審者に思われないように注意する必要があるかもしれないが、道を

歩いている時、街中や電車の中での人々の会話を小声でシャドーイングすれば、音声を持

ち歩かなくてもいいし、いつでも新しい生の教材に挑戦することができる。

 このように、シャドーイングには様々な利点や効果が期待できるが、事前に学習者にシャ

ドーイングの意義を伝えておくことも重要である。望月(2006)は、導入前に教師がシャ

ドーイングの理論的背景をコンテンツ学習としてパワーポイントで説明したことについ

て、8割の学習者が役立ったと回答したというアンケート結果を報告している。また、江

口(2007)もシャドーイング実験後に行ったアンケートで、シャドーイングの意義が感じ

られなかった学習者が過半数近くいたことから、シャドーイングと言語運用能力との関連

について事前に学習者に理解させておく必要があったこと、またそれが学習者の動機付け

につながるということを指摘している。シャドーイング導入前に上に述べたような利点を

簡潔に学習者に伝えておけば、学習者のモチベーションが上がり、シャドーイングへの取

り組みも変わり、より効果が期待できるのではないか。

2.2 シャドーイングに使用する材料と時間

 シャドーイングするものは学習者が興味のあるものを選択することが望ましいが、学習

者にあったレベルのものであることも重要である。門田・玉井(2004)は学習者のレベル

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より1段階または2段階低いものを素材として設定する方がよいと述べている(i―1、i―2;

i=インプット)。これはシャドーイングがより集中力が必要で、ストレスがかかりやすい

課題であるからである(門田,2007)。リスニングでは全て聞けなくても内容を理解する

ことは可能であるが、シャドーイングでは、聞いたことと全く同じことを自分で再生する

必要があるので、聞いて十分に理解できるものや十分に内容を理解したものの方が望まし

いと言える。鳥飼(2003)は、未知語率は5%以下で、スピーチ、ニュースなど内容に一

貫性があるもの、長さは中級で3~5分が理想的だと述べている。

 また、シャドーイング実施時間は1日10分程度を毎日行うことが望ましい(斉藤仁志・

他,2006)。集中力を要するので、できるまでやろうと一度に続けて何時間も行うより、

ストレスを感じない10―15分程度の時間を毎日少しずつできるまで続けるほうが効率がよ

いのだ。

2.3 シャドーイングの実施法

 シャドーイングの練習方法は、テキスト提示のタイミング、どの段階で意味確認を行う

か、フィードバックの仕方などにより、シンプルなものから、細かいステップに分けられ

たものまで、様々である。以下に先行研究で実際に行われた方法を記す。

 a 最初からテキストを提示する

 a―1(斉藤仁志・他,2006)

  ①テキストを見て意味の確認をする。

  ②初めはテキストを見て文字を追いながら、モデル音声をシャドーイングする。

  ③慣れてきたら、テキストを見ないでシャドーイングする。

 a―2(荻原,2007)

  ①モデル音声を聞きながら2回ぐらいテキストを小さな声で読む。

  ②テキストを見ないで、シャドーイングを行う。

  ③ テキストを見ながら音声ファイルを聞いて、聞き取れなかった語、言えなかった語

を調べ、テキストに印をつける。

  ④再びテキストを見ないで、シャドーイングをする。

  ⑤十分できるようになったら、シャドーイングを録音する。

  ⑥録音した音声を教師と一緒に聞いて指導を受ける。

  * 初め遅い速度の音声で①~④をして、できるようになったら速い速度の音声で④を

する。

 b.最初からテキストを提示するが、初めは聞くことに集中させる(唐澤,2010)

  ①テキストを目で追いながらシャドーイングする音声を数回聞く。

  ② テキストを見ないでプロソディー・シャドーイングをする。(リズムやイントネー

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ションなど音に集中してシャドーイングを行う。未知の語彙などがあっても聞いた

まま発音していく。)

  ③テキストを見ながら、語彙と内容確認を行う。

  ④ テキストを見ないでコンテンツ・シャドーイングを行い(内容に注意をしてシャドー

イングを行う)、録音する。

  ⑤録音した自分のシャドーイングをチェックする。

 c.最初はテキストを提示しない

 c―1(門田,2007;門田・玉井,2004;鳥飼,2003)

  ①リスニングをする。(テキストを見ずに音声を聞く。)

  ②マンブリングをする。(テキストを見ずにつぶやく(mumble)ように発音する。)

  ③パラレル・リーディングをする。(テキストを見て音声と同時に発音する。)

  ④意味内容を確認する。

  ⑤プロソディー・シャドーイングをする。

  ⑥コンテンツ・シャドーイングをする。

 c―2(熊井・他,2010)

  ①本文の語句を確認する。

  ②音声を2回聞き、T/Fで理解度を確認する。

  ③数回聞いた後、テキストを見ないでシャドーイングをし、録音する。

  ④テキストを見ながら録音音声を聞いて文字で確認する。

  ⑤ 教師が句や節、短い文などで区切りながら音読するのを、学習者は記憶しテキスト

から目を離して繰り返す(read and look up)。意味の確認も行う。

  ⑥パラレル・リーディングなどを用いて各自練習をする。

  ⑦テキストを見ないでシャドーイング音声を録音する。

  ⑧ 自分の録音音声を聞いて自己評価をし、他の学習者の録音音声も聞いてお互いに評

価し合う。

 c―3(岩下,2008)

  ①テキストなしで2回聞く。

  ②翻訳のみのスクリプトに目を通す。

  ③翻訳スクリプトを見ながら聞く。

  ④翻訳スクリプトを回収して、スクリプトなしでシャドーイングをする。

  ⑤シャドーイングを録音する。

  * 2~4日スクリプトを見ずにシャドーイングをした後再び5日目にスクリプトを見

ずにシャドーイングを録音する。

 上記は様々な研究目的で行われたシャドーイング手順の例なので、授業でシャドーイン

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グを行う場合、教師は初めからテキストを与えるのか、テキストを与える前に耳からだけ

の情報でプロソディー・シャドーイングをさせてみるのか、また、学習者にどのように

フィードバックするのかなど、授業の目的や学習者のレベルに合わせて練習手順を考える

必要がある。初めにテキストを与えて要旨を理解させるとともに、パラレル・リーディン

グで文字と音を大体結びつけさせてからシャドーイングを行う方が、テキストを与えず耳

からだけの情報でシャドーイングをさせる場合より時間もかからないし、学習者の負担も

軽いと思われる。しかし、使用する音声材料を最大限に活用しようと思えば、リスニング

活動から発展させてシャドーイングに持っていくこともできる。また、望月(2006)は、

単調な反復練習になりがちなシャドーイングの短所を補うために、コンテンツ理解を促す

ため、導入時にトピックについてネット検索やメンタルマッピング法によるスキーマづく

りをさせ、シャドーイング後のフォローアップとしてコンテンツについて1分スピーチを

録音させたところ、事後アンケートで7割の学習者が「役立った」と回答したことを報告

している。望月が実施したように、情報価値があり、学習者の興味や関心を引くものを

シャドーイングさせ、そのテーマについて短いスピーチをさせれば、シャドーイング活動

からコミュニケーション活動へ発展させることも可能である。

 また、岩下(2008)の方法のように、耳から入ってきた音声の再生に集中させるために、

原文のテキストを与えず翻訳のみ与える方法は、難しいぶん効果も期待できそうだが、自

分で文を構成することもままならない初級者よりも、いろいろな構文の知識が蓄えられて

いる上級者に向いているといえる。また、これは学習者の習熟度の問題だけではなく、全

く未知のものを、(内容が理解できているかは別として)どれだけ正確に(音を)聞けて

自分でそれを再生できるかという学習者個人の差の問題であり、この岩下の方法で力が発

揮できる者もいれば、挫折してしまう者もいると言えるかもしれない。岩下(2010)は、

シャドーイング時にテキストを呈示すると、テキストが口頭産出の手掛かりとなり、通常

のシャドーイングの場合より正確にモデル音声を産出できると述べている。岩下による

と、テキスト提示は、上手にシャドーイングができない学習者の口頭産出を助け、課題遂

行の負担を減らすという利点がある。しかしその一方、テキストは学習者を文字情報に頼

らせて、モデル音声を注意して聞けなくしてしまう危険をはらんでいる。テキスト呈示の

タイミング1つにしても様々なパターンがあり、その効果も異なるので、対象となる学習

者にあった方法を検討する必要がある。また、学習者自信にいろいろな方法を試させ、ス

トレスを感じない程度の難しさで自分に合った方法を見つけることが必要かもしれない。

2.4 シャドーイング遂行時のアドバイス

 斉藤仁志・他(2006)や門田修平・他(2007)は、以下のようなアドバイスをしている。

 ・ シャドーイングがうまくできない場合は、言いにくいところは声に出さないで頭の中

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でサイレント・シャドーイングをしたり、マンブリングしたりするとよい。遅れたら

次の文から行う。文が長くて最後まで復唱できない時は、文頭はモデル音を聞くだけ

にし、後ろから少しずつシャドーイングをする(高橋・他,2010)。

 ・ 教材が少し簡単だと感じる場合は、追いかける時間を少し(0.5秒から1秒以内)遅

らせると、スピーチの保持に負担がかかり難易度が上がる(ディレイド・シャドーイ

ング)。

 ・ 本文を暗唱してしまうと、集中して聞くことができなくなり、発音の改善が妨げられ

るので、単なる本文暗唱にならないように気をつける(高橋・他,2010)。モデル音

声を聞くことに集中して、モデルより先に言ったりしないように注意する。

 上記のようなアドバイスはシャドーイングに苦手意識を持っている学習者を励ました

り、シャドーイングの効果を最大限に得るために役立つので、シャドーイング導入時に触

れておくとよいと思われる。

2.5 フィードバックと動機づけ

 上記の実施手順を見てもわかるように、学習者が自分のシャドーイングを録音して、自

分の録音を聞くことにより自分の発音を振り返る時間までをシャドーイングの一連の手順

とすることが多い。江口(2007)は、モデル音声と同じように発話できていると思い込ん

でいる学生に、実際はそうではないというインプットとアウトプットのギャップを認識さ

せるためにも、シャドーイングを録音してモデル音声と比較させることが大切だと述べて

いる。熊井・他(2010)、高橋・他(2010)は、学習者が「自分の発音を聞き、毎回どこ

ができなかったかコメントすることで客観的に自分の弱点を把握し、発音を改善していく

ことができた」と考えていることを報告しており、さらに高橋・他は、学習者が自分で自

分の発音の正誤判断ができることが自律的な学習を促進していると述べている。

 また高橋・他は、シャドーイングを始めた頃は「うまくできないから好きじゃない」と

いう否定的だったコメントが後に「自分の発音を聞いてみたい」と変化したことから、

シャドーイングを繰り返す中で、学習者が自分の発音がモデルに近づいていったことを自

覚できたのではないかと分析している。唐澤(2010)も、学習者の声として「最初やった

時は大変だったけど、慣れてくると面白くなってきた。暇な時にやってみたい。」という

回答などから、シャドーイングを肯定的にとらえ、練習の中でその効果を自覚することが

学習動機につながると述べている。

 録音した自分の声を自己分析する他に、熊井・他(2010)は学習者同士が他の学習者の

録音を評価し合う相互評価の可能性について述べている。熊井・他は、オンラインによる

音声録音・再生機能を利用して、学習者が自分のシャドーイングを録音し、Moodle(学

習管理システム)を使ってサーバーにアップロードし、その音声をコース参加者が自由に

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聞いて相互評価をしたり、教員がコメントを書いたりできるようにした。熊井・他のシス

テムの優れているところは、毎回の授業時に録音した音声が1ページにまとめられ、録音

日時やコメント、相互評価点、教員からのコメント(本人のみ閲覧可能)が一覧でき、数

か月経った音声を比較できるという音声ポートフォリオを授業参加者一人一人がウェブ上

に持つことができることである。このシステムの利点として熊井・他は、学外からも自由

に教材にアクセスして練習できる便利さや、他の授業参加者とのやりとりを通じてクラス

外にもラーニングコミュニティーが形成されることで、個別に練習を行うよりも効果的な

学習環境を作り出すことができることを述べている。実際、熊井・他は受講者が「自分の

発音だけでなく、同じクラスの他の学生の音声も聞くことが、自分の音読に役に立ってい

ると感じている」というアンケート結果をまとめている。また、他の学習者の発音を聞く

ことには意欲的である一方、「他の学習者に自分の音声を評価してもらうことにはあまり

積極的ではない」という結果も報告している。自己評価だけでなく、時には他の人からも

フィードバックを受けることは重要だが、学習者の中には発音に敏感な者もいて、教師に

直されるのはよいが、同じ学習者に指摘されたくない、個別に指導されるのはよいがク

ラス全体で直されたくないなどと考えている者もいるので、フィードバックを与える場合

は、十分注意する必要がある。

2.6 評価

 シャドーイングを授業で取り上げる場合、問題となってくるのは評価をすべきか、また

どのように評価するかということであろう。同じ教材をシャドーイングさせても、あまり

練習しなくてもすぐできてしまう学習者もいれば、何回練習してもなかなかできない者も

いる。それは同じ教材でもある学習者にとっては自分のレベルよりも低く簡単で、またあ

る学習者にとっては自分のレベルよりも高く難しいからかもしれない。また、ある学習者

はほかの学習者よりも「聞ける」ので、音声産出にあまり苦労しないが、ある学習者はま

だ耳が鍛えられておらずあまり聞けないので、なかなか自分で音を再生することができな

いということもあるかもしれない。これらのことを踏まえても、特定の教材のシャドーイ

ングができるかどうかのテストをするよりも、学習者に自分の録音を聞かせて、「どの部

分が抜けているか、どこを言い間違えているか、リズムやイントネーションはモデルに近

いか、前回と比べて何ができるようになったか、できない部分があるならそれはなぜか」

などを自分で分析させ、それを今後の練習に生かせるように導くことの方が意味があると

言える。その方法の具体的例として、先に「2.3 シャドーイングの実施法」で紹介した、

「a―2 荻原(2007)」の手順③のように、「テキストを見ながら音声ファイルを聞いて、聞

き取れなかった語、言えなかった語を調べ、テキストに印をつけ、何度も練習すること」

や、高橋・他(2010)が行なったように毎回シャドーイングを行う際に、「今日の目標、

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初級授業にシャドーイングを取り入れる

してみて気づいたこと、できたこと」などの日誌をつけることは効果的だと思われる。で

きない箇所に印をつけて分析することで、その部分をより注意して聞くようになるであろ

うし、何ができて何ができないかが自分で分かっていれば自分の弱点をどのように克服し

ていったらよいかという目標設定ができ、自主学習を促進することもできる。先にも述べ

たように、学習者が練習を通じて自分の変化に気づくことが学習者のモチベーションを上

げ、シャドーイングの学習効果を最大限に発揮させることにつながるのだ。

3.初級日本語のクラスでのシャドーイング実践

 ここまでシャドーイングの効果と実践方法を述べてきたが、ここからは、先行研究と初

級日本語のクラスで行われた実践報告を比較して今後の課題を述べたい。上記の先行研究

は、英語のクラスで行われたもの、上級日本語学習者数名個人を対象に行われたものなど

対象も様々で、実践方法も少しずつ異なるが、初級日本語のクラスでの実践を振り返り、

先行研究から共通して言えることは今後このクラスにどのように取り入れていけるかを検

討したい。

3.1 実践期間

 実践期間は2011年1月から2011年5月までの約5ヵ月間であった。

3.2 学習者

 対象者は大学の留学生別科初級日本語のクラスに在籍する18名で、そのうち10名はそ

の前の学期(2010年9月から2010年12月まで)にシャドーイング経験がある。(10名の

継続生においては先学期からシャドーイングの指導を行なっている。)

3.3 シャドーイング材料

 シャドーイング材料として『初級日本語げんきⅡ(坂野・他,1999)』の別売りCDを

用いた。音声データを ICレコーダー(SONY ICR-S280RM)に移し、再生スピードを「遅い」

「標準」に変えられるようにし、ICレコーダーとスピーカーを繋いで再生した。

 材料文は、対象クラスが勉強している課の会話Ⅰ~Ⅱ(Ⅲ)の中から一つを選んだ。

会話Ⅰ~Ⅱ(Ⅲ)の選定は、対象クラスで実施されているModel conversation check(MC

チェック)の範囲と重なるように行った。MCチェックとは、その課の会話Ⅰ~Ⅱ(Ⅲ)(た

いていどれか1つ)をベースに、学習者に考えさせる部分を残して教師が作成した会話の

型を、学生はペアで完成させ、暗記してクラス全体の前で発表するという小テストで、各

課で実施されている。新しい課に入った日から一番近いLLの授業時間中にその課のMC

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チェックのベースとして選ばれた教科書の会話のシャドーイングを導入し、それから毎朝

授業の最初の5分を使い、1週間かけて同じ会話を、MCチェック実施日までに正しい発

音が身につくこと、ある程度会話が頭に残ることを目標にシャドーイングした。

3.4 シャドーイング練習

 シャドーイング法は「2.3 シャドーイングの実施法」のa―1(斉藤仁志・他,2006)とc―1(門

田,2007;門田・玉井,2004;鳥飼,2003)と大体同じであった。対象者が初級である

ということ、文法のクラスとは別にシャドーイングが導入され、学習者はシャドーイング

材料に初めて触れること、またシャドーイングをすることだけに集中させるために、学習

者には初めからテキストを与えることにした。(会話に出てくる文法の説明や内容理解は

文法のクラスで行われることになっている。)以下にその手順を示す。

①英訳つきの本文テキストを配布し、1文ずつ教師の音読をリピートさせる。この時、

英訳がついているので意味の確認をするように促す。未習文法があっても(文法は文

法の時間に練習するので)一切説明はせず、会話の内容が大体分かればいいとした。

(以前別のレベルのクラスでシャドーイングを行っていた時は、1文ずつ教師の後を

リピートさせるかわりに、英訳つきのテキストを黙読させ、意味の確認をさせていた

が、学習者によって読む速度がバラバラなので今回は時間短縮のため教師の後をリ

ピートさせる方法をとった。)配布テキストは「げんきオンライン」1)のリソースライ

ブラリにある「目で見る調音ガイド(ウィリアムズ)」を用いた。これは会話文の音

調(音の高低)を、文字の高低で表したもので、会話文のイントネーショが目で確認

できるようになっている(Appendix A参照のこと)。

②CDを聞いてサイレント・シャドーイング(目でテキストを追う)をする。

③テキストを見て文字を追いながら、モデル音声をシャドーイングする。(2回ぐらい)

④慣れてきたら、テキストを見ないでシャドーイングするよう促す。ここでは、音声に

注意を向けたプロソディー・シャドーイングを中心に行う。初めは再生スピードの「遅

い」で行い、学習者の様子を見てできているようであれば次は再生スピードを「標準」

にして行った。また、難しいようであれば、はっきり言えなくてもいいのでマンブリ

ングをするように伝えた。

⑤内容に注意して行うコンテンツ・シャドーイングをする。

 ④までをLLの授業でのシャドーイング導入日に行い、以降一週間かけて④を中心に行っ

た。導入日の次の日ぐらいであれば、③を一度した後に、④を初めは再生スピードの「遅

い」で行い、次は再生スピードの「標準」で行った。週の後半からは、初めの「遅い」を

やめ、「標準」を2回にし、⑤のコンテンツ・シャドーイングを意識させるようにした。

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初級授業にシャドーイングを取り入れる

3.5 今後の課題・示唆

 5ヵ月間シャドーイングを実践したが、今回の目的はMCチェックまでにMCチェック

の会話がうまくできるように、ベースとなる会話のシャドーイングを毎日することで自然

なイントネーションやアクセントを身に付けさせるというものであったので、シャドーイ

ングをする前とした後で学習者の発音の変化を比較したり、学習者が活動を通じて何を感

じたか、何を得たかなどを聞くアンケートは実施しなかった。MCチェック評価時に、ア

クセント・イントネーションについて学習者一人一人にフィードバックはしていたが、指

導者側も学習者側も「MCの会話をきちんと覚えているか」を重要視する傾向にあったの

で、学習者にシャドーイングを録音させそれを聞いて評価するという、純粋に発音だけに

焦点をあてた時間があってもよかった。また、シャドーイングを録音して聞くことでシャ

ドーイングに対する直接のフィードバックを得ることは、学習者にシャドーイングの有効

性を理解させることにも役立つと思われる。休憩時間などにシャドーイングが話題に出た

時に、シャドーイングについてどう思うか学習者に聞くと、教師の手前か「シャドーイン

グはいい練習だ」と答える者が多い。しかし、学期終了後の授業評価アンケートでは毎学

期1、2名シャドーイングについてマイナスのコメントをする学生がいる。シャドーイン

グについて聞いたアンケートではないにもかかわらずこのような声が学習者から出るとい

うことは、学習者の中にはシャドーイングの効果を認めず、教師にやらされていると感

じている者が他にもいるということが推測できる。しかし仮に学習者がシャドーイングに

対してマイナス評価を持っていたとしても、時たまMCチェックから数か月たった課の会

話をまだ覚えていて、休み時間に学習者同士ふざけ合いながら、モデル音声そっくりの流

暢なイントネーションでその会話を再現している光景を見ると、シャドーイング訓練の効

果が全くないとは言いきれない。根本的にシャドーイングが好きか嫌いかには個人差があ

るにしても、学習者が自分の声を録音し、それを聞いて分析することで自分の成長に気づ

き、シャドーイングの効果を発見できれば、モチベーションも上がり、最後になんらかの

達成感を得ることができると思われる。シャドーイングの時間を有意義にするためにも、

次回からは録音データを残していくことと、それを学習者自身が分析して記録を残してい

くことを取り入れていきたい。

 またモチベーションに関して言えば、先行研究にあったように、初めにシャドーイング

の目的や利点などについて学習者に納得させておく方が望ましい。今回の対象クラスは過

半数がシャドーイング経験者だったので、シャドーイングの説明は割愛したが、せめてど

んな効果があるかぐらいは学習者全員に理解させておく必要があった。

 シャドーイングの一連の活動の流れの中で録音を実施することが多いことにもかかわら

ず、今回録音を行わず、MCチェックによる評価だけで終わらせていたことの最大の理由

には、教室環境もあった。今回シャドーイングの導入を行ったLLの授業はLL教室で行わ

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国際教育センター紀要 第12号

れ、この教室では学習者1人に対して1台カセットテープ機器の使用が可能であったが、

カセットテープは操作が煩わしいということ、また機器が古くスムーズに録音が行えない

ことがあるという問題があった。またそれぞれの机に固定された備え付けの ICレコーダー

も1人に1台あるが、学生一人一人がSDカードを用意しなければ音声データを持ち出す

ことはできず、この機器もトラブルを起こすことが多かった。このような施設の不便さや

煩わしさから今回は録音を行わなかったが、来学期はWingnet(WING-NETUN・WING-

NETUNR;コンピュータを使った言語学習システム)が利用可能な新しい教室を使用する

ことができるので、来学期に期待したい。この教室では学習者はモデルを聞きながら自

分の音声を録音したり、モデルと自分の音声を同時に聞き比べたり、データで何回も繰り

返し聞きたい箇所にすぐ移動して聞いたり、音声ファイルを教師に提出したりするという

ことが一人一人に与えられたコンピューター上でスムーズにできる。再生速度も今まで教

師が行なっていた ICレコーダーの「遅い」「標準」だけでなく、個人で細かく設定するこ

とが可能であるので、自分のペースに合わせてだんだん速くしていくことも可能である。

また、シャドーイングの録音は教師がコントロールして一斉に短時間で行うことが可能だ

が、自分の録音を聴いて自己評価を行うという作業は個人作業になってしまうので、作業

が速い学習者と遅い学習者の進行速度の差をどのように埋めるかが問題となってくる。

Wingnetが導入された教室では、教師は作業の進行状況の違いから生まれる時間の差を無

駄にさせないために、予め追加の課題をネットワーク上のフォルダーに用意し、自己評価

が終わった学習者にそれを開かせ、新しい課題に取り組ませることができる。このよう

に、テープからコンピューターベースの機材に変わることにより随分いろいろな可能性が

広がると期待できる。

 教材に関して、今回はMCチェックのこともあり、普段の授業で使用している教科書の

会話をシャドーイングで使用したが、学生からニュースやドラマの会話、敬語の会話を

シャドーイングしてみたいという声もあった。先に述べたようにシャドーイング教材には

学習者のレベルより1つもしくは2つ低いものが好ましいので、初級レベルでは難しいか

もしれないが、Wingnet教室ではインターネットも使用可能なので、Youtubeやニュース

サイトなどのオンラインビデオを画像を見ながらシャドーイングすることも可能である。

 またインターネットにアクセスできることから、望月(2006)が行なったように、シャ

ドーイング導入時にトピックについてネットで検索させ、コンテンツを理解しやすくする

ためのスキーマづくりをすることも可能であるし、シャドーイング後のフォローアップ

として、そのコンテンツについて1分間スピーチをさせることもできるほか、コンピュー

ターからすぐワードを開き、そのトピックに関して作文を書かせたりすることもできる。

 熊井・他(2010)が使用したMoodoleのように学外からのアクセスができず、授業時間

中に活動を終わらせなければいけないという制約はあるが、Wingnetシステムに期待でき

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初級授業にシャドーイングを取り入れる

る部分は多い。施設面の充実からもシャドーイング活動の広がりや効果が期待できるの

で、来学期は今学期の反省を踏まえ、学習者の自主性を促す活動にしていきたい。

(注)

1) げんきオンライン Genki-online http://genki.japantimes.co.jp/

参考文献

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斉藤仁志・吉本惠子・深澤道子・小野田知子・酒井理恵子(2006)『シャドーイング―日本語を話そう・初~中級編』くろしお出版

坂野永理・大野裕・坂根庸子・品川恭子・渡嘉敷恭子(1999)『初級日本語げんき』The Japan

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付録 Appendix A「目で見る調音ガイド(ウィリアムズ)」

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Incorporation of Shadowing in the elementary Japanese class― learn ideas from previous studies―

Miyuki DOI

Abstract

  It is said “shadowing” is one of the most effective and pragmatic methods to improve

not only foreign language learners’ speaking ability but also listening ability. While there

are case studies which report how shadowing affects individual learners, there are a few

reports which tell how shadowing is incorporated in classroom activities. This paper

introduces various shadowing methods, and seeks ways how to apply shadowing in the

classroom, while looking back an attempted case study.

Keywords: shadowing, foreign language study, classroom, classroom activity