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Page 1: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。
Page 2: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件は急

速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、直面する

問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度化する社会的

ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。

このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興協会

では、財団法人日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムに関す

る調査研究等補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。

特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技術、

あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますので、当協

会に総合システム調査開発委員会(委員長 東京大学 名誉教授 藤正 巖氏)を設置し、同委員

会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施しております。

この「イノベーターとなりうる中小企業の地域の特性を活かした技術開発の推進に関する調

査研究報告書」は、上記事業の一環として、当協会が財団法人日本立地センターに委託して実

施した調査研究の成果であります。今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえ

で、本調査研究の成果が一つの礎石として役立てば幸いであります。

平成20年3月

財団法人機械システム振興協会

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はじめに

本調査研究報告書は、財団法人機械システム振興協会より、財団法人日本立地センターが平

成19年度事業として受託した「イノベーターとなりうる中小企業の地域の特性を生かした技

術開発の推進に関する調査研究」の成果をまとめたものです。

グローバル化が進展し、オープンイノベーション時代が到来した現在、わが国の経済が継続

的に発展するためには、既存産業の一層の振興はもとより、新たなイノベーション創出による

新技術・新製品開発等が必要です。特に、技術や知識がコモディティ化する現在、新製品開発

には上流過程からデザイン戦略を踏まえた取り組みが重要で、MOD(Management of Design)の

導入も必要となってきています。

新たなイノベーションの創出には、製造業、IT産業(技術系情報産業)、IT産業の先端

に位置するデザインクリエータ(ソフト産業)三者の間の連携・協力による技術開発、新製品

開発が有効と考えられ、製造業とデザインクリエータをIT産業や公的機関等が橋渡しするこ

とで知の融合が行われ、新しいイノベーションが創出され、安心、安全を含む社会的ニーズに

適応した新たな技術、新たな製品の開発が期待されます。

このようなイノベーションの推進は、地域経済の自律的な発展や地域産業の活性化にとって

も極めて重要だと考えられます。

そこで、本調査研究では、地域経済において重要な役割を果たしている中小企業に焦点をあ

て、中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータを対象として、企業間の知の融

合による新たなイノベーションを創出する上で必要な具体的要素等を解明することを目的と

し、中小製造企業とデザインクリエータを橋渡し(ブリッジ)するベンチャーIT企業や公的

機関の果たす役割等を明らかにするとともに、特定の地域を対象に調査研究を行い、これらの

具体的要素を踏まえ、地域の特性を活かした、これら三者の連携・協力の進め方(体制とその

運営、公的機関の関与、大学・研究機関との関係、他地域の企業との連携等)の現状を把握し、

地域産業振興の一助となる最適な三者の連携・協力方策を提案するものです。

ヒアリングに応じて下さった大学・公設試・公的機関・企業の皆様と、アンケートにご回答

下さった企業の皆様に心より感謝し、御礼申し上げます。

本調査研究が、中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータの連携・協力の促

進に寄与でき、地域産業振興の一助となれば幸いです。

平成19年3月

財団法人日本立地センター

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目 次

はじめに

1.調査研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2.調査研究の実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

3.調査研究成果の要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

3-1.調査研究の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

3-2.中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ(三者)による・・・・・・・ 15

新たなイノベーション創出上必要な具体的要素

3-3.中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役割・・48

3-4.中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ(三者)による・・・・・・ 69

新技術・新製品開発を行う際の公的機関・大学・研究機関・他地域企業等

との連携状況

3-5 調査研究の成果(まとめ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76

4.調査研究の今後の展望および展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83

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1.調査研究の目的

グローバル化が進展し、オープンイノベーション時代が到来した現在、我が国の経済が

継続的に発展するためには、既存産業の一層の振興はもとより、新たなイノベーション創

出による新技術・新製品開発等が必要である。特に、技術や知識がコモディティ化する現

在、新製品開発には上流過程からデザイン戦略を踏まえた取り組みが重要となってきてい

る。他が模倣できない新技術力の開発や、オリジナルな新製品開発が必須で、企業では MOT

はもとより、MOD(Management of Design)の導入も必要となってきている。

新たなイノベーションの創出には、製造業、IT産業(技術系情報産業)、IT産業の

先端に位置するデザインクリエータ(ソフト産業)三者の間の連携・協力による技術開発、

新製品開発が有効である。製造業とデザインクリエータをIT産業が橋渡しすることで知

の融合が行われ、新しいイノベーションが創出され、安心、安全を含む社会的ニーズに適

応した新たな技術、新たな製品の開発が期待される。大企業の融合事例として、アップル

社等が開発した iPod が有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

このようなイノベーションの推進は、地域経済の自律的な発展や地域産業の活性化にと

っても極めて重要である。

そこで、本調査研究では、地域経済において重要な役割を果たしている中小企業に焦点

をあて、中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータを対象として、企業間

の知の融合による新たなイノベーションを創出する上で必要な具体的要素等を解明するこ

とを目的とする。中小製造企業とデザインクリエータを橋渡し(ブリッジ)するベンチャ

ーIT企業の果たす役割等を明らかにするとともに、特定の地域を対象に調査研究を行い、

これらの具体的要素を踏まえ、地域の特性を活かした、これら三者の連携・協力の進め方

(体制とその運営、公的機関の関与、大学・研究機関との関係、他地域の企業との連携等)

の現状を把握する。それらの現状をもとに、地域産業振興の一助となる最適な三者の連携・

協力方策を提案する。

公的機関とは公設試験研究機関(以後「公設試」と略す)や公的なデザインセンター等

である。

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2.調査研究の実施体制

本調査研究は、財団法人機械システム振興協会(協会内に「総合システム調査開発委員

会」を設置)の委託を受けて、財団法人日本立地センター立地総合研究所が、有識者から

構成される「イノベーター中小企業技術開発推進検討委員会」を設置し、下記の体制で実

施した。また、アンケート調査結果集計・分析等一部の業務は、サッポロバレーのキーパー

ソンを有し、ベンチャーIT企業やデザインクリエータ等と強力なネットワークを構築し

ている北海道大学へ再委託した。

(委託)

(再委託)

財団法人日本立地センター

立地総合研究所

イノベーター中小企業技術開発推

進検討委員会

北海道大学

財団法人機械システム振興協会 総合システム調査開発委員会

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総合システム調査開発委員会委員名簿

(順不同・敬称略)

委員長 東京大学 藤 正 巖

名誉教授

委 員 埼玉大学 太 田 公 廣

地域共同研究センター

教授

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛

エレクトロニクス研究部門

副研究部門長

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文

産学官連携推進部門

産学官連携コーディネータ

委 員 東北大学

工学研究科 教授 中 島 一 郎

(未来科学技術共同研究センター長)

委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫

総合理工学研究科

教授

委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦

工学系研究科

准教授

委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸

新領域創成科学研究科

教授(副研究科長)

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イノベーター中小企業技術開発推進検討委員会

(順不同・敬称略)

委員長 東京大学 渡 部 俊 也

国際・産学共同研究センター センター長

先端科学技術研究センター教授

札幌圏

委 員 北海道大学 山 本 強

情報基盤センター センター長

大学院情報科学研究科教授

委 員 北海道立工業試験場 及 川 雅 稔

デザイン開発科長

委 員 株式会社データクラフト 高 橋 昭 憲

代表取締役

中小企業系

委 員 東北大学大学院 堀切川 一 男

工学研究科機械システムデザイン工学専攻教授

首都圏

委 員 神奈川県産業技術センター 唐 澤 志 郎

副所長

委 員 株式会社クリート 山 下 健 介

代表取締役

委 員 テツタロウデザイン(プロダクトデザイン事務所) 中 林 鉄太郎

代表

大阪圏

委 員 クリエイション・コア東大阪 成 瀬 俊 彦

チーフコーディネーター

委 員 有限会社インターデザイン研究所 上 田 幸 和

代表取締役

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3.調査研究成果の要約

3-1 調査研究の方法

3-1-1 調査研究全体の企画

(1)調査研究の流れ

調査対象地域の検討と設定(札幌圏、首都圏、大阪圏)

イノベーター中小企業技術開発推進検討委員会の設置、専門家の検討と抽出

第一回イノベーター中小企業技術開発推進検討委員会の開催

第三回イノベーター中小企業技術開発推進検討委員会の開催

報告書の取りまとめ

アンケート調査の実施、継続したヒアリング調査の実施

地域の特性を活かした中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三

者の連携・協力の進め方等の検討

専門家から適時適切なアドバイスを受ける(継続して実施)

アンケート調査票設計とヒアリング調査の実施(ヒアリング調査は継続して実施)

○三者による新たなイノベーション創出等の現状把握と具体的要素の解明

○中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役割

の現状把握と、果たす役割の解明

○三者の新技術・新製品開発時の公的機関・大学・研究機関等との連携状況把握

第二回イノベーター中小企業技術開発推進検討委員会の開催

調査研究全体の企画

プレヒアリング実施

アンケート調査結果集計分析、ヒアリング調査結果整理

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(2)デザインの概念

1)製造業へのデザイン導入

デザインの概念や定義は様々で、曖昧であるが、ものにデザインをほどこすと、かたち・

外観造形・色などがよくなると思われがちで、ものを設計する行為をデザインと捉えがち

である。

グローバル化とコモディティ化が進んでいる現在、中小製造企業では下請けから脱し

て、オリジナル製品を開発したいという企業が見受けられる。それらの中小製造企業は、

オリジナル製品開発にはデザインが必要との考えがある。しかし、単にデザインを導入し

て外観や色等さえ改善すれば製品が売れるようになるとの先入観を持っているように感

じられる。

1951 年初めてのアメリカ視察から帰国した松下幸之助氏が、羽田空港で「これからはデ

ザインや」と興奮気味に話したことは有名である。松下幸之助氏はアメリカのデパートで、

機能や大きさのほぼ同程度の真空管ラジオがキャビネットのデザインの違いにより価格

が 10 ドルも違うことに驚き、松下の全製品にデザイナーによるデザイン導入を望み、日

本で唯一の工業デザインの科があった千葉大学工業科意匠学科の当時講師であった真野

善一氏を引き抜き、「宣伝部意匠課」を設立した。1953 年中央研究所が設立し、意匠課を

研究所の所管とし、デザインを販売の一手段ではなく、「ものが使われる場所や使われ方

を含めた設計思想」であることを明確化した。松下幸之助がデザインを経営資源と捉え、

真野氏の商品デザイン思想等が松下電器産業におけるデザインマネジメントの具現化へ

と醸成していった。

松下電器産業はもとより、SONY や日産等世界的企業へと発展した企業が戦後次々とデザ

インマネジメントを活発に導入し、大企業ではインハウスデザイナーを多数雇用するか、

グループ会社としてデザイン会社を設置するか等しながら時代の急速な変化やトレンド

や顧客のニーズ等に対応している。

しかし、中小製造企業ではデザインの重要性を認識しながらも、経営者がデザインを理

解していないとか、デザインクリエータを全く知らず、いくらで何をしてくれるのかわか

らないといった障壁があり、コラボレートして新製品・新商品開発をするに至っていない

企業が多く、障壁を取り除くなど課題解決が急務である。

2)経済産業省におけるデザイン政策

1957 年通商産業省の「グッドデザイン商品選定制度(G マーク制度)」がスタートし、

優れたデザインの商品を日本国の名をもって選出することで、産業へのデザイン導入を促

進した。1957 年度から 2006 年度までの 50 年間で、約 32,000 点がグッドデザインとして

選定された。1998 年度から財団法人日本産業デザイン振興会の事業として実施されてい

る。

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1988 年通商産業省貿易局「1990 年代のデザイン政策」では、デザインが係わる領域を

「物に係わるもの」「視覚に訴えるもの」「環境を扱うもの」と示した。

10 年ぶりのデザイン政策として、我が国の産業競争力強化のために必要とされ

るデザインの創造と活用に関する課題と対応について 2003 年 2 月から検討

を行った「戦略的デザイン活用研究会」が、同年 6 月「デザインはブランド

確立への近道-デザイン政策ルネッサンス【競争力強化に向けた40の提

言】」として取りまとめ、提言している。

http://www.meti.go.jp/policy/human-design/kennkyuukaihoukoku%20.htm

2007 年 5 月経済産業省製造産業局デザイン・人間生活システム政策室では「国民の暮ら

しぶりの向上と経済の活性化のため、日本人の感性を活用したものづくり・サービス活動

を推進するにあたって取り組むべき事項を検討した「感性価値創造イニシアティブ」を公

表した。http://www.meti.go.jp/press/20070522001/20070522001.html

2007 年 8 月には、経済産業省同室が『デザイン政策ハンドブック 2007』を発行し、「デ

ザイン」は“付加価値”ではなく、ものづくりを行う上で“必要不可欠なもの”という認

識に立っている。

http://www.meti.go.jp/policy/human-design/downloadfiles/handbook2007/no1.pdf

3)世界の潮流はデザインイノベーションへ

20 世紀、松下電器産業に代表されるように我が国の産業界では、大企業を中心にデザイ

ンによるイノベーションが次々と創出された。

21 世紀に入り、グローバル化がより進展し、オープンイノベーション時代が到来し、技

術や知識のコモディティ化が進む中で、企業は MOD を導入し、デザインを経営に用いて、

世界のトレンドとしてイノベーションの主導がデザインへと変化しつつある。IDEO の共同

創設者であるデイビッド・ケリー(David Kelly)は、「知識経済」の時代に代わって「ク

リエイティブ経済」の時代が到来するとして、スタンフォード大学のビジネススクール

(B-school)に対抗する、経営者志望の学生のための“デザインスクール(D-School)”の創

立に参画し、デザイン思考やデザイン方法論の教育に乗り出している。2006 年 1 月にはダ

ボス会議で経済活動における創造性が話題になったことからも、世界の潮流はデザインイ

ノベーションへと変革している。

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■2006.1 ダボス会議経済活動における創造性が話題に

■IDEO ティム・ブラウン社長「21世紀にはデザイン戦略がイノベーションを先導する」

■スタンフォード大学デザインスクール創設IDEO創業者のひとりデイビットケリー、AIのウイノグラードらが参画

■2004 ノーマン「エモーショナルデザイン」

■2001 スロスビー「文化経済学」

■2000 ランドリー「創造的都市」

イノベーションの主導は

デザインへ

世界的トレンド

■デザイン戦略デザイン思考を企業経営に用いる方法/サスティナブルデザイン・ユニバーサルデザイン・デザインマネジメント

■Web2.0 コミュニケーション・メディアの革新

■デザインテクノロジー・感性価値

■創造都市札幌■サッポロブランド■コンテンツ

産学官連携

人材教育 研究 社会貢献

■札幌市立大学「人間重視」の看護とデザイン

テクノロジー

世界の潮流はデザインイノベーション

デザインの革新と進化系・美しい国・感性価値創造イヤー(経産省)

デザイン戦略との融合による地域産業の価値創出・札幌市ITとデザインの融合

国/施策

地域/施策

ビジネスEXPO

出典:大井康氏作成(株式会社ユーザデザインラボ取締役)

4)本調査におけるデザインの概念と用語の定義

デザインはいろいろな変遷を経て、その概念は様々であるが、本調査研究における「デ

ザインの概念は、あるコンセプトや考えを具現化するための造形行為、構想行為、設計行

為、計画行為とそれらのディレクションで、企業とデザイナーの活動による。」と捉える。

すなわち、デザインには、ビジネスのデザイン、戦略のデザイン、組織のデザイン、制度

のデザイン、プロセスのデザイン、視覚的なデザイン、空間的なデザイン、機能的なデザ

イン等を含んでいる。

また、本調査研究においてデザインクリエータとは、上記デザイン活動を行うデザイナ

ー等とする。ただし、中小製造企業やベンチャーIT企業と大企業のインハウスデザイナ

ーが、新製品・新商品開発をすることはまれである。そこで、本調査研究におけるデザイ

ンクリエータは大企業およびグループ企業のインハウスデザイナーではなく、独立系でデ

ザイン事務所を立ち上げているようなデザインクリエータを対象とすることとした。

(3)新たなイノベーション創出の捉え方

イノベーションにはプロダクトイノベーション、プロセスイノベーション、サービスイ

ノベーション等が様々存在するが、本調査研究における新たなイノベーション創出はデザ

インを導入した「新製品・新商品開発」と捉えることとする。

製品が売れて商品になるが、調査対象案件が実際に売れて商品になっているかどうかの

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洞察が難しいことから、本調査研究では「新製品・新商品開発」と併記して使用すること

とする。

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3-1-2 調査対象とする地域の検討と設定

産業集積に差異があり、デザイン支援面でのちがいがある等の理由から、

・札幌圏(札幌および周辺)

・首都圏(東京、神奈川他)

・大阪圏(大阪、東大阪)

の3地域を本調査における調査対象と設定する。3地域の各々の特色は次のとおりであ

る。

(1)IT産業が集積している札幌圏

札幌は工業集積が低く、中小製造企業の層は薄いが、ベンチャーIT企業は 1970 年代

から北海道大学を核として集積し、強力なネットワークが構築され、サッポロバレーとし

てブランド化し、全国的に有名になった。さらに、2007 年 3 月まで札幌地域知的クラスタ

ー創成事業の実施により、ITものづくり工房をめざし、IT業界へものづくりとデザイ

ン系が参画したことで、強力なネットワークが拡大された。拡大しても、顔の見えるネッ

トワークであることは札幌の強みである。ベンチャーIT企業が、HP 作成や業務系システ

ム開発の受託等で、中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ役を担っていることが

想定される。

北海道は一次産業が活発なため、それら食品の商品開発、製造加工は活発である。観光

が盛んなことも関連するが、印刷業も活発である。

札幌市では、札幌市デジタル創造プラザインタークロス・クリエイティブ・センター

(ICC)を開設し、コンテンツ系クリエータのインキュベーションやコラボレーションを進

めている。

2007 年デザイン学部を持つ札幌市立大学を開学し、ものづくりとデザインの融合を展開

している。

北海道立工業試験場デザイン開発科では、中小製造企業の戦略的デザイン活用を支援し

ている。

(2)すべてが集積している首都圏(東京、神奈川)

首都圏(東京、神奈川)は次頁の表のように工業が活発である。さらに、第 3 次産業も

集積し、他の産業も全てポテンシャルが高い。中小製造企業も集積し、ベンチャーIT企

業もデザインクリエータも多数集積し、デザインを新製品・新商品開発に導入する市場は

すでに形成されている。三者ともにプレイヤーが多く、成立するビジネスの数も多く、ポ

テンシャルが高いだけに、顔の見えるネットワークは構築されにくい。中小製造企業は大

田区をはじめ、神奈川の京浜工業地帯(臨海部も内陸部も含む)等にも数多く立地してい

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る。

本調査研究で対象としない大企業のインハウスデザイナーは当然多数存在するが、イン

ハウスデザイナーからのスピンアウトした独立系のデザインクリエータが、クライアント

が多く立地する港区(青山や六本木)や品川区(天王洲アイル等)等で事務所を構え、多

岐にわたり活躍している。

平成 15 年従業者 4 人以上の製造業の事業所に関する都道府県・市町村別全国順位

製造業事業所数

全国順位

製造業従業者数

全国順位

製造品出荷額等全国順位

北海道 9 17 18

東京都 3 6 7

神奈川県 7 4 2

大阪府 1 2 4

札幌市 20 25 101

横浜市 4 3 3

川崎市 12 8 4

大阪市 1 1 2

東大阪市 3 9 39

出典:2006 我が国の工業(経済産業省)

(3)中小製造企業とデザインクリエータが集積している大阪圏(大阪、東大阪)

大阪圏は上表のように工業が活発で、大阪、東大阪は従来から中小製造企業が集積し、

企業間のネットワークが強い。

戦後の復興期を経て、「量から質へ」人々の豊かさへの価値観が変化を遂げようとして

いた 1960 年に、デザインの時代の到来を予見した大阪府・大阪市・大阪商工会議所によっ

て、我が国初のデザインセンターとして財団法人大阪デザインセンターが設立され、以後、

中小製造企業とデザインクリエータのマッチングやデザイン派遣指導等、多岐に渡る活動

を展開している。中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ役を担っている。大阪府

産業デザインセンターもブリッジ役を担っている。

デザインクリエータも多く集積しており、コンテンツ系デザインクリエータは南森町等

に集積し、従来より印刷や広告業界とのコラボレーションが行われている。近年では、Mebic

扇町インキュベーションセンターでクリエータと印刷業界や広告業界等とのマッチング機

会が設けられている。

東大阪では中小製造企業間の水平連携が強く、公的機関への依頼よりも、企業間同士で

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の課題解決の傾向が見受けられるが、クリエイション・コア東大阪が開設してからは、コ

ラボレーションの場として各種ブリッジ機能が実施されている。

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3-1-3 調査研究の方法

(1)調査研究の方法

①調査研究の視点

本調査研究では、想定される次の 4 つの視点に着眼して調査研究を実施した。

○地域における工業集積や工業の活発さのちがいによる、中小製造企業、ベンチャーIT

企業、デザインクリエータの新製品・新商品開発でのデザイン導入プロセスの差異

○中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータの商習慣やビジネススタイル

のちがいによる、新製品・新商品開発の差異

○中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータの知財への考え方のちがいに

よる、新製品・新商品開発の差異

○地域における工業集積や工業の活発さのちがいによる、新製品・新商品開発へのデザイ

ン導入のブリッジ機能の差異

②調査研究の方法

3 地域(札幌圏、首都圏、大阪圏)の中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインク

リエータおよび公的機関・大学・研究機関・他地域企業等を対象に、アンケート調査とヒ

アリング調査を実施して新製品・新商品開発における現状と課題を分析し、地域の特性に

着眼しつつ、次の 3 点について解明し、必要な方策を提案する。

○中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータによる新製品・新商品開発に

必要な具体的要素

○中小製造企業とデザインクリエータの橋渡し(ブリッジ)をするベンチャーIT企業等

のブリッジ役とブリッジ機能

○三者と公的機関・大学・研究機関・他地域企業等との連携状況

(2)イノベーター中小企業技術開発推進検討委員会の設置と開催

調査対象 3 地域、中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ等の有識者

から構成されるイノベーター中小企業技術開発推進検討委員会を設置し、委員会を 3 回開

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催し、調査研究の方向性、デザインマネジメントについて、アンケート調査について、報

告書のとりまとめの方向性等の検討を行った。

(3)専門家によるアドバイス

委員会とは別に 3 地域(札幌圏、首都圏、大阪圏)で専門家から、プロジェクトチーム

が指導やアドバイス等を適時適切に受けた。

①札幌圏

原田 昭氏(札幌市立大学学長)

城間祥之氏(札幌市立大学デザイン学部教授)

大井 康氏(株式会社ユーザデザインラボ取締役、札幌市立大学地域連携研究センター

リエゾン担当コーディネーター)

寺島賢幸氏(有限会社寺島デザイン制作室)

②首都圏

山下健介氏(株式会社クリート代表取締役)

中林鉄太郎氏(テツタロウデザイン(プロダクトデザイン事務所)代表、前日本インダ

ストリアルデザイナー協会理事、日本大学芸術学部デザイン学科講師)

名児耶秀美氏(アッシュコンセプト代表取締役、デザインディレクター)

桐山登士樹氏(株式会社 TRUNK 代表取締役、デザインディレクター)

秋元康男氏(秋元商事株式会社 R&D コンサルタント事業部常務取締役、元株式会社日

本カラーデザイン研究所営業企画部長)

③大阪圏

上田幸和氏(有限会社インターデザイン研究所代表取締役、日本インダストリアルデザ

イナー協会関西ブロック長)

大倉清教氏(有限会社ケプラデザインスタジオ代表取締役社長、K-DESPA 主催)

嵯峨 昇氏(大阪府産業デザインセンター主任研究員)

釜田 聡氏(大阪産業創造館ものづくり・支援プロジェクトシニアプランナー、前財団

法人大阪デザインセンターコーディネータ)

堂野智史氏(扇町インキュベーションプラザ(Mebic)所長兼インキュベーションマネジ

ャー)

Page 19: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

15

3-2 中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ(三者)による新たな

イノベーション創出上必要な具体的要素

3-2-1 調査結果

(1)アンケート調査結果

1)アンケート回収率

アンケート調査は中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ別、3地域

別に 3200 先へ発送した。

アンケートの有効な回答は 181 件あり、有効な回収率は全体が 5.7%、中小製造企業が

4.9%、ベンチャーIT企業が 3.8%、デザインクリエータが 9.0%であった。

地域別の回収率は、札幌圏が 5.7%、首都圏が 6.5%、大阪圏が 4.4%であった。

首都圏のデザインクリエータの回収率が 11.3%と最多で、ついで札幌圏のデザインクリ

エータが 7.8%、ついで札幌圏のベンチャーIT企業が 6.8%であった。

アンケート回収数と回収率内訳

中小製造企業 ベンチャーIT企業 デザインクリエータ 計発送数 532 207 204 943回収数 24 14 16 54

回収率% 4.5 6.8 7.8 5.7発送数 699 168 326 1193回収数 37 4 37 78

回収率% 5.3 2.4 11.3 6.5発送数 679 178 207 1064回収数 31 3 13 47

回収率% 4.6 1.7 6.3 4.4不明 回収数 2 0 0 2

発送数 1912 553 737 3200回収数 94 21 66 181

回収率% 4.9 3.8 9.0 5.7計

札幌圏

首都圏

大阪圏

2)中小製造企業・ベンチャーIT企業

①回答企業の特徴

○資本金・従業者数

アンケート調査の対象が中小製造企業のため、資本金は1千万円以下が最多であった。

従業者数は、中小製造企業で 16~31 人が最多で、中心値は 30 人以下であった。

○業種

中小製造企業では金属製品製造業が最多で、ベンチャーIT企業は受託開発ソフトウェ

ア業、パッケージソフトウェア業の順であるが、分散が見受けられる。

Page 20: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

16

②デザインの重要性

○製品開発のどの段階でデザインやデザインクリエータの活用が重要か(地域別)

デザインが重要と認識されているのは、地域の差がなく、製品開発の早期(上流)の企

画・アイディア・マーケティング段階である。

設問 2-1 デザイナーの活用が重要であると考えられる製品開発段階(製造業・IT) 1位

16

6

5

3

5

2

15

4

7

2

4

3

14

4

7

3

2

2

0 5 10 15 20

企画・アイディア・マーケティング

研究開発

設計

製造

営業

広報

回答数

大阪圏

札幌圏

首都圏

○製品開発のどの段階でデザインやデザインクリエータの活用が重要か(中小製造企業、

ベンチャーIT企業別)

両業種とも企画、アイディア、マーケティングが最重要と考えているが、中小製造企業

では研究開発の割合が、ベンチャーIT企業では広報の割合が多いのが特徴的である。

設問2-1-1 デザイン・デザイナーが重要であると考える製品開発段階1位(製造業)

企画・アイディア・マーケティング, 40%

設計, 15%

研究開発, 14%

製造, 9%

営業, 10%

広報, 2%

無回答, 10% 企画・アイディア・マーケティング設計

研究開発

製造

営業

広報

設問2-1-1 デザイン・デザイナーが重要であると考える製品開発段階1位(IT)

企画・アイディア・マーケティング, 37%

設計, 24%

研究開発, 5%

製造, 0%

営業, 10%

広報, 24%

無回答, 0% 企画・アイディア・マーケティング設計

研究開発

製造

営業

広報

Page 21: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

17

○製品開発の各段階でどのようなデザイン分野が必要か(地域別)

開発初期段階での重要性認識で地域差が見られる。企画段階で見れば、首都圏ではブラ

ンドデザインの重要性が高く認識されているが札幌圏、大阪圏ではコンセプトデザインの

重要性が高い。

設問 2-2(1) 企画段階(製造業・IT)

12

4

1

4

3

1

8

0

21

4

5

4

5

0

4

0

16

4

3

1

2

0

3

0

0 5 10 15 20 25

コンセプトデザイン

形状デザイン

Webデザイン

パッケージデザイン

グラフィックデザイン

空間デザイン

ブランドデザイン

その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

設問2-2(2) 研究開発段階(製造業・IT)

11

13

1

3

1

1

2

0

7

8

4

3

0

1

4

0

10

8

0

0

0

0

2

0

0 5 10 15

コンセプトデザイン

形状デザイン

Webデザイン

パッケージデザイン

グラフィックデザイン

空間デザイン

ブランドデザイン

その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

設問 2-2(6) 広報段階(製造業・IT)[首都圏]

3

0

4

0

10

5

3

0

2

1

5

2

15

3

5

0

4

1

9

1

7

5

4

0

0 5 10 15 20

コンセプトデザイン

形状デザイン

Webデザイン

パッケージデザイン

グラフィックデザイン

空間デザイン

ブランドデザイン

その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

設問 2-2(5)営業段階(製造業・IT)

3

2

5

2

16

3

4

0

3

3

7

3

11

3

8

0

3

0

5

4

8

6

10

0

0 5 10 15 20

コンセプトデザイン

形状デザイン

Webデザイン

パッケージデザイン

グラフィックデザイン

空間デザイン

ブランドデザイン

その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

設問2-2(3) 設計段階(製造業・IT)

3

14

1

3

0

0

2

0

7

12

8

3

0

1

2

0

3

13

1

4

0

0

1

0

0 5 10 15

コンセプトデザイン

形状デザイン

Webデザイン

パッケージデザイン

グラフィックデザイン

空間デザイン

ブランドデザイン

その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

設問 2-2(4) 製造段階(製造業・IT)[首都圏]

3

5

2

3

0

0

0

1

5

11

2

4

2

0

2

1

3

7

0

7

1

0

2

0

0 2 4 6 8 10 12

コンセプトデザイン

形状デザイン

Webデザイン

パッケージデザイン

グラフィックデザイン

空間デザイン

ブランドデザイン

その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

Page 22: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

18

③自社製品(受注生産や下請けでないオリジナルに開発した製品)の開発

○自社開発割合

中小製造企業、ベンチャーIT企業では自社製品比率が 25%以下の企業が 48%と半数近

く、受託生産型が多数を占める。

○自社製品開発へのデザイン導入

自社製品開発では半数近くの企業が、デザイン導入を実施している。

○自社製品開発へのデザイン導入効果

デザイン導入の効果があったと評価している企業が 90%以上を占めており、デザイン導

入の満足感は高い。

設問3-1 自社開発割合(製造業・IT)[全地域]

自社製品比率0-24%, 55, 48%

自社製品比率25-49%, 8, 7%

自社製品比率50-74%, 14,

12%

自社製品比率75-100%, 38,

33%

自社製品比率 0-24%

自社製品比率 25-49%

自社製品比率 50-74%

自社製品比率75-100%

設問3-1(5) 自社製品開発にデザインを導入したか(製造業・IT)[全地域]

デザイン導入あり, 55, 47%

デザイン導入なし, 26, 23%

無回答, 34,30%

デザイン導入あり

デザイン導入なし

無回答

設問 3-1-1(6) デザインの効果の有無(製造業・IT)[全地域]

効果有り, 48,91%

効果無し, 5, 9%

効果有り

効果無し

Page 23: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

19

○自社製品開発の形態

自社製品開発の形態は自社単独が 45 社で最も多く、第二位が自社+既知の取引先、親企

業、グループ企業という関係深いグループ内の連携、第三位が自社+自社が見つけた外部

デザイナーである。

設問 3-2 自社 もしくは 自社+既知の取引先等又は外部支援機関による製品開発(製造業・IT)[全地域]

45

31

6

5

1

0

1

20

3

1

0

4

0

0

0

0

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

自社単独

取引先・親企業・グループ企業

大学等高等教育機関や旧国立研究所

公設試

産業支援機関

金融・VC(ベンチャーキャピタル)

業界団体

自社で見つけた系列関係のない他社・外部デザイ ナー

取引先・親企業の紹介による系列関係のない他社・外部デザイ ナー

大学等や旧国立研究所の紹介による系列関係のない他社・外部デザイ ナー

公設試の紹介による系列関係のない他社・外部デザイ ナー

産業支援機関の紹介による系列関係のない他社・外部デザイ ナー

地方公共団体の紹介による系列関係のない他社・外部デザイ ナー

金融・VC(ベンチャーキャピタル)の紹介による系列関係のない他社・外部デザイ ナー

業界団体の紹介による系列関係のない他社・外部デザイ ナー

その他

回答数

Page 24: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

20

○自社製品開発で何を重視するか(地域別)

全地域で新規性を重要と考えている。首都圏では市場性が他地域よりも重要視されてい

る。それに対して札幌圏、大阪圏では自社の強みをいかせることを重要視している。

重視した点1位(製造業・IT)[首都圏]

新規性, 12

収益性, 0

市場性, 10

自社の強みを活かす, 2

デザイン性, 1

他製品との差別化, 1

自社ブランド, 1

機能性, 5

安全性, 2

環境にやさしい, 0

生産・製造しやすさ, 0

その他, 1

新規性

収益性

市場性

自社の強みを活かす

デザイン性

他製品との差別化

自社ブランド

機能性

安全性

環境にやさしい

生産・製造しやすさ

その他

設問3-3 重視した点第一位(製造業・IT)[札幌圏]

新規性

収益性

市場性

自社の強みを活かせること

デザイン性

他製品との差別化

自社ブランドらしさ・ブランドの強化・新ブランドの構

機能性

安全性

環境に優しい製品であること

生産・製造しやすさ

その他

新規性

収益性

市場性

自社の強みを活かせること

デザイン性

他製品との差別化

自社ブランドらしさ・ブランドの強化・新ブランドの構築機能性

安全性

環境に優しい製品であること生産・製造しやすさ

その他

設問 3-3 重視した点 第1位(製造業・IT)[大阪圏]

新規性, 5, 19%

収益性, 1, 4%

市場性, 2, 7%

自社の強みを活かせること, 5,

19%

デザイン性, 2, 7%

他製品との差別化, 1, 4%

ブランドらしさ・ブランドの

・新ブランドの構築, 6,

22%

機能性, 2, 7%

安全性, 2, 7%

環境に優しい製品であること,

0, 0%

生産・製造しやすさ, 1, 4%

その他, 0, 0%

新規性

収益性

市場性

自社の強みを活かせること

デザイン性

他製品との差別化

自社ブランドらしさ・ブランドの強化・新ブランドの構築機能性

安全性

環境に優しい製品であること

生産・製造しやすさ

その他

Page 25: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

21

○自社開発の担い手

自社製品開発の担い手はほとんどが自社単独であり、中小製造企業においても自社完結

型、技術集約型の企業形態があることがわかる。

設問3-4 自社開発の担い手 ①企画・アイディアマーケティング段階(製造業・IT)[全地域]

1.自社87%

7.公設試1%

5.大学等高等教育機関1%

2.系列関係のない他社3%

8.産業支援機関3%

9.地方公共団体1%

11.業界団体1% 12.その他

1%

6.旧国立研究所1%

4.親企業・グループ企業1%

1.自社

2.系列関係のない他社

3.外部デザイナー

4.親企業・グループ企業

5.大学等高等教育機関

6.旧国立研究所

7.公設試

8.産業支援機関

9.地方公共団体

10.金融・VC

11.業界団体

12.その他

設問3-4 自社開発の担い手 ⑤営業段階(製造業・IT)[全地域]

3.外部デザイナー1%

1.自社90%

2.系列関係のない他社3%

4.親企業・グループ企業5% 12.その他

1%

1.自社

2.系列関係のない他社

3.外部デザイナー

4.親企業・グループ企業

5.大学等高等教育機関

6.旧国立研究所

7.公設試

8.産業支援機関

9.地方公共団体

10.金融・VC

11.業界団体

12.その他

設問3-4 自社開発の担い手 ②研究開発段階(製造業・IT)[全地域]

8.産業支援機関1%

7.公設試5%

11.業界団体1%

4.親企業・グループ企業1%

2.系列関係のない他社5%

5.大学等高等教育機関3%

1.自社84%

9.地方公共団体

10.金融・VC

12.その他1.自社

2.系列関係のない他社

3.外部デザイナー

4.親企業・グループ企業

5.大学等高等教育機関

6.旧国立研究所

7.公設試

8.産業支援機関

9.地方公共団体

10.金融・VC

11.業界団体

12.その他

設問3-4 自社開発の担い手 ⑥広報段階(製造業・IT)[全地域]

1.自社87%

3.外部デザイナー4%

8.産業支援機関4%

2.系列関係のない他社1%

4.親企業・グループ企業4%

1.自社

2.系列関係のない他社

3.外部デザイナー

4.親企業・グループ企業

5.大学等高等教育機関

6.旧国立研究所

7.公設試

8.産業支援機関

9.地方公共団体

10.金融・VC

11.業界団体

12.その他

設問3-4 自社開発の担い手 ③設計段階

7.公設試4%

5.大学等高等教育機関1%

4.親企業・グループ企業1%

3.外部デザイナー9%

2.系列関係のない他社7%

1.自社78%

12.その他

11.業界団体

9.地方公共団体

8.産業支援機関

10.金融・VC

6.旧国立研究所1.自社

2.系列関係のない他社

3.外部デザイナー

4.親企業・グループ企業

5.大学等高等教育機関

6.旧国立研究所

7.公設試

8.産業支援機関

9.地方公共団体

10.金融・VC

11.業界団体

12.その他

設問3-4 自社開発の担い手 ④製造段階

4.親企業・グループ企業4%

3.外部デザイナー2%

2.系列関係のない他社

16%

1.自社78%

6.旧国立研究所

7.公設試

8.産業支援機関

9.地方公共団体

10.金融・VC

12.その他

1.自社

2.系列関係のない他社

3.外部デザイナー

4.親企業・グループ企業

5.大学等高等教育機関

6.旧国立研究所

7.公設試

8.産業支援機関

9.地方公共団体

10.金融・VC

11.業界団体

12.その他

Page 26: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

22

○自社製品開発の際の課題(地域別)

販路開拓の難しさは首都圏が最も課題としてあげており、首都圏と札幌圏は自社デザイ

ン力の不足、3 地域とも企画・アイディア力の不足が課題にあがっている。

設問 3-6 自社製品開発の際の課題(製造業・IT)

5

15

6

14

4

2

7

4

7

2

8

6

18

3

2

4

3

4

13

4

13

2

4

4

1

3

2

4

8

10

1

0

0

0

3

12

3

9

2

3

5

1

3

1

5

6

10

3

1

2

4

0 5 10 15 20

1.課題は何も生じなかった

2.企画・アイディア力不足

3.デザイン戦略の欠如

4.自社デザイン力不足

5.外部デザイナー発掘力不足

6.外部デザイナーとのコミュニケーション不足

7.研究開発力不足

8.外部デザイナーとの対面が難しい

9.設計力不足

10.製造能力不足

11.製品開発プロセスにおけるマネジメント力の不足

12.資金力不足

13.販路開発の難しさ

14.知的財産戦略の難しさ

15.外部リソース活用の難しさ

16.外部支援機関等とのネットワークの弱さ

17.その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

○自社製品開発の際の課題(中小製造企業、ベンチャーIT企業別)

全業種で企画・アイディア、デザイン力に問題意識を持っている企業が多い。中小製造

企業で販路開拓に問題意識を持っていることが特徴的。

設問3-6 自社製品開発に際して生じた問題(製造業)

1029

1231

87

155

84

1516

336

36

7

0 5 10 15 20 25 30 35

1.課題は何も生じなかった

2.企画・アイディア力不足

3.デザイン戦略の欠如

4.自社デザイン力不足

5.外部デザイナー発掘力不足

6.外部デザイナーとのコミュニケーション不足

7.研究開発力不足

8.外部デザイナーとの対面が難しい

9.設計力不足

10.製造能力不足

11.製品開発プロセスにおけるマネジメント力の不足

12.資金力不足

13.販路開発の難しさ

14.知的財産戦略の難しさ

15.外部リソース活用の難しさ

16.外部支援機関等とのネットワークの弱さ

17.その他

回答数

Page 27: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

23

設問3-6 自社製品開発に際して生じた問題(IT)

210

15

02

11

511

44

0000

0 2 4 6 8 10 12

1.課題は何も生じなかった

2.企画・アイディア力不足

3.デザイン戦略の欠如

4.自社デザイン力不足

5.外部デザイナー発掘力不足

6.外部デザイナーとのコミュニケーション不足

7.研究開発力不足

8.外部デザイナーとの対面が難しい

9.設計力不足

10.製造能力不足

11.製品開発プロセスにおけるマネジメント力の不足

12.資金力不足

13.販路開発の難しさ

14.知的財産戦略の難しさ

15.外部リソース活用の難しさ

16.外部支援機関等とのネットワークの弱さ

17.その他

回答数

○自社製品開発における知財の出願や取得(中小製造企業、ベンチャーIT企業別)

中小製造企業では特許など技術的な知財を重視しているが、ベンチャーIT企業では商

標を重視している。

設問3-8-1 自社製品の出願実績(製造業)

52

25

26

0 10 20 30 40 50 60

1.特許・実用新案

2.意匠

3.商標

回答数

設問3-8-1 自社製品の出願実績(IT)

7

0

7

0 1 2 3 4 5 6 7 8

1.特許・実用新案

2.意匠

3.商標

回答数

設問3-8-2 自社製品の特許等取得実績(製造業)

38

21

22

0 5 10 15 20 25 30 35 40

1.特許・実用新案

2.意匠

3.商標

回答数

設問3-8-2 自社製品の特許等取得実績(IT)

1

0

7

0 1 2 3 4 5 6 7 8

1.特許・実用新案

2.意匠

3.商標

回答数

Page 28: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

24

④製品開発時の重要事項(地域別)

自社製品開発の有無に限らず、自社製品開発を想定して何を重要とするかは、トータル

ではブランド化・他製品との差別化をあげている企業が最多である。

設問4-2 製品開発での重要事項(製造業・IT)

0 5 10 15 20 25 30

新規性

ブランド化・他製品との差別化

収益性

市場性

自社の強みを活かす

デザイン性

機能性

デザイン経営戦略導入

外部デザイナーとの連携の橋渡し

社員へのデザイン教育

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

3)デザインクリエータ

①回答企業の特徴

○資本金・従業者数

デザインクリエータは資本金 1000 万円以下が 80%以上で、小規模な企業が圧倒的に多

く、法人形態になっていない、自営業のデザインクリエータからの回答が 20%あるなど、

個人事業としての活動が目立つ。

従業者数でみても、3 人以下の小規模デザインクリエータが半数近くを占めており、小

規模組織が多いのがデザイン業務の特徴といえる。

Page 29: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

25

○業種

デザインクリエータの業種はインダストリアルデザイン(工業デザイン・プロダクトデ

ザイン)やグラフィックデザイン等のように専門分野に分かれているように認識されてい

るが、実際にはデザイン業全般が 25 件で最多であった。分野にはあまりこだわらず、依頼

案件に対応していると推測できる。自らの専門分野でない場合には、一部を同業者ネット

ワークで外部デザインクリエータへ依頼することも想定される。

②ビジネス形態

○デザインクリエータにとって重要度の高いビジネス形態(地域別)

首都圏、札幌圏では企業規模にこだわらない連携を期待しているが、大阪圏は中小製造

企業を連携先として重要と考えていることが特徴的である

設問2-1 重要と考えるビジネス形態(デザイン)[大阪圏](1位)

自社単独

23%

大企業との連携

8%

中小企業との連

39%

企業規模にこだ

わらない他企業と

の連携

15%

その他

15% 自社単独

大企業との連携

中小企業との連携

企業規模にこだわらない他企業との連携

その他

設問2-1 重要と考えるビジネス形態(デザイン)[札幌圏](1位)

自社単独

33%

大企業との連携

13%

中小企業との連

0%

企業規模にこだ

わらない他企業と

の連携

41%

その他

13% 自社単独

大企業との連携

中小企業との連携

企業規模にこだわらない他企業との連携

その他

設問2-1 重要と考えるビジネス形態(デザイン)[首都圏](1位)

自社単独

28%

大企業との連携

14%

中小企業との連

14%

企業規模にこだ

わらない他企業と

の連携

38%

その他

6% 自社単独

大企業との連携

中小企業との連携

企業規模にこだわらない他企業との連携

その他

Page 30: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

26

○デザイン業の景気動向

どの地域も順調とは言いがたいという、景気不安感が感じられる。首都圏以外では順調

と答える企業は少ない

○製造業との連携開発経験(地域別)

首都圏で中小製造企業との連携開発が活発であり、札幌圏、大阪圏では大企業との連携

開発が活発。首都圏の大企業は社内にデザイン部門があるので、外部連携が起りにくいと

いうことが考えられる。設問 2-1 の回答とは逆の傾向が出ていることが興味深い。

設問2-3 製造企業との製品開発連携経験があるか(デザイン)[首都圏]

1.中小企業との経験がある

32%

2.中小企業との経験はない

13%

3.大企業との経験がある

32%

4.大企業との経験はない

22%

5.その他1%

1.中小企業との経験がある

2.中小企業との経験はない

3.大企業との経験がある

4.大企業との経験はない

5.その他

設問2-3 製造企業との製品開発連携経験があるか(デザイン)[札幌圏]

1.中小企業との経験がある

14%

2.中小企業との経験はない

16%

3.大企業との経験がある

42%

4.大企業との経験はない

27%

5.その他1%

1.中小企業との経験がある

2.中小企業との経験はない

3.大企業との経験がある

4.大企業との経験はない

5.その他

設問2-3 製造企業との製品開発連携経験があるか(デザイン)[大阪圏]

1.中小企業との経験がある

13%

2.中小企業との経験はない

16%

3.大企業との経験がある

42%

4.大企業との経験はない

28%

5.その他1%

1.中小企業との経験がある

2.中小企業との経験はない

3.大企業との経験がある

4.大企業との経験はない

5.その他

Page 31: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

27

○連携先企業数・連携件数

大企業との連携も、中小製造企業との連携も 1~5 社と 1~5 件の連携件数が最多である。

③デザインクリエータと中小製造企業等での製品開発

○デザインクリエータからみた重要な製品開発段階

66 社が企画・アイディア・マーケティングをあげており、圧倒的に最多である。

○成功した製品開発案件の主担当者

企画、研究開発、設計段階で自社(デザインクリエータ)が主たる担当となっている割

合が高い。製造はクライアント企業や外部企業が担当するが、営業や広報段階でデザイン

クリエータが主担当者となっている。

設問 3-2-2① 成功した開発案件で企画・アイディア・マーケティング段階での主たる担当者

1.自社72%

3.外部企業2%

4.外部デザインディレクター、プロデュー

サー2%

5.大学・旧国研2%

2.クライアント22%

1.自社

2.クライアント

3.外部企業

4.外部デザインディレクター、プロデューサー5.大学・旧国研

6.公設試

7.産業支援機関

8.地方公共団体

9.金融・VC

10業界団体

設問3-2-2② 研究開発段階

1.自社49%

2.クライアント29%

5.大学・旧国研3%

3.外部企業16%

6.公設試3%

1.自社

2.クライアント

3.外部企業

4.外部デザインディレクター、プロデューサー5.大学・旧国研

6.公設試

7.産業支援機関

8.地方公共団体

9.金融・VC

10業界団体

11.その他

設問3-2-2 ③ 設計段階

1.自社65%

2.クライアント24%

3.外部企業8%

11.その他3%

1.自社

2.クライアント

3.外部企業

4.外部デザインディレクター、プロデューサー5.大学・旧国研

6.公設試

7.産業支援機関

8.地方公共団体

9.金融・VC

10業界団体

11.その他

設問3-2-2④ 製造段階

1.自社11%

2.クライアント42%

3.外部企業39%

4.外部デザインディレクター、プロデューサー

4%

11.その他4%

1.自社

2.クライアント

3.外部企業

4.外部デザインディレクター、プロデューサー5.大学・旧国研

6.公設試

7.産業支援機関

8.地方公共団体

9.金融・VC

10業界団体

11.その他

設問3-2-2⑤ 営業段階

1.自社34%

2.クライアント44%

5.大学・旧国研3%

3.外部企業16%

11.その他3%

1.自社

2.クライアント

3.外部企業

4.外部デザインディレクター、プロデューサー5.大学・旧国研

6.公設試

7.産業支援機関

8.地方公共団体

9.金融・VC

10業界団体

11.その他

設問 3-2-2 ⑥ 広報段階

1.自社25%

2.クライアント

3.外部企業18%

4.外部デザインディレクター、プロデューサー

4%

6.公設試4%

11.その他4%

1.自社

2.クライアント

3.外部企業

4.外部デザインディレクター、プロデューサー

5.大学・旧国研

6.公設試

7.産業支援機関

8.地方公共団体

9.金融・VC

10業界団体

11.その他

Page 32: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

28

○成功製品開発プロジェクト全体をマネジメントしたのは誰か

成功製品開発案件ではプロジェクトマネジメントをデザインクリエータが自社で行って

いるものが多い。次がクライアント企業であり、開発に直接関わった当事者がプロジェク

トマネジメントを行っている。

設問 3-2-2 成功案件で開発プロジェクト全体をマネジメントしたのは誰か(デザイン)[全地域]

2.クライアント28%

1.自社56%

5.大学・旧国研2%

7.産業支援機関2% 11.その他

5%

3.外部企業7%

1.自社

2.クライアント

3.外部企業

4.外部デザインディレクター、プロデューサー5.大学・旧国研

6.公設試

7.産業支援機関

8.地方公共団体

9.金融・VC

10業界団体

11.その他

○クライアント企業と製品開発にいたる経緯(地域別)

全体としてはクライアントからの持ち込み依頼が最多である。首都圏のデザインクリエ

ータは自ら提案し、それをクライアントに持ち込む形が他地域に比して多いことがわかる。

逆に札幌圏、大阪圏ではクライアント側(製造業)が持ち込む形が多い。

設問3-3 クライアント企業等と製品開発に至る主な経緯(1位)(デザイン)[全地域]

外部企業からの紹介, 7, 11%

クライアントからの持込依頼条件,31, 46%

自社からの提案, 13, 20%展示会の出展等を通しての外部

からの紹介, 1, 2%

未回答, 10, 15%

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介, 4, 6%

自社からの提案

クライアントからの持込依頼条件

外部企業からの紹介

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介大学等高等教育機関や旧国立研究所からの紹介公設試

産業支援機関からの紹介

金融・VCからの紹介

業界団体からの紹介

展示会の出展等を通しての外部からの紹介その他

未回答

回答数(66社回答)

Page 33: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

29

設問3-3 クライアント企業等と製品開発に至る主な経緯(デザイン)[首都圏](1位)

外部企業からの紹介11%

クライアントからの持込依頼条件

自社からの提案30%

展示会の出展等を通しての外部からの紹介

0%

未回答14%

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介

5%

自社からの提案

クライアントからの持込依頼条件

外部企業からの紹介

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介

大学等高等教育機関や旧国立研究所からの紹介

公設試

産業支援機関からの紹介

金融・VCからの紹介

業界団体からの紹介

展示会の出展等を通しての外部からの紹介

その他

未回答

設問3-3 クライアント企業等と製品開発に至る主な経緯(デザイン)[札幌圏](1位)

外部企業からの紹介19%

クライアントからの持込依頼条件44%

自社からの提案6%

展示会の出展等を通しての外部からの紹介

6%

未回答19%

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介

6%

自社からの提案

クライアントからの持込依頼条件

外部企業からの紹介

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介

大学等高等教育機関や旧国立研究所からの紹介

公設試

産業支援機関からの紹介

金融・VCからの紹介

業界団体からの紹介

展示会の出展等を通しての外部からの紹介

その他

未回答

設問3-3 クライアント企業等と製品開発に至る主な経緯(デザイン)[大阪圏](1位)

外部企業からの紹介0%

クライアントからの持込依頼条件69%

自社からの提案8%

展示会の出展等を通しての外部からの紹介

0%

未回答15%

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介

8%

自社からの提案

クライアントからの持込依頼条件

外部企業からの紹介

外部デザインディレクター・プロデューサーからの紹介

大学等高等教育機関や旧国立研究所からの紹介

公設試

産業支援機関からの紹介

金融・VCからの紹介

業界団体からの紹介

展示会の出展等を通しての外部からの紹介

その他

未回答

Page 34: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

30

○クライアント企業と製品開発する際の重視項目(地域別)

目立つのは、首都圏のデザインクリエータが、リスクへの覚悟を重視していることであ

る。設問 3-3 の回答と関連するが、自分が持ち込んだ案件であるために、責任が発生して

いると考えられる。

設問3-4 クライアントと製品開発する際の重視項目(デザイン)

25

15

16

7

3

8

8

4

2

3

10

7

4

3

1

0 5 10 15 20 25 30

1.ディスカッション

2.両者の近接性

3.リスクへの覚悟

4.私的関係の構築

5.その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

○製品開発時に発生した課題(地域別)

全体ではデザイン導入への認識の低さが問題(課題)の1位で、クライアント(中小製

造企業やベンチャーIT企業)への不満と見受けられる。

首都圏では、デザイン導入の認識不足やマーケットへの見方の違いという上層の問題が

認識されている。札幌圏、大阪圏では資金面の考え方の違いが目立っている。

設問3-6 製品開発におけるクライアントとの問題(デザイン)[全地域]

25

39

8

7

18

32

16

14

5

6

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

1.コミュニケーション不足

2.デザイン導入への認識の低さ

3.理解不足・姿勢の希薄さ

4.橋渡し役の不在

5.スタンスの違い

6.資金面での考え方の違い

7.マーケットへの見方の違い

8.知的財産戦略の違い

9.リソース活用への認識の違い

10.その他

回答数(複数回答)

Q3-6製品開発におけるクライアントとの問題

Page 35: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

31

設問3-6 製品開発におけるクライアントとの問題(デザイン)

14

25

4

7

12

16

11

9

4

3

6

7

3

0

6

8

2

3

0

2

5

7

1

0

0

8

3

2

1

1

0 5 10 15 20 25 30

1.コミュニケーション不足

2.デザイン導入への認識の低さ

3.理解不足・姿勢の希薄さ

4.橋渡し役の不在

5.スタンスの違い

6.資金面での考え方の違い

7.マーケットへの見方の違い

8.知的財産戦略の違い

9.リソース活用への認識の違い

10.その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

⑤製品開発の際の重要事項(地域別)

全地域ほとんど同じ傾向が見られる。デザインクリエータの問題認識は共通である。

設問5 製品開発の際の重要事項(デザイン)[首都圏]

自社ブランドらしさ,ブランドの強化,新ブランドの構築

16%

新規性13%

収益性14%

製造業との連携のための橋渡し役の存在

7%

デザイン賞受賞1%

他製品との差別化16%

市場性19%

機能性14%

他製品との差別化

市場性

機能性

自社ブランドらしさ,ブランドの強化,新ブランドの構築

新規性

収益性

製造業との連携のための橋渡し役の存在

デザイン賞受賞

設問5 製品開発の際の重要事項(デザイン)[札幌圏]

自社ブランドらしさ,ブランドの強化,新ブランドの構築

15%

新規性15%

収益性15%

製造業との連携のための橋渡し役の存在

6%

デザイン賞受賞2%

他製品との差別化16%

市場性15%

機能性16%

他製品との差別化

市場性

機能性

自社ブランドらしさ,ブランドの強化,新ブランドの構築

新規性

収益性

製造業との連携のための橋渡し役の存在

デザイン賞受賞

Page 36: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

32

設問5 製品開発の際の重要事項(デザイン)[大阪圏]

自社ブランドらしさ,ブランドの強化,新ブランドの構築

10%

新規性18%

収益性13%

製造業との連携のための橋渡し役の存在

8%

デザイン賞受賞0%

他製品との差別化19%

市場性17%

機能性15%

他製品との差別化

市場性

機能性

自社ブランドらしさ,ブランドの強化,新ブランドの構築

新規性

収益性

製造業との連携のための橋渡し役の存在

デザイン賞受賞

(2)ヒアリング調査結果

3 地域でのヒアリング実施件数内訳(専門家のアドバイス含む)は次表のとおりである。

ベンチャーIT企業とデザインクリエータはその境界が曖昧な場合もあり、その区分けは

難しい。

ヒアリング実施件数内訳(専門家のアドバイスを含む) 単位:件数

中小製造企業ベンチャーIT企業等(ブリッジ役含む)

デザインクリエータ 公的機関・大学等 計

札幌圏 5 10 9 8 32

首都圏 4 5 11 6 26

大阪圏 10 3 9 5 27

計 19 18 29 19 85

1)3地域別の中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータによる新製品・

新商品開発の現状と課題

①3地域共通

○中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ共通の現状と課題

・デザインを導入した新製品・新商品開発の一般的なプロセスは、企画・アイディア・マー

ケティング→研究開発→設計→製造→営業→広報である。研究開発・設計段階で、形状デザ

インが求められる場合が多い。自社内に保有しない機能は必然的に外部に求めるべきであ

るが、自社完結を希望しがちである。

○中小製造企業の現状と課題

・中小製造企業はデザインクリエータがどのような仕事を、いくらで行ってくれるか不明

Page 37: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

33

で、初めてコラボレーションすることへの抵抗が強い。

・中小製造企業経営者の中にはデザインを外観造形と捉え、真のデザインを理解していな

い場合がある。

・中小製造企業がデザインクリエータへデザイン業務を依頼する際に、デザインクリエー

タへ発注内容を明確に示す要求仕様(オリエンテーションシート)を提出せず、契約書を

締結していない。

・中小製造企業はインハウスデザイナーを育成(設計担当者の転用)又は雇用し、新製品・

新商品開発を全て自社内で完結したい傾向がある。

・先輩デザインクリエータが存在していれば、デザイン導入に際してのコンペで、仕上げ

までの期間、向上したい性能、必要に応じて工場や研究所の担当者が説明すること、上限

費用、コンペ料、ジャッジ基準等を要求仕様としてデザインクリエータへ提示し、そこか

らビジネスがスタートすることを OJT 等で新人が学ぶ機会がある。しかし中小製造企業で

は新人のインハウスデザイナーを採用した場合、これらの行動特性を社内で学べる機会が

存在せず、クライアントが何を要求し、何が必要ないのか、納期・コスト・品質等が不明確

なまま開始し、ビジネスプアーに陥る恐れがあり、リカレント教育が必要。

・中小製造企業が実際にデザインクリエータへデザイン業務を依頼すると、その効果を感

じている。

※「リカレント」教育とはスウェーデンの故パルメ首相が提唱した用語で、「社会人の再教育」を意

味する

○ベンチャーIT企業の現状と課題

・ベンチャーIT企業はデザインクリエータと新製品・新商品を開発することもあれば、

中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ役になる場合がある。

・ベンチャーIT企業がデザインクリエータへデザイン業務を依頼する際に、デザインク

リエータへ発注内容を明確に示す要求仕様(オリエンテーションシート)を提出していな

い。

・ベンチャーIT企業でデザインを導入した新製品・新商品開発等を行うことが多いと、

インハウスデザイナーを育成又は雇用し、新製品・新商品開発を全て自社内で完結したい

傾向がある。

・先輩格デザインクリエータが存在していれば、デザイン導入に際してのコンペで、仕上

げまでの期間、向上したい性能、必要に応じて工場や研究所の担当者が説明すること、上

限費用、コンペ料、ジャッジ基準等を要求仕様としてデザインクリエータへ提示し、そこ

からビジネスがスタートすることを OJT 等で新人が学ぶ機会がある。

しかしベンチャーIT企業が新人のインハウスデザイナーを採用した場合、これらの行

動特性を社内で学べる機会が存在せず、クライアントが何を要求し、何が必要ないのか、

Page 38: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

34

納期・コスト・品質等が不明確なまま開始し、ビジネスプアーに陥いる恐れがあり、リカレ

ント教育が必要。

○デザインクリエータの現状と課題

現状

・デザインクリエータは営業活動ではなく、他(取引先、デザインクリエータ仲間、公的

機関等)からの紹介による製造企業等クライアントからの依頼で、デザイン業務を行うの

が一般的である。そのため、業界団体(JIDA)等への加入や、公的機関のコーディネータを

引き受けるなどして、ネットワーク確保を行っている。

・デザインクリエータがオリジナル製品開発をリスクテイクして行う場合はまれである。

デザインディレクションができる経験豊かなデザインクリエータが手がけており、マーケ

ティング機能、製造機能、流通機能等を外部等に確保できることが確定してから実施して

いる。

・デザインクリエータの中でも工業デザイナー・プロダクトデザイナーは分野を限定せず、

クライアントからの依頼に応じて対応し、3DCAD データの納品が必須となってきている。

・工業デザイン・プロダクトデザイン業務では、デザインスケッチ→CAD→CAM→モックの

プロセスを自社で行い、できない機能は外部へ依頼し、モックまで作成して納品すること

も求められる。

・デザインクリエータは自らの存在の PR のため、コンペへの応募や東京デザイナーズウィ

ーク等の大型イベントへ出展することがある。コンペは新人の登竜門的でもある。

・経験豊かなデザインクリエータはデザインディレクターやデザインプロデューサーとな

り、自らがプロジェクトマネジメントを担当し、中小製造企業等をメンバーとして使う場

合もある。

課題(中小製造企業への不満)

・中小製造企業への不満として、中小製造企業の経営者の多くはデザインマネジメントを

正しく認識しておらず、製品の外観造形にデザインクリエータの力を少し借りれば、売れ

るようになると考えがちで、デザインクリエータにマーケティングから、売れるものの造

形、販路確保などトータルにビジネスをデザインしてもらおうという概念が脆弱である。

・中小製造企業への不満として、デザインクリエータへの要求仕様がほとんど提出されず、

契約書を締結しないことなどから、プロジェクトの進捗を両者で確認しながら、合意形成

をとりながら進めていく文化がない。デザイン業務の依頼に際して口約束が多く、あまり

契約書を締結しておらず、支払い面等でトラブルが発生するケースもある。

②札幌圏

Page 39: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

35

○中小製造企業の現状と課題

・工業集積が低いため、工業デザイナー・プロダクトデザイナーの仕事が少なく、札幌圏

には工業デザイナー・プロダクトデザイナーがあまり存在していない。ゆえに、中小製造

企業は工業デザイン等が必要な場合には、北海道立工業試験場デザイン開発科へ工業デザ

イン業務を依頼している。

○ベンチャーIT企業の現状と課題

・全国ブランドとなっているサッポロバレーの中心的なベンチャーIT企業では業務上ビ

ジュアルな感覚が求められることが多く、設立当初からデザインクリエータを雇用してい

るところもあり、デザイン導入は活発である。

・ベンチャーIT企業等がデザインクリエータをインハウスで雇用していない場合、デザ

イン導入のファーストコンタクトは従来からの取引先の印刷業や広告代理店である。

・ベンチャーIT企業の業務がメディアやビジュアルな内容を求められる場合もあり、デ

ザインクリエータとの境界が曖昧である。

・ベンチャーIT企業が新卒デザインクリエータを採用した場合、経営者や既存の社員が

デザインを把握していないため、デザインクリエータの育成・評価・マネジメントするこ

とが難しい。新卒デザインクリエータの卒業したデザイン系大学・高専・専門学校が地元に

立地していれば、デザインクリエータとして仕事を始めている卒業生へのリカレント教育

や卒後支援システムが必要である。

○デザインクリエータの現状と課題

・工業集積が低いため、工業デザイン・プロダクトデザイン業務が少なく、工業デザイナ

ー・プロダクトデザイナーがあまり存在していない。

・一次産業が活発なため関連する食品製造業、観光、印刷業等が活発なため、その関連分

野で活躍しているグラフィックデザイナーは多い。お土産品や菓子メーカー等のブランデ

ィングを意識したトータルデザインや、新製品開発およびそのブランディングや、既存食

品のリデザインを担っている。

・デザインディレクターを生業としている人材はほとんど見受けられない。

・札幌地域知的クラスター創成事業において、ITカロッチェリアものづくり工房でラピ

ッドプロトタイピングやユニバーサルデザイン等、ものづくりとデザインの融合をはか

り、公的資金が投入された 5 年間を経た後、民間サイドの自助努力で株式会社ユーザデザ

インラボ、特定非営利活動法人札幌ITフロントが誕生し、活動を展開している。

・民間でのイベント活動など活発で、後援や協賛を地方公共団体が行っている。例えば NPO

法人北海道デザインネットワークが事業主体で「北海道デザイナーズウィーク」を開催し

ている。2007 年で 3 回目の開催である。

Page 40: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

36

・2001 年に開設したクリエータのインキュベーション施設である札幌市デジタル創造プラ

ザ(ICC)のチーフコーディネータ久保俊哉氏が育成している、映像系やコンテンツ系等の

デザインクリエータも「ショートショートフィルムフェスティバル」をはじめとする各種

イベントや、企業との各種開発等に参画している。

③首都圏

・中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータともに多数存在し、市場が形

成されているので、公的機関が介在しないビジネスが主流である。

○中小製造企業の現状と課題

・中小製造企業は下請け業務に特化し、オリジナル製品開発を試みず、デザイン導入の必

要を認識していない企業群(大田区等)と、下請けに不安を感じ、デザインを導入したオ

リジナル製品開発にチャレンジしている企業群が見受けられる。

○ベンチャーIT企業の現状と課題

・ITを活用したプラットフォームで中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ役を

担うビジネスモデルを展開している企業がある。

○デザインクリエータの現状と課題

・デザインクリエータは大企業も含めて、クライアントの規模の大小にかかわらずデザイ

ン業務を受託している。

・デザインクリエータの業務は多いものの、デザインクリエータも集中しており、ピラミ

ッド構造の底辺は、デザインクリエータというよりも CAD オペレーターになっている。

④大阪圏

○中小製造企業の現状と課題

・工業が活発な大阪圏では、エンドユーザー向けの中小製造企業等において、以前からイ

ンハウスデザイナーを雇用し、マーケティング→商品企画→デザイン→販路確保→広報・

宣伝までをデザインクリエータが担っているケースが見受けられる。

・50 年近く前に発足している財団法人大阪デザインセンターを、デザインクリエータの紹

介や、インハウスデザインクリエーターの採用や育成等の相談事項や課題が生じると気軽

に活用している。

・デザインクリエータの外観造形スケッチへはデザイン料を支払わず、試作までできると

支払うという傾向がある。

Page 41: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

37

○ベンチャーIT企業の現状と課題

・トータルデザインの中にディープにITが含まれ、中小製造企業とデザインクリエータ

のブリッジ役を担っている企業がある。

○デザインクリエータの現状と課題

・50 年近く前に発足している財団法人大阪デザインセンターを、仕事を受注したい場合や、

中小製造企業等との業務上の課題が生じると気軽に活用している。

・中小製造企業への不満として、デザイン業務を外観造形と考えていることが多く、スケ

ッチの価値を認めにくい傾向があり、試作品を高価値としてみなす傾向が強い。

⑤その他

・2007 年 10 月末から 11 月にかけての複合デザインイベント「東京デザイナーズウィーク

2007(100%Design)等」とデザインイベント「Design Tide(デザインタイド)in Tokyo 2007」

が開催され、13 万人の来場者があった。年々盛況となっており、海外も含めてデザインク

リエータ、バイヤー、メーカー、プレス等が参加している。ブースを借りて出展している

デザインクリエータにとっては、バイヤーやメーカーとの出会いの場、出会いの機会であ

るという。国内のデザイン学校の生徒等も多く参加しているが、中小製造企業へは PR 不足

のためか、別世界のことと思われるためか、あまり来場していない。

2)新製品・新商品開発に際しての知財

①3地域共通

・中小製造企業とデザインクリエータには契約書を締結する習慣がなく、知財に関しても

口約束である。公的機関が発行しているデザイナー活用のガイド的な資料で啓発されてい

るが現実は脆弱である。知的財産戦略本部が出している「知的財産推進計画 2007」では海

外に対して、デザインを戦略的に活用するための方策や、保護や模倣を防ぐ等にふれてあ

るが、こういった推進計画があることの啓発が必要である。

・中小製造企業はデザインクリエータへ継続的なライセンスフィーを支払うことを嫌い、

納品時に意匠権等も含めた認識での完全譲渡(売り切り)が主流である。

・大企業と契約ベースでのビジネスを経験しているデザインクリエータを除いて、デザイ

ンクリエータ側は、知財はメーカーが必要に応じて出願し、取得するものであるとの認識

が強い。

②札幌圏

・札幌圏では 1976 年からIT産業の集積が始まり、IT産業はある程度成熟していること

から、ベンチャーIT企業は知財への意識が比較的高い。

Page 42: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

38

・デザインクリエータは知財については委託してきた製造企業が出願し、取得するものと

の認識が強く、納品時に一括譲渡(売り切り)が主体である。

・中小製造企業の新製品・新商品開発に北海道立工業試験場や大学教員等が参画した場合

には、公設試や大学が中小製造企業へ知財の重要性の指導をするので、知財マネジメント

が適切に行われる場合が見受けられる。

③首都圏

・デザインクリエータのビジネス市場がある程度確立しているため、知財への意識が高く、

中小製造企業との契約書の締結も他地域よりは実施されており、契約書ベースでのビジネ

スが成立している。

・デザインクリエータは大企業のデザイン業務を受託することが他地域に比して多く、契

約書の締結経験がある。

④大阪圏

・中小製造企業はデザインクリエータが作成した試作に対してデザイン料を支払うという

イメージがあり、外観スケッチへのデザイン料の支払いを嫌う傾向があり、当然ライセン

スフィーを支払う契約形態は成立しにくい。

Page 43: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

39

3-2-2 中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータによる新製品・新商品

開発をする上で必要な具体的要素

アンケート調査・ヒアリング調査より中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインク

リエータによる新製品・新商品開発での現状と課題を整理し、具体的要素を解明した。

(1)現状と課題

①3地域共通

○中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ共通

3地域共通、中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ共通の新製品・

新商品開発の現状と課題

□デザイン導入による新製品・新商品開発のプロセスは共通

企画・アイディア・マーケティング→研究開発→設計→製造→営業→広報

□デザイン導入による新製品・新商品開発への効果有り

■デザインが重要な開発段階→ギャップ有り

アンケート調査:企画・アイディア・マーケティング→理想か

ヒアリング調査:研究開発・設計段階での形状デザイン→現実

□■自社完結への希望

課題が生じた際に自社での解決を希望

※□は現状、■は課題、□■両方を示す(後掲も同様)

○中小製造企業

3地域共通の中小製造企業における新製品・新商品開発の現状と課題

■中小製造企業経営者のデザインマネジメント認識不足

中小製造企業経営者の多くはデザインマネジメントを企画・マーケティング、外観造

形、販路開拓(営業・広報含む)と正しく認識していない

→製品の外観造形にデザインクリエータの力を少し借りれば、売れるようになる

→デザインクリエータにマーケティングから、売れるものの造形、販路確保などトー

タルにビジネスをデザインしてもらおうという概念が脆弱

■中小製造企業からデザインクリエータへのビジネスルールの欠如

デザインクリエータへの要求仕様提出なし

デザイン業務の依頼に際しての契約書を締結せず

Page 44: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

40

3地域共通の中小製造企業における新製品・新商品開発の現状と課題 続き

■中小製造企業からデザインクリエータへのビジネスルールの欠如

デザインクリエータへの要求仕様提出なし

デザイン業務の依頼に際しての契約書を締結せず

知財の扱いもあいまい

→プロジェクトの進捗を両者で確認しながら、合意形成をとりながら進めていく文化

がない

→コミュニケーションスキル不足

□■自社完結への希望

可能な限りインハウスデザイナー雇用傾向

→デザイナーのマネジメントは難

■インハウスデザイナーの OJT 機会の少なさ

初めてインハウスデザイナーを雇用した場合、先輩格デザイナーからデザイン業務の

行動特性を社内で学べる機会がほとんど存在しない

→クライアントの要求、必要なこと、納期・コスト・品質等が不明確

→リカレント教育の必要性

○ベンチャーIT企業

3地域共通のベンチャーIT企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□ベンチャーIT企業の 2 つの役割

デザインクリエータと新製品・新商品を開発

中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ役

■ベンチャーIT企業からデザインクリエータへのビジネスルールの欠如

デザインクリエータへの要求仕様提出なし

□■自社完結への希望

可能な限りインハウスデザイナー雇用傾向

→インハウスデザイナーの評価・マネジメントは難しい

■インハウスデザイナーの OJT 機会の少なさ

初めてインハウスデザイナーを雇用した場合、先輩格デザイナーからデザイン業務の

行動特性を社内で学べる機会がほとんど存在しない

→クライアントの要求、必要なこと、納期・コスト・品質等が不明確

→リカレント教育の必要性

Page 45: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

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○デザインクリエータ

3地域共通のデザインクリエータにおける新製品・新商品開発の現状と課題

□デザインクリエータの業種・傾向

工業デザイン・プロダクトデザインとグラフィックデザインは業種が分かれているが、

デザイン業務全般、一部デザインコンサルティング・デザインプロデュースを行うな

ど、比較的分野を限定しない

□デザインクリエータの業務受注形態

自らの営業はほとんど行わず、他(取引先、デザインクリエータ仲間、公的機関等)

からの紹介によるクライアントからの依頼でデザイン業務を受注

→デザインクリエータは在庫を抱えるなどのリスクテイクを負ってまで自社製品開発

を行うケースは少ないが、首都圏ではデザインクリエータが自ら提案の場合もある。

■デザインクリエータの知財認識への温度差

■中小製造企業への不満:中小製造企業経営者のデザインマネジメント認識不足

中小製造企業経営者の多くはデザインマネジメントを企画・マーケティング、外観造

形、販路開拓(営業・広報含む)と正しく認識していない

→製品の外観造形にデザインクリエータの力を少し借りれば、売れるようになる

→デザインクリエータにマーケティングから、売れるものの造形、販路確保などトー

タルにビジネスをデザインしてもらおうという概念が脆弱

■中小製造企業への不満:ビジネスルールの欠如

デザインクリエータへの要求仕様提出なし

デザイン業務の依頼に際しての契約書を締結せず

→支払い面等でトラブル発生ケースもある

■中小製造企業への不満:先輩格デザインクリエータがいない場合の OJT 機会の少なさ

同一組織内に先輩格デザインクリエータがいない場合

→ビジネスのやり方を学べない

→リカレント教育が必要

②札幌圏

○中小製造企業

札幌圏の中小製造企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□工業集積が低いため、工業デザイナー・プロダクトデザイナー不在

工業集積が低いため、工業デザイナー・プロダクトデザイナーの仕事が少ない

→工業デザイナー・プロダクトデザイナーがあまり存在していない

→工業デザイン等が必要な場合には北海道立工業試験場デザイン開発科へ依頼

Page 46: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

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○ベンチャーIT企業

札幌圏のベンチャーIT企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□デザイン導入の活発さ・インハウスデザイナーの雇用

全国ブランドとなっているサッポロバレーの中心的なベンチャーIT企業

→業務上ビジュアルな感覚が求められることが多い

→デザイン導入は活発

→インハウスデザイナーを雇用

□外部へのデザイン依頼:印刷業や広告代理店

デザインクリエータをインハウスで雇用していない場合

→デザイン導入のファーストコンタクト先は従来からの取引先である印刷業や広告

代理店

■初めて採用のインハウスデザイナーへのマネジメントの難しさ・OJT 機会の少なさ

新卒デザインクリエータを初めて採用した場合

→経営者や既存の社員がデザインを把握していない

→デザインクリエータの育成・評価・マネジメントすることが難

→先輩格デザイナーからデザイン業務の行動特性を社内で学べる機会がなし

→リカレント教育機会が必要

○デザインクリエータ

札幌圏のデザインクリエータにおける新製品・新商品開発の現状と課題

□デザインクリエータの業種・業務分野

工業集積が低いため、工業デザイン・プロダクトデザイン業務が少ない

→工業デザイナー・プロダクトデザイナーが少ない、デザインディレクターも少ない

一次産業が活発なため関連する食品製造業、観光、印刷業等が活発

→その関連分野でのデザイン業務があり、グラフィックデザイナーは多く存在

□民間(NPO 等)でのイベント活動等活発

③首都圏

中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータともに多数存在し、市場が形

成されている。

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○中小製造企業

首都圏の中小製造企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□デザイン導入に温度差

下請け業務特化型

→オリジナル製品開発、デザイン導入の必要を認識しない企業群(大田区等)

下請けに不安型

→デザインを導入したオリジナル製品開発にチャレンジしている企業群

○ベンチャーIT企業

首都圏のベンチャーIT企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□ブリッジ役としてのプラットフォームの提供

ITを活用したプラットフォームで中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ役

を担うビジネスモデルを展開している企業あり

○デザインクリエータ

首都圏のベンチャーIT企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□デザイン業務の特性

クライアントの規模の大小にかかわらずデザイン業務を受託。自ら提案の場合もあり

■ピラミッド構造のデザインクリエータ

大企業からの受注も含めてデザイン業務は多い

→デザインクリエータも集中

→ピラミッド構造の底辺はデザインクリエータというよりも CAD オペレーター

④大阪圏

○中小製造企業

大阪圏の中小製造企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□エンドユーザー向けの中小製造企業等におけるインハウスデザイナーの雇用

エンドユーザー向け製品を製造している中小製造企業

→以前からインハウスデザイナーを雇用

→マーケティング~商品企画~デザイン~販路確保~広報・宣伝までを担う

□公的機関である財団法人大阪デザインセンターの頻繁な利用

50 年近く前に発足の財団法人大阪デザインセンターを頻繁に利用

→デザインクリエータの紹介依頼、インハウスデザイナーの採用や育成等の相談事項

や課題が生じると気軽に活用

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44

大阪圏の中小製造企業における新製品・新商品開発の現状と課題 続き

■デザイン料への認識

外観造形スケッチへはデザイン料を支払わず、試作までできると支払う傾向有り

○ベンチャーIT企業

大阪圏のベンチャーIT企業における新製品・新商品開発の現状と課題

□トータルデザイン業務が自ずとブリッジ役へ

トータルデザイン業務の中にITや各業種が含まれ、自然と中小製造企業とデザイン

クリエータのブリッジ役へ

○デザインクリエータ

大阪圏のデザインクリエータにおける新製品・新商品開発の現状と課題 続き

□デザイン料支払いに関する中小製造企業への不満

中小製造企業がデザイン業務を外観造形と考えている

→外観スケッチへの価値を認めずデザイン料を支払われず

→試作へはデザイン料支払われる

(2)具体的要素

新製品・新商品を開発する上で必要な具体的要素は、中小製造企業、ベンチャーIT企業、

デザインクリエータ共通、三者個別に内発的要素と外発的要素に分けることができ、次表

のように整理できる。

Page 49: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

45

内発的要素 外発的要素

中小製造企業、ベン

チャーIT企業、デ

ザインクリエータ

共通

◎自らの技術力をベースとし

たデザイン導入による新製

品・新商品開発プロセスマネジ

メント力(企画・アイディア・

マーケティング→研究開発→

設計→製造→営業→広報)

◎ビジネスルールの実践

・業務契約書の締結

・知財マネジメント

◎課題解決等自社内完結型か

ら脱却し、自社内で保有してい

ない技術・デザイン力等の外部

からの導入

◎適時適切な外部公的機関・ブ

リッジ役等の活用能力

◎プロセスマネジメント力習得機

会(関連セミナー等)

◎ビジネスルール習得機会(関連セ

ミナー等)

◎契約書作成スキル習得機会(公的

機関によるサンプルの公表等)

◎自社で保有していない新製品・新

商品開発プロセスにおける必要な

技術力等が外部(同業他社、同業者、

公設試他)からの導入可能なこと

◎相談に値する公的機関やブリッ

ジ役の存在

中小製造企業

◎経営者のデザインマネジメ

ントへの正しい認識

◎ビジネスルールの実践

・デザインクリエータへの要求

仕様の提示

◎ビジネスルールに基づく合

意形成によるビジネスの進捗

◎ビジネスルールを進捗する

ためのコミュニケーションス

キル

◎デザインマネジメント知識習得

機会(関連セミナー等)

◎ビジネスルール習得機会(関連セ

ミナー等)

◎ビジネスの進め方習得機会(関連

セミナー等)

◎コミュニケーションスキル習得

機会(関連セミナー等)

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内発的要素 外発的要素

中小製造企業

◎先輩デザイナー不在の場合

のデザイナー育成(デザイン業

務の行動特性等ビジネススキ

ル修得のためのリカレント教

育受講の必要性認識)

◎先輩デザイナー不在の場合

のインハウスデザイナーの評

価・マネジメント

◎地元大学等高等教育機関・公的機

関におけるリカレント教育機会

◎インハウスデザイナー評価・マネ

ジメントスキル習得機会(関連セミ

ナー等)

ベンチャーIT企

◎デザインクリエータ等との

新製品・新商品開発とブリッジ

役と両方の機能あり

◎ビジネスルールの実践

・デザインクリエータへの要求

仕様の提示

◎ビジネスルールに基づく合

意形成によるビジネスの進捗

◎ビジネスルールを進捗する

ためのコミュニケーションス

キル

◎ブリッジ役の場合には、ブリッジ

できる出会いの場や機会が設定可

能なこと

◎ビジネスルール習得機会(関連セ

ミナー等)

◎ビジネスの進め方習得機会(関連

セミナー等)

◎コミュニケーションスキル習得

機会(関連セミナー等)

デザインクリエー

◎他(取引先、デザイナー仲間、

公的機関等)からの紹介による

クライアントからの依頼での

デザイン業務の受注

◎デザイン業務が必要な成熟した

市場の形成

◎PR の場(コンペや東京デザイナー

ズウィーク等の大型イベントへの

出展)

◎クライアントへブリッジしてく

れる公的機関への登録や業界団体

への加盟

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内発的要素 外発的要素

デザインクリエー

◎クライアントのニーズに沿

ったデザイン業務能力

・クライアントからの要求仕様

等による業務能力

◎広範な業務能力

・工業デザインとグラフィック

デザインは業種が別の傾向が

あるが、デザイン業務全般、デ

ザインコンサルティング・デザ

インプロデュースを行うなど、

分野を限定しない業務能力

◎トータルデザイン業務能力

・外観造形のみならず企画・ア

イディアから流通までのトー

タルなデザイン業務を担える

能力

◎3DCAD 操作スキル

◎工業デザイン業務の依頼で

のデザインスケッチ→CAD→

CAM→モックを行える能力

◎先輩格デザインクリエータ

が不在で OJT 機会がない場合、

自ら習得先を探してビジネス

のやり方を学ぶ意欲と能力

◎クライアント(中小製造企業やベ

ンチャーIT企業等)のニーズ・要

求仕様が曖昧な場合、明確化をはか

ってくれる公的機関の存在と機能

◎広範な業務で対応できないスキ

ルを補完できる外部デザインクリ

エータネットワーク

◎依頼されたトータルデザイン業

務の自社で行えないプロセスやス

キル等外部から導入可能なこと

◎外部依頼先とのネットワークの

構築

◎3DCAD 操作スキル習得機会(セミ

ナー等)

◎デザインスケッチ→CAD→CAM→

モックを行える能力習得機会(セミ

ナー等)

◎工業デザイン業務の依頼でデザ

インスケッチ→CAD→CAM→モック

を自社内で行えない場合には、外部

依頼先が存在していること

◎高等教育機関等、外部でデザイン

クリエータとしてのビジネスのや

り方を学べるリカレント教育機会

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3-3.中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役割

3-3-1 調査結果

(1)アンケート調査結果

1)中小製造企業・ベンチャーIT企業

①デザイン導入時の公的機関への相談や支援(地域別)

中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しする際に、ベンチャーIT企業以外での橋

渡し(ブリッジ)役をみてみた。

中小製造企業は技術課題解決の相談、共同研究の依頼と実施、依頼試験等で日常的に接

触のある公設試を相談窓口として活用している。

設問 4-1 公的機関への相談や支援(製造業・IT)

9

1

4

1

16

8

3

0

0

14

5

3

2

1

10

0 5 10 15 20

1.公設試へ相談

2.公的資金の活用

3.マッチング制度の活用

4.派遣制度の活用

5.その他

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

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○デザイン導入時の公的機関への相談や支援(業種別)

中小製造企業が日常的に技術課題解決の相談等で公設試を活用しているのとは反対に、

ベンチャーIT企業はほとんど公的機関に依存していない。

設問4-1 デザイン導入における公的機関への相談や制度の活用(製造業)

21

7

6

2

30

0 5 10 15 20 25 30 35

1.公設試へ相談

2.公的資金の活用

3.マッチング制度の活用

4.派遣制度の活用

5.その他

回答数

設問4-1 デザイン導入における公的機関への相談や制度の活用(IT)

1

0

0

0

10

0 2 4 6 8 10 12

1.公設試へ相談

2.公的資金の活用

3.マッチング制度の活用

4.派遣制度の活用

5.その他

回答数

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2)デザインクリエータ

①デザインディレクターおよびプロデューサの必要性(地域別)

すべての地域で社内にデザインディレクターおよびプロデューサが必要と考えている。

設問4 ディレクターおよびプロデューサーの必要性(デザイン)[首都圏]

必要でない 615%

社外に必要 1333%

社内に必要 2052%

社内に必要

社外に必要

必要でない

設問4 ディレクターおよびプロデューサーの必要性(デザイン)[札幌圏]

必要でない 425%

社外に必要 425%

社内に必要 850%

社内に必要

社外に必要

必要でない

設問4 ディレクターおよびプロデューサーの必要性(デザイン)[大阪圏]

必要でない 215%

社外に必要 323%

社内に必要 862%

社内に必要

社外に必要

必要でない

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51

(2)ヒアリング調査結果

中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするブリッジ役は、札幌圏ではサッポロバ

レーに代表するようにベンチャーIT企業の集積があるので、ベンチャーIT企業が担う

ケースが多いが、他地域等ではベンチャーIT企業以外に公的なデザインセンターや公設

試、デザインディレクター等がブリッジ役を担っている。

①3地域共通

・中小製造企業やベンチャーIT企業が初めてデザインを導入して新製品・新商品を開発す

る際には、デザインクリエータを橋渡しするブリッジ役が必要である。

・ブリッジ役は中小製造企業等とデザインクリエータの出会いの場や出会いの機会の設定、

直接紹介する等のブリッジ機能を担っている。

・ヒアリング先中小製造企業は、次表に示すようにブリッジ役を活用したことがある、又

は活用したことはないが公設試や公的機関のデザイン関連セミナー等を活用している。

ヒアリング先中小製造企業におけるデザインクリエータとのブリッジ役の活用

ヒアリング実施中小製造企業数

ブリッジ役活用経験有り

ブリッジ役活用経験ないが公設試・公的機関活用有り

札幌圏 5 3 2首都圏 4 4 -大阪圏 10 8 2

計 19 15 4

・中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするブリッジ役は、ベンチャーIT企業の

みならず、公的機関(デザインセンターや公設試)、印刷業、広告代理店、デザインディ

レクター、デザインプロデューサー等が担っている。

・ブリッジ機能には、中小製造企業・ベンチャーIT企業とデザインクリエータが出会え

る場の提供、出会える機会の提供、具体的に両者を紹介する機能等が存在する。

・都会ではブリッジ機能を担える必要なネットワークは必然的に構築され、異業種間のネ

ットワーク同士も結びつくが、地方では異業種間のネットワーク同士が結びつくことは難

しい。

・ブリッジ機能としての出会える場や機会には次のような様々なタイプが存在する。

○ブリッジタイプ

直接紹介

◆直接紹介・登録制・会員制

個人ベースや個別ビジネスベースでは日常的に実施されている。公的機関が実施する場

合には、データベースへの登録、具体的な紹介等がある。業界団体がメンバーを紹介する

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52

ケースもある。

公的機関が紹介するブリッジ機能を担う場合には、中小製造企業かデザインクリエータ

のいずれかについて業務内容、スキル、強み、考え方、キャラクター、経営体力等多岐に

わたって把握し、その上で適した企業を紹介することが肝要である。登録制のデータベー

スを開発している地方公共団体等は多いが、データベースのみでは限界がある。属人的で

アナログ的なブリッジ役の感性等も含めた紹介の仕組みが機能する。

出会いの場・出会いの機会の設定

◆セミナー・ワークショップ・交流会

特定のテーマのもと、ものづくりへデザインを導入したい等の意志のある企業および人

材が参画し、ディスカッションしながら互いを知り、コミュニケーションのはかり方を体

得しながら、テーマに沿った課題を解決する。

◆特定プロジェクトへの参加

一定期間継続する特定プロジェクトで、研究開発や実用化・事業化等を共同で実施する。

◆コンペへの応募と受賞

コンペへの応募のために中小製造企業等とデザインクリエータのコラボレーションによ

り作品を完成させ、グッドデザイン賞のような賞を受賞させ、広く PR していく等様々なタ

イプが存在する。

ブリッジ専門職

◆デザインディレクター・デザインプロデューサー

例)名児耶秀美氏(アッシュコンセプト代表取締役、デザインディレクター)

桐山登士樹氏(株式会社 TRUNK 代表取締役、デザインディレクター)

②札幌圏

○サッポロバレーネットワーク(地域主要産業ネットワーク)

・サッポロバレーにおけるベンチャーIT企業らのネットワークが強力であり、信頼関係

が構築されており、互いのスキルやキャラクターを理解し合っているので、ビジネスの相

談先として、ビジネスパートナーとして介在することが多く、自然とブリッジ役を担って

いる。

・ベンチャーIT企業の強力なネットワークは、1976 年北大青木教授がスタートしたイン

フォーマルなマイコン研究会にはじまり、長い年月をかけて、多数の研究会や公的プロジ

ェクト等によるネットワーキング機会等により、醸成されているものである。

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53

・サッポロバレーにおけるベンチャーIT企業は、ブリッジ役を担おうと意識的に動いて

いるわけではなく、その強力なネットワークを核とした公的プロジェクトやビジネスの機

会等が多数発生し、自ずと中小製造企業とデザインクリエータが出会える場や機会が設け

られている。クラスター政策等の各種公的プロジェクトはネットワークをより強化し、出

会える場や機会をより増やした。

・一般的に各地域で産学官連携等で実施される公的プロジェクトは、実施期間終了に伴い

構築されたネットワークも自然消滅しがちであるが、サッポロバレーにおけるベンチャー

IT企業によるネットワークは自然発生的に構築されたがゆえに、公的プロジェクトに関

係なく、継続的に存続し、自然とブリッジ役を担える。

・サッポロバレーにおけるベンチャーIT企業ネットワークは主要メンバーの存在が明確

で、そのまわりにビジネスの必然として様々な人が集まり、その中に、中小製造企業もデ

ザインクリエータも入っており、ブリッジ機会に自然と参加できている場合もある。

・地域としてのブリッジ役はボランティアベースのため、様々な企業が依頼している。ブ

リッジ役はサッポロバレーの中心人物である北海道大学情報基盤センター長山本強教授や

株式会社データクラフト代表取締役高橋昭憲氏等、クリエータ系では札幌市デジタル創造

プラザ(ICC)チーフコーディネータ久保俊哉氏等が担っている。

・地方ではブリッジ役としてキーパーソンの影響力が大きく、技術情報等を扱うメディア

が概ねないので、技術情報等わかるキーパーソンへの依頼が集中する。キーパーソンは、

域内外へ顔が見えるため、他地域からもオファーがある。

○サッポロバレーネットワーク以外

・北海道は工業集積が低く、観光(飲食含む)や食品が多いため、ブリッジ役はパッケー

ジやパンフレットの印刷業、広告代理店等のサービス業が担っている。

○公的機関

・公的なブリッジ役は北海道立工業試験場、札幌市デジタル創造プラザインタークロス・

クリエイティブ・センター(ICC)、産業支援機関である NOASTEC 財団等が担っている。

○北海道庁

ブリッジ機能のベースとなっているデザイン政策

北海道が 20 年間にわたり続けているデザイン政策として、ブリッジ機能が実施されてい

る。

◆産業デザインの新たな展開をめざして~北海道産業デザイン振興方策

1989 年 3 月に策定され、翌 1990 年に内容が追加されている。北海道における産業へデ

ザインを振興させるために D マークを実施していこうという内容で、この 20 年間の北海道

Page 58: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

54

のデザイン政策のベースとなっている。

◆北海道ものづくり産業振興指針

策定から 20 年を経過した「産業デザインの新たな展開をめざして」をリニュアールすべ

く、2006 年 12 月に策定され、デザイン振興が産業振興の一つとして含まれている。

◆北海道経済活性化ビジョン

2007 年 11 月に策定され、地場企業のデザインマネジメントについて論じてある。

ブリッジ機能となる事業

◆北海道グッドデザインコンペティション事業(1987 年度~2006 年度)&グッドデザイン

ほっかいどう選定商品(D マーク)推奨制度&PR 事業

地元経済界の業界団体等から構成される実行委員会を組織し、事務局は北海道庁産業振

興課が担い、コンペと認証制度をセットで実施してきた。家具・雑貨・インテリア・商品

パッケージ等の応募が多く、20 年間で 3000 件の応募があり、457 件が入賞した。

入賞作品を PR するため、道内ではコンペ表彰式と併せて道庁赤れんがで展示し、道外で

は東京ビッグサイトで G マークのプレゼン会場のブースで展示するなどしていた。

◆3 回連続の「デザインマネジメントセミナー」

北海道立工業試験場デザイン開発科の協力を得ながら、経営の見直しとものづくりの革

新・ブランド強化のために中小製造企業、デザインクリエータ、支援機関等を対象に実施

している。

○札幌市

札幌市は長きにわたり、IT産業を振興し、サッポロバレーの発展をサポートしてきた。

2001 年には札幌市デジタル産業創造プラザ(ICC)を開設し、入居クリエータ等の育成を

スタートさせた。

2004 年度から札幌スタイル・デザインコンペティションを隔年で開催し、ブランド推進

ワークショップ

参加者が抱えるデザイン課題を

題材にワークシートを用いて考察

講師の講義

座学としてのデザインマネジメ

ント基礎的知識の獲得

達成目標:より深い理解と実践的な知識の定着

Page 59: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

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をはかっている。

クリエイティブ産業を誘致するならば、市として統一したものが必要との考えから

2006 年 3 月札幌市は創造都市を目指すことを内外へ表明し、Creative Conversations 2006

で札幌市長が”sapporo ideas city 宣言”を発表した。

2006 年 4 月にはデザイン学部を有する札幌市立大学が開学し、2006 年 9 月にはデジタル

コンテンツビジネスの本格的な産業化を目途に、札幌初の札幌国際短編映画祭を開催し、

クリエータを含むデザインクリエータとクライアントの出会いの場や機会を作り、ICC を

中心にブリッジ機能を果たしている。

札幌ブランド構築・推進事業

◆札幌スタイル・デザインコンペティション

札幌スタイルは 2004 年度から隔年開催で「Design For Life 北国の生活をデザインする」

をテーマにデザインの公募を行い、企業とのマッチングや事業化支援などを行い、製品化

事業を実施するものである。

◆札幌スタイル認証事業&札幌スタイルデザインギャラリーの運営他

既に商品化している製品の中から「札幌スタイル」として適した製品を発掘し、認証し、

デザインギャラリー”+8111”で発信していく。

http://web.city.sapporo.jp/sapporo-style/index.html

コンテンツ産業化事業

札幌市では札幌市デジタル産業創造プラザ(ICC)でクリエータを育成し、グローバルにネ

ットワークの場や機会を提供し、札幌国際短編映画祭の開催、フィルムコミッション等を

支援している。札幌市として、複数の個別事業をまとめて「見える化」し、コンテンツ産

業・映像産業等のクリエイティブな産業に理解があり、振興していることを PR している。

◆札幌市デジタル産業創造プラザ(ICC)

2001 年に開設し、財団法人さっぽろ産業振興財団が管理運営している。

様々な業種のクリエータ、そして彼らをサポートするビジネスが集まるハイブリッド施

設で、インタークロス・クリエイティブセンターは「異業の出会いにより、新しいビジネ

スを創生する場」を意味し、その異業を貫く二本の横軸、それが「デザイン」と「IT」

で、チーフコーディネータ久保俊哉氏が核となってプロモーション・マーケティング支援、

イベント、セミナー、ワークショップの開催などを実施している。

・クリエイティブ・ワークショップ

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コンテンツ分野の著作権ビジネスに重点を置くクリエイティブユニット tomato による

ワークショップは、クリエイティブな経験ができると好評で、定着してきている。tomato

は英国政府のクリエイティブ業界へのコンサルタントも担っている。

・CROSSING(クリエイティブ・ビジネス支援サイト)

北海道経済産業局の「広域的新事業支援ネットワーク拠点重点強化事業」の採択を財団

法人さっぽろ産業振興財団が受けて事業主体となり、デザインとビジネス各々のクラスタ

ー・マネジャー2 名が事業統括者として運営している。

ポータルサイト CROSSING があり、札幌市内のクリエータが無料で登録できるクリエータ

ーズデータベースがあり、製造業等からの依頼案件ごとに財団職員がデータベースから抽

出し、1対1やコンペ方式等、クライアントの意向次第の方法でマッチングしている。

◆札幌国際短編映画祭

デジタルコンテンツビジネスの産業化推進のために、短編映画の映画祭を札幌で開催し、

短編映画を上映すると共に、短編映画の取引市場を創設した。短編映画の取引市場は国内

で他に類をみないものであり、クリエータらのスキルをグローバルに発信していけるチャ

ンスである。

◆フィルムコミッション

映画のロケーションマネジメント企業の札幌への誘致に成功し、今後の映像産業振興と

ビジネスチャンスへの期待が大きい。

③首都圏

○産業界

・首都圏では必要なネットワークは必然的に構築され、異業種間のネットワーク同士も結

びつき、ブリッジ機能が自ずと働く。地方では異業種間のネットワーク同士が結びつくこ

とは難しい。

・東京ガスリビングセンターOZONE は、展覧会時のパーティというブリッジの場や機会の

提供、新人デザインクリエータの関係方面への紹介、地域の産業支援機関等の要請による

地方中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ等、新製品・新商品開発やデザインク

リエータの成長等に寄与している。

・100%Design のような世界からデザインクリエータ、バイヤー、メーカー、プレス等が参

加するグローバルな展示会等のイベントが、出会いの場、出会いの機会を提供し、ブリッ

ジ役を果たしている。

・若干名であるがデザインディレクターとしてブリッジ役等を生業としている人材が存在

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しており、デザインクリエータからの信頼が厚く、デザインディレクターを核としたデザ

インクリエータのネットワークが構築されている。

◆デザインディレクター・デザインプロデューサー

・名児耶秀美氏(アッシュコンセプト代表取締役、デザインディレクター)

若手デザイナーからの持ち込み案件をデザインディレクターである名児耶氏のネットワ

ーク等を活用して試作し、テストマーケティングを実施し、ユーザーのニーズを反映して

商品化する。デザイナーとアッシュコンセプトの共同商品開発に際して、名児耶氏がデザ

インディレクターを担っている。

デザインディレクターとして、デザイナーのアイディアを中小製造企業等の技術力と結

びつけ、商品化を生み出しており、出会いの場や機会を超越し、ブリッジ役として商品開

発を行っている。

・桐山登士樹氏(株式会社 TRUNK 代表取締役、デザインディレクター)

光学メーカーのエンジニア、広告マーケティングの専門誌、デザイントレンド誌の編集

者を経て、87年デザインの企画・制作会社、株式会社TRUNKを設立し、1993年から非常勤で

(財)富山技術開発財団の富山県インダストリアルデザインセンター企画部長などを経て、

現在は富山県総合デザインセンターデザインディレクターとして、地元中小製造企業と域

外のデザイナーのマッチング等を手がけ、海外へも富山の製品をPRしている。

リッチェル/デサスの開発ケースでは、利幅の取れない GMS 向けの商品ではなく、富裕

層向けの商品開発をミラノ在住で世界的なデザイナー蓮池槇郎氏を迎えて行い、硬質プラ

スチックを使ったデサスブランドの一弾として「CONO」を発表。

会津若松漆器のプロジェクトにデザイナーの塚本カナエ氏と共に参画し、ハイエンド商

品「BITOWA classic」とアッパーミドル向け商品「BITOWA modern」に分けたブランド展開

をプロデュース。

◆プラットフォームの提供

・エレファントデザイン株式会社

クライアント(将来の消費者)とメーカーとデザインクリエータをつなぐネットコミュ

ニティ「空想生活」を立ち上げている。登録しているデザインクリエータは約 2000 名、閲

覧ビジターは月に 12 万人。

デザインの提案からメーカー募集(登録されているメーカーもあり)、製品開発、デザ

インのブラッシュアップまで、すべてネット上で開示する。まさに、出会いの場というプ

ラットフォームをネット上で提供している。その都度ユーザーの意見を反映させながら、

商品化につなげる。ユーザーから提案されたアイディアに賛成票が 1000 票集まると、具体

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的な製品化を考える。1000 票集まらなくてもメーカーのほうで興味があれば、製品開発に

つなげるケースもある。

中小製造企業が登録する場合は、年間 60 万円で契約。デザインを募集する。すでにネッ

ト上で発案されているものに関しては経費不要。

○公的機関

・中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータいずれもプレイヤーが多数存

在し、市場原理でビジネスが成立しているので、公的機関は各種マッチングのしくみなど

を構築しているが、ブリッジ役を果たすことは他地域に比して難しい。

○東京都

東京都デザイン導入支援事業他

東京都は都内に立地する中小製造企業へデザイン活用支援を実施している。デザイン普

及啓発セミナー、デザイナー活用ガイドの作成、東京デザインマーケット、デザイナーデ

ータベース、東京ネクストデザインプロジェクト、スーパーデザイナー養成事業(実施場

所:産業技術大学院大学オープンインスティテュート)、地方独立行政法人東京都立産業

技術研究センターデザインセンターの運営等を行い、ブリッジ機能を様々なところで担っ

ている。東京都中小企業振興公社が実施主体又は協力している。

http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/shoko/design.html

◆東京デザインマーケット

・東京都は「東京デザインマーケット」を東京ビッグサイトにて、多くの中小企業が参加

する「産業交流展」との同時開催イベントとして開催している。デザインクリエータが試

作品等を展示して、製造してくれる製造企業を探すマッチングの場であり、これから売り

出したいデザインクリエータにとっては絶好の機会である。ただし、これまでの成約し、

製品化したのは 2 件のみ。

◆東京都中小企業振興公社

・東京デザイナー情報検索サイトを管理運営している。登録しているデザイナーを検索で

きるが、検索結果だけでは成約は難しい。

・デザイン支援事業として「ものづくりデザイン道場」を連続複数回実施している。中小

製造企業が参加し、製品構想計画・市場調査・製品開発・事業戦略等について、講師であ

るデザインクリエータがアドバイスを行う。アドバイスを受けた講師にその後、社内のデ

ザイン顧問を依頼しているケースもある。

・デザインクリエータと知り合う機会がほとんどない中小製造企業にとっては、「ものづ

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くりデザイン道場」のようにデザイナーと Face to face で接することができ、どのような

ことをアドバイスしてくれるのか理解できる機会が必要である。

◆地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターデザインセンター

・ものづくりにおける商品企画・マーケティングのセミナーを開催している。

・意匠(プロダクトデザイン、グラフィックデザイン)、製品設計、解析、高速試作まで

を支援する施設として「デザインセンター」を開設し、デザイン業務や技術指導を実施し

ている。ただし、中小製造企業とデザインクリエータの直接紹介は実施していない。

◆板橋区

・デザインのまちというコンセプトを出そうと、中小企業経営者向けの「いたばし経営デ

ザインフォーラム」を開催している。

◆墨田区

・中小製造企業がデザインについて勉強する必要があるとの考えで、1990 年代初めにデザ

イン関連ワークショップを開催した。

・ワークショップの集大成として、墨田区ではデザイン導入による商品化支援として、中

小製造企業が希望する商品開発案件で採択されると 2/3 を区が助成し、GK デザインのコン

サルティングを受けることができ、マーケティング手法等習得できる機会を設けていた。

○神奈川県

◆神奈川県産業技術センター

県内の中小企業を「お客様」と位置づけ、2003 年度~2005 年度「ものづくり技術支援強

化 3 年・3 倍増活動」として、技術相談件数、依頼試験収入、受託研究収入の 3 倍増を目

指し、達成した。2006 年度~2008 年度は、既に目標達成した 3・3 活動の技術支援の量を

維持しながら、お客様への技術支援の質的レベルの向上を図る QL2 活動を展開中である。

デザイン・木材加工・塗装技術等の技術支援やデザイン研究、デザインセミナー等ブラ

ンチである工芸技術所が担っている。

◆財団法人神奈川中小企業センター

中小企業のデザイン改善、デザイン情報の提供、専門職員・専門相談員(グラフィック

デザイン・インダストリアルデザイン)が問題点の検討や改善の方向についてアドバイス

するデザイン相談事業(無料)と解決策を具体的に提案するデザインアドバイザーの派遣

事業(有料)がある。

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④大阪圏

○大阪府

◆大阪府産業デザインセンター http://www.pref.osaka.jp/oidc/index.html

中小製造企業とデザインクリエータのマッチング制度・仕組みは一般相談と D(Design)-

パイロット事業がある。デザイン料金の問題、デザイン契約の問題、開発体制やデザイン

マネジメントの問題、デザインへの考え方の違い、デザインの投資効果が事前に分からな

い等の課題があるが、D(Design)-パイロット事業等を実施することで、解決策を講じてい

る。

○大阪市

◆財団法人大阪デザインセンター http://www.osakadc.jp/index.html

・国内初のデザインセンター

・デザイン振興事業

大阪発の産業デザイン振興をめざして、2000 年にオープンしたデザインビジネスプロモ

ーションセンターの運営、人材育成、無料相談やデザイン事務所の紹介、デザイン情報の

収集と提供、展示スペースの貸出し、そしてグッドデザイン商品の選定まで、多方面に事

業を展開している。

・「デザインコンサルティング・システム」のマッチング事業

1987 年から実施しており、デザインクリエータが会費年額 1 万円で案件のマッチングに

参加できる「コンサルティングシステム登録会員」制度をとっており、中小製造企業等の

依頼企業の相談内容と要望、希望条件などを十分理解した上で、データベースや作品ファ

イルから該当するデザイン事務所(原則 3 社)を抽出し、コンペを行う。

・「デザインコンサルティング・システム」のマッチング事業の強み

財団法人大阪デザインセンターのコーディネータが、登録しているデザインクリエータ

のフィロソフィー・スキル・特色・強み・キャラクター等をある程度把握した上で、中小

製造企業等からの依頼に対して適した 3 社を紹介し、コンペをして 1 社を決める仕組みで、

新商品開発に至るケースが多く、一定の成果をあげている。信用度もあり好評で、財団法

人大阪デザインセンターを核としたデザインクリエータのネットワークが構築されてい

る。

・デザイン人材の育成

高度成長時代に中小製造企業がインハウスデザイナーを導入したい場合に相談し、デザ

イナーの派遣によるインハウスデザイナーの育成を行った企業もある。

◆大阪産業創造館 http://www.sansokan.jp/mono/#04

・大阪産業創造館では財団法人大阪デザインセンターとの連携はなかったが、2005 年度か

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ら財団法人大阪デザインセンターのコーディネータ経験ありのデザイン担当職員が、地の

利が良く、中小企業の集客が高い大阪産創館へ出向し、大阪産創館でもものづくりとデザ

インのマッチングの仕組みを構築し、新商品が開発に至っている。

・大阪産業創造館では、各プロジェクトチームに広報専門スタッフが配置されており、地

下鉄の駅等に 70000 部月刊で発行しているフリーペーパーの広報誌「b-platz press」や、

各イベントのパンフレットなどを確認している。

・各種相談会やマッチング展やセミナー等を開催している(ものづくりデザイン個別相談

会、商品パッケージ・販促ツールデザイン個別相談会、デザインビジネスマッチング展、

ものづくりデザイン開発事例セミナー、デザイン導入支援セミナー等)。

・新製品デザイン創出コンペ

デザインを導入して、新たな製品開発に取り組む意欲のある中小製造企業を対象とした

デザインクリエータとのマッチングコンペで、中小製造企業がコンペ実施費用として参加

費 30 万円を支払う。コンペに参加し選外でも有料なため、デザインクリエータには好評。

◆扇町インキュベーションプラザ(Mebic)http://www.mebic.com/concept/

Mebic(Information Media Business Incubator for Collaboration)は 2003 年 5 月に大

阪市の創業支援施設として開設した。開設当初から所長兼インキュベーションマネジャー

の堂野智史氏を中心に、クリエイティブ分野(ソフトウェア・情報処理・インターネット

関連などのソフト系IT企業、映像・広告・デザイン関連企業など)が対象となっている

入居企業への創業支援と、周辺地域に多数集積しているクリエイティブ分野中心のサービ

ス業の活性化促進の環境整備等に取り組んでいる。

現在では、これらの界隈に多くのマスコミ、広告代理店、通販会社等が立地し、それに

伴い関連するソフト系IT、映像、デザイン、広告、企画、出版、印刷等の企業が 2,000

社以上集積しており、この街に集まる「クリエイター」の数は 2 万人とも言われている。

しかし、バブル崩壊による景気低迷、デジタル化等の技術革新と情報通信の進歩、本社

機能の東京移転等の影響で、クリエイターらを取り巻くビジネス環境は厳しいものとなっ

ている。このような状況を打開するために、この街で活躍するクリエイターたちが互いに

知り合い、顔の見える関係を築くための新しいコミュニティづくりを行うために、Mebic

周辺の天満、扇町、中崎町、南森町界隈の産業集積の特徴を活かした企業の活性化と、ブ

ランディングを目途に「扇町クリエイティブクラスター」の創生に向けて Mebic 堂野氏ら

が仕掛け人となって取り組んでいる。

◆クリエイション・コア東大阪

クリエイション・コア東大阪は、2003 年技術力の高いものづくり企業が集積している大

阪東部地域において、中小ものづくり企業のイノベーションの促進を目的として、東大阪

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市荒本北に整備された、ものづくりに関する総合的な支援施設である。「常設展示場」 「ワ

ンストップサービス」 「国際情報受発信機能」 「インキュベート施設」の 4 つの機能に

加え、産学官連携を核とした新事業創出センターとしての機能も強化された。

・産学連携によるデザイン戦略の推進(入居大学以外の大学)

デザイン関連学科との連携として神戸芸術工科大学のセミナー、社会人文系の大阪芸術

大学の学生との共同展示会などをこれまでに実施してきた。

大阪芸術大学とは、学生に毎年テーマを設定した(文房具、ロボット等)コンペを行い、

クリエイション・コア東大阪入居企業で構成している異技能交流グループ VAW を中心に、

関連機関の協力を得て、コンペ優秀作品を改良・試作し、事業化を図り、将来的には VAW

ブランドの構築が期待されている。

・クリエイション・コア東大阪での産学連携としてのデザイン関連の取り組み(研究会、

セミナー等)は、チーフコーディネータ(産学連携担当)成瀬俊彦氏のしくみ作りの上手

さや研究会メイキングの上手さに加えて、長きに渡る東大阪商工会議所(元常務理事)時

代に地元中小製造企業をよく知り、信頼関係のあるネットワークを構築していることが強

みとなっている。

◆VAW (Variant Art Workshop)

VAW はクリエイション・コア東大阪入居企業で構成している異技能交流グループで、会

長を良元文香氏(有限会社ドゥー企画開発室マネージャー)が努めている。

企業間のものづくりにおけるコラボレーションがきっかけで、中小製造企業の持つ卓越

した技術を結集して、新製品開発や情報交換の場とすることを目的にスタートした。

これまで中小製造企業のものづくりは技術・技能に主眼を置き、デザインへの認識の低

さが問題との考えから、デザインのプロを招聘してセミナーを開催し、メンバー間でデザ

インの勉強を進め、「売れる商品にデザインは不可欠な要素。これまでの技術・技能重視

のものづくりに、デザインの空気を取り入れていこう」という気運を高めていった。

○業界団体

◆協同組合関西デザインオフィスユニオン(KDOU) http://www.kdou.or.jp/kdou.html

協同組合関西デザインオフィスユニオン(KDOU)は 1975 年に我が国初の協同組合(協同

組合大阪デザインオフィスユニオン)として創設し、共同受注システムを行っている。KDOU

組合員には 80 社ものデザイン事業所があり、幅広い専門分野であるため、クライアントか

らの依頼に適切なデザイン会社を紹介可能。

⑤その他

本調査研究は地域特性を踏まえて実施しているが、工業集積が高いが、工業デザイナー

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があまり存在しない地域でのデザイン振興について、富山県のデザイン振興と富山県総合

デザインセンターの取り組みについて、ブリッジ機能等についてみてみる。

○富山県総合デザインセンター http://www.toyamadesign.jp/index.html

設立経緯

富山県は豊富な水と安価な電力により、従来から金属・機械・繊維等の工業が発展して

きた。1983 年「とやまテクノポリス開発基本構想」策定にあたり、ものづくりの高度化に

何が必要かを検討し、当時の中沖富山県知事がデザインを県民の元気の糧にするとの思い

などからデザインが必要ということになり、デザインセンターの設置が提唱された。

IDC 設立から富山県総合デザインセンター開設まで

1988 年財団法人富山技術開発財団(現 新世紀産業機構)に、デザインコーディネーシ

ョン機関としてデザイン啓発を目途に富山インダストリアルデザインセンター(IDC)を設

置し、所長にデザイナーの平野拓夫氏を招聘した。

1993 年には SONY のウォークマンの開発で著名なデザイナー黒木靖夫氏を所長として迎

え、イタリアのミラノとのデザイン交流、デザインマネジメントセミナーの開催、全国初

の商品化を目的とした富山プロダクトコンペティションの開催等を開始した。黒木氏は現

在のデザインディレクター桐山登士樹氏(株式会社 TRUNK 代表取締役)を富山へ紹介した。

デザイナーの資質向上、デザイン開発型企業の育成、商品企画からデザイン開発までの

総合的な支援が必要との考えから、1994 年「とやまデザインセンター基本構想」策定によ

り、富山県総合デザインセンターが 1999 年 7 月に開設された。1999 年公設試のデザイン

部門が富山県総合デザインセンターに統合され、それまでは IDC へ出向していた研究員も

異動した。黒木氏逝去に伴い、2008 年 4 月 1 日大矢寿雄氏(元 NEC デザイン代表取締役社

長、現顧問)が所長に就任予定である。

富山県総合デザインセンターのデザイン振興事業

◆デザイン開発支援事業

・デザイン全般の相談、富山プロダクトデザインコンペティションの企画・運営、デザイ

ナーと企業とのマッチング、商品開発研究会、モックアップ制作支援→モックアップ用機

器は導入、デザイン工房・モックアップ工房の提供等

◆市場開拓・流通支援事業

・富山プロダクツの選定、展示会の開催

◆デザイン人材育成事業

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・3次元 CAD/CAM 研修→これらの機器は導入、デザイン講習会

◆デザイン交流支援事業

・デザインウェーブイン富山

◆デザイン情報・発信事業

機関誌「offer」の発行 他

富山プロダクトデザインコンペティションを核として、ワークショップ、展示会、デザ

インセミナー、デザインツアーの総称がデザインウェーブである。これまでのデザインウ

ェーブ参加デザイナーは 2700 人で、そのうち 2000 人のデザイナーとネットワークを形成

し、桐山氏がその継続を担っている。

民間出身黒木所長やデザインディレクターの桐山氏のビジネス的な視点、企業とデザイ

ナーをマッチングする接着剤の機能、全国の有名なデザイナーの紹介、海外のトレンドの

紹介等、民間人を所長やデザインディレクターに招聘した効果は高く、様々な商品が開発

され、富山グランドとして全国へ発信されている。

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3-3-2 中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役割

(1)橋渡しするベンチャーIT企業等の役割

中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするブリッジ役は、札幌圏ではサッポロバ

レーに代表するようにベンチャーIT企業の集積があるので、ベンチャーIT企業が担う

ケースが多いが、他地域におけるブリッジ役はベンチャーIT企業以外に公的なデザイン

センターや公設試、デザインディレクター等が担っている。

(2)地域別の橋渡し(ブリッジ)の役割

①3地域共通

3地域共通の中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等

の役割

□ブリッジ役が必要

ベンチャーIT企業に限定されないが、中小製造企業とデザインクリエータの両者を

紹介等するブリッジ役が必要

□ベンチャーIT企業以外のブリッジ役

ブリッジ役としては公的機関(デザインセンターや公設試)、印刷業、広告代理店、

デザインディレクター、デザインプロデューサー、地域主要産業ネットワーク

□ブリッジ機能

中小製造企業とデザインクリエータを直接紹介

出会いの場の設定

出会いの機会の設定等

②札幌圏

札幌圏の中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役

札幌圏を象徴する各種ブリッジ役

□ブリッジ役:サッポロバレーのベンチャーIT企業ネットワーク

サッポロバレーベンチャーIT企業のネットワークは強力で信頼関係が構築

→ビジネスの相談先、ビジネスパートナー、ブリッジ役

□ブリッジ役:サッポロバレーの中心人物

地方ではキーパーソンの影響力大

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札幌圏の中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役

□ブリッジ役:IT企業、印刷業、広告代理店、一部のデザイン事務所等

北海道は工業集積が低く、一次産業、観光、食品等が活発

→IT企業、印刷業、広告代理店、一部のデザイン事務所等がブリッジ役

□ブリッジ役:公的機関

北海道立工業試験場、札幌市デジタル創造プラザインタークロス・クリエイティブ・

センター(ICC)、NOASTEC 財団

③首都圏

首都圏の中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役

首都圏を象徴する各種ブリッジ役

□ブリッジ役:民間 東京ガスリビングセンターOZONE

展覧会時のパーティというブリッジの場や機会の提供

新人デザインクリエータを関係方面へ紹介

□ブリッジ役:民間 デザインイベント(100%Design 他)

100%Design のような世界からデザインクリエータ、バイヤー、メーカー、プレス等が

参加するグローバルなデザインイベント

→出会いの場、出会いの機会を提供

□ブリッジ役:民間 デザインディレクター

デザインディレクターが若干名存在

→デザインディレクションしながら新製品・新商品開発等へ貢献

■成熟市場におけるブリッジ役公的機関の難しさ

中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータが多数存在し、市場が成熟

→公的機関は各種ブリッジ機能を構築しているが、他地域に比してブリッジ役は難

□ブリッジ役:公的機関 東京都・東京都中小企業振興公社

「東京デザインマーケット」の開催

→デザインクリエータが試作品等を展示し、製造してくれる企業を探すしくみ

→多くの中小製造企業が参加する「産業交流展」との同時開催イベント

□ブリッジ役:公的機関 東京都中小企業振興公社

東京都中小企業振興公社が「ものづくりデザイン道場」開催

→参加の中小製造企業と講師であるデザインクリエータの出会いの場、複数回開催に

よる互いの理解の場

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④大阪圏

大阪圏の中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役

□ブリッジ役:公的機関 大阪府産業デザインセンター

D(Design)-パイロット事業

→在阪のデザイン団体等の協力を得て、府内中小企業がデザイン事業所とマッチング

をして、適したところとデザイン導入・活用を促し、商品提案力の強化や魅力ある

優れた商品の創出を実現する取り組みである。30 万円定額制でのデザイン開発。

□ブリッジ役:公的機関 財団法人大阪デザインセンター(国内初で 50 年続いている)

「デザインコンサルティング・システム」のマッチング事業

→1987 年から実施しており、デザインクリエータが会費年額 1 万円で案件のマッチン

グに参加できる制度。中小製造企業等の依頼企業の相談内容と要望、希望条件など

を十分理解した上で、データベースや作品ファイルから該当するデザイン事務所(原

則 3 社)を抽出し、コンペを行う。

→このマッチング事業の強みは財団法人大阪デザインセンターのコーディネータが、

登録しているデザインクリエータのフィロソフィー・スキル・特色・強み・キャラ

クター等をある程度把握した上で、中小製造企業等からの依頼に対して適した 3 社

を紹介し、コンペをして 1 社を決める仕組みで、新商品開発に至るケースが多く、

一定の成果をあげている。

□ブリッジ役:公的機関 大阪産業創造館

新製品デザイン創出コンペ

→デザインを導入して、新たな製品開発に取り組む意欲のある中小製造企業を対象と

したデザインクリエータとのマッチングコンペで、中小製造企業がコンペ実施費用

として参加費 30 万円を支払う。コンペに参加し選外でも有料なため、デザインクリ

エータには好評。

→登録している工業デザイナーのスキルや考え方等をある程度把握した上で選出

□ブリッジ役:公的機関 扇町インキュベーションプラザ(Mebic)

入居企業への創業支援

→クリエイティブ分野(ソフトウェア・情報処理・インターネット関連などのソフト

系 IT 企業、映像・広告・デザイン関連企業など)が対象となっている入居企業への

創業支援の一環としてのブリッジ機能の提供

扇町クリエイティブクラスターの創生(Mebic 周辺界隈のクリエイティブ分野サービ

ス業の活性化促進の環境整備)

→クリエイティブクラスターミーティング他イベント多数

Page 72: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

68

大阪圏の中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするベンチャーIT企業等の役

□ブリッジ役:公的機関 クリエイション・コア東大阪

産学連携によるデザイン戦略の推進

→入居企業で構成する異技能交流グループ VAW を中心に、大阪芸術大学学生コンペ

優秀作品を改良・試作し、事業化を図る

大阪府デザイン・オープン・カレッジ等各種関連セミナーの開催

→中小製造企業・デザインクリエータ・産学関係者等クリエイション・コア東大阪の

集客力は高く、セミナー等が出合いの場、出合いの機会となっている

□ブリッジ役:異技能交流グループ VAW

クリエイション・コア東大阪入居企業等のメンバー間での勉強のためのセミナー

→売れる商品にデザインが不可欠であるとの気運高まる

大阪芸術大学学生コンペから事業化

→VAW が中心にコンペ優秀作品を改良・試作し、事業化

□ブリッジ役:業界団体 協同組合関西デザインオフィスユニオン(KDOU)

1975 年に我が国初の協同組合として創設

共同受注システム

→KDOU 組合員には 80 社ものデザイン事業所があり、幅広い専門分野であるため、ク

ライアントからの依頼に適切なデザイン会社を紹介することが可能である

Page 73: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

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3-4 中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ(三者)による新技術・

新製品開発を行う際の公的機関・大学・研究機関・他地域企業等との連携状況

3-4-1 調査結果

(1)アンケート調査結果

1)中小製造企業・ベンチャーIT企業

○問題が生じたときに相談する先(地域別)

中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新技術・新製品開

発で課題が生じた時の相談先は、圧倒的に自社内で自力で解決が多く、自己解決を目指し

ている。全体としては中小製造企業やIT企業は企業間連携や水平連携が弱いと見受けら

れる。大阪圏が他の 2 地域に比してやや自社内解決が低く、共同開発中の取引先・親企業・

グループ企業と共同開発中の系列関係のない他社・外部デザイナーへ相談している。

設問3-7 問題が生じたときに相談する先(製造業・IT)

0 5 10 15 20 25

1.自社内で自力で解決

2.共同開発中の系列関係のない他社・外部デザイナー

3.共同開発中の取引先・親企業・グループ企業

4.共同開発中の大学等高等教育機関

5.共同開発中の旧国立研究所

6.共同開発中の公設試

7.共同開発中の産業支援機関

8.共同開発中の金融・VC

9.共同開発中の業界団体

10.共同開発中でない系列関係のない他社・外部デザイナー

11.共同開発中でない取引先・親企業・グループ企業

12.共同開発中でない大学等高等教育機関

13.共同開発中でない旧国立研究所

14.共同開発中でない公設試

15.共同開発中でない産業支援機関

16.共同開発中でない金融・VC

17.共同開発中でない業界団体

回答数(複数回答)

大阪圏

札幌圏

首都圏

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○問題が生じたときに相談する先(業種別)

中小製造企業、ベンチャーIT企業ともに自社内で自力で解決の自己解決がほとんどで

ある。予想外に外部連携が進んでいないことを示している。中小製造企業では、2 位が共

同開発中でない公設試と共同開発中の取引先・親企業・グループ企業が同数である。一方、

ベンチャーIT企業は 2 位が共同開発中の系列関係のない他社・外部デザイナーとなって

いる。

設問3-7 開発時の相談先(製造業)

0 10 20 30 40 50

1.自社内で自力で解決

2.共同開発中の系列関係のない他社・外部デザイナー

3.共同開発中の取引先・親企業・グループ企業

4.共同開発中の大学等高等教育機関

5.共同開発中の旧国立研究所

6.共同開発中の公設試

7.共同開発中の産業支援機関

8.共同開発中の金融・VC

9.共同開発中の業界団体

10.共同開発中でない系列関係のない他社・外部デザイナー

11.共同開発中でない取引先・親企業・グループ企業

12.共同開発中でない大学等高等教育機関

13.共同開発中でない旧国立研究所

14.共同開発中でない公設試

15.共同開発中でない産業支援機関

16.共同開発中でない金融・VC

17.共同開発中でない業界団体

回答数

設問3-7 開発時の相談先(IT)

0 2 4 6 8 10 12 14 16

1.自社内で自力で解決

2.共同開発中の系列関係のない他社・外部デザイナー

3.共同開発中の取引先・親企業・グループ企業

4.共同開発中の大学等高等教育機関

5.共同開発中の旧国立研究所

6.共同開発中の公設試

7.共同開発中の産業支援機関

8.共同開発中の金融・VC

9.共同開発中の業界団体

10.共同開発中でない系列関係のない他社・外部デザイナー

11.共同開発中でない取引先・親企業・グループ企業

12.共同開発中でない大学等高等教育機関

13.共同開発中でない旧国立研究所

14.共同開発中でない公設試

15.共同開発中でない産業支援機関

16.共同開発中でない金融・VC

17.共同開発中でない業界団体

回答数

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2)デザインクリエータ

①政府や地方公共団体との連携

デザイン分野で補助金や助成金を受けた企業は首都圏に集中していることがわかる。セ

ミナー等への出席はどの地域も一定の回答があり、一定比率で利用されている。

設問2-4 政府や地方公共団体との連携があるか(デザイン)[首都圏]

3.セミナー等へ出席したことがある

28%

4.困ったことがあれば相談にいっている

10%

5.相談も連携したこともまったく無い

19%

1.補助金・助成金を得た経験がある

10%

2.補助金・助成金を受けたことはない

33%

1.補助金・助成金を得た経験がある

2.補助金・助成金を受けたことはない

3.セミナー等へ出席したことがある

4.困ったことがあれば相談にいっている

5.相談も連携したこともまったく無い

設問2-4 政府や地方公共団体との連携があるか(デザイン)[札幌圏]

3.セミナー等へ出席したことがある

30%

4.困ったことがあれば相談にいっている

11%

5.相談も連携したこともまったく無い

20%

1.補助金・助成金を得た経験がある

3%

2.補助金・助成金を受けたことはない

36%

1.補助金・助成金を得た経験がある

2.補助金・助成金を受けたことはない

3.セミナー等へ出席したことがある

4.困ったことがあれば相談にいっている

5.相談も連携したこともまったく無い

設問2-4 政府や地方公共団体との連携があるか[大阪圏]

3.セミナー等へ出席したこと

がある

30%

4.困ったことがあれば相談に

いっている

11%

5.相談も連携したこともまった

く無い

20%

1.補助金・助成金を得た経験

がある

2%

2.補助金・助成金を受けたこ

とはない

37%

1.補助金・助成金を得た経験がある

2.補助金・助成金を受けたことはない

3.セミナー等へ出席したことがある

4.困ったことがあれば相談にいっている

5.相談も連携したこともまったく無い

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72

(2)ヒアリング調査結果

中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新技術・新製品開

発を行う際の公的機関等との連携状況にはブリッジ役やブリッジ機能が含まれることが多

く、3-3 で分析した中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しするブリッジ役、ブリッ

ジ機能とかなりオーバーラップすることが判明した。したがって、本項目では 3-3 と重複

しない内容についてのみ掲載する。

①3地域共通

・中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新製品・新商品開

発を行う際にはブリッジ役のみならず、啓発活動等で公的機関・大学・研究機関・他地域

企業等が連携している。

②札幌圏

・中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータと公的機関である北海道立工

業試験場、ICC、NOASTE 財団等が連携する際には、連携の一部としてブリッジ機能が担わ

れることが多い。

・デザイン学部を有する札幌市立大学が開学し、デザインクリエータを育成するとともに、

地元企業へ排出し、卒後のリカレント教育を求める声がある。

○札幌市立大学 http://www.scu.ac.jp/

・札幌市立大学は 2006 年公立大学法人として開学した。デザイン学部と看護学部から成る。

理事長・学長は感性工学が専門の原田昭氏。

・連携としては、まずデザインクリエータの育成機関であり、卒業生が出始めれば、地元

企業へのデザインクリエータ供給機関となる。

・文部科学省知的クラスター創成事業「札幌ITカロッツェリア」-「IT要素技術と工

業デザイン手法の融合に係る実証・評価研究」代表をデザイン学部城間祥之教授が担い、

過去 5 年間にこのプロジェクトで培った試作品製作技術、3D CAD/CAM 技術を進化・発展さ

せると共に、その成果を教育に反映させようとしている。

・札幌市立大学では、北海道立工業試験場が保有している光造形機器とは異なる試作関連

機器として ABS 樹脂の積層造形機を導入している。分担所有、相互利用等からの連携を想

定している。

③首都圏

・他地域も含めて企業間同士の連携は、市場が成熟しているため日々ビジネスとして行わ

れており、企業が自助努力で適時適切にそれらの機関を活用している。

Page 77: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

73

・公的機関は補助金・助成金のためや、セミナーへの出席等として利用されている。

・他地域企業との連携として、前掲しているが東京ガスリビングセンターOZONE では地域

の産業支援機関等から持ち込まれるデザインをものづくりに導入したいという具体的案件

について、適した若手デザインクリエータへ紹介し、若手デザインクリエータが他地域中

小製造企業等と連携して新製品・新商品開発に成功しているケースもある。

・他地域企業との連携を行っている EMS-JP グループは、高い開発技術力を有した企業が集

結した電子機器開発企業のコンソーシアムで、グループ企業間のネットワークと、開発・

試作段階からクライアントとの共同開発が可能な提案力で、「Win-Win」を実現する新しい

ビジネスモデルを展開している。北海道に様々なシーズがあることに着目し、札幌にある

公的機関へのアプローチ等からサッポロバレーの企業と連携し、具体的なビジネスがスタ

ートしている。

・東京都が産業技術大学院大学オープンインスティテュートでスーパーデザイナー養成講

座を開校している。

④大阪圏

・公的機関として財団法人大阪デザインセンター、大阪産創館等、大阪府産業デザインセ

ンター、大阪府立産業技術総合研究所、大阪市立工業研究所、扇町インキュベーションプ

ラザ(Mebic)、クリエイション・コア東大阪や各商工会議所等が、中小製造企業等やデザイ

ンクリエータと連携し、公的機関同士も適時適切に連携し、ブリッジ役や出会いの機会の

設定、各種セミナー等を通じて連携し、中小製造企業とデザインクリエータの新製品・新

商品開発の一翼を担っている。

・東大阪市産業技術支援センターは、企業へ開放利用、技術相談・指導、モノづくり試作

工房、研究会やセミナーの開催等を行い、デザインについての相談の際には大阪府産業デ

ザインセンター等を紹介している。

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74

3-4-2 中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ(三者)による新技術・

新製品開発を行う際の公的機関・大学・研究機関・他地域企業等との連携状況

(1)3地域共通

3地域共通の中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新技

術・新製品開発を行う際の公的機関・大学・研究機関・他地域企業等との連携状況

□中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新技術・新製品

開発を行う際にはブリッジ役、啓発活動等を含めて公的機関・大学・研究機関・他地域

企業等が連携している。

(2)札幌圏

札幌圏の中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新技術・

新製品開発を行う際の公的機関・大学・研究機関・他地域企業等との連携状況

□公的機関としては、北海道立工業試験場、ICC、NOASTEC 財団、が企業と連携し、ブリ

ッジ機能等を担っている。

□デザイン学部を有する札幌市立大学は、今後教育したデザインクリエータの地元企業

への供給や地元企業との連携、デザインクリエータへのリカレント教育の実現等が期待

されている。

□札幌市立大学は公設試との高額機器の分担所有等を通して企業や公設試と連携し、デ

ザイン導入による新製品・新商品開発に寄与しようと試み始めている。

③首都圏

首都圏の中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新技術・

新製品開発を行う際の公的機関・大学・研究機関・他地域企業等との連携状況

□他地域も含めて企業間同士の連携は、市場が成熟しているため日々ビジネスとして行

われており、企業が自助努力で適時適切にそれらの機関を活用している。

□公的機関は補助金・助成金のためや、セミナーへの出席等として利用されている。

□他地域企業との連携は、東京ガスリビングセンターOZONE が地域から持ち込まれる案

件について紹介した若手デザインクリエータが、他地域中小製造企業等と連携して新製

品・新商品開発に成功しているケース、電子機器開発企業のコンソーシアムの EMS-JP

グループが、北海道に様々なシーズがあることに着目し、札幌にある公的機関へのアプ

ローチ等からサッポロバレーの企業と連携し、具体的なビジネスがスタートしている。

□東京都が産業技術大学院大学オープンインスティテュートでスーパーデザイナー養成

講座を開校している。

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④大阪圏

大阪圏の中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者による新技術・

新製品開発を行う際の公的機関・大学・研究機関・他地域企業等との連携状況

□公的機関として財団法人大阪デザインセンター、大阪産創館等、大阪府産業デザイン

センター、大阪府立産業技術総合研究所、大阪市立工業研究所、扇町インキュベーショ

ンプラザ(Mebic)、クリエイション・コア東大阪や各商工会議所等が、中小製造企業等や

デザインクリエータと連携し、公的機関同士も適時適切に連携し、ブリッジ役や出会い

の機会提供や、各種セミナー等を通じて連携し、中小製造企業とデザインクリエータの

新製品・新商品開発の一翼を担っている。

□ものづくりのまち東大阪に立地する東大阪市産業技術支援センターは地元企業との連

携は強く、デザインについての相談の際には大阪府産業デザインセンター等を紹介して

いる。

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3-5 調査研究の成果(まとめ)

3-5-1 地域の特性を活かした中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ

三者の連携・協力の進め方等の検討

アンケート調査結果、ヒアリング調査結果、専門家によるアドバイス等から、地域の特

性を活かした中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者の連携・協力

の進め方等について検討した。

(1)3地域共通

①中小製造企業経営者へのデザインマネジメント理解啓発の必要性

中小製造企業経営者がデザインクリエータらと新製品・新商品を効率的に売れるように

開発していくためには、正しいデザインマネジメントに対する理解が必須で、次の内容を

セミナーやワークショップ等で啓発していくことが必要である。

中小製造企業経営者へのデザインマネジメント理解啓発セミナー等で必要な教授内容

○デザインマネジメント概要

デザインは、新製品・新商品開発のプロセス、企画・アイディア・マーケティング→研究

開発→設計→製造→営業→広報の全体にかかわる。造形外観のみがデザインではなく、

デザインは付加価値でなく経営資源としてビジネス全体にかかわることへの認識。

○デザインクリエータへの業務依頼時に要求仕様提示(オリエンテーション)の必要性

発注者側がデザインクリエータへ要求仕様を提示しオリエンテーションすることで、

開発目標の明確化

⇒デザインクリエータが依頼された業務内容の明確化

⇒デザインクリエータがよく知らないクライアントの業界動向、コンペティター、開

発製品等についての情報収集機会

⇒開発プロジェクトの目的と範囲の明確化(クリエイション活動の指針になる)

⇒デザイン業務の質の向上がはかれる

(プアーな状況からの開発だと受発注が不明確⇒クライアントの要望実現が望めない)

・デザインクリエータへの業務依頼時の要求仕様書(オリエンテーションシート)作

成の必要性と具体的な内容

要求仕様書の項目例

クオリティー(性能)

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中小製造企業経営者へのデザインマネジメント理解啓発セミナー等で必要な教授内容

タイム(開発期間)

コスト(費用の上限)

コンペの場合(有無、ジャッジについて、参加企業への参加支払い金額他)

その他(工場や研究所等の担当者による説明等の条件他)

・デザインクリエータと要求仕様をもとにしたビジネスの進め方とコミュニケーショ

ンのとり方要求仕様書は契約書のベースになる要求仕様書は両者にとって顧客デー

タベースになり、無駄なやり取りを省ける

・デザインクリエータとの契約の締結について

支払い条件、知財の扱い(一括譲渡か販売額に対してのライセンスフィーか等)

・デザインクリエータの採用と育成

デザインクリエータを初めて採用した場合の育成、マネジメント、評価について

②デザインクリエータリカレント教育(卒後&実業教育)システムの必要性

先輩格のデザインクリエータが何人も存在しているデザイン事務所や大企業等では、ク

ライアントとの契約の締結、仕事の進め方(クリエーション業務、マネジメント等)コミ

ュニケーションのとり方等、デザインクリエータとしての行動特性を学ぶ機会が多く、そ

れらの学びを通して仕事の質の向上が望めるものである。しかし、先輩格のデザインクリ

エータが不在の組織では、社内においてデザインクリエータとしての行動特性を学ぶ機会

が確保できないため、社外に学ぶ機会を確保する必要がある。

デザイン系高等教育機関(大学、専門学校等)と公的機関(デザインセンターや公設試)

が協力し、デザインクリエータのリカレント教育(卒後&実業教育)を行い、実業にそく

した行動特性からデザインを経営資源として収益を上げていく方法等教育するシステムを

構築することが必要である。具体的なリカレント教育としては次の 3 段階を提案する。

デザイン系高等教育機関や公的機関が実施するリカレント教育のカリキュラム作成、教

材作成には公的資金を補助する必要がある。受講企業は参加当事者意識を持つために、あ

る程度受益者負担とする。

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3段階でのデザインクリエータリカレント教育システム

○リカレント教育導入編

スクール形式で学ぶ

例)札幌市立大学デザイン学部教員が中心となり、北海道立工業試験場デザイン開

発科等が協力してリカレント教育導入編の教材を作成し、専門家による講義を

開講する。

○リカレント教育グループワーク編

特定の課題に対して各社の参加メンバーから構成されるグループで、課題解決に取り

組み、講師(経験豊富なデザインクリエータや教員)がアドバイザーとしてコミット

する。

○リカレント教育実践編

特定企業での新製品・新商品開発案件への講師(経験豊富なデザインクリエータや教

員)がコミットする。

③ベンチャーIT企業等による地域における主要産業ネットワークやデザインディレク

ターが担うブリッジ機能の必要性

サッポロバレーにおけるベンチャーIT企業の集積のように、地域における主要産業ネ

ットワークが、継続的に中小製造企業とデザインクリエータが出会える場、出会える機会

を設けることや、具体的に両者を紹介する機能等を担うことが必要である。中小製造企業

等とデザインクリエータは同一ネットワークに介在しない業種であるから、出会える場や

機会により、互いの考え方やスキルを理解し、その延長線上として連携による新製品・新

商品開発が期待できる。

デザインディレクターがブリッジ機能を担うことも必要である。デザインディレクター

を核としたデザインクリエータのネットワークによる、活発な新製品・新商品開発が期待で

きる。

ベンチャーIT企業等による地域における主要産業ネットワークやデザインディレク

ターが担うブリッジ機能

○中小製造企業等とデザインクリエータが出会える場の設定

○中小製造企業等とデザインクリエータが出会える機会の設定

○中小製造企業等とデザインクリエータの直接紹介

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(2)工業集積の低い地域

①公設試の活用・機能強化の必要性

○公設試が工業デザイン業務を担うモデル

工業集積の低い地域では工業デザイナー・プロダクトデザイナー等が少ないため、中小

製造企業の新製品・新商品開発に必要なデザイン業務を公設試が担う。さらに、デザイン

業務のみならず、その後の開発に際しても課題が生じた場合には公設試が対応する。その

際、公設試には次の要件が必要である。

要件:

・工業デザイナーが対応分野をあまり設定しないように、公設試デザイン科が工芸系に

偏らず、機械やメカトロ等幅広い分野でのデザイン業務に対応できること

・プロジェクトマネジメント、デザインディレクション、開発期間、開発投入人材、開

発費用、知財マネジメントとプロフィットシェア等を企業側と公設試の責任分担等に

ついて、事前の合意形成を行うこと

・公設試が得意としないマーケティングや販路開拓等は、商社・流通・産業支援機関等

と連携し、それらの機関の支援を得て、新製品を売れる新商品にすることへも注力す

・研究職に民間でのデザイナー経験者が含まれていればベター

○公設試がブリッジ役を担うモデル

工業集積の低い地域では工業デザイナー・プロダクトデザイナー等が少ないため、中小

製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者のブリッジを担えるデザインデ

ィレクター等不在のため、公設試がブリッジ役を担う。

○公設試等がデザインマネジメントを啓発するモデル

工業集積の低い地域では工業デザイナー・プロダクトデザイナー等が少ないため、中小

製造企業がデザイン導入経験が浅いと想定されるため、公設試や大学等が中小製造企業へ

のデザインマネジメント啓発セミナー等を実施する。

○地域としての公的デザインセンターモデル

既存で継続的な運用可能な公的機関(公設試等)の一部に、中小製造企業および全業種

とデザインクリエータをブリッジする機能として地域としてのデザインセンターを立ち上

げる。地域によってはデザインクリエータが少数の地域があるので、必要に応じて他地域

のデザインセンターとの広域連携もはかれるように、デザインセンター間での横の連携を

はかっておく。

デザインクリエータは有料登録制とし、デザインセンターのコーディネータはデザイン

Page 84: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

80

クリエータの特性など(スキルズマップ)を把握し、中小製造企業等からの要請時にその

ニーズにそくしたデザインクリエータを数名紹介し、コンペ方式とし、採択されたデザイ

ンクリエータを中小製造企業等へ派遣する。公的なデザインセンターの紹介ということで、

契約面や知財面への信頼度向上が期待できる。

(3)工業が活発な地域

①既存公的機関等の機能強化の必要性

○デザインセンターによるマッチングモデル

財団法人大阪デザインセンターの登録しているデザインクリエータのフィロソフィ

ー・スキル・特色・強み・キャラクター等をある程度把握した上で、中小製造企業からの

依頼に対して 3 社程度を紹介し、コンペ方式で中小製造企業がいずれのデザインクリエー

タを採用するかを決める仕組みが、工業が活発な地域(中小製造企業もデザインクリエー

タも多数存在)における一つの理想的なマッチングモデルである。コンペに参加した 3 社

へは採用されなくとも、一定金額が支払われる仕組みがデザインクリエータの存在意義を

高めることになり望ましい。

○民間業界団体によるマッチングモデル

公的機関が中小製造企業とデザインクリエータをブリッジすることは、ある一定の市場

形成がなされた後には民間へ移行すべきであり、民間業界団体等がブリッジフィーを得て、

ブリッジシステムを構築し、実施していくことが必要である。民間業界団体等のブリッジ

業務が自立できるようになるまでは、適時適切に公的資金を補助することも必要である。

現在、協同組合関西デザインオフィスユニオンは業界団体としてブリッジ役を担ってい

る。また、インテグレーションプロジェクトが発生した時、地域におけるネットワークが

強力であれば、適時適切にプロジェクトメンバーを構築することが可能である。

Page 85: このような社会情勢に対応し、各方面の ... · 大企業の融合事例として、アップル 社等が開発したiPodが有名である。中小企業でも、この例を目指すことが重要である。

81

3-5-2 必要な方策

地域特性を踏まえ、中小製造企業、ベンチャーIT企業、デザインクリエータ三者の連

携・協力における必要な方策を検討した。

(1)全国共通

◎中小製造企業経営者へのデザインマネジメント啓発の実施

(要求仕様作成、契約締結、知財の取り決め他)

◎デザインクリエータへのリカレント教育の実施

(ビジネスの進め方他)

◎地域主要産業ネットワーク(例:ベンチャーIT企業等が核)やデザインディレクタ

ーをブリッジとする、中小製造企業とデザインクリエータの出会いの場や出会いの機

会作りの実施

(三者や連携先が参画可能な複数年にわたる公的プロジェクト等の実施他)

(2)工業集積の低い地域

◎中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しする公的ブリッジ機関(公設試、デザイ

ンセンター等)の機能強化

・公的ブリッジ機関がこれまでの技術指導や連携を通して、中小製造企業やデザイン

クリエータのフィロソフィー・スキル・特色・強み・キャラクター等を把握した上

で、さらに今後も継続的な把握をすることに努めつつ、各新製品・新商品開発に係

わる依頼の本質のニーズを見極め、開発上で不足している機能を補完できうる適切

なデザインクリエータ等を紹介する機能を強化する。

・ブリッジ機能について活用を促進する PR を強化する。(公設試の成果発表会等各

種催し等の際に PR 等)

◎公設試による工業デザイン業務の受託

(3)工業の活発な地域

◎既存公的ブリッジ機関(デザインセンター等)の機能強化

・これまでのブリッジ機能に有効であった中小製造企業やデザインクリエータのフィ

ロソフィー・スキル・特色・強み・キャラクター等の把握を、ブリッジ機会や連携

機会、場合によっては企業訪問等を行い一層強化する。中小製造企業とデザインク

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リエータの数により、両者ともに深く把握することが難しければ、片方についてだ

けは深く把握することに努める

・ブリッジのしくみ(例えばデザイナーの有料登録制度等)について定期的に評価を

行い、課題があれば解決に努めるとともに、一層 PR を強化する。(デザインセン

ター等の催し等の際に PR)

・ブリッジ機能(適切な相手を紹介していたかどうか等)について定期的に評価を行

い、課題があれば解決に努める。

必要な方策

全国共通

◆中小製造企業経営者へのデザインマネジメント啓発の実施・要求仕様作成、契約締結、知財の取り決め他

◆デザインクリエータへのリカレント教育の実施・ビジネスの進め方他

◆地域主要産業ネットワーク(例:ベンチャーIT企業等が核)やデザインディレクターをブリッジとする、中小製造企業とデザインクリエータの出会いの場や出会いの機会作りの実施・3者や連携先が参画可能な複数年にわたる公的プロジェクト等の実施他

工業集積の低いところ

◆中小製造企業とデザインクリエータを橋渡しする公的ブリッジ機関(公設試、デザインセンター等)の機能強化

・中小製造企業やデザインクリエータのフィロソフィー・スキル・特色・強み・キャラクター等を把握した上で、各新製品・新商品開発に係わる依頼の本質のニーズを見極め、開発上で不足している機能を補完できうる適切なデザインクリエータ等を紹介する機能を強化

・ブリッジ機能について活用を促進するPRを強化(公設試の成果発表会等各種催し等の際にPR等)

◆公設試による工業デザイン業務の受託

工業の活発な地域

◆既存公的ブリッジ機関(デザインセンター等)の機能強化・ブリッジ機能に有効であった中小製造企業やデザインクリエータのフィロソフィー・スキル・特色・強み・キャラクター等の把握を

一層強化する。両 者ともに深く把握することが難しければ、片方についてだけは深く把握することに努める・ブリッジのしくみ(例えばデザイナーの有料登録制度等)について定期的に評価を行い、課題があれば解決に努めるとともに、

一層PRを強化する。(デザインセンター等の催し等の際にPR)・ブリッジ機能(適切な相手を紹介していたかどうか等)について定期的に評価を行い、課題があれば解決に努める。

出典:日本立地センター作成

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4.調査研究の今後の展望および展開

4.1 今後の展望

市場形成され、市場が成熟するにしたがい、ブリッジ役を公的機関が永久的に担うので

はなく、先進的なビジネス志向のエージェンシー(デザインディレクター、ベンチャー

IT業、デザインディレクションができる経験豊富なデザインクリエータ等)へブリッジ

役が移行されることが期待される。

各地域での主要産業ネットワークの中心企業等(札幌圏であればベンチャーIT企業等)

が、中小製造企業とデザインクリエータのブリッジ役を自然に継続的に担い、出会いの場

や機会により、新製品・新商品が活発に開発されることが望まれる。

4.2 成果の展開

成果の展開は前掲した「必要な方策」について、「日本立地センター賛助会員である地

方公共団体へ機関誌や HP を通して発信」、「日本立地センター地域産業活性化事業活動の

際に関係者へ発信」、「経済産業省担当部局への説明」、「委員会委員やアドバイスを受

けた専門家等の関係者への発信」、「委員が関与する業界団体等へ発信」を行い、その実

現を啓発する。

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-禁無断転載- システム技術開発調査研究 19-R-13

イノベーターとなりうる中小企業の地域の特性を活かした

技術開発の推進に関する調査研究報告書

(要旨)

平成20年3月

作 成 財団法人機械システム振興協会

東京都港区三田一丁目4番地28号

TEL 03-3454-1311

委託先名 財団法人日本立地センター

住 所 東京都千代田区神田駿河台一丁目8番地11

TEL 03-3518-8967