欧米企業の事例: 東南アジア市場開拓とガバナンス - fujitsu · 2015-11-15 ·...
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欧米企業の事例: 東南アジア市場開拓とガバナンス
2013年6月10日 富士通総研 経済研究所 上席主任研究員 マルティン シュルツ
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
概要
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 1
なぜいま東南アジアなのか
堅調に成長する中間所得層、ASEANの市場統合に向けた動き
懸念されるリスク
アジア成長の原動力=メガシティ
特に富裕層が継続的に増加
メガシティの「フラット」化
メガシティ戦略
注目されるサービス産業 (B2G, B2B, B2C)
ITを基盤とした新たな機会創出
日本企業にとって最大のビジネスチャンスに
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潜在成長率の増加: ASEANの中間所得層が牽引
注意: 危機前のデータはIMF-WEO2008.04 、危機後のデータはIMF-WEO2012.09からのものです。
実質(潜在的)GDP成長予測1989-2017 (%)
Copyright2010富士通総研
日本
新興国及び途上国市場
ASEAN5
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE Source: © FRI 2013. Data: IMF (20013). 2
EU US
アジ
ア危
機
中間所得層が牽引
All Rights Reserved, Copyright Fujitsu Research Institute 2010 3
ASEAN の利点: 堅調な貿易とFDIの成長
Source: © FRI 2013. Data from ASEAN Trade, FDI Database.
ASEAN 貿易 (1000万USD)
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 3
ASEAN FDI (1000万USD)
堅調な貿易成長: ASEAN域内、中国、日本で成長
市場統合の動きはまだ始まったばかり ASEAN地域貿易=GDPの28%
非ASEAN域間貿易=GDPの82%
2009年より、80%のASEANの 自由貿易において関税が撤廃もしくは削減。ASEAN5では100%関税撤廃になる。
2015年から、直接投資の自由化、専門的サービスの増加, ビザ規制の緩和へ
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Intra-ASEAN EU Japan USA China
Singapore, 50.9
Thai, 11.3 Vietnam,
9.3
Brunei, 0.7
Cambodia, 1
Indonesia, 13.1
Laos, 0.4
Malaysia, 9.9
Myanmar, 0.8
Philippines, 2.6
All Rights Reserved, Copyright Fujitsu Research Institute 2010 4
ASEAN の課題:多様性(ダイバーシティ)
Source: © FRI 2013. Data from IMF WEO.
ASEAN 一人あたり実質GDP (1000 USドル)
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 4
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Malaysia
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MyanmarASEAN FDI (シェア %)
市場統合の遅れ: 所得水準、文化、規制の多様性が要因
不均一な投資: 地域の投資ハブであるシンガポールに集中。フィリピンが取り残されている状態
High Income
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Infra.
Busin. Eff.
Gov. Eff.
Econ. Perf.
All Rights Reserved, Copyright Fujitsu Research Institute 2010 5
ASEAN 市場リスク:ガバナンスとバブル
Source: © FRI 2013. Data from IMD (2012), Bloomberg.
IMD 競争力ランク とその問題
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 5
株価指標 (2002=100)
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Indonesia
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Philippines
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主なガバナンス問題: 確かな改善がうかがえるが、依然としてフィリピンでインフラ問題が妨げに。インドネシアでも難航している状態。
投資バブル: 機会創出、好況、そして不況へ
ガバナンス
問題
インフラ問題
ランク
アジア成長の原動力: メガシティ
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 6
アジア戦略の難しさ
不均一な経済成長
文化の多様性、ガバナンス・インフラが課題
戦略的機会: メガシティの発展
継続的な富裕層の増加
メガシティの「フラット」化
All Rights Reserved, Copyright Fujitsu Research Institute 2010 7
アジア成長は都市化、メガシティにより牽引
Source: © FRI 2013. Data from Citypopulation.de, Photo from Nasa.
アジアのメガシティ群
ジャカルタ2600万人
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 7
マニラ 2200万人
広州 2600万人
上海 2600万人
ニューデリー2400万人
ムンバイ 2100万人
コルカタ 1600万人
ホーチミン 700万人
バンガルール1000万人
台湾900万人
ハイテラバード900万人 バンコク
1500万人
クアラルンプール700万人 シンガポール
700万人
東京 3400万人
北京 1600万人
ソール 2600万人
世界GDPの50%は600の都市から
新興国都市が世界成長の33%を 占める(2007-2025)
富裕層 > 20,000 USドルが増加
All Rights Reserved, Copyright Fujitsu Research Institute 2010 8
メガシティがアジアの需要動向を突き動かす
Source: © FRI 2013. Data from McKinsey “City 600”, Oizumi (2010), Brookings (2011), UN (2011), IMF 2012.
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 8
メガシティ の「フラット」化
消費者動向
インフラ整備の需要
政府サービスの期待
最先端の企業技術 10
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2007 2013 2025
バンコク
上海
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ジャカルタ
富裕層:
日本の
1人当り
GDPの60%
(2007)
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アジア: 1 Bill. Citizens
アジア: 2.1 億人
東南アジア: + 55%
= 3億500万人
北米 南米
欧州
日本
メガシティでの1人 あたりのGDP (USD PPP)
都市化率の推移 (%)
アジ
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% %
アジ
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み
メガシティ戦略
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 9
メガシティ戦略
インフラからサービス(B2G, B2B, B2C)まで
ITをベースとした機会の創出
メガトレンドからビジネス戦略を - Siemens社とGE社
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 10
ガバナンス
メガトレンド
Siemens GE
戦略
事業分野
グローバル化
都市化
気候の変化と エネルギー
人口構造の変化
産業
インフラ、都市
エネルギー
ヘルスケア
ビルディング
モビリティ
電力
ヘルスケア
拡大する投資分野に注目
新興国市場に的を絞る
グローバルソーシング、人材開発
効率的な管理体制、 リバースイノベーション
垂直的IT統合、先進的インフラ
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 11
Siemens社の事例全体事業構成 ー インフラと都市開発
Source: Siemens (2013).
スマート グリッド 移動手段 電力
プラント
ITパーツ
インフラ アプリ 分散型電力
スマートビル
輸送 & 物流 シェア: 8%, 成長率: -1%, 利益率: 4%
パワーグリッド シェア: 8%, 成長率: 7%, 利益率: 7%
スマートビルディング技術 シェア: 8%, 成長率: 6%, 利益率: 6%
垂直的IT統合 ターゲット: +250% 成長
財政 プロジェクトの サポート
エネルギー シェア: 35% 成長率: 12%, 利益率: 8%
再生可能エネルギー シェア: 7% 成長率: 37%, 利益率: 6%
ヘルスケア シェア: 18% 成長率 : 9%利益率: 13%
産業オートメーション シェア: 12%, 成長率: 7%, 利益率: 14%
インフラ入札 地下鉄(メトロ)にSiemensを採用
スカイトレインの拡張にCRC Changchunを採用
エアポートリンクにおいてSiemensを採用
CRC Changchun が国鉄事業で入札
Siemensがタイ企業と50:50比でジョイントベンチャー(合併企業を設立)
CRC Changchun BTS スカイトレインの拡張 (2009) 車両
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バンコクの事例 - Siemens社などインフラとシステム戦略
Source: © FRI 2013.
Siemens BTS スカイトレイン (2000) Siemens MRT 地下鉄 (2004) 車両、システム、メンテナンス
民間財政 + ドイツ ODA
Siemens SRT 空港への接続 (2010) 車両、システム、メイテナンス
イタリア-タイ (建設業者)
政府 + 日本ODA
B Grimm, シノ(中国)-タイ, 中国 鉄道 (建設業者)
Bombardier Transport社 CRC & BTS システム
Porsche Design社 BTS, MRT, SRT 車両設計
PPP + 日本 ODA
Siemens社 BTS & MRT システム、メンテナンス
システム導入機会 引き続きSiemens社のシステ
ム、メンテナンスサービスを採用
BombardierがCRC Changchunのシステムを開発
全車両でPorsche Design社のデザインを採用
高い競争率
高収益
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バンコクの事例 - Siemens社など「スマートシティ」戦略
Source: © FRI 2013.
自動料金収受&交通制御(Siemens) システム、メンテナンス
都心空港ターミナル(Siemens) システム、メンテナンス
空港貨物(Siemens) 荷役
BSS Rabbit Card – 電子マネー NXP (Phillips) NFCシステム 1.5 Mill BTS+MRT スマートカード
チケット発行
電子マネー
「スマートシティ」の商機 システム・サービスにおいて
Siemensが広く採用されている
空港貨物システム
都心空港システム
交通制御システム
バンコクの電子マネーチケットシステムを検討
Siemensにシステムがない
SonyのFelicaは世界標準外
NXP (Phillips) globalの
NFC システムを採用
メガシティのインフラ開発からの教訓
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 14
高いB2Gインフラ需要が存在する・・しかし
政治、資金面でのリスクが高い:ODAパートナーとの関係の構築が必要
激化する中国、韓国との競争: 収入や利益は長期によるシステム・メンテナンス契約から成り立つ
ゼネコンと行政機関との競争の激化:民間企業との合併が必要。
急速に進む「スマートシティ」技術~B2G, B2B, B2C~
低価格な電子マネーとソーシャルメディアの需要は高い。国際基準(ISO)への準拠、長期契約の必要性があらためて重要となる。
Siemensは主流のNFC電子マネーシステム技術がなく発券システムの受注を逃す
電子マネーのパイオニアであるSony (Suica、Edy、香港ではOctopus、シンガポールではez-Card)が高価格、ISO準拠しておらず不採用に
商用サービス(ショッピングモール)- GE社事例
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商用
サービス
インター
ネット
銀行
金融 石油ガス
テレコム
パソコン
関連
石炭
不動産 鉱業
2001-2013
US-ASEAN M&A (上位10件)
Plaza Indonesia
ショッピングモール、小売店、ホテル
照明25,000点(主にLEDを活用)
年間373,000USドルのコスト削減
カスタマー キャッシュバック 1年間
Dunkin Donuts Flagship Store
照明369点(主にLEDを活用)
年間$21,000 USドルのコスト削減
GEがビルエネルギー管理システムへ事業を拡大
ショッピングモールサービス GE Lighting (US、従業員17,000)
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Convenience
Hypermarket
Department Store
Mall
モール利用者 (>1回/月) %
Source: © FRI 2013. Data from Bloomberg, GE, Kawazu (2013).
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商用サービス(セキュリティ)- Securitas社事例
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 16
シンガポールで首位
アジアで8-13%の成長率
インドネシア マーケットへ参入(M&A): - PT Environmental Indokarya (従業員1,200) - 大使館のセキュリティ - 行政によるアウトソーシング
セキュリティサービス Securitas (スウェーデン、従業員300,000)
EU-ASEAN M&A (Case Top10)
グローバルセキュリティ サービス市場
(10億. ポンド)
警備員 オンサイト
Securitasのビジネスモデル(利幅)
石油ガス
商用
サービス
銀行
保険 輸送
化学
Build. Mat.
食品
小売業 農業.
2001-2013
アジア
テクノロジー 遠隔
利幅
Source: © FRI 2013. Data from Bloomberg, G4S, Securitas (2013).
まとめ
Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 17
ASEANの急進展、メガシティで高い需要を生み出す 日本のハイレベルな製品、技術、サービスを前面に押し出す大きなチャンス
メガシティ戦略はインフラからサービスへと広がる インフラと行政アウトソーシングの需要が高まる中、競争も激化、資金調達も難しく、
長期契約は現地民間企業との合併が必要(JV, M&A)
メガシティビジネスモデルの主役はシステムおよびサービス B2G(インフラ)、B2B(パーツ, システム)、B2C(製品)市場において, 利幅は低コスト、
高い付加価値を伴うシステム統合やビジネスサービス、アプリケーションによって実現
される。
日本企業は優位な位置にある 長く培ってきたメガシティ(東京)システムと技術
強いASEAN政府関係(ODA)、広い生産ネットワーク、消費者マーケットでの
リーダー的役割(自動者、電気製品等)
しかし、IT主導のシステム、ビジネスサービス、M&A、民間企業との合併、
マネジメントを通したコーポレートガバナンスに努力する必要がある