看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … ·...

14
看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 37 原著論文 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第 1 報 卒業時の学生に焦点をあてて- 黒田 暢子,市村 久美子,高橋 由紀 茨城県立医療大学保健医療学部看護学科 要旨 平成23年度~平成25年度看護学科卒業生のうち 3 年次編入生を除く154名に対し,本学看護学科学生の卒業時 の看護技術の修得状況の実態と,看護技術の修得のためにどのような学習方法,特にどのシミュレーション(学 内演習)が役立ったと考えているのか明らかにすることを目的に,無記名自記式質問紙調査を行った。 その結果,①看護技術修得度の平均得点が高かった項目は,身体侵襲を伴わない日常生活援助技術が多かった。 ②看護技術修得に活用した学習方法は,シミュレーションと臨地実習が同等と回答した項目が最も多かった。③ 看護技術修得度の平均得点が高かった項目の方が,低かった項目よりもシミュレーションが役に立ったと評価し ていた。 よって,シミュレーションを活用することは,本学学生の卒業時の看護技術修得度を高める可能性があること が示唆された。 キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生 はじめに シミュレーションは実践能力を身につけるために 効果的であるとされ,新人看護師教育を始めとして シミュレーションを用いた院内教育研修が盛んに行 われている 1)2) 看護基礎教育において,看護学生は,講義→演習 →臨地実習の順で,知識・技術・態度を積み重ねて 統合し,看護実践能力を修得しており,特に実践的 能力をはぐくむのに効果的な学習は臨地実習教育で あるといえる。 しかし,昭和26年に施行された保健師助産師看護 師学校養成指定規則に定められた看護師過程( 3 年 課程)の教育内容に定められた時間数と比べると, 学内における看護に関する理論教育は増加する一方 で,臨地実習時間は著しく減少している 3) 。また, 患者の平均在院日数は,平成11年に41.8日だったの が,平成23年には34.3日と短縮化(全患者数比較) しており 4) ,看護学生が一人で同一患者を長時間受 け持つ機会が激減している。このことは,看護実践 能力を実習病院で修得することの限界を示唆してい る。 厚生労働省は「看護教育の内容と方法に関する検 討会報告書 5) 」の中で,看護師に求められる実践能 力を育成するための教育方法として,学内でシミュ レーション等行うなど臨地実習に向けて準備してお 連 絡 先:黒田 暢子  茨城県立医療大学保健医療学部看護学科 〒3000394 茨城県稲敷郡阿見町阿見46692 電  話:0298402221 FAX:0298402321 Email[email protected] 茨城県立医療大学紀要 第 20 巻 A S V P I Volume 20

Upload: others

Post on 20-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 37

原著論文

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連-第 1報 卒業時の学生に焦点をあてて-

黒田 暢子,市村 久美子,高橋 由紀

茨城県立医療大学保健医療学部看護学科

要旨

 平成23年度~平成25年度看護学科卒業生のうち 3年次編入生を除く154名に対し,本学看護学科学生の卒業時

の看護技術の修得状況の実態と,看護技術の修得のためにどのような学習方法,特にどのシミュレーション(学

内演習)が役立ったと考えているのか明らかにすることを目的に,無記名自記式質問紙調査を行った。

 その結果,①看護技術修得度の平均得点が高かった項目は,身体侵襲を伴わない日常生活援助技術が多かった。

②看護技術修得に活用した学習方法は,シミュレーションと臨地実習が同等と回答した項目が最も多かった。③

看護技術修得度の平均得点が高かった項目の方が,低かった項目よりもシミュレーションが役に立ったと評価し

ていた。

 よって,シミュレーションを活用することは,本学学生の卒業時の看護技術修得度を高める可能性があること

が示唆された。

キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

はじめに

 シミュレーションは実践能力を身につけるために

効果的であるとされ,新人看護師教育を始めとして

シミュレーションを用いた院内教育研修が盛んに行

われている1)2)。

 看護基礎教育において,看護学生は,講義→演習

→臨地実習の順で,知識・技術・態度を積み重ねて

統合し,看護実践能力を修得しており,特に実践的

能力をはぐくむのに効果的な学習は臨地実習教育で

あるといえる。

 しかし,昭和26年に施行された保健師助産師看護

師学校養成指定規則に定められた看護師過程(3年

課程)の教育内容に定められた時間数と比べると,

学内における看護に関する理論教育は増加する一方

で,臨地実習時間は著しく減少している3)。また,

患者の平均在院日数は,平成11年に41.8日だったのが,平成23年には34.3日と短縮化(全患者数比較)しており4),看護学生が一人で同一患者を長時間受

け持つ機会が激減している。このことは,看護実践

能力を実習病院で修得することの限界を示唆してい

る。

 厚生労働省は「看護教育の内容と方法に関する検

討会報告書5)」の中で,看護師に求められる実践能

力を育成するための教育方法として,学内でシミュ

レーション等行うなど臨地実習に向けて準備してお

連 絡 先:黒田 暢子  茨城県立医療大学保健医療学部看護学科     〒300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見4669-2電  話:029-840-2221 FAX:029-840-2321 E-mail:[email protected]

茨城県立医療大学紀要 第 20 巻A  S   V  P  I Volume 20

Page 2: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

茨城県立医療大学紀要 第20巻38

くことにより,効果的に技術を修得することが可能

となると述べており,講義・演習・臨地実習教育の

効果的な組み合わせとして,シミュレーションを積

極的に取れ入れることを推奨している。

 シミュレーションによる看護教育とは,臨床を模

倣・再現した状況の中で,人や物にかかわりながら

専門的な知識と技術や態度を学んでいくもの6)とい

え,本学看護学科においても,様々な授業科目でシ

ミュレーション(学生同士のロールプレイ,高齢者

や妊婦の疑似体験,ペーパーペイシェントによる看

護過程の展開,模型・シミュレータによる学習,模

擬患者(Simulated Patient;以下SP)の活用を,学内演習として行っている。しかし,その教育効果

について十分な検証が行われていない。

 よって,本研究では,本学看護学科学生を対象

に,卒業時の看護技術の修得状況の実態と,看護技

術の修得のためにどのような学習方法,特にどのシ

ミュレーションの教育技法が役立ったと考えている

のか,質問紙調査を行い明らかにすることを目的と

した。

研究方法

1. 調査対象

 平成23年度~平成25年度看護学科卒業生のうち

3年次編入生を除く154名(平成23年度卒学生52名,

平成24年度卒学生50名,平成25年度卒学生52名)を

対象とした。

2. 調査期間・方法

 平成23年度卒学生は平成24年 1月,平成24年度卒

学生は平成25年 1月,平成25年度卒学生は平成26年

1月にそれぞれ無記名自記式質問紙を配布し,学内

に設置した質問紙回収箱へ提出を求めた。

3. 調査項目

1 )看護技術項目

 卒業時から新人看護師時代を含んで看護技術の修

得状況が評価できるよう,厚生労働省「看護基礎教

育の充実に関する検討会報告書」から「看護師教育

の技術項目と卒業時の到達度7)」138項目と,厚生

労働省「新人看護職員研修ガイドライン8)」から「到

達目標:技術的側面」69項目を基に共同研究者とと

もに看護技術項目の検討を行い,91項目を選定した。

 内容は,環境調整技術2項目,食事の援助技術3

項目,排泄援助技術6項目,活動・休息援助技術8

項目,清潔・衣生活援助技術11項目,呼吸循環を整

える技術11項目,創傷管理技術3項目,与薬の技術

15項目,救命救急処置技術8項目,症状・生体機能

管理技術10項目,苦痛の緩和・安楽確保の技術4項

目,感染予防の技術6項目,安全確保の技術4項目

とした。

2)看護技術項目に対する質問内容

①看護技術修得度について

前述の看護技術項目91項目について,「1. 修得していない」~「4. 修得している」の4件法で回答を求めた。

②看護技術修得に活用した学習方法について

前述の看護技術91項目について,「学内演習」と「臨

地実習」の割合が合計で100%になるように,パー

セント(%)で記入を求めた。ただし,学習して

いない看護技術については,どちらも0%と記入

するように依頼した。また,本研究では,「学内

演習」について「授業時間の演習」と「授業以外

の学生の自らの学習としての演習」の区別は明記

しなかった。

 次に,「学内演習」と回答した項目について,

具体的にはシミュレーションのどの教育技法

だったのか,藤岡ら9)がシミュレーションの教育

技法として挙げている内容を参考とし,「1. 学生同士のロールプレイ」「2. SP」「3.模型・シミュレータ」「4. ペーパーペイシェントによる看護過程の展開」と「5. そのほか(自由記載含む)」についてあてはまるものの回答を求めた(複数回答可)。

(本研究においては,以後「学内演習」を「シミュ

レーション」とする。)

③シミュレーションは看護技術修得に役に立ったか

について

 「1. 役に立たなかった」~「4. 役に立った」の4件法で回答を求めた。

3)本学看護学科の看護基礎教育に対しての自由意

 看護実践能力育成のための観点から,本学の看護

基礎教育についての意見を自由記述で求めた。

Page 3: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 39

4. 分析方法

 まず,看護技術修得度について4件法の回答を得

点化(1点~ 4点)し,それぞれの項目について平

均得点を算出した。

 次に,看護技術の修得度にシミュレーションによ

る教育技法がどのように影響しているか明らかにす

るため,看護技術修得度の平均得点が3.0以上と高かった項目,看護技術修得度の平均得点が2.0未満と低かった項目を選び,シミュレーションの活用の

割合と内容,シミュレーションの看護技術修得の役

立ち度,について分析を行った。

 さらに,本学の看護基礎教育に対しての自由記述

については,シミュレーションについて書かれた記

述を選び,「良かった点」「改善点等」の2つの視点

で分類を行い,現状の教育評価と今後の課題を検討

した。

 なお,データ集計および分析は,Excel 2010及びSPSS Statistics20.0を使用した。

倫理的配慮

 教員からの調査であることの強制力を排除するた

め,まず,調査対象向けに参加者募集用ポスターを

学内に掲示し,参加者を募った。

 次に,集まった看護学生に対し,研究協力依頼書

を用いて,研究者の所属・研究目的・研究方法・守

秘性の保証・プライバシーの保護・情報の漏えい防

止に関すること,参加の自由意志及び拒否した場合

において,不利益を被ることがないことについて,

口答で説明を行った。また,質問紙の回答をもって

同意が得られたとする旨を伝えて,質問紙を配布し

た。

 記入後の調査票は,個人が特定されないようにす

るため,封書に入れてもらい,学内に設置した鍵の

かかる回収箱に投函してもらった。

 この調査は,茨城県立医療大学倫理委員会の承認

(465,553)を得てから実施した。

結  果

1. 対象の背景

 調査票の回答が得られた学生数は,質問紙を配

布した154名中65名(回収率42%)であった。年度

別の内訳は,平成23年度卒学生が52名中27名(回

収率52%),平成24年度卒学生が50名中13名(回収率26%),平成25年度卒学生が52名中25名(回収率48%)だった。

2. 看護技術修得度について

1 )看護技術修得度が高い看護技術項目(表1)

 看護技術習得度の平均得点が3.0以上だった項目は,36項目(環境調整技術2項目,食事の援助技術

1項目,排泄援助技術1項目,活動・休息援助技術

4項目,清潔・衣生活援助技術11項目,呼吸循環を

整える技術1項目,創傷管理技術1項目,救命救急

処置技術2項目,症状・生体機能管理技術3項目,

苦痛の緩和・安楽確保の技術3項目,感染予防の技

術4項目,安全確保の技術3項目)だった。

 そのうち,平均得点が3.5以上と高得点だったのは,環境調整技術1項目:「ベッドメーキング=3.8点」,活動・休息援助技術2項目:「歩行・移動の介

助=3.7点」「移送(車いす)=3.8点」,清潔・衣生活援助技術2項目:「清拭=3.5点」「整容=3.5点」,症状・生体機能管理技術3項目:「バイタルサイン(体

温,脈拍,呼吸,血圧)の観察と解釈=3.8点」「身体計測=3.6点」「パルスオキシメーターによる測定=3.8点」,感染予防の技術1項目:「スタンダードプリコーション(標準予防策)の実施=3.6点」,安全確保の技術1項目:「患者誤認防止策の実施=3.5点」の10項目だった。

2)看護技術修得度が低い看護技術項目(表2)

 看護技術修得度の平均得点が2.0未満だった項目は,17項目(排泄援助技術2項目,呼吸循環を整え

る技術5項目,創傷管理技術1項目,与薬の技術5

項目,救命救急処置技術1項目,症状・生体機能管

理技術3項目)だった。

 そのうち,平均得点が1.5未満と低得点だったのは,呼吸循環を整える技術1項目:「低圧胸腔内持

続吸引器の管理=1.4点」,与薬の技術1項目「輸血の準備=1.4点」,救命救急処置技術1項目:「気管挿管の準備と介助=1.4点」の 3項目だった。

Page 4: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

茨城県立医療大学紀要 第20巻40

表 1  看護技術修得度の平均得点が3.0以上だった看護技術項目

Page 5: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 41

3. 看護技術修得にシミュレーションを活用した割

合と具体的なシミュレーションの教育技法につ

いて

1 )看護技術修得度が高い看護技術項目(表3)

 看護技術修得度の平均得点が3.0以上だった36項目について,看護技術修得にあたってシミュレー

ションを活用した割合として最も回答した割合を項

目毎に選び,その結果を60~100%,50%,50%未

満の 3つに分類した。

①シミュレーションを活用した割合が高かった(60

~100%)のは,9項目(環境調整技術1項目:「ベッ

ドメーキング」,排泄援助技術1項目:「自然排尿・

排便介助」,活動・休息援助技術1項目:「移送(ス

トレッチャー)」,清潔・衣生活援助技術1項目:「輸

液ライン等が入っている患者に対する寝衣交換な

ど衣生活支援」,救命救急処置技術2項目:「意識

レベルの把握」「人工呼吸」,感染予防技術2項目:

「無菌操作の実施」「針刺し事故防止策の実施と針

刺し事故後の対応」,安全確保の技術:「誤薬防止

の手順に沿った与薬」)だった。

  それぞれの看護技術項目で活用したシミュ

レーションの教育技法は,「学生同士のロール

プレイ」が6項目:「ベッドメーキング」「移

送(ストレッチャー)」等,「模型・シミュレー

タ」が1項目:「人工呼吸」,「学生同士のロー

ルプレイ」と「模型・シミュレータ」の2種

類だったのが1項目:「意識レベルの把握」,

「活用したシミュレーションなし」が1項目:

「針刺し事故防止策の実施と針刺し事故後の対応」

となった。

②シミュレーションと臨地実習を活用した割合が同

じ(50%)だったのは,環境調整技術1項目:「療

養生活環境調整」,活動・休息援助技術3項目:「歩

行・移動の介助」「体位変換」他,清潔・衣生活

援助技術8項目:「清拭」「口腔ケア」等,呼吸循

環を整える技術1項目:「体温調整」,創傷管理技

術1項目:「褥創の予防」,症状・生体機能管理技

術3項目:「バイタルサイン(体温,脈拍,呼吸,

血圧)の観察と解釈」「身体計測」他,苦痛の緩和・

安全確保の技術3項目:「安全な体位の保持」「リ

ラクセーション」等,感染予防の技術2項目:「ス

タンダードプリコーション(標準予防策)の実施」

表 2 看護技術修得度の平均得点が2.0未満だった看護技術項目

Page 6: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

茨城県立医療大学紀要 第20巻42

表 3  看護技術修得度の平均得点が3.0以上だった看護技術項目のうち,看護技術修得にあたってシミュレーションを活用した割合として最も回答した割合と回答人数(%),及び活用したと評価したシミュレーションの教育技法と回答人数(%)

Page 7: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 43

「医療廃棄物規定に沿った適切な取扱い」等,安

全確保の技術2項目:「患者誤認防止策の実施」「転

倒・転落防止策の実施」の24項目だった。

  それぞれの看護技術項目で活用した具体的なシ

ミュレーションの教育技法は,「学生同士のロー

ルプレイ」が22項目,「模型・シミュレータ」が

1項目:「陰部ケア」,「学生同士のロールプレイ

と模型・シミュレータ」が1項目:「身体計測」

となった。

③シミュレーションを活用した割合が低かった

(50%未満)のは,3項目(食事の援助1項目:「食

事介助」,清潔・衣生活援助技術2項目:「入浴介

助」「整容」)だった。

  それぞれの看護技術項目で活用した具体的なシ

ミュレーションの教育技法は,「学生同士のロー

ルプレイ」が1項目:「食事介助」となった。

2)看護技術修得度が低い看護技術項目(表4)

 看護技術修得度の平均得点が2.0未満だった17項目について,看護技術修得にあたってシミュレー

ションを活用した割合として最も回答した割合を項

目毎に選び,その結果を60~100%,50%,50%未

満の 3つに分類した。

①シミュレーションを活用した割合が高かった(60

~100%)のは, 3項目(呼吸循環を整える技術

1項目:「肺理学療法」,創傷管理1項目:「包帯

法」,症状・生体機能管理1項目:「12誘導心電図

の装着と管理」)だった。

  それぞれの看護技術項目で活用した具体的なシ

ミュレーションの教育技法は,「学生同士のロー

ルプレイ」が2項目(呼吸循環後を整える技術1

項目:「肺理学療法」,創傷管理技術1項目:「包

帯法」)となった。

表 4 看護技術修得度の平均得点が2.0未満だった看護技術項目のうち,看護技術修得にあたってシミュレーションを活用した割合として最も回答した割合と回答人数(%),及び活用したと評価したシミュレーションの教育技法と回答人数(%)

Page 8: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

茨城県立医療大学紀要 第20巻44

②シミュレーションと臨地実習を活用した割合が同

じ(50%)看護技術項目はなかった。

③シミュレーションを活用した割合が低かった

(50%未満)のは,14項目(排泄技術2項目:「摘便」

「ストーマケア」,呼吸循環を整える技術4項目:

「人工呼吸器の管理」「低圧胸腔内持続吸引器の管

理」等,与薬5項目:「直腸内与薬」「輸液の準備」等,

救命救急処置1項目:「気管相関の準備と介助」,

症状・生体機能管理技術2項目「動脈血採血の準

備と検体の取り扱い」「検査時の援助(胃カメラ,

気管支鏡,腰椎穿刺など)」だった。

 それぞれの看護技術項目で活用したシミュレー

ションはなかった。

4. シミュレーションの看護技術修得の役立ち度に

ついて

1 )看護技術修得度が高い看護技術項目(表5)

 看護技術修得度の平均得点が3.0以上だった36項目に関して,シミュレーションの看護技術修得の役

立ち度の平均得点を算出したところ,すべての項目

で3.0より高かった。そのうち30項目は,平均得点が3.5~4.0(4.0点:1項目「バイタルサイン(体温,脈拍,呼吸,血圧)の観察と解釈」,3.9点:3項目:「ベッドメーキング」「歩行・移動の介助」「移送(車

いす)」)を示していた。

2)看護技術修得度が低い看護技術項目(表6)

 看護技術修得度の平均得点が2.0未満だった17項目に関して,シミュレーションの看護技術修得の役

立ち度の平均得点を算出したところ,2.4~3.3とばらつきがみられた。そのうち11項目は,平均得点が

2.5~2.9(2.9点: 1項目「12誘導心電図の装着と管理」,2.8点: 3項目「人工呼吸器の管理」「気管内挿管の準備と介助」など)を示していた。

5. 本学のシミュレーションによる看護基礎教育に

対しての自由意見(表7)

 本学の看護基礎教育に対しての自由意見は17件あ

り,そのうちシミュレーションによる看護基礎教育

について書かれた記述は10件であった。

 良かった点としては,学内での演習が臨地実習で

の自信につながったこと,場面をイメージ化するた

めの教材(ビデオ等)に効果があったこと,SPと

のロールプレイが実践能力を高めるシミュレーショ

ンにつながったこと,学生同士で学習することが主

体的に学習する力につながったことが記述されてい

た。改善点等としては,臨床現場を意識した学習方

法の提案,侵襲度の高い技術の修得が基礎教育にお

いて進んでいないことによる就職に対する不安など

が記述されていた。

考  察

1. 看護技術修得度について

 看護技術修得度の平均得点が3.0以上と高かった36項目は,「ベッドメーキング」「移送(車いす)」「バ

イタルサイン(体温,脈拍,呼吸,血圧)の観察

と解釈」といった,身体侵襲を伴わない日常生活援

助技術が多かった。一方,看護技術修得度の平均得

点が2.0未満と低かった17項目は,「低圧胸腔内持続吸引器の管理」「輸血の準備」「気管挿管の準備と介

助」といった身体侵襲度が高い治療や診察技術が多

く,看護基礎教育において経験する機会が少ない項

目だった。

 よって,学生の技術修得度に影響する要因は,実

際に経験できる学習の機会があるかどうかであり,

シミュレーションや臨地実習などで経験する回数が

多い日常生活援助技術項目について,看護技術修得

度を高めていると考えられる。

 実習の看護技術修得に向けた学習効果について

は,川守田ら10)の看護技術の学習経験と習得度に

関する調査からも,臨地実習で経験の多い看護技術

の習得度が高いことや実施機会が多い看護技術は基

本的な生活援助技術であることが明らかになってい

る。さらに,実習での経験は学生の看護技術に関す

る自信につながっている11)とも言われており,今後,

教育効果の高い実習方法について検討していく必要

があると考えられる。

 また,看護技術修得度が低かった項目は,身体侵

襲度が高い治療や診察技術が多く,技術が未熟であ

ることや無資格者である看護学生が実施できない看

護技術項目が多いため,実習で経験することが難し

いことが予想された。しかし,「注射など人へ実際

に行ったことがないため就職するのに不安がある。」

といった学生からの意見があるように,看護基礎教

育と臨床現場のギャップが大きいままでは,看護師

Page 9: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 45

表 5 看護技術修得度の平均得点が3.0以上だった看護技術項目とシミュレーションの看護技術修得の役立ち度

Page 10: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

茨城県立医療大学紀要 第20巻46

表 6  看護技術修得度の平均得点が2.0未満だった看護技術項目とシミュレーションの看護技術修得の役立ち度

として就職後にリアリティショックを起こす状況に

陥りやすい。そこで今後は,臨地実習では実践でき

ない場面を忠実に再現し,類似した環境下での経験

学習が促進される12)シミュレーションを活用してい

くことが,ますます重要になってくると考えられる。

2. 看護技術修得にシミュレーションを活用した割

合と具体的なシミュレーションの教育技法につ

いて

 看護技術修得度の平均得点が3.0以上と高かった36項目のうち,シミュレーションを活用した割合が

表 7 本学のシミュレーションによる看護基礎教育に対しての自由意見(計10件)

<良かった点>○ 学校で沢山練習したものに対して実習で自信をもって臨めた。

○ イメージがわかないので、ビデオや具体的な物を見ることは納得して勉強できた。

○ SPに協力を得た演習は、準備期間(学習、練習、グループ内での話し合いなど)を含め、実践能力を 身につけるためとても有意義だった。

○ グループワークなど学生同士で調べたり考えたりする機会が多く、主体的に学習する力がついた。

<改善点等>○ 注射など人へ実際に行ったことがないため就職するのに不安がある。

○ 少しでも病棟に近い条件で演習できるよう、詳細に設定された事例を何通りもこなした方が良い。

○ もっと臨床を意識した演習ができると、実践に生かすことができる。

○ 実習で活かせるものが少ない。

○ 学校の演習であまり学習しなかったもの(入浴介助など)は、実習に行って最初少し不安な気持ちで 実施した。

○ 実習では、生かせたものもあれば、現場で初めて身に付く技術があった。

Page 11: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 47

高かった(60~100%) 9項目は,臨地実習で経験

する可能性が低い項目であった。シミュレーション

を活用した割合が低かった(50%未満) 3項目は,

シミュレーションの機会が少ないが,臨地実習で

実践的に経験を重ねて技術修得している項目であっ

た。それに比べ,シミュレーションと臨地実習を活

用した割合が同等(50%)だった24項目は,シミュ

レーションと臨地実習のどちらの場面でも経験する

可能性が高い項目であると考えられる。

 次に,看護技術修得度の平均得点が2.0未満と低かった17項目のうち,シミュレーションを活用した

割合が高かった(60~100%)と答えた 3項目は,

前述の看護技術修得度の平均得点が高かった36項目

のうちシミュレーションを活用した9項目同様,臨

地実習で経験する可能性が低い項目ではないかと考

えられる。

 また,活用したシミュレーションの具体的方法と

しては,看護技術修得度に関係なくほとんどの学生

が,学生同士のロールプレイのみを挙げていた。こ

れは,基礎看護学(1, 2年次)の技術演習方法と

して,学生同士でペアになって行うシミュレーショ

ンの印象が強いためと考えられる。

 しかし,学生同士ペアになって行うシミュレー

ションのみでは,「リアリティによる効果13)」が低

いことが考えられるため,臨床的思考能力を高める

ことができるよう,事例を用いた看護展開,SP役とのロールプレイ,シミュレータによる演習など多

角的なシミュレーションを導入していく必要がある。

 学生からは,「SPに協力を得た演習は,準備期間(学習,練習,グループ内での話し合いなど)を含

め,実践能力を身につけるためとても有意義だっ

た。」という意見があり,幅広いシミュレーション

の教育技法により学習することに学生は十分対応で

きると思われる。ただしその際,「学校の演習であ

まり学習しなかったもの(入浴介助など)は,実習

に行って最初不安な気持ちで実施した。」という意

見をふまえ,臨床現場で必要となる看護技術に則し

たシミュレーションの内容が組み立てられているの

か,再考していく必要がある。

3. シミュレーションの看護技術修得の役立ち度に

ついて

 看護技術修得度の平均得点が3.0以上と高かった

36項目は,シミュレーションが看護技術修得に役に

立ったと評価している学生が多かった。また,看護

技術修得度の平均得点が2.0未満と低かった17項目については,シミュレーションが看護技術修得に役

に立ったと評価している学生が少なかった。

 つまり学生は,看護技術を修得するための学習方

法として,シミュレーションが役に立つと認識し,

看護技術修得度とシミュレーションの看護技術修得

の役立ち度には,関連がみられる可能性が示唆され

た。

 一方で,看護技術修得度の平均得点が低い項目は,

現状では看護基礎教育においてシミュレーションに

よる学習をする機会が少ないあるいはないため,役

に立ったと評価することが難しかった項目であるこ

とが予想された。

4. 本学看護学科のシミュレーションによる看護基

礎教育に対しての意見

 学生からは,シミュレーションによる本学の看

護基礎教育に関して,「グループワークなど学生同

士で調べたり考えたりする機会が多く,主体的に学

習する力がついた。」「イメージがわかないので,ビ

デオや具体的な物を見ることは納得して勉強ができ

た。」といった,学習の動機付けに関する教授法に

ついて効果的であるという肯定的な意見が得られた。

 また,「学校で沢山練習したものに対して実習で

自信をもって臨めた。」という意見がある一方で,

「実習で活かせるものが少ない」「現場で初めて身に

付く技術があった」ため,「少しでも病棟に近い条

件で演習できるよう,詳細に設定された事例を何通

りもこなした方が良い。」あるいは,「もっと臨床を

意識した演習ができると,実践に生かすことができ

る。」といった臨床現場で役立つような内容を学生

自身が求めていることがわかった。

 今後は,前述の改善点等と合わせ得られた学生の

意見をふまえて,看護技術の修得のために役立つシ

ミュレーションの教育技法について検討を重ねてい

く必要がある。

5. シミュレーションによる看護教育の展望につい

 臨床現場で期待される実践能力と看護基礎教育で

習得した実践能力には大きな乖離があることが指摘

Page 12: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

茨城県立医療大学紀要 第20巻48

されている14)。その原因として,臨床現場の変化に

看護基礎教育における学習内容が十分に呼応してい

ないこと15),教育環境そのものが変化しているにも

関わらず,教育方法がその変化に対応できていない

こと15)から,シミュレーションを用いた看護基礎

及び継続教育に期待が寄せられている。

 本研究では,シミュレーションを用いた看護基礎

教育の効果について看護学生の看護技術修得度で評

価したところ,臨地実習と合わせてシミュレーショ

ンによる経験が影響していることがわかった。そこ

で,学生が限られた授業時間の中で効果的に経験を

重ねていけるように,シミュレーションの進め方

について検討していく必要があることが課題となっ

た。

 一方で,看護技術修得度の評価が低かった看護技

術は,臨地実習で経験が難しい身体侵襲度の高い項

目であり,シミュレーションをとり入れた学習方法

ではなかった。よって,シミュレーションの教育内

容を見直すことで,看護技術修得度の評価が低かっ

た看護技術についても学生の評価が高まる可能性が

示唆された。

 大滝ら6)は,実践能力の強化は,基礎教育のみな

らず卒後教育も含めた看護教育全体の課題とし,看

護基礎教育と看護継続教育の連携の必要性について

述べている。しかし,中山ら16)は,看護基礎教育

での臨床実践能力の育成について,教員と新人教育

研修を担当する臨床実習指導者では認識が異なり,

臨床実習指導者の方が高いレベルに設定していると

いった指摘をしている。そのため,看護基礎教育か

ら看護継続教育へスムーズに移行してくためには,

まず両者の認識の齟齬を修正し,互いに連携をとり

ながら教育を行って,看護者の育成を行うことが重

要となると考えられる。

ま と め

1 .看護技術修得度の平均得点が高かった項目は,

身体侵襲を伴わない日常生活援助技術が多かっ

た。

2.看護技術修得に活用した学習方法は,シミュ

レーションと臨地実習が同等と回答した看護技術

項目が最も多かった。また,シミュレーションの

活用度が高い項目は,臨地実習で経験する機会が

少ない看護技術であり,シミュレーションの活用

度が低い項目は,臨地実習で実践的に経験を重ね

て技術修得していた。

3.看護技術修得度の平均得点が高かった項目の方

が,平均得点が低かった項目よりもシミュレー

ションは役に立ったと評価している学生が多く,

看護技術修得度とシミュレーションの役立ち度に

関連がみられる可能性があった。

本研究の限界と課題

 今回の調査では,卒業時の看護技術の修得状況を

調査したいと考え,卒業に近い1月を配布時期とし

て設定した。しかし,回収率は42%にとどまり,卒

業年度によってばらつきがみられた。その原因とし

て,1月は国家試験に近く学生にとって多忙な時期

であり,協力を得られにくい状況にあったことが考

えられ,特に平成24年度卒業生については,その傾

向が顕著であった可能性がある。

 よって,今後調査をする際は,学生にとって多忙

な時期を避け,看護技術修得に関連する授業等がほ

ぼ終了する4年次後期前半などに配布時期を変更す

るなどして,多くの回答を得やすく全般的な傾向を

把握できるようにしていきたい。

謝  辞

 本研究は,2011~2013年度茨城県立医療大学プロ

ジェクト研究の助成を受けて行われた「チーム医療

におけるシミュレーション教育の構築に関する研究

(1146)」の一部データを用いた。研究にご協力いた

だいた本学看護学科学生の皆様に,心より感謝申し

上げます。

文  献

1 )豊増佳子.自らの実践の追経験と協調的リフレ

クションによる新人看護師研修の提案と評価

看護における割り込み業務対処に焦点を当て

て.日本看護学教育学会誌.2012;22(1):69-

82

2 )會田直子,佐々木麻紀,須藤悠輔,大西まゆみ,

遠藤敏子.呼吸に関する臨床実践能力向上のた

Page 13: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 49

めの教育プログラムの効果 新人看護職員の臨

床研修制度の導入に向けて.東邦看護学会誌.

2011;8:22-26

3 )佐々木秀美.戦後教育時間数の変化とその影響

に関する検討―看護教育課程改革がもたらした

もの―.看護学統合研究.2006;8(1):1-9

4)厚生労働省.平成23年患者調査.2011

5 )厚生労働省.看護教育の内容と方法に関する検

討会報告書.2011

6 )大滝純司,阿部幸恵監修.第1章シミュレーショ

ンによる教育の現状と課題、シミュレータを活

用した看護技術指導.日本看護協会出版会(東

京).2008;10

7)厚生労働省.看護基礎教育の充実に関する検討

会報告書.2007

8 )厚生労働省.新人看護職員研修ガイドライン.

2009

9 )藤岡完治,野村明美編.シミュレーション・体

験学習 わかる授業をつくる看護技術教育技法

3.医学書院(東京).2000;3

10)川守田千秋,小山眞理子,水戸優子,山口由子,

片平伸子,櫻井美奈,植村由美子.看護基礎教

育卒業時の看護技術の学習経験および習得度に

関する学生調査.神奈川県立保健福祉大学誌.

2012;9(1):47-59

11)片平伸子,小山眞理子,大石朋子,加納佳代子,

岡本典子,佐藤麗子,青柳美秀子.看護学生の

臨地実習における看護技術の経験と卒業時の看

護技術についての自信.日本看護学教育学会誌.

2012;22(2):65-71

12)小西美和子.学生の学びをつないでいくための

シミュレーション教育の位置づけ 特集「狙い」

に合わせたシミュレーション教育の方法.看護

教育.2013;54(5):354-360

13)遠藤順子,澁谷恵子,菅原真優美.看護基礎教

育における模擬患者を活用した教育効果の検討

-口腔ケア演習を通して(第2報)-.新潟青

陵学会誌.2013;5(3):32-40

14)厚生労働省.看護基礎教育における技術教育の

在り方に関する検討会報告書.2003

15)小西美和子,永島美香,藤原史博,堀理江,岡

谷恵子,増野園惠.看護基礎教育における卒業

前学生を対象としたフルスケールシミュレー

ション学習プログラムの開発.近大姫路大学看

護学部紀要.2012;5:41-48

16)中山洋子,横田基美.看護基礎教育から継続教

育における看護実践能力の育成内容.福島県立

医科大学看護学部紀要.2012;14:1-11

Page 14: 看護技術の修得状況とシミュレーションとの関連 -第1報 卒業時 … · キーワード:看護技術修得状況,シミュレーション,卒業時,学生

茨城県立医療大学紀要 第20巻50

The effect of simulation for clinical nursing skill acquisition:a focus on graduating university students ( rst report)

Masami Kuroda,Kumiko Ichimura,Yuki Takahashi

Department of Nursing, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences

Abstract

This paper aims to identify university students’ level of clinical nursing skill acquisition at the time of graduation

and the effectiveness of pedagogical methods, particularly simulation-based training. Questionnaires were

completed by a total of 154 seniors who graduated in academic years 2011 to 2013 at a nursing school (not including

transfer students).

Three main results were found. (1) The most fully acquired nursing skill (scoring highest in the questionnaires)

based training and practice as effective learning methods. (3) Simulation-based training was more useful for those

Clinical Nursing Skill Acquisition items with a high mean score than those with a low mean score.

Overall, the study results suggest that simulation-based education can help students enhance their acquisition of

clinical nursing skills before graduation.

Key words:clinical nursing skill acquisition, simulation, graduating university, student