世界トップクラスのノックダウン効率を実現 · を有する粒子 脂質 ......

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1 世界トップクラスのノックダウン効率を実現 ~高機能pH感受性カチオン性脂質による核酸送達システム~ 北海道大学大学院薬学研究院 薬剤分子設計学研究室 助教 佐藤悠介

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1

世界トップクラスのノックダウン効率を実現~高機能pH感受性カチオン性脂質による核酸送達システム~

北海道大学大学院薬学研究院

薬剤分子設計学研究室

助教 佐藤悠介

2

細胞質

siRNA

RNA-induced silencingcomplex(RISC)形成

siRNA配列に相補的なmRNA

mRNA切断

〜21 nt

siRNA

siRNAの体内動態

腎排泄

RNasesによる分解

肝臓

siRNAは静脈内投与後

酵素的分解や腎排泄によって速やかに排除される

Drug Delivery System (DDS)

RNA interference (RNAi)

核酸治療におけるDrug Delivery System(DDS)の必要性

3

クッパー細胞

肝類洞血管内皮細胞

肝実質細胞

ApoE

LDLR

ApoE-LDLRを介した肝細胞選択的な取り込み

肝臓

++

+

pH低下を感受して正に荷電

pH 7.4

N

O

O

N

O

OH+

pH<6.5

pH感受性脂質

++

+

+

+

+

++

+

+

細胞内バリア突破(エンドソーム脱出)

エンドソーム

RNA干渉による遺伝子発現抑制

肝臓標的型LNP

50 nm

透過型電子顕微鏡像

直径約60 nmの油滴様構造を有する粒子

脂質成分:pH感受性カチオン性脂質/コレステロール/PEG脂質

siRNAsiRNAをナノ粒子内部に

封入することで生体内安定化

肝実質細胞

基盤技術:肝臓標的型脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle; LNP)

4

>10 mg/kg

~0.06 mg/kg

~0.01 mg/kg

従来

技術

独自

技術

約1,000倍の活性向上に成功

DODAP

第一世代(YSK05)

第二世代(YSK13)

基盤技術:独自のpH感受性カチオン性脂質の開発

Yamamoto N, Sato Y et al., J. Hepatol. 64: 547-555 (2016)Sato Y et al., Mol. Ther. 24: 788-795 (2016)

Watanabe T, Hatakeyama H, Matsuda-Yasui C, Sato Y et al., SciRep 4, 4750 (2014)Sato Y et al., J. Control. Release 163: 267-276 (2012)

肝臓における活性(F7, ED50)

5

2017/9/20 Press Release

APOLLO Phase 3 study of patisiran, an investigational RNAi therapeutic being developed for patients with hereditary ATTR amyloidosis with polyneuropathy

神経障害スコア, QOL P<0.00001 vs. Placebo

非常に良好な結果が得られ来年にも承認される見通し→ 世界初のsiRNA医薬の実現が期待されている

Patisiran (Alnylam Pharmaceuticals)

pH感受性カチオン性脂質(DLin-MC3-DMA)

現在最も開発が進んでいるsiRNA送達システム

競合技術について

6

従来技術の問題点

・低いエンドソーム脱出効率(2-4%)-最も開発の進む技術でもbioavailabilityは低く

大きな伸びしろを残している

・蓄積毒性の懸念-pH感受性カチオン性脂質の生体内における

蓄積が細胞障害を引き起こす

7

新規pH感受性カチオン性脂質開発における基盤技術

YSK12 PCT/JP2015/064196siRNA YSK12-LNP

Diameter: 180±6 nmPDI: 0.072±0.024Zeta-potential: 5.8±0.6 mVsiRNA encapsulation: 94.2±0.8%

BMDCにおける遺伝子ノックダウン

世界で最も汎用かつ強力なsiRNA導入試薬

ヒト免疫細胞株における遺伝子ノックダウン

核酸導入の困難な多くの細胞種に強力な遺伝子ノックダウンを誘導可能

8

新規pH感受性カチオン性脂質開発の戦略

誘体化

変更①

変更②

足場2

足場2親水性部位(第3級アミノ

基含有)

OH足場1

足場1

エステル結合(生分解性リンカー)

リンカー → 保存

模式図 親水性部位: 主にpKaに影響

足場1: 足場全長、疎水性に影響

足場2: 疎水性、流動性等物性に影響

構造・物性・機能の多様性

親水性部位 × 足場1 × 足場2

YSK12 PCT/JP2015/064196

多様な構造を有するpH感受性カチオン性脂質のライブラリを構築することで各アプリケーションに最適なシステムを選定することが可能

9

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

3 4 5 6 7 8 9 10

%Charg

ed lip

id

pH

親水性部位の化学構造と酸乖離定数(pKa)

CL1A

CL2A

CL3A

CL4A

CL5A

CL6A

CL7A

CL8A

CL9A

CL10A

CL11A

CL12A

CL13A

CL14A

CL15A

Benchmark

親水性部位の構造を変化させることで任意の酸乖離定数(pKa, 4.5-8.2)に調節可能

親水性部位を変化させたpH感受性カチオン性脂質を含有する各LNPのpKaを測定

10

0.1

1

10

4.5 5.5 6.5 7.5 8.5

IC50

(nM

siRNA)

pKa

各アプリケーションにおける遺伝子ノックダウンのpKa依存性

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

1.2

4.5 5.5 6.5 7.5 8.5

CD31 e

xpre

ssio

n

pKa

0

20

40

60

80

100

120

140

4.5 5.5 6.5 7.5 8.5

%FVII

pro

tein

pKa

親水性部位を変化させたpH感受性カチオン性脂質を含有する各LNPの遺伝子ノックダウン活性とpKaとの関連性を評価

HeLa細胞(in vitro) 肝実質細胞(in vivo) 肝臓血管内皮細胞(in vivo)

標的細胞(アプリケーション)によってそれぞれ異なる最適なpKaが存在

pKa調節技術によって標的ごとに最適なLNPを選定することが可能

11

0.1

1

10

6.2 6.4 6.6 6.8 7 7.2 7.4

IC50

(nM

siRNA)

pKa

従来よりも強力なin vitroノックダウン活性を示す新規足場構造を同定

In vitro培養細胞における遺伝子ノックダウン活性:足場構造の影響

疎水性足場構造が異なるpH感受性カチオン性脂質を含有する各LNPのin vitro培養細胞における遺伝子ノックダウン活性を評価

従来の疎水性足場

新規の疎水性足場

親水性部位を固定

12

世界トップクラスの遺伝子ノックダウン活性(ED50 0.0025 mg/kg)を達成

In vivo肝臓における遺伝子ノックダウン活性

CL4H6(pKa 6.30)

YSK05-LNP(第1世代)

0

20

40

60

80

100

0.0005 0.005 0.05 0.5

%FVII

pro

tein

siFVII dose (mg/kg)

MC3-LNP

0

20

40

60

80

100

0.0005 0.005 0.05 0.5

%FVII

pro

tein

siFVII dose (mg/kg)

YSK13-LNP(第2世代)

0

20

40

60

80

100

0.0005 0.005 0.05 0.5

%FVII

pro

tein

siFVII dose (mg/kg)

CL4H6-LNP(第3世代)

各LNPのマウス肝実質細胞におけるFVIIノックダウン活性を評価

13

In vivo肝臓内におけるsiRNAの残存量

R² = 0.7332

0

20

40

60

80

100

0.1 1 10 100

%FVII

pro

tein

siRNA (ng/g, 24h)

各LNPを0.01 mg siRNA/kgでICRマウスに静脈内投与

→ 各時間における肝臓中siRNAをqRT-PCR法により定量

文献値(ED50: 1.65±0.80 ng/g, ED80: 15.4±8.0 ng/g)と同等の値→ 24 hr後のデータは遺伝子ノックダウンに関与するsiRNAを定量している

CL4H6-LNPが効率的にエンドソームから脱出しsiRNAを細胞質へ送達していることを示している

Landesman Y et al. Silence 2010, 1:16

0

20

40

60

80

100

120

140

160

YSK05 YSK13 CL4H6

siRNA (

ng/g liv

er)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

YSK05 YSK13 CL4H6

siRNA (

ng/g liv

er)

4.8倍

投与30分後 投与24時間後 ノックダウン効率との相関

第1世代 第2世代 第3世代 第1世代 第2世代 第3世代

17.3倍

14

YSK05-LNP(第1世代)をマウスに静脈内投与後の肝臓を観察

核(Hoechst33342) 血管(FITC) 脂質(DiI) siRNA(Cy5) Bars: 50 mm

Merge siRNAs

細胞質中に拡散したsiRNAが一部観察される(黄色矢印)

In vivo肝臓内のsiRNA局在

15

核(Hoechst33342) 血管(FITC) 脂質(DiI) siRNA(Cy5) Bars: 50 mm

Merge siRNAs

YSK13-LNP(第2世代)をマウスに静脈内投与後の肝臓を観察

細胞質中に拡散したsiRNAが一部観察される(黄色矢印)

In vivo肝臓内のsiRNA局在

16

In vivo肝臓内のsiRNA局在

CL4H6-LNPがsiRNAを効率的に細胞質へ送達している

Merge siRNAs

核(Hoechst33342) 血管(FITC) 脂質(DiI) siRNA(Cy5) Bars: 50 mm

CL4H6-LNP(第3世代)をマウスに静脈内投与後の肝臓を観察

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In vivoにおける安全性

10

100

1000

10000

100000

PBS YSK13-C3 CL4H6

(IU

/L)

AST ALT

各LNPを単回投与した際のマウスにおける肝毒性を評価

Dose: 7 mg siRNA/kg (ED50の2,800倍)

従来技術よりも高い安全性を実現

(第2世代) (第3世代)

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新技術の特徴・従来技術との比較

•脂質ライブラリの構築と酸乖離定数を任意に調節する技術によって応用の多様性が拡大。

•エンドソーム脱出効率が従来技術と比較して向上したことで世界トップクラスの遺伝子ノックダウン活性が実現した。

•高量投与時における安全性が向上した。

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想定される用途

•細胞療法やin vivo肝実質細胞などを標的としたsiRNA医薬への応用

•siRNA以外の核酸医薬への応用

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実用化に向けた課題

•体内動態や保存安定性も考慮に入れた製剤処方の最適化

•製剤の品質保証に必要な構造的・物性的なキャラクタリゼーション

21

企業への期待

siRNA等の核酸医薬分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。

治療標的が決まっている企業と共同でLNPの最適化を進めることが可能。

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本技術に関する知的財産権

•発明の名称:siRNA細胞内送達のための脂質膜構造体

•出願番号 :特願2017-117708

•出願人 :北海道大学

•発明者 :佐藤悠介、原島秀吉

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お問い合わせ先

北海道大学 産学・地域協働推進機構

産学推進本部 産学協働マネージャー 佐藤麻衣子

TEL 011-706 - 9554

FAX 011-706 - 9550

e-mail m - s a t o @ m c i p . h o k u d a i . a c . j p