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Doing business in Myanmar 改訂 4 版 www.pwc.com/jp ミャンマー投資ガイド 日本語版

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Page 1: Doing business in Myanmar - pwc.com · 2.6 ミャンマーにおける主要ディール 16 2.7 経済特区 21 3. ミャンマーのインフラ 22 3.1 ミャンマーインフラ事情

Doing businessin Myanmar

改訂 4 版

www.pwc.com/jp

ミャンマー投資ガイド日本語版

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2 ミャンマー投資ガイド 日本語版

1. はじめに 4

2. 経済概況 8

2.1 経済展望 10

2.2 外国投資を取り巻く規制環境 11

2.3 主要外国投資 12

2.4 主要外国投資セクター 13

2.5 国内投資 14

2.6 ミャンマーにおける主要ディール 16

2.7 経済特区 21

3. ミャンマーのインフラ 22

3.1 ミャンマーインフラ事情 22

3.2 電力セクター 24

3.3 交通セクター 26

3.4 通信セクター 31

3.5 保健医療セクター 33

3.6 都市化 35

3.7 経済特区 37

3.8 総論 39

4. ミャンマー金融セクター 41

4.1 金融セクターの最新開発状況 41

4.2 銀行一覧 46

4.3 非銀行系金融機関一覧 50

4.4 保険会社一覧 52

4.5 その他有益情報 54

5. ミャンマーの税制 55

5.1 法人所得税 55

5.2 個人所得税 61

5.3 商業税 63

5.4 その他の税制 64

目次

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Doing business in Myanmar 3

6. 人事・雇用法 66

6.1 外国人の雇用 66

6.2 労働許可証取得手続きとその要件 (経営者、管理者、専門家)

67

6.3 労働法 67

6.4 ミャンマー永住権 67

7. その他の留意事項 68

7.1 商業登記と許認可制度 68

7.2 外国為替規制 69

7.3 外国為替 69

7.4 外国人による土地や不動産の保有 70

7.5 仲裁法 71

7.6 経済・貿易 71

8. ミャンマーの会計監査制度 73

8.1 法律上の義務 74

8.2 財務報告基準 74

8.3 会計監査制度 76

9. ミャンマーにおけるビジネス 77

9.1 法人形態 77

9.2 外国投資規制 80

9.3 投資優遇措置 81

9.4 投資保証および保護 84

9.5 検討中の新しい法律 84

10. ミャンマー概要 85

10.1 ミャンマー動向 85

10.2 歴史概略 87

10.3 人口統計 88

10.4 政治体制・内政 89

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4 ミャンマー投資ガイド 日本語版

1. はじめにこのミャンマービジネスガイドは私どもにとって改訂4版となります。2016年、ミャン

マーは長らく待たれていた、政権交代を成し遂げました。私どもは今回の改訂ビジネスガイドで、ミャンマー経済発展状況に関する最新情報を、包括してお届けすることを大変嬉しく思っております。

ミャンマーは数カ月間に及ぶ非常に活気に満ちた選挙戦からの総選挙を経て、政権交代という大方の予想どおりの結果に至りました。2015年度は自然災害と洪水の影響により、経済成長率は前年度の8.5%を下回る7.2%となったにもかかわらず、外国投資の承認額は94億米ドルに上り過去最高を記録しました1。このうちの40億米ドルは2016年3月の年度末間際に、ミャンマー投資委員会(MIC)による承認を経て計上されたものです2。これは、新政府が最高値を達成するために駆け込み承認を行ったと同時に、総選挙での国民民主連盟(NLD)の勝利を受けて、投資家がミャンマー投資に強い自信を見せたことによるものと思われます。2016年1月には数年に及ぶ遅延を経て、ようやくコンドミニアム法が制定され、外国人投資家は一定の条件を満たすコンドミニアム物件の40%までを、購入することが認められることとなりました。第二期外国銀行の登録承認には13の銀行が名乗りを上げ、以下の4行が CBM(ミャンマー中央銀行)より仮承認を得ました。BIDV(ベトナム投資開発銀行)、E.Sun Commerical Bank(玉山銀行)、Shinhan Bank(新韓銀行)、State Bank of India(インドステイト銀行)。国内4社目の電信会社としてベトナム通信オペレーター会社、Viettelとの合弁企業が必要規制要件を提出完了次第、近く新政府より最終承認を受ける予定です。 ミャンマーの経済特区であるThilawa(ティラワ)地区は2015年9月にオープンし、100の外国企業がこの地区にて事業を行うことが予想されています。また、Dawei(ダウェー)経済特区とKyaukphyu(チャオピュー)経済特区の開発も認可され、外国投資家(特に日本、タイ、中国からの投資)の誘致が期待されています。

総選挙後の高揚感に引き続き、樹立間もない新政府 NLD は経済を復興、再活性させるという困難な課題に直面しています。ミャンマーの新議会は現存の36省庁を21省庁に集約することを可決し、新政府 NLD がスリムで効率的な、政府運営に専心していくことを示しています。ミャンマー財務長官は経済成長がミャンマーの最優先課題であり、金融部門の改善、税制の強化および地域開発の振興が要であると発表しました3。観光業もまた活況を呈しています。観光省は2015年には500万人であった外国人旅行者の数が2016年には600万人に上ると予測しています4。経済発展の促進にはインフラ整備の、全面的な見直しが必要です。アジア開発銀行は、ミャンマーが類似した経済状況の他国と同等の交通網を整備し、追随するには600億米ドルの投資が必要だと試算しています。強固な送電系統と安定した電力供給も経済成長に不可欠です。そしてこれらの変革がミャンマーの長期経済成長の莫大な可能性を実現させるのです。

この最新版ガイドが引き続き皆様のミャンマービジネスにとりまして有益な指針となれば幸いです。

1 “ミャンマー外国投資額過去最高、2015/16”、ロイター、11/04/20162 “DICA2017年より実際の外国投資額を調査”、ミャンマータイムス、6/04/20163 “財務長官経済最優先”、アジアタイムス、29/03/20164 “観光省、600万人の観光客の誘致を目標”、ミャンマータイムス、26/03/2016

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Doing business in Myanmar 5

Jovi Seet Senior Executive DirectorPwC MyanmarOffice: +959 440230 [email protected]

Jasmine Thazin Aung PartnerPwC MyanmarMobile: +959 450023 [email protected]

Chris Woo Managing DirectorTax ServicesPwC Myanmar (based in Singapore)Office: +65 6236 [email protected]

Ong Chao ChoonManaging Director Advisory Services PwC Myanmar (based in Singapore)Office: +65 6236 [email protected]

西谷 和芳 PartnerDeals AdvisoryJapan Desk LeaderJADOT LeaderPwC SingaporeOffice: +65 6236 [email protected]

PwC Myanmar is located at:

PricewaterhouseCoopers Myanmar Co., LtdUnit 02, 04, 06, Level 11, Myanmar Centre Tower 1,No. 192, Kabar Aye Pagoda Road, Bahan Township, Yangon, Myanmar

お問い合わせ先(ミャンマー・シンガポール)

PwCあらた有限責任監査法人〒104-0061 東京都中央区銀座8-21-1住友不動産汐留浜離宮ビル03-3546-8450(代表)

PwC税理士法人〒100-6015 東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル15階03-5251-2400(代表)

お問い合わせ先(日本)

PwCアドバイザリー合同会社(M&A、インフラ関連)

〒104-0061 東京都中央区銀座8-21-1住友不動産汐留浜離宮ビル03-3546-8480(代表)

PwCコンサルティング合同会社〒100-6921 東京都千代田区丸の内2-6-1丸の内パークビルディング03-6250-1200(代表)

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6 ミャンマー投資ガイド 日本語版

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Doing business in Myanmar 7

略記号一覧 略号 定義・名称AEC ASEAN 経済共同体CA Myanmar Companies Act 会社法CBM Central Bank of Myanmar ミャンマー中央銀行CCTO Company Circle Tax Office 税務当局CEPT Common Effective Preferential Tariff 共通有効特恵関税CRO Companies Registration Office 事業登録局DICA Directorate of Investmentand Company Administration 企業投資管理局FEMB Foreign Exchange Management Board 為替管理局FEML Foreign Exchange Management Law 外国為替管理法FERA Foreign Exchange Regulation Act 1947 外国為替規制法IFRS International Financial Reporting Standards 国際会計報告基準ILO International Labour Organisation 国際労働機関IRD Inland Revenue Department 内国歳入局ITL Income Tax Law 所得税法LTO Large Taxpayers’ Office 高額納税局MAC Myanmar Accounting Council ミャンマー会計評議会MEB Myanmar Economic Bank ミャンマー経済銀行MFIL Myanmar Foreign InvestmentLaw 外国投資法MFRS Myanmar Financial ReportingStandards 会計報告基準MFTB Myanmar Foreign TradeBank ミャンマー外国貿易銀行MIC Myanmar Investment Commission ミャンマー投資委員会MIL Myanmar Investment Law ミャンマー投資法MMK Myanmar Kyat チャットSCB State CommercialBank 国営商業銀行SEE State-Owned Economic Enterprise 国営企業SEZ Special Economic Zone 経済特区YSX Yangon Stock Exchange ヤンゴン証券取引所

PwCのサービス:1 M & Aアドバイザリー

2 資本プロジェクト・インフラアドバイザリー

3 市場エントリーストラテジー・アドバイザリー

4 株式上場・他資本市場

5 コーポレートガバナンス・リスクアドバイザリー

6 税制・関税・物品税アドバイザリー

7 アシュアランス

8 ビジネス・テクノロジーコンサルティング

9 人事アドバイザリー&海外異動サービス

10 会社設立・コーポレートセクレタリー

11 経営改革・事業再生

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8 ミャンマー投資ガイド 日本語版

2016年の初めに、長らく待たれていたミャンマー政権交代が平和的に実現しました。大きな不安定要因が排除されたことにより、投資家は強い信任の意思表示をし、会計年度末には外国投資が復活しました。

2. 経済概況

新政府の下、新ミャンマー投資法と会社法の改正は、まだ保留になっており、新政府の下、改めて協議が行われます。外国投資法令は引き続き高いレベルの監督基準と法律・規則の施行がなされることが 予想されます。法令制定者は小規模都市や地方の開発も考慮しています。 インフラの機能向上、特に交通網とエネルギーセクターについてが緊急の重要議題です。

多くの課題があるにもかかわらず、将来の展望は明るいものと考えています。金融・資本市場セクターは確実な発展を示しています。最初の上場企業 がヤン ゴン証券取引所で取引を開始、第二期銀行業ライセンスの承認は過剰な関心を集めました。経済特区の開発も進められ、ティラワ経済特区ゾーン A がオープン、チャオピュー経済特区とダウェー経済特区の開発も承認されました。

2011年に始まった一般的に準市民政府と言われる時代から、政治、社会経済前線において一連の改革が進行中です。このような改革が積み重なったことにより、大方の経済制裁が解除され、かつてない経済成長と、最終的に、平和的に選挙が行われ、国民民主連盟 NLD が率いる新政府への移行が実現しました。

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Doing business in Myanmar 9

新政府には高い期待が寄せられており、政府の課題はあらゆる面で向上を示しつつ、この期待に答えていくことにあります。国内のインフラ整備は有形、無形共に長期にわたって行われておらず、この課題の膨大さを軽く見ることはできません。

新政府のよりどころはミャンマーが持つ戦略的な強みです。アジア最後のフロン ティア市場として、非常に大きな成長の可能性(北朝鮮を除く)を持っています。若年人口と低賃金ベースの労働力(交通網と非効率さは初期の段階ではこの優位性を損いますが)中国とインドに挟まれた地理的に重要な位置、豊富な天然資源、これらはミャンマーが、将来近隣地域で大きな成功を収める国の一つとして極めて有望であることを示しています。

ミャンマーには豊富な天然資源があります。耕作地、森林、鉱物を始め、淡水、海洋資源、宝石、翡翠などがあります。ここ数年で、ミャンマーでは天然ガスの輸出業者として頭角を現しています。近隣諸国への天然ガス輸出はミャンマーにとってますます重要な収益源となっています。

ミャンマーでは経済発展の兆しがみられます。例えば、ウエスタンフードチェーン の KFC やグロリア・ジーンズなどが第1号店をヤンゴン市内にオープンさせました。2015年12月には、5階建て、100店舗以上の小売店とオフィス棟を併せ持つ複合施設、ミャンマープラザがオープンしました。ティラワ経済特区 A は2015年9月にオープンし、次の5年間で、100の企業を誘致する予定です。マスターカードは、最近ミャンマー国内で、従来型の磁気カードを飛び越えて、ICカードを導入しました。

1年の間に数回の洪水と、地滑りにみまわれたにもかかわらず、2016年3月終了の(FY15/16)営業年度には7.2%の経済成長率が予想されています。経済は引き続き堅調です。観光客は年成長率20%の伸びで2016年には600万人に上ると予想されています。外国投資承認は過去最高を記録し、2015/16営業年度は94億米ドルに上りました。

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10 ミャンマー投資ガイド 日本語版

2.1 経済展望

次 の5年間 で8 % -9 % の 急速 な 経済成長が見込まれています1。主要プロジェクト、特に工業団地、エネルギー運輸産業への外国投資が行われています。 ミャンマーの交通システムは、商業用、観光旅行者、両者の需要の増加を支えるためには大規模な改良が必要です。アジア開発銀行はミャンマーの交通システムを2030年までに同様な開発途上にある近隣諸国の水準に肩を並べるには600億米ドルが必要であると予測しています。

法律と規定はの改正は、一層外国投資家を誘致することになります。ヤンゴン証券取引所が開設され、最初の取引が2016年3月に行われました。これにより、現地事業の株式市場利用が拡充され、事業促進につながります。多額の外国投資が流入していることからも明らかなように景況感は良好です(2014年度の70億米ドルと比較して2015年度は94億米ドル)。

経済改革には引き続き政治的な自由化と安定性が求められます。総選挙中、国民民主連合(NLD)は公約として五つの経済プランに焦点をあてました。倹約財政スリムで効率的な政府、財政の安定、機能性インフラと農業活性化、金融財政の安定です。

新政権の発足後、36あった省庁が21に集約されました。これにより、400万米ドルが節約され、教育、その他の部門に使われます2。政府のスリムで効率的な政府に対する尽力は、経済改革の良い兆候として外国投資家に歓迎されました。

長期的な外国投資の取り込みと維持には継続的な経済改革が必要です。不動産やエネルギー部門のインフラ開発が実施されていますが、これには時間と資本がかかります。政府は主要インフラプロジェクトへの支援で引き続き赤字予算になると予測しています。ミャンマー政府は国際援助団体による、より多額の支援を要請し、国や税金からの借入金を減らそうとしています。

ミャンマーの今後の成長の鍵となるのは、優秀で、教育を受けた、労働力の供給です3。先の軍事政権期間中、多大な数の技術者、知識人、事業家が海外に移住しました。近年、海外移住から帰国したミャンマー人が国の民主化移行に寄与していることが見受けられます。教育セクターにも追加の政府資金が必要とされています4。

ミャンマーの高い労働生産性、資本運用、導入の改善、競争力を高めることによる操作効率の向上を見込んで、多くの人々がミャンマー経済は2030年までに4倍になると予想しています5。

1 “エコノミスト、インテリジェンスユニット、http://country.eiu.com/myanmar2 “ミャンマー議会、省庁を21に集約”、アジアタイムス、21/03/20163 “ミャンマー無限の可能性”、アジア開発銀行、08/20144 “教育セクターへの資金拡大を、声高まる”、ザ・ネーション、16/03/20155 “ミャンマーの時:めったにない機会、大きな課題”、マッキンゼーグローバルインスティチュート、06/2013

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Doing business in Myanmar 11

2.2 外国投資を取り巻く規制環境

外国投資に不可欠な二つの法律の草案が、保留になっており、新政府の下、改めて、協議されることになっています。

2012年11月のミャンマー外国投資法(MFIL)が導入されてから、幅広いセクターで外国投資の規制環境に進展が見られます。新ミャンマー投資法(MIL)の草案が練られ、民間からのフィードバックが求められています6。新ミャンマー投資法(MIL)草案が制定された場合、2012年 に 制定され た 外国投資法(MFIL)と2013年に制定されたミャンマー市民投資法が統合されて、差し替えられます。この新外国投資法は政府の直接投資を支援する姿勢を示しています。

100年間続いた会社法を現在策定中です。新ミャンマー会社法は、銀行・金融セクターの経済刷新戦略を促進する重要な基盤となります。ヤンゴン証券取引所の設立もこの一環で、中小企業への支援を提供しています7。2016年ミャンマー連邦税法が施行され(2015年の連邦税法の改正)商業税規則について、一連の変更を提示しています。

仲裁法は1944年の旧法から改正され、2016年1月5日に制定、施行されました。国内および国際商業紛争を公正かつ有効的な方法で解決する役割を担ってい ます。

長らく待たれていた、コンドミニアム法が2016年1月に制定されました。現在、外国人は許可されたブロックのうち40%までを購入する権利があります。コンドミニアムは、2万平方メートル以上の面積を持つ6階建て以上の建物で承認を受けたものでなければなりません。

6 “ミャンマー、投資法の近代化をスタート”、ザ・ネーション、9/03/20157 “会社法改正、まだ策定中、ADBによる”、ザ・ネーション、9/10/2014

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12 ミャンマー投資ガイド 日本語版

2.3 主要外国投資

2016年3月の時点では、ミャンマーへの主要外国投資国のトップは依然中国(132企業、投資額180.7億米ドル)とシンガポール(209企業、投資額130.6億米ドル、これには他国出資者によって設立されたシンガポール法人も含まれる)続いてタイと香港(これには香港法人で中国にビジネス主幹がある企業も含まれる)と英国(バージン諸島とバミューダ島を含む)となっています。

最近のトレンドとして、韓国、マレーシア、オランダといった国々も莫大な投資を行っています。日本は政府高官の訪問と協力援助機構であるJICA の積極的に活動参加により、大きな実績を残しています。

No. 国 百万米ドル %

1 中国 18,072 28.36

2 シンガポール 13,066 20.51

3 タイ 10,500 16.48

4 香港 7,351 11.54

5 英国 4,075 6.40

6 韓国 3,489 5.48

7 マレーシア 1,911 3.00

8 オランダ 990 1.55

9 インド 733 1.15

10 ベトナム 693 1.09

合計 60,881 95.56

出典:DICA、ミャンマー経済開発省、31/01/2016

表1:国別外国投資額 2016年3月31日現在

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Doing business in Myanmar 13

No. 産業別 百万米ドル %

1 オイル・ガス 22,410 35.17

2 電力 19,685 30.89

3 製造業 6,586 10.34

4 運輸・通信 5,085 7.98

5 不動産 2,898 4.72

6 鉱業 2,898 4.55

7 ホテル観光業 2,446 3.84

8 畜産・漁業 461 0.72

9 農業 250 0.39

10 工業用地 203 0.32

11 建設 38 0.06

12 その他のサービス 650 1.02

合計 63,719 100.00

2.4 主要外国投資セクター

主要外国投資部門は、現在のところオイル・ガスとインフラ(発電所・運輸・通信)次に製造業・不動産開発・鉱業・ホテル観光業となっています(表2参照)。

出典:DICA、ミャンマー経済開発省、31/01/2016

表2:部門別外国投資 2016年3月31日現在

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14 ミャンマー投資ガイド 日本語版

No. 産業別 10億MMK %

1 製造業 2,345 20.17

2 不動産開発 2,136 18.37

3 運輸 1,889 16.25

4 ホテル観光 1,283 11.04

5 建設 943 8.11

6 工業施設 575 4.95

7 電力 449 3.87

8 炭鉱 137 1.18

9 畜産および漁業 59 0.51

10 農業 49 0.42

11 その他 1,758 15.13

合計 11,625 100.00

2.5 国内投資

国内投資は主に製造業、不動産開発、運輸、ホテル観光分野に集中しています。観光省は政治体制の移行が成功したことを受け、2015年には468万人であった外国人旅行者の数が2016年には600万人に上ると予測しています8。さらに、国内投資は引き続き不動産開発およびインフラ整備の発展に重要な役割を果たしていくと考えられます。

出典:DICA、ミャンマー経済開発省、31/01/2016

8 “環境省、海外旅行客600万人を目標”、ミャンマータイムス、22/03/2016

表3:部門別国内投資額 10億MMK 2016年3月31日現在

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Doing business in Myanmar 15

国内投資に参入している主な会社は:

• 軍傘下ミャンマーインベストメントホールディングス(MEHL)とミャンマーエコノミックホールディングス(MEC) MEHL は宝石生産他、銀行、観光、運輸業を含むさまざまな産業に従事する複合企業です。MEHL は 最近、経営改革のため、公開会社への変更を申請すると発表しました9。MEC は天然資源を軍に供給する複合企業ですが、最近他の11の企業と合弁を組成し、ベトナムの通信会社 Viettelとパートナーシップを組み、ミャンマーで4社目となる電信会社の登録許可申請を行いました10。

• ミャンマー政府は国営(SOEs)の民営化を計画

民営化計画は2010年より始まり、国内投資の新たな機会をもたらしています。例えば、ローカル企業の KBZグループはミャンマー鉄道の所有権20%を政府から買い取り、完全子会社化する考えを表明しました。ヤンゴン電力供給公社 は 最終的 に民営化を目的とし2014年に政府公社として発足しました11。2016年2月には、ミャンマー鉄道がミャンマー鉄道が、北シャン州のゴッティを走る2編成のチャーター列車の総合について民間企業に入札を呼びかけました12。国営企業の民営化は引き続き政府にとって経済牽引力になると思われます。

• 海外上場ミャンマー企業は海外投資家とパートナーシップを組んでミャンマーへの投資を行っています。一例として、シンガポールで上場しているヨマストラテジックホールディングスは KFCと提携し、国内初のアメリカンファーストフードチェーンを2015年にオープンさせました。

• 国内民間 / 公共機構 / 機関同様にビジネスの拡大を模索しています。ファーストミャンマーインベストメント(FMI)はヤンゴン証券取引所に最初に上場した企業です。さらに続いて、6社のミャンマー企業が上場を果たしました13。ファーストプライベート銀行、Great Hor Kham 公社、ミャンマーアグリビジネス公社(MAPCO)、 ミャンマー市民銀行、ミャンマーティラワSEZホールディングス。

9 “MEHL、公共企業へと申請”、ミャンマータイムス、1/04/201610 “Viettelが第4電信会社のタイアップ先に選ばれる”、ミャンマータイムス、25/03/201611 “ヤンゴン電力供給公社、最初のを予算を受け取る”、ミャンマータイムス、2/03/201512 “鉄道公社ゴッティ、チャーター列車を民営化”、ミャンマータイムス、15/02/201613 “各企業、来年のヤンゴン証券取引所への上場を準備”、ミャンマータイムス、15/12/2015

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16 ミャンマー投資ガイド 日本語版

2.6 ミャンマーにおける主要ディール

クロスボーダー M&A は過去2年間勢いを増しています。2015年から2016年にかけて予定されているいくつかの主要なディールは下記のとおりです。

オイル・ガスセクター

• 中国国営商品取引会社の広東振戎能源有限公司はローカル企業と合弁で工費30億米ドルの石油精製所の建設許可を政府から許可されました。この中国企業がプロジェクトの70%を所有権を持つことになります14。

• MPRLE&PカンパニーはMPRLとオーストラリアのウッドサイドが操業しているオフショアガス田(ShweYeeHtunガス田 A-6鉱区内)にガスを発見したと発表しました15。

• シンガポールに拠点を置くプーマエナジーは2016年の初めにミャンマーのティラワ港に9万キュービックメーターの容積率を持つ工費1億米ドルの製油貯蔵施設を建設予定です16。

• シェブロンは推定売却額13億米ドルとされるガス田を売却予定です。情報によれば、オーストラリアのウッドサイド、タイ石油公社、を始め日本や中国を含む六カ国あまりの企業が関心を寄せるものと思われます17。

14 “中国企業、30億米ドルの製油所建設許可を政府から許可される”、ロイター、05/04/201615 “MPRL、ガスを発見ShweYeeHtun-1well、オフショアA-6鉱区”、ミャンマーディールブック、06/01/201616 “プーマエナジージョイントベンチャーディール”、ミャンマータイムス、24/11/201517 “シェブロン、ミャンマーのガス田資産13億米ドルの売却先模索”、ロイター、18/04/2016

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Doing business in Myanmar 17

電力

• シンガポールのセムコープユーティリティはマンダレーの Myingyan 地区に3億米ドルを投じ、255メガワットの天然ガス発電所の開発する合意を ミャンマー電力省長官と交わしました。セムコープユーティリティは80%の株を保有し、残り20%はパートナーであるMMID ユーティリティが保有し ます18。

• 中国スリージョージ社とミャンマー電力省は共同で国内デルタ地域に大型風力発電プロジェクトを開発する提携を結びました。Chaungtha(チャンウター)風力発電プロジェクトはエー ヤワディ地区のチャンウターに位置します19。

製造業

• 日本国内生産第2位の、日産自動車はパートナー企業であるタンチョン自動車のミャンマー既存工場を使い、サニーのコンパクトセダンの生産を始めると発表しました。そしてその後、バゴー地区に年1万台の生産能力を持ち、従業員300人を雇用する新工場の建設を予定しています20。

• 日本のキリンホールディングスは東南アジアビール市場最大手ミャンマーブルワリー社を5億6千万米ドルで買収しました21。これによりブルワリー社と前株主であるフレイザー&ニーブ社との株譲渡紛争が解決しました。この紛争はフレイザー&ニーブ社がタイべバレッジ社に買収されたことによって起こったものです。

運輸

• ANA ホールディングスはミャンマーShweThanLwin 社 が 保有 する航空会社ゴールデンスカイワールトと国際サービスを提供する合弁会社を設立しました。ANA ホールディングスが株式の49%を保有し、新航空会社名はAsianBlueアジアン・ブルーと呼ばれることが決定しました22。

• ミャンマーは政府は国営鉄道の再編成を検討中であり、鉄道運輸省のもと、国内および外国投資を誘致するために、公開会社にすることを計画しています23。

• 国営鉄道(下ミャンマー)と鉄道運輸省に対して、ヤンゴン中央駅を格上げする意向があることを表明し、このための投資を招聘しました。ホテル、レストラン、映画館、会議場、その他ビジネスを含む計画となっています。このプロジェクトには30億米ドルの予算を見込んでいます24。

18 “セムコープ天然ガス発電所建設にサイン”、ミャンマータイムス、8/12/201519 “チャイナスリージョージ、風力発電開発”、ミャンマーディールブック、4/03/201620 “日産、ミャンマー国内で今年から生産開始”、ロイター、17/02/201621 “キリン、ミャンマートップのブルワリーをF&Nから買収”、ロイター、19/08/201522 “ミャンマーと日本の合弁企業エアライン申請”、ミャンマータイムス、15/03/201623 “国営鉄道、公開会社へ”、ミャンマーディールブック、18/01/201624 “ヤンゴン中央駅、2017年5月にアップグレード計画”、ミャンマービジネストゥデイ、8/04/2016

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18 ミャンマー投資ガイド 日本語版

通信

• ベトナムの大手通信会社であるビッテル(Viettel)はミャンマーナショナルテレコムホールディング(現地企業11社による企業連合)と合弁会社を設立し、ミャンマーで4番目の通信事業会社になります25。

• オーレドゥーミャンマーはアジア開発銀行(ADB)とインターナショナルファイナンスコーポレーション(IFC)から3億米ドルの融資を調達しミャンマーの通信網の拡張を図ります26。

• 情報通信企業の Edotcoグループはミャンマー国内事業への2億米ドルの投資プロジェクト計画を打ち出しま した27。

• テレノールはヨマ銀行とパートナーシップを組み子会社を設立し、モバイルバンキングサービス、ウェーブマネー

(Wave Money)を 開始 する予定 です。テレノールは新事業の51%の株を保有、一方のヨマ銀行が49%を保有します28。

不動産

• 三菱地所はヤンゴンの中心地に4億4,200万米ドル(500億円)を投資し、オフィス、アパートメント、ホテルを含む複合施設プロジェクトを開始することを計画しています。プロジェクト予定地はヤンゴン中央駅の目の前、 4万平方メートルの敷地を再開発をします29。

• Shwe Taungグループはケッペルランド、パン・パシフィックホテルグループ、シティスクエア開発、ニューアジアイン ベストメントの各社とパートナーシップを組み、3億米ドルで複合施設ジャン クションシティの建設をする予定です。プロジェクト予定地はボーチョー アウン サン ロ ード(Bogyoke Aung San)とシェダゴンパゴタロード(Shwe Dagon Pagoda)の間にあり、オフィス、ホテル、ショッピングセンター、アパートメントを含む予定です30。

鉱業

• オーストラリアのバレンティス(Titeline Valentis)はミャンマーでの探堀・採堀事業に石炭採掘に2,670万米ドルを投資することをミャンマー政府から承認されました31。

25 “ミャンマー政府、ベトナムビッテルに通信ライセンス承認”、日経アジアレビュー、26/03/201626 “オーレドゥー、3億米ドルローン調達アイネットワークを拡大”、ミャンマーディールブック、8/02/201627 “Edotco、ミャンマーテレコムに2億米ドルの投資を計画”、ミャンマータイムス、18/01/1628 “テレノールとヨマ銀行、モバイルバンキングサービスをテスト”、12/12/201529 “三菱地所、ミャンマー駅に4億4200米ドルのプロジェクトを計画”、ミャンマーディールブック、

8/03/201630 “Shwe Taung、ヤンゴン市街に3億米ドルのプロジェクトを開始”、ミャンマータイムス、1/01/201531 “オーストラリアのバレンティス、石炭採掘に2,600万米ドルを投資”、ミャンマーディールブック、

2/04/2016

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Doing business in Myanmar 19

観光・ホスピタリティセクター

• 香港のフューチャーグループとPyay Phyo Tunインターナショナルは1億5千万米ドルを投資し、国際水準のシービュー・コンドミニアムおよびホテルの開発をタニンダーイ(Tanintharyi)地域ビェイ(Myeik)で行う予定です32。

• ヨマストラテジックホールディングスはヤンゴン市街にランドマークプロジェクトの開発のためのリース期間延長契約を締結しました。このプロジェクトは旧ビルマ鉄道省本庁舎をヤンゴン ペニンシュラホテル、高級レジデンス、商業施設を含む複合施設に改装する計画です33。

• スターウッドホテル・リゾートはミャンマーに新しく建設された商業ハブにシェラトンヤンゴンホテルを建設する契約でミャンマー市場に参入しました。このホテルはタムウェ郡区(Tamwe)カントージー湖(Kandawgyi)の近くに位置しています。シェラトンヤンゴン ホテルは375の客室、スパ、三つのレストラン、プールからフィットネスセンターまでのレクレーション施設を擁しています34。

保健医療

• ファーストミャンマーインベストとインドネシアの複合企業リッポグループは4億2,000万米ドル投資し、保健医療合弁企業を設立、ミャンマー国内への展開を正式に開始しました。この合弁事業は、国内に20の病院を建設することを目標にしており、次の10年で全国的なネットワークにする予定です。 3年-5年以内に最初の12棟の病院を建設することを重点においています35。

工業団地

• ミャンマー議会はチャオピューオイルガス経済特区の開発に意欲的で、中国の複合企業 CITIC が85%の株を保有し、残りをミャンマー公社が保有する計画を承認しました。チャオピュー経済特区は、ラカイン州に位置し140億米ドルの投資 が 必要とされます。4,200エーカーにわたって広がる地域に、深海港湾施設、工場、居住施設が含まれる予定です36。

畜産・漁業

• 地元メディアによれば、ヤンゴンの インセイン群区に6,200万米ドルをかけ、畜産・漁業の中央卸売市場が建設途中とのことです畜産・漁業灌漑省は民間建設会社と64.54エーカーの敷地に500の店舗を建設することで合意しました37。

農業

• 三井物産と東南アジ アの 化学品流通大手ベン・メイヤーと組んで BMM ベンチャーを設立、1,050万米ドルを投資する予定です。また地元企業のミャンマーアグリビシネスパブリック

(MAPCO)をパートナーとし、肥料の製造、販売、輸入を手がける新会社アグリファースト(AFC)を設立します38。

• 丸紅日本本社は、ミャンマーティラワ経済特区に1,850万米ドルを投資し、肥料の加工施設を建設予定です39。

32 “香港のフューチャーグループ、不動産プロジェクトに1億5,000万米ドル投資”、ミャンマーディールブック、2/04/2016

33 “ヨマホールディングス、ランドマーク計画始動”、ミャンマータイムス、4/01/201634 “スターウッドホテル、シェラトンヤンゴン開業でミャンマー参入”、ミャンマーディールブック、5/06/201635 “FMIの病院事業、MICから承認を得る”、ミャンマータイムス”、10/05/201536 “ミャンマー、チャオピュー経済特区にゴーサイン、中国 CITIC85%を保有”、ミャンマーディールブック、

30/12/201537 “政府、6,200万米ドルを畜産市場投資にサイン”、ミャンマーディールブック、21/02/201638 “アグリファースト、肥料の製造に1億500万米ドルを投資”、ミャンマーディールブック、14/03/201639 “丸紅、ミャンマーでの肥料工場に1億8千万米ドルを投資”、ミャンマーディールブック、10/02/2016

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20 ミャンマー投資ガイド 日本語版

小売

• グロリア・ジーンズはミャンマーの各都市へのフランチャイズ店展開を拡張する計画です。ヤンゴン市内に既に2店のコーヒー店がオープンしています。1号店は1月にミャンマープラザに、3月初めには新国際空港にも、オープンしました40。

• シンガポール証券取引所に上場し、ミャン マ ー に 焦点 をあてた 多角経営を行っているビジネスグループ、 ミャンマーインベストコは、ヤンゴン国際空港の新ターミナルで小売スペースを運営することで合意し契約しました。新ターミナル内の、およそ6,725平方メートルのスペースで43店舗を運営する契約となっています41。

• ミャンマー政府は、乳酸菌飲料製造販売のヤクルト本社に外国投資を許可しまた。生産工場 は20,800平方メートルの敷地を持つティラワ経済特区に新設される予定です42。

テクノロジー

• グロー バ ル ベンチャー キャピタル ファンドの500スタートアップはヤンゴンに拠点を置く、検索エンジンおよびプラットフォーム提供会社 Bindezに出資しています43。

銀行、金融

• KBZ ステアリングコールマンはヤン ゴン証券取引所で最初のアンダーライター業務のライセンスを取得しました。ライセンス取得により、トレー ディング、仲買、合併買収といったフルサービスが提供でき、企業の株式公開も可能です44。

• これまで外国投資家を制限してきた金融セクターですが、さらに自由化を推し進めており、ミャンマー中央銀行は第2期銀行営業ライセンスを許可する意向を表明、合計13の銀行が(主に台湾系銀行)関心を示し、中央銀行からの承認結果を得ました45。銀行営業の仮ライセンスを承認された4行は、ベトナム投資開発銀行(BIDV)、玉山銀行(E.Sun Commerical Bank)、新韓銀行(Shinhan Bank)、インドステイト銀行(State Bank of India)です。

40 “オーストラリアグロリア・ジーンズ、ミャンマーに出店拡大”ミャンマーディールブック、23/03/201641 “シンガポール上場ミャンマーインベスコ、ヤンゴン国際空港で小売スペースを運営”、ミャンマーディー

ルブック、24/12/201642 “ヤクルト、生産工場をティラワ経済特区に開設”、ミジマ、15/04/201643 “500スタートアップ、ミャンマーに参入 検索エンジンBindez”、ミャンマーディールブック、10/02/201644 “ヤンゴン証券取引所、KBZステアリングコールマン、アンダーライターライセンス取得、企業上場へ準備”、

ミャンマーディールブック、16/12/201545 “ミャンマー第2期銀行ライセンス許可に13行が関心を示す”、ロイター、10/01/2016

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Doing business in Myanmar 21

2.7 経済特区

経済特区(SEZs)の開発は継続して外国投資家の関心を集めています。現在、3箇所の経済特区があります。

• ティラワ経済特区はヤンゴン郊外の ヤンゴン川沿いに位置するミャンマーで最初の経済特区です。三菱商事、丸紅、住友商事の3社からなる合弁企業、ジャパンインターナショナルコーポレーションが49%を出資、ミャンマー政府を含む民間パートナシップ会社が10%、ミャンマー民間企業が41%をそれぞれ出資する形で2013年10月に2,400ヘクタールのティラワ経済特区が開発されました。ティラワ経済特区、ゾーンAは2015年9月オープン、日本のインスタントヌードル会社・エースコック、飲料メーカー・ポッカサッポロ、アサヒグループホール ディングスを始めとする100の企業が次の5年間で操業を開始する予定 です46。

• ダウェー経済特区の開発は初期の経済特区開発を再開する形で2015年の8月に、タイの複合企業タイの大手建設会社と同じくタイのロジャナ インダストリアルパークがミャンマー政府との開発契約を締結し、港、発電所、タイへ貫通する道路、行政機関、固定電話回線整備、工業団地を含む開発を行います。ティラワ経済特区の開発には日本政府も協力参加することになっており、これは日本にとってティラワ経済特区に続く2番目の事業になります。中国企業も最近ダウェー経済特区の近くに投資を計画しています47。

• 2015年12月1日、ミャンマー議会はラカイン地区に位置するチャオピュー経済特区プロジェクトの開発を承認しました。中国の複合企業、CITIC が85%の株を保有し、深水港湾建設、工場、工業団地開発を含む開発プロジェクトです。シンガポールのコンサルティング会社 CPG Corporation が2014年よりコンサルティングを担当しています48。

• 位置:ヤンゴンの北東400km

• 地域:Rakhineラカイン

• 群区:Kyaukphyuチャオピュー

• プロジェクトサイズ:120sqkm

チャオピュー経済特区SEZ

• 位置:ヤンゴンの南25kmヤンゴン川沿い

• 地域:Yangonヤンゴン

• 群区:Thanlyin/Kyauktanタウリン・チャウッタン

• プロジェクトサイズ:250sqkm

ティラワ経済特区SEZ

• 位置:ヤンゴンの南614.3km

• 地域:Tanintharyiタンニダイ

• 群区:Deweiダウェー

• プロジェクトサイズ:250sqkm

ダウェー経済特区SEZ

46 ”ティラワ経済特区、5年間で100の企業誘致”、ミジマ、22/01/2016

47 “中国企業、ミャンマーダウェーSEZに隣接石油精製所を計画”、日経アジアレビュー、11/11/2016

48 “ミャンマー政府、チャオピューSEZにゴーサイン中国 CITIC が85%所有”、ディールストリートアジア、30/12/2015

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22 ミャンマー投資ガイド 日本語版

3. ミャンマーのインフラ

3.1 ミャンマーインフラ事情

ミャンマーのインフラセクターはまだ創成期にあり、インフラ整備を急速に促進させるために政策と法規制が作成されています。広域な経済特区の資金調達が外国直接投資によって行われるため、国際市場は収益確実な投資案件をすぐにでも探したいと考えています。いくつかの省庁でインフラ整備に関する問題を解決するために連携して動き始めていますが、さらなる協調が必要となっています。

インフラ整備に関する主な問題は下記のとおりです。

• ミャンマーの基幹インフラは構築され、次の開発段階に移行を完了したという認識が強くなされています。現在のインフラ構造は非常に脆弱なままであり、発展のためには巨額の投資が運輸網全般(海運、空輸、鉄道、都市交通網)とユーティリティ事業セクター

(電気、水道など)で必要とされています。

• 各省庁では、現在インフラ整備の促進支援をするために、共同して政策と法規制の作成を行っています。

• 厳しく、未発達のビジネス環境が外国直接投資の可能性を妨げており、大規模インフラプロジェクトのプロジェクト構築に複雑さが生じています。

• 資産の所有に関する制限や健全な銀行市場の欠如によってインフラ資金の調達はより難しいものとなってい ます。

• ミャンマーのインフラセクターでの事業を予定する者は各省庁と定期的かつ効果的なやりとりを必要とし、ローカル 企業との 契約 が 必須・最重要 です。

• いつくかの政府/非政府機構または協会において制裁規制の名残があります。これは外国企業がミャンマーでビジネス展開をするのを複雑にし、 ミャンマービジネスのリスクに対する認識に影響を与えています。

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Doing business in Myanmar 23

国 順位(144カ国中) スコア

ミャンマー 137 2.0

ベトナム 81 3.7

フィリピン 91 3.5

インドネシア 56 4.4

インド 87 3.6

中国 46 4.7

マレーシア 25 5.5

シンガポール 2 6.5

ミャンマーは国際競争力(インフラ)において世界144カ国中137位、下位14%という低い順位になっていることを考慮すると、これらの課題はミャンマーにとって大変重要なものであることが分かります。

ミャンマーのリーダー達は、(特にインフラセクターにおいて)国の投資環境を構築し、継続的に外国資本および企業を誘致することが重要であると強調しています。

ミャンマーでは全てのインフラ整備にお いて、膨大な投資 が 必要とされてい ます。

• 電力(水力発電、再生可能、天然ガス)

• 交通インフラ(道路、鉄道、港、空港)

• 通信(電波塔、光ファイバー通信)

• 保健医療(病院および医療サービス、医療機器、薬局、トレーニング施設)

• 都市化(上下水道)

• 経済特区(ティラワ、ダウェー、チャオピュー)

国際競争力ランキング(インフラ)世界経済フォーラムより

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24 ミャンマー投資ガイド 日本語版

3.2 電力セクター

ミャンマーは水力発電と天然ガス発電をメインの電力供給源とし、豊富なエネルギー資源を持っています。水力発電の可能電力供給量は10万メガワットと推定され、天然ガスは重要な輸出製品として2012年には36億米ドルの収益を上げています。さらに新しいガス田の開発で27億米ドルの追加収益が見込まれています。

ミャンマーの一人当たりの電力消費量 は165kWh(2013年 )で世界平均 の3,000kWh を 大幅 に 下回って い ます。 ミャンマーの電化率は非常に低く、人口の34%のみにとどまっています。(2015年)しかも停電が頻繁にある状況です。

出典:ADB従来から、バイオマスエネルギーの調理および電灯への使用は各地方で広く普及しています。しかし、将来的には高度技術の導入・普及により他の電力供給源の需要が高まり、電力インフラの開発ニーズが高まることが見込まれます

16.6%

2.6%

15.3%

11.5%

54.0%

水力 石炭 石油 ガス バイオマス

ミャンマー1人当たりの電力消費量

250

200

150

100

50

0

2010 2011 2012 2013 2014

ミャンマーの主な電力源

kWh /人

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Doing business in Myanmar 25

電力省(MOEP)とエネルギー省(MOE)はミャンマー政府の中で最も強力で影響力のある省に統合されます。省の合併再編によりエネルギー省(MOE)は電力セクターと石油・ガス全般、探鉱、掘削、生産、オンショア・パイプライン、天然ガス採掘を含むガス市場を統括統制します。

ミャンマーは発電設備容量を2031年までに現在の4,714MW から、29,000MW以上まで増やすことを計画しており、41の新規発電所を建設することにより、容量拡大を図る計画です。これらの新規発電所は官民 JV、国際金融機関による援助や低利融資により開発される予定です。

これ は 一人当 たりの 電力消費量 が2020年までに493kWh、2025年までに854kWhまで上昇するという予測のもとに計画されたものです。

電力省(MOEP)は電力法の見直しを行っています。これは電力セクターの再構築を図るものであり、国内外からの投資および参画をさらに促していくことになります。新しい法令では、地方政府に小規模プロジェクト(10MWまで)、および中規模プロジェクト(30MWまで)を遂行する権限を与えています。

ミャンマーは従来は、ガス、石炭による発電に重点を置いてきました。しかしながら、政府は従来からの発電方法(ガス、石炭、水力)に加えて、再生可能エネルギー

(バイオマスの使用を除く)による発電を検討しており、エネルギー供給源の拡大を始めています。

膨大な電力供給量増加の予測に合わせて、新規発電所で必要な燃料などを確保できるようにする必要があります。石油ガス公社(MOGE)は、輸入依存を最小限にとどめ、十分なエネルギーの備蓄供給を確実にするように図らねばなりません。

さらに、発電容量を増加させるために、関係当局は、送配電系統の老朽化による送電損失を削減させることに尽力を注いでいます。ミャンマーにおける送電損失率は年ごとに変動傾向にあるものの、平均して、発電総量の5分の1が送電損失のため無駄になっています。

出典:世界銀行

35%

30%

25%

20%

15%

10%

5%

0%2008 2009 2010 2011 2012

ミャンマー - 送電損失率(%loss)

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26 ミャンマー投資ガイド 日本語版

3.3 交通セクター

ミャンマーは南アジア、東南アジア、そして中国との間の主要輸送ルート上にあり、接続拠点として発展する高いポテンシャルを有しています。ミャンマーが独立してから、50年以上もの間、経済は停滞し、交通インフラ投資は不十分でした。かつては効果的に整備されていた交通 インフラの状態は悪化し、大幅な機能向上と新規投資が必要とされています。

世界銀行の2014年のロジスティック パフォーマンスインデックス(LPI)によると、ミャンマーは調査の対象となった160カ 国 のうち145位 にランクして い ま す。 ミャンマーの交通インフラ整備ニーズは高く、外国企業にとっての事業機会が豊富にあります。

全体的な交通計画は現在策定中です。日本の JICA の支援を受けた全国交通開発マスタープランにより、関係政府機関が適切に関与するようにし、全ての主要交通機関が連携し、効率的、近代的、安全で環境に優しいシステムを推進する予定です。

加えて、ミャンマー政府は、さらに徹底した交通ネットワーク拡大の戦略を採用し、インフラ不足対策に取り組み、現存する交通インフラの改善に、重点を置く必要があります。これら交通セクターの近代化とインフラの改善には大規模な投資が必要で、構築には時間がかかります。 引き続き、このセクターへの投資と、交通インフラの開発・建設計画に地元および外国投資を誘致するような体制を、模索していかねばなりません。しかしながら、ミャンマーはまず、最初に重要な課題に対処しなければなりません。

交通インフラ整備投資先を選定するための明確なルールの欠如-交通開発計画を改善し、経済成長を促す主要なプロジェクトを優先的に整備する必要あり

総合サービスとセクター管理に対する政策の欠如

国営交通事業の業績不振

縦割りで連携不足、かつ重複した管理体制

交通プロジェクトの急速な拡大のために調達方法と法規制を改善する必要あり

組織および職員の抜本的能力強化

ミャンマー交通セクターの主な課題

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Doing business in Myanmar 27

3.3.1 道路

ミャンマーは大メコン圏(GMS)の中で最大の国であり、67万平方 km の面積と5,150万人の人口を誇ります。しかしながら、他の近隣諸国地域に比べて、道路網が整備されていません。ミャンマーの道路密度は2km /千人であり、一方アセアン諸国平均は11km /千人となっています。2011年現在、ミャンマー全土の道路舗装率は21.8%ですが、これに比べタイでは95%です。経済発展に伴いより良い交通網が必要とされ、そのため、道路インフラ整備が求められています。

過去10年間で、ミャンマーの道路総延長は9万700km(2004年)から16万4,969km(2013年)に拡大しました。同様に、自動車保有率も上昇しました。登録自動車の総数は2004年から2014年の間に、飛躍的に伸び10年間の年平均成長率は17.7%に上ります。

政府は、地方との連結性と地域経済と交通の連動性を高めるため、道路インフラ整備が最優先される課題であると述べています。主要高速道路は国の統一性を高めるため、国内遠隔地域へと拡張されます。今後も82の道路(約4,590km)について民営化が計画されています。現存するミャンマーと近隣諸国(中国、インド、タイ)をつなぐクロスボーダー道路は限定されており、道路事情もよくありません。これらの事情は民間セクターに、絶好の投資機会をもたらしています。

資料:アセアン日本交通パートナーシップ

(千台)

年平均成長率

17.7%

5,000 –

4,000 –

3,000 –

2,000 –

1,000 –

0 – 2004

単車   乗用車   トラック   その他

自動車登録台数

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

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28 ミャンマー投資ガイド 日本語版

3.3.2 空港

過去10年間で、航空旅客総数、特に国際線旅客が飛躍的に増加し、年平均成長率10.1%の伸びを示しています。しかし、交通量の著しい増加にもかかわらず、空港とその周辺のインフラ整備は進展を見せていません。

民間航空局(DCA)は2013年に、国際旅客の収容可能人数を引き上げ、現存する施設を機能向上させるために、2014年から2015年にかけて、ミャンマーにあ

資料:DCA、ミャンマー

る69の空港のうち、最低30の空港を民営化する計画であると発表しました。このうち2空港は民営化されることになりました。マンダレー国際空港は三菱商事を中心とする企業連合が30年間の事業権契約を締結し、運営予定です。一方ヤン ゴンのハンタワディ新国際空港は日揮、シンガポールチャンギ空港とヨンナム・ホールディングスの企業連合によって、建設、開発、運営が行われる予定です。

(mppa)6 –

5 –

4 –

3 –

2 –

1 –

0 –

年平均成長率

10.1%

国内線   国際線

航空旅客総数

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

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Doing business in Myanmar 29

3.3.3 鉄道

ミャンマ ー の 鉄道 セクター は、現在 ミャンマー国鉄による独占経営です。過去10年間で、鉄道網は大幅に拡張しており、複線の総延長は年平均成長率4.6%の伸びを示しています。しかしながら、大半の鉄道ルートはまだ単線です。現在、ミャンマーの鉄道総延長は6,000km を超えています。

老朽化した車両とインフラは遅延と脱線を頻繁に引き起こしており、ミャンマー政府は鉄道網の改善に意欲的です。過去数年、鉄道当局は鉄道関係のプロジェクトについて、国内外の企業に競争入札への参画を積極的に働きかけています。 ヤンゴン郊外鉄道と市内環状線の民営化の方針は、ミャンマー政府が鉄道交通運営をBOT 方式(建設、維持運営、移転)のもとで行おうという取り組みの一環と言えます。

現在、ミャンマーの人口のおよそ70%が地方に在住しており、ヤンゴンとマンダレー間のような、内陸部の農村と都市中心部を結ぶ、効率的な交通輸送網開発の需要が高まっています。新興経済国の顕著な傾向としてよく知られる事ですが、都市部の人口が増大した場合においてのみ、その必要性が高まります。都市中心部へ効率的にアクセスできるようにする都市施策に重点を置くことは、ミャンマー政府にとってますます重要になってきています。

出典:ミャンマー国鉄

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

750 –

500 –

250 –

0 –

450

74

704

83

(km)

複線   都市鉄道

ミャンマー鉄道総延長

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30 ミャンマー投資ガイド 日本語版

3.3.4 港湾

長い海岸線を持つことと、農作物、鉱物やその他の天然資源の需要が増し、輸出入の量が増加したことは、ミャンマーの港湾インフラ開発に大きな機会をもたらしています。

国際貿易の増加に影響され、ミャンマーの国内外の海運貨物量は増え続けており、2004年から2014年までの10年間で年平均成長率は国内貨物が7.8%、国際貨物が10.8%となっています。ミャンマー経済が外資に開放され、その結果、製造業が発達し、取り扱い貨物の総量が上がると、既存の港湾インフラでは対応しきれなくなります。

ミャンマーには現在、海岸線沿いに9の港があります。今後の需要に見合うよう、ミャンマー政府は、これまでミャンマー港湾公社(MPA)が管理してきたバースの管理を民間に移管する方針です。ティラワやダウェーといった経済特区の開発においてもバースや桟橋(燃料貯蔵施設を含む)の管理に民間企業が選ばれ、事業権が付与されています。こうして、海岸線地域一帯の港湾収容能力の強化を図っています。

出典:ミャンマーポートオーソリティ

(‘000 トン)

30,000 –

20,000 –

10,000 –

0 –

9,799

1,574

27,276

3,342

内航   外航

ミャンマー海運貨物量

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

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Doing business in Myanmar 31

3.4 通信セクター

ミャンマーは周辺地域の中で最も携帯電話とインターネットの普及率の低い地域の一つであり、今後数年で勢いのある成長を遂げる構えを見せています。

2013年、ミャンマー政府は、通信セクターを外資に開放し、4通信ライセンスのうち、2枠の通信ライセンスを競争入札を通じて付与しました。ノルウェーのテレノーア(Telenor)、カタールのオーレドゥー(Ooredoo)がこの入札を勝ち抜き、2014年にサービスが開始されました。2015年の半ばまでにテレノーアは1千万人以上の加入者を誇り、対するオーレドゥーも500万人以上の加入者を確保しています。

ロイター によ れ ば、1,800万以上 のSIMカードが市場に出回っており、これはミャンマー全人口のおよそ3分の1の数にあたります。数年前にはほんの100万しか利用がなかったことから考えると驚異的な伸びを示しています。

携帯電話受信可能地域の拡大とインターネットサービスの広範囲へのアクセスは経済成長を押し上げ、通信セクターへの外国投資を増加させます。通信セクターは、2014年-2015年度当初の5カ月間で、31%の外国直接投資を計上しています。投資総額は5カ月間で、33億2千万米ドルです。

出典:ITU

100 –

80 –

60 –

40 –

20 –

0 –

82

(%)

69 6848

40 35

17 14 9 2

160 –

120 –

80 –

40 –

0 –

158 155 149 147 144 126 111 110

6749

(%)

アセアン:インターネット普及率(2014年)

アセアン:携帯電話契約率100人当たり(2014年)

シンガポール

ブルネイ

マレーシアベトナム

フィリピン タイ

インドネシアラオス

カンボジア

ミャンマー

シンガポール

ブルネイ

マレーシアベトナム

フィリピン タイ

インドネシアラオス

カンボジア

ミャンマー

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32 ミャンマー投資ガイド 日本語版

通信セクター成長:オーレドゥーとテレノーアの参入によって、2017年までに加入者ベースでは2,200万人、普及率ベースで40%の成長が予測されています。2016年3月にはハノイに拠点を置くビッテル

(Viettel)が4番目の 通信事業者 になりました。

同じように、国内の携帯通信ネットワークエリアも拡張しており、2014年の時点では12%でしたが、2017年までに70%、2020年までに95%のエリアがカバーされると見込まれています。現在の計画によると、2014年におよそ2,000基あった電波塔は2017年までに17,300基に増設される予定です。2013年現在で、ミャンマーには14,000km の光ファイバー網が敷設されています。目標普及率に見合ったサービスエリアにするためにはさらに数千 km の光ファイバーの敷設が必要になります。

経済成長:ミャンマー国民の所得は急激な右肩上がりとなっており、需要の高まっている先進通信技術とサービスへつぎ込まれることが予想されています。これは、サプライヤー、プロバイダーの双方に大きな利益をもたらす可能性を示してい ます。

通信アクセスの発展に対する大きなボトルネックはコスト高と限られたインフラ設備です。携帯電話保有率75%-80%とインターネット普及率50%以上の目標を2016年度に達成し、セクターの発展を促進するために、政府はこれらのボトルネックを解消すべく、いくつかの改正を行うこととなっています。

• 経済・社会改革枠組みの下で、政府は通信情報技術(ICT)マスタープランを策定し、国内での通信情報技術の利用促進を図り、情報技術およびその情報管理を普及・促進させ、産業競争力を強化しようとしています。政府はまた電子政府ポータルを開発中で、運営委員会と対策本部を結成し、これらのプランを遂行しています。

• 政府は新通信法案を策定中で、通信セクターを所管する政府の政策、規制部門と運営部門の分割を目指しています。

ミャンマーは、近隣諸国に追いつこうとしている状態にあり、情報技術通信、サテライト、モバイル技術にわたり多くの機会があります。

出典:GSMA

20,000 –

15,000 –

10,000 –

5,000 –

0 –

2013 2015 2017

– 80%

– 60%

– 40%

– 20%

– 0 1,800

7,600

17,300

12%

31%

70%

電波塔   サービスエリア

ネットワークサービスエリア拡張率

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Doing business in Myanmar 33

3.5 保健医療セクター

ミャンマーの保健医療セクターは全面的に見直されています。政府はここ数年保健医療部門への財政支出を強化しています。総合計で7,574億 MMK(5億8,320米ドル)が2015年度に割り当てられました。年次ベースの成長は7%、公的保健医療への財政支出は過去4年間で3倍になりました。しかしこれは、2013年GDP のわずか0.5%に過ぎず、アセアン 諸国の中でも最も低 い 国の一つです。世界銀行 によると、2014年 の 時点 で、 ミャンマーでは医療への出費の93.7%を人々が自己負担しています。

ミャンマー保健省の七つの局のうちの一つである保健局は、国全体へ医療を提供する重要な役割を果たしています。いくつかの省でも同様に、従業員とその家族のために医療を提供しています。

民間セクターでは、主に外来診療を提供しています。近年、ネピドー、ヤン ゴン、マンダレー他の大都市では入院診療が始められました。伝統医学も西洋医学と共存して います。2014年現在、

出典:世界銀行

ミャンマー国内合計35の専門医病院のうち14が伝統医学の病院です。

2013年、経済・社会改革枠組み(FESR)のための組織を立ち上げ、即時の実行と長期発展に向けて、課題を徹底的に分析することに力を注いでいます。FESR は特に、家庭医の質と数を早急に向上させることが必要であり、重要な目標の一つは国民への国民皆保険(UHC)を実現させることであったと強調しています。2014年、 国家保健委員会は、保健医療セクターでの人材育成に関して数回ワークショップを実施し、国内の医療の質の向上、家庭医のサービスの推進、保健医療の資金調達、セクターの再構築について指導を行いました。政府は最近、5,600人の医療専門家と1,300人の看護師に対してトレーニングを行い、現在の医療従事者の不足を軽減させるために尽力しました。保健医療の改革を行うにあたり、政府はいくつかのボトルネックを解消しなければなりません。

8

6

4

2

0

  国営(% of GDP)    民間(%of GDP)

2.3%1.5% 1.2% 1%

2.2%0.5% 1.4% 1.8%

3.7%2.5%

ヘルスケア

ブルネイ

カンボジア

インドネシアラオス

マレーシア

ミャンマー

フィリピン

シンガポール タイ

ベトナム

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34 ミャンマー投資ガイド 日本語版

今ミャンマーの保健医療の向上を妨げている最大の要因は貧困です。医療サービスを利用できるかどうかは、地方部(人口の66%。2014年現在)と都市部で大きな格差が見られます。基本的な医療サービスへのアクセスの不足に加えて、利用できるサービスが限られていること、利用可能なサービスの不均衡、低廉な薬および診療が少ないこと、不十分なインフラ設備と政府予算の不足が挙げられます。さらに、資格のある医療専門家の不足は医療セクターの発展を妨げています。ミャンマーの一人当たりの医師の数は近隣諸国に比べて、少なくなっています。世

界保健機構(WHO)によれば、ミャンマーでは10,000人辺り6.1人しか医師がいません。これに比べ、ベトナムには11.9人、シンガポールには19.5人、日本には23人の医師がいます。

それ故に、外国保健医療事業者による投資は医療セクター開発の不足を補うのに極めて重要です。

保健医療施設 • ミャンマーの保健医療セクターには外国企業とパートナーシップを組んだ医療施設は現状存在しないため、投資の機会がある。外資のクリニック・病院への投資上限額は70%

• 2012年、インドのアポロホスピタルグループは電話医療サービスをヤンゴンで開始。タイのThonburi病院グループはヤンゴンとマンダレーに400床を有する2軒の病院建設に合意、契約

製薬 • ミャンマー商務省によれば、ミャンマーでは毎年5000種類以上の薬品が輸入されている

• ミャンマーでの製薬セクターの推定規模は1億-2億米ドル

• インドの製薬会社は市場シェアの40%を獲得

• 現在国内には、6社の製薬会社が存在

医療機器 • ミャンマーの保健医療セクターには過去の経済制裁の影響で、近代的な医療機器が不足している

• 経済制裁の解除後、GEのような外国企業が病院への造影システム供給によって市場に参入した

• 新しい病院の建設と既存病院の旧式設備の更新のため、医療機器の需要が高まることが見込まれる

人材育成 • 今後のミャンマーの保健医療セクターにとって質の高い医療専門家の存在は極めて重要である。政府は適切な人材と医療機器の重要性を十分に理解している

• 医療専門家および看護学校設立事業の機会がある

• GEのような外国企業はミャンマー国内で既にトレーニングプログラムを開始している

投資機会

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Doing business in Myanmar 35

3.6 都市化

ミャンマーの都市人口の割合は34%です。ミャンマー最大の都市はヤンゴン

(480万人)、続いてマンダレー(140万人)、モーラミャイン(60万人)です。居住者10万人以上の都市は31しかありま せん。

ミャンマーの都市計画は限定的なものであり、不十分な都市インフラ、サービスしかありません。土地管理、水資源管理、環境保護、地方分権化、住宅開発、都市計画他開発の全てに関して、政治および法律の制限を受けています。さらに、中央政府機関内での調整不足があり、また、中央、地域または州、あるいは地方自治体の各部門間の役割と責任が適切に把握されていません。また、国家開発計画、国土形成計画、各セクターのマスタープランの間でも連携不足のため、厄介な事態になっています。

市および町の都市行政サービスは許容範囲レベル以下のことが多く、例えば、水道管による水の供給は通常の場合はなく、機能的な排水、下水システムもありません。ゴミ収集システムの欠如も問題です。

ミャンマーは今、国家の経済成長の原動力として都市部を活用しようと試みています。投資の増加は新しいインフラ開発だけでなく、現在あるインフラを一層効果的に利用する目的もあります。

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36 ミャンマー投資ガイド 日本語版

3.6.1 水供給

ミャンマー都市部では人口の大多数がの給水サービスを受けられずにいます。都市部に住むほとんどの人々が無許可の井戸による給水に頼っています。水質が飲料水の国際的な基準を満たすはずはなく、家庭で使用する前に浄化された水の必要性が高まっています。水道供給網は移転先居住区または無許可居住区に拡張されておらず、給水は時間帯によって異なります。政府の役人と水道関係企業の社員は、世界規模での成功事例に触れる機会が全くないか少ししかありません。これら全ての問題が混在し、結果として、都市部の給水事情は劣悪なものとなっています。

3.6.2 下水処理

都市部のほとんどの地区に下水処理設備と排水網がありません。ほとんどの家庭ではある種、浄化槽のようなものに依存していますが、定期的なサービスではありません。浄水槽の汚泥の取り扱いが適切に行われているかは定かではありません。無許可居住区では主に環境汚染と公衆衛生に深刻な問題を及ぼす簡易トイレに頼っています。国内の汚水の回収と浄水システムは系統立っていません。廃棄物は、屋外に放棄され、最後には廃棄物を蓋のない排水溝に導き、汚水が停滞する結果となり、蚊の繁殖や、水を媒介とする病気が発生する環境を作り出します。基本的な都市インフラの改善が最優先事項であることは、ミャンマーの健康と貧困に関するデータが劣悪なことからも浮き彫りになっています。例えば、2010年の5歳以下の子供の死亡数は、1,000人のうち66人となっています。この数値はアセアン諸国の中で最も高く、死因は下痢のような水媒介性の病気に起因するところが多くなっています。

都市部には適切な雨水用の排水路が欠如しており、モンスーン期に洪水が発生しています。これによって、生産性が下がり、財政に負担をかけ、経済成長に打撃を与えます。

3.6.3 ゴミ処理

ゴミの回収と廃棄システムはいくつかの都市に存在するものの、それらは非効率で、適切なゴミ処理の方式をとっていないか行っていても一部分に過ぎず、汚染と不衛生な状況を引き起こしています。

政府は州、地域が職務と責任を果たすよう地方分権化を進めています。また、開発協力者とともに改革を図っています。国連人間居住計画(ハビタット)は、都市研究開発学会をヤンゴンに設立し、都市計画管理開発の拡充を援助する主導的立場を取っています。フランス開発庁は、マンダレー地区の都市インフラの事業化調査を行い、支援しています。次の事例は都市化の課題に対処し、解決された事項です。

• JICA はヤンゴンの都市インフラについて、(水、衛生、ゴミ処理、都市交通)実現の可能性を検討、マスタープランを指導しています。

• ユニセフは JICAと世界銀行と連携して水質調査を始めており、この調査結果に基づき、水へのアクセス、衛生サービス他、水セクターについての最新情報が公表される予定です。

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Doing business in Myanmar 37

出典:世界銀行

3.7 経済特区

政府は、外国投資、貿易、インフラ整備、を誘致し、これがさらに、経済特区周辺地域に新規雇用と技術開発の機会を作り出すことを見据えています。

ダウェー(タニンダーイ地域南沿岸)

ダウェー経済特区法は2011年に施行され、地域に投資を誘致しましたが、開発は問題に直面しました。当初、政府はタイ政府と2万ヘクタールにわたる特区の開発について基本合意、契約しましたが、資金不足に陥り、プロジェクトは進展しませんでした。2015年に日本政府が開発に参加し、技術および資金調達協力を行うことで合意しました。タイ政府は初期の建設で、港、通信ネットワークを含む基幹インフラ整備開発を請け負います。ティラワ経済特区は二車線道路、小規模港、工業団地、発電所、住宅、都市計画、水供給、通信システムから成り立ち、投資規模は80億米ドルに上ります。

18.5

18.0

17.5

17.0

16.5

16.0

15.5

15.02010 2011 2012 2013 2014

人口

ミャンマー - 都市人口(100万人)

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38 ミャンマー投資ガイド 日本語版

チャオピュー経済特区SEZ(セントラルウエスタンコーストRamree島)

チャオピュー SEZ は4,000エーカーの規模でミャンマー、ラカイン地区に位置します。当初は中国とミャンマーの合弁企業による開発になるものと予想されていましたが、現在中国民間企業によって開発が行われています。最近、チャオピューSEZ 委員会は深海港湾施設と工業団地の開発を、中国 CITIC に承認しました。深海港湾プロジェクトは20年以上にわたるものと予想されています。

ティラワ経済特区SEZ(南ヤンゴン地区)

ティラワ経済特区 SEZ は、5,787エーカーの規模で、日本政府とミャンマー政府の合弁企業によって開発されています。ミャンマー最初の経済特区であり、土地補償および環境問題があったものの、特区の開発は成功を収め、13カ国から51の企業が予約契約に調印しました。ティラワ経済特区が奨励する業種は、電灯、運輸、物流、医療、金融、保険、商業です。

ミャンマー政府は経済特区管理委員会を各特区に設けており、委員会のみが統制機構であることから、投資家は委員会とともにサステイナビリティーの実施および運営を確実に遂行するよう働かなければなりません。各管理委員会には「ワンストップサービス」センターが組織され、投資企業に対して全ての必要な管理サービスを提供しています。

政府は経済特区の開発に伴い、住民が立ち退く場合適切な補償を施すことを保証しています。現状では、各家庭に6年分の穀物と同等の補償金および(現行の法律のもと認められる水準の額)と電気、水道供給がある既存の家屋を上回る新しい家屋を提供するとしています。また、責任ある投資と妥当な雇用を促進すること、特に地域住民を雇用することとした政策を展開しています。

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Doing business in Myanmar 39

3.8 総論

3.8.1 ミャンマー移行

2016年3月、ミャンマーと世界は、50年以上にもわたった軍事政権の後、ティン・ チョウ氏が初代市民選出大統領として、就任するという歴史的瞬間に立ち会いました。ミャンマー国民、国際社会、各国政府は、国民民主連合の100日計画と法令が施行されるのを慎重に見守り、変化と変革がミャンマーで実行されることを求めています。

ミャンマーを可動させる

昨年2015年、PwCとシンガポールのテマセックファウンデーションとシンガポールコーポレーションエンタープライズは共同でミャンマー建設省向けに、都市化プログラム、都市計画、PPPプログラムに関するキャパシティビルディングを提供しました。PwCでは、より良いミャンマーの未来を築くために、私たちの経験をできるだけ共有し、新しいアイディアをもたらしたいと願っています。私どもは、JICA や世界銀行などの多国籍機関と、外国投資法令の検討から国内の緑化エネルギーチャンスの検証まで、共に協力し取り組んでいます。

PwC はインベスター・レディネス・プログラム円卓会議を、今後数カ月の間にシリーズで開催する予定です。投資家、投資を受ける側の皆様に、ミャンマーにおける重要な成功要因と大規模インフラプロジェクトに関する課題対応方策について私どもの経験をもとにお伝えします。民間・公共、両セクターの専門家および事業機関の皆様の問題に直結するものと考えております。

ミャンマー市場にさらに外資参入が見込まれることや、現地企業の運転資金が必要となっていることから。私どもは、今後数カ月で徐々に M&A およびインフラ調達の機会が増えるものと考えています。ただし、未成熟な金融システムはプロジェクトへの資金調達が必要な投資家にとってボトルネックとなります。資本市場の改革は高い成長を達成するために不可欠です。

ミャンマーとつながる

過去の3年間で大規模な改革の一つが実施され、ミャンマーは一部の産業部門において市場の開放と改革に乗り出しました。好例として、通信セクターの民営化が挙げられます。

PwC は KDDI -住友商事連合と合弁パートナーの MPT が、ミャンマー国内でより進歩した通信技術を提供する通信事業を操業するための国際競争入札のアドバイザリーを提供しました。2015年には1,800万枚の SIMカードが発行され、2013年の100万枚から爆発的な伸びを示しました。より高度な接続環境はより多くの経済活動につながり、さらに、商業が発展し、人々の流動性および生産性を拡大します。

先行するPwC、私どもは、ミャンマーの第4通信オペレ ーターライセンスがViettel に最近許可されたこと受け、通信セクターの次の開放を見据えています。私どもはインターネットを通してグローバル市場に参入するには、ネットワークの信頼性とカバー領域の改善が一段と必要であり、大規模な投資が必要と考えています。そしてその次にはITおよびインターネット関連事業と取引が活発になります。

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40 ミャンマー投資ガイド 日本語版

ミャンマーを建設する

先の4年間、PwC はミャンマーの都市インフラに携わり貢献して参りました。PwC は CITIC による事業の立ち上げをアドバイスし、深海港湾の市場におけるポジショニング、チャオピュー経済特区の開発についてマクロ経済的な分析を実施しました。チャオピュー経済特区はミャンマーにある3経済特区のうちの一つです。外国投資の誘致によって、政府は次の インフラ整備と貿易の拡大が可能になり、新しい雇用と人々の能力向上の機会が生まれています。

最近のアジア開発銀行のレポートによれば、2015年現在、ミャンマーで電気を利用できるのは人口の34%に過ぎず、一人当たりの電力消費量は世界でも最も低い国の一つです。ミャンマーが、電力・エネルギーインフラ施設の建設に焦点をあてると同時に交通、流通網を整備し、経済の拡大を図る必要があるのは明らかです。学校や病院といった、社会インフラへの投資も必要です-これは現政権の再選に向けて考慮すべき、重要な問題です。PwC は継続した革新を行い、ミャンマーの都市インフラ開発を創造することに尽力しています。

ミャンマーの道のり

ミャンマーの行く手に広がる道のりは平易なものではないでしょう。しかし、 ミャンマーにはいくつかの肯定的な要素があります。アジアの巨人である中国と インドの2国に挟まれた地理的に非常に有利な位置関係、若い労働人口、天然資源と鉱物、さらに重要なことは政府の改革への意気込み。そしてミャンマーの人々が世界を巻き込んでいるのです。

私たちはミャンマーの急速な変革を目の当たりにしています。ミャンマーは好転を続け、数年後には大きく発展するで しょう。

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Doing business in Myanmar 41

4. ミャンマー金融セクター

4.1 金融セクターの最新開発状況

ミャンマーの金融セクターは、中央銀行(CBM)、新設された財務計画省、国営銀行、民間銀行、ファイナンス会社、外国銀行駐在員事務所、ヤンゴン証券取引所

(YSX)、証券取引委員会(SECM)、証券会社、および保険会社から構成されています。新政府の再構築計画の一環として、2015年度から財務省と経済開発計画省は1省に集約され、財務・国家計画省に再編されました。金融セクターにおける過去8カ月(2015年8月~2016年3月)の主要な進展は以下のとおりです。

• 2015年12月14日、中央銀行 CBM は第2期銀行営業承認申請の受付を外国銀行に対して公表しました。2016年3月には4行の銀行が新たに承認されました。この結果、現在合計13の外国銀行が、ミャンマーでの銀行営業ライセンスを取得しています。

• 2015年10月1日にはヤンゴン証券取引所は10社の証券会社に対して、暫定的に株式売買取引のライセンスを交付しました。これに続き、2015年12月10日に正式にオープンし、翌年2016年3月26日にミャンマー最初の上場企業であるファーストミャンマーインベストメントの取引が開始されました。

• 2016年1月、日本の JICA の協力のもと、ミャンマー中央銀行は資金決済システム CBM-Net を開発、整備しました。このシステムはミャンマーの銀行と外国銀行をつなぎ、完全に運用されるようになれば、リアルタイムの資金決済が可能になります。

• 最近の最も大きな進展は金融機関法が2016年1月25日に制定されたことです。この法律は1990年に施行されたミャンマー金融機関法が改正されたものです。今回の改正で、ミャンマー中央銀行は外国銀行(駐在員事務所を含む)、ファイナンス機関、その他金融貸付、預金サービスを行う事業者に対する総合監督機関となりました。

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42 ミャンマー投資ガイド 日本語版

4.1.1 新金融機関法2016(FIL2016)

銀行ライセンスの再発行

2016年に改正された金融機関法では全ての銀行に新法令の施行日から6カ月以内に現在の銀行業ライセンスを中央銀行に返却するようにと要請しています(第176条)。銀行は新しいライセンスを申請し直した上で、政府が新金融機関法の規約に則り、新規にライセンスを発行します(第8、9条)。新金融機関法は相対的に包括的な法案を銀行セクターに与えた 一方、新旧法令の移行期間、また旧ライセンスの返却および新ライセンスの申請の要請は一部の産業界にとっては不安材料となりました。ミャンマー中央銀行は各銀行と協力して法令順守を確保し、と新金融機関法に準拠した新しいガイドラ インを発行し、順調に推移させることを関係者に対して、確約しています。

SN 銀行名 本店所在国

1 オーストラリア・ニュージーランド銀行グループ(ANZ)

オーストラリア

2 中国工商銀行(ICBC) 中国

3 三井住友銀行(SMBC) 日本

4 三菱東京UFJ銀行(BTMU) 日本

5 みずほ銀行 日本

6 ユナイテッドオーバーシーズ銀行(UOB) シンガポール

7 オーバーシーズチャイニーズ銀行(OCBC) シンガポール

8 メイ銀行 マレーシア

9 バンコク銀行 タイ

4.1.2 海外銀行支店

海外銀行への銀行営業許可

2014年10月1日、ミャンマー中央銀行(CBM)は9行の外国銀行に銀行営業ライセンスを付与しました。これは銀行セクターの自由化への移行の一端として発行されたものです。これらのライセンスでは旧法令では禁止されていたサービスにも参入を許可しています。下記の表は過去12カ月間にミャンマーに銀行支店を開設した9行の一覧です。

出典:ミャンマー中央銀行

表1:ミャンマーにおける外国銀行一覧(第1期に承認された銀行)

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Doing business in Myanmar 43

これらのライセンスは外国銀行に対して、国内外の会社および機関への取引を許可しています が、銀行窓口業務と ミャンマー通貨の直接貸付は禁止しています。この他にも、1銀行に対し1支店のみが営業を許可される、支店の開設にあたり最低資本7千500万米ドルを必要とする、といった厳しい許可条件を課しています。

SN 銀行名 本店所在国

1 インドステイト銀行(SBI) インド

2 新韓銀行 韓国

3 玉山銀行 台湾

4 ベトナム投資開発銀行(BIDV) ベトナム

出典:ミャンマー中央銀行

2016年3月4日第2期銀行営業許可を得た外国銀行が中央銀行 CBM から公表されました。各銀行はライセンス発効日より一年間の暫定的なライセンスを許可されました。この期間に今回承認された各銀行は、本格的な外国銀行支店として操業していくために、業務を遂行し、その責務を果たさねばなりません。

表2:第2期銀行業許可申請が承認された外国銀行名

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44 ミャンマー投資ガイド 日本語版

4.1.3 証券市場

ヤンゴン証券取引所(YSX)

2015年までミャンマーは世界各国、また地域の中で証券取引を行っていない最後の数カ国のうちの1カ国でした。ヤンゴン証券取引所(YSX)は、国家の威信をかけて2015年12月に開設されました。株式市場はミャンマーの投資家にとっては投資プラットフォームとなり、また企業にとっては発展促進のための資金調達機関となることが期待されています。

ミャンマー証券取引委員会(SECM)は、財務省副長官 が 委員長を務め、ミャンマーの株式市場の規制を担当するその他5人のメンバーが補佐を務めています。

ヤンゴン証券取引所は、Yangon Stock Exchange Joint Venture Co., Ltd.が設立 保有しており、この会社の出資比率は、ミャンマー 経済銀行(51 %)、大和総研

(30.25%)、日本取引所(18.75%)であり、総額は320億 MMK(2,460万米ドル)です。当初数年は、ミャンマーの投資家のみがヤンゴン証券取引所に上場している企業への投資を許可されています。外国投資家は新しい会社法が制定される場合には、証券取引に参入が許可される可能性があります。将来的には、ヤンゴン証券取引所の上場基準を満たさないような会社向けに、証券会社によって店頭取引市場が設立されるかもしれません。

2016年3月25日、ファーストミャンマーインベストメント(FMI)がヤンゴン証券取引所に上場したミャンマーで最初の企業となりました。ミャンマーファースト インベストは、上場予定企業のうちの1社です。なお、その他上場予定企業は下記のとおりです。

SN 会社名 主なビジネス

1 ファーストミャンマーインベストメント1 銀行、ヘルスケア、不動産、航空および製造

2 ファーストプライベート銀行 銀行

3 グレートホーカム 建設・保険

4 ミャンマーアグリビジネスパブリックコーポレーション(MAPCO)

農業

5 ミャンマー市民銀行 銀行

6 ミャンマーティラワSEZホールディングス ティラワ経済特区開発

上記の会社は全て株式会社で、ヤン ゴン証券取引所の開所前には店頭取引銘柄として売買されていました。企業を上場させるのは、新しい株式を発行するためというよりは、既に店頭で取引されている銘柄を取引所に移動させるためとも言えます。

1 既に上場済み、03/2016

表3:上場予定企業一覧

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Doing business in Myanmar 45

今後の課題

いくつかの課題もあります。第一に、 ヤンゴン証券取引所では開所時の一定期間、1日に2回しかオファーに対応できません(11AMと1PM)。このため、リアルタイムでの価格に対応した売買ができない可能性があります。

第2に、現在のところ、ミャンマーの個人投資家だけが参入を認められていますが、その多くは資金、十分な株式市場についての知識、オペレーションの知識のいずれもが不足していると考えられるため、証券取引ビジネスを成功させるには、流動的な資金注入ができる、後続の機関投資家や外国投資家が必要と考えられます。

第3に、株式市場に上場する可能性を持つ企業は200社以上あるものの、実際にはすぐに上場できる企業はわずか数社しかありません。その理由は、多くの企業

がこれまでに国際会計の標準を順守した上での、十分な金融取引の経験がないことが挙げられます。内部規制とコーポレートガバナンスも上場の際に必要とされていません。

最後に、重要なことは、ミャンマーにはスキルのある金融の専門家の数が限られているということです。さらにトレーニングと能力強化を、株主仲介業者、会計士、ブローカー、ディーラー、銀行家、個人投資、といった関係者、さらに言えば監督機関に対しても実施する必要があります。

証券会社

証券取引および企業の上場を促進するために SECM は下記の10社の証券会社に、暫定的なライセンスを発行しました。

SN 会社名 株主2

1 AYA信託証券 AYAファイナンシャルグループ

2 CB銀行証券 CB銀行

3 ミャンマー証券エクスチェンジセンター 大和セキュリティ(JP)、ミャンマー経済銀行

4 グローバルワールド証券 アジアワールド

5 エキスパートインベスト証券 グリーンサークルカンパニー、、ピンキャピタル(HK)

6 Aung Myint Mo Min証券 インワ銀行

7 KBZステアリングコールマン証券 KBZグループ・ステアリングコールマンキャピタル(SG)

8 KTZルビーヒル証券 Loi Heingグループ、KT ZIMCO(TH)

9 アマラインベストメント証券 ユナイテッドアマラ銀行

10 ユニオン信託証券 ヤングインベストメント

2 出資者は特記がない限りミャンマー企業

表4:暫定ライセンスを許可された証券会社一覧

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46 ミャンマー投資ガイド 日本語版

4.2 銀行一覧

4.2.1 国営銀行

下記の表はミャンマーの国営銀行の形態を示しています(出版時点において)。

SN 銀行名

1 ミャンマー外国貿易銀行(MFTB)

• MFTB は財務省の管理下にあり外為業務、海外銀行業務に特化した銀行です

• MFTB は個人、政府系企業および個人の両者に対してサービスを行っています。国有会社は2016年より国内民間銀行のサービスを使用できるようになったものの、全ての政府機関と国有会社は MFTB に外為口座を保有しています

2 ミャンマー経済銀行(MEB)

• 1954年に国営商業銀行として発足し、幅広く国内で商業銀行サービスを提供しています

• MEB は財務省に管理されており、国内最大310の支店ネットワークを持っています

3 ミャンマー投資商業銀行(MICB)

• MICB は1990年に設立され、国内外の銀行サービスを提供しています

4 ミャンマー農業開発銀行(MADB)

• MADB は主に、農業、漁業、製造、生産を含む地方零細企業の促進を支援する目的で設立されました。この銀行は農業畜産灌漑省が保有、管理しています

• MADB は国内に広くネットワークを持ち、260の支店で短期および長期の貸付サービスを穀物生産業者、塩業、畜産、漁業、酪農業者、187万の顧客に提供しています

表5:国営銀行

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規模順 銀行名 資本(10億MMK) 支店数 従業員数 ATM台数

1 カンボーザ銀行 4,145 180 11,111 259

2 エーヤワディー銀行 1,200 76 3,500 156

3 協同組合銀行 1,181 100 5,255 223

4 ミヤワディ銀行 1,028 37 2,088 26

5 ミャンマーシェサウン銀行 721 45 2,600 56

6 グローバルトレジャー銀行 589 81 1,817 不明

7 ヨマ銀行 506 51 2,221 不明

8 ユナイテッドアマラ銀行 505 32 1,400 70

9 エジーディー銀行 463 50 2,400 116

10 ミャンマーアシェッタイ銀行 239 26 975 22

出典:ミャンマーファイナンシャルセクター、GIZ、08/2014

4.2.2 民間銀行

下記の表はミャンマーの24の民間銀行のうちの10行についての詳細です。

中央銀行(CBM)は、国営銀行2行と15の民間銀行においても外貨口座の取り扱いと国際銀行業務を認めています。

表6:トップ10民間銀行

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48 ミャンマー投資ガイド 日本語版

4.2.3 外国銀行駐在員事務所

2016年3月、9行の外国銀行の支店が既に銀行営業を行っており、さらに4行の支店がミャンマー中央銀行から仮承認を取得しました。

これに加えて、さらに銀行再編成が予想されており、48外国銀行の駐在員事務所から新たな銀行支店設立に向けて許可申請を進めるとみられます。

SN 外国銀行、金融機関駐在員事務所一覧 31/03/2016

1 DBS銀行

2 ナショナル銀行

3 ブルネイ投資銀行(BIB)

4 ファーストオーバーシーズ銀行

5 CIMB銀行

6 ベトナム投資開発銀行

7 アラブバングラデシュ銀行(AB)

8 サイアム商業銀行

9 MARUHAN日本銀行

10 クルンタイ銀行

11 ユナイテッド銀行インディア

12 KASIKORN銀行株式会社

13 ハナ銀行

14 ウリィ銀行

15 ヴィエティン銀行

16 韓国開発銀行

17 スタンダードチャータード銀行

18 新韓銀行

19 中小企業銀行

20 第一商業銀行

21 玉山銀行シンガポール支店

22 インド銀行(BOI)

23 国民銀行

24 インド輸出入銀行

25 韓国輸出入銀行

26 イースタン銀行

27 アユタヤ銀行

表7:外国銀行駐在員事務所一覧

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SN 外国銀行、金融機関駐在員事務所一覧 31/03/2016

28 RHB銀行

29 セイロン商業銀行

30 インドステイト銀行

31 キャセイユナイテッド銀行

32 モーリシャスステイト銀行

33 BRED銀行

34 釜山銀行

35 AEONクレジットサービス

36 BNI銀行

37 台湾銀行

38 台新国際商業銀行

39 台湾新光商業銀行

40 CTBC銀行

41 元大商業銀行

42 台湾金庫銀行

43 台湾中小企業銀行

44 兆豊国際商業銀行

45 ホーチミン開発商業銀行

46 カタール銀行

47 サンパス銀行

48 中國銀行

出典:ミャンマー中央銀行

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50 ミャンマー投資ガイド 日本語版

SN ファイナンス会社名

1 オリエンタルリーシングカンパニー

2 MyatNanYoneファイナンスカンパニー

3 ナショナルファイナンスカンパニー

4 Ryujiファイナンスカンパニー

5 MaharBawgaファイナンスカンパニー

6 ジュエル・スペクトラムカンパニー

7 センチュリーファイナンスカンパニー

8 ウィンプログレスサービスカンパニー

9 Zコーポレーションカンパニー

10 グローバルイノベーションファイナンスカンパニー

11 マザーファイナンスカンパニー

出典:ミャンマー中央銀行

4.3 非銀行系金融機関一覧

4.3.1 ファイナンス会社

下記の表はミャンマーで事業をしているファイナンス会社の一覧です(本投資ガイドが出版時点において)。

ファイナンス会社は融資、リース、割賦契約サービスの提供が認められています。ファイナンス会社は民間からの預金の受付はできませんが、中央銀行が機関投資家および外国投資機関からの長期貸付をファイナンス会社に許可することもあります3。

3 ミャンマーファイナンシャルセクター、GIZ、08/2014

表8:ファイナンス会社

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Doing business in Myanmar 51

4.3.2 マイクロファイナンス

2011年11月のマイクロファイナンス法の制定は、幅広い顧客への金融サービスへの取り込み拡大を図る目的があり、現在200以上のマイクロフャイナンス機関(MFI)がミャンマーで事業を行っています。マイクロファイナンス機関は財務省の金融監督局によって規制されています。マイクロファイナンス機関に地域および都市部の顧客に500万 MMKまでのマイクロローンの提供を認めており、また一定金額の預金も許可しています。外国投資家は100%自己資本保有のマイクロファイナンス機関を設立することができます。

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52 ミャンマー投資ガイド 日本語版

4.4 保険会社一覧

1975年以降、ミャンマーインシュアランス(MI)が国内唯一の保険会社でした。金融セクター再構築の一環として、保険ビジネス管理局が設けられ、保険セクターの近代化を図るために民間保険会社許可申請業務を行っています。12の民間保険会社が営業権を獲得、生命・一般保険など9種類の保険を扱っています。下記の表は許可されたミャンマー民間保険会社の一覧です。

SN 保険会社 親会社

1 Aung Myint Moh Min保険 ミャンマーエコノミックホールディング(“MEC”)

2 Aung Thitsa Oo保険 ユニオンミャンマーエコノミックホールディング(“UMEHL”)

3 Ayeyarミャンマー保険 マックスミャンマーグループカンパニー

4 キャピタル生命保険 キャピタルダイヤモンドスターグループ(“CDSG”)

5 シチズンビジネス保険 CB銀行

6 エクセレントフォーチュン保険 エクセレントフォーチュン開発グループ

7 ファーストナショナル保険 フトートレーディング

8 グローバルワールド保険 アジアワールド

9 グランドガーディアン保険 ShweTaungグループ

10 I.K.B.Z保険 KBZグループ

11 Pillar of Truth保険 パラミエナジー

12 ヤング保険Global ヤングインベストメントグループ

出典:ミャンマー金融セクター、GIZ

外国保険会社は、この非常に大きな可能性を持つ保険市場に目を向け、事務所を開設し始めています。2015年に新しい法令、規則が発表され、外国保険会社は、3箇所ある経済特区において(ダウェー、ティラワ、チャオピュー)駐在員事務所登録免許費3万米ドル4と年間費1万米ドルを支払うことで、営業を許可されることになりました。

損保ジャパン日本興亜保険、三井住友海上火災保険と東京海上日動火災保険は2015年5月25日よりティラワ経済特区にて特区特別許可のもとに営業ライセンスを取得しました。

各保険会社は不動産(火災、その他損害)技術、海上保険、貨物・運輸、自動車、医療、損害といった各種保険をトータルで提供しています。

4 保険会社ライセンス許可、ザ・ネーション、8/04/2015

表9:民間保険会社

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Doing business in Myanmar 53

下記の表はミャンマーにおける外国保険会社の駐在員事務所一覧です。

SN 外国保険会社駐在員事務所

1 損保ジャパン日本興亜保険

2 三井住友海上火災保険

3 東京海上日動火災保険

4 太陽生命保険

5 ポエマ保険

6 アメリカンインターナショナルアシュアランス

7 グレートイースタンアシュアランス

8 プルデンシャルホールディングス

9 ACEINAインターナショナルホールディングス

10 パナハリソン(アジア)

11 マニュライフファイナンシャルライフ保険

12 ウィリスグループ

13 サムソン生命保険

14 ニューインディア保険

出典: Indian insurer to open office in Myanmar, Myanmar Eleven, 11 September 2014

表10:外国保険会社駐在員事務所

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54 ミャンマー投資ガイド 日本語版

4.5 その他有益情報

4.5.1 政府国債 2015年の初めより、ミャンマー中央銀行(CBM)は政府短期証券の発行を開始、金

融機関に対して競争入札を行いました。これはミャンマーの金融セクターのさらに規制緩和を裏付けることとなりました。債権市場発展への次のステップは、インターバンク証券市場を開設することです。

4.5.2 金利

通貨 交換レート(MMK)

米ドル 1,216.00

シンガポールドル 900.31

ユーロ 1,378.40

タイバーツ 34.506

 参照 利率(%)

中央銀行 10% p.a.

借入上限金利 13% p.a.

預金最低金利 8% p.a.

近年、ミャンマーの銀行は預金商品(普通預金/定期預金)を取り扱っており、利率は8.25%から10%の間で設定されています。

現在のところ、ミャンマーの顧客および法人のみが、預金、貸付サービスを受けることが許されています。

外国銀行は外貨商品に対して、それぞれの銀行内の規定に基づいて金利率の設定をすることができます。

4.5.3為替レート

表11:利率(2016年3月31日現在)

表12:外国為替レート(中央銀行CBM日平均参照レート 2016年3月31日現在)

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Doing business in Myanmar 55

5. ミャンマーの税制

5.1 法人所得税

範囲

居住法人は、ミャンマー国外での所得に関しても課税対象になります。居住法人と見なされるのは、1913年の会社法またはその他のミャンマーの法律に基づいて設立された法人です。MFIL に基づいて設立された法人は居住法人と見なされますが、国外源泉所得に関しては課税対象となりません。国外源泉所得税に対する繰延制度はありません。

さらに、会社法に基づいて設立された法人とMFIL に基づいて設立された会社では課税優遇制度と長期土地利用条件に違いが見られます。

非居住法人は、ミャンマー国内で得た源泉所得にのみが課税対象となります。非居住法人とは、1913年の会社法またはその他のミャンマーの法律に基づかず、国外で設立された法人であり、原則として、外国企業のミャンマー支店は非居住法人と見なされます。非居住法人がミャンマーの固定資産から得る源泉所得とその他のあらゆるミャンマー国内での源泉所得は、ミャンマー国内所得として課税対象と見なされます。一般的に、異なる税率が適用される場合を除き、居住者に対する通常の規則に基づいて課税されます。

パートナーシップについては、会社組織として課税され、パートナーの個別利益に課税されるものではありません。パートナーシップ収益は課税対象にならず、各パートナーに帰属します。

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56 ミャンマー投資ガイド 日本語版

納税者、所得の種類税率2015年4月1日まで

税率2015年4月1日施行

会社法に基づいてミャンマーで設立された国内の会社• 商業/事業所得• 動産または不動産からの賃貸収入

25%25%

25%25%

MFILに基づいて設立された事業会社 25% 25%

国営企業、政府事業、または異なる仕事に従事し、特別許可を受けた、外国法人機関 25% 25%

外国企業の支店のような非居住法人 35% 25%

キャピタルゲイン(株式譲渡益の40%から50%の税率が課されるオイル・ガス事業法人を除く)• 居住法人• 非居住法人

10%40%

10%10%

税率

法人税率は25%です。キャピタルゲイン の税率は、納税者の種類、および広範に、所得の種類によって異なります。

税務

課税年度

課税年度は、会計年度(所得年度)と同じであり、4月1日から3月31日となります。会計年度に得た所得に関して課税評価され、年度の翌年に税額が算出されます。

税務申告・算定

原則として、年度末の申告は所得年度末から3カ月以内、つまり翌営業年度の6月末までに申告しなければなりません。

キャピタルゲインに関する税務申告は、

譲渡日(資産資本売却日)から1カ月以内にしなければなりません。譲渡日とは譲

渡契約を執行した日または資産の引渡し日のどちらか早い日を指します。キャピタルゲインに付随する税金は、譲渡日から 1カ月以内に納税しなければなりません。

法人が事業を精算または解散した場合、事業精算の日から1カ月以内に申告を行う必要があります。

課税対象となる所得 があることを承知しながら、申告を行わなかった場合、 納税者は“不正行為”を働いたと見なされます。

表1:法人所得税率

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Doing business in Myanmar 57

納税

課税所得年度(4月1日から3月31日)の総所得見積もりをもとに4半期ごとに前払いされます。前払いされた税金と源泉徴収された税金は最終年末調整で払い戻しが可能です。最終的な納税期限は内国歳入局(IRD)からの賦課決定通知書によって提示されます。

Tax audit process

所得税法では、意図的に租税回避を行ったと見 なされる場合、源泉所得 に対して、いつでも課税評価または、課税 再評価を行い更生決定をすることができます。

納税者による確定申告ミス、確定申告が必要な所得があるのを知りながら申告しないこと、内国歳入局(IRD)の勧告に従わず、期間内に確定申告、損益勘定に関する書類、会計報告書を提出しないこと、偽造された文書および書類を提出するといった行為は、不正に租税回避しようとする目的があると見なされます。内国歳入局の調査により、納税者が源泉所得または所得に関係する事項を隠蔽していることが発覚した場合、納税者は定められた期間内に全ての情報を開示することを求められます。

さらに、納税者は追徴課税額の50%に相当する罰金が課せられます。納税者が一定期間内に指定された情報を開示しなかったり、所得に関する情報を隠蔽した場合にも同様に、納税者は起訴され、追徴課税と罰金が課せられます。納税者が有罪判決を受けた場合は、3年から10年の禁固刑に罰せられることがあります。

消滅時効

一旦、課税評価金額が決定すると、3年間の消滅時効後は内国歳入局により虚偽の申請を行ったと認定されない限り、再評価をすることはできません。確定申告と税金の前払いでは、最終課税評価額が決定したとは見なされません。

課税所得

所得は、専門職、事業、不動産、キャピタルゲイン、その他の収入源、非開示収入源として、分類されます。キャピタルゲインによる所得は別途課税評価されます。動産からの所得は事業所得として扱われます。利息所得も、たとえ事業所得から得たものでなくとも、同様に事業所得として扱われます。

課税所得は、損金算入が認められる費用や減価償却を控除することにより算定されます。

ミャンマーは一段階課税制度を取っており、分配された個人の利益は免税となります(パートナーシップ、ジョイントベンチャーカンパニーなど)。

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58 ミャンマー投資ガイド 日本語版

控除

事業所得を得るために関連して支出された費用並び減価償却費を損金として控除できます。

資本的支出、事業に関係しない個人的支出、事業の拡大に比例しない費用、会社組織による支払いでなく個人によるもの、不適切な支出は控除の対象になりません。これに加えて、動産による所得は事業所得として扱われ、減価償却費は損金として控除することができます。不動産による所得は一般的に事業所得として算出されますが、減価償却費は損金として控除されません。寄付金も課税控除の対象外です。

実際に、償却率を決定する際には、所得税法の償却率表に従う必要があり、所定の減価償却申請用紙を提出します。納税者は当該年度中に取得された固定資産についても1年間分の減価償却費を計上できます。一方、年度中に売却、除去された固定資産については計上できません。

2016年4月1日現在、ミャンマー所得税法による固定資産の減価償却率は下記のとおりです。

• 建物:1.25% –10%(2016年4月1日までは5% –15%)

• 家具・建物に設置の付属備品:5% – 10%(2016年4月1日までは10%)

• 機械・設備:5% –10%(2016年4月1日までは10%)

• 車両:5 % –20 %(2016年4月1日までは5% –20%)。この通知には海運、陸運用の追加クラスの車両を含む

• その他規定外の固定資産:5%(変更なし)

キャピタルゲイン

資産の売却、交換および譲渡による所得は課税対象となります。キャピタルゲ インとは全ての資産を売却、譲渡することによって得られる全ての所得に該当します。

所得税法上、“固定資産”とは土地、建物、車両、およびその他の資産であり、株式、債券、および類似した証券を含みます。無形固定資産が固定資産の定義に該当する場合には、同資産から生ずるキャピタルゲインも課税対象となります。

オイル・ガス分野の固定資産の売却、交換、および譲渡から発生するキャピタルゲインは他の分野と異なる税率にて課税されます。

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Doing business in Myanmar 59

居住者国民または外国人1

非居住者または外国人2

利息 0% 15%

ライセンス、商標、特許権などのロイヤルティー 15% 10%

国営企業、地方当局、協同組合、提携企業、調達およびサービス提供に関する法律に基づいて設立された会社との契約書、覚書およびその他約定に基づく支払い

2% 3.5%

国内におけるサービスおよび調達、外国企業による契約書および覚書に基づく支払い

2013年6月14日付、財務省の税収通知によれば、ミャンマー税務当局は輸出入業の納税者から2%の所得税を前払いで徴収すると発表しています。源泉徴収された金額は最終的な所得が確定し、所得税を納付する際に相殺できるという条件で控除があります

2% 3.5%

源泉税

下記に相当する所得に関する支払いを行う者は、下記に記載された税率に基づいて、源泉税を支払う必要があります。源泉徴収された所得税は内国歳入局に7日以内に納付しなければなりません。

源泉課税税率については下記表2を参照して下さい。

恒久的施設(PE)

ミャンマー所得税法には、現在の慣例では恒久的施設(PE)に関する定義付けはありません。ミャンマー税務当局は、居住法人がミャンマーに恒久的施設を有するかどうかにかかわらず、源泉税の仕組みを手段として、非居住外国人がミャンマーで得た所得から税金を徴収する方法を模索しています。ここでいう(“PE”)は、ミャンマーが他の国々と締結してる租税条約に定義されています。ミャンマーと租税条約を締結している国に所在する非居住法人については、国内に(PE)を有しない場合、源泉税は免除されるのが基本 です。

租税条約

所得税法で(ITL)政府が外国政府または国際機関と、締結および発効済みの租税条約にある規約はミャンマーの所得税法にあるその他の規定より優先して適用されます(31節 ITL)。

租税条約は、インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、韓国、タイ、英国、ラオス、ベトナム、バングラデシュの間で締結されています。インド、韓国、マレーシア、シンガポール、タイ、英国、ベトナムに関しては、ミャンマー管報にて発効済みです。内国歳入局(IRD)の管轄である税務当局(CCTO)と、高額納税局(LTO)は原則として、控除の際、それぞれの租税条約を順守した、正規源泉預かり金額であるかどうかを事前に当局に問い合わせるようにと勧告しています。

なお、片務的救済制度はありません。

1 居住者の場合、源泉徴収された金額は最終課税評価の金額と相殺できます2 非居住者の場合、非居住法人から源泉徴収された金額が最終課税額となります(財務局通告 No.41/2010

10/03/2010)

組織に所属する個人が得る配当金、支店経常利益、株式収益は課税を免除されます。そのため、源泉徴収の控除はありません

表2:源泉徴収税率

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60 ミャンマー投資ガイド 日本語版

欠損金

通常の損失

あらゆる源泉の欠損金はその年の他の源泉所得と相殺することができますが、その損失が資産的資本から生じている場合、人的組織から生じている場合を除きます。当該会計年度において控除できない損失については繰り越しが認められ、次の3年間の収益との相殺が可能です

(ITL20節)。

資本的損失

資本損失および組織の株式損失については、その他の源泉所得と相殺または繰り越しすることはできません。

租税回避防止規定

一般

意図的に租税回避を行ったと見なされる場合、所得税法(ITL)により、源泉所得に対して、いつでも課税評価または、課税再評価を行い更生決定をすることができます。納税者による確定申告ミス、確定申告が必要な所得があるのを知りながら申告しないこと、内国歳入局(IRD)の勧告に従わず、期間内に確定申告、損益勘定に関する書類、会計報告書を提出しないこと、偽造された文書および書類を提出するといった行為は、不正に租税回避しようとする目的があると見なされます。

内国歳入局の調査により、納税者が源泉所得または所得に関係する事項を隠蔽していることが発覚した場合、納税者は定められた期間内に全ての情報を開示することを求められます。

移転価格税制 現在のところ、ミャンマーには移転価格

税制はありません。

地元企業は、特許料、管理サービス費、関係会社への利息の支払いについて、これらの支払額が事業規模に見合った金額の場合には、控除を申請することができます。

ミャンマーにはグループ課税制度はありません。

過少資本税制

現在のところ、ミャンマーには過少資本税制はありません。今のところ、負債純資産比率に対して、特別な例外規制はありません。ミャンマー中央銀行とミャンマー投資委員会が近い将来、負債純資産比率に対して、例外規制が設けられることがあり得ると発表していることは、特筆すべきことと言えます。

在外子会社

在外子会社規定は現在のところありません。

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Doing business in Myanmar 61

納税者の区分・所得の種類税率2015年4月1日以前

税率2015年4月1日以降

給与特別許可を有し、国策プロジェクト、国営企業の外国人従業員でチャット払いの報酬

20% 20%

MFILに基づいて設立された法人で働く外国人 累進課税税率0%から25%

累進課税税率0%から25%

MFILに基づかず設立された法人で働く外国人•居住外国人•非居住外国人

累進課税税率0%から25%35%

累進課税税率0%から25%0%から25%

その他の所得•ミャンマー国民•居住外国人•非居住外国人

0%から25%0%から25%35%

0%から25%0%から25%0%から25%

キャピタルゲイン•居住外国人•非居住外国人

10%40%

10%10%

5.2 個人所得税

範囲

個人所得税は、ミャンマーにおける個人の在留資格によって、決定されます。

ミャンマー所得税法の下、居住者に該当する、国民および外国人は全世界所得を対象に課税されます。

非居住外国人はミャンマー国内で得た所得に関してのみ、課税されます。

注:年間所得が480万MMKを超えない場合には、所得税は課税されません

在留資格

ミャンマー居住者とは国内に“住所”を有する個人または“主たる住居”を持つ個人を指します。非居住ミャンマー国民とは一定の期間ミャンマー国外に在住し、かつ国外で雇用され所得を得ている個人を指します。

ミャンマーに、会計年度中に183日以上居住している外国人は居住者と見なされます。MFIL に基づいて設立された会社で働く外国人はミャンマー滞在期間の日数にかかわらず、居住者と見なされます。

税率

個人の税率は、納税者の種別や所得によって異なります。

課税所得

給与所得

給与所得 の 定義 は 多岐 に わ たっており、給料、賃金、年金(annuity)、年金

(pension)、謝礼、給付金、その 他費用手数料、給料や賃金に加えて、受け取った手当なども含まれます。

非居住外国人に対する給与所得に関する費用についての控除はありません。

表3:個人所得税率

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62 ミャンマー投資ガイド 日本語版

非給与所得

課税対象となる非給与所得は以下のとおりです。

• 事業所得(動産、特許料、利息など)

• 専門職による所得 “専門職”とは技能サービス提供によ

る所得。医者、看護婦、弁護士、エンジニア、建築家、映画スター、演劇家、作家、画家、彫刻家、会計士、監査人、占星術師、教師などを含みます

• 資産売却から生じるキャピタルゲイン

• その他、投資所得(課税免除を受けている会社からの配当金を除く)

非給与所得 が120万 MMK 以下 の 場合は課税対象となりません。(キャピタルゲインを除く)キャピタルゲインの場合は、売却金額が500万 MMK 以下は課税対象となりません。

社会保障負担

2012年に制定された社会保障法では、5人を超える従業員を雇用する法人は、一般給付保険や労災保険のような、社会保険への加入が義務付けられています。

保険料の負担率は、労働者の月給または賃金からそれぞれ、従業員が2%、雇用主が3%となっています。ただし、現状、1カ月の雇用主負担額の上限は9,000MMK従業員負担額の上限は6,000MMKです。

従業員の社会保険負担料は、税務上の控除が受けられます。雇用主は保険料を従業員の給与から控除して支払うよう義務付けられています。

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Doing business in Myanmar 63

一般税制

課税期間

個人の会計年度は、所得年度と同じであり、4月1日から3月31日となります。同年度中に得た所得に関して課税評価され、年度の翌年に税額が算出されます。

確定申告

雇用主は従業員に給与を支払う際に、所得税を源泉徴収する責任を負っており、控除の日から7日以内に内国歳入局に支払わねばなりません。雇用主が源泉徴収を怠った場合には、滞納者と見なされ、雇用主が支払いについての一切の責任を負います。さらに、雇用主は、年度末から3カ月以内に年間所得証明を記載、提出しなければなりません。つまり翌年度の6月30日までに提出します。期日までに提出がなされない場合には、年間所得から控除されるべき源泉徴収額の10%の罰金が内国歳入局(IRD)から課せられることがあります。

個人所得税申告は所得年度終了の日から3カ月以内に提出しなければなりません。つまり翌年度6月30日までに提出します。ただし、ミャンマー国内の所得だけを収入とする個人で、雇用主が全ての源泉徴収を既に控除済みの場合は、確定申告の必要はありません。キャピタルゲ インについての確定申告は、資本資産の売却日から1カ月以内に行わなければなりません。法人が事業を精算または解散した場合、事業精算の日から1カ月以内に申告を行う必要があります。

税金の支払い

源泉徴収の引当金が適用されない収入がある場合には、収入を得た当事者が直接、税金の前払いをする必要があります。税金は、課税所得年度(4月1日から3月31日)の総所得見積もりをもとに4半期ごとに前払いされます。前払いされた税金と源泉徴収された税金は最終年末調整で払い戻しが可能です。最終的な納税期限は内国歳入局(IRD)からの賦課決定通知書によって提示されます。

5.3 商業税

ミャンマーにおいては、付加価値税は存在しません。商業税は商品やサービスに対する売上高税として課税されます。商業税は、特定の商取引に対する付加的な税であるものの、付加価値税のような概念にまで広げられているわけではありません。商業税法に記載されている特定の商取引にのみ適用されます。

商業税は国内で生産または提供された幅広い商品およびサービスの販売代金に対して課せられます。商業税は、輸入品にも、上陸コスト=つまり、運賃保険料価額(CIF)と関税の合計に基づいて課せられます。これらの税の徴収は入国時と関税手続きの際に行われます。商業税の課税範囲は、商業法追記事項に記載があり、商品やサービスの性質によって、0%から8%の間で課税されます。通常、商業税率は5%です。

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2016年4月1日より、商業税は税率0%から120%の範囲で課税され、特定品目に関して最も高い税率が課せられます(酒類、タバコ、銃、葉巻など)。特定品目税法が公布され、特定品目リストに基づいて5%から120%の間で課税対象となります(5.4節参照)。

会計年度の売上高またはサービスの提供による収益が2,000万 MMK 以下の場合には課税対象となりません。

商業税として、事業にかかる課税金および徴収金は売上税と見なし、内国歳入局へ支払わねばなりません。事業における仕入れ費用および経費にかかる商業税は商業税法に記載のある16種類の特定品目を除き、仕入れ税と見なします。商業税(売上税)登録を行っている事業は、条件を満たした場合、仕入れ税を控除できます。

MFIL に基 づ いて登記された法人でMIC から許可を所得している場合は特定の品目を特定の期間輸入する際と輸出用に製造された商品に対しては商業税が免税されます。

5.4 その他の税制

固定資産税

都市開発エリアに位置する不動産、(土地および建物)は課税対象となり、ヤン ゴン市開発委員会によってそれぞれの都市ごとに管理された税率に基づいて、固定資産税が課せられます。 印紙税

印紙法1891に基づいてさまざまな税率の印紙税が課税されます。税率は法令の表1に記載されています。改正印紙法

(印紙法改正)は2014年の4月1日にいくつかの変更を記載し刊行されました。下記にいくつかの税率を参照しました。

• 不動産物件の譲渡にかかわる金額または、価値の3%不動産の売却、譲渡に関して、追加課税2%

• 株式 の 譲渡 に 関して、株式価値 の0.3%

• 社債金額または価値の2%

• 3年以内の短期リース契約について、1年当たりの賃貸料の1.5%3年を超える長期リース契約について、1年当たりの賃貸料の3%

これらの印紙税率はミャンマーチャットでの契約に適用されます。

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関税

関税はミャンマーの関税率に基づ いて(the Customs Tariff of Myanmar 2012)0%から40%の間で課税されます。MFIL に基づき登記された法人で MIC からの許可を所得している場合は、施設の建設または拡張期間中に使用する、機械、設備、スペアパーツ、機械部品、材料にかかる関税と初期3年間分の商業生産の原材料にかかる関税は免税となります。

物品税

物品税 は アルコ ー ル 飲料 が 課税対象となります。税金は内務省(Ministry of Home Affairs)の 総 務 部(General Administration Department)によって徴収されます。

商業税・特定品目課税

2016年4月1日より特定品目税法が策定、制定されました。特定品目リストに含まれる品目は、紙巻きタバコ、タバコ葉、その他のタバコ製品両切りタバコ、シガー、パイプタバコ、ビール、ワイン、アルコール製品、宝石、チーク材1,800cc 以上の車両(バン、サルーン、セダン、エステートワゴン、クーペ)(4ドアダブルキャブを除く)原油、ガソリン、ディーゼル、航空燃料天然ガスです。税率は5%から120%の間で課税されます。

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6. 人事・雇用法

ミャンマーは急速な変換期にあります。特に、ここ数年で、人事・雇用法は著しく改革されましたが、いくつかの課題も残っています。2015年11月の総選挙で国民民主連合が勝利し、2016年3月に新政権が発足しました。外国投資は新しい市場で大幅な成長が見込まれ、経済成長と雇用のチャンスをもたらします。

労働者と雇用主は新雇用法の下でそれぞれの権利について学んでいる過程にあります。団体交渉は増えてきていますが、比較的まれです。ミャンマーの最低賃金は3,600MMK /1日であり、これは改善された価格であるものの、近隣地域中最低で、労働者の必要最低限の生活にも見合わない金額です。国民民主連盟(NLD)の勝利で、労働法の次の改正を含めた、改革強化が期待されます。しかし、基本的人権の問題は続いており、特に労働者と労働組合権を取り巻く環境、土地所有権、差別、闘争などの問題です。

6.1 外国人の雇用

会社法に基づ いて設立された外国企業において、外国人従業員の雇用人数に制限はありません。通常、会社法によって設立されたミャンマー国民が所有する地元企業では、外国人を取締役に選任することはできません。

MIC の許可の下で設立された組織が役員を選任する際には、ミャンマー国民に選任権が与えられます。MFIL に基づいて設立された外国企業は現地人を雇う必要があります。会社設立後、最初の2年間は最低25%の現地職員を採用、次の2年間以内に50%の現地職員を採用、その後の2年以内には最低75%の現地職員を採用するものとされています。また、外国投資企業は特別な技能を要しない仕事に関しては現地人を雇う必要があります。

外国企業 は、現地熟練労働者、技能者、職員を採用しなくてはならず、現行の労働規定法に基づいて、雇用主と従業員の間で雇用契約を締結する必要があります。外国企業はミャンマーの現地従業員を採用する際に、例えば、同等レベルの技能手当のように、外国人従業員との賃金格差がないように図り、監督する必要があります。

許可下にある経済機関は現地職員が自身の仕事に精通し、より高い水準のサービスを提供できるように、現地および外国のトレーニングを受けさせるように手配するものとします。

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Doing business in Myanmar 67

6.2 労働許可証取得手続きとその要件(経営者、管理者、専門家)

MIC の許可の下で設立された企業は外国人の専門家、技術者を雇うことができます。外国人の専門家および技術者を雇用するためには、以下の手続きを終える必要があります。

• 投資家は、雇用する外国人の専門家または技術者の人数について言及した投資申請書を MIC に提出しなければなりません。

• MIC の許可を取得した後、会社は労働許可証と役職についての申請を行わねばなりません。

• MIC の 承認とともに、会社 は 労働許 可 証 を 労 働 省(the Ministry of Labour)の労働局長に、滞在許可証とビザをミャンマー移民人口局(the Min is t ry o f Immigrat ion and Population)の国家登録局に申請する必要があります。

6.3 労働法

現行のミャンマーの労働法は次のとおりです。労働者災法(1923)Workmen’s Compensation Act、雇用統計法(1948) Employment Statistics Act、工場法(1951)Factories Act、休暇、休日法令(1951)Leaveand Holidays Act、 雇 用 規 制 法

(1959)Employment Restriction Act、 労働機関法(2011)Labour Organization Law、労働紛争解決法(2012)Settlement of Labour Dispute Law、社 会 保 障 法

(2012)Social Security Law、雇用・技 術促進法(2013)Employment and Skill Development Law、最低賃金法(2013) Minimum Wages Law、賃金支払い法(2016) Payment of Wages Law、商 業 施 設 法

(2016)Shops and Establishments Law。

これらの法律は労働関係の問題を管理し、労働時間、労働時間、休暇、休職、欠勤、女性と児童労働、賃金、残業、退職金、労災、社会福祉、労働規程といった諸問題に対応しています。最低賃金も規程されています。社会保障法によって、雇用主、従業員、政府の積立金による基金が設立されています(5.2節を参照)。

ミャンマー経済特区法では(2014)外国人従業員、労働許可証、現地従業員の最低割合について特例の規則が適用されると規定しています。ミャンマーは1948年以来、国際労働機関(ILO)のメンバーとなっています。ミャンマーの政府、雇用主、労働者の三者の代表から成る派遣団が、毎年ジュネーブで開かれる国際労働機関(ILO)の会議に出席しています。

6.4 ミャンマー永住権

2014年に外国人居住者の永住権申請に関する規定が公表され、外国人申請者は最初の5年の滞在が認められ、その後延長されます。政令では諸外国から専門家、知識人、学者、投資家を受け入れるとしている他、国外に移住した元ミャンマー人で国の発展に寄与した人も受け入れの対象です。

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68 ミャンマー投資ガイド 日本語版

7. その他留意事項

7.1 商業登記と許認可制度

輸出/輸入事業

商務省の発表によると、下記の輸出入を商う個人または業者は輸出業者として、登録許可を貿易総局長(the Directorate of Trade)に申請する必要があります。

• 申請者が市民、準市民、帰化市民のいずれかで、個人事業主

• パートナーシップ事務所

• 1950年の会社法(CA)または特別会社法に基づいて設立された企業(外国企業を含む)と合弁企業

100%外国所有の企業は自己の事業に使用するための物品を輸入することに限り輸入業者としての登録が可能です。100%外国所有の企業は現在ミャンマーで貿易取引を行うことは許可されていません。

100%外国所有の企業は現在貿易取引を行うことは許可されていないので、輸出業者としての登録も承認されません。

輸出入取引事業を設立する投資家は、最初に輸出入業者として、登録し、商務省の貿易総局長から輸出入事業登録書を取得する必要があります。登録書を受領した後、輸出入の度ごとに別途輸出入業ライセンスを申請します。

2013年、商務省 は 現地貿易業者 に、318種類の物品の自由貿易を許可しまし た(152 輸 出 品 目、166 輸 入 品 目 )。2014年には、商務省は152種類の物品について、現地および外国の輸入業者に対し、輸入ライセンスの免除を通告しました(No.11/2014)。

2015年5月のティラワ経済特区管理委員会発行 の 指示 によると(No.02/2015)、経済特区に会社を設立し、一定の条件を満たした場合、貿易業が許可されます。

2015年11月の 商務省 の 通告 により(No.96/2015)、貿易規制はさらに緩

和されました。通告では、外国合弁企業による農業製品と保健医療機器の貿易業務への従事が認められました。

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Doing business in Myanmar 69

企業の代表者

ミャンマー商務省は1989年10月13日の発令で(No.2/89)(企業代表者登録)企業代表者の要件の詳細について言及しています。

企業の代表者とは“手数料契約で外国の納入業者に対し、注文を受け入れ、発注する業務に携わるエージェント、個人または外国の機関と商取引をするために代表者として雇用された者、第三者との取引で他の人の代表者となった者”と定義されています(政令・1項(a))。

政令の下に登録されていない者はミャンマーで企業の代表者として事業を行うことはできません(2項)。政令ではさらに、販売やマーケティングサービスを提供し、エージェントに給料や手数料が支払われる場合は、ミャンマー市民または商務省に登録された会社のみが、その業務に就くことができるとしています。

全ての企業代表者はミャンマーに事務所を設立するか、登録しなければなりません。また、ミャンマーに銀行口座を開設し、企業代表者としての仕事により生じる全ての収益について、事業に関係する適切な書類、領収書、覚書を併せ、公明正大、かつ正確な会計報告を行う必要があります(8・9項)。

7.2 外国為替規制

外国為替取引は、1947年の外国為替規制法(FERA)からの改正で、2012年8月と9月に外国為替管理法(FEML)と外国為替管理規制(FEMR)としてそれぞれ規程されています。ミャンマー中央銀行法が、ミャンマー中央銀行(CBM)に、外国為替管理規制法(FEMR)を管理する権限を与えています。

7.3 外国為替

“ 外 国 為 替 ” と は 外 国 為 替 管 理 法(FEML)において“外貨および外国にあるか、外貨による支払いが可能な預金、貸付金、残高、およびミャンマー通貨で記載された文書、またはミャンマー通貨で引き出された債券で、外貨での支払いが可能なもの”と定義されています。

新ミャンマー中央銀行法では“外国為替”について以下のように定義しています。

(1)外貨現金、(2)外貨で支払いが可能か外国で支払いが可能な債券、(3)政府金融機関、中央銀行、財務省外国商業銀行の預金、(4)証券または文書で資金の国際転送に使われるもの、(5)国内の銀行で開設され、管理されている外貨口座。

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70 ミャンマー投資ガイド 日本語版

通常、ミャンマー市民、外国人、企業は以下の行為をする際には外国為替管理局

(FEMB)からの許可書を所持しなければなりません。外国為替の借入をし実質的な取引を行い、その元本と利息を返金すること。外国にいる人に支払いをすること。外国の銀行に口座を開設し、利益を送金すること。ただし、MFIL に基づいて設立された会社は関連する投資で得た、外貨の投資と利益を送還することができます。

外国為替管理法(FEML)はミャンマーの外に居住している人に外貨で支払いをすること、外貨の輸出、中央銀行から許可を得ていない外国為替を禁じています。中央銀行から前もって許可を取得しない限り、全ての人は、外国為替の購入、借入、販売、貸付、交換、転送をする際、正規代理店と取引をする必要があります。

中央銀行からの許可を得ていない限り、契約または合意した者が、外国為替管理法(FEML)の規定またはそれ以外の規則、指示、命令の実施を、直接的、間接的かを問わず、回避または避ける行為を行った場合には、その契約・合意は無効となります。従って、外国為替の支払い、取引、使用は、全て外国為替管理法(FEML)の規定に従うことを条件として、かつ、外国為替に関連する外国為替管理局(FEMB)の許可または承認を必要とします。

2015 年 5 月、ミャン マ ー 中 央 銀 行(CBM)は 政府省庁 や 地域行政 が 物品

やサービスを販売する際、ミャンマー通貨のみを使用し、請求、見積もりをするように指示した回覧を発行しました。中央銀行は今後さらにミャンマー通貨使用の強化を実現可能にするための調査を行っていくとみられます。

7.4 外国人による土地や不動産の所有

外国人による土地や不動産の所有は1987年に制定された不動産制限法によって明確に禁止されています。法令の下、誰であれ、外国人または外国人が所有する会社へ不動産を譲渡することは、売却、買い付け、贈与、贈与の受け取り、担保、担保の受け取り、交換、譲渡、譲受、その他いかなる方法をもってしても禁じられています。

新外国為替管理法(MFIL)では、同法律の下に登録された投資家は MIC の承認を得られれば、政府または民間人から、連続2度までの10年間延長オプション付きで、50年までの土地の賃貸資格が得られます。

ミャンマー印紙法により、賃貸契約書に適切な印紙が必要であるものの、MICの承認があれば、登記官との土地賃貸借契約が免除されることは、特筆すべきことといえます。

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リース期間はプロジェクトが投資家と国の双方にとって有益である場合には延長されることがあります。

外国人または外国企業は、MIC への土地賃貸借契約または、その他土地のリースについての権限を持つ人からの契約を証明する書類を申請する必要があります。土地賃貸借契約は MIC からの承認を受けた時点で締結され、MIC に送り返す必要があります。

2016年1月29日に、議会での何年もにわたる協議の末、コンドミニアム法が制定され、外国人は6階以上で2万平方メートル以上の敷地を持つコンドミニアムの場合、40%までの購入が可能となりました。

7.5 仲裁法

仲裁法は1944年の旧法から改正され、2016年1月5日に制定されました。国内および国際商業紛争の解決の役割を担っており、新改正法は今後、投資家に、今以上の法的安全性と強化をもたらします。

7.6 経済・貿易

国際貿易協定

2013年6月、ミャンマーは、EU の一般特恵関税制度に再適用され、輸出に関しての低関税による利益を得られるようになりました。2013年5月には米国との間に、貿易・投資枠組み協定が締結されました。

ミャンマーは中国、インド、イスラエル、日本、クウェート、ラオス、フィリピン、韓国、タイ、ベトナムと2国間投資協定を締結しています1。ミャンマーは、タイ、インド、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、ミャンマーの7カ国による、2017年までに自由貿易地域の設立を目的とした、ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブにも参加しています。

ASEAN経済共同体

第21回カンボジアで開催されたアセアンサミットにおいて、各国首脳は政治安全保障共同体(APSC)、経済共同体

(AEC)、社会・文化共同体(ASCC)から成るASEAN 共同体の設立に関心を示しました。このうち、最も重要な柱となるのは AEC で、ASEANメンバーの10カ国は単一生産、物品、サービス、投資、技能労働者、資本についての自由移動を認めるよう改革を計画している点です。

ミャン マ ー は1992年 に 開始され たASEAN自由貿易地域(AFTA)のメンバーです。AFTA は ASEAN 諸国における関税障壁を撤廃しようとしています。その主たる制度は、共通特恵関税スキーム(CEPT)で2010年から2015年までの間にカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムで関税を0%-5%に軽減していく計画です。

1 UNCTAD国際投資協定ナビゲーター、IISDレポートミャンマー投資条約(06/2014)

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72 ミャンマー投資ガイド 日本語版

ミャン マ ー は サ ービ ス 枠組 み 協定(AFAS) に加盟しており、協定はアセアン加盟国内での規制緩和、商業サービスの自由化の加速と業者間の協力体制の強化を目指しています。加えて、ミャンマーは ASEAN 投資地域(AIA)の枠組み協定に加盟、2010年1月までに ASEAN 経済の競争力の強化を図り、2020年までには自由かつ透明性のある投資環境、地域内での資本、その他の自由移動を目的としています。

2014年ミャンマーは ASEAN 加盟から17年目にして、初めて ASEAN 議長国を務めました。ASEAN 議長国ミャンマーは“平和で繁栄したコミュニティのために一致団結して前進する”というテーマを表明しました。

ASEAN のメンバーとしてミャンマーは以下の協定に参加しています。

• ASEAN 中国自由貿易協定:この協定は2010年1月6日に施行され、ゼロ関税の適用が他のアセアン諸国でも2015年までに適用される見込みです。

• ASEAN 韓 国 包 括 的 経 済 協 枠 組 み協定:2009年1月 から90 % の 品目について、ゼロ関税が適用されています。物品貿易 の 自由貿易地域 はASEAN-6の国々において、2012年まで継続、その他の加盟国については2018年まで継続の予定です。

• ASEAN 日本 包 括 的 経 済 連 携 協 定:この協定の締結 から10年以内に日本 からの90 % の 輸入品 につ いて、ASEAN-6で関税が撤廃される予定です。その他4カ国の加盟国については、さらに緩やかに関税が撤廃されていく予定です。

• 包括的経済協定 ASEAN インド枠組み 協 定:2012 年 12月31日 ま で にASEAN の5加盟国とインド間の自由貿易圏の設立を目指し、その他加盟国との間には2017年12月31日までに協定を締結する予定です。

• ASEANオーストラリア自由貿易協定:オーストラリア-ニュージーランド自由貿易地域 は、6億人 の 人 々と2兆7,000億米ドルの予算から成り、環太平洋自由貿易ゾーンの構築を目指しています。

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8. ミャンマーの会計監査制度

ミャンマーはアセアン諸国の中で最も会計士の少ない国の一つです。2012年以降の外国投資の急成長で、会計監査に関する規則の発達が加速的に進み、さらに資格のある会計士の必要性により実態との歪みが出ています。事業の拡大と増収にもかかわらず、多くの現地企業は旧態依然とした会計実務(透明性や必要な会計知識がしているもの)に固執してい ます。

より良い、会計統制、財務報告プロセスを目指し、考え方を大きく変える時が来ています。事業の成果と資本の流れを把握するためにテクノロジーの利用も必要です。外国の株主は世界標準に基づいて作成された財務報告書を要求しています。加えて、ヤンゴン証券取引所の開設により、株主は上場企業についての正確な財務報告書を求めています。

これらの結果として、有資格の専門会計士の需要が非常に高まっています。また、会計士を職業にするために勉学する学生の数も増えています。ミャンマー会計評議会(MAC)によるCPAトレーニングコースも、記録的な人数の受け入れになっています。

現在実施されている新しく、変更された国際水準を受けて、ミャンマー財務報告基準(MFRS)もミャンマー会計評議会による改訂計画が実施されることが期待されています。これが実施されると、企業にとっては、会計基準の変更を履行するという課題に取り組むことになり、財務専門家は改めて、トレーニングが必要となります。

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74 ミャンマー投資ガイド 日本語版

8.1 法律上の義務

ミャンマーの会社は最低一人以上の会計監査人を選任しなければなりません。最初の会計監査人は取締役によって選任することができ、後続の会計監査人は年次株主総会において、株主が選任できます。会社の取締役は年次株主総会ごとに監査済財務諸表を提出しなければなりません。

会社は法人を設立した日から18カ月以内に、最初の年次株主総会を開催する必要があります。次は前回の総会から15カ月以内に、歴年を超えない間隔で開催します。

年次株主総会の期間中、取締役が投票により選任され、会計監査人は指名選任されます。監査済財務諸表と取締役報告書が株主より承認されます。株主総会から21日以内に年次報告書を、会社登記局に届け出ます。

年次報告書には以下の情報が揃っていなければなりません:

• 年次株主総会の日付

• 株主の情報

• 取締役のリスト

• 会社の資本構成

ミャンマーの会計年度はミャンマー課税年度と同じであり、4月1日から3月31日までと決められています。どの事業も、たとえ、異なる会計報告年度の外国企業の支店や子会社であっても別の会計期間を選択することはできません。会計年度はミャンマーの課税調査期間と同じであり、会社は毎年6月30日までに監査済財務諸表を内国歳入局へ確定申告とともに提出しなければなりません。

会計監査の免除はミャンマーではありません。全ての会社は監査済財務諸表の所持が義務付けられています。

8.2 財務報告基準

ミャンマー会計評議会は(MAC)ミャンマー会計評議会法の下に設立され、4年ごとに更新されます。MAC の会長は監査局長官です。多くの職務の中でもMAC は会計監査基準の設定、ミャンマー会計士の倫理規範に責任を持っています。

2010年、MAC は29項からなるミャンマー会計基準(MAS)を公布、2011年1月4日には8項からなるミャンマー財務報告基準が(MFRS)施行されました。これらMASs および MFRS の両政令は当時適用されていた国際財務報告基準(IFRS)に準拠しています。2011年1月4日から国際会計基準局(IASB)によりいくつかの新しい条項および変更が公布されていますが、MFRSs では更新されていません。解釈については、国際財務報告基準解釈指針委員会(IFRIC)と解釈指針委員会

(SIC)の更新についてもMFRSs では行われていません。

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外国企業がミャンマーでの事業について、会計処理を行い、外国資本の法人の連結財務諸表を作成する際には、ミャンマー財務報告基準(MFRS)と国際財務報告基準(IFRS)には違いがある場合があることを考慮する必要があります。

例 えば、電力発電所プ ロジェクトの多くは政府による建設、運営、譲渡方式

(BOT)で契約され、請け負われています。 ミャンマー財務報告基準(MFRS)では企業にインフラ整備資本のような建設費を、固定資産として計上することを認めています。しかしながら、サービス譲与契約

(IFRIC12)では(MFRS は準拠していません)通常このような資産は BOT 契約期間終了後、政府の資産として返却されるため、名目的約因契約となり、固定資産として認められません。

国際財務報告基準(IFRS)の下では企業は、BOT 契約として事業を受諾する代わりに、サービス契約として認識し、BOT契約期間中の収益を建設収益と運営および管理収益として計上することもあります。ミャンマー企業は BOT 契約のような事業を受諾する際、外国投資家に報告する前に、IFRS の規定に従って会計上の調整をする必要があります。

ミャンマーのほとんどのグループ企業が連結財務諸表を用意しておらず、各々のグループについての単独財務諸表が当局によって届け出されます。こうした実務はミャンマーのグループ企業にとって、会計処理をさらに難しいものにしており、外国投資家への会計財務報告目的、外国金融業者の貸付契約要件を満たすため、または海外またはヤンゴン証券取引所への上場のため、国際財務報告基準

(IFRS10)に従って、連結財務諸表の作成を始める必要があります。

ミャンマー財務報告基準(MFRS)は国際財務報告基準(IFRS)(上記の特例事項付帯、2011年1月4日現存の政令に基づいています)に準拠しているものの、会計基準の中にはミャンマーで運営している現在の財務報告状況の内容とは明らかに関連性がないものもあります。複雑な資金調達の選択肢、デリバティブのような仕組み商品もミャンマーにはありません。ほとんどのミャンマーの企業は一般的に普通の銀行ローンまたは株主ローンによって融資を受けています。会計基準 IAS32/39号:デリバティブとヘッジング取引と、金融商品:表示、認識、測定は、ミャンマーではほとんど無関係です。ミャンマーのほとんどの会社が現在のところ、株式報酬プランを採用しておらず、従って、株式報酬(IFRS2)は適用されません。

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76 ミャンマー投資ガイド 日本語版

ミャンマーには店頭取引市場がありいくつかの会社が取引されてきました。これらの会社は公開会社と考えられています。ヤンゴン証券取引所は2015年12月に開設し、2016年3月25日に正式に1企業が上場し、取引を開始しました。ヤン ゴン証券取引所に上場している会社と店頭取引市場での取引は、ミャンマー会計報告基準(MFRS)に従って財務報告を行うことが義務付けられています。

MAC は中小企業向けのミャンマー会計基準(SMEs)を制定しています。これは国際会計基準の中小企業向け簡易版、ミャンマー・レビュー業務基準、ミャンマー保証業務基準と同じであり、中小企業向けミャンマー会計基準は MFRS の規制の公的説明責任を有さない基準と言えます。

8.3 会計監査制度

会計基準の適用、実施の他に、MAC は国内の監査人の資格と免許証についても管理しています。

MAC は監査人はミャンマー市民でなければならず、ミャンマー会計評議会に登録し、認定をするための一連の基準を設けており、全ての会計士の必須条件として、公認会計士(CPA)資格、会計士免許、ミャンマー会計評議会または外国で認められた機関からの学士のいずれかを保持していなければなりません。さらに、監査人はミャンマー会計評議会に登録した開業証明書を有した、ミャンマー市民でなければなりません。

MAC は監査基準を守り、ミャンマーの監査基準、ミャンマー監査実務報告書と会計士の倫理規定についても規定しています。

ミャンマー会社法145節(1)年次株主総会において、株主に対して、監査人は財務諸表が監査を受けたことを報告することが義務付けられています。監査報告書には以下の事項が記載されなければなりません。

• 監査人が必要な全ての情報や説明を得られたかどうか

• 監査報告書に引用されている貸借対照表および損益計算書が法に基づき作成されているかどうかについての監査人の意見

• 監査人が得た情報や説明、および会社の帳簿をもとに知り得る限り、貸借対照表が事実と相違ない財務状況を示しているか

• 法律で義務付けられたとおりに会社の会計帳簿が保管されているか

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9. ミャンマーにおけるビジネス

9.1 法人形態

ミャンマー外国投資法(MFIL)に基づき、投資は以下のいずれかの方法で実施されます。

a. ミャン マ ー 投資委員会(MIC)から 事業許可を受けた100%外国資本の会社

b. 外国投資家と現地パートナーによる合弁企業(ミャンマー市民、政府部門、政府機関)

c. 外国投資家と現地企業の両者による契約において指定された形態に沿った投資(例えば、BOT や BTO スキームなどのさまざまな協業形態)1

会社を組織し法人化するには現行の法律に従わなければなりません。現在の政令で会社について規制しているのは1914年(CA)に制定された会社法であり、ガイドラインは、投資・企業管理局(DICA)によって規定されています。

合弁企業が設立される場合、外国企業と現地企業の資本比率は外国企業、現地企業の両者によって特定され、合意の上で合弁企業事業に参入する必要があります。ミャンマー投資委員会(MIC)は事業の性質や部門によって最低投資金額を指示します。

規制業種または参入禁止業種において合弁事業を行う場合、外国投資の比率は、外国投資法(MFIR)によって規定されています。規制業種・参入禁止業種への外国投資資本額の上限は総投資資本額の80%以下でなければなりません。

有限責任会社

一定の産業で政府によって運営されている会社以外は有限責任会社は100%外国資本で設立されます。政府は個別にその事例に応じ、個人または経済機関、合弁企業、または単独企業、政府との合弁企業などその他さまざまな条件に従って会社設立を許可します。

ミャンマーには非公開型有限責任会社と公開型有限責任会社の2種類の形態があります。非公開型有限責任会社は最低2名、上限50名以下の株主が要請されます。100%ミャンマー資本の企業の株式の外国人への譲渡は規制されており、関係当局の承認を得ることを条件としています。公開型有限責任会社は少なくとも7名の株主が必要とされています。

1 ミャンマーインベストガイド2014、MIC・DICA、09/2014

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78 ミャンマー投資ガイド 日本語版

法人の登記

外国投資家が会社法に基づいて企業登記を行う場合、その会社は、ミャンマー投資委員会(MIC)の投資許可申請と外国投資法(MFIL)に基づく企業登録もすべきです。MIC からの投資許可を持つ企業は優遇制度を受ける資格があります

(3.3節参照 )。外国投資法 の 下で 企業登録をするには次のような段階を踏み ます。

• ミャンマー投資委員会(MIC)からの投資許可を取得

• 投資・企業管理局(DICA)への営業許可申請

• 企業登記室(CRO)に法人登記申請

MIC の許可を所持する必要のない会社は DICA からの営業許可とCRO に対する登記申請のみが必要です。

会社の種類 最低資本金額

会社法に基づいて登記される会社

- 製造業 15 万米ドル- サービス業 5 万米ドル

会社登記手数料は 100 万 MMK

企業体制

最低2名の出資者と2名の取締役が義務付けられています。出資者は個人である必要はなく、また取締役はミャンマー居住者かミャンマー市民である必要はありません。

最低資本金額

最低資本金額は会社が実施しようとしている業種によって異なります。会社法に基づいて登記された会社の場合、製造業最低資本金額は、それぞれ、製造業で15万米ドル、サービス業で5万米ドルとなっています(表1参照)。MFIL に基づいて設立された企業の場合、最低資本金額はミャンマー投資委員会(MIC)の裁量によって決定されます。

出典:投資・企業管理局、ミャンマー国家経済開発省

表1:最低資本金額

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2. 外国企業支店

外国企業は、ミャンマーに支店の開設ができます。会社法に基づいて設立された支店はミャンマー投資委員会(MIC)の許可を必要とせず、営業許可と登記証明のみが必要です。支店は製造業もしくはサービス業の会社として営業することができます(例えば、石油会社は主に支店の形式を取って設立されます)。

一方、外国投資法に基づいて設立された支店はミャンマー投資委員会(MIC)の許可に加えて、営業許可と登記証明が必要とされます。

支店開設に伴う登記手数料は100万MMKです。

3. 外国企業駐在員事務所

ミャンマーにおいて、商取引または投資案件を行う外国企業はミャンマー駐在員事務所を開設することがあります。(銀行業では駐在員事務所開設が一般的な方法です)支店に比べ、外国企業の駐在員事務所は直接商取引をすることや営利目的の活動は認められていません。ただ

し、企業本社と連携して、本社のために有益な情報収集をする事は許可されてい ます。

4. 合弁企業

外国企業はミャンマーのパートナー(個人、民間会社、協同組織、国営企業 )と合弁企業、(パートナーシップ企業または有限会社)を設立することができます。 ミャンマー投資委員会から、外国企業の合弁企業設立について、ミャンマーのパートナーの最低資本比率が20%以上で合弁企業の設立が許可される外国投資種類のリストが交付されています。例を挙げると、鉄道・道路開発にかかわる建設、薬品の原材料の製造などがあります。

2014年5月31日現在、登録企業および事業機関は以下のとおり 件数

ミャンマー企業 38,162

外国企業/支店 3,032

パートナーシップ企業 1,072

合弁企業 73

組合 88

42,427

出典:投資・企業管理局、31/05/2014、ミャンマー国家経済開発省

表2:登録企業・事業機関

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9.2 外国投資規制

ミャンマーにおける外国投資は以前は1988年に制定された外国投資法(FIL)によって統制されていました。その後、2012年11月2日に新ミャンマー外国投資法(MFIL)が2012年11月2日に政府と大統領によって承認、公布されました。ミャンマー投資委員会(MIC)も2013年 1月に、外国投資に門戸を開いている、参入可能な業種リストの通告を発表しました。2014年8月1日、ミャンマー投資委員会(MIC)は MFIL の以下3項の新しい通告を発表しました。これらの新しい通告は、引き続き現地事業を助成しつつ、外国投資を促進するミャンマーの最新の政策を示しています。その一方で、MIC からいくつかの税制上優遇措置の変更が提示され、外国投資の一定の分野においてさらに規制が設けられます。新通告は以下のとおりです。

• MIC 通告 No.49/2014公布14/08/2014

• MIC 通告 No.50/2014公布14/08/2014

• MIC 通告 No.51/2014公布19/08/2014

MIC 通告 No.49/2014では国営企業法(SEELaw)に規定される特例を除く、ほとんどの産業について網羅しています。

国営企業法により民間産業の参入が禁止されている業種

国営企業法では12の特定産業については、民間投資には公開されておらず、政府のみが運営できることになっています。

1. ミャンマーおよび外国でのチーク材の伐採と販売

2. 森林植林地の開墾および管理(農民による家庭消費用薪材の植林を除く)

3. 石油・天然ガスの採削・精製・製品の販売

4. 真珠、翡翠、宝石の採掘、採取・輸出

5. 政府による調査のための漁場においての魚およびエビの養殖

6. 郵便・通信事業

7. 航空・鉄道運輸事業

8. 銀行・保険事業

9. テレビ放送事業

10. 金属の採掘・採取・輸出

11. 発電事業(法律によって許可された民間および協同組合による発電事業を除く)

12. 治安や国防に関連する政府に必要な製品の製造

国営企業法によって定められた規制の枠組みを打開する新法令も成立しました。例えば、2013年10月8日に新通信法が制定され、通信ライセンスは2社の外国企業に許可されました。

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Doing business in Myanmar 81

政府は個別にその事例に応じ、個人または経済機関、合弁企業、または単独企業、政府との合弁企業などその他さまざまな条件に従って会社設立を許可します。

外国投資参入が認められる分野

MIC に提出された投資案件の提案書は個別に状況に応じて判断されます。

MIC 通告 No.49/2014 No.1/2013関連する情報は以下のとおりです。

1. 外国企業 の 参入 が 禁止されている 業種

2. 外国企業とミャンマー市民による合弁企業にのみ事業が許可される業種

3. 外国企業とミャンマー市民による合弁企業で、ミャンマーの関係省庁の推薦を得て、許可される業種

4. 外国企業との合弁企業でその他の条件を満たし、許可される業種

MIC は2014年(No.50/2014)の 通告の中で、環境影響評価が求められる企業のリストを事業内容の明細とともに更新しました。2013年 の 通告(No.1/2013)と比較して特に大きな変更はありません。リストには主に製造業、オイル・ガス産業、建設事業、大規模事業が含まれています。ミャンマーは世界経済に統合としようと模索しており、それ故、環境問題と環境維持への認識も高まってい ます。

9.3 投資優遇措置

MFILに基づく投資優遇措置

新ミャン マ ー 外国投資法(MFIL)の下、MFIL に基づいて登記された会社で、MIC からの許可を持つ場合には、以下の特別優遇税制度を MIC の裁量により受けることができます。

• 物品の製造またはサービスに従事する企業は事業開始から継続して5年間までの法人所得税の免除。MIC の判断により会社の業績が良い場合には免除の期間が延長されることがあります

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• 事業による利益を留保し、1年以内に再投資する場合は、法人所得税の免除または減税

• 機械設備、工場建物などの固定資産について、MIC が個別に定めた償却率による加速減価償却

• 製造業により生産された製品輸出で得られる収益に対して上限50%までの減税

• 外国人従業員の所得税を法人が負担する場合、負担額を法人課税所得から控除

• ミャンマー国内での実施が必要な研究開発の費用の法人課税所得からの控除

• 税務上の欠損金を3年間繰り越し、所得と相殺が可能(免税措置経過後、2年以内)

• 工場建設期間中 に輸入される機械設備、機器、スペアパーツ、材料の関税またはその他の税金の免税または 減税

• 工場建設終了後、製造業の開始から3年間の輸入原材料に関する関税の免除または減税

• 投資委員会の承認を得て、事業資本を増資し、事業拡張のために、機械設備、機器、スペアパーツ、資材などの輸入する場合、輸入にかかわる関税およびその他国内税の免除または 減税

• 輸出用に製造された物品に対する商業税の免除

2014年 の MIC による通告(No.51/2014)では、ミャンマー外国投資法の下、

(MFIL)いくつかの業種において、関税の免税および減税恩典制度が撤廃されました。アルコール・酒類・タバコの製造、石油、ディーゼル、エンジンオイル、天然ガスの販売、自動車のリースおよび修理天然資源の採掘・精製などの事業が、免税の対象外となりました。ただし、石油・天然ガスの採削製造は、リストから除外されています。さらに、酪農業および関連製品の製造については商業税の免除および減税の適用はありませんが、関税の免除および減税は享受できます。

これら特定の事業に加えて、“高度な技術を必要とせず、少額投資でミャンマー市民が運営できる産業労働促進を図る事業を除く”も対象外です。ミャンマー政府が引き続き、利用しやすい現地の人材と資本を優先的に活用し、現地企業の助成を促進していると考えられます。

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Doing business in Myanmar 83

経済特区

外国企業は MFIL に基づく外国投資に加えて、2011年に制定されたミャンマー特別経済特区法とダウェー経済特区法の廃止に伴い、2014年1月23日に施行されたミャンマー経済特区法(Myanmar SEZ Law)に基づいて投資を行うこともできます。

ミャンマー経済特区法はミャンマー内にある全ての経済特区に適用される基本法です。ミャンマー経済特区法は、取締機関として外国投資に対応するミャンマー経済特区の中央体です。ミャンマー経済特区法に規定される優遇措置は投資家に対し:

• 非関税区域または非関税地域事業において、投資事業開始の日から7年間法人所得税が免除

• プロモーション区域において、投資事業またはその他の事業の開始日から5年間の法人所得税の免税

• 非関税区域またはプロモーション区域においての投資事業に対し、50%の法人所得税の減税

• 事業で得た収益を留保し1年以内に再投資した場合、次の5年間、50%の法人所得税減税

• 関税その他の税金について、非関税地域において、製造のために輸入する、原材料、機械、設備、予備部品、その他の物品について免税。一方、プロモーション区域では建設工事用に輸入された、機械、設備および予備部品、について事業開始の日から5年間免税。追って次の5年間は関税その他の税金が50%に減税

• 損金について、5年間の繰り越しができる

ディベロッパーに対して:

• 事業の開始日より8年間の法人所得税免税

• 次 の5年間 の50 % の 法人所得税 の 減税

• その次の5年間は事業で得た収益を留保し1年以内 に再投資した場合、50%の法人所得税減税

• 一定の輸入物品、原材料、機械設備について、関税が免税

• 損金について、繰越損益が生じた年から5年間の繰り越しができる

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84 ミャンマー投資ガイド 日本語版

土地の賃借については上限50年間が許可され、次の25年間の更新延長ができます。投資家およびディベロッパーは 土地が投資目的で第三者に土地・建物の転賃借、譲渡および担保権設定を行う場合、管理委員会の許可を得なければなりません。

ミャンマー経済特区法に関する規程と手続きはまだ規定されていません。

9.4 投資保証および保護

投資保証および保護

MFIL は MIC の許可を得ている企業が事業許可契約期間中または許可契約延長期間中に国有化されないことを明示保証しています。MFIL は外国企業の契約期間が完了した時点で、政府が投資家に対して、当初投資に使われた外国通貨での収益送金ができることも同様に保証することを規定しています。

経済特区での事業はミャンマー経済特区法において、国有化されないことが保証されています。ミャンマー経済特区法の下では、製造された物品やサービスの価格、経済特区内の非関税区域とプロモーション区域からの輸出物品については規制されないと規定しています。

投資保護協定

ミャンマーは中国、インド、クウェート、ラオス、フィリピン、タイ、ベトナム、日本2、 韓国3と投資保護協定を締結しています。現在、EUとの投資保護協定の合意、調印に向けて、協議が行われています4。

9.5 検討中の新しい法律

新会社法(CA)

アジア開発銀行の支援によって、100年間続いた会社法が改正中です。新会社法はより良い企業統治と説明責任とともに、明確でかつ透明で、一貫した規則を制定し、ミャンマー経済の強化を目的としています。

ミャンマー投資法(MIL)

新ミャンマー投資法は現在草稿中です。ミャンマー投資法は2013年7月に制定されたミャンマー市民投資法と2012年の11月に制定されたミャンマー外国投資法が統合されて差し替えられます。政府は新制定される法律がアセアン地域の中の最優良事例となり、アセアン経済共同体の発足に関し、ミャンマーの尽力を印象づけたいと考えています。

2 日本とミャンマー、投資合意、経済省、貿易・産業、01/20133 韓国とミャンマー、投資保護協定に合意、コリアネット、6/01/20144 投資保護、EUと協定合意:ミャンマーに投資家を誘致、ミャンマービジネストゥデイ、11/09/2014

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Doing business in Myanmar 85

CHINAINDIA

Myitkyiná •

Bhamo •

• Mandalay

Monywa •

THAILAND

YANGON

LAOSChauk •

• Prome

Bay of Bengal

Bago •

• Pathein Mawtamyine•

• Akyab • Nay Pyi Taw

• Taunggyi

AndamanSea

ANDAMAN ISLANDS

(INDIA)

Dawei •

10. ミャンマー概要

10.1 ミャンマー動向

基本データ 面積 676,563平方km(東南アジア中、第2の面積) 隣接国 中国(2,204kmの隣接国境)、 インド(1,338kmの隣接国境)、 ラオス、タイ、バングラデシュ

人口 5,150万人(2014年国税調査結果)

ネピドー

人口 120 万人 – ミャンマー第 3 都市新首都 – 世界 10 大成長都市のひとつ 2013 年に東南アジア競技会を主催

ヤンゴン

人口 740 万 – ミャンマー最大都市2007 年まで首都殆どの工業団地が位置する近々オープン、ティラワ経済特区

ミャンマー地図

マンダレー

人口 170 万人 – ミャンマー第 2 都市前王朝首都上ミャンマーにおける経済ハブ

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86 ミャンマー投資ガイド 日本語版

首都人口 ヤンゴン:7,360,703人 ネピドー(首都):1,160,242人 マンダレー(地区):1,726,889人

その他人口100万以上の都市(州/地域) シュエポ(ザガイン):1,433,343人 バゴー(バゴー):1,770,785人 タウングー(バゴー):1,123,355人 ターヤーワディ(バゴー):1,062,331人 マグウェイ(マグウェイ):1,235,030人 パコック(マグウェイ):1,005,545人 ピンウールウィン(マンダレー):1,001,945人 ミンジャン(マンダレー):1,055,957人 モーラミャイン(モン):1,232,221人 タウンジー(シャン):1,701,338人 パテイン(エーヤワディ):1,630,716人 ヒャポン(エーヤワディ):1,033,053人 ヒンタダ(エーヤワディ):1,138,710人

民族 主要民族:カチン、カヤー、カレン、チン、バモー、モン、ラカイン、シャン

宗教 仏教徒 89%、キリスト教 4%(バプテスト 3%、ローマンカソリック1%)、ムスリム 4%、アニミスト 1%、他 2%

年齢構成 0–9 歳:18.5% 10–19歳:19.4% 20–29歳:16.9% 30–39歳:14.8% 40–49歳:12.4% 50–59歳:9.2% 60–69歳:5.3% 70歳以上:3.6%

気候 亜熱帯地域 最高気温時期:4月、24°C–36°C 最低気温時期:1月、18°C–23°C 乾期:1月、3mm 平均雨量 雨期:7月、582mm 平均雨量

言語 ミャンマー語: 多数の少数民族言語、カレン、シャンなども使用される 英語、特に高学歴の都市部エリート公立中学校では第 2 外国語とし

て採用

通貨 1Kyat(MMK)=100pyas. 中央銀行参照レート31/03/2015:MMK1,216:1米ドル

タイムゾーン GMT+6.5 時間

年度 4 月 1 日から 3 月 31 日まで

天然資源 天然ガス、石油、金、翡翠、ルビーその他天然石、銅、錫、アンティモニー、鉛、亜鉛、銀、チーク他木材

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Doing business in Myanmar 87

10.2 歴史概略

主要年表1885–1948 英国植民地、東南アジア第2位の経済(インドネシアに次ぐ)および米

とチーク材の最大輸出国

1941 1942年の日本軍の侵攻を予見してアウンサンがビルマ独立義勇軍と率いてビルマ国を建国

1947 元首アウンサンと数名の閣僚が暗殺される

1962 ネウィン将軍率いる軍がクーデターを起こす

1948–1988 軍事政権時代

1988 外国投資家参入に伴い民主化騒動

1990 アウンサンスーチー率いる国民民主連盟が総選挙で圧勝するものの結果は反故にされる

1992 軍政府はソウマウン首相を退任させタンシュエが首相に就任

1997 米国がミャンマーに対して経済制裁措置を取る:ミャンマーASEAN加入

2000 欧州がミャンマーに対して経済制裁措置を取る

2001 “investor-friendly”政策を無効になり、多くの分野で外国投資が不可能となる

2007 反政府デモ“サフラン革命”を弾圧-制裁の強化、投資家の引き上げ:ミャンマーは中国寄りに転向

2010 制限付き民主選挙の実施

2010 アウンサンスーチーの軟禁が解除される

2011 大統領ティンセインが国家元首となる

2011 クリントン国務長官がミャンマーを訪問

2011 新市民政府欧米との関係改善

2012 オバマ米国大統領、ミャンマーを訪問

2012 欧州全ての制裁(軍関連を除く)を解除

2013 SEA Games(東南アジア競技大会)の主催国となる

2013 欧州全ての制裁を解除

2013 ティンセイン大統領、ワシントンDC 訪問

2013 安倍晋三首相がミャンマーを訪問

2014 ASEAN 首脳会議

2014 米国、いくつかの制裁を一年延長

2014 オバマ米国大統領ミャンマー2度目の訪問

2014 ガウクドイツ首相ミャンマーを訪問

2014 ASEANSサミット、東アジアサミットの開催国となる

2015 ミャンマー総選挙、11月8日 アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)の地滑り的な勝利

2016 NLD 国民民主連盟政府4月1日発足開始

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88 ミャンマー投資ガイド 日本語版

10.3 人口統計

2014年ミャンマー国勢調査

2014年の国勢調査によると、ミャンマーの総人口は5,148万6,253人となっています。最も人口の多い都市および地域は、ヤンゴン、エーヤワディー、マンダレー、シャン、ザガインです。世帯平均人数は4.4人となっています。

総人口の29%が都市部に在住しています。ヤンゴンはの都市部人口が一番高く(70%)続いて、カチン州(36%)、マンダレー(35%)、ネピドー(32%)となっています。

人口密度に関して、ミャンマーの平均値は1平方 km 辺り76人です。もっとも人口密度の高い州/地域はヤンゴン(716人/1平方 km)、続いてマンダレー(200人/1平方 km)、エーヤワディ(177人/1平方 km)、モン(167人/1平方 km)ネピドー(164人/1平方 km)です。

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Doing business in Myanmar 89

10.4 政治体制・内政

主要データ

正式名称 ミャンマー連邦共和国

通称名 Pyidaungzu Thammada Myanma Naingngandaw

独立 1948年1月4日

憲法 2008年5月29日に国民投票にて承認

政体 2011年に一連の改正共和制(2011年3月)

行政 国家元首:ティンチョウ大統領(2016年4月1日就任、5年任期) 副大統領: ヘンリーバンティオ(2016年4月1日) 副大統領:ミンスエ(2016年4月1日)

政府長官:ティンチョウ大統領

閣僚:大統領の指名後議会の承認により確定します

選出: 大統領は議会選出、三人の副大統領より選ばれます。各副大統領は上院、下院、軍指名の議員の中から選出されます

議会 構成:二院制 民族代表院、Amyotha Hluttaw(224議席168議席は直接選挙56議席は軍

指名枠) 国民代表院、Pyithu Hluttaw(440議席330議席は直接選挙110議席は軍指

名枠)

司法 コモンローと慣習法の混合システム

政党 NLD(国民民主連盟、党首アウンサンスーチー) USDP(連邦団結発展党、党首テインセインテーウー) NUP(国民統一党、党首タンティン) NDP(民族発展党、党首ナイジンラット) DPM(ミャンマー民主党、党首トゥーワァイ) NDF(国民民主勢力、党首キンマウンスゥィー) SNDP(シャン民族民主党、党首セイアイケパオ) SNLD(シャン諸民族民主連盟、党首クゥントゥンウー) 他、民族系政党

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省庁・官僚

国家最高顧問 Daw Aung San Suu Kyi

大統領府 Daw Aung San Suu Kyi

外務省 Daw Aung San Suu Kyi

教育省 U Myo Thein Gyi

エネルギー省 U Pe Zin Tun

農業畜産灌漑省 U Aung Thu

運輸・通信省 U Thant Zin Maung

宗務・文化省 Thura U Aung Ko

資源・環境省 U Ohn Win

情報省 U Pe Myint

労働移民管理国勢省 U Thein Swe

建設省 U Win Khaing

少数民族問題省 U Naing Thet Lwin

保健省 Dr. Myint Htwe

商務省 U Than Myint

社会福祉救援復興省 U Win Myat Aye

工業省 U Khin Maung Cho

財務省 U Kyaw Win

観光省 U Ohn Maung

国防省 Lt. Gen Sein Win

内務省 Lt. Gen Kyaw Swe

国境省 Lt. Gen Ye Aung

司法長官 U Tun Tun Oo

会計検査院長官 U Maw Than

中央銀行総裁 U Kyaw Kyaw Maung

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www.pwc.com/jpPwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた有限責任監査法人、京都監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独立して事業を行い、相互に連携をとりながら、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界157カ国に及ぶグローバルネットワークに208,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はwww.pwc.comをご覧ください。

本報告書は、PwCメンバーファームが2016年5月に発行した『Doing business in Myanmar』を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。電子版はこちらからダウンロードできます。 www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/thoughtleadership.htmlオリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。 www.pwc.com/mm/en/publications/assets/myanmar-business-guide-2016.pdf日本語版発刊月: 2016年8月 管理番号: I201606-6

©2016 PwC. All rights reserved.PwC refers to the PwC Network and/or one or more of its member firms, each of which is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details.This content is for general information purposes only, and should not be used as a substitute for consultation with professional advisors.