隠れた局所対称性に基づく有限密度2-color QCD におけるベクトルボソン質量の解析
山岡哲朗 ( 名古屋大学 )
<共同研究者> 原田正康 野中千穂
◎QCD 相図
◎QCD ラグランジアン
◎ 有限密度では格子 QCD の計算ができない→「符号問題」
この問題を解決する1つの状況・・・ 2-color QCD
・ 2-color 有限密度での格子 QCD 計算
・ S.Muroya, A.Nakamura, C.Nonaka, Phys.Let.B.551(2003)・ S.Hands, P.Sitch, J-I.Skullerud, Phys. Let. B. 662 (2008)
→ベクトルボソンの質量が変化
・ 2-color カイラル有効理論
・ J.B.Kogut, M.A.Stephanov, D.Toublan, J.J.M.Verbaarschot, A.Zhitnisky, Nucl.Phys.B.582(2000)
→バリオン荷を持つ粒子が自然に導入され、その有限 密度中での振る舞いを見ることができる
→有効理論の範囲内で特徴的な相転移( U(1)B のSSB )
◎ 本研究で行ったこと
・有限密度 2-color QCD におけるハドロン質量の振舞いを解析した
- 隠れた局所対称性 (hidden local symmetry) に基づいたベクトルボソンを含むカイラル有効模型を構成
- U(1)B 相転移密度におけるベクトルボソンの質量変化
- 先行研究との比較
・ J.T.Lenaghan, F.Sannino, K.Splittorff, Phys.Rev.D.65,054002(2002)
・ M.bando, T.Kugo, K.Yamawaki, Phys. Rep 164, 217 (1988)・ M.Harada, K.Yamawaki, Phys. Rep 381, 1 (2003)
・アウトライン
1. 導入
2. 隠れた局所対称性に基づくカイラル有効模型の構成
3. 有限密度における真空の配位
4. 有限密度中での NG ボソン、ベクトルボソンの質量変化
5. まとめと今後の課題
2.HLS カイラル有効模型の構成◎2-color でのカイラル対称性・ fermion の作用(運動項)
q の SU(N)L×SU(N)R の対称性→ Ψ の SU(2N) 対称性
・ Ψ の定義
◎ カイラル対称性を自発的に破る項
◎2-color におけるカイラル対称性の自発的破れ
・この項は次の Ψ の変換に対して不変
※Sp(2N)
SU(2N) Sp(2N)SSB
◎QCD ラグランジアンの明示的対称性の破れ
◎μ の変化による明示的対称性の破れの推移
・クォーク質量と化学ポテンシャルの両方がある場合
SU(2N) ⇒ SU(N)V×U(1)B
→ →
⇒ ⇒
◎HLS に基づくカイラル有効ラグランジアンの構成
・ SU(2N)global×Sp(2N)local→Sp(2N)global の下での NG ボソンを記述するラグランジアンを構成する・ SU(2N)global×Sp(2N)local→Sp(2N)global の下での NG ボソンを記述するラグランジアンを構成する
・基本変数
・ ξR と ξL の変換性
Hidden Local Symmetry
・共変微分の定義
HLS gauge boson Chiral gauge boson
・各ゲージ場の変換性
・ 1-form の定義と変換性
◎SU(2N)global×Sp(2N)local 不変なラグランジアン
・ Vνρ : HLS gauge boson の運動項
・∑: SU(2N)global/Sp(2N)global から出る NG ボソン場
※HLS gauge boson の運動項を考えない場合
商空間 SU(2N)/Sp(2N) 上での非線形シグマ模型
3. 有限密度における真空の配位◎真空期待値
※ ユニタリーゲージ (σ=0) を取っている
※HLS gauge boson は回転対称性を破らないことを仮定
◎クォーク質量、化学ポテンシャルの効果の導入
◎ポテンシャル項
◎ポテンシャルの V0 についての停留条件
・停留条件の解を代入
→μ の値によって NG ボソンの真空期待値が変化する
→μ の値によって NG ボソンの真空期待値が変化する
・ 0<μ<mπ/2
・ mπ/2<μ
NG ボソンが有限の真空期待値を持つ
☆μ を増加させていくと、 μ=mπ/2 で相転移が起こる
SSB→ →
→ →
※QCD ラグランジアンの mq と μ の効果による明示的対称性の破れ
◎N=2 での NG ボソン質量を調べる
・現れる NG ボソンは 5 つ
・対称性の破れの推移→ →
U(1)B のSSB
・ 2-color の特殊性から 2 タイプの NG ボソンが現れる
※SU(4) を SU(2)×U(1) で分類
3 個
2 個
・ NG ボソン質量の密度依存性
massless NG ボソン
( J.B.Kogut, M.A.Stephanov, D.Toublan, J.J.M.Verbaarschot, A.Zhitnisky, Nucl.Phys.B.582(2000) )
◎N=2 での HLS gauge boson の質量を調べる
・ Vμ は Sp(4)local のゲージ場として導入されたベクトルボソン
→10 個のベクトルボソン
・ 2 タイプのベクトルボソンが現れる
※SU(4) を SU(2)×U(1) で分類
4 個
6 個
・ HLS gauge boson 質量の密度依存性
U(1)B の相転移
◎先行研究との比較( J.T.Lenaghan, F.Sannino, K.Splittorff, Phys.Rev.D.65,054002(2002) )
・ Sp(4)local のゲージ場としてのベクトルボソンについて比較
→HLS Lagrangian における、ある特定の高次項が大きな係数で入った効果
- U(1)B 相転移前における振舞いは同じ
- U(1)B 相転移後において違いが見られる
5-1. まとめ
◎HLS の枠組みで、 gauge boson を導入した有効ラグランジアンを構成し、有限密度中でのハドロン質量変化を調べた
・ μ=mπ/2 の U(1)B の破れの相転移密度において、 HLS gauge boson 質量の密度依存性が変化する
5-2. 今後の課題
◎SU(2N)global×SU(2N)local→Sp(2N)globa の有効模型の構成
→ a1 に対応するベクトル場の導入( Generalized hidden local symmetry )
→2種類のベクトル場が混合して、質量の振る舞いがどう変わるか(回転対称性が破れの可能性)
◎有限運動量における分散関係を調べる
→ HLS ボソンと NG ボソンの混合の可能性
Back Up
・一般の Nf での NG-boson の supectrum
※EQ+ 、 EQ- の Spectrum (mπ=mV)
U(1)B の相転移
→このグラフは妥当ではない?