SE法の基礎
近畿大学医学部奈良病院
阪本 貴博
Principle of MRI
SE法の基礎
・MRIとは・SE法とは・縦緩和と横緩和・TRとTE・コントラスト
本日の内容
MRIとは
Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像法
N S
静磁場(磁石)
++
水素原子
+
静磁場と電波(RF)を使って水素原子の様子を画像化している
電波(RF)
MRIに必要な3つの要素
歳差運動
水素原子(プロトン)はある一定の速度で回転運動をしている。
この回転運動のこと=歳差運動
ω : 歳差運動周波数 (MHz)
γ :磁気回転比
B0 :静磁場強度(Tesla : T)
ω = γB0 ラーモアの式
歳差運動と共鳴周波数
磁気回転比は物質により異なっている。1H= 42.6MHz/T 14N=19.3MHz/T13C= 67.3MHz/T
ω = γB0
ω : 歳差運動周波数 (MHz)
γ :磁気回転比
B0 :静磁場強度(Tesla : T)
1Hの共鳴周波数⇒1.0T:42.6MHz
1.5T:63.9MHz
3.0T:127MHz歳差運動の回転数
静磁場(B0)における核磁気モーメント
静磁場B0
静磁場に沿った方向が多い
静磁場に沿った方向の磁力が発生
MRI装置における画像化の原理
S極
N極
S極
N極
②RF送信
S極
N極
電波を放出
③RF送信Stop
RFパルス RFパルス
⑤画像化
④電波を受信
①静磁場
SE法の基礎
・MRIとは・SE法とは・縦緩和と横緩和・TRとTE・コントラスト
本日の内容
SE法とは?①90度パルスを印加②1/2TE時間後に180度パルスを印加③TE時間後MR信号(スピエコー信号)を取得
RF pulse
信号
90°180°
スライス選択(Gz)
90°
位相エンコード(Gy)
周波数エンコード(Gx)
SE法とは?①90度パルスを印加②1/2TE時間後に180度パルスを印加③TE時間後MR信号(スピエコー信号)を取得
RF pulse
信号
90°180°
スライス選択(Gz)
90°
位相エンコード(Gy)
周波数エンコード(Gx)
TE:エコー時間
TR:繰返し時間
90°パルスが切れると位相分散が始まる
180°パルスを印加し反転
再収束が始まる位相分散されていない強い信号
180°パルス
Spin Echo発生
90°パルスを印加すると縦磁化が横に倒れ、位相はそろってる
x
z
y
90°パルス
SE法の撮像時間
SE法の撮像時間 =TR×位相エンコード数×加算回数
RF pulse
信号
90°180°
スライス選択(Gz)
90°
位相エンコード(Gy)
周波数エンコード(Gx)
TR
Principle of MRI
SE法の基礎
・MRIとは・SE法とは・縦緩和と横緩和・TRとTE・コントラスト
本日の内容
緩和とは?
z
x
y
RFパルス
与えられたエネルギーを放出しながら、徐々に磁気モーメントが元の安定状態へ戻る過程
RFパルスを切ると起こる2つの過程①プロトンは低いエネルギーレベルに戻る。②位相がバラバラになる
x
z
y
緩和
緩和の過程で磁化ベクトルを縦方向と横方向の成分に分けると
x
z
y
縦磁化
横磁化
x
z
y
縦磁化
横磁化
x
z
y
縦磁化
横磁化
横磁化
x
z
y
RFパルス
縦緩和とは?
RFパルスを切られた後のプロトンが低いエネルギーレベルに戻る過程
X X X X
Y Y Y Y
Z Z Z Z
縦磁化
縦磁化
縦磁化
縦緩和とは?
時間
縦磁化
・縦磁化が回復する過程・T1緩和、スピン-格子緩和とも呼ばれる。
横緩和とは?
Z Z Z
X X X
Y Y Y
RFパルスを切られた後、位相がバラバラになる。
横磁化 横磁化 横磁化
横緩和とは?
時間
横緩和 横磁化
・横磁化が減衰する過程・T2緩和、スピン-スピン緩和とも呼ばれる。
位相分散の原因①スピン-スピン相互作用(内的不均一性)②静磁場の不均一性
T1値
時間
T1緩和縦磁化
T1値
63%
100%
T1値=縦磁化が63%まで回復するまでの時間
縦(T1)緩和のポイント
T1値が長い物質
時間
信号強度 T1値が短い物質
回復が早く、信号強度が高い
回復が遅く、信号強度が低い
T2値
時間
T2緩和
横磁化
T2値=横磁化が37%まで減衰するまでの時間
37%
100%
T2値
横(T2)緩和のポイント
時間
信号強度
T2値が短い物質
T2値が長い物質
減衰が遅く、信号強度が高い
減衰が早く、信号強度が低い
Principle of MRI
SE法の基礎
・MRIとは・SE法とは・縦緩和と横緩和・TRとTE・コントラスト
本日の内容
TRとTE
RF pulse
信号
90°180° 90°
TR:繰返し時間
TE:エコー時間
SE法
TRとTE
横磁化
TR TE
T1緩和 T2緩和縦磁化
縦磁化Mzは指数関数的
に回復する.
MZ(t) = M0 (1 -e -TR/T1)
M0
横磁化Mxyは指数関数的
に減衰する.
Mxy(t) = M0 e -TE/T2
M0
同じグラフ上にプロットされた回復曲線と減衰曲線
信号強度
TR TE
T1緩和
T2緩和
SE法の信号強度の3つの要素
プロトン密度の項
T2緩和の項
T1緩和の項
SEの信号強度∝ρ・(1 -e -TR/T1) ・e -TE/T2
ρ:プロトン密度TR:繰返し時間T1:物質固有のT1値TE:エコー時間T2:物質固有のT2値
SE法の信号強度
SEの信号強度∝ρ・(1 -e -TR/T1) ・e -TE/T2
ρ:プロトン密度TR:繰返し時間T1:物質固有のT1値TE:エコー時間T2:物質固有のT2値
TRとTEを決めると信号強度が変化させることができる。(コントラストを変化させられる)
TRとTE まとめ
• TR=T1緩和のために待つ時間TE=T2緩和のために待つ時間
• SEの信号強度∝プロトン密度×T1緩和×T2緩和
• 信号強度とコントラストはTRとTEによって変化する。
Principle of MRI
SE法の基礎
・MRIとは・SE法とは・縦緩和と横緩和・TRとTE・コントラスト
本日の内容
SE法のコントラスト
A
B
TR
縦磁化
TE
横磁化
B
A
TR TE
T1W Short (400~700ms) Short (8~15ms)
T2W Long (3000~6000ms) Long (80~140ms)
PDW Long (1000~6000ms) Short (10~30ms)
~強調画像とは
T1強調画像は
SEの信号強度∝プロトン密度×T1緩和×T2緩和
T1緩和の影響を大きくして、プロトン密度とT2緩和の影響を小さくする画像
T1強調画像=プロトン密度×T1緩和×T2緩和
~強調画像とは
T1強調画像=プロトン密度×T1緩和×T2緩和
T2強調画像=プロトン密度×T1緩和×T2緩和プロトン密度強調画像=プロトン密度×T1×T2
SEの信号強度∝プロトン密度×T1緩和×T2緩和
※プロトン密度は物質固有
T1,T2緩和の影響を大きくしたり小さくしたりすることによりコントラストをつける。
T1を強調するためには
T1値が長い物質
TR
信号強度 T1値が短い物質
T1を強調する時間帯
短いTRのときT1の影響が強い
T1を強調しないためには
T1値が長い物質
TR
信号強度 T1値が短い物質
T1を強調しない時間帯
長いTRのときT1の影響は弱い
T2を強調するためには
T2を強調する時間帯
TE
信号強度
T2値が短い物質
T2値が長い物質
長いTEのときT2の影響は強い
T2を強調しないためには
T2を強調しない時間帯
TE
信号強度
T2値が短い物質
T2値が長い物質
短いTEのときT2の影響は弱い
T1強調画像のTR,TE
T1強調画像=プロトン密度×T1緩和×T2緩和
短いTR 時間短いTE
信号強度
T1 T2
T2強調画像のTR,TE
T2強調画像=プロトン密度×T1緩和×T2緩和
長いTR 時間長いTE
信号強度
T2T1
プロトン密度強調画像のTR,TE
プロトン密度強調画像=プロトン密度×T1×T2
長いTR 時間短いTE
信号強度
T1 T2
T1強調画像のコントラスト
高信号・脂肪・混じりけのある水
亜急性期の出血・高蛋白液など・Gd造影剤の増強効果
低信号・水の多いところ・大部分の病変
T1強調画像で高信号は特異的な病変
T2強調画像のコントラスト
高信号・水の多いところ(浮腫・炎症・嚢胞性病変など)・大部分の病変
低信号・筋肉由来のもの・線維成分に富むもの・急性期や慢性期の出血・特定の沈着物(アミロイド・メラニンなど)
T2強調画像で低信号は特異的な病変
SE法のコントラスト まとめ
• SEの信号強度∝プロトン密度×T1緩和×T2緩和
• 短いTR ⇒ T1の影響は強い• 長いTR ⇒ T1の影響は弱い• 短いTE ⇒ T2の影響は弱い• 長いTE ⇒ T2の影響は強い
TR TE
T1W Short (400~700ms) Short (8~15ms)
T2W Long (3000~6000ms) Long (80~140ms)
PDW Long (1000~6000ms) Short (10~30ms)
参考文献
• 高原太郎. MRI自由自在,MEDICAL VIEW, 1999.• 荒木力. 決定版 MRI 完全解説. 学研メディカル秀潤社, 2014.
• 荒木力. MRIの基本 パワーテキスト. メディカルサイエンスインターナショナル, 2014.