draftsight(2d-cad)の使用法についてfuji/archive/draftsight.pdf4 3.2...

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1 2016/12/15 空間表現実習Ⅰ(芸工・工業) 智亮 DraftSight(2D-CAD)の使用法について 1. インストール http://www.3ds.com/ja/products-services/draftsight-cad-software/ からダウンロード(無料版)してインストール(ライセンスタイプは「無料」を選択)。 ※ 初回立ち上げ時に「今すぐアクティブ化」を行う(メールアドレスなどの入力要)。 ※ 「Professional Pack Offering for DraftSight にアップグレード」のウィンドウが出たら、 「不要」 ボタンをクリック。 ※ 「DraftSight Professional 30日間試用版」のウィンドウが表示されたら、「×」ボタンをクリ ックしてウィンドウを消す。 2. 操作(コマンド実行)方法 「線分を描く」、「図面を拡大表示する」など、何らかの操作をおこなうためには、目的を達成 するためのコマンドを実行する。DraftSight では、①メニューバーから項目を選択、②ツールバー のボタンをクリック、③コマンドプロンプトに命令を入力の 3 通りの方法でコマンドを実行する ことができる。 ※ どの方法を用いればよいか一概にはいえないが、ツールバーによる操作が一般的である。 ※ 画面に表示される 「ホーム」や 「プロパティ ウィンドウ」パレットは、必要ないときは閉じて おくとよい(作図領域をできるだけ大きく表示したいため)。 3. 初期カスタマイズ ワープロや表計算ソフトが初期状態でも十分使い始められるのに対して、2D-CAD ソフトは初 期状態のままでは使いものにならない。例えば、使い始めるとすぐに次のような厄介な問題に直 面する。 ・ 作図画面上の、どこからどこまでが用紙なのかが分からない (用紙の範囲外にも図を描ける)。 ・ 破線や一点鎖線や二点鎖線が描けない。 ・ 太線と細線の区別をどうするかが分からない。 ・ 「寸法」メニューから寸法を入れることはできるが、規格通りに寸法を描けない(矢印の形、 寸法文字の字体、外形と寸法補助線との距離、寸法補助線の寸法線からのはみ出し距離など、 ほぼすべてが規定外)。 以下に、これらの問題を解決するためのカスタマイズ内容を説明する。なお、カスタマイズ内容 は、CAD システム自身または図面テンプレートファイルに保存される。

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2016/12/15

空間表現実習Ⅰ(芸工・工業)

藤 智亮

DraftSight(2D-CAD)の使用法について

1. インストール http://www.3ds.com/ja/products-services/draftsight-cad-software/

からダウンロード(無料版)してインストール(ライセンスタイプは「無料」を選択)。

※ 初回立ち上げ時に「今すぐアクティブ化」を行う(メールアドレスなどの入力要)。

※ 「Professional Pack Offering for DraftSightにアップグレード」のウィンドウが出たら、「不要」

ボタンをクリック。

※ 「DraftSight Professional 30 日間試用版」のウィンドウが表示されたら、「×」ボタンをクリ

ックしてウィンドウを消す。

2. 操作(コマンド実行)方法 「線分を描く」、「図面を拡大表示する」など、何らかの操作をおこなうためには、目的を達成

するためのコマンドを実行する。DraftSight では、①メニューバーから項目を選択、②ツールバーのボタンをクリック、③コマンドプロンプトに命令を入力の 3 通りの方法でコマンドを実行することができる。

※ どの方法を用いればよいか一概にはいえないが、ツールバーによる操作が一般的である。 ※ 画面に表示される 「ホーム」や 「プロパティ ウィンドウ」パレットは、必要ないときは閉じて

おくとよい(作図領域をできるだけ大きく表示したいため)。

3. 初期カスタマイズ ワープロや表計算ソフトが初期状態でも十分使い始められるのに対して、2D-CAD ソフトは初

期状態のままでは使いものにならない。例えば、使い始めるとすぐに次のような厄介な問題に直

面する。

・ 作図画面上の、どこからどこまでが用紙なのかが分からない (用紙の範囲外にも図を描ける)。

・ 破線や一点鎖線や二点鎖線が描けない。

・ 太線と細線の区別をどうするかが分からない。

・ 「寸法」メニューから寸法を入れることはできるが、規格通りに寸法を描けない(矢印の形、

寸法文字の字体、外形と寸法補助線との距離、寸法補助線の寸法線からのはみ出し距離など、

ほぼすべてが規定外)。

以下に、これらの問題を解決するためのカスタマイズ内容を説明する。なお、カスタマイズ内容

は、CADシステム自身または図面テンプレートファイルに保存される。

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3.1 ユーザーインターフェース 推奨する変更内容を紹介する。なお、(1)以外の設定項目はシステムに保存され、次回起動した

ときにおいても有効である。

(1) 画面左上の「Drafting and Annotation」を「Classic Default」にする

(2) 画面左に表示されている [ホーム]と[プロパティ]パレット → ×ボタン押下で消す

(3) [ツール] → [オプション]

[DraftSight] → [設定]

→[システムオプション] → [グラフィックス領域]

カーソルをクロスヘアとして表示 : □ → ☑ ポインタサイズ : [5] → [100]

(4) [ツール] → [オプション]

[DraftSight] → [設定]

→ [ユーザープリファレンス] → [作図オプション] → [エンティティ選択] → [選択設定]

選択ボックスサイズ : 左から 4番目 → 10 番目

(5) [ツール] → [オプション]

[DraftSight] → [設定]

→ [ユーザープリファレンス] → [マウスオプション] → [高速 Enter 動作]

高速右クリックで Enter 有効 : □ → ☑ (高速クリックタイミングは[250]のまま)

(6) ツールバーの位置にマウスを合わせて右クリック → [ツールバー...]

ツールマトリックスの位置にマウスを合わせて右クリック → [ツールバー...]

表示しておくと便利なツール : ☑ズーム、☑プロパティ、☑画層、☑画層ツール、 ☑作成、☑修正、☑情報、☑寸法、☑標準

※ の初期状態では、ツールバーはツールマトリックス内に配置されている。一方で の

初期状態では、ツールマトリックスは使用されていない。ツールマトリックスを使用す

るか否かは個人の好みで決めてよい。

(7) [ツール] → [オプション]

[DraftSight] → [設定]

→ [システムオプション] → [表示] → [要素の色] → [シートの背景]

ドロップダウンメニューから、色を指定→グレイスケールの色番号 251を選択

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図1 と それぞれのツールバーの画面配置例(画面色は実際は黒)

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3.2 印刷スタイルの設定 作図画面上に描くエンティティ(線や円など)は、「色」や「太さ」などの情報をもっている。

このような情報をもつエンティティをプリンタに出力するためには、あらかじめ一定の規則を、

印刷スタイルとして設定しておく必要がある。

単純に考えれば、個々のエンティティがもっている 「色」と 「太さ」の情報を、そのままプリン

タに与えて出力すればよいと思うであろうが、例えば 「太さ」をエンティティ個々に設定すること

にすれば、作図効率が悪くなる。しかも、一旦エンティティに 「太さ」を設定してしまえば、出力

機器の特性に合わせるために太さを変えて印刷したいなどといった場合、全てのエンティティの

「太さ」を変更する必要があり、実用的でない。

ここでは、従来の一般的なCADの運用方法を鑑み、線の太さは個々のエンティティに指定せず、

エンティティの色だけで、印刷する色と太さの両方を決める 「色従属の印刷スタイル」方式で印刷スタイルを設定することにする。ここでは、作図画面上の線の用途 ・色と、出力する線の太さとの

関係を、次のように取り決めておく。なお、出力する線の色はすべて黒とする (図面をカラーで出

力したい場合は適宜設定すればよい)。

表1 線の用途と画面上の色との関係

用 途 画面上の色 線の太さ

外形線 黒(色_7) 0.35 mm

寸法線・寸法補助線 シアン(色_4) 0.18 mm

中心線 黄(色_2) 0.18 mm

想像線 紫(色_6) 0.18 mm

図面枠・表題欄 青(色_5) 0.50 mm

その他の太線 黒(色_7) 0.35 mm

その他の細線 緑(色_3) 0.35 mm

(特に定めず) 赤(色_1) 0.18 mm

具体的な印刷スタイルの設定方法は、以下の通りである。

(1) [ファイル] → [印刷] → [その他のオプション] → [新規]で「MyPlot」を作成。

(2) [ファイル] → [印刷] → [その他のオプション] → [編集]で 「MyPlot」を次のように編集。

○色_1,2,3,4,6 : 線色「黒」、線幅「0.18」

○色_5 : 線色「黒」、線幅「0.5」

○色_7 : 線色「黒」、線幅「0.35」

→ [OK](その他の印刷オプション) → [キャンセル](印刷)

※ では(多分)印刷スタイルを作成できないので、

http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~fuji/lectures.php から、印刷スタイルファイルをダウンロ

ードし、解凍して得られた 「MyPlot.ctb」を、印刷スタイルファイルの保存場所 (/Users/ (ユ

ーザー名)/Library/Preferences/DraftSight/ (バージョン)/Print Styles/)にコピーする。コ

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ピー後は、ダウンロードした zip ファイルや解凍してできたファイルは消去して構わない。

(3) [ツール] → [オプション]

[DraftSight] → [設定]

→ [システムオプション] → [印刷] → [デフォルト設定]

デフォルト印刷スタイル : [なし] → [MyPlot.ctb]

3.3 図面テンプレートファイル 3.1および 3.2で設定した内容はシステムに保存されるのに対して、用紙の大きさ、図面枠、文

字スタイル (字体)、寸法スタイル (矢印の形など)、線種 (一点鎖線や破線など)などは、図面フ

ァイルに保存される。よって、これらをあらかじめ適切に設定した図面テンプレートファイルを

準備しておけば便利である。

しかし、これらの設定はかなり厄介なので、本実習ではあらかじめ準備した図面テンプレート

ファイル(A3と A4サイズ)を使用することとする。

まず、図面テンプレートファイルで使用しているフォント (Win と Mac で共通して使えるフォ

ント)2種類をパソコンにインストールする。

(1) https://www.ipa.go.jp/osc/ipafont

から、IPAex ゴシックをダウンロードしてインストール。(明朝体は不要)

(2) http://opentype.jp/twobythreefont.htm

から、2/3 角フォントをダウンロードしてインストール。(明朝体は不要)

ついで、図面テンプレートファイルをパソコンにコピーする。

(3) http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~fuji/lectures.php

から、図面テンプレートファイルをダウンロードし、解凍して得られた「A3.dwt」および

「A4.dwt」の 2つのファイルを、図面テンプレートファイルの保存場所 ( 【 [ツール] → [オ

プション]、 [DraftSight] → [設定]】→ [ファイルの場所] → [図面サポート] → [図面テン

プレートファイルの場所] で確認できる)にコピーする。なお、AppData フォルダは隠しフ

ォルダなので、コピー時には隠しファイルを表示する設定とする必要がある。コピー後は、

ダウンロードした zip ファイルや解凍してできたファイルは消去して構わない。また、隠し

フォルダは非表示に戻しておく。

4. 作図方法

4.1 図面ファイルの新規作成方法 [ファイル] → [新規] (ツールバーの[新規]ボタンを使用してもよい)から、A4用紙に作図する

場合は A4.dwt を、A3用紙に作図する場合はA3.dwt を選択する。

4.2 図面ファイルの保存方法 [ファイル] → [名前を付けて保存] または [保存] (ツールバーの該当ボタンを使用してもよい)

コマンドを使用する。

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※ コマンドプロントに、コマンド 「psout」を入力することで、図面を EPS 形式で保存できる (psout

コマンド発行後、ファイル名と保存場所を指定→保存対象オブジェクトを選択)。CAD で描い

た図を EPS 形式で保存し、Adobe Illustrator で線の太さを編集し、さらに適宜説明文字を加え

て完成させた図は、論文や書籍に使用できるほど質の高い図である。

4.3 グリッドの利用 グリッドとは、図面描画領域全体に表示されるドットパターンのことである。グリッドのオン/

オフは、画面最下部のステータスバーの[グリッド]ボタンをクリックして切り替える( キーボ

ードの F7キーを押してもよい)。

あらかじめ準備したテンプレートファイルでは、グリッド間隔は水平垂直ともに 10 mm とし

ている。A4用紙を使用する場合、グリッド間隔はこの程度が適当であろう。グリッド間隔を変更

するには、ステータスバーの[グリッド]ボタンを右クリックして[設定]を選択しグリッド設定画面

を表示し、[水平表示間隔]と[垂直表示間隔]の値を変更すればよい。

4.4 スナップの利用 スナップをオンにすれば、クロスヘアカーソルが常に設定されたスナップ間隔で動作するよう

になる。

この機能は、マウスで図面上の正確な点を指定する場合に有用である。例えば、線分描画時に

おいて、始点をカーソルで指定するとき、スナップがオフであれば正確な整数値の座標点を指定

することは、ほぼ不可能であるが、スナップをオンにすることによってこれが可能となる。

スナップのオン/オフは、画面最下部のステータスバーの[スナップ]ボタンをクリックして切り

替える ( キーボードの F9キーを押してもよい)。スナップ間隔を変更するには、グリッド間隔

の変更と同様にして、ステータスバーの[スナップ]ボタンを右クリックして[設定]を選択しスナッ

プ設定画面を表示し、[水平スナップ間隔]と[垂直スナップ間隔]の値を変更すればよい。

あらかじめ準備したテンプレートファイルでは、スナップ間隔は水平垂直ともに 1 mmとして

いる。スナップは、常時オンにしておくとよい。ただし、図面を拡大表示して操作 (図形の選択な

ど)するときなどは、スナップをオフとした方が操作性がよい。

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4.5 画層の設定 設計要素を区別し、図面内の情報の管理をしやすくするために、画層(レイヤー)が用いられ

る。画層とはトレーシングペーパーのようなもので、1 枚 1 枚の画層に取り決めた内容の図を描

画し、それらを重ね合わせて 1つの図面ができあがる。

あらかじめ準備した図面テンプレートファイルには、すでに次表のように取り決めた画層が設

定済みである。なお、「0」という名前の画層は、ソフトウェアの仕様上、消すことができない。

なお、各画層の使用目的にそった使い方については後述する。

表2 画層の設定

画層名 使用目的

Object 実体作図

Dim 寸法関係

Viewport ビューポート

TitleBlock 図面枠と表題欄

4.6 線分の作図 実体は、画層 「Object」に作図することに決めたので、あらかじめツールバーで、現在画層 (図

形を描く画層)を「Object」に切り替えておく。

ツールバーの[線分]をクリックして、線分コマンドを実行する。もちろん、メニューバーやコマ

ンドプロンプトを使う方法でコマンドを実行してもよい。

線分コマンドを実行すれば、画面下方のコマンドプロンプトに、オペレーターが次におこなう

べき操作内容が表示される。

この指示にしたがい、マウスで作図画面の任意の点 (線分の始点)をクリックすれば、線分の 1

点目が決まり、コマンドプロンプトには、さらに次におこなうべき操作内容が表示される。

「次の点を指定」との指示にしたがい、再度マウスで作図画面の任意の点(線分の終点)をク

リックすれば、線分が描かれる。このとき、コマンドプロンプトにオプションとして表示されて

いることから明らかなように、キーボートの 「U」(と[Return])を押すことにより、直前に指定し

た点を取り消すことも可能である(「U」、undo の頭文字)。

以降、3点目、4点目を順次指定することにより、次々に線分を描くことができる。

線分コマンドを終了するには、作図画面上でマウスを右クリックし、表示されたメニューで[入

力]を選択するか、キーボードの[Enter]キーを押せばよい。また、右クリックメニューで[閉じる]

を選択するか、キーボードの 「C」 (と[Return])を押せば、線分を閉じて (最後に選んだ点と 1点

目とを結ぶ)コマンドを終了することができる。なお、[高速右クリックで Enter]機能を有効にし

ている場合 (3.1(4)参照)は、右クリック操作が[Enter]入力と解釈され、右クリックと同時に線分コマンドが終了する(図面を速く描けて便利)。

コマンドが終了すれば、コマンドプロンプトの表示は、命令が発行されていないニュートラル

状態になる(コロン(:)だけが表示されている)。

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※ 直交モードをオンにしておけば、水平線 ・垂直線が容易に描ける。直交モードのオン/オフは、

画面最下部のステータスバーをクリック ( キーボードの F8キーを押してもよい)して切り

替える。

※ 円形状ガイドモードをオンにしておけば、指定した角度方向への線分が容易に描ける。円形状

ガイドモードのオン/オフは、画面最下部のステータスバーをクリックするか、[F10]キーを押

して切り替える。ガイドする角度は、ステータスバーの[円形状]ボタンを右クリックして[設定]

を選択し円形状ガイド設定画面を表示し、[円形状ガイド表示の増分角度]で指定する。この角

度は、15度に設定しておくとよい (15度の整数倍の角度方向への描画が容易になる)。なお、

この設定値は図面テンプレートファイルではなく、システムに記憶されるようである。

※ コマンド終了後に[Return]キーを押すか、作図画面上でマウスを右クリックし、表示されたメ

ニューで[繰り返し]を選択すれば、直前に実行したコマンドが実行される。CADの操作におい

て、同じコマンドを繰り返し実行する場面は多いので、[高速右クリックで Enter]機能を有効に

し(3.1(4)参照)、右クリックすると同時に[繰り返し]が選択されるようにしておくとよい。

コマンド実行中に操作が分からなくなった場合や、コマンドの実行を途中で破棄したいときは、

キーボードの[Esc]キーを押せば実行中のコマンドをキャンセルできる。このとき、コマンドプロ

ンプトの表示がニュートラル状態になったかを確認するとよい。

さて、上記の説明では、線分を構成する点 (始点、終点)の指定はマウス操作でおこなったが、

正確・迅速に図面を描くためには、キーボードから直接座標値を入力して点を指定する方法が便

利である。線分コマンドに限らず、点を指定する方法には、次の 3通りがある。

(1) 作図画面をマウスでクリックする。

(2) キーボードから絶対座標値を入力する。 (3) キーボードから相対座標値を入力する。 絶対座標で点を指定するには、マウスで作図画面をクリックする変わりに、キーボードからコ

マンドプロンプト画面に 「50,105」(と[Return])と座標値を入力すればよい。この点を始点とし

て 70mm の水平線を描くには、次の点を 「120,105」と絶対座標で指定してもよいが、「@70,0」

のように@記号を用いて相対座標で指定する方法が便利である。また、「@70<0」のように、「@長さ < 角度(゜)」の形式で次の点を指定する方法もある。

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4.7 定常 Eスナップの利用 線分コマンドを実行して、線分を 1本描いてみよう (1本だけ描いてコマンドを終了する)。次

いで再度線分コマンドを実行して線分の 1 点目を指定するとき、既に描いた線分の始点や終点に

カーソルを近づければ、黄色のマーカが表示される。

この状態でマウスをクリックすれば、黄色色のマーカの場所が線分の 1 点目として指定された

ことになる。このように、既存のエンティティ (この場合は線分)の始点や終点などを正確に指定

する機能を E(エンティティ)スナップという。

E スナップ)機能を使用すれば、線分の始点 ・終点や中点、円の中心など、既存のエンティティ

を基準にして点を指定することができる。この機能のオン/オフは、画面最下部のステータスバー

の[Eスナップ]ボタンをクリックして切り替えられる ( キーボードのF3キーを押してもよい)。

E スナップの種類(スナップする場所の種類)には、次の 13種類がある。

表3 E スナップの種類

ジオメトリ Eスナップ 参照 Eスナップ

近接点 補助線

終点† 交点†

中点† 平行

中心† 垂直†

四半円点† 接線†

ノード† 仮想交点

挿入†

※ E スナップの種類毎の有効/無効は、ステータスバーの[E スナップ]を右クリックしたときに表

示される[設定]を選択して設定する。

※ 通常有効にしておいた方がよいと思われる種類には†を付した。

4.8 一時 Eスナップの利用 一時 Eスナップは、スナップモードを一時的に 1種類に限定するときに用いる。この機能は、

次のような状況において有用である。

(1) 定常 E スナップでスナップモードに設定していないスナップモードを一時的に(一回だけ)

使用したいとき。

(2) 定常 E スナップでスナップモードを複数設定していて、意図する点にスナップしないとき。

(例えば、終点にスナップさせたいが、近くにある交点にスナップしてしまうとき。)

※ 定常 Eスナップで意図する点にスナップしないとき、[Tab]キーを押してスナップさせる

位置(種類)を切り替える方法もある。

(3) 定常 E スナップモードをオフにしているときに、一時的に E スナップ機能を使いたいとき。

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一時 Eスナップモードは、マウスで点を指定するとき (線分の始点など)、作図画面上で、[Shift]

キーを押しながらマウスを右クリックしたときに出るメニューで選択するか、 「エンティティスナ

ップ」ツールバーを表示させ、このツールバー上の該当するボタンをクリックして設定する。

好みにもよるが、図面の描き始めなどの大ざっぱな作業のときを除いては定常 E スナップはオ

フとし、マウスの右クリック操作による一時 Eスナップを使うのがよい。

4.9 線種の変更方法 図面で使用する線種には、実線、破線、一点鎖線、二点鎖線などがある。実線以外の線を使用す

るには、線種をロードする必要があるが、あらかじめ準備した図面テンプレートファイルではす

でに各種の線(表4参照)を使用できるように設定している。線種をロードする方法やロードする線種の定義方法などについては、ここでは説明しない。以下では、あらかじめ準備した図面テ

ンプレートファイルにおける線種の変更方法を説明する。

表4 使用できる線種

線種 説明

実線 実線

CENTER10 一点鎖線(長線の長さ 10 mm)

CENTER20 一点鎖線(長線の長さ 20 mm)

CENTER30 一点鎖線(長線の長さ 30 mm)

CENTER40 一点鎖線(長線の長さ 40 mm)

HIDDEN3 破線(長線の長さ 3 mm)

HIDDEN4 破線(長線の長さ 4 mm)

PHANTOM10 二点鎖線(長線の長さ 10 mm)

PHANTOM20 二点鎖線(長線の長さ 20 mm)

PHANTOM30 二点鎖線(長線の長さ 30 mm)

PHANTOM40 二点鎖線(長線の長さ 40 mm)

実線で描いたエンティティ (例えば線分)の線種を変更するには、まず線種変更するエンティテ

ィをマウスクリックで選択しておき、[プロパティ]ツールバーの[線種制御]ドロップボックスから

変更後の線種を選択し、最後に[Esc]キーを押してエンティティの選択を解除すればよい。

例えば中心線は、黄色の一点鎖線で描くと決めたので、線種を一点鎖線に変更すると同時に、

線の色を黄色に変更しておく必要がある。色の変更には、[プロパティ]ツールバーの[線の色制御]

ドロップボックスを使用する。操作方法は線種変更と同様である。

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4.10 文字の記入 文字の記入方法には、[注釈]と[簡易注釈]の 2種類があるが、図面で使用する文字は比較的短い

文字列であるので、文字の記入には[簡易注釈]コマンドを使うことを勧める。

文字を記入する前に、文字スタイルを設定しておく必要があるが、準備しているテンプレート

では、あらかじめ 4つのスタイル(Standard, Italic, IPAexGothic, IPAexGothic2by3)を設定して

いる。設定内容は、以下で確認できる。

[ツール] → [オプション]

[DraftSight] → [設定]

→ [作図スタイル] → [文字] → [スタイル]

作図画面上に文字を記入するには、[作成] → [テキスト] → [簡易注釈]コマンドを使用する。文

字スタイルで設定したフォントで文字が記入できることを確認しておくとよい。

4.11 寸法記入 [寸法]メニューやツールバーから、各種の寸法記入用コマンドを実行して寸法を記入する。実際

にコマンドを実行してみれば使用法は容易に分かるので、ここではコマンドの使用法については

説明しない。

DraftSight の初期設定のまま、寸法記入コマンドを実行して寸法を記入しても、矢印の形状やサ

イズなどの様々な形状が、期待するように描画されない。

描く図面の JIS 製図規格にしたがって寸法作図をおこなうためには、あらかじめ寸法スタイル

を適切に設定しておく必要がある。あらかじめ準備した図面テンプレートファイルでは、

[MyDim]という名前で JIS 製図規格に則ったスタイルをすでに設定している([形式] → [寸法スタ

イル管理]で確認できる)。

4.12 その他の図形の作図 線分の作図方法が分かれば、その他の図形の描き方は容易に理解できる。[作成]メニューやツー

ルバーには、様々な図形作成コマンドがあるので、[ヘルプ]や 「コマンドプロンプト」のメッセー

ジを参考にして、一通り作図してみるとよい。

5. 図形の修正方法

5.1 図形の削除 図形を削除するには、[削除]コマンドを使って、削除するエンティティを選択すればよい。

[削除]コマンドを実行すると、コマンドプロントに 「エンティティを指定」と表示される。この

とき作図画面にはピックボックスが表示されるので、これで削除したいエンティティをクリック

(選択)する。削除したいエンティティトが複数あるときは、次々に選択すればよい。選択後、マ

ウスの右クリックメニューで[Return]を選択するか、[Return]キーを押してコマンドを終了すれ

ば、選択したオブジェクトが削除される。

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5.2 エンティティ選択方法 エンティティを選択するとき、コマンドラインオプションが利用できる。よく使うオプション

を次の表に示しておく。

表5 エンティティ選択オプション

オプション名 入力文字

ウィンドウ W(小文字でも可、以下同様)

交差 C

ALL(すべて) ALL

追加 A

削除

R

(追加モードのまま削除するには

Shift キーを押してエンティティを選択)

元に戻す U

例えば、コマンドプロントに「オブジェクトを選択」と表示されているときに、「w」キー(と

[Return]キー)を押せば、ウィンドウオプションが有効となり、窓を使用して、二つの点で規定

される矩形内部のすべてのオブジェクトをすべて選択することができる。窓を作成するには、矩

形の左上と右下の二つの点をマウスクリックにより指定すればよい。このオプションは、一度に

多数のオブジェクトを矩形窓で囲んで選択(して削除)するときに便利である。

他のオプションについても、[ヘルプ]の 「エンティティ選択方法の適用」を参照して使用法を習

得しておくとよい。

5.3 その他の図形修正方法 [修正]メニューやツールバーには、様々な図形修正コマンドがある。これらのうち、表6に示したコマンドはとくに頻繁に使用するので、[ヘルプ]や 「コマンドプロンプト」のメッセージを参考

にして、一通り実行して使用法を習得しておくとよい。

表6 頻繁に使う図形修正コマンド

削除 移動 延長

コピー 回転 面取り

ミラー ストレッチ フィレット

オフセット コーナートリム

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6. 印刷 DraftSight では、図面をモデルとシートという2つの異なる環境で取り扱う。モデル上で図形を

描き、シート上で調整して(シートを)印刷するのが一般的である。

あらかじめ準備したテンプレートでは、シート全体にビューポートを1つだけ配置し、モデル

に描いた図面全体をシートに表示する設定としている。シートにビューポートを追加して、これ

を複数配置することもできる。これにより、1枚のシートに様々な尺度の図を配置して印刷する

ことが可能となる。

7. おわりに DraftSight の使い方を一通り説明した。これを読めば、かなりのレベルの図面を CADで描ける

ようになると思う。ただし CADソフトは、ワープロソフトなどとは違い、とりあえず使ってみた

いという安易な考えでは到底使いこなせない。精力的な学習・訓練を経て、ようやく何とか使え

るようになるものである。これを期に、多数の方が CADをマスターされることを願う。