修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換...

50
修士論文 ナノ構造化バルク熱電材料の作製と性能評価 指導教員 塩見淳一郎准教授 37136231 三浦 飛鳥

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Page 1: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

修士論文

ナノ構造化バルク熱電材料の作製と性能評価

指導教員 塩見淳一郎准教授

37136231 三浦 飛鳥

2

目次 序論 3

11 熱電変換 3

12 熱電変換材料とその性能 4

13 ナノ構造化による ZT 向上 7

14 ナノ構造化バルクシリコン 9

15 目的 10

実験方法 11

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製 12

22 放電プラズマ焼結 14

23 作製した試料の各物性の測定および観察 16

231 レーザーフラッシュ法 16

232 直流四端子法 18

233 温度差起電力法 20

234 ホール測定 21

235 アルキメデス法 22

236 エネルギー分散型 X 線分析 23

237 X 線小角散乱測定 25

熱伝導率の理論計算 27

31 固体内の熱伝導 27

32 フォノン輸送論 27

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル 27

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル 28

323 フォノン気体モデル 29

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率 31

実験結果と考察 33

41 試料の作製および試料観察 33

42 熱電性能評価 35

43 先行研究との比較 41

結論 43

51 結論 43

52 今後の課題 43

参考文献 45

謝辞 50

3

序論

11 熱電変換

熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり再生可能エネルギー源の一つと

して注目されているその原理は物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

温側から低温側に移動し両端に電圧差が生じるゼーベック効果である熱電変換材料とし

ては主に半導体が用いられn 型半導体では電子p 型半導体では正孔がそれぞれ電気伝導

のキャリアとしての役割を担うこれらの n 型半導体と p 型半導体を組み合わせて Fig 1-1

に示すように素子とすることで電流を取り出すことができるこのような原理で利用が困

難な排熱を用いた発電が可能であることが最大の利点であるまた熱電変換素子には駆動

部が無いため他の発電方法に比べ静音性耐久性信頼性に優れメンテナンスが不要ス

ケールダウンしやすいという特徴もある加えてこれらの特徴のため無人惑星探査機の原

子力電池製鉄所でスラブから放射熱を利用した発電体温を熱源とする腕時計などに使用

されており自動車の排気ガス 1 や太陽熱 2-5 を用いた発電なども実験段階であるしかし

現在の応用はこれらの特殊な範囲に限定されているその理由は現在 8~16 と効率が他の

発電機関 6に比べ低いためであり効率の高い材料の発見開発が求められている

Fig 1-1 熱電変換素子の模式図

4

12 熱電変換材料とその性能

熱電変換材料の理論効率は高温部の温度 TH と低温部の温度 TL を用いて式(11)のように

表される 7

HLH

LH

TTZT

ZT

T

TT

1

11

(11)

ここで用いられている ZT は材料の物性値によって決定される無次元性能指数と呼ばれ式

(12)のように表される

TS

ZT

2 (12)

ここでは熱伝導率は電気伝導率S はゼーベック係数T は高温部の温度 TH と低温部

の温度 TLの平均温度をそれぞれ表すまた式(12)の分母に存在する S2はパワーファクタ

ーと呼ばれ発生する熱起電力や電流の大きさを表すZT はカルノー効率と比較して熱電

変換の効率を簡便な形で表すことができるため性能評価において重要な値とされており

実用化の目安は自動車の排熱利用で ZT = 15~2マイクロ発電で ZT = 05~1 と考えられてい

る 7例として高温部を 1200 K低温部を 600 K とした時の ZT 値と理論効率の関係を Fig

1-2 に示すこの図から変換効率は ZT の値に対して単調に増加していることが分かるた

だし素子を形成する場合は電気的接触抵抗や接合界面での熱的損失などにより変換効率

が全体として下がるため実際には図に示す効率を下回る

Fig 1-2 高温部を 1200 K低温部を 600 K とした場合の ZT と理論効率の関係

0 1 2 30

5

10

15

20

ZT

Conver

sion e

ffic

iency

(

)

5

大きな ZT を得るためには式(12)より高い電気伝導率またはゼーベック係数もしくは低

い熱伝導率をもつ材料を用いる必要があることが分かるこれらの値は材料に固有なもの

で熱電変換のための材料としてこれまで様々な物質が提案されてきたFigure 1-3 に年代

ごとの ZT の推移を示す歴史的には1821 年に Seebeck によって金属のゼーベック効果が

発見されて以降ビスマス(Bi)アンチモン(Sb)などの単体金属や半金属の熱電効果が主に

調べられていたその後 1950 年代に入り熱電変換材料として縮退半導体が最適であるとい

う Ioffe の提唱 8のもと現在でも研究されているビスマステルル(Bi2Te3)9-11やシリコンゲル

マニウム(SiGe)12 合金などの金属間化合物半導体が対象とされ始めたBi2Te3 系化合物は室

温から約 450 K までの低温域で比較的大きな ZT をもつ熱電変換材料である一方SiGe は

高温域での高安定性低環境負荷という利点を有するこの間は大きな ZT を得るために Fig

1-4に示すようにバルク材料のキャリア濃度を最適化することで電気特性を向上する手法 13-

16 やFig 1-5 に示すように合金化によって結晶構造を複雑にすることで熱伝導率を低減す

る手法 17-19 が主であったその後1995 年にガラスのように低い熱伝導率をもち電子は結

晶中のように振る舞う移動度の大きい PGEC (Phonon Glass amp Electron Crystal)という物質が

熱電変換材料として適していると Slack によって提唱された 20またSlack はカゴ状構造

物質におけるカゴ内のゲスト原子のラットリング運動による格子熱伝導率の抑制という新

しいコンセプトも提唱しているSlack の提唱のもとにそれまで研究されてきた熱電変換

材料とともにスクッテルダイト化合物 21ハーフホイスラー化合物 2223クラスタレート化

合物 24酸化物系 2526 などのそれまでの材料と比べ ZT の大きい新しい熱電変換材料の研究

も行われるようになった一方1993 年に Hicks と Dresselhaus により低次元系で ZT が増

加するという理論 2728が発表されて以降従来の方法に加え近年の技術の進歩により可能

になったナノレベルでの構造制御を用いた研究が盛んに行われるようになった

Fig 1-3 ZT の年代推移 827-29

6

Fig 1-4 PbTe における不純物の種類および濃度による 300 K での(a)キャリア濃度

(b)ゼーベック係数(c)電気伝導率および(d)熱伝導率の変化 13

Fig 1-5 合金化による熱伝導率の低減 19

横軸を x として縦軸に 300 K における SixGe1-xの熱伝導率を表している

0 02 04 060

5

10

15

20

Impurity concentration (atm)Car

rier

conce

ntr

atio

n (times

101

8 cmminus

3)

(a)CrSbBiAg

0 02 04 06minus400

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0

200

400

Impurity concentration (atm)

See

beck

coe

ffic

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(

VK

minus1)

(b)CrSb

BiAg

0 02 040

05

1

15

2

Impurity concentration (atm)

Ele

ctri

cal

cond

ucti

vity

(times10

5

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minus1)

(c)CrSb

BiAg

0 02 04 061

15

2

Impurity concentration (atm)

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1)

(d)CrSb

BiAg

0 02 04 06 08 10

50

100

150

Atomic fraction Si

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1 )

7

13 ナノ構造化による ZT向上

Hicks と Dresselhaus は低次元材料で ZT が大幅に向上すると予測しBi2Te3 を用いた場合

2 次元量子井戸において最大 ZT = 69ナノワイヤーにおいて最大 ZT = 14 となる可能性を

示した 2728この大幅な ZT の向上は量子閉じ込め効果による電子状態密度の増加とフォノ

ンの平均自由行程の制限による熱伝導率の低減によるものであると考えられている

ここでナノ構造化による熱伝導率の低減について説明するナノ構造化された熱電材料

内の熱伝導に関して議論をする際フォノンの概念を用いることが一般的であるフォノン

とは格子振動を量子化したものであり半導体において熱は主にフォノンにより輸送され

る例えば代表長さ L の結晶中を平均自由行程のフォノンが移動する場合のナノ構造化さ

れた結晶内におけるフォノン輸送の模式図を Fig 1-6 に示す 30に比べ L が十分大きい場

合フォノンは界面に到達する前に拡散する一方に比べ L が十分小さい場合フォノンは

拡散することなく界面に到達する後者の場合フォノン輸送は界面の影響を大きく受ける

ことになり本来の熱伝動能が制限されるため熱伝導率が低減されるこのような原理でナ

ノ構造化により代表長さ L が小さくなるつまり界面が増加することで熱伝導率は低減さ

れる一方電気伝導を電子の移動と考えると電気伝導率も熱伝導率と同様に議論すること

ができる熱伝導率を低減するためにナノ構造化を用いると界面が増えるため電子も散乱

され電気伝導率も低下するしかし電子の平均自由行程がフォノンの平均自由行程に比べ

非常に小さい 31 ためフォノンに比べ電子はナノ構造化の影響が少なく熱伝導率と比較

して電気伝導率は低下しないそのため適した大きさのナノ構造を作製することで電気伝

導率を維持しつつ熱伝導率を低減させ ZT を向上できると考えられる

Hicks と Dresselhaus の発表以降ZT を向上させるために多くの研究でナノレベルでの構

造制御が用いられるようになったその例として量子井戸 32超格子構造 3334ナノワイヤ

ー35-37 などがあるHarman らは分子線エピタキシー法をもちいて量子ドット超格子構造を

もつ PbSeTe PbTe の素子を作製し室温で高い性能を示した 33またBoukai らは超格子

ナノワイヤパターン転写を用いて直径 10 nm の Si ナノワイヤーを作製し熱伝導率を理

Fig 1-6 ナノ構造化結晶の模式図 30

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

Ele

ctri

cal

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(times10

5

minus1m

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(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

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0

Temperature (oC)

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1

2

3

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5

Temperature (oC)

Ther

mal

conduct

ivit

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Wm

minus1K

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0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 2: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

2

目次 序論 3

11 熱電変換 3

12 熱電変換材料とその性能 4

13 ナノ構造化による ZT 向上 7

14 ナノ構造化バルクシリコン 9

15 目的 10

実験方法 11

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製 12

22 放電プラズマ焼結 14

23 作製した試料の各物性の測定および観察 16

231 レーザーフラッシュ法 16

232 直流四端子法 18

233 温度差起電力法 20

234 ホール測定 21

235 アルキメデス法 22

236 エネルギー分散型 X 線分析 23

237 X 線小角散乱測定 25

熱伝導率の理論計算 27

31 固体内の熱伝導 27

32 フォノン輸送論 27

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル 27

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル 28

323 フォノン気体モデル 29

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率 31

実験結果と考察 33

41 試料の作製および試料観察 33

42 熱電性能評価 35

43 先行研究との比較 41

結論 43

51 結論 43

52 今後の課題 43

参考文献 45

謝辞 50

3

序論

11 熱電変換

熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり再生可能エネルギー源の一つと

して注目されているその原理は物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

温側から低温側に移動し両端に電圧差が生じるゼーベック効果である熱電変換材料とし

ては主に半導体が用いられn 型半導体では電子p 型半導体では正孔がそれぞれ電気伝導

のキャリアとしての役割を担うこれらの n 型半導体と p 型半導体を組み合わせて Fig 1-1

に示すように素子とすることで電流を取り出すことができるこのような原理で利用が困

難な排熱を用いた発電が可能であることが最大の利点であるまた熱電変換素子には駆動

部が無いため他の発電方法に比べ静音性耐久性信頼性に優れメンテナンスが不要ス

ケールダウンしやすいという特徴もある加えてこれらの特徴のため無人惑星探査機の原

子力電池製鉄所でスラブから放射熱を利用した発電体温を熱源とする腕時計などに使用

されており自動車の排気ガス 1 や太陽熱 2-5 を用いた発電なども実験段階であるしかし

現在の応用はこれらの特殊な範囲に限定されているその理由は現在 8~16 と効率が他の

発電機関 6に比べ低いためであり効率の高い材料の発見開発が求められている

Fig 1-1 熱電変換素子の模式図

4

12 熱電変換材料とその性能

熱電変換材料の理論効率は高温部の温度 TH と低温部の温度 TL を用いて式(11)のように

表される 7

HLH

LH

TTZT

ZT

T

TT

1

11

(11)

ここで用いられている ZT は材料の物性値によって決定される無次元性能指数と呼ばれ式

(12)のように表される

TS

ZT

2 (12)

ここでは熱伝導率は電気伝導率S はゼーベック係数T は高温部の温度 TH と低温部

の温度 TLの平均温度をそれぞれ表すまた式(12)の分母に存在する S2はパワーファクタ

ーと呼ばれ発生する熱起電力や電流の大きさを表すZT はカルノー効率と比較して熱電

変換の効率を簡便な形で表すことができるため性能評価において重要な値とされており

実用化の目安は自動車の排熱利用で ZT = 15~2マイクロ発電で ZT = 05~1 と考えられてい

る 7例として高温部を 1200 K低温部を 600 K とした時の ZT 値と理論効率の関係を Fig

1-2 に示すこの図から変換効率は ZT の値に対して単調に増加していることが分かるた

だし素子を形成する場合は電気的接触抵抗や接合界面での熱的損失などにより変換効率

が全体として下がるため実際には図に示す効率を下回る

Fig 1-2 高温部を 1200 K低温部を 600 K とした場合の ZT と理論効率の関係

0 1 2 30

5

10

15

20

ZT

Conver

sion e

ffic

iency

(

)

5

大きな ZT を得るためには式(12)より高い電気伝導率またはゼーベック係数もしくは低

い熱伝導率をもつ材料を用いる必要があることが分かるこれらの値は材料に固有なもの

で熱電変換のための材料としてこれまで様々な物質が提案されてきたFigure 1-3 に年代

ごとの ZT の推移を示す歴史的には1821 年に Seebeck によって金属のゼーベック効果が

発見されて以降ビスマス(Bi)アンチモン(Sb)などの単体金属や半金属の熱電効果が主に

調べられていたその後 1950 年代に入り熱電変換材料として縮退半導体が最適であるとい

う Ioffe の提唱 8のもと現在でも研究されているビスマステルル(Bi2Te3)9-11やシリコンゲル

マニウム(SiGe)12 合金などの金属間化合物半導体が対象とされ始めたBi2Te3 系化合物は室

温から約 450 K までの低温域で比較的大きな ZT をもつ熱電変換材料である一方SiGe は

高温域での高安定性低環境負荷という利点を有するこの間は大きな ZT を得るために Fig

1-4に示すようにバルク材料のキャリア濃度を最適化することで電気特性を向上する手法 13-

16 やFig 1-5 に示すように合金化によって結晶構造を複雑にすることで熱伝導率を低減す

る手法 17-19 が主であったその後1995 年にガラスのように低い熱伝導率をもち電子は結

晶中のように振る舞う移動度の大きい PGEC (Phonon Glass amp Electron Crystal)という物質が

熱電変換材料として適していると Slack によって提唱された 20またSlack はカゴ状構造

物質におけるカゴ内のゲスト原子のラットリング運動による格子熱伝導率の抑制という新

しいコンセプトも提唱しているSlack の提唱のもとにそれまで研究されてきた熱電変換

材料とともにスクッテルダイト化合物 21ハーフホイスラー化合物 2223クラスタレート化

合物 24酸化物系 2526 などのそれまでの材料と比べ ZT の大きい新しい熱電変換材料の研究

も行われるようになった一方1993 年に Hicks と Dresselhaus により低次元系で ZT が増

加するという理論 2728が発表されて以降従来の方法に加え近年の技術の進歩により可能

になったナノレベルでの構造制御を用いた研究が盛んに行われるようになった

Fig 1-3 ZT の年代推移 827-29

6

Fig 1-4 PbTe における不純物の種類および濃度による 300 K での(a)キャリア濃度

(b)ゼーベック係数(c)電気伝導率および(d)熱伝導率の変化 13

Fig 1-5 合金化による熱伝導率の低減 19

横軸を x として縦軸に 300 K における SixGe1-xの熱伝導率を表している

0 02 04 060

5

10

15

20

Impurity concentration (atm)Car

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n (times

101

8 cmminus

3)

(a)CrSbBiAg

0 02 04 06minus400

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0

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Impurity concentration (atm)

See

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(

VK

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(b)CrSb

BiAg

0 02 040

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1

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Impurity concentration (atm)

Ele

ctri

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5

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(c)CrSb

BiAg

0 02 04 061

15

2

Impurity concentration (atm)

The

rmal

con

duct

ivit

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mminus

1K

minus1)

(d)CrSb

BiAg

0 02 04 06 08 10

50

100

150

Atomic fraction Si

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1 )

7

13 ナノ構造化による ZT向上

Hicks と Dresselhaus は低次元材料で ZT が大幅に向上すると予測しBi2Te3 を用いた場合

2 次元量子井戸において最大 ZT = 69ナノワイヤーにおいて最大 ZT = 14 となる可能性を

示した 2728この大幅な ZT の向上は量子閉じ込め効果による電子状態密度の増加とフォノ

ンの平均自由行程の制限による熱伝導率の低減によるものであると考えられている

ここでナノ構造化による熱伝導率の低減について説明するナノ構造化された熱電材料

内の熱伝導に関して議論をする際フォノンの概念を用いることが一般的であるフォノン

とは格子振動を量子化したものであり半導体において熱は主にフォノンにより輸送され

る例えば代表長さ L の結晶中を平均自由行程のフォノンが移動する場合のナノ構造化さ

れた結晶内におけるフォノン輸送の模式図を Fig 1-6 に示す 30に比べ L が十分大きい場

合フォノンは界面に到達する前に拡散する一方に比べ L が十分小さい場合フォノンは

拡散することなく界面に到達する後者の場合フォノン輸送は界面の影響を大きく受ける

ことになり本来の熱伝動能が制限されるため熱伝導率が低減されるこのような原理でナ

ノ構造化により代表長さ L が小さくなるつまり界面が増加することで熱伝導率は低減さ

れる一方電気伝導を電子の移動と考えると電気伝導率も熱伝導率と同様に議論すること

ができる熱伝導率を低減するためにナノ構造化を用いると界面が増えるため電子も散乱

され電気伝導率も低下するしかし電子の平均自由行程がフォノンの平均自由行程に比べ

非常に小さい 31 ためフォノンに比べ電子はナノ構造化の影響が少なく熱伝導率と比較

して電気伝導率は低下しないそのため適した大きさのナノ構造を作製することで電気伝

導率を維持しつつ熱伝導率を低減させ ZT を向上できると考えられる

Hicks と Dresselhaus の発表以降ZT を向上させるために多くの研究でナノレベルでの構

造制御が用いられるようになったその例として量子井戸 32超格子構造 3334ナノワイヤ

ー35-37 などがあるHarman らは分子線エピタキシー法をもちいて量子ドット超格子構造を

もつ PbSeTe PbTe の素子を作製し室温で高い性能を示した 33またBoukai らは超格子

ナノワイヤパターン転写を用いて直径 10 nm の Si ナノワイヤーを作製し熱伝導率を理

Fig 1-6 ナノ構造化結晶の模式図 30

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

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(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

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Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 3: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

3

序論

11 熱電変換

熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり再生可能エネルギー源の一つと

して注目されているその原理は物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

温側から低温側に移動し両端に電圧差が生じるゼーベック効果である熱電変換材料とし

ては主に半導体が用いられn 型半導体では電子p 型半導体では正孔がそれぞれ電気伝導

のキャリアとしての役割を担うこれらの n 型半導体と p 型半導体を組み合わせて Fig 1-1

に示すように素子とすることで電流を取り出すことができるこのような原理で利用が困

難な排熱を用いた発電が可能であることが最大の利点であるまた熱電変換素子には駆動

部が無いため他の発電方法に比べ静音性耐久性信頼性に優れメンテナンスが不要ス

ケールダウンしやすいという特徴もある加えてこれらの特徴のため無人惑星探査機の原

子力電池製鉄所でスラブから放射熱を利用した発電体温を熱源とする腕時計などに使用

されており自動車の排気ガス 1 や太陽熱 2-5 を用いた発電なども実験段階であるしかし

現在の応用はこれらの特殊な範囲に限定されているその理由は現在 8~16 と効率が他の

発電機関 6に比べ低いためであり効率の高い材料の発見開発が求められている

Fig 1-1 熱電変換素子の模式図

4

12 熱電変換材料とその性能

熱電変換材料の理論効率は高温部の温度 TH と低温部の温度 TL を用いて式(11)のように

表される 7

HLH

LH

TTZT

ZT

T

TT

1

11

(11)

ここで用いられている ZT は材料の物性値によって決定される無次元性能指数と呼ばれ式

(12)のように表される

TS

ZT

2 (12)

ここでは熱伝導率は電気伝導率S はゼーベック係数T は高温部の温度 TH と低温部

の温度 TLの平均温度をそれぞれ表すまた式(12)の分母に存在する S2はパワーファクタ

ーと呼ばれ発生する熱起電力や電流の大きさを表すZT はカルノー効率と比較して熱電

変換の効率を簡便な形で表すことができるため性能評価において重要な値とされており

実用化の目安は自動車の排熱利用で ZT = 15~2マイクロ発電で ZT = 05~1 と考えられてい

る 7例として高温部を 1200 K低温部を 600 K とした時の ZT 値と理論効率の関係を Fig

1-2 に示すこの図から変換効率は ZT の値に対して単調に増加していることが分かるた

だし素子を形成する場合は電気的接触抵抗や接合界面での熱的損失などにより変換効率

が全体として下がるため実際には図に示す効率を下回る

Fig 1-2 高温部を 1200 K低温部を 600 K とした場合の ZT と理論効率の関係

0 1 2 30

5

10

15

20

ZT

Conver

sion e

ffic

iency

(

)

5

大きな ZT を得るためには式(12)より高い電気伝導率またはゼーベック係数もしくは低

い熱伝導率をもつ材料を用いる必要があることが分かるこれらの値は材料に固有なもの

で熱電変換のための材料としてこれまで様々な物質が提案されてきたFigure 1-3 に年代

ごとの ZT の推移を示す歴史的には1821 年に Seebeck によって金属のゼーベック効果が

発見されて以降ビスマス(Bi)アンチモン(Sb)などの単体金属や半金属の熱電効果が主に

調べられていたその後 1950 年代に入り熱電変換材料として縮退半導体が最適であるとい

う Ioffe の提唱 8のもと現在でも研究されているビスマステルル(Bi2Te3)9-11やシリコンゲル

マニウム(SiGe)12 合金などの金属間化合物半導体が対象とされ始めたBi2Te3 系化合物は室

温から約 450 K までの低温域で比較的大きな ZT をもつ熱電変換材料である一方SiGe は

高温域での高安定性低環境負荷という利点を有するこの間は大きな ZT を得るために Fig

1-4に示すようにバルク材料のキャリア濃度を最適化することで電気特性を向上する手法 13-

16 やFig 1-5 に示すように合金化によって結晶構造を複雑にすることで熱伝導率を低減す

る手法 17-19 が主であったその後1995 年にガラスのように低い熱伝導率をもち電子は結

晶中のように振る舞う移動度の大きい PGEC (Phonon Glass amp Electron Crystal)という物質が

熱電変換材料として適していると Slack によって提唱された 20またSlack はカゴ状構造

物質におけるカゴ内のゲスト原子のラットリング運動による格子熱伝導率の抑制という新

しいコンセプトも提唱しているSlack の提唱のもとにそれまで研究されてきた熱電変換

材料とともにスクッテルダイト化合物 21ハーフホイスラー化合物 2223クラスタレート化

合物 24酸化物系 2526 などのそれまでの材料と比べ ZT の大きい新しい熱電変換材料の研究

も行われるようになった一方1993 年に Hicks と Dresselhaus により低次元系で ZT が増

加するという理論 2728が発表されて以降従来の方法に加え近年の技術の進歩により可能

になったナノレベルでの構造制御を用いた研究が盛んに行われるようになった

Fig 1-3 ZT の年代推移 827-29

6

Fig 1-4 PbTe における不純物の種類および濃度による 300 K での(a)キャリア濃度

(b)ゼーベック係数(c)電気伝導率および(d)熱伝導率の変化 13

Fig 1-5 合金化による熱伝導率の低減 19

横軸を x として縦軸に 300 K における SixGe1-xの熱伝導率を表している

0 02 04 060

5

10

15

20

Impurity concentration (atm)Car

rier

conce

ntr

atio

n (times

101

8 cmminus

3)

(a)CrSbBiAg

0 02 04 06minus400

minus200

0

200

400

Impurity concentration (atm)

See

beck

coe

ffic

ient

(

VK

minus1)

(b)CrSb

BiAg

0 02 040

05

1

15

2

Impurity concentration (atm)

Ele

ctri

cal

cond

ucti

vity

(times10

5

minus1m

minus1)

(c)CrSb

BiAg

0 02 04 061

15

2

Impurity concentration (atm)

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1)

(d)CrSb

BiAg

0 02 04 06 08 10

50

100

150

Atomic fraction Si

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1 )

7

13 ナノ構造化による ZT向上

Hicks と Dresselhaus は低次元材料で ZT が大幅に向上すると予測しBi2Te3 を用いた場合

2 次元量子井戸において最大 ZT = 69ナノワイヤーにおいて最大 ZT = 14 となる可能性を

示した 2728この大幅な ZT の向上は量子閉じ込め効果による電子状態密度の増加とフォノ

ンの平均自由行程の制限による熱伝導率の低減によるものであると考えられている

ここでナノ構造化による熱伝導率の低減について説明するナノ構造化された熱電材料

内の熱伝導に関して議論をする際フォノンの概念を用いることが一般的であるフォノン

とは格子振動を量子化したものであり半導体において熱は主にフォノンにより輸送され

る例えば代表長さ L の結晶中を平均自由行程のフォノンが移動する場合のナノ構造化さ

れた結晶内におけるフォノン輸送の模式図を Fig 1-6 に示す 30に比べ L が十分大きい場

合フォノンは界面に到達する前に拡散する一方に比べ L が十分小さい場合フォノンは

拡散することなく界面に到達する後者の場合フォノン輸送は界面の影響を大きく受ける

ことになり本来の熱伝動能が制限されるため熱伝導率が低減されるこのような原理でナ

ノ構造化により代表長さ L が小さくなるつまり界面が増加することで熱伝導率は低減さ

れる一方電気伝導を電子の移動と考えると電気伝導率も熱伝導率と同様に議論すること

ができる熱伝導率を低減するためにナノ構造化を用いると界面が増えるため電子も散乱

され電気伝導率も低下するしかし電子の平均自由行程がフォノンの平均自由行程に比べ

非常に小さい 31 ためフォノンに比べ電子はナノ構造化の影響が少なく熱伝導率と比較

して電気伝導率は低下しないそのため適した大きさのナノ構造を作製することで電気伝

導率を維持しつつ熱伝導率を低減させ ZT を向上できると考えられる

Hicks と Dresselhaus の発表以降ZT を向上させるために多くの研究でナノレベルでの構

造制御が用いられるようになったその例として量子井戸 32超格子構造 3334ナノワイヤ

ー35-37 などがあるHarman らは分子線エピタキシー法をもちいて量子ドット超格子構造を

もつ PbSeTe PbTe の素子を作製し室温で高い性能を示した 33またBoukai らは超格子

ナノワイヤパターン転写を用いて直径 10 nm の Si ナノワイヤーを作製し熱伝導率を理

Fig 1-6 ナノ構造化結晶の模式図 30

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

Ele

ctri

cal

cond

cuti

vity

(times10

5

minus1m

minus1)

(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

See

beck

coe

ffic

ient

(

VK

minus1)

(b)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

Temperature (oC)

Ther

mal

conduct

ivit

y (

Wm

minus1K

minus1)

(c)

BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 4: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

4

12 熱電変換材料とその性能

熱電変換材料の理論効率は高温部の温度 TH と低温部の温度 TL を用いて式(11)のように

表される 7

HLH

LH

TTZT

ZT

T

TT

1

11

(11)

ここで用いられている ZT は材料の物性値によって決定される無次元性能指数と呼ばれ式

(12)のように表される

TS

ZT

2 (12)

ここでは熱伝導率は電気伝導率S はゼーベック係数T は高温部の温度 TH と低温部

の温度 TLの平均温度をそれぞれ表すまた式(12)の分母に存在する S2はパワーファクタ

ーと呼ばれ発生する熱起電力や電流の大きさを表すZT はカルノー効率と比較して熱電

変換の効率を簡便な形で表すことができるため性能評価において重要な値とされており

実用化の目安は自動車の排熱利用で ZT = 15~2マイクロ発電で ZT = 05~1 と考えられてい

る 7例として高温部を 1200 K低温部を 600 K とした時の ZT 値と理論効率の関係を Fig

1-2 に示すこの図から変換効率は ZT の値に対して単調に増加していることが分かるた

だし素子を形成する場合は電気的接触抵抗や接合界面での熱的損失などにより変換効率

が全体として下がるため実際には図に示す効率を下回る

Fig 1-2 高温部を 1200 K低温部を 600 K とした場合の ZT と理論効率の関係

0 1 2 30

5

10

15

20

ZT

Conver

sion e

ffic

iency

(

)

5

大きな ZT を得るためには式(12)より高い電気伝導率またはゼーベック係数もしくは低

い熱伝導率をもつ材料を用いる必要があることが分かるこれらの値は材料に固有なもの

で熱電変換のための材料としてこれまで様々な物質が提案されてきたFigure 1-3 に年代

ごとの ZT の推移を示す歴史的には1821 年に Seebeck によって金属のゼーベック効果が

発見されて以降ビスマス(Bi)アンチモン(Sb)などの単体金属や半金属の熱電効果が主に

調べられていたその後 1950 年代に入り熱電変換材料として縮退半導体が最適であるとい

う Ioffe の提唱 8のもと現在でも研究されているビスマステルル(Bi2Te3)9-11やシリコンゲル

マニウム(SiGe)12 合金などの金属間化合物半導体が対象とされ始めたBi2Te3 系化合物は室

温から約 450 K までの低温域で比較的大きな ZT をもつ熱電変換材料である一方SiGe は

高温域での高安定性低環境負荷という利点を有するこの間は大きな ZT を得るために Fig

1-4に示すようにバルク材料のキャリア濃度を最適化することで電気特性を向上する手法 13-

16 やFig 1-5 に示すように合金化によって結晶構造を複雑にすることで熱伝導率を低減す

る手法 17-19 が主であったその後1995 年にガラスのように低い熱伝導率をもち電子は結

晶中のように振る舞う移動度の大きい PGEC (Phonon Glass amp Electron Crystal)という物質が

熱電変換材料として適していると Slack によって提唱された 20またSlack はカゴ状構造

物質におけるカゴ内のゲスト原子のラットリング運動による格子熱伝導率の抑制という新

しいコンセプトも提唱しているSlack の提唱のもとにそれまで研究されてきた熱電変換

材料とともにスクッテルダイト化合物 21ハーフホイスラー化合物 2223クラスタレート化

合物 24酸化物系 2526 などのそれまでの材料と比べ ZT の大きい新しい熱電変換材料の研究

も行われるようになった一方1993 年に Hicks と Dresselhaus により低次元系で ZT が増

加するという理論 2728が発表されて以降従来の方法に加え近年の技術の進歩により可能

になったナノレベルでの構造制御を用いた研究が盛んに行われるようになった

Fig 1-3 ZT の年代推移 827-29

6

Fig 1-4 PbTe における不純物の種類および濃度による 300 K での(a)キャリア濃度

(b)ゼーベック係数(c)電気伝導率および(d)熱伝導率の変化 13

Fig 1-5 合金化による熱伝導率の低減 19

横軸を x として縦軸に 300 K における SixGe1-xの熱伝導率を表している

0 02 04 060

5

10

15

20

Impurity concentration (atm)Car

rier

conce

ntr

atio

n (times

101

8 cmminus

3)

(a)CrSbBiAg

0 02 04 06minus400

minus200

0

200

400

Impurity concentration (atm)

See

beck

coe

ffic

ient

(

VK

minus1)

(b)CrSb

BiAg

0 02 040

05

1

15

2

Impurity concentration (atm)

Ele

ctri

cal

cond

ucti

vity

(times10

5

minus1m

minus1)

(c)CrSb

BiAg

0 02 04 061

15

2

Impurity concentration (atm)

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1)

(d)CrSb

BiAg

0 02 04 06 08 10

50

100

150

Atomic fraction Si

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1 )

7

13 ナノ構造化による ZT向上

Hicks と Dresselhaus は低次元材料で ZT が大幅に向上すると予測しBi2Te3 を用いた場合

2 次元量子井戸において最大 ZT = 69ナノワイヤーにおいて最大 ZT = 14 となる可能性を

示した 2728この大幅な ZT の向上は量子閉じ込め効果による電子状態密度の増加とフォノ

ンの平均自由行程の制限による熱伝導率の低減によるものであると考えられている

ここでナノ構造化による熱伝導率の低減について説明するナノ構造化された熱電材料

内の熱伝導に関して議論をする際フォノンの概念を用いることが一般的であるフォノン

とは格子振動を量子化したものであり半導体において熱は主にフォノンにより輸送され

る例えば代表長さ L の結晶中を平均自由行程のフォノンが移動する場合のナノ構造化さ

れた結晶内におけるフォノン輸送の模式図を Fig 1-6 に示す 30に比べ L が十分大きい場

合フォノンは界面に到達する前に拡散する一方に比べ L が十分小さい場合フォノンは

拡散することなく界面に到達する後者の場合フォノン輸送は界面の影響を大きく受ける

ことになり本来の熱伝動能が制限されるため熱伝導率が低減されるこのような原理でナ

ノ構造化により代表長さ L が小さくなるつまり界面が増加することで熱伝導率は低減さ

れる一方電気伝導を電子の移動と考えると電気伝導率も熱伝導率と同様に議論すること

ができる熱伝導率を低減するためにナノ構造化を用いると界面が増えるため電子も散乱

され電気伝導率も低下するしかし電子の平均自由行程がフォノンの平均自由行程に比べ

非常に小さい 31 ためフォノンに比べ電子はナノ構造化の影響が少なく熱伝導率と比較

して電気伝導率は低下しないそのため適した大きさのナノ構造を作製することで電気伝

導率を維持しつつ熱伝導率を低減させ ZT を向上できると考えられる

Hicks と Dresselhaus の発表以降ZT を向上させるために多くの研究でナノレベルでの構

造制御が用いられるようになったその例として量子井戸 32超格子構造 3334ナノワイヤ

ー35-37 などがあるHarman らは分子線エピタキシー法をもちいて量子ドット超格子構造を

もつ PbSeTe PbTe の素子を作製し室温で高い性能を示した 33またBoukai らは超格子

ナノワイヤパターン転写を用いて直径 10 nm の Si ナノワイヤーを作製し熱伝導率を理

Fig 1-6 ナノ構造化結晶の模式図 30

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

Ele

ctri

cal

cond

cuti

vity

(times10

5

minus1m

minus1)

(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

See

beck

coe

ffic

ient

(

VK

minus1)

(b)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

Temperature (oC)

Ther

mal

conduct

ivit

y (

Wm

minus1K

minus1)

(c)

BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 5: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

5

大きな ZT を得るためには式(12)より高い電気伝導率またはゼーベック係数もしくは低

い熱伝導率をもつ材料を用いる必要があることが分かるこれらの値は材料に固有なもの

で熱電変換のための材料としてこれまで様々な物質が提案されてきたFigure 1-3 に年代

ごとの ZT の推移を示す歴史的には1821 年に Seebeck によって金属のゼーベック効果が

発見されて以降ビスマス(Bi)アンチモン(Sb)などの単体金属や半金属の熱電効果が主に

調べられていたその後 1950 年代に入り熱電変換材料として縮退半導体が最適であるとい

う Ioffe の提唱 8のもと現在でも研究されているビスマステルル(Bi2Te3)9-11やシリコンゲル

マニウム(SiGe)12 合金などの金属間化合物半導体が対象とされ始めたBi2Te3 系化合物は室

温から約 450 K までの低温域で比較的大きな ZT をもつ熱電変換材料である一方SiGe は

高温域での高安定性低環境負荷という利点を有するこの間は大きな ZT を得るために Fig

1-4に示すようにバルク材料のキャリア濃度を最適化することで電気特性を向上する手法 13-

16 やFig 1-5 に示すように合金化によって結晶構造を複雑にすることで熱伝導率を低減す

る手法 17-19 が主であったその後1995 年にガラスのように低い熱伝導率をもち電子は結

晶中のように振る舞う移動度の大きい PGEC (Phonon Glass amp Electron Crystal)という物質が

熱電変換材料として適していると Slack によって提唱された 20またSlack はカゴ状構造

物質におけるカゴ内のゲスト原子のラットリング運動による格子熱伝導率の抑制という新

しいコンセプトも提唱しているSlack の提唱のもとにそれまで研究されてきた熱電変換

材料とともにスクッテルダイト化合物 21ハーフホイスラー化合物 2223クラスタレート化

合物 24酸化物系 2526 などのそれまでの材料と比べ ZT の大きい新しい熱電変換材料の研究

も行われるようになった一方1993 年に Hicks と Dresselhaus により低次元系で ZT が増

加するという理論 2728が発表されて以降従来の方法に加え近年の技術の進歩により可能

になったナノレベルでの構造制御を用いた研究が盛んに行われるようになった

Fig 1-3 ZT の年代推移 827-29

6

Fig 1-4 PbTe における不純物の種類および濃度による 300 K での(a)キャリア濃度

(b)ゼーベック係数(c)電気伝導率および(d)熱伝導率の変化 13

Fig 1-5 合金化による熱伝導率の低減 19

横軸を x として縦軸に 300 K における SixGe1-xの熱伝導率を表している

0 02 04 060

5

10

15

20

Impurity concentration (atm)Car

rier

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n (times

101

8 cmminus

3)

(a)CrSbBiAg

0 02 04 06minus400

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0

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Impurity concentration (atm)

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(

VK

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(b)CrSb

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0 02 040

05

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Impurity concentration (atm)

Ele

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(times10

5

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minus1)

(c)CrSb

BiAg

0 02 04 061

15

2

Impurity concentration (atm)

The

rmal

con

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1K

minus1)

(d)CrSb

BiAg

0 02 04 06 08 10

50

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150

Atomic fraction Si

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1 )

7

13 ナノ構造化による ZT向上

Hicks と Dresselhaus は低次元材料で ZT が大幅に向上すると予測しBi2Te3 を用いた場合

2 次元量子井戸において最大 ZT = 69ナノワイヤーにおいて最大 ZT = 14 となる可能性を

示した 2728この大幅な ZT の向上は量子閉じ込め効果による電子状態密度の増加とフォノ

ンの平均自由行程の制限による熱伝導率の低減によるものであると考えられている

ここでナノ構造化による熱伝導率の低減について説明するナノ構造化された熱電材料

内の熱伝導に関して議論をする際フォノンの概念を用いることが一般的であるフォノン

とは格子振動を量子化したものであり半導体において熱は主にフォノンにより輸送され

る例えば代表長さ L の結晶中を平均自由行程のフォノンが移動する場合のナノ構造化さ

れた結晶内におけるフォノン輸送の模式図を Fig 1-6 に示す 30に比べ L が十分大きい場

合フォノンは界面に到達する前に拡散する一方に比べ L が十分小さい場合フォノンは

拡散することなく界面に到達する後者の場合フォノン輸送は界面の影響を大きく受ける

ことになり本来の熱伝動能が制限されるため熱伝導率が低減されるこのような原理でナ

ノ構造化により代表長さ L が小さくなるつまり界面が増加することで熱伝導率は低減さ

れる一方電気伝導を電子の移動と考えると電気伝導率も熱伝導率と同様に議論すること

ができる熱伝導率を低減するためにナノ構造化を用いると界面が増えるため電子も散乱

され電気伝導率も低下するしかし電子の平均自由行程がフォノンの平均自由行程に比べ

非常に小さい 31 ためフォノンに比べ電子はナノ構造化の影響が少なく熱伝導率と比較

して電気伝導率は低下しないそのため適した大きさのナノ構造を作製することで電気伝

導率を維持しつつ熱伝導率を低減させ ZT を向上できると考えられる

Hicks と Dresselhaus の発表以降ZT を向上させるために多くの研究でナノレベルでの構

造制御が用いられるようになったその例として量子井戸 32超格子構造 3334ナノワイヤ

ー35-37 などがあるHarman らは分子線エピタキシー法をもちいて量子ドット超格子構造を

もつ PbSeTe PbTe の素子を作製し室温で高い性能を示した 33またBoukai らは超格子

ナノワイヤパターン転写を用いて直径 10 nm の Si ナノワイヤーを作製し熱伝導率を理

Fig 1-6 ナノ構造化結晶の模式図 30

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

Ele

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cal

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5

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(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

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Temperature (oC)

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(

VK

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(b)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

1

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Temperature (oC)

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0 200 400 600 800 10000

05

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15

Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

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Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

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Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

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10

20

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Temperature (oC)

(

Wm

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minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 6: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

6

Fig 1-4 PbTe における不純物の種類および濃度による 300 K での(a)キャリア濃度

(b)ゼーベック係数(c)電気伝導率および(d)熱伝導率の変化 13

Fig 1-5 合金化による熱伝導率の低減 19

横軸を x として縦軸に 300 K における SixGe1-xの熱伝導率を表している

0 02 04 060

5

10

15

20

Impurity concentration (atm)Car

rier

conce

ntr

atio

n (times

101

8 cmminus

3)

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0 02 04 06minus400

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400

Impurity concentration (atm)

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15

2

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The

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con

duct

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y (W

mminus

1K

minus1)

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BiAg

0 02 04 06 08 10

50

100

150

Atomic fraction Si

The

rmal

con

duct

ivit

y (W

mminus

1K

minus1 )

7

13 ナノ構造化による ZT向上

Hicks と Dresselhaus は低次元材料で ZT が大幅に向上すると予測しBi2Te3 を用いた場合

2 次元量子井戸において最大 ZT = 69ナノワイヤーにおいて最大 ZT = 14 となる可能性を

示した 2728この大幅な ZT の向上は量子閉じ込め効果による電子状態密度の増加とフォノ

ンの平均自由行程の制限による熱伝導率の低減によるものであると考えられている

ここでナノ構造化による熱伝導率の低減について説明するナノ構造化された熱電材料

内の熱伝導に関して議論をする際フォノンの概念を用いることが一般的であるフォノン

とは格子振動を量子化したものであり半導体において熱は主にフォノンにより輸送され

る例えば代表長さ L の結晶中を平均自由行程のフォノンが移動する場合のナノ構造化さ

れた結晶内におけるフォノン輸送の模式図を Fig 1-6 に示す 30に比べ L が十分大きい場

合フォノンは界面に到達する前に拡散する一方に比べ L が十分小さい場合フォノンは

拡散することなく界面に到達する後者の場合フォノン輸送は界面の影響を大きく受ける

ことになり本来の熱伝動能が制限されるため熱伝導率が低減されるこのような原理でナ

ノ構造化により代表長さ L が小さくなるつまり界面が増加することで熱伝導率は低減さ

れる一方電気伝導を電子の移動と考えると電気伝導率も熱伝導率と同様に議論すること

ができる熱伝導率を低減するためにナノ構造化を用いると界面が増えるため電子も散乱

され電気伝導率も低下するしかし電子の平均自由行程がフォノンの平均自由行程に比べ

非常に小さい 31 ためフォノンに比べ電子はナノ構造化の影響が少なく熱伝導率と比較

して電気伝導率は低下しないそのため適した大きさのナノ構造を作製することで電気伝

導率を維持しつつ熱伝導率を低減させ ZT を向上できると考えられる

Hicks と Dresselhaus の発表以降ZT を向上させるために多くの研究でナノレベルでの構

造制御が用いられるようになったその例として量子井戸 32超格子構造 3334ナノワイヤ

ー35-37 などがあるHarman らは分子線エピタキシー法をもちいて量子ドット超格子構造を

もつ PbSeTe PbTe の素子を作製し室温で高い性能を示した 33またBoukai らは超格子

ナノワイヤパターン転写を用いて直径 10 nm の Si ナノワイヤーを作製し熱伝導率を理

Fig 1-6 ナノ構造化結晶の模式図 30

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

Ele

ctri

cal

cond

cuti

vity

(times10

5

minus1m

minus1)

(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

See

beck

coe

ffic

ient

(

VK

minus1)

(b)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

Temperature (oC)

Ther

mal

conduct

ivit

y (

Wm

minus1K

minus1)

(c)

BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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73 Hurley D H Khafizov M amp Shinde S L Measurement of the Kapitza resistance across a

bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 7: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

7

13 ナノ構造化による ZT向上

Hicks と Dresselhaus は低次元材料で ZT が大幅に向上すると予測しBi2Te3 を用いた場合

2 次元量子井戸において最大 ZT = 69ナノワイヤーにおいて最大 ZT = 14 となる可能性を

示した 2728この大幅な ZT の向上は量子閉じ込め効果による電子状態密度の増加とフォノ

ンの平均自由行程の制限による熱伝導率の低減によるものであると考えられている

ここでナノ構造化による熱伝導率の低減について説明するナノ構造化された熱電材料

内の熱伝導に関して議論をする際フォノンの概念を用いることが一般的であるフォノン

とは格子振動を量子化したものであり半導体において熱は主にフォノンにより輸送され

る例えば代表長さ L の結晶中を平均自由行程のフォノンが移動する場合のナノ構造化さ

れた結晶内におけるフォノン輸送の模式図を Fig 1-6 に示す 30に比べ L が十分大きい場

合フォノンは界面に到達する前に拡散する一方に比べ L が十分小さい場合フォノンは

拡散することなく界面に到達する後者の場合フォノン輸送は界面の影響を大きく受ける

ことになり本来の熱伝動能が制限されるため熱伝導率が低減されるこのような原理でナ

ノ構造化により代表長さ L が小さくなるつまり界面が増加することで熱伝導率は低減さ

れる一方電気伝導を電子の移動と考えると電気伝導率も熱伝導率と同様に議論すること

ができる熱伝導率を低減するためにナノ構造化を用いると界面が増えるため電子も散乱

され電気伝導率も低下するしかし電子の平均自由行程がフォノンの平均自由行程に比べ

非常に小さい 31 ためフォノンに比べ電子はナノ構造化の影響が少なく熱伝導率と比較

して電気伝導率は低下しないそのため適した大きさのナノ構造を作製することで電気伝

導率を維持しつつ熱伝導率を低減させ ZT を向上できると考えられる

Hicks と Dresselhaus の発表以降ZT を向上させるために多くの研究でナノレベルでの構

造制御が用いられるようになったその例として量子井戸 32超格子構造 3334ナノワイヤ

ー35-37 などがあるHarman らは分子線エピタキシー法をもちいて量子ドット超格子構造を

もつ PbSeTe PbTe の素子を作製し室温で高い性能を示した 33またBoukai らは超格子

ナノワイヤパターン転写を用いて直径 10 nm の Si ナノワイヤーを作製し熱伝導率を理

Fig 1-6 ナノ構造化結晶の模式図 30

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

Ele

ctri

cal

cond

cuti

vity

(times10

5

minus1m

minus1)

(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

See

beck

coe

ffic

ient

(

VK

minus1)

(b)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

Temperature (oC)

Ther

mal

conduct

ivit

y (

Wm

minus1K

minus1)

(c)

BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 8: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

8

論限界以下にまで低減させている 36しかしこのような材料は作製に時間とコストがかか

りスケールアップが困難なため実用化は難しいと考えられる 38

一方2008 年に Jeng らは SiGe ナノコンポジットの熱伝導率をモンテカルロ法によって

検証し界面の配置の規則性に比べ界面の密度が熱伝導率の低減に対して大きな影響を与

えると報告した 39そのため現在では超格子構造のように原子を規則的に積層して作製す

る方法に加えナノ粒子の焼結による作製などのバルク処理によりナノ構造化を行い界面

の密度を増加することで Fig 1-7 のように高い電気伝導率およびゼーベック係数を維持しつ

つ熱伝導率を低減させ ZT を向上させるという研究が盛んに行われているPoudel らはボー

ルミルにより得た BiSbTe ナノ粒子を焼結することで平均粒径が 20 nm のナノ構造化バルク

材料を作製し電気特性の向上および熱伝導率の低減による ZT の向上を報告した 40Biswas

らは粒界の増加合金化ナノ析出体などによって幅広い範囲の平均自由行程をもつフォノ

ンを散乱しすることで熱伝導率を大幅に低減させている 41

Fig 1-7 SiGe におけるナノ構造化による(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)熱伝導率

および(d)ZT への影響 42高い電気特性を維持しつつナノ構造化によって

熱伝導率を低減し ZT を向上させている

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

12

Temperature (oC)

Ele

ctri

cal

cond

cuti

vity

(times10

5

minus1m

minus1)

(a)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

See

beck

coe

ffic

ient

(

VK

minus1)

(b)BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

Temperature (oC)

Ther

mal

conduct

ivit

y (

Wm

minus1K

minus1)

(c)

BulkNanostrucutured Bulk

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(d)

BulkNanostrucutured Bulk

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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47 Schierning G et al Role of oxygen on microstructure and thermoelectric properties of silicon

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48 Kessler V et al Thermoelectric Properties of Nanocrystalline Silicon from a Scaled-Up Synthesis

48

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49 Gresback R Nozaki T amp Okazaki K Synthesis and oxidation of luminescent silicon

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Nanotechnology 22 305605 doi1010880957-44842230305605 (2011)

50 Zhou S et al Boron- and Phosphorus-Hyperdoped Silicon Nanocrystals Particle amp Particle

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51 Kessler V et al Fabrication of High-Temperature-Stable Thermoelectric Generator Modules

Based on Nanocrystalline Silicon Journal of Electronic Materials 43 1389-1396

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bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 9: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

9

14 ナノ構造化バルクシリコン

ナノ構造化を適用することで多くのバルク材料で ZT の向上が報告されてきた 40-42しか

しこのような材料は比較的性能は高いが資源量が少ない環境負荷が大きいなどの短所

をもつものが多い一方シリコン(Si)は高い電気特性高温での高い安定性豊富な埋蔵

量低環境負荷のために熱電変換材料として期待されている材料であるしかし単結晶シ

リコンの熱伝導率 43は他の材料に比べ 2 桁以上大きいため ZT が低いことが課題となってい

るそこでナノ構造化により高い電気特性を維持しながら熱伝導率のみを低減させようと

いう研究が行われている

Bux ら 44 はボールミルにより作製した直径 10~100 nm の比較的小さい Si ナノ粒子を焼結

し高い電気特性を維持しながら熱伝導率の大幅な低減を実現したまたYusufu ら 46 は

アーク溶解法で作製した後に粉砕した高濃度ドーピングされたシリコンを焼結し数 nm オ

ーダーの析出体をもつ試料を作製した一方Kessler ら 48 はプラズマ CVD (Plasma-enhanced

chemical vapor deposition)を用いて Si ナノ粒子を大量合成し熱電変換材料として用いた同

様にプラズマ CVD を用いて Schierning ら 47 は直径 15 nm および 24 nm の Si ナノ粒子を作

製し焼結体中に含まれる酸素が熱電特性に与える影響を検証したまたClaudio ら 45は

不要な不純物を含まない直径 14 nm の Si ナノ粒子をプラズマ CVD により作製しその結

果焼結体は高い電気特性を示したこれらの研究では Fig 1-8(a)に示すように ZT の向上を

実現しているが同温度域で使用可能な SiGe42 に比べ低くさらなる ZT の向上が望まれて

いるまたFig 1-8(b)に示すように室温での熱伝導率は 10 Wm-1K-1 以上であり依然と

して他の材料に比べ 1 桁以上高い値を示している熱伝導率は ZT だけでなく必要な材料の

量にも影響する系に生じる熱流束を q として温度差T熱伝導率および材料の厚さ t

の関係は式(13)のようなフーリエの法則で表される

Fig 1-8 先行研究で作製されたナノ構造化バルクシリコン熱電材料 44-47バルク SiGe42

およびナノ構造化バルク SiGe42の(a)ZT および(b)熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

05

1

15

Temperature (oC)

ZT

(a)Nano Si (Ref44)Bulk Si (Ref44)

Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano Si (Ref47)

Nano Si (Ref45)

Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1 )

(b)Nano Si (Ref44)Nano Si (Ref45)

Nano Si (Ref47)Nano Si (Ref46)

Nano Si (Ref48)Nano SiGe (Ref42)Bulk SiGe (Ref42)

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 10: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

10

t

Tq

(13)

熱流束 q が一定であると仮定して同じ効率を示すつまり同じ温度差T を保つためには

式(13)から必要な材料の量は材料の熱伝導率に比例することが分かる熱電変換の普及の

ためには性能向上の他に材料コストの低減も重要な要因であるため熱伝導率のさらなる

低減は大きな課題である

15 目的

本研究では Si ナノ結晶およびアモルファス酸化物相(SiOx)の混成した熱電変換材料を作

製するここで Si ナノ結晶相は高い電気特性の維持および熱伝導率の低減アモルファス

酸化物相はさらなる熱伝導率の低減に寄与する試料の作製はプラズマ CVD で得た後酸

化を行って作製した SiSiOx のコア-シェル構造をもつ数 nm のナノ粒子を焼結することで

実現する最終的に試料の熱伝導率の大幅な低減により ZT および費用対効果の向上を実

現することを目的とする

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 11: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

11

実験方法

本研究ではナノ構造化した熱電変換材料を作製し性能評価を行う試料作製および性能

評価の手順は以下の通りである

I プラズマ CVD を用いて Si ナノ粒子を作製する

II 作製した Si ナノ粒子を放電プラズマ焼結によってペレット状の試料にする

III 作製した試料の以下のように各物性の測定および試料の観察を行う

対象 測定方法および使用する装置

熱伝導率 レーザーフラッシュ法 (NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash)

電気伝導率 直流四端子法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

ゼーベック係数 温度差起電力法 (ULVAC 社製 ZEM-3)

粒度分布 粉末 X 線回折法 (Rigaku 社製 SmartLab)

キャリア濃度 ホール測定 (Quantum Design 社製 PPMS)

密度 アルキメデス法

試料観察 透過型電子顕微鏡

Figure 2-1 に実際に作製した試料の例を示す本章ではこれらの実験手法の概要およびそ

れに用いる装置の説明を述べる

Fig 2-1 作製行程における各試料の例(a)プラズマ CVD により作製した Si ナノ粒子

(b)放電プラズマ焼結によって作製したペレット状の試料

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 12: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

12

21 プラズマ CVD によるナノ粒子作製

Si ナノ粒子を作製するために本研究ではプラズマ CVD を用いたその概略図を Fig 2-2

に示す一般的にプラズマ CVD とはプラズマを発生させた反応器内に原料となる混合ガ

スを投入分解し基板などに製膜する方法である本研究では基板に製膜する代わりに

混合ガス中の Si ナノ粒子をフィルターで回収したプラズマ CVD は粒度分布を 20 以

内で一般的なナノ粒子化の手法であるボールミルでは困難な直径が 10 nm 以下のナノ粒

子から 100 nm オーダーの比較的大きなサイズのナノ粒子まで反応時間を制御することで作

製できるという特徴をもつ 49またドーピング量を幅広い範囲で制御でき特に通常では困

難な量の高濃度ドーピングが行えることも大きな特徴である一般的にトランジスタなど

に用いられている不純物濃度は 1015 cm-3 程度であるが例えば直径 10 nm の Si ナノ粒子に

不純物 1 原子が含まれると仮定した場合不純物濃度は 19times1018 cm-3 (0004 atm)となり大

きく上回るZhou らは不純物濃度が 31 atmという高濃度ドーピングを行いドープ量に

よる結晶構造の変化および不純物の種類による存在しやすい位置や酸化のしやすさの違い

を報告している 50また一般的にプラズマ CVD の際にドーピングに用いられる PH3 や

B2H6 に比べ毒性が弱く安価なトリメチルホスフィン(P(OCH3)3)を用いてのドーピングを行

っている 50その他のプラズマ CVD の特徴としてはボールミルのようなバッチ処理では

なく連続生産が可能でスケールアップしやすい点も挙げられるKessler らは 1 kgh-1で Si

ナノ粒子を作製し熱電変換材料として用いている 51

次にプラズマ CVD による Si ナノ粒子の作製の具体的な方法について説明する減圧し

たプラズマ反応器内に SiCl4H2Ar および P(OCH3)3 の混合ガスを投入すると水素によ

る SiCl4の分解結晶核の発生および成長を経て Si ナノ粒子が作製される一般的にプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子の作製には SiH4 が原料ガスとして用いられるが本研究では安全

性が高くコストが低い SiCl4 を用いたまたSiCl4 を用いた場合作製したナノ粒子表面は塩

素で終端されるという特徴がある 49ここで SiCl4の分解反応は式(21)のように表される 52

SiCl4 + 4H rarr Si + 4HCl (21)

これはプラズマによって常温付近で生成した H ラジカルが SiCl4 から塩素を引き抜き Si が

生成するという反応である生成した Si の結晶核は反応時間を長くするとより大きいナノ

粒子に成長するためナノ粒子のサイズは混合ガスの流量で制御することができる 49また

ナノ粒子の結晶性はプラズマ反応器の消費電力によって制御可能である 49

Fig 2-2 SiCl4 を用いたプラズマ CVD での Si ナノ粒子作製の概要図

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 13: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

13

本研究ではプラズマ CVD を用いて Fig 2-3 に示すような直径 6 nmドーパントをリン(P)

としてキャリア濃度が 25times1020 cm-3 である Si ナノ粒子を作製したまた作製した Si ナ

ノ粒子表面は塩素で終端されているが一般的に塩素は電子デバイスの電気特性を下げる

ということが知られているそこで塩素を排除すると同時に Si ナノ粒子の表面に酸化膜を

形成するために大気中で酸化を行ったなお酸化処理は回転速度を 200 rpm としてマグ

ネットスターラーによる撹拌を 2 時間4 時間および 12 時間行い異なる厚さの酸化膜を

もつ 3 種類のナノ粒子を作製した

Fig 2-3 プラズマ CVD により作製したナノ粒子の(a)TEM 像および(b)粒度分布

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 14: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

14

22 放電プラズマ焼結

作製したナノ粒子を放電プラズマ焼結機を用いて焼結しペレット状の試料を作製する

放電プラズマ焼結とはFig 2-4 に示すように圧力を加えながら試料粉末に高い電圧をか

けることで粒子間にプラズマを発生させ大電流を流しそこで発生するジュール熱を利用

して焼結を行う方法であるそのため焼結温度は流す直流電流量により制御することがで

きる放電プラズマ焼結では粒子間のみで局所的に試料の温度が上がるため低い温度での

焼結が可能であるそのため同様に金属粉体を焼結する方法であるホットプレス法に比べ

焼結時間も短縮でき粒成長を抑制できる例えばSuzuki は融点が 2900 degC と非常に高

いために単体では不可能であった超硬合金の焼結を放電プラズマ焼結法により 1900 degC と

いう低温で行いその焼結体は高い硬度を示すことを報告した 53またNagata らは従来

では行えなかった 1 m 以下の結晶で構成され高い保磁力をもつマンガン亜鉛フェライトを

放電プラズマ焼結法により作製した 54

本研究で焼結機として使用する PAS (Plasma Activated Sintering)装置エレニックス社製 Ed-

PAS IV は直流電流を流す前にパルス電流を流すことで粒子表面を活性化させ焼結しやすく

する焼結の際のパラメータとしては焼結時間焼結温度加圧力パルス電流値パルス

幅など多く存在し主に焼結温度および保持時間が粒子の成長の度合いに影響するなお

焼結温度とは焼結時の最大温度のことを示し本研究では試料を封入しているカーボン型

の温度であることに注意する必要がある最適な焼結条件は試料粉末の粒径酸化膜の状態

などにより異なるため試料ごとに最適化する必要がある一般的に高温で長時間焼結を行

えば高密度になるが粒成長することで界面が消失してしまう可能性も大きくなるFigure

2-5 に本研究で作製した試料の焼結条件の例を示すなお温度は放射温度計によってカー

ボン型の外壁で計測したため600 degC 以下の温度を計測できずカーボン型の外壁が

600 degC 以下の場合は 600 degC として表示されていることに注意する必要がある本研究

ではまずパルス電流量を 200 Aパルス幅に関しては ON 時間を 500 msOFF 時間を 50 ms

として 5 分間パルス電流を流した(Fig 2-5(a))続いて圧力を 96 MPa として直流電流量を

制御しながら 600 degC 以下では 200 degCmin-1 程度の速度で昇温を行った(Fig 2-5(b))後焼

結後の試料の密度が最大となるように密度変化の速度が下がるまで 50 degCmin-1 程度の速度

Fig 2-4 放電プラズマ焼結の概略図

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 15: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

15

で昇温し(Fig 2-5(c))密度変化が 0 となった温度で 1 分以上保持した(Fig 2-5(d))その後

急冷によるヒビ割れを防ぐために圧力を 24 MPa冷却速度を 50 degCmin-1 として 600 degC まで

温度を下げ(Fig 2-5(e))圧力および直流電流量を 0 として自然に室温まで冷却した(Fig 2-

5(f))

Fig 2-5 焼結条件の例(a)圧力を 96 MPa としてパルス電流印加(b)直流電流により

200 degCmin-1 で昇温(c)50 degCmin-1で昇温(d)密度変化の速度が低下した温度に

おいて密度変化が 0 になるまで温度を 1 分間以上保持(e)圧力を 24 MPa として

50 degCmin-1で冷却(f)圧力を 0 MPa として室温まで自然冷却

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 16: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

16

23 作製した試料の各物性の測定および観察

231 レーザーフラッシュ法

レーザーフラッシュ法とは 1961 年に Parker ら 55 によって行われた方法でFig 2-6 に示

すように試料の片面に均一にパルスレーザーを照射して瞬間加熱し裏面の温度変化をセ

ンサーで測定し熱拡散の様子を観測することにより熱拡散率を求める方法である熱拡散

率を計測する方法として他に定常法装置があるがそれと比較してレーザーフラッシュ法

による測定は非接触で短時間かつ比較的少量の試料での測定が可能という利点がある今

回用いる装置である NETZSCH 社製 LFA 447 NanoFlash ではレーザーの代わりにキセノンフ

ラッシュ光が照射される

LFA 447 NanoFlash を用いた熱拡散率の測定手順を述べるまずパルスレーザーの吸収性

を高めるために試料の両面に真空蒸着法を用いてアルミニウムを蒸着する真空蒸着法と

は蒸着材料を試料に成膜する方法でありタングステンボートに電流を流すことで発生す

るジュール熱により高真空中で蒸着材料を蒸発させ試料基板に成膜する真空蒸着法は同

じ成膜装置であるスパッタと比較して成膜速度が速く膜厚制御が容易であるなお蒸着

材料としてアルミニウムを用いる理由はキセノンランプの放射スペクトルのピークがある

可視光域を非常に吸収するためである次にパルス加熱光の吸収性を高めるためにカーボ

ンスプレーを用いて試料表面に黒化処理を行う最後に測定データと解析モデルをフィッ

ティングすることで熱拡散率を算出する

続いて解析モデルの説明を行う試料内の熱伝導が一次元熱伝導であると仮定すると一

次元熱伝導方程式は式(22)のように表される

2

2

x

T

t

T

(22)

ここで試料の熱損失がないと仮定すると式(23)のような解析解が得られる

1

22)( ])(exp[)1(21

n

nmt Ltn (23)

CL

Qm

(24)

ここで用いられている Q は試料表面の単位面積が吸収したレーザーパルスのエネルギー

Fig 2-6 レーザーフラッシュ法概略図

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

per

ature

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 17: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

17

L は試料の厚さC は試料の比熱は試料の密度は試料の熱拡散率は裏面の温度変

化t はパルス照射の瞬間からの時間をそれぞれ表す式(23)のを縦軸t を横軸にとると

Fig 2-7 のような曲線が得られる

ここで最大温度の 12 の温度となる時間をハーフタイム t12 とすると式(22)から熱拡散率

は式のように表される

21

213880

t

L

この方法はハーフタイム法と呼ばれParker らによって提唱された方法である 55

レーザーフラッシュ法による熱拡散率計測において試料の厚さは非常に重要である例

えば試料の厚さの測定誤差が 10 であると仮定すると式(25)より熱拡散率の誤差は約

20 となる特に薄い試料の場合試料の厚さに対するカーボンスプレーの影響が大きく

なるためカーボンスプレーによる黒化処理は測定の誤差になる可能性があるそのため

薄い試料の熱拡散率を測定する場合はカーボンスプレーをなるべく均一に薄く試料に塗布

する必要があるまた試料の厚さが薄すぎると応答速度が不足し厚すぎると裏面の温

度上昇値が小さくなるため信号の SN 比が悪くなるこのため試料の厚さが適度でなけれ

ば正確には解析できない場合がある

またハーフタイム法は断熱されており熱損失がない一次元熱伝導を仮定した場合であ

るため実際に解析モデルとして使用するには試料表面からの熱損失を考慮したモデルを

使用する必要があるこのため本研究では Cowan モデル 56 を解析モデルとして使用してい

るCowan モデルは時刻 5t12 と t12 でのセンサーの信号比を用いて熱損失を正確に評価

し熱拡散率を求めるモデルであるこのようにして求められた熱拡散率と密度比熱 C

を用いて熱伝導率は式のように表される

C

本研究では密度 = 2329 gcm-3 とし比熱はバルクの値 を用いた

Fig 2-7 試料の熱損失がないと仮定した場合のセンサーで測定される

試料表面の温度変化の例

Time

Tem

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18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 18: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

18

232 直流四端子法

抵抗値 R断面積 A長さ L の抵抗の電気伝導率は式のように表される

1 (27)

L

RA

ここでは電気抵抗率を表し一般的にキャリア濃度の増加とともに電気抵抗率は低下する

という特徴をもつ直流で電気抵抗を測定する方法には主に二端子法と四端子法の二種類

があり測定略図と等価回路をそれぞれ Fig 2-8 に示す

まず Fig 2-8(b)のように二端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるこの場合電流計

で測定する電流は試料に流れる電流であり電圧計で測定する電圧は試料の抵抗 RS電流

計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキ

ルヒホッフの法則より式(29)のように表される

)( 21 rrRRIV AS (29)

ここで用いられている V は電圧計の値I は電流計の値を表すRS に比べ RAr1r2 が無

視できる場合(29)式は式(210)のように近似することができ試料の抵抗を求めることがで

きる

SIRV (210)

電流計の内部抵抗 RA接触抵抗 r1r2を 1~10 と仮定すると式(29)および(210)より試料

の抵抗値が 100~1000 以上である時 1 以内の誤差で測定できると考えられるしかし本

研究で扱う試料の電気抵抗率は低くそれに伴い抵抗値も低くなるためこれらを無視す

Fig 2-8 抵抗値測定法(a)四端子法(b)二端子法

V AV

A

(a-1) (b-1)

V AV

A

(a-1) (b-1)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

V

r1 r2 r3

RA

Rv

RS

I

A

r4

V

r1

RA

Rv

RS

I

A

r2

(a-2) (b-2)

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

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0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 19: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

19

ることは出来ない

次に Fig 2-8(a)のように四端子法で電気抵抗を測定する場合を考えるまず接触抵抗 r2

r3 は電圧計の内部抵抗 RV に比べ十分に小さいので無視できる四端子法の場合電流計で

測定する電流は試料に流れる電流と電圧計に流れる電流の和であり電圧計で測定する電

圧は試料にかかっている電圧であるここでそれぞれの関係はキルヒホッフの法則より式

(211)のように表される

)11

(VS RR

VI (211)

試料の抵抗 RSに比べ電圧計の内部抵抗 RV が十分に大きい場合電圧計の内部抵抗の含まれ

る項は無視できるため(211)式は式(212)のように近似することができ試料の抵抗値を求

めることができる

I

VRS (212)

電圧計の内部抵抗 RVを 1 Gと仮定すると試料の抵抗値が 1 M以下の時 1 以内の誤差で

測定できると考えられる

本研究で用いる試料の抵抗値は全て 10 以下であるため電気伝導率の測定には四端子法

を用いた

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 20: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

20

233 温度差起電力法

温度差起電力法とは試料に対して定常熱流を実現し試料両端に温度勾配をかけること

で熱起電力を発生させる方法である2 点間の温度 THTLと電位差V から 2 点の平均温度

T のときのゼーベック係数は式(215)のように表される

2LH TT

T

(213)

LH TTT (214)

T

VS

(215)

今回ゼーベック係数の測定に用いる装置である ULVAC 社製 ZEM-3 の概略図を Fig 2-9 に

示すZEM-3 では試料の両端を電極で挟み電流-電圧特性を測定することでゼーベック

係数と同時に直流四端子法による電気伝導率の温度依存性の測定が可能であるここで試

料系全体の温度を試料系外部の電気炉試料につける温度勾配を電極内部に内蔵されたヒ

ーターによってそれぞれ制御する温度電圧測定用プローブによって計測される電位差V

はキルヒホッフの関係より式(216)のように表される

TSA

LIV (216)

ここでを試料の電気抵抗率A を試料の断面積L をプローブ間の距離I を試料に流す電

流をそれぞれ表すT を一定として I を変化させながらプローブ間の電位差V を計測する

ことで電気抵抗率およびゼーベック係数を同時に測定できるここで電気伝導率を精度よ

く計測するためには試料のアスペクト比 LA をある程度大きくして一次元電気伝導を実現

する必要がある加えてプローブ間の電位差も大きくなるため精度の高い計測を行うこと

ができる一方ゼーベック係数を精度よく計測するためにはまず電気伝導率同様試料のア

スペクト比 LA をある程度大きくして一次元熱伝導およびプローブ間の温度差の増大を実

現する必要があるまた異なるT でゼーベック係数を計測することで精度を高めること

ができる本研究では計測する各温度で上下の電極の温度差を 30 degC35 degC40 degC として

温度依存性を測定した

Fig 2-9 ZEM-3 の概略図

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 21: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

21

234 ホール測定

本研究では作製した試料のキャリア濃度を計測するためにホール測定を行ったホール

測定とは電流の流れている物質に対して電流に垂直に磁場をかけた場合電流と磁場の両

方に直交する方向に起電力が現れるホール効果を利用して試料内のキャリア濃度を計測す

る方法であるFigure 2-10 に示すように y 軸正の方向に電流 Iz 軸正の方向に磁場 B をか

ける場合を考えるy 軸負の方向に移動している電子には式(2-17)で表されるローレンツ力

F が x 軸負の方向に働く

evBF (217)

evndtI (218)

ここで e は電気素量v は電子の速さn はキャリア濃度d は試料の x 軸方向の幅t は z

軸方向の厚さをそれぞれ表すローレンツ力により試料側面が帯電し電位差 V が生じる

定常状態を考えるとこの電場から電子が受ける力とローレンツ力が釣り合いその関係は

式(2-20)のように表される

d

VE (219)

eEevB (220)

以上よりキャリア濃度は式(2-21)のように表される

BV

I

etn

1 (221)

本研究では I を一定として B を-9 T から 9 T まで変化させて V を測定し測定結果を V =

CB (C は定数)でフィッティングすることで n を算出した

また電気伝導率およびキャリア濃度 n を用いて式(222)からキャリア移動度を算出す

ることができる

en (222)

ここで e = 16022times10-19 C は電気素量をそれぞれ表す

Fig 2-10 ホール測定の概略図

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 22: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

22

235 アルキメデス法

本研究では作製した試料の密度を計測するためにアルキメデス法を用いたアルキメデ

ス法とは流体中の物体はその物体が押しのけている流体の重さと同じ大きさで上向きの

浮力を受けるというアルキメデスの原理を利用して試料の密度を計測する方法である

Figure 2-11 にアルキメデス法による測定の概略図を示す空気中および流体中で物体に働く

力の釣り合いを考えるとそれぞれ式(2-23)(2-24)のように表される

mggm a (223)

mggmVg ww (224)

ここで ma は空気中で秤により計測された物質の質量m は物体の質量w は流体の密度

V は物体の体積mwは流体中で秤により計測された物質の質量g は重力加速度をそれぞれ

表すこれらより物質の密度は式(2-25)のように表される

w

wa

a mm

m

V

m

(225)

また試料の相対密度を算出する際にバルクの密度を 2329 gcm-3 として用いた

Fig 2-11 アルキメデス法による測定の概略図

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 23: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

23

236 エネルギー分散型 X 線分析

試料の成分分析を行うためにエネルギー分散型 X 線分析 (Energy Dispersive X-ray

Spectrometer EDS)を用いたEDS は電子線を試料表面に照射して発生する特性 X 線のエネ

ルギーを測定することで試料に含まれる元素を分析する測定方法であるEDS の特徴には

測定範囲内の B~U までの元素を短時間で同時に特定可能であること元素の種類によるが

1 atm程度の量でも検出可能であること導電性材料は前処理を行うことなく測定可能で

あることなどが挙げられる

次に特性 X 線について説明する物質に高エネルギーの電子が入射すると電子の持つエ

ネルギーの一部が X 線の発生に変換されX 線が発生する発生する X 線は電子が衝突

に伴って運動エネルギーを失うプロセスにより Fig 2-12 に示すように連続的な波長をもつ

これは連続 X 線と呼ばれ連続 X 線において最も短い波長を短波長端と呼ぶ電子のエネ

ルギーが大きくなると連続 X 線の強度は全波長について増大し短波長端も短波長側に移

動するまた電子のエネルギーがある値を超えるとFig 2-12 に示すように連続 X 線ス

ペクトルに電子を入射した試料固有の波長において非常に鋭いピークが現れるこれらの

スペクトルは特性 X 線と呼ばれ試料を構成する原子に関係している特性 X 線の発生原

理を Fig 2-13 に示す試料を構成する原子を微視的な観点から考えると原子中の電子は

その主量子数 n で分類できる KLM などの殻に存在することが知られている高エネル

ギーの電子を試料に入射すると内殻準位の軌道電子が弾き飛ばされ原子は励起状態となる

これは光電効果と呼ばれる励起された原子は外殻の電子が内殻の空準位に遷移すること

で基底状態に戻りその際遷移する準位間のエネルギー差に相当する電磁波を放出するこ

の放出される電磁波が特性 X 線でありこのプロセスで放出されるエネルギーは原子の種

類および関係する殻に固有な値であるなお電子の遷移は全ての電子軌道間で生じるので

はなく式(226-28)で表される選択則を満たす軌道間の遷移のみが許される

Fig 2-12 異なるエネルギーをもつ電子の入射により発生する

連続 X 線スペクトルの変化の例(Mo)58

0 1 2 3Wave length (Å)

Inte

nsi

ty

(a) 5 kV10 kV15 kV20 kV25 kV

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 24: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

24

0n (226)

1l (227)

10 j (228)

ここで n は主量子数l は軌道角運動量量子数s をスピン角運動量量子数として j = l +s は

主全角運動量量子数を表す遷移に寄与する内殻軌道と外殻軌道の組み合わせによって特

性X線には名称がつけられているFig 2-13 に代表的な電子遷移と特性X線の名称を示す

例えば K線は L 殻から K 殻にK線は M 殻から K 殻にそれぞれ電子が遷移する際に発生

する特性 X 線であるまた同じ K線でも外殻の L 殻の 2p 軌道がスピン分裂を起こして L2

と L3 に分かれているために 2 本の特性 X 線が観測されるL3 からの遷移によって発生する

特性 X 線を K1 線L2 からの遷移によって発生する特性 X 線を K2 線と呼んでいるこの

2 本の強度比は準位間の遷移確率に比例しおおよそ K1 K2 = 21 である

EDS では特性 X 線が試料を構成する原子に固有のものであることを利用して各波長の強

度の比により成分分析を行う

Fig 2-13 特性 X 線の発生原理および各特性 X 線の呼称

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 25: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

25

237 X 線小角散乱測定

本研究では試料の平均粒径を計測するために X 線小角散乱測定を行ったX 線小角散乱

測定とは一般的に微粒子や多孔体のサイズ分布解析に用いられる方法であるX 線小角散

乱測定の特徴には結晶性の材料のみでなく非晶質の材料の評価も可能であること非破壊

で簡便かつ短時間に解析が可能であること可視光に不透明な膜の評価が可能であること

1~100 nmt 程度の非常に小さな物質のサイズを解析可能であること複数のサイズ分布をも

つ系の解析が可能なことなどが挙げられる

次に X 線小角散乱測定の測定原理について説明するマトリックス中に粒子や空孔など

の異なる密度の物質が存在する場合この試料に X 線を照射すると Fig 2-14 に示すように

その物質が散乱体として働きX 線の進む方向が変化するこれを X 線の散漫散乱と呼ぶ

この散乱信号は非常に弱いため通常は小角領域と呼ばれる散乱角度 2が 0~10deg程度の散

乱角度が小さな領域でのみ観測されるこの散乱信号を散乱角度 2の関数として表示する

ことにより得られたプロファイルには粒子や空孔の情報が含まれているためこれを解析

することで粒子や空孔の大きさや分布を求めることができる

続いて具体的な測定方法を説明するまず試料粉末をガラスキャピラリーに詰める本研

究では W Muller 社製の直径 05 mm のガラスキャピラリーを用いたなお測定時に X 線

が 13 程度透過する必要があるためエタノールなどの溶媒に分散して濃度を調節したもの

をガラスキャピラリーに詰めることが必要な場合もある次に測定装置の試料位置調整な

どを行い測定を行う本研究では X 線線源に CuK線を用いた実際に測定で得られたプ

ロファイルを Fig 2-15(a)に示すFigure 2-15 から平均粒径によって大きくプロファイルが

異なることが分かるこれらのプロファイルに対して粒形および正規分布対数正規分布と

いった粒度分布の形を仮定してフィッティングを行い Fig 2-15(b)のような粒径分布を算出

した本研究では粒形を球粒度分布を対数正規分布とした

Fig 2-14 X 線小角散乱の概念図

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 26: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

26

Fig 2-15 X 線小角散乱測定で得られた(a)プロファイルおよび(b)粒度分布の例

0 1 2 310

0

101

102

103

104

105

106

2 ( o)

Inte

nsi

ty(a)

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

10minus1

100

101

102

103

0

01

02

03

04

05

Grain size (nm)

(b)

Per

centa

ge

()

Grain size 38 nmGrain size 118 nm

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

参考文献

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 27: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

27

熱伝導率の理論計算

本章ではフーリエの法則で表現できない微視的な現象を理解するために熱伝導を担う

フォノンの概念を説明した後フォノン気体モデルによる熱伝導率計算およびナノ構造化

バルク材料へのフォノン気体モデルの適用を説明する

31 固体内の熱伝導

熱電変換材料は熱伝導率を低減すると変換効率が向上するため近年ナノ構造化による

熱伝導率低減を目的とする研究が行われているがさらに熱伝導率低減による効率の向上

を実現するためにはナノスケールにおける熱伝導現象のより深い理解が必要となる

固体内の熱伝導は一般的には式(31)に示すようなフーリエの法則によって表される

rκq

T (31)

ここで q は熱流束は熱伝導率T は位置 r における試料の温度をそれぞれ表すフーリ

エの法則から時間的および空間的な温度変化を表す熱伝導方程式を導くことができ両者

とも適用範囲が広く実用的なものとして知られているしかしフーリエの法則は熱伝導現

象を時間的および空間的に巨視的な観点で表現したものであるので熱伝導を観測する時

間スケールが短い場合もしくは熱伝導が起きる物質の空間的スケールが小さい場合にはフ

ーリエの法則は破綻する 59そのため現在熱電変換材料に適用されているようなナノスケー

ルにおける熱伝導現象の理解には微視的な観点で熱伝導現象を表現することが必要である

60微視的には熱は電子と格子振動を量子化した準粒子であるフォノンによって輸送される

電子による熱伝導率はヴィーデマン-フランツ則により電気伝導率に比例するため一般的

に電気伝導率の低い半導体材料内の熱伝導はフォノンによる寄与が大きいそのため熱電

変換材料内の熱伝導を考える上ではフォノンによる熱輸送の理解が重要となる

32 フォノン輸送論

321 単原子系 1 次元調和振動子モデル

まず Fig 3-1 に示す N 個の同一原子からなる 1 次元調和振動子モデルを考えるここで調

和振動子とはバネ-マス系のように原子のポテンシャルエネルギーが原子の平衡位置からの

変位の 2 乗に比例するように振動するものであるn 番目の原子に注目すると運動方程式は

式(32)で表される

Fig 3-1 単原子系 1 次元調和振動子モデル

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 28: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

28

)2( 112

2

nnnn uuuK

dt

udM (32)

ここで M は原子の質量K は原子間をつなぐバネ定数un は a を格子定数として n 番目の

原子の平衡位置 xn = na からの変位とするなおここでは簡単のために周期境界条件(u1 =

uN)とする式(32)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]を代入すると波数 k と角周波数の関係

式は式(33)のように表される

kaM

K

2

1sin

4 (33)

このような関係を分散関係と呼び特に格子振動の場合をフォノン分散関係と呼ぶ

322 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

次に Fig 3-2 に示す異なる質量 M と m をもつ 2 個の原子が交互に N 組連なる 1 次元調和振

動子モデルを考える単原子系の場合と同様に n 番目の組に注目すると運動方程式は式(34)

および(35)で表される

)2( 12

2

nnnn wwuK

dt

udM

(34)

)2( 12

2

nnnn uuwK

dt

wdm (35)

ここで unwnは a を格子定数としてそれぞれ n 番目の質量 Mm の原子の平衡位置 xn = 2na

からの変位とする式(34)および(35)に平面波解 un = u0exp[i(kxn-t)]wn = w0exp[i(kxn-t)]

を代入すると分散関係は式(36)のように表される

kaMmmMMm

K

Mm

mMK

2

1sin4)( 22

(36)

ここで比較のために式(33)および(36)を Fig 3-3 にグラフとして示す分散関係は Fig 3-3

のように曲線で表現されそれぞれを分枝と呼ぶまた単原子系と 2 原子系を比較する

と2 原子系には 2 個の分枝が存在するFigure 3-3 に示す原点を通る分枝は音響モード

と呼ばれるがこれは k = 0 における傾きの値が物質中の音速を意味しているためである

一方原点を通らない分枝は一般的に光と相互作用をするために光学モードと呼ばれるま

た音響モードと光学モードの個数は単位胞内に存在する原子の数 n と自由度 d によって

決まりそれぞれ d 個(n-1)d 個である

Fig 3-2 2 原子系 1 次元調和振動子モデル

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 29: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

29

323 フォノン気体モデル

フォノン粒子の大きさである波束の大きさが結晶より十分小さい場合結晶格子の振動

を結晶体積内における粒子の運動とみなすことができるこのようにフォノンを気体分子

とみなして気体分子運動論を適用したモデルをフォノン気体モデルと呼ぶ気体分子運動

論に基づいた熱輸送に関する支配方程式は式(37)に示すボルツマン方程式で表される

collision

sss

t

f

T

tfT

t

tf

)()( kkk r

rv

r (37)

ここで f はフォノンの分布関数r は実空間での座標t は時間を表す右辺はボルツマンの

衝突項と呼ばれフォノンの散乱による分布関数の変化を表しこの原子間相互作用の非調

和性などに起因したフォノンの散乱が熱抵抗を生じさせる

ボルツマン方程式の簡易化のために 3 つの仮定を行うまず平衡状態においてフォノン

の分布関数は時間に対して依存しないと仮定して左辺第一項を 0 とする次に温度勾配

が微小であるためフォノンの分布関数 f の平衡分布関数 f0 からの差は無視できると仮定し

て左辺第二項の f を f0 に置き換えるなおフォノンはボーズ粒子であるため平衡分布関

数 f0 は式(38)で表されるボーズアインシュタイン分布と等しい

1-exp

1

0

Tk

f

B

ss

kk

(38)

最後に衝突項を緩和時間近似 61 によって表すと仮定するとボルツマン方程式(式(37))は

緩和時間を用いて式(39)のように表される

Fig 3-3 (a)単原子系および(b)2 原子系 1 次元調和振動子の分散関係

赤線が音響モード青線が光学モードをそれぞれ表す

k

(a)

0 2aaminusak

(b)

0 2aaminusa

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 30: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

30

s

ssstftf

T

tfT

00 )()()(

k

kkkrrr

rv

(39)

またフォノン粒子の観点から熱流束を考えるとエネルギーħをもつフォノンが平衡状態

に対し過不足している数だけ群速度 v で移動する現象として表現されるよってフォノン

による熱流束は全ての波数 k と分枝 s の総和を取って式(310)のように表されるなおこ

こでは考える系を簡単にするために等方的な材料の x 軸方向に熱流束が生じていると仮定

する

))()((1

0

tftfvV

qss

xs

ss rr

kkkk

k (310)

ここで V は系の体積であるまた式(39)および(310)より式(311)を得る

T

tf

x

Tvv

Vq

sxss

xs

ss

)(1 0

rk

kkkk

k (311)

式(311)を式(31)で表されるフーリエの法則と比較すると格子熱伝導率は式(312)のよう

に表される

ss

xs

s

s vT

tf

V

2

0

)(1

kkk

k

k

r (312)

また各フォノンの比熱は式(313)のように表される

1exp

1

Tk

TVc

B

s

s

sv

k

k

k

(313)

式(313)および vx2 = |vks|2 3 より格子熱伝導率は式(314)のように表される

s

sssvc

2

3

1

kkkk

v (314)

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

参考文献

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 31: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

31

33 ナノ構造化バルク材料の熱伝導率

本研究ではフォノン気体モデル(式(314))を用いて 300 K でのナノ構造化バルクシリコン

の熱伝導率を計算したなおcvvは第一原理計算より得られた値を用いたここで第

一原理計算とは実験データや経験的パラメータを用いず理論計算を行う方法であるまた

緩和時間は式で表される Matthiessen の法則 62を用いて算出した

L

vB

s

s

s

4

ph

11 k

k

k

(315)

Matthiessen の法則はフォノンの散乱確率を各散乱現象が生じる確率の総和として表すもの

であり右辺第一項はフォノン-フォノン散乱第二項は不純物散乱 63第三項は界面散乱

64 の確率をそれぞれ表しているここでph はフォノン-フォノン散乱による緩和時間L を

ナノ構造化バルク材料の粒径を表しB はフィッティングパラメータであるフォノンの散

乱にはキャリア-フォノン散乱など他の要因も存在するが本研究ではこれら 3 種類の散乱

現象のみを考慮したなおここで用いたph は第一原理計算により算出されたもの 65 で

緩和時間と周波数の関係および式(315)の右辺第二項および第三項を 0 としてその緩和時

間を用いて式(314)から算出したドープされていないバルクシリコンの熱伝導率と実験値 43

の比較を Fig 3-4 にそれぞれ示す計算値と実験値はよく一致しており今回使用した緩和

時間の妥当性を確認できた

次にナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出する具体的な手順を説明するまず

Fig 3-5 に示すように本研究で作製した試料と同程度のキャリア濃度(17times1020 cm-3)をも

つ単結晶シリコンの熱伝導率の値 66を式(314)によってフィッティングし B を求めるなお

この時は式(315)の右辺第三項は 0 として計算を行うフィッティングの結果 B = 14times10-44

となり実験値とよく一致した続いてフィッティングによって求めた B を用いて式(314)

Fig 3-4 (a)第一原理計算より得られたシリコン中のフォノンの周波数とフォノン-フォノ

ン散乱による緩和時間の関係 65および(b)ドープされていないバルクシリコンの計算値と

実験値 43 の比較各色はそれぞれの分枝を表している

01 1 10 10001

1

10

100

1000

10000

Frequency (THz)

Rel

axat

ion

tim

e (p

s)

0 100 200 3000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Temperature [K]

[

Wm

minus1 K

minus2]

Experiment dataTheoretical calculation

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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64 Casimir H Note on the Conduction of Heat in Crystals Physica 5 495-500 (1938)

65 Esfarjani K Chen G amp Stokes H T Heat transport in silicon from first-principles calculations

Physical Review B 84 doi101103PhysRevB84085204 (2011)

66 Slack G A Thermal Conductivity of Pure and Impure Silicon Silicon Carbide and Diamond

Journal of Applied Physics 35 3460 doi10106311713251 (1964)

49

67 Kirchhof M Schmid H J amp Peukert W Three-dimensional simulation of viscous-flow

agglomerate sintering Physical Review E 80 doi101103PhysRevE80026319 (2009)

68 Andersson S amp Dzhavadov L Thermal conductivity and heat capacity of amorphous SiO2

pressure and volume dependence Journal of Physics Condensed Matter 4 6209-6216 (1992)

69 Goldsmid H The thermal conductivity of bismuth telluride Proceedings of the Physical Society

Section B 203 2-9 (1956)

70 Streetman B amp Banerjee S Solid State Electronic Devices (5th Edition) (Prentice Hall 1999)

71 Apsley N amp Hughes H P TEMPERATURE-DEPENDENCE AND FIELD-DEPENDENCE OF

HOPPING CONDUCTION IN DISORDERED SYSTEMS Philosophical Magazine 30 963-972

doi10108014786437408207250 (1974)

72 Minnich A amp Chen G Modified effective medium formulation for the thermal conductivity of

nanocomposites Applied Physics Letters 91 073105 doi10106312771040 (2007)

73 Hurley D H Khafizov M amp Shinde S L Measurement of the Kapitza resistance across a

bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 32: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

32

から粒径 L のドープされたナノ構造化バルクシリコンの熱伝導率を算出した

Fig 3-5 B を変化させて算出したドープされたバルクシリコンの熱伝導率の変化

実験値 66 をフィッティングした結果 B = 14times10-44 とした

0 100 200 3000

100

200

300

400

500

600

Temperature [K]

[

Wm

minus1K

minus2]

Experiment dataModel (B=14eminus44Best fit)Model (B=5eminus44)Model (B=5eminus43)

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 33: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

33

実験結果と考察

本章では異なる厚さの酸化膜を持つ 4 種類の Si ナノ粒子をそれぞれ用いて作製した試料

の構造解析の結果と各熱電特性の関係を説明した後先行研究との性能比較を行う

41 試料の作製および試料観察

プラズマ CVD により直径 6 nm の Si ナノ粒子を作製し酸化をそれぞれ 2 時間4 時間

12 時間行いナノ粒子表面にアモルファス酸化物層を形成したその後酸化した Si ナノ粒

子および酸化を行っていないナノ粒子をそれぞれ放電プラズマ焼結により焼結し 4 種類の

ペレット状試料を作製したTable 4-1 にそれぞれの試料の焼結条件相対密度および X 線

小角散乱測定により算出された平均粒径を示すTable 4-1 に示す焼結条件により全試料に

おいて相対密度が 95 以上の密な試料とすることができたまた酸化を 2 時間4 時間行

った Si ナノ粒子を用いた試料の平均粒径はそれぞれ 38 nm32 nm でありプラズマ CVD

で作製したナノ粒子の粒径は 6 nm であったことから焼結時に粒成長が起こったと分かる

作製した試料の構造をさらに詳しく分析するために TEM による観察を行った例として

Fig 4-1 に酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像を示すFig 4-1(a)に示す

ように試料の 70 程度は Si ナノ結晶相で構成されていたまたナノ結晶の平均粒径は Fig

4-1(b)に示すように 30 nm 程度でX 線小角散乱測定により算出された平均粒径とよく一致

したFig 4-2 に理論モデル計算により算出したドープされていないシリコンおよびプラズ

マ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコンの室温での熱伝導

率の粒径依存性を示すFigure 4-2 に示すように平均粒径が 30 nm である試料の室温での熱

伝導率は 108 Wm-1K-1 と算出されドーピングおよびナノ構造化によりドープされていな

いバルクシリコンの熱伝導率(140 Wm-1K-1)から大幅に低減していると推測される一方Si

内の電気伝導のほとんどは平均自由行程が 20 nm 以下の電子によって行われている 31ため

ナノ構造化による電気伝導率への影響は熱伝導率に比べ小さいと考えられるまた Fig 4-

1(b)から表面に酸化膜が形成された Si ナノ粒子というコア-シェル構造が焼結後には残存し

ていないことも分かる一方EDS 成分分析によりナノ結晶相内には酸素が多く析出して

いる部分が観察されたこのような析出物はチョクラルスキー法で作製された単結晶 Si に

見られるもので室温と Si の融点付近での酸素の固溶度の差によって形成されるこのよ

Table 4-1 試料の酸化時間焼結条件相対密度および平均粒径

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 12 時間

焼結時圧力 (MPa) 96 96 96 96

焼結温度 (degC) 980 910 960 1000

焼結時間 (min) 2 1 4 2

相対密度 () 992 988 952 971

平均粒径 (nm) - 38 32 -

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 34: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

34

うな析出物はキャリア移動度の低下の原因となるため電気特性が低下していると考えられ

一方試料の残り 30 程度は Fig 4-1(c)のようなアモルファス酸化物相で構成されてい

たFig 4-1(b)のように Si ナノ粒子のコア-シェル構造が残存していなかったことからこの

アモルファス酸化物相は焼結時にナノ粒子表面の酸化膜が Si と酸化物間の表面張力によっ

て流動的に移動し凝集したものと考えらるこれはシリカの焼結時に見られる現象であり

ガラス転移温度以上の温度になるとアモルファス酸化物相の粘度が減少し表面積が最小に

なるようにアモルファス酸化物相が流動的に移動および凝集する 67アモルファス酸化シリ

コンの熱伝導率は 132 Wm-1K-1 とバルク Si に比べ非常に小さい 68ため本研究で作製した

試料のように構成要素の 30 がアモルファス酸化物相である試料の熱伝導率は大きく低減

されていると推測される一方電気伝導においては Fig 4-1(a)に示すようにアモルファス

酸化物相に遮られることなくナノ結晶相が幾何学的につながっていることが重要であり

熱伝導に比べアモルファス酸化物相の影響は少ないと考えられる

Fig 4-1 酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の TEM 像

(a)低倍率像赤丸はアモルファス酸化物相を示している

(b)Si ナノ結晶の高倍率像(c)アモルファス酸化物相の高倍率像

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 35: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

35

Fig 4-2 理論モデル計算により算出した試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線が

ドープされていないシリコン赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度の

ドープがされているシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

42 熱電性能評価

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定したFigure 4-3(a)に作製した試

料の電気伝導率の温度依存性を示す室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに酸化

を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料以外の試料の電気伝導率は減少したこれは金属

や縮退半導体に見られる傾向で温度の上昇とともにキャリア-フォノン散乱の確率が増加

するために生じる一方700 degC 以上では温度とともに電気伝導率は増加したこれは

一般的にはバイポーラ効果 38を用いて説明されるバイポーラ効果とは温度の上昇によ

りホールが伝導帯に熱励起しキャリア濃度が増加する現象であるしかしバイポーラ効

果はバンドギャップが 015 eV と小さい Bi2Te3 のような材料に見られる現象 69 であり

バンドギャップが 11 eV70と大きい Si ではバイポーラ効果が生じると考えられないこ

のような高温での電気伝導率の増加は先行研究 44 でも見られている現象でありSi 中

の P の固溶度の変化に伴う P の移動を用いて説明されている温度の上昇により Si 中

の P の固溶度が増加し析出していた P が可逆的に Si 結晶内に取り込まれるためにキャ

リア濃度および電気伝導率が増加する

一方酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に関しては Fig 4-3(b)に示すよ

うに測定した全温度域で温度の上昇とともに電気伝導率は増加したこれはアモルファ

スのように構造が不規則な物質に見られる現象でホッピング伝導 71と呼ばれるホッ

ピング伝導は Fig 4-4 のように特定の原子の周りにトラップされた電子が熱エネルギー

によって局在化された準位間を不連続に移動もしくは伝導帯に移動することによって

伝導する現象で電子が熱エネルギーにより移動するため温度の増加とともに電気伝導

率は増加するまた電子が特定の原子にトラップされるため平均自由行程が原子間距

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped SiHighly doped Si

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 36: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

36

離程度と自由電子に比べ短くなり電気伝導率が一般的なバンド伝導に比べ小さいこと

も特徴であり酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率も他の試料

に比べ 3 桁以上小さくなっている酸化時間が長い試料がホッピング伝導を示した理由

は他の試料に比べアモルファス酸化物相の量が増加しナノ結晶相の幾何学的つながり

がなくなったためと考えられる

電気伝導についてさらに詳しく分析するために酸化を行っていない Si ナノ粒子およ

び酸化をそれぞれ 2 時間4 時間行ったナノ粒子を用いた試料の室温でのキャリア濃度

n をホール測定により計測しさらにキャリア移動度を算出した各試料およびプラズ

マ CVD によって作製した Si ナノ粒子と同じキャリア濃度をもつバルクシリコンの電気伝

導率キャリア濃度およびキャリア移動度を Table 4-2 に示すキャリア濃度は全ての試料

においてバルクシリコンより 80 以上低下していたこれは EDS 成分分析の結果よりナノ

結晶内の粒界面に P が多く存在しておりこれらの P は電気的に不活性であるためと考え

られるまたキャリア移動度が低下した主な原因は各試料に対して 2 つずつ考えられる

共通した原因として粒界面にトラップされた P によって作られるポテンシャル障壁によ

ってキャリアが粒界面で散乱されることが考えられるそれに加え酸化を行っていない Si

ナノ粒子を用いた試料の場合はナノ結晶相内に存在するナノ粒子由来の塩素やそれによ

って形成されるダングリングボンドにキャリアがトラップされるためキャリア移動度が低

Fig 4-3 (a)作製した試料の電気伝導率の温度依存性

(b)酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の電気伝導率の温度依存性

Fig 4-4 ホッピング伝導の概略図

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

1

(times

105

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

01

02

03

(times

103

minus1 m

minus1 )

Temperature (oC)

12minushour oxidation(b)

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 37: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

37

下していると考えられる一方酸化を 2 時間4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の

場合は粒界面でのポテンシャル障壁に加えナノ結晶相内に存在する酸素が多い析出体や

アモルファス酸化物相の混成によってキャリア移動度が低下していると考えられるこの

ような意図しない不純物の混入によるキャリア移動度の大幅な低下は先行研究でも生じて

いる例えばClaudio ら 45 によって作製された不純物をほとんど含まない試料のキャリア

移動度は 61 cm2V-1s-1 であるのに対してBux ら 44や Schierning ら 47 によって作製さいれた

10 以下の少量の不純物が混入した試料のキャリア移動度は 15 cm2V-1s-1 程度と少量であ

っても不純物の混入によりキャリア移動度が大幅に低下することが分かる酸化を 2 時間

4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料のキャリア移動度も同様にキャリア移動度がバルク

シリコンに比べ低下しているがその値は最適化された Bux ら 44 の先行研究の試料のキャ

リア移動度と同程度であるこのことからアモルファス酸化物相の割合が 30 程度と大

きいにもかかわらずナノ結晶相の幾何学的につながりにより比較的高いキャリア移動度を

維持できるということが分かった

Figure 4-5 に作製した試料のゼーベック係数とパワーファクターの温度依存性を示す

Figure 4-5(a)に示すように測定した全ての温度域において全試料のゼーベック係数は負を示

しN 型半導体であることを示したまた室温から 700 degC の間では温度の上昇とともに全

試料のゼーベック係数の絶対値は増加し700 degC 以上では減少したこれは前述の電気伝

導率の温度依存性と反対の傾向となっているまたゼーベック係数の絶対値に関しては

酸化を 2 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料に比べ酸化を行っていないおよび酸化を 4 時

間行ったナノ粒子を用いた試料の方が大きくこれはキャリア濃度の大小関係と反対であ

るFigure 4-5(b)に示すようにパワーファクターは酸化を 12 時間行った Si ナノ粒子を用い

た試料以外は比較的高く特に酸化を 4 時間行った試料が最も高くなった

Table 4-2 作製した試料の室温での電気伝導率キャリア濃度およびキャリア移動度

酸化時間 なし 2 時間 4 時間 ナノ粒子(バルク)

電気伝導率

(times105 -1m-1) 032 079 025 292

キャリア濃度

(times1020 cm-3) 148 250 120 250

キャリア移動度

(cm2V-1s-1) 99 197 185 728

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 38: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

38

Figure 4-6(a)に作製した各試料の熱伝導率の温度依存性を示す全ての試料において室温

での熱伝導率が 5-6 Wm-1K-1 程度となりドープされていないバルクシリコンに比べ 95 以

上低減した加えて温度の上昇とともに熱伝導率は減少し酸化を 4 時間行った Si ナノ

粒子を用いた試料の熱伝導率は 1000 degC で 48 Wm-1K-1となったこれらの値はバルク

SiGe の熱伝導率 42に匹敵する値であるまた式(41)で表されるヴィーデマン-フラ

ンツ則より得られた各試料の格子熱伝導率Lの温度依存性を Fig 4-6(b)に示す

TL e (41)

eL (42)

ここでe は電子による熱伝導率への寄与L = 22times10-8 J2K-2C-2 はローレンツ数をそれぞれ

表す熱伝導率同様格子熱伝導率も温度の上昇とともに減少し酸化を 4 時間行った Si

ナノ粒子を用いた試料の格子熱伝導率は室温で 55 Wm-1K-1890 degC で 40 Wm-1K-1となっ

Fig 4-5 作製した試料の(a)ゼーベック係数および(b)パワーファクターの温度依存性

Fig 4-6 作製した試料およびバルク SiGe42ナノ構造化バルク SiGe42 の

(a)熱伝導率および(b)格子熱伝導率の温度依存性

0 200 400 600 800 1000minus400

minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(a)

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

(b)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(a)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidationBulk SiGe (Ref42)Nano SiGe (Ref42)

0 200 400 600 800 10000

2

4

6

8

10

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1 K

minus1)

(b)Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidation12minushour oxidation

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 39: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

39

たFigure 4-7 に各試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出され

た試料の熱伝導率の粒径依存性を示すFigure 4-7 に示している緑線はアモルファス相

を 30 含むドープされた試料の熱伝導率を表しており式(43)のような複合材料の物性を

算出する際に一般的に用いられる Effective medium theory72 を用いて算出した

])1([2)21(

])1([22)21(

SiSiOSiSiO

SiSiOSiSiO

Si

eff

xx

xx

(43)

ここでeff は有効的な試料の熱伝導率Si は各粒径でのナノ結晶シリコンの格子熱伝導率

a-SiOxはアモルファス酸化シリコンの格子熱伝導率はナノ結晶シリコン相の割合R = 25

times10-9 m2KW-1 を Si と SiOxとの界面熱抵抗 73 として rTBR = RSid をアモルファス酸化物相

の大きさとして = rTBR(d2)とそれぞれ表すただしa-SiOx = 132 Wm-1K-1 と粒径によらず一

定とした 68Figure 4-7 に示すように各試料の室温での格子熱伝導率と理論モデル計算によ

り算出した値はよく一致したこれより作製した試料の熱伝導率の低減は高濃度ドーピン

グに加えナノ構造化およびアモルファス酸化物相の混成の影響が大きいと考えられる

Fig 4-7 作製した試料の室温での格子熱伝導率および理論モデル計算により算出された

試料の室温での熱伝導率の粒径依存性黒線がドープされていないシリコン

赤線がプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子と同程度のドープがされているシリコン

緑線がアモルファス相を 30 含むドープされたシリコンの熱伝導率をそれぞれ表す

20 40 60 80 1000

10

20

30

40

Grain size [nm]

L [

Wm

minus1 K

minus1]

Undoped Si

Highly doped Si

Highly doped Siwith amorphous region

2minushoursminusoxidation4minushoursminusoxidation

40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

(times

105

minus1m

minus1 )

(a)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 1000minus300

minus200

minus100

0

Temperature (oC)

S (

VK

minus1)

(b)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

4

5

6

Temperature (oC)

S2 (

mW

mminus

1K

minus2 )

(c)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

(

Wm

minus1K

minus1)

(d)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

0 200 400 600 800 10000

10

20

30

Temperature (oC)

L (

Wm

minus1K

minus1 )

(e)This workRef44

Ref47

Ref45Ref46

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

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40

Figure 4-8 に作製した試料の ZT の温度依存性を示す酸化を行っていないおよび酸化を 2

時間行った Si ナノ粒子を用いた試料の 300 degC 以上での ZT の算出には室温から 300 degC の間

の熱伝導率の値を外挿した値を用いた酸化を 12 時間行ったナノ粒子を用いた試料以

外の試料はバルクシリコンに比べ大幅に ZT が向上し高温でのパワーファクターが最

も高い酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料は 850 degC で ZT = 058 を示した

Fig 4-8 作製した試料の ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

Without oxidation2minushour oxidation4minushour oxidationSingle crystal[44]

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

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105

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02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

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43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 41: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

41

43 先行研究との比較

Figure 4-9 に本研究(酸化を 4 時間行った Si ナノ粒子を用いた試料)および先行研究 44-47で

作製された試料の各熱電特性の温度依存性を示す本研究で作製した試料の電気伝導率は

先行研究で作製された試料に比べ低くなったBux ら 44 の先行研究と比較するとキャリア

移動度は同程度であるため電気伝導率の差はキャリア濃度の違いによるものと考えられる

一方本研究で作製した試料はキャリア濃度が小さいためゼーベック係数は最も高い値を

示したそのため室温から 700 degC においてパワーファクターの値は Bux ら 44 の先行研究

と同程度となっていたしかし 700 degC 以上では両者のパワーファクターの値に差が生じ

850 degC では 20 程度小さい値を示したこれはキャリア濃度の違いによるためと推測

されるしかし熱伝導率に関しては先行研究で作製された試料を大きく下回りバルク

SiGe に匹敵する値であったこれはナノ構造化に加え適切なアモルファス酸化物相の

混成の影響が大きいと考えられるそのため本研究同様プラズマ CVD を用いたこれま

での先行研究 4547に比べ ZT は 850 degC で 25 向上したまた600 degC での ZT は Bux ら

44 の先行研究と同程度でこれはナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大

の値である

熱電変換の実用化を考える上で性能の他に費用対効果も重要な要因であるまずプラズ

マ CVD での Si ナノ粒子を作製する際に先行研究ではシラン(SiH4)が用いられている 454748

が本研究ではコストが低く安全性も高い四塩化ケイ素(SiCl4)を用いたまた変換効率は

本研究同様プラズマ CVD を用いたこれまでの先行研究 4547 に比べ 850 degC で 25 向上

し600 degC での値はナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値である

加えて本研究では熱伝導率を先行研究 44-47 に比べ 33-69 低減した一定の熱流束が生じ

ると仮定して性能が等しい材料を用いて同じ効率を示すつまり同じ温度差をかける場合

熱伝導率が小さい方が必要な厚さが薄くなるため同効率で材料コストのみを小さくするこ

とができる以上より本研究で作製したナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料は先行研

究に比べ高性能で費用対効果の高い材料であると言える

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

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Temperature (oC)

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105

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04

06

08

Temperature (oC)

ZT

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43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

参考文献

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bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 42: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

42

Fig 4-9 本研究(酸化4時間)および先行研究 44-47 で作製されたナノ構造化バルクシリコン

の(a)電気伝導率(b)ゼーベック係数(c)パワーファクター(d)熱伝導率

(e)格子熱伝導率および(f)ZT の温度依存性

0 200 400 600 800 10000

1

2

3

Temperature (oC)

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4

5

6

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0 200 400 600 800 10000

10

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10

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0 200 400 600 800 10000

02

04

06

08

Temperature (oC)

ZT

(f)This workRef44Ref45

Ref47Ref46

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 43: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

43

結論

51 結論

プラズマ CVD を用いて直径 6 nm の高濃度にドーピングされた Si ナノ粒子を作製し酸

化時間を変え異なる厚さの酸化膜をもつ 4 種類のナノ粒子を作製したその後それぞれの

Si ナノ粒子を用いて放電プラズマ焼結によって相対密度 95 以上の密なペレット状試料を

作製したTEM による観察の結果から試料の 70 程度は平均粒径が 30 nm 程度のシリコ

ンナノ結晶相残り 30 はアモルファス酸化物相であったこのアモルファス酸化物相は

焼結時に Si ナノ粒子の酸化膜が流動的に移動および凝集して形成したものでありナノ結

晶相の幾何学的つながりを遮ることなく存在していた

作製した試料の熱電特性を室温から 1000 degC の間で測定し性能を評価した全ての試

料において電気伝導率はバルクに比べ低下したが適度に酸化を行った Si ナノ粒子を

用いた試料のキャリア移動度は先行研究と同程度であったこれはナノ結晶相が幾何学

的につながっているために電気伝導に対するアモルファス酸化物相の影響が少ないこ

とが要因であると考えられる一方キャリア濃度が小さいためゼーベック係数は先行

研究に比べ大きい値を示しパワーファクターは 700 degC までは先行研究と同程度の高

い値を示したまた熱伝導率は室温で 56 Wm-1K-1890 degC で 39 Wm-1K-1となり全

温度域で先行研究の値から大きく低減することができた加えてこれは理論モデル計算

からドーピングナノ構造化に加えアモルファス酸化物相の影響が大きいと示した結

果ZT は最大で 850 degC において ZT = 058 を示しこれまでのプラズマ CVD を用いた

先行研究に比べ 850 degC において 25 程度向上したまた 600 degC での値はナノ構造化バ

ルクシリコン熱電変換材料の報告の中で最大の値であった

以上のように本研究では熱伝導率の低減および ZT の向上を行い高効率かつ費用対効果

の高いナノ構造化バルクシリコン熱電変換材料の開発を行った

52 今後の課題

さらなる高効率化のためにはまず電気特性の改善必要でありその方法としてはナノ結

晶相内の塩素の排除および酸素析出体の抑制キャリア濃度の最適化が考えられるナノ結

晶相内の塩素の排除はSiCl4 を用いてプラズマ CVD で作製した Si ナノ粒子を HCl によっ

てエッチングするまたは SiCl4の代わりに SiH4を用いて合成することでナノ粒子表面の塩

素を水素に置き換えることができるまたキャリア濃度はプラズマ CVD での Si ナノ粒

子作製の際に不純物として用いるトリメチルホスフィンの流量によって制御できる先行

研究と比較して本研究で作製した試料のキャリア濃度は小さく今後はさらにキャリア濃

度を高くして試料を作製することで性能が向上すると考えられる

一方熱伝導率の低減はナノ結晶相の粒径の低減によって実現する本研究では6 nm

の Si ナノ粒子が焼結中に 30 nm へと粒成長している電子の平均自由行程は 300 K におい

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

45

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50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 44: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

44

て 20 nm 以下である 31 ので焼結条件を最適化して粒成長を抑制することで電気特性への

影響を抑えつつ熱伝導率をさらに下げられると考えられる

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B 79 1616-1623 (2013)

53 Suzuki S Fabrication of hard metal Proceedings of the First Symposium on Spark Plasma

Sintering 13 (1996)

54 Nagata S Takahashi Y Yorizumi M amp Aso K Fine grained Mn-Zn ferrite produced by plasma

sintering method (PAS) Ferrites Proc ICF 6 1191-1194 (1992)

55 Parker W J Jenkins R J Butler C P amp Abbott G L Flash Method of Determining Thermal

Diffusivity Heat Capacity and Thermal Conductivity Journal of Applied Physics 32 1679

doi10106311728417 (1961)

56 Cowan R D Pulse Method of Measuring Thermal Diffusivity at High Temperatures Journal of

Applied Physics 34 926 doi10106311729564 (1963)

57 Shanks H Maycock P Sidles P amp Danielson G Thermal Conductivity of Silicon from 300 to

1400degK Physical Review 130 1743-1748 doi101103PhysRev1301743 (1963)

58 早稲田嘉夫 amp 松原英一郎 X 線構造解析 原子の配列を決める (内田老鶴圃 1998)

59 荒木信幸 フーリエの法則と非フーリエ熱伝導 伝熱 50 1-4 (2011)

60 Chen G Nanoscale energy transport and conversion a parallel treatment of electrons molecules

phonons and photons (Oxford University Press USA 2005)

61 Srivastava G P The Physics of Phonons (Taylor amp Francis 1990)

62 Ashcroft N W amp Mermin N D Solid State Physics (Saunders College 1976)

63 Klemens P The scattering of low-frequency lattice waves by static imperfections Proceedings of

the Physical Society Section A 68 1113 (1955)

64 Casimir H Note on the Conduction of Heat in Crystals Physica 5 495-500 (1938)

65 Esfarjani K Chen G amp Stokes H T Heat transport in silicon from first-principles calculations

Physical Review B 84 doi101103PhysRevB84085204 (2011)

66 Slack G A Thermal Conductivity of Pure and Impure Silicon Silicon Carbide and Diamond

Journal of Applied Physics 35 3460 doi10106311713251 (1964)

49

67 Kirchhof M Schmid H J amp Peukert W Three-dimensional simulation of viscous-flow

agglomerate sintering Physical Review E 80 doi101103PhysRevE80026319 (2009)

68 Andersson S amp Dzhavadov L Thermal conductivity and heat capacity of amorphous SiO2

pressure and volume dependence Journal of Physics Condensed Matter 4 6209-6216 (1992)

69 Goldsmid H The thermal conductivity of bismuth telluride Proceedings of the Physical Society

Section B 203 2-9 (1956)

70 Streetman B amp Banerjee S Solid State Electronic Devices (5th Edition) (Prentice Hall 1999)

71 Apsley N amp Hughes H P TEMPERATURE-DEPENDENCE AND FIELD-DEPENDENCE OF

HOPPING CONDUCTION IN DISORDERED SYSTEMS Philosophical Magazine 30 963-972

doi10108014786437408207250 (1974)

72 Minnich A amp Chen G Modified effective medium formulation for the thermal conductivity of

nanocomposites Applied Physics Letters 91 073105 doi10106312771040 (2007)

73 Hurley D H Khafizov M amp Shinde S L Measurement of the Kapitza resistance across a

bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 46: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

46

35 247-248 doidoihttpdxdoiorg10106311713078 (1964)

17 Meddins H R amp Parrott J E THERMAL AND THERMOELECTRIC PROPERTIES OF

SINTERED GERMANIUM-SILICON ALLOYS Journal of Physics C-Solid State Physics 9

1263-1276 doi1010880022-371997017 (1976)

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Pseudo-Ternary Alloys in the Temperature Range 77 to 300 degrees K Journal of Materials

Science 1 52-65 doi101007bf00549720 (1966)

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SI ALLOYS AT HIGH TEMPERATURES Physical Review 125 44-amp

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21 Sharp J W Jones E C Williams R K Martin P M amp Sales B C THERMOELECTRIC

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doi101103PhysRevB613845 (2000)

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Physical Review B 56 12685-12687 (1997)

26 Funahashi R et al An oxide single crystal with high thermoelectric performance in air Japanese

Journal of Applied Physics Part 2-Letters 39 L1127-L1129 doi101143jjap39l1127 (2000)

27 Hicks L amp Dresselhaus M Effect of quantum-well structures on the thermoelectric figure of

merit Physical Review B 47 12727-12731 doi101103PhysRevB4712727 (1993)

28 Hicks L amp Dresselhaus M Thermoelectric figure of merit of a one-dimensional conductor

Physical Review B 47 16631-16634 doi101103PhysRevB4716631 (1993)

29 Fairbanks J W THERMOELECTRIC DEVELOPMENTS FOR VEHICULAR APPLICATIONS

Diesel Engine Efficiency and Emissions Review (2006)

30 塩見淳一郎 ナノスケールにおける半導体のフォノン熱伝導 伝熱 50 21-28 (2011)

31 Qiu B Tian Z amp Vallabhaneni A First-Principles Simulation of Electron Mean-Free-Path

Spectra and Thermoelectric Properties in Silicon (2014)

32 Hicks L D Harman T C Sun X amp Dresselhaus M S Experimental study of the effect of

quantum-well structures on the thermoelectric figure of merit Physical Review B 53 10493-10496

47

(1996)

33 Harman T C Taylor P J Walsh M P amp LaForge B E Quantum dot superlattice

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(2002)

34 Venkatasubramanian R Siivola E Colpitts T amp OQuinn B Thin-film thermoelectric devices

with high room-temperature figures of merit Nature 413 597-602 doi10103835098012 (2001)

35 Lin Y-M Cronin S B Ying J Y Dresselhaus M S amp Heremans J P Transport properties

of Bi nanowire arrays Applied Physics Letters 76 3944-3946

doidoihttpdxdoiorg1010631126829 (2000)

36 Boukai A I et al Silicon nanowires as efficient thermoelectric materials Nature 451 168-171

doi101038nature06458 (2008)

37 Hochbaum A I et al Enhanced thermoelectric performance of rough silicon nanowires Nature

451 163-167 doi101038nature06381 (2008)

38 Minnich A J Dresselhaus M S Ren Z F amp Chen G Bulk nanostructured thermoelectric

materials current research and future prospects Energy amp Environmental Science 2 466

doi101039b822664b (2009)

39 Jeng M-S Yang R Song D amp Chen G Modeling the Thermal Conductivity and Phonon

Transport in Nanoparticle Composites Using Monte Carlo Simulation Journal of Heat Transfer

130 042410 doi10111512818765 (2008)

40 Poudel B et al High-thermoelectric performance of nanostructured bismuth antimony telluride

bulk alloys Science 320 634-638 doi101126science1156446 (2008)

41 Biswas K et al High-performance bulk thermoelectrics with all-scale hierarchical architectures

Nature 489 414-418 doi101038nature11439 (2012)

42 Wang X W et al Enhanced thermoelectric figure of merit in nanostructured n-type silicon

germanium bulk alloy Applied Physics Letters 93 193121 doi10106313027060 (2008)

43 Glassbrenner C amp Slack G Thermal Conductivity of Silicon and Germanium from 3degK to the

Melting Point Physical Review 134 A1058-A1069 doi101103PhysRev134A1058 (1964)

44 Bux S K et al Nanostructured Bulk Silicon as an Effective Thermoelectric Material Advanced

Functional Materials 19 2445-2452 doi101002adfm200900250 (2009)

45 Claudio T et al Nanocrystalline silicon lattice dynamics and enhanced thermoelectric properties

Physical chemistry chemical physics PCCP 16 25701-25709 doi101039c3cp53749h (2014)

46 Yusufu A et al Bottom-up nanostructured bulk silicon a practical high-efficiency thermoelectric

material Nanoscale 6 13921-13927 doi101039c4nr04470c (2014)

47 Schierning G et al Role of oxygen on microstructure and thermoelectric properties of silicon

nanocomposites Journal of Applied Physics 110 113515 doi10106313658021 (2011)

48 Kessler V et al Thermoelectric Properties of Nanocrystalline Silicon from a Scaled-Up Synthesis

48

Plant Advanced Engineering Materials 15 379-385 doi101002adem201200233 (2013)

49 Gresback R Nozaki T amp Okazaki K Synthesis and oxidation of luminescent silicon

nanocrystals from silicon tetrachloride by very high frequency nonthermal plasma

Nanotechnology 22 305605 doi1010880957-44842230305605 (2011)

50 Zhou S et al Boron- and Phosphorus-Hyperdoped Silicon Nanocrystals Particle amp Particle

Systems Characterization na-na doi101002ppsc201400103 (2014)

51 Kessler V et al Fabrication of High-Temperature-Stable Thermoelectric Generator Modules

Based on Nanocrystalline Silicon Journal of Electronic Materials 43 1389-1396

doi101007s11664-014-3093-6 (2014)

52 Yamda R Gresback R Yi D Okazaki K amp Nozaki T Plasma Synthesis of Silicon

Nanoparticles Optimization of Yield Size Distribution and Crystallinity 日本機械学会論文集

B 79 1616-1623 (2013)

53 Suzuki S Fabrication of hard metal Proceedings of the First Symposium on Spark Plasma

Sintering 13 (1996)

54 Nagata S Takahashi Y Yorizumi M amp Aso K Fine grained Mn-Zn ferrite produced by plasma

sintering method (PAS) Ferrites Proc ICF 6 1191-1194 (1992)

55 Parker W J Jenkins R J Butler C P amp Abbott G L Flash Method of Determining Thermal

Diffusivity Heat Capacity and Thermal Conductivity Journal of Applied Physics 32 1679

doi10106311728417 (1961)

56 Cowan R D Pulse Method of Measuring Thermal Diffusivity at High Temperatures Journal of

Applied Physics 34 926 doi10106311729564 (1963)

57 Shanks H Maycock P Sidles P amp Danielson G Thermal Conductivity of Silicon from 300 to

1400degK Physical Review 130 1743-1748 doi101103PhysRev1301743 (1963)

58 早稲田嘉夫 amp 松原英一郎 X 線構造解析 原子の配列を決める (内田老鶴圃 1998)

59 荒木信幸 フーリエの法則と非フーリエ熱伝導 伝熱 50 1-4 (2011)

60 Chen G Nanoscale energy transport and conversion a parallel treatment of electrons molecules

phonons and photons (Oxford University Press USA 2005)

61 Srivastava G P The Physics of Phonons (Taylor amp Francis 1990)

62 Ashcroft N W amp Mermin N D Solid State Physics (Saunders College 1976)

63 Klemens P The scattering of low-frequency lattice waves by static imperfections Proceedings of

the Physical Society Section A 68 1113 (1955)

64 Casimir H Note on the Conduction of Heat in Crystals Physica 5 495-500 (1938)

65 Esfarjani K Chen G amp Stokes H T Heat transport in silicon from first-principles calculations

Physical Review B 84 doi101103PhysRevB84085204 (2011)

66 Slack G A Thermal Conductivity of Pure and Impure Silicon Silicon Carbide and Diamond

Journal of Applied Physics 35 3460 doi10106311713251 (1964)

49

67 Kirchhof M Schmid H J amp Peukert W Three-dimensional simulation of viscous-flow

agglomerate sintering Physical Review E 80 doi101103PhysRevE80026319 (2009)

68 Andersson S amp Dzhavadov L Thermal conductivity and heat capacity of amorphous SiO2

pressure and volume dependence Journal of Physics Condensed Matter 4 6209-6216 (1992)

69 Goldsmid H The thermal conductivity of bismuth telluride Proceedings of the Physical Society

Section B 203 2-9 (1956)

70 Streetman B amp Banerjee S Solid State Electronic Devices (5th Edition) (Prentice Hall 1999)

71 Apsley N amp Hughes H P TEMPERATURE-DEPENDENCE AND FIELD-DEPENDENCE OF

HOPPING CONDUCTION IN DISORDERED SYSTEMS Philosophical Magazine 30 963-972

doi10108014786437408207250 (1974)

72 Minnich A amp Chen G Modified effective medium formulation for the thermal conductivity of

nanocomposites Applied Physics Letters 91 073105 doi10106312771040 (2007)

73 Hurley D H Khafizov M amp Shinde S L Measurement of the Kapitza resistance across a

bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 47: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

47

(1996)

33 Harman T C Taylor P J Walsh M P amp LaForge B E Quantum dot superlattice

thermoelectric materials and devices Science 297 2229-2232 doi101126science1072886

(2002)

34 Venkatasubramanian R Siivola E Colpitts T amp OQuinn B Thin-film thermoelectric devices

with high room-temperature figures of merit Nature 413 597-602 doi10103835098012 (2001)

35 Lin Y-M Cronin S B Ying J Y Dresselhaus M S amp Heremans J P Transport properties

of Bi nanowire arrays Applied Physics Letters 76 3944-3946

doidoihttpdxdoiorg1010631126829 (2000)

36 Boukai A I et al Silicon nanowires as efficient thermoelectric materials Nature 451 168-171

doi101038nature06458 (2008)

37 Hochbaum A I et al Enhanced thermoelectric performance of rough silicon nanowires Nature

451 163-167 doi101038nature06381 (2008)

38 Minnich A J Dresselhaus M S Ren Z F amp Chen G Bulk nanostructured thermoelectric

materials current research and future prospects Energy amp Environmental Science 2 466

doi101039b822664b (2009)

39 Jeng M-S Yang R Song D amp Chen G Modeling the Thermal Conductivity and Phonon

Transport in Nanoparticle Composites Using Monte Carlo Simulation Journal of Heat Transfer

130 042410 doi10111512818765 (2008)

40 Poudel B et al High-thermoelectric performance of nanostructured bismuth antimony telluride

bulk alloys Science 320 634-638 doi101126science1156446 (2008)

41 Biswas K et al High-performance bulk thermoelectrics with all-scale hierarchical architectures

Nature 489 414-418 doi101038nature11439 (2012)

42 Wang X W et al Enhanced thermoelectric figure of merit in nanostructured n-type silicon

germanium bulk alloy Applied Physics Letters 93 193121 doi10106313027060 (2008)

43 Glassbrenner C amp Slack G Thermal Conductivity of Silicon and Germanium from 3degK to the

Melting Point Physical Review 134 A1058-A1069 doi101103PhysRev134A1058 (1964)

44 Bux S K et al Nanostructured Bulk Silicon as an Effective Thermoelectric Material Advanced

Functional Materials 19 2445-2452 doi101002adfm200900250 (2009)

45 Claudio T et al Nanocrystalline silicon lattice dynamics and enhanced thermoelectric properties

Physical chemistry chemical physics PCCP 16 25701-25709 doi101039c3cp53749h (2014)

46 Yusufu A et al Bottom-up nanostructured bulk silicon a practical high-efficiency thermoelectric

material Nanoscale 6 13921-13927 doi101039c4nr04470c (2014)

47 Schierning G et al Role of oxygen on microstructure and thermoelectric properties of silicon

nanocomposites Journal of Applied Physics 110 113515 doi10106313658021 (2011)

48 Kessler V et al Thermoelectric Properties of Nanocrystalline Silicon from a Scaled-Up Synthesis

48

Plant Advanced Engineering Materials 15 379-385 doi101002adem201200233 (2013)

49 Gresback R Nozaki T amp Okazaki K Synthesis and oxidation of luminescent silicon

nanocrystals from silicon tetrachloride by very high frequency nonthermal plasma

Nanotechnology 22 305605 doi1010880957-44842230305605 (2011)

50 Zhou S et al Boron- and Phosphorus-Hyperdoped Silicon Nanocrystals Particle amp Particle

Systems Characterization na-na doi101002ppsc201400103 (2014)

51 Kessler V et al Fabrication of High-Temperature-Stable Thermoelectric Generator Modules

Based on Nanocrystalline Silicon Journal of Electronic Materials 43 1389-1396

doi101007s11664-014-3093-6 (2014)

52 Yamda R Gresback R Yi D Okazaki K amp Nozaki T Plasma Synthesis of Silicon

Nanoparticles Optimization of Yield Size Distribution and Crystallinity 日本機械学会論文集

B 79 1616-1623 (2013)

53 Suzuki S Fabrication of hard metal Proceedings of the First Symposium on Spark Plasma

Sintering 13 (1996)

54 Nagata S Takahashi Y Yorizumi M amp Aso K Fine grained Mn-Zn ferrite produced by plasma

sintering method (PAS) Ferrites Proc ICF 6 1191-1194 (1992)

55 Parker W J Jenkins R J Butler C P amp Abbott G L Flash Method of Determining Thermal

Diffusivity Heat Capacity and Thermal Conductivity Journal of Applied Physics 32 1679

doi10106311728417 (1961)

56 Cowan R D Pulse Method of Measuring Thermal Diffusivity at High Temperatures Journal of

Applied Physics 34 926 doi10106311729564 (1963)

57 Shanks H Maycock P Sidles P amp Danielson G Thermal Conductivity of Silicon from 300 to

1400degK Physical Review 130 1743-1748 doi101103PhysRev1301743 (1963)

58 早稲田嘉夫 amp 松原英一郎 X 線構造解析 原子の配列を決める (内田老鶴圃 1998)

59 荒木信幸 フーリエの法則と非フーリエ熱伝導 伝熱 50 1-4 (2011)

60 Chen G Nanoscale energy transport and conversion a parallel treatment of electrons molecules

phonons and photons (Oxford University Press USA 2005)

61 Srivastava G P The Physics of Phonons (Taylor amp Francis 1990)

62 Ashcroft N W amp Mermin N D Solid State Physics (Saunders College 1976)

63 Klemens P The scattering of low-frequency lattice waves by static imperfections Proceedings of

the Physical Society Section A 68 1113 (1955)

64 Casimir H Note on the Conduction of Heat in Crystals Physica 5 495-500 (1938)

65 Esfarjani K Chen G amp Stokes H T Heat transport in silicon from first-principles calculations

Physical Review B 84 doi101103PhysRevB84085204 (2011)

66 Slack G A Thermal Conductivity of Pure and Impure Silicon Silicon Carbide and Diamond

Journal of Applied Physics 35 3460 doi10106311713251 (1964)

49

67 Kirchhof M Schmid H J amp Peukert W Three-dimensional simulation of viscous-flow

agglomerate sintering Physical Review E 80 doi101103PhysRevE80026319 (2009)

68 Andersson S amp Dzhavadov L Thermal conductivity and heat capacity of amorphous SiO2

pressure and volume dependence Journal of Physics Condensed Matter 4 6209-6216 (1992)

69 Goldsmid H The thermal conductivity of bismuth telluride Proceedings of the Physical Society

Section B 203 2-9 (1956)

70 Streetman B amp Banerjee S Solid State Electronic Devices (5th Edition) (Prentice Hall 1999)

71 Apsley N amp Hughes H P TEMPERATURE-DEPENDENCE AND FIELD-DEPENDENCE OF

HOPPING CONDUCTION IN DISORDERED SYSTEMS Philosophical Magazine 30 963-972

doi10108014786437408207250 (1974)

72 Minnich A amp Chen G Modified effective medium formulation for the thermal conductivity of

nanocomposites Applied Physics Letters 91 073105 doi10106312771040 (2007)

73 Hurley D H Khafizov M amp Shinde S L Measurement of the Kapitza resistance across a

bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

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謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 48: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

48

Plant Advanced Engineering Materials 15 379-385 doi101002adem201200233 (2013)

49 Gresback R Nozaki T amp Okazaki K Synthesis and oxidation of luminescent silicon

nanocrystals from silicon tetrachloride by very high frequency nonthermal plasma

Nanotechnology 22 305605 doi1010880957-44842230305605 (2011)

50 Zhou S et al Boron- and Phosphorus-Hyperdoped Silicon Nanocrystals Particle amp Particle

Systems Characterization na-na doi101002ppsc201400103 (2014)

51 Kessler V et al Fabrication of High-Temperature-Stable Thermoelectric Generator Modules

Based on Nanocrystalline Silicon Journal of Electronic Materials 43 1389-1396

doi101007s11664-014-3093-6 (2014)

52 Yamda R Gresback R Yi D Okazaki K amp Nozaki T Plasma Synthesis of Silicon

Nanoparticles Optimization of Yield Size Distribution and Crystallinity 日本機械学会論文集

B 79 1616-1623 (2013)

53 Suzuki S Fabrication of hard metal Proceedings of the First Symposium on Spark Plasma

Sintering 13 (1996)

54 Nagata S Takahashi Y Yorizumi M amp Aso K Fine grained Mn-Zn ferrite produced by plasma

sintering method (PAS) Ferrites Proc ICF 6 1191-1194 (1992)

55 Parker W J Jenkins R J Butler C P amp Abbott G L Flash Method of Determining Thermal

Diffusivity Heat Capacity and Thermal Conductivity Journal of Applied Physics 32 1679

doi10106311728417 (1961)

56 Cowan R D Pulse Method of Measuring Thermal Diffusivity at High Temperatures Journal of

Applied Physics 34 926 doi10106311729564 (1963)

57 Shanks H Maycock P Sidles P amp Danielson G Thermal Conductivity of Silicon from 300 to

1400degK Physical Review 130 1743-1748 doi101103PhysRev1301743 (1963)

58 早稲田嘉夫 amp 松原英一郎 X 線構造解析 原子の配列を決める (内田老鶴圃 1998)

59 荒木信幸 フーリエの法則と非フーリエ熱伝導 伝熱 50 1-4 (2011)

60 Chen G Nanoscale energy transport and conversion a parallel treatment of electrons molecules

phonons and photons (Oxford University Press USA 2005)

61 Srivastava G P The Physics of Phonons (Taylor amp Francis 1990)

62 Ashcroft N W amp Mermin N D Solid State Physics (Saunders College 1976)

63 Klemens P The scattering of low-frequency lattice waves by static imperfections Proceedings of

the Physical Society Section A 68 1113 (1955)

64 Casimir H Note on the Conduction of Heat in Crystals Physica 5 495-500 (1938)

65 Esfarjani K Chen G amp Stokes H T Heat transport in silicon from first-principles calculations

Physical Review B 84 doi101103PhysRevB84085204 (2011)

66 Slack G A Thermal Conductivity of Pure and Impure Silicon Silicon Carbide and Diamond

Journal of Applied Physics 35 3460 doi10106311713251 (1964)

49

67 Kirchhof M Schmid H J amp Peukert W Three-dimensional simulation of viscous-flow

agglomerate sintering Physical Review E 80 doi101103PhysRevE80026319 (2009)

68 Andersson S amp Dzhavadov L Thermal conductivity and heat capacity of amorphous SiO2

pressure and volume dependence Journal of Physics Condensed Matter 4 6209-6216 (1992)

69 Goldsmid H The thermal conductivity of bismuth telluride Proceedings of the Physical Society

Section B 203 2-9 (1956)

70 Streetman B amp Banerjee S Solid State Electronic Devices (5th Edition) (Prentice Hall 1999)

71 Apsley N amp Hughes H P TEMPERATURE-DEPENDENCE AND FIELD-DEPENDENCE OF

HOPPING CONDUCTION IN DISORDERED SYSTEMS Philosophical Magazine 30 963-972

doi10108014786437408207250 (1974)

72 Minnich A amp Chen G Modified effective medium formulation for the thermal conductivity of

nanocomposites Applied Physics Letters 91 073105 doi10106312771040 (2007)

73 Hurley D H Khafizov M amp Shinde S L Measurement of the Kapitza resistance across a

bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 49: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

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67 Kirchhof M Schmid H J amp Peukert W Three-dimensional simulation of viscous-flow

agglomerate sintering Physical Review E 80 doi101103PhysRevE80026319 (2009)

68 Andersson S amp Dzhavadov L Thermal conductivity and heat capacity of amorphous SiO2

pressure and volume dependence Journal of Physics Condensed Matter 4 6209-6216 (1992)

69 Goldsmid H The thermal conductivity of bismuth telluride Proceedings of the Physical Society

Section B 203 2-9 (1956)

70 Streetman B amp Banerjee S Solid State Electronic Devices (5th Edition) (Prentice Hall 1999)

71 Apsley N amp Hughes H P TEMPERATURE-DEPENDENCE AND FIELD-DEPENDENCE OF

HOPPING CONDUCTION IN DISORDERED SYSTEMS Philosophical Magazine 30 963-972

doi10108014786437408207250 (1974)

72 Minnich A amp Chen G Modified effective medium formulation for the thermal conductivity of

nanocomposites Applied Physics Letters 91 073105 doi10106312771040 (2007)

73 Hurley D H Khafizov M amp Shinde S L Measurement of the Kapitza resistance across a

bicrystal interface Journal of Applied Physics 109 083504 doi10106313573511 (2011)

50

謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます

Page 50: 修士論文 - 東京大学3 序論 1.1 熱電変換 熱電変換とは温度差を電気に直接変換することであり,再生可能エネルギー源の一つと して注目されている.その原理は,物質の両端に温度差をかけることによってキャリアが高

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謝辞

指導教員である塩見先生には多大なご指導およびご助言をいただき深く感謝申し上げま

すまた丸山先生および千足先生には学会発表等の大きな発表の際などにご助言をいただ

き誠にありがとうございました志賀さんには理論の基礎James さんには英語井ノ上さ

んには実験面で大変お世話になりました誠にありがとうございます堀さんおよび小宅さ

んはテーマが違うにもかかわらずいつも相談に乗ってくださいましたありがとうござい

ましたM1 は人数が少ないにもかかわらず研究室の雑用などを色々やってくれました感

謝しています最後に塩見研丸山研の M2 のみんなとは真面目な話もふざけた話も色々し

ました本当に充実した 2 年間でしたみなさんに深く感謝申し上げます