京菓子 太田 達 -...
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京菓子とは、「有職故実にもとづく儀式典礼に用いる菓子、または茶道に用いる菓子」と定義される。京都は、気候の変化に富む盆地で、水がよく、千年にわたる貴族文化が熟成され、茶道が生まれた。 日本の文化はオープンとクローズの繰り返しの中で育まれてきた。オープンの時代に相手国の文物をとりいれ、クローズの時期に熟成する。菓子は日本文化の凝縮ともいえ、菓子文化を紐解けば文化の背景と歴史がよくわかる。
京菓子は、刻一刻うつろう自然の美を、少しずつ先取りしながら写しとっている。室内に自然をとりこむ日本人の知恵と美意識が凝縮されている。 茶会では、1席ごとに、さまざまなモノを組みあわせて、その席の客へのおもてなしの心を総合的に表現する。床の間の掛軸がテーマとなり、それにあわせて、茶碗や茶器、香り等を選ぶ。時に、ただ一度だけのために制作し、取り合わせることもある。菓子も、1席ごとのテーマにあわせて、1回1回、味、形、色をデザインする。朝の席、昼の席、夜の席と、光のうつろいや器の色、質感によって、菓子の色を微妙に変えていく。客が男性か女性か、年齢や好みによって味を変える。客と亭主(ゲストとホスト)は、1席のなかで、モノを通してコミュニケーションをする。菓子はそのための最も重要なツールである。
茶席菓子には、濃茶のための主菓子と薄茶のための干菓子がある。主菓子は抽象的、干菓子は具象的な意匠に作る。 主菓子づくりは、床の間の軸のテーマを受けて茶席のストーリーを構築するなかで、重要なことば(キーワード)を考えながらスケッチをすることからはじめる。これを徹底的に抽象化させて、50グラムの三次元世界を形づくる。さらに、これに「銘」をつけることがポイントである。「銘」は和歌や物語の文学世界を背景にしてつけられる。 京菓子は、目で見て、銘を耳で聞いて、味わう。客もまた、文学的な素養の上に五感をフルに働かせて感じ取ることが必要である。
京菓子づくりは機械化されていない。1回ごとに、1人 1人のために作る。食べたら消えてなくなる、本当に一期一会の存在である。 菓子は、人と人をつなぐコミュニケーションツールとして重要な役割を果たしている。
京菓子
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(作図:太田達)
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有職菓子御調進所 老松www.oimatu.co.jp
太田 達