活動銀河核における ラインフォース駆動型円盤風の...
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野村真理子(お茶の水女子大学/国立天文台 D3) 共同研究者:大須賀健(国立天文台),
和田桂一(鹿児島大学)、高橋博之(国立天文台)
活動銀河核における ラインフォース駆動型円盤風の 輻射流体シミュレーション
ジェット
活動銀河核とは
母銀河
活動銀河核(Active galactic nucleus; AGN)ジェットや強力な 輻射を始めとした活動性を示す銀河の中心核部分 巨大ブラックホールとそれを取り巻く降着円盤がエネルギー源 輝線を放射する
ガス雲
降着円盤 (連続光源)
ブラック ホール
ジェット
トーラス(吸収体)
AGNの輻射スペクトルの特徴 (連続光、輝線、吸収)を再現する 現象論的モデル
一部のAGNの輻射スペクトルに青方偏移した吸収線が発見, トーラスでは青方偏移が説明できない ⇒ アウトフロー
Broad absorption line (BAL): CIV, SiIVなどによる吸収線, アウトフロー速度~10,000km s-1
クェーサーの~20%で検出
Ultra-fast outflow (UFO): X線観測で見つかった新種のアウトフロー FeXXV, FeXXVIによる吸収線, アウトフロー速度~0.1c-0.3c 質量放出率は降着率と同等 エネルギー放出率はジェットに匹敵 Seyfert銀河の約半数で検出 UFOの観測例
FeXXV
Tombesi et al. (2011)
活動銀河核吸収線とアウトフロー(1)
coun
ts s
-1 k
eV-1
4 6 8 10 observed energy (keV)
★ 質量降着が減るため、ブラックホールの成長が遅くなる ★ 質量放出、エネルギー放出が大きく、母銀河の星形成に影響する可能性
UFOが注目される理由
UFOの観測事実と理論モデルに課される条件 (1) 約半数のAGNで検出 ⇒ jetのような細い流れではない (2) 速度は光速の10-30% ⇒ ブラックホールごく近傍からのアウトフローではない (3) 鉄の吸収線 ⇒ アウトフローは完全電離状態ではない (4) sub-Eddington光度のAGNから噴出 ⇒ Thomson散乱による力では 飛ばせない
活動銀河核吸収線とアウトフロー(2)
吸収線あり
吸収線なし observer
Elvis (2000)
© Elvis
ブラックホール
降着円盤
円盤風
アウトフローの正体は円盤風だと考えられているが 円盤風の構造や噴出メカニズムは不明 円盤風モデル
ラインフォース駆動型円盤風モデル
X線が強く原子が電離されてしまう
Line forceが働かない
領域AでX線が吸収され Line force が 働くようになる
UVが吸収され Line forceが弱くなる
領域 A 領域 B 領域 C 100Rs以下 100~1000Rs 1000Rs以上
降 着 円 盤 ブラックホール
X線源 UVが最も 強い領域
金属元素の状態 高階電離 中間電離 中間電離
円盤風
輻射 UV,X UV なし
UV光の束縛‐束縛遷移吸収によって受ける力 (ラインフォース)で生じる円盤風 円盤風の加速と電離状態を同時に説明できる sub‐Eddingtonでも加速が可能、噴出場所はブラックホールから離れた領域
ラインフォース駆動型円盤風モデル
X線が強く原子が電離されてしまう
Line forceが働かない
領域AでX線が吸収され Line force が 働くようになる
UVが吸収され Line forceが弱くなる
領域 A 領域 B 領域 C 100Rs以下 100~1000Rs 1000Rs以上
降 着 円 盤 ブラックホール
X線源 UVが最も 強い領域
金属元素の状態 高階電離 中間電離 中間電離
円盤風
輻射 UV,X UV なし
UV光の束縛‐束縛遷移吸収によって受ける力 (ラインフォース)で生じる円盤風 円盤風の加速と電離状態を同時に説明できる sub‐Eddingtonでも加速が可能、噴出場所はブラックホールから離れた領域
波長
UV強度
加速 UV 加速 UV
波長
UV強度
X線
※ X線照射により電子がはぎ取られると、ラインフォースは働かない
金属元素が束縛‐束縛遷移によってUV光を吸収することで運動量を得る
ドップラーシフトにより、下流でも加速が効く
光源
原子核
電子
ラインフォースは密度、速度、電離度に依存する
ラインフォースとは 上流 下流 金属元素
これまでの研究
~10,000km/s
BH 降着円盤
密度
Proga & Kallman (2004) Nomura et al. (2013)
流線
BH 降着円盤
2次元輻射流体シミュレーション Proga et al. (2000), Proga & Kallman (2004) モチベーション: BALを説明する 典型的なパラメーターについてのみ計算
流体要素の軌道計算 Risaliti & Elvis (2010), Nomura et al. (2013) 広いパラメーター領域で、円盤の定常構造を調査
研究目的
1) 広いパラメータ領域で2次元輻射流体シミュレーションを行い、ラインフォース駆動型円盤風の噴出メカニズムと構造を調べる
2) シミュレーション結果の電離度、速度、柱密度をUFOのX線観測と比較する
ラインフォースを含む輻射流体シミュレーション 基礎方程式
(1)質量保存の式
(2)運動方程式
(3)エネルギー方程式
ラインフォースを含む輻射力
輻射加熱・冷却
★ラインフォースを含む輻射力
(Proga et al. 2000) コンプトン加熱/冷却、
電離、再結合による加熱/冷却、 制動放射、輝線放射による冷却
ラインフォース (Stevens & Kallman 1990)
電子散乱による輻射力
電離パラメーターξ , 密度、速度勾配の関数
M
依存性の傾向
密度
速度勾配
ξ
電離パラメータ:
30RS 1500RS r
z
重力源: ブラックホール X線光源: 中心点光源 UV光源: 降着円盤 計算領域
※ 輻射はUVとXの2色に分けて扱う ※ 輻射場を外場のように扱う
計算結果
Proga & Kallman (2004)と同様な結果が得られた
ラインフォースによって 円盤風が噴出
ブラックホール
降着円盤
vr~0.3-0.4c
ラインフォースによる加速で 速度の速い円盤風が噴出
BH近傍の密度の高い円盤風により X線が吸収される ⇒電離度が小さくなる ⇒ラインフォースが働く
密度 電離パラメータ
速度場
UFOが観測される条件: 電離度 を満たす物質の: (1) 最大速度10,000 km s‐1以上, (2) 柱密度1022cm‐2以上
~70°から観測した場合にUFOの特徴が現れる
UFOの観測確率 [(UFOが観測される立体角)/4π] の時間平均は~20%
UFOの観測との比較
UFOの特徴は数10日‐数ヶ月スケールで変動する
UFO UFO UFO UFO
観測角度θ °
視線に沿って電離パラメータと速度、柱密度をUFOの観測と比較
視線
視線に沿って 電離パラメータ 速度、柱密度を調べる
ブラックホール質量及びエディントン比依存性
3.5%
密度
20%
27%
0% 24%
の範囲でUFOの 観測確率は20-30%
UFOは観測されない
UFOは観測されない (観測確率が 非常に小さい)
Summary
2次元輻射流体シミュレーションを行い、ラインフォース駆動型円盤風を調べた。 funnel型の円盤風が噴出し、速度は0.3c-0.4cであった。 シミュレーション結果の電離度、速度、柱密度はUFOのX線観測と合致した。 UFOは の範囲で観測されることを予言した。 UFOの特徴は数10日~数ヶ月で時間変動を示すことを予言した。
密度