大島高校 事業名「オックスフォード×奄美€¦ ·...

奄美市では、自校の特色を掘り起し魅力を高める事業 や学校の活性化を図る事業に対して助成を行っておりま す(年間予算約500万円)。今回、特徴的な取組を行っ ている事業を取材しました。 魅力ある学校づくり 支援事業 ×■概 平成 29 年8月26日、 大島高校の生徒とオックスフォードの大学院生らが、 地域活性化や自国につい て互いにプレゼンテーションし、 意見交換を行いました。 大島高校3年生の有馬果歩さんと岡村萌黄さんは、 オックスフォードの大学生に対し、 「奄美の問題解決 とさらなる経済発展」 と 「奄美の法教育」 をテーマに、 英語でプレゼンテーションを実施。 作成した資料は、 まずは奄美についての課題をまとめ、 それを日本語と英語のバージョンで作成し、 パワーポイントを使用しプレ ゼン資料を作成。 かつ、 英語で発表を行い、 英語でディスカッションを行うという離れ業をやってのけています。 大島高校 3年7組 岡村萌黄さん テーマ 「奄美の法教育」 大島高校 3年7組 有馬果歩さん テーマ 「奄美の課題解決とさらなる経済発展」 資料は、 ①日本語 ②英語 ③パワポプレゼン資料 の3種類を作成。 これ らを英語で発表した上、 英語でディスカッションを 行った。 【魅力ある学校づくり支援事業とは】

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 奄美市では、自校の特色を掘り起し魅力を高める事業や学校の活性化を図る事業に対して助成を行っております(年間予算約 500 万円)。今回、特徴的な取組を行っている事業を取材しました。

魅力ある学校づくり支援事業

大島高校

 

事業名「オックスフォード×奄美 

奄美市の課題・可能性を探る」

■概 要 平成 29 年8月26日、 大島高校の生徒とオックスフォードの大学院生らが、 地域活性化や自国について互いにプレゼンテーションし、 意見交換を行いました。 大島高校3年生の有馬果歩さんと岡村萌黄さんは、 オックスフォードの大学生に対し、 「奄美の問題解決とさらなる経済発展」 と 「奄美の法教育」 をテーマに、 英語でプレゼンテーションを実施。 作成した資料は、まずは奄美についての課題をまとめ、 それを日本語と英語のバージョンで作成し、 パワーポイントを使用しプレゼン資料を作成。 かつ、 英語で発表を行い、 英語でディスカッションを行うという離れ業をやってのけています。

大島高校 3年7組 岡村萌黄さんテーマ 「奄美の法教育」

大島高校 3年7組 有馬果歩さんテーマ 「奄美の課題解決とさらなる経済発展」

← 資料は、①日本語②英語③パワポプレゼン資料の3種類を作成。 これらを英語で発表した上、英語でディスカッションを行った。

【魅力ある学校づくり支援事業とは】

熱心な討論が行われた

2日目は中学生も参加しました

■有馬果歩さん 「奄美の課題解決とさらなる経済発展」 ①遊休農地の拡大,②高齢者の貧困層の拡大,③島の過疎化について課題提起。 解決策として①黒糖化粧品の生産拡大,②農家とデイサービスの連携強化,③奄美での研究者会議の実現を提案。 これらを有効に生かすために 「地域通貨の普及拡大(ほ~らしゃ券など)」を活かし、 内需拡大による経済発展も提案した。

■岡村萌黄さん 「奄美の法教育」 ①全国での法教育の状況,②奄美での法教育の状況,③法教育の重要性についての論旨を展開。 そのうえで奄美で法教育を普及するための法教育のカリキュラム," しま LAW じかん " を提案。 これは、 1. 奄美の小中高校 2. 本土の大学の法学部 3. 行政や企業の3つの機関が連携し、 年代別(小中高)の法教育プランを実施する内容。 「小学高から高校校まで約 12 年間の法教育を通して奄美の子供たちは確かな法的思考力をつけ,自分で考える力つけさせることにつながる」 と展開した。

大島高校地歴公民教諭橋口 央先生

 オックスフォードの大学院生が奄美に来る機会があったので、 是非大島高校生と交流したいと高校生に呼びかけました。 「今後の進路で目指している法学部門や行政職部門の観点から奄美のことを英語でプレゼンしないか」 と二人(有馬・岡村)に声掛けしたら二人とも英検準一級をもっているのですんなり OK しました。 受験勉強や通常のテストの合間に1か月くらい準備し、 すべて彼女たちが資料づくりを行いました。 教諭から見ても大変レベルが高くてびっくりでしたよ。

Q.どんな内容の課

題をまとめたのです

か?

A.(有馬) 

 

奄美の課題として、

一つ目は遊休農地・

耕作放棄地の拡大、

2つ目は高齢者の貧

困問題、3つ目は、

過疎化についてとり

あげました。

 

遊休農地の拡大に

関しては、黒糖を使っ

て化粧品をつくり、その生産規模を拡

大するというもので、遊休農地をサト

ウキビ畑で再生して、工場を廃校舎な

どを使って再生してサトウキビで作っ

た化粧品を生産していくべきだと考え

ました。

 

2つ目の高齢者の貧困問題について

は、生活保護率が奄美大島は日本3位

で、その受給者のほとんどが高齢者で

あり、高齢者の貧困が大きな問題です。

それを解決するには、高齢者が退職後、

農業(家庭菜園)をしていただいてい

る方たちがコミュニティとしてまと

まっていただき、そこで作った野菜を

デイサービスに提供し報酬をもらえる

システムを構築する。そうすれば退職

後も給料をもらえるということで、生

活が保障される。

 

最後の過疎化については、奄美大島

は希少生物や独自の生態系が発達して

いるので、そういったものを研究の場

として、提供する。

 

国内はもちろん海外の研究者も呼ん

でシンポジウムなどを開いたり、どう

やって環境保全をするかなどを研究す

る場とし、知名度を上げて、奄美の自

然をアピールし、観光客を増加させる

という内容を提案しました。

Q.上記の3つのテーマを課題とした

理由を教えてください。

A.(有馬)

 

遊休農地に関しては、本とかニュー

スとかで奄美のことを調べて課題を見

つけました。高齢者の貧困に関しては、

私の中で、奄美に住む中で問題視して

いる課題でした。

Q.プレゼン資料をつくるなかで難し

かったことは何ですか?

A.(有馬)

 

解決策を探す中で迷ったところが

あって、特に高齢者の貧困というとこ

ろが解決策を探すのが難しかった。生

活が苦しいのだから生活保護を増やせ

ば良い、という問題ではなくて、生活

水準をどうあげるかというのがやはり

難しく、そこは新聞や先生方からのア

ドバイスを受けました。どうすれば問

題の本質を解決できるかを考えまし

た。

Q.オックスフォードの大学生にプレ

ゼンした際の反応はどうでしたか?

A.(有馬)

 

過疎化に対して、観光客を増やすこ

とも大事だが、定住者を増やすことが

大事であることを指摘されました。実

際に奄美市役所で現状の状況を聞いて

きました。データなどをもらって雇用

者数が減ってきているとか、産業が衰

退しているなどの現状が分かり、雇用

者を増やすことが大事だということを

学びました。

 (橋口先生)地域の経済については

「ほ~らしゃ券」の説明を行いました。

(有馬)地域通貨だと少し割引できる

ようにして、島の中でなるべく地域通

貨を使ってもらうようにすれば、経済

は流れ(流通速度)が大事だというこ

とを聞いて、ほーらしゃ券を使って経

済を回すことが大事だと考えました。

Q.将来の夢を教えてください。

(有馬)総務省自治行政局で地域活性

化の推進や地方自治制度の立案を行い

たいです。

 

私は今までは発展途上国の政策立案

をしたいと考えていましたが、オック

スフォードの大学生との交流を通し

て、自分の身の回りのことについて問

題意識を持つようになりました。

 

私は転校してきて都会をみたり、田

舎の衰退などをみてきて、私がしたい

のはそっちの方(地域活性化)なのか

なと考えました。他国の過疎地でクリ

エイティブな地域活性化策があったり

したので、それを取り入れたりすれば

よいのかなと考えました。

Q.今後、都会の大学に進学し、就職

すると思いますが、奄美大島にこんな

貢献をしたいという希望があれば教え

てください。

A.(有馬)

 

私は、地域を活性化するという点で、

最初は奄美市役所で働くのもいいのか

なと考えていましたが、やはり地方は

国からの制約で出来ないことも多いこ

とを知ったので、地方自治制度を変え

て、地方に権限を持たせ、それぞれの

風土に合った行政サービスを提供する

ことが大事だなと考え、総務省で働き

たいと思いました。

 

将来は、総務省でよりよい地方自治

制度を立案して、地方公共団体がより

よい行政サービスを提供できるように

したいと考えています。また他国の過

疎地と共同して地域活性化策を立案し

たり、日本の成功事例などを提供でき

たらと思います。

 将来は、総務省でよりよい地方自治制度を立案して、

地方公共団体がよりよい行政サービスを提供できるよ

うにしたいと考えています。 【有馬果歩さん】

Q.岡村さんはどのような内容を課題

としましたか。

A.(岡村)

 

奄美大島で学生として暮らしてき

て、法教育の機会がないなと思ってい

ました。私自身が弁護士になりたくて、

法律に興味があったのですが、そうい

う自分自身の将来の夢から考えて、新

聞とかも呼んでいたら、全国では本土

の学校では法教育を受ける機会があっ

たり、弁護士の方と実際に会う機会が

あり、都会では法律が結構身近である

と思っています。

 

奄美市では学校でそういう教育(法

教育)を受ける機会がないなと思って

いて、プレゼンの機会をもらったので、

課題として法教育の機会がないという

現状をとらえました。

Q.具体的にはどのような内容のプレ

ゼンをおこないましたか。

A.(岡村)

 

プレゼンで話した

内容は、奄美には5

人くらいしか弁護士

がいなくて、その弁

護士の方々が法教育

を行うのは現実的に

は難しいので、学校・

企業・市役所と本土

の大学の法学部のゼ

ミ生をつなげた法教

育ができるのではな

いかという提案を行

いました。

 

大学のゼミの教授が、ゼミ生を奄美

に送ることにより、大学生も教えるこ

とにより法律を学びなおすことができ

るし、奄美の子どもたちも幼いときか

ら法律に触れておくことで、法的思考

力や困ったときに弁護士に頼るという

一つの選択肢が得られるかなと思って

おり、そういう法教育の制度をつくっ

たらどうかという提案を行いました。

Q.プレゼン資料をつくるなかで難し

かったことは何ですか?

A.(岡村)

 

私の場合は、スライドをつくること

が今まであまりなくて難しかったで

す。 

 

文章は今まで考えていたことなの

で、すぐに書けましたが、スライドを

自分の文章にあわせて作成するのが難

しい。言葉が多くてもtoo 

much

し、逆に言葉が少なすぎても伝わらな

い。対応させてうまく伝わるスライド

をつくることが難しかったです。

Q.オックスフォードの大学生にプレ

ゼンした際の反応はどうでしたか?

A.(岡村)

 

私の場合は法教育だったので、批判

的思考力の話になり、答は出ない問い

ではあったが、オックスフォード生の

方から「批判的な思考が高まるのは本

当に良いことなのだろうか?」という

問いを受けました。小学生からの法プ

ログラムの提案を行いましたが、小学

生から何事に対しても疑う教育になっ

てしまうと、他の暗記科目に対しても

疑問を持ったり、批判的にとらえてし

まう可能性があるという指摘をうけま

した。

 

そこは難しい問題ですが、暗記も大

事であることをしっかり教えていく、

知識がないと思考も生まれないと私は

思っているので、どちらもできる奄美

の子どもたちを育んでいきたいと思い

ました。

Q.将来の夢を教えてください。

A.(岡村)弁護士です

Q.今後、都会の大学に進学し、その

後就職すると思いますが、奄美大島に

こんな貢献をしたいという希望があれ

ば教えてください。

A.(岡村)

 

私は奄美大島で弁護士として法教育

分野を進めていきたいと考えていま

す。 

 

法教育は小学生からやった方がよい

と思っており、法教育をすることで、

子どもたち自分の権利を主張すること

ができる。法と聞くと守らないといけ

ないという認識があるが、憲法などを

みると自分たちの権利のことも書いて

ある。自分の守られる権利を知ってほ

しい。

 

いじめ、体罰、家庭での虐待など子

どもたちの権利が守られてない現状が

あります。また弁護士から奄美大島は

ネグレクトが多い現状があると聞いて

おり、子どもたちが法を学ぶことで泣

き寝入りせずに、権利を学ぶことで子

どもたちが声を上げられる島をつくり

たいです。奄美大島で成功したら他の

離島でもそういう仕組みをつくりた

い。

 

都会で何年か働いてきたら、奄美大

島に戻って貢献したいです。

 私は将来、奄美大島で弁護士として法教育分野を進

めていきたいと考えています。 【岡村萌黄さん】

○大島高校Yさん 「同級生のプレゼンで奄美の可能性を確認でき、それに対する高いレベルの助言を聞けたので、めっちゃ勉強になりました。私も大学を出たら奄美に帰ってきて、奄美と世界をつないでいきたいです。オックスフォードの人たちと奄美の観光をしたい。○大島高校Tさん 「すべてにおいて良かったです!!英語で話そうとする意欲も出たし、オックスフォードの人たちのように知識を増やしたいと思った。様々な視点から物事を見て考えながら、身近な問題からもっと興味をもって関わっていこうと思った。○名瀬中Hさん 「昨年もこの活動に参加したのですが、昨年より自分から積極的に英語を話すことができました。生きた英語をきくことができたことと、外国の大学について知ることができとてもよかったです。

Q.先生、事業に取り組むきっかけを

教えてください。

A.(橋口先生)

 

奄美大島の魅力や課題を、若い世代

に感じて欲しいからです。次世代を担

う奄美の中高生がオックスフォード大

大学院生と共に学ぶことで、日頃見て

いる島の現状を違う視点から見ること

ができ、新たな価値観に触れる良い機

会を提供できると感じました。

Q.取組の中で苦労した点について教

えてください。

A.(橋口先生)

 

授業や学校行事等、毎日の通常業務

の中で、本事業に関わる時間的・人的

ソースをいかに確保し、また広報して

いくか、非常に苦労しました。奄美市

のご支援とオックスフォード生や新聞

社のご協力、そして大高生の努力の賜

物です。本当にありがっさまりょーた。

Q.この事業のやりがいは、どんなと

ころにありますか。

A.(橋口先生)

 

大好きな奄美大島について、教育の

現場から貢献できることはないかと常

に考えていますので、今回の事業も本

当にワクワクしながら進めることがで

きました。好きな人に贈り物をする時

のようなワクワク感といえば、伝わる

でしょうか?・・・伝わらないか(笑)

Q.この事業の魅力は何でしょうか。

A.(橋口先生)

 

事業を進める中で協力者が次から次

へと現れる点が大きな魅力です。島の

方々の予想以上に、奄美は国内外から

熱い注目を浴びています。今後もグロー

バルな協力者と「神ぬ引き合わせに拝

までぃ」、奄美大島の持つ魅力発信や課

題解決に取り組んでいきます。

Q.この事業を通して高校生に期待す

ることや今後のビジョンなどについて

教えてください。

A.(橋口先生)

 

奄美大島の若い世代は、本当に島の

宝です。大人の期待をはるかに超えた

可能性と底力を秘めています。若い力

とグローバルな外部資源を生かして、

奄美の持つ魅力や課題解決を提案・実

践しながら学校を核にした地域活性化

プランを具体化していきたいです。

Q.広報紙の読者(奄美市民)にむけて、

大島高校やこの事業についてのPRを

お願いします。

A.(橋口先生)

 

私たち大人も、若い世代から刺激を

受けて、もっと楽しい島を創っていき

ましょう。島を盛り上げたい方、面白

いアイディアのある方、この記事を読

んでピン!ときた方、どうぞお気軽に

大島高校「地域連携係」橋口へご連絡

ください。この世代、孫の世代の島っ

ちゅが、いつまでも幸せに暮らせるよ

うに未来へ楽しく種まきをしましょう。

 奄美大島の若い世代は本当に島の宝です。大人の

期待をはるかに超えた可能性と底力を秘めています。

 【地歴公民教諭 橋口 央先生】

参加した生徒さんたちの感想