表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易...

14
1 コスタリカ経済 定期報告 (2016年7-9月) 2016年12月 在コスタリカ日本大使館 経済班 ※出典:コスタリカ中央銀行、財務省、貿易省(COMEX)及び貿易振興機構(PROCOMER)(7-9月分数値)。主な出来 事については当地新聞記事 1 による。 経済活動指標 ●リモン県シキレス市に建設された中米最大規模のレベンタソン水力発電所の開所式典が, 9月16日に開催され,同日からフル稼働を開始した。同発電所の最大発電量は305. 5MWであり,52.5万世帯に電気の供給が可能である。この水力発電所のフル稼働に より,コスタリカでは水力,風力,地熱,バイオマス,太陽光などから3,000MWの 電力を生産できるようになった。 ●バナナやタマネギなどの一部の農産物の生産力が回復したため9月の農林水産業の増加 率は15.5%と高いものとなった(表1)。 1 ラ・ナシオン紙,ラ・プレンサリブレ紙,ラ・レプブリカ紙,エル・フィナンシエロ紙 -20.0 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 表1 経済活動指標(前年同月比) 全体 農業・林業・漁業 鉱山 製造業 電気・水道 建設 商業 運輸・倉庫 宿泊業・食品サービス 通信 金融・保険 不動産 公的事務及び社会保険 教育及び衛生 その他 %

Upload: others

Post on 21-Jun-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

1

コスタリカ経済 定期報告 (2016年7-9月) 2016年12月 在コスタリカ日本大使館 経済班

※出典:コスタリカ中央銀行、財務省、貿易省(COMEX)及び貿易振興機構(PROCOMER)(7-9月分数値)。主な出来

事については当地新聞記事 1による。

1 経済活動指標 ●リモン県シキレス市に建設された中米最大規模のレベンタソン水力発電所の開所式典が,

9月16日に開催され,同日からフル稼働を開始した。同発電所の最大発電量は305.

5MWであり,52.5万世帯に電気の供給が可能である。この水力発電所のフル稼働に

より,コスタリカでは水力,風力,地熱,バイオマス,太陽光などから3,000MWの

電力を生産できるようになった。

●バナナやタマネギなどの一部の農産物の生産力が回復したため9月の農林水産業の増加

率は15.5%と高いものとなった(表1)。

1 ラ・ナシオン紙,ラ・プレンサリブレ紙,ラ・レプブリカ紙,エル・フィナンシエロ紙

-20.0

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

表1 経済活動指標(前年同月比)

全体

農業・林業・漁業

鉱山

製造業

電気・水道

建設

商業

運輸・倉庫

宿泊業・食品サービス

通信

金融・保険

不動産

公的事務及び社会保険

教育及び衛生

その他

(%)

Page 2: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

2

2 貿易 ●2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前

年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。

伸び率に関してはラ米全体で見た場合でも第一位となる。主要輸出品は,コーヒー,バナナ,医

療機器である。医療機器に関しては,日本や台湾への輸出が伸びている。

●第3四半期の輸出入もほぼ安定的に推移し(表2及び表4),前年9月と比較して貿易収支

は改善傾向にある(表3)。しかしながら,輸出に関しては10月段階で COMEX の今年度

の目標値の76%しか達成されておらず更なる輸出促進が期待されている ●メキシコ産アボガドのハス種から炭疽病が見つかったことから,コスタリカは2015年5

月からその輸入を禁止しているが, 権益当局の判断により依然輸入が再開される見通しはない。

現在コスタリカにはメキシコ産よりも高価なチリ産やペルー産のハス種が代わりに輸入されて

いる。

811.8 806.7 752.6 735.1

875.1 882.7 904.4 959.4

856.9 776.9 762.5

814

1,364.6 1,387.4

1,275.6 1,213.0 1,191.9

1,260.8 1,349.6 1,317.1

1,368.6

1,214.8

1,318.2 1,260.2

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

表2 貿易額推移

輸出

輸入

(100万ドル)

Page 3: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

3

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

2015年9月 2016年9月 輸出 6,917.8 7,435.0

輸入 11,195.8 11,300.5

貿易収支 -4,278.0 -3,865.5

表3 年初からの累積貿易額(対前年同期比)

輸出

輸入

貿易収支

(100万ドル)

-20.0

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

2015年10月

2015年11月

2015年12月

2016年1月

2016年2月

2016年3月

2016年4月

2016年5月

2016年6月

2016年7月

2016年8月

2016年9月

輸出 -16.9 -15.7 -14.5 0.5 6.9 4.3 8.4 9.4 8.7 6.5 6.5 7.4

輸入 -11.8 -10.4 -9.8 0.7 0.3 -0.7 1.5 2.6 4.2 1.4 2.0 2.4

表4 貿易増加率(累積額対前年同月比)

輸出

輸入

(%)

Page 4: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

4

3 財政 ●政府の歳出削減及び徴税努力により,財政赤字は昨年比で改善傾向にある(表5)。 ●アリアス第二次政権から現ソリス政権の歴代三政権でコスタリカの債務残高は3倍以上

となった。アリアス第二次政権の財政赤字対 GDP 比は4%,累積財政赤字額は3兆9千億

コロンであったが,2016年の7月時点で累積財政赤字額は13兆4千億コロンであり,

今年の財政赤字対 GDP 比は6%と予想されていたが,4%程度に抑えられる見込み。政府

債務残高対 GDP 比は2006年の33.6%から2016年は43.2%になっている。 ●財政改革法案は,10月時点で年金,密輸取締り,国庫単一化などに関する6法案が可

決され,脱税防止法案が第一審議を通過した。しかしながら,法人税や付加価値税(IVA)

などの主要な6つの税制改革法案は依然審議に至っていない。

●2008年から2014年にかけて,コスタリカでは他の中米諸国と異なり所得税や付

加価値税などの主要な税制改革が全く行われておらず,奢侈税(Impuesto Selectivo de Consumo)の改正しか実績がない。税制改革の最多回数はグアテマラの19回であり,5位

のニカラグアでも7回である。

-4.3% -3.7%

-5.0%

-4.0%

-3.0%

-2.0%

-1.0%

0.0%

-2,000,000

-1,000,000

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

2015年9月 2016年9月 歳入 2,921,896.5 3,201,238.50

歳出 4,150,994.8 4,261,594.70

財政収支 -1,229,098.3 -1,060,356.2

対GDP比 -4.3% -3.7%

表5 財政収支(対前年同月比)

歳入

歳出

財政収支

対GDP比

(100万コロン) (対GDP比)

Page 5: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

5

4 物価 ●デフレ傾向は収束しているが,物価上昇率は1%にも満たず依然低い(表6及び表7)。

一方で,長期に渡り物価上昇率が低くなっていることで一般家庭の消費を促進している。

今年度の政府のインフレ目標である3%に及ぶ勢いはない。

0.04 -0.13

0.02 -0.06

-0.35

0.08

-0.35 -0.44 -0.7

-0.98 -0.99 -0.81

0.68 0.65

-0.26 -0.17 0.03 0.01

0.94 0.97

0.49

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

表6 消費者物価指数(前年12月からの累計値)

2015年

2016年

(%)

4.39

3.53 3.05

1.81

0.97 1.02

-0.32 -0.74 -0.86 -0.86

-1.20 -0.81

-0.17 -0.03

-1.09 -0.92 -0.43

-0.88

0.48 0.6 0.39

-2.00

-1.00

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

表7 消費者物価上昇率(対前年同月比)

2015

2016

(%)

Page 6: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

6

5 為替・金利 ●コロン安傾向は継続しているものの,中央銀行の介入により急激なコロン安は抑えられ

ている(表8)。11月の米国大統領選挙の結果の影響によるコスタリカの為替への影響は,

ラ米諸国内では比較的軽微なものと現段階では予想されている。

500

505

510

515

520

525

530

535

540

545

550

表8 為替(月末値・銀行買値・1米ドルあたり) (コロン)

Page 7: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

7

●金利の変動は,Brexit の時期から第3四半期までは安定的に推移した(表9)。しかしな

がら,11月の米国大統領選挙の結果を踏まえ将来的にはドル建債券の金利は上昇に転じ

る予測がなされている。

9.98 9.40

12.63

9.15

4.70

1.75

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

表9 金利の推移 (基本預金金利,政策金利以外は製造者向け貸付金利)

コロン建て 国立銀行

ドル建て 国立銀行

コロン建て 民間銀行

ドル建て 民間銀行

基本預金金利(TBP)

政策金利

(%)

Page 8: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

8

6 外貨準備高 ●コロン安是正のための中銀のドル売り介入が長期化しているものの,外貨準備高は9月

時点で対前年同月比▲4%と大きくは減少していない(表10)。輸出もほぼ安定的で,旅

行セクターの好調ぶりも影響していると考えられる。

8,052.0 7,657.5

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

表10 外貨準備高

2015年

2016年

(100万ドル)

Page 9: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

9

7 その他の経済ニュース(出典:当地報道など) 国内経済 ●失業率 2016年8月時点で失業率は9.8%であり,過去5年では最低となっているが,1

5才以上の就業率でも51.8%と最近3年で最低水準となっている。就業率低下の要因

は,フォーマルセクターでの雇用が増える以上にインフォーマルセクターの雇用が減少し

たことや求職者数減少によるものである。インフォーマルセクターの雇用の減少により,

それによって生計を立てている家庭への影響が懸念されている。労働省は労働市場への女

性の参画機会拡大を訴えている。コスタリカの失業率は,ラ米でも上位に位置する。

●コーヒーのさび病拡大の予兆

8月,コスタリカ・コーヒー協会(ICAFE)と農牧省(MAG)は,全国の様々な地域で

コーヒーのさび病が拡大傾向にあるとして注意喚起を行った。今回の注意喚起は,さび病

が2012年から2013年にかけてコーヒー農園を襲った経験により創設された早期警

戒システムに基づくものである。当時は64%の農園が甚大な被害を受け,2013-2

014年の収穫高は前年に比し18.5%減少した。

コスタリカのコーヒー栽培面積全体に占めるさび病の発症面積の比率は,7月は4.6%

であったが,8月は上半期だけで8.5%に急増した。首都圏を含む一部の地域ではさび

病がほぼ発生していないものの,カルタゴ県トゥリアルバ市では26%,プンタレナス県

コト・ブルス市では18%の発症率が確認された。

●タクシー業者によるデモ

2015年8月のUBERの操業以来,その差し止めを要求しているタクシー業者の労働組

合が主導してサンホセ首都圏を中心に抗議デモを行った。約8千名のタクシー業者が参加

した今回の抗議デモは,タクシーが車列を組んで主要道路を封鎖したものであった。デモ

は9日午前5時に開始されたが,警官隊が出動し事態の収拾にあたったところ,正午前に

は収束した。労働組合は,抗議デモを前日までに予告し道路封鎖及び暴力には訴えとない

と表明していたが,一部では道路は封鎖され破壊行為及び警官への暴力が起きた。現在,

タクシー業者はUBERに対抗しインターネットによる配車,カード払いなどのサービス改善

に取り組んでいる。

●コスタリカ消費者の動向

エル・フィナンシエロ紙が9月に実施した消費者の嗜好の調査によれば,最近の消費者

は,例年よりも住居の近場の店を選択する傾向が強いという。渋滞などによる移動の煩わ

しさを避けるため,地域の雑貨店,ミニスーパーなどのコンビニ,中国人の店などを頻繁

に利用するようになっている。首都圏の18歳から65歳の800人を対象に行ったアン

Page 10: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

10

ケート結果は,2015年で61%が前述の近場の店を週に数回利用すると回答したのに

対し,2016年は79%に達した。この傾向はこれらの店舗に大量に入荷される様々な

中国製品の影響ともいえる。一方で,スーパーの数の増加もあり,週に数回スーパーに行

く者は2015年で7%であったのに対し,2016年は24%であった。銀行の利用に

ついても,ATMが近くにあるかどうかが人々の銀行の利用頻度に大きく影響しており,

ネットバンキングは依然さかんになっていない。中国人の店など近場にある店で好まれる

支払い手段は依然現金である。

●2017年度予算案 9月に提出された2017年予算案の総額は約8兆9,000億コロンであり,対前年

比12%の増加である。昨年度の対前年増加率は0.5%であった。この大幅な増額の要

因は,主に債務返済,教育費,公共事業交通省(MOPT)の予算の増加によるものである

が,予算案の3分の1以上が債務の返済に充てられる。

●増加する旅行者数 2012年第1四半期の観光収入は5億9,160万ドルであったが,今年第1四半期は12

億4千3千100万ドルであり110%の増加率であった。2016年の観光収入はすでに過去

最規模に達している。増加する一方の入国者に各航空会社も新規就航や運航路線の多様化などに

よる事業拡大を図っている。

●慢性化する交通渋滞 2013年から2015年にかけてコスタリカへの自動車は30%増加し,2015年

は7万3千台が輸入された。その一方で,道路の拡張・整備は変化しておらず渋滞は日々

悪化する一方である。交通渋滞で失われる経済価値は年間6億ドルに及ぶ。この渋滞には

バスの路線の著しい交錯も影響している。メインストリートの一つであるパセオ・コロン

には日々70路線が交錯している。 ●WAZE社によるコスタリカの交通事情の評価

今年9月にWAZE社が実施した38か国238都市を対象に実施した車両の運転の満足

度調査で,コスタリカは10点満点中,3.95点であり,国別ではワースト10に入る

と評価された。同調査は,渋滞の様子,道路インフラの状態,交通違反取締りなどを評価

の対象としている。コスタリカでは約130万人のドライバーがいるとされ,日々約30

万台の車両が走行している。中米では他にエルサルバドル,グアテマラ,パナマがワース

ト10入りしている。

Page 11: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

11

●コンビニエンスストアの増加

コスタリカのコンビニエンスストアは2015年時点で141店舗オープンしており,

特に首都圏での増加が著しい。取扱商品・サービスもAV機器の販売や貸出し,食べ物の

テイクアウト,雑誌,観葉植物など多様化しており,営業時間も拡大傾向にある。展開企

業は,ミニスーペル,ディアエクスプレス,フレッシュマーケットなどであるが,201

5年からサークル K も展開している。

対外経済 ●ドス・ピーノス製品に関するニカラグアとの貿易摩擦 2015年にメキシコの大手乳製品製造会社のララ(LALA)が, ニカラグアの3つの乳製品

工場を買収し操業を開始していたが, コスタリカ国家動物衛生サービス局(SENASA)は工場の

衛生面に問題があるとし5月にこれらの工場の乳製品の輸入を禁止した。ニカラグア当局(IPSA)

もこれに対抗するようにコスタリカの同業者ドス・ピーノス(DOS PINOS)の工場にも衛生面

に問題があるとし,6月に同社の乳製品のニカラグアへの輸入を禁止した。結局7月に両国は合

意に達し,両社の乳製品の貿易は再開した。

●米の輸入関税撤廃 2010年から2016年にかけて米の耕地が81,116ha から49,040ha と3

9.5%減少し,収穫量も290,475トンから187,453トンと35.4%下落

した。これを受け,政府は8月に米の輸入関税の撤廃を決定した。国内需要を満たすため

7万トンの米を輸入する見込みである。近年の米の不作は,エルニーニョなどの異常気象

などが要因とされている。 ●英国の EU 離脱(BREXIT)のコスタリカにおける影響

ジェフェリー・モンテバン・ロンドンシティ市長(Lord Mayor)は,6月にコスタリカ

を来訪し,BREXIT の影響について,英国からコスタリカへの投資や貿易には大きな影響

はなく,英国は今後も両国の関係の深化のために取り組む意向であり,ラ米と英国の関係

についても大きな影響はないと述べた。国内では,英国とEUの市場の縮小は,中米から

の輸出減にもなりかねないとの懸念の声も上がっているが,英国側はEU離脱自体に2年

は要するため,現段階でははっきりした見通しは不明であると述べた。今後は短期的には

英国ポンドの下落により,英国旅行者の減少が予想されている。

●中国製バイクの輸入の増加

コスタリカにおけるバイクの輸入台数は,2011年は24,116台であったが20

15年は66,186台に増加し,2016年は年末までに75,000台が輸入される

予定である。バイクの購入がコスタリカではブームとなっており、バイク購入に関する関

Page 12: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

12

税や販売税などの諸税収入は,年間1,500億コロン(約2億8千万米ドル)に達する

勢いである。一方,今年9月までの統計で,バイク事故により150名が死亡しており,

交通事故死者数の全体の46%に達している。このため国家保険庁(INS)の提供するバイ

ク保険の支払額も急増し,来年度のバイクの保険料は改訂される可能性がある。また,2

015年のバイク車検において10台の内3台が車検に合格しておらず,ドライバーのメ

ンテナンスの悪さも原因の一つとして指摘されている。これら輸入バイクの大半は,フリ

ーダムやセルペントといった中国のメーカーのものであるが品質は値段相応という。

●コスタリカ・エルサルバドル間のフェリーの運航開始の遅れ

コスタリカの太平洋岸カルデラ港とエルサルバドルのラ・ウニオン港を結ぶ国際フェリ

ーは,メキシコ,ホンジュラス,グアテマラ等の他の中米諸国へのアクセス時間を短縮す

るものとされているが,諸手続上の問題から7月28日の就航開始予定日に間に合わず,

12月時点でも就航していない。

このフェリーはスペインのオディエル海輸株式会社が運航する。このフェリーは,1航

海あたり100台の貨物トラックの運輸が可能であり,258名の乗客と42名のクルー

も乗船できる。このフェリーは両国間を16時間から18時間で結び,貨物トラック1台

あたりの運賃は約800米ドルで1部屋2食付である。また,オプションで出発地から港,

港から到着地までの陸路による貨物の輸送も行う。従来の陸路でのサンホセからエルサル

バドルまでの所要時間は,3日から5日で運賃は約1,100米ドルである。

●違法車両の輸入

財務省は2016年上半期で,輸入車の約25%が,米国などで紛失車両の扱いを受け

た違法車両であるとの調査結果を発表した。同時期,コスタリカには11,840台の中

古車が輸入されたが,その内約3,000台は違法車両であるという。主な理由は,違法

輸入車の取扱業者や所有者が税関で虚偽の申告をしているためである。税関職員も車両の

合法性や状態を直接目視して確認するものの,車両に関する専門的な視点で点検をしてい

るわけではないためこの点が批判されている。車両所有者の履歴は,運転席のドアやボン

ネットなどに記載されている17桁の VIN というコードを用いてインターネットなどで照

会が可能である。財務省は2014年と2015年の輸入車両も調査対象とする意向であ

る。

●コスタリカ・コロンビア間の自由貿易協定の発効

コスタリカ・コロンビア間の自由貿易協定が8月1日に発効した。この協定により,関

税品目の70%が自由化される。COMEX によれば,バナナ・ピューレ,バナナ・エッセ

ンス,熱帯植物の葉,医療機器,医薬品,鉛,バスのタイヤ,アルコール飲料などのコス

タリカの輸出産品に対しては関税が即時撤廃となる。

Page 13: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

13

コスタリカがメキシコ,コロンビア,ペルー,チリから成る太平洋同盟に加盟するには,

加盟国全てと二国間自由貿易協定を発効させる必要があるが,同国はメキシコ,ペルー,

チリとの間ではすでに自由貿易協定を発効させており,今回のコロンビアとの自由貿易協

定の発効で加盟条件を満たしたことになる。

●中国からコスタリカに発送される小包の郵便物の急増

コスタリカには,中国からアクセサリー,衣服,家庭用品,時計,靴などの多様な製品

の入った中小の小包が日々約2万5,000個届いている。その多くが,コスタリカの消

費者がWishやAliexpress.comといったネット通販で注文したものである。その数は今年上

半期に月間約75万個に急増し,対前年増加率は600%に達している,また,今年下半

期の小包は月間約100万個に達する見込みである。中国からコスタリカへ商品が到着す

るには通常1ヶ月半要している。この中国のサービスでは,郵便料金は約270コロン(約

0.5米ドル)という破格の安さではあるが,商品の追跡サービスや紛失の際の補償はな

い。

●コスタリカの国際的評価

企業の評判に関するリサーチ大手の Reputation Institute は70か国の旅行者や投資家

を対象に各国の評判調査を行った結果,コスタリカは80点満点中58,6点で22位で

あり,ラ米では1位であった。友好的かつ快活的な生活のあるイメージが先行しているこ

とが大きいという。しかしながら,コスタリカはこのランキングの上位15か国との間で

依然大きな隔たりがある。このランキングは,他の指標として治安,教育,テクロノジー

の発展度合いもなども含んでいる。

また,英国調査機関 New Economics が世界140カ国を対象におこなった Happy Planet 調査では第1位に,国連主催の156カ国を対象にした World Happy Report 2016 では第11位

とされた。New Economics が用いる地球幸福度指数 (The Happy Planet 2016)は,国民の満足

度や環境への負荷などから国の幸福度を計る指標である。この総合的な幸福度には,経済的状況

のほか,「幸福度の平等さ」や「社会的支援」などが反映されているという。このランキングで

は1位とされたコスタリカは,改善点として税制改革と高い生活費が指摘されている。 (了)

Page 14: 表1 経済活動指標(前年同月比)2016/07/09  · 2 2 貿易 2016年上半期までの輸出統計では,コスタリカは24億6,500万ドルの輸出額で前 年同月比4.5%の伸びであり他の中米諸国と比較しても輸出額,伸び率ともに突出している。伸び率に関してはラ米全体

14