[臨床交流会]四⼗肩〜五⼗肩 基礎編(解剖復習)資 …2016/02/28 ·...
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① 肩上肢帯の筋走⾏模式図
[ 臨床交流会 ]四十肩〜五十肩 基礎編(解剖復習)資料 2016/02/28 筑紫
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② 骨格図(付着筋の起始と停止)
[ 臨床交流会 ]四十肩〜五十肩 基礎編(解剖復習)資料 2016/02/28 筑紫
- 3 -[ 臨床交流会 ]四十肩〜五十肩 基礎編(解剖復習)資料 2016/02/28 筑紫
③ 肩関節運動の動作筋一覧
屈曲 伸展 内転 外転 内旋 外旋水平内転
水平外転
前部 ★ △ ◎
中部 ★
後部 ○ ○ ◎
C5-6 89cm3 大結節上部
関節包◎ △
上部 ○
下部 △
C5-6 39cm3 大結節下部
関節包◎
C6-7 231cm3 小結節稜 ◎ ○ △ ○
C5-6 319cm3 小結節/稜上部 ★
上部 ◎
下部 ◎
上腕二頭筋 C5-6 366cm3 (関節上結節) ○ ○
前鋸筋 C5-7 359cm3 肩甲骨内側縁 △ ○
広背筋 C6-8 550cm3 小結節稜 ★ ★ ○ ★
上腕三頭筋 長頭 C5-6 (620cm3) (関節下結節) △ △
僧帽筋 上部 C2-3 (458cm3) 鎖骨外側1/3 △
烏口腕筋 C5-7 80cm3 上腕骨内側中央 ※ ※ ※
資料: http://rehatora.net/ ★1位 ◎2位 ○3位 △4位 ※以下
髄節
三角筋
棘上筋
肩関節(肩甲上腕関節)
筋体積 筋肉名
上腕骨三角筋粗面
停止(起始)
大胸筋 ◎ ★
C5-6 792cm3
★ 棘下筋 C5-6 225cm3
小円筋
大円筋
肩甲下筋
C5-T1 676cm3
大結節中部関節包
大結節稜
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④ 肩甲骨運動の動作筋一覧表
肩甲骨運動の動作筋
上昇 下降 内転 外転上⽅
回旋
下⽅
回旋
上部 鎖骨外側1/3 ★ △ ○ ◎
中部 肩峰/肩甲棘 ★
下部 肩甲棘三⾓ ★ △ ○ △
上部 ○
下部 △ △
肩甲挙筋 C2-5 72cm3肩甲骨上⾓
内側縁上部 ◎ △
⼤ 肩甲骨内側縁下部 ○ ◎ ★
小 肩甲骨内側縁上部 △ ○ ◎
小胸筋 C7-T1 73cm3 烏口突起 ◎ ◎ ○
上部
下部
広背筋 C6-8 550cm3小結節稜 △ △
資料: http://rehatora.net/★1位 ◎2位 ○3位 △4位
△ ⼤胸筋 C5-T1 676cm3⼤結節稜
C2-C4 僧帽筋 458cm3
肩甲骨(肩甲胸郭連結)
菱形筋
筋肉名 髄節 筋体積
C4-5 118cm3
前鋸筋 359cm3C5-7 ★
停止
(起始)
肩甲骨
内側縁
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⑤ 肩甲胸郭連結の動き模式図
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⑥ 肩甲上腕リズム模式図
肩甲上腕リズム 上腕骨:肩甲骨の動き 2:1 個⼈差も⼤きく諸説あり
⑦⑧
⑨
⑩肩峰下の隘路
⑤上腕骨の回旋筋群図
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⑪ 肩峰下インピンジメント
(隘路帯での挟み込み)の成因
※ 外転時に後外路を⼤結節部が通過する時肩甲
骨が後傾し上腕骨が外旋していないと、滑液
包や腱板などが肩峰と⼤結節で「挟み込まれ
る」
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⑦ 回旋筋群の停止部の断面と立面の模式図
肩関節内旋:1.肩甲下筋 2.⼤胸筋 3.広背筋 4.⼤円筋・三⾓筋前部
上腕骨上端上面(左側)
内旋筋群の停止部(左側)
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⑫ 内転内旋筋群の模式図(⼤胸筋は除く)と腋窩壁の模式図
肩関節内旋:1.肩甲下筋 2.⼤胸筋 3.広背筋 4.⼤円筋・三⾓筋前部
内転:1.広背筋 2.⼤胸筋下部 3.⼤円筋 4.上腕三頭筋⻑頭・棘下筋
水平外転:1.広背筋 2.三⾓筋後部 3.⼤円筋
肩関節外旋:1.棘下筋 2.小円筋 3.三⾓筋後部 4.棘上筋
外転:1.三⾓筋中部 2.棘上筋 3.棘下筋上部・前鋸筋
水平内転:1.⼤胸筋 2.三⾓筋前部 3.上腕二頭筋
肩甲下筋
⼤円筋
広背筋
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⑧ 肩上肢帯の断面図
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⑬ 評価動作( 「背中手つなぎ」は、前・四十肩を評価する? )
上前側の肩上肢: 外転外旋位 拮抗筋:肩関節内旋筋:1.肩甲下筋 2.⼤胸筋 3.広背筋 4.⼤円筋・三⾓筋前部内転筋:1.広背筋 2.⼤胸筋下部 3.⼤円筋 4.上腕三頭筋⻑頭・棘下筋
★ 四十肩(筋腱症+インピンジメント)の成因: 肩関節屈曲・外転時の ① 肩甲骨上⽅回旋 ② 上腕骨外旋 の機能低下ブレーキ= 菱形筋 内旋筋群
下後側の肩上肢: 内転内旋位 拮抗筋:肩関節外旋筋:1.棘下筋 2.小円筋 3.三⾓筋後部4.棘上筋外転筋:1.三⾓筋中部2.棘上筋 3.棘下筋上部・前鋸筋
★ 「背中手つなぎ」の困難の主要因は、利き手の上腕内旋不足=外旋筋群、三⾓筋などの発達と伸展柔軟性の低下
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⑭ 評価動作Ⅱ( 「回旋テスト」 )
第1肢位での内旋制限は、棘下筋の過緊張第2肢位内旋制限は、小円筋の過緊張
とする説明がある
が、第2肢位は肩甲骨の動きが加わりやすく評価は難しい
「四十肩」の段階では、結帯と結髪のどちらかが制限を受ける結髪=外旋制限(内旋筋群のブレーキ)の障害の⽅が次の病態ステージ移⾏に関連が⼤きい
五十肩では、内旋外旋ともに高度に制限を⽣じることが普通
⑮ 関節周囲炎と拘縮の進⾏1.関節周囲炎の進⾏期(急性期・痙縮期):・腱板疎部(肩峰下滑液包、烏口上腕靱帯、上関節靱帯)の滑膜炎・特徴的な強く持続する⾃発痛(夜間痛)は、関節内圧の上昇が主因?
2.関節周囲炎の移⾏期〜慢性期(拘縮期・回復期):・関節包前部の瘢痕化→棘上筋腱・肩甲下筋腱の滑動減少→第一肢位での外旋制限・烏口上腕靱帯の伸展性低下→伸展・内旋制限・関節包下⽅の炎症瘢痕化→屈曲・外転制限
※ 肩上肢帯を構成する筋群の緊張亢進・伸展柔軟性の低下は、全ての病期で並⾏して継続しており、病態の成立と維持と進⾏に関与している
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⑯ [ まとめ ]
解剖要点
・動作は、複数の筋関節運動によって成り立っている
・深部筋の(個別的な)触知は難しい
・深部筋の動作や走⾏を触知するためには、拮抗筋や協同筋を弛緩
させる必要があるが、なかなか難しい
・骨格の筋停止部を理解し触知できることがポイント
肩上肢帯の進化
・鎖骨の進化と肩上肢帯の⾃由度拡⼤。四足歩⾏から樹上⽣活(鎖
骨の進化発達。懸垂位にとって必須のアイテム。多くの四足歩⾏
動物では鎖骨は退化している。6500万年前?)を経て、ヒト属
として樹上からサバンナでの二足歩⾏への移⾏(200万年前)
・テナガザルやオランウータンやチンパンジーなどの懸垂肢位動作
が得意な類⼈猿には四十肩〜五十肩はあるか?
・樹上での懸垂肢位動作は、手指の把握保持+上肢の振り下ろし=
打擲・投擲などの作業動作を準備した
・懸垂肢位動作が常態ではなくなったヒトでは、90度から180度
挙上位への誘導時に、鎖骨・肩甲骨回旋・上腕骨外旋の連動リズム
の不調が肩峰下の隘路帯でのトラブルを準備している?
・懸垂肢位動作が常態ではないヒトでは、過屈曲・過外転180度(挙
上位)には、鎖骨・肩甲骨・上腕骨の連動同期が必須
肩甲上腕リズム
・胸鎖関節支点の鎖骨・肩甲骨+上腕骨の連動=肩甲上腕リズム
鎖骨・肩甲骨上⽅回旋・後傾 上腕骨の外旋(外転)・骨頭の移動
(肩甲胸郭の連結は「関節」ではない)
・肩峰下のクリティカルパス=上腕骨⼤結節の通過を阻害する要因
(通過障害が「インピンジメント=挟み込み」)
・肩甲骨上⽅回旋・後傾と上腕骨外旋のブレーキとなる要因は、菱形
筋・上腕内転内旋筋群などの伸展柔軟性の低下
・上腕骨内転内旋筋群(広背筋・肩甲下筋・⼤円筋)の停止部での走
⾏のネジレと窮屈さが、これらの筋群のウイークポイント?
・利き手側の結帯動作(内転内旋位)の不具合は、外転外旋筋群(三
⾓筋・棘下筋・小円筋)の発達と伸展柔軟性の低下
・180度挙上・懸垂・万歳肢位は、内転内旋筋(肩甲下筋・⼤胸筋・広
背筋・三⾓筋・上腕三頭筋⻑頭)の伸展柔軟性が必要だが、⽇常⽣
活では少ない動作肢位となった
肩上肢帯の病態のステージ1)前・四十肩期:外転外旋位の難=内転内旋筋群の柔軟性↓
2)四十肩期 :内転内旋筋群の筋腱症 → 外転外旋筋群に波及?
3)後・四十肩期:筋腱症+肩峰下「インピンジメント」
→ 腱板障害 動作衝撃痛(類⾃発痛)
4)五十肩期 :筋腱症+インピンジメント+関節組織炎症
→ 関節拘縮
急性期 動作衝撃痛の回復遅延と持続 ⾃発痛(夜間痛)
滑液包や関節包や靱帯の炎症症状
関節包の内圧上昇が主因?
肩甲上腕リズムの破綻
移⾏期 動作衝撃痛(類⾃発痛)
可動域制限の始まり(関節拘縮 3週で進⾏)
肩甲上腕リズムの破綻 肩甲骨動作代償or制限
慢性期 関節拘縮 滑液包・烏口上腕靱帯・上関節上腕靱帯
や関節包などの瘢痕性変化による
肩甲上腕リズムの破綻 肩甲骨動作代償or制限
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肩上肢帯の病態と治療の考え⽅
・整形外科医や理学療法士は、関節構造体・腱板・靱帯などの器質的
障害を主体に病態を考える傾向が強い(筋腱の機能については二
次的)。画像診断の高度化がそれを促進している
・鍼灸や手技療法の治療家は、筋腱の機能的障害(その源として想
定する神経筋反射の偏り)や、攣縮した筋群による絞扼性神経障
害などを主体に病態を考える傾向が強い
・局所への治療操作 伸展柔軟性↓筋群を弛める目的
炎症性病変に果たして治療的か?
瘢痕性組織を解くことは可能か?
・遠隔部への治療操作 肩上肢帯の動きの改善
肩甲骨の動きを制限している筋群の伸展柔軟性↑
上腕内転内旋筋群の伸展柔軟性↑
・運動・体操法の予防的・治療的な応用
狭く解釈:結髪動作肢位の障害因=上腕骨の外転外旋動作のブレ
ーキ=内転内旋筋群の伸展柔軟性の低下を予防or改善
する「筋弛緩法・伸展法」
鎖骨・肩甲骨の動きの低下を予防・改善する「筋弛緩法・
伸展法」
広く解釈:多関節運動によって成り立っている姿勢制御機構の問
題=「偏り」への予防・改善の操作となり得る各種の
運動・体操あるいは手技などによる介入
トピック:
・筋肉エコーを使った筋膜重積部の発見?と同部を解離させる注射
療法の発明? 筋腱症orトリガーポイントの一端か?
・血管カテーテル造影による「モヤモヤ血管」(炎症性病変の進展に
伴う異所性血管新⽣)の発見と同血管閉鎖術の発明?
「五十肩」であること・ここで示した「四十肩〜五十肩」の定義or病態の考え⽅からする
と、「五十肩の治療」と報告されている場合でも、「五十肩」=「肩
峰下滑液包・靱帯・関節包の炎症性病変とその後遺症状である同部
の瘢痕拘縮=凍結肩」では無いことが少なくないように思える
・「五十肩」記事の多くは、「五十肩」ではなく「四十肩」or「後・四
十肩(腱板障害含む)」の可能性があり、肩上肢帯の筋腱症クラス
の病態を想定して例示されている?
・治療前後の肩の「可動域」が広がることを実演している場合、肩
の筋群の緊張度一時的な弛緩である可能性が⼤きい
・「五十肩」の「可動域」が、即効的に拡⼤するとされる場合、肩甲
上腕関節の「関節可動域=ROM」の拡⼤ではなく、肩甲上肢帯の
複合運動の変化を意味している
・関節拘縮は、関節組織の瘢痕性要因によるが、同時に筋腱機能性
要素によって、制限が加重修飾されている
・瘢痕性要素は、物理的外力による破断剥離(授動術やOP)によって
しか急性変化はしない
・多くの術者がステロイド関注、消炎鎮痛剤服用を勧めている
・急性炎症期で関節可動制限を3週続けるだけで「拘縮」する
・「五十肩」の治療は難しい
雑 記
・急性期五十肩の⾃発痛・夜間痛には苦い記憶が多い
・⻑年の腎透析併発アミロイド沈着の肩関節炎の強い⾃発痛=五十
肩の急性期と類似病態?で、その場で著効を得た事例
・強い五十肩⾃発痛が、水中(プール・温泉)で直ちに軽減した事例
・五十肩拘縮を、逆療法と称し「ぶら下がり器」で可動させた事例
・四十肩レベルの病態は、運動・体操療法でもそれなりに良好かも知
れないが、鍼灸・手技療法の良い適応でもある
・肩上肢帯の問題は奥が深い!?
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「ゼロ・ポジション」です。
インドの整形外科医Amulya Kumar Sahaによって1950年に報告(*註
5)されたこのポジションは、「冠状・矢状いずれの面からの挙上であっ
ても回旋、関節面でのgliding(滑り:引用者註)および円転が細小にな
る肢位があり、そこでは機能軸が解剖軸に一致している」と定義されま
す(*註6)。
ニュートラルポジションで立った場合には、腕を前⽅に30前後°、上⽅
に135°〜155°挙げると、このゼロ・ポジションになるとされます。
「背中手つなぎ」の後ろ手回し側の肩甲骨は肋
骨面から浮き上がり、上腕骨内旋不足を補う(多
くは利き手側の三⾓筋の発達?)
肩甲平面とは、アメリカの整形外科医Arthur Steindlerによれば
「上腕骨が前額面より30°ほど前⽅に偏位した面、言いかえると前額面
と肩甲骨面とが30°の⾓をなす面」(*註1)のこと。
ごく単純化していえば、肩甲骨が前額面30°の傾き(下図のa⾓参照)を
持つならば、その面で腕を挙げれば肩甲上腕関節の捻れが⽣じない、と
いう考え⽅です。
1.肩 前後
2.肩 左右
3.肩 回旋
4.肘 屈伸
5.前腕 回転
6.手 前後
7.手 左右
機構全体の構造を決定する可動変数の数