抵抗血管周囲神経機能に及ぼす 抗高血圧薬長期投与...

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博士論文 抵抗血管周囲神経機能に及ぼす 抗高血圧薬長期投与の影響 平成 13 3 中妻章 岡山大学大学院 自然科学研究科

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博士論文

抵抗血管周囲神経機能に及ぼす

抗高血圧薬長期投与の影響

平成 13年 3月

中妻章

岡山大学大学院

自然科学研究科

己)

博士論文

抵抗血管周囲神経機能に及ぼす

抗高血圧薬長期投与の影響

平成 13年 3月

中妻章

岡山大学大学院

自然科学研究科

目次

緒言

第 1章カルシウム指抗薬長期投与の影響

1 緒言 7

2 実験材料および実験方法

2・1 実験動物 9

2-2 使用薬物 9

2-3 全身血圧の測定 10

2・4 腸間膜動脈潅流標本の作製 10

2・5 潅流圧測定方法 11

2-6 血管周囲神経刺激(PNS)

2・7 norepinephrineおよび CGRP注入による血管反応の測定 14

2-8 カテコールアミン量の測定 14

2-9 統計学的検討 16

3 実験成績および考察

3・1 全身血圧に及ぼす影響 17

3・2 血管周囲神経機能に及ぼす影響

(1)交感神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管収縮反応 18

② PNSによる norepinephrineの遊離量 20

③ norepinephrine注入による収縮反応 21

(2 )CGRP神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管弛緩反応 23

② CGRP注入による血管弛緩反応 25

3-3 考察 27

4 小括 30

第2章 アンジオテンシン変換酵素 (ACE)阻害薬 temocapril長期投与

の影響 第 3章 ACE阻害薬temocaprilとbradykinin B2受容体掠抗薬FR172357

の長期併用投与の影響

緒言 31

2 実験材料および実験方法

2-1 実験動物 33

2-4 使用薬物 33

2-5 全身血圧の測定 33

2・4 腸間膜動脈瀧流標本の作製 33

2・5 潅流圧測定方法 33

2-6 血管周囲神経刺激(PNS) 34

2-7 norepinephrineおよびCGRP注入による血管反応の測定 34

2-8 カテコールアミン量の測定 34

2・9 CGRP量の測定 34

2・10統計学的検討 35

3 実験成績および考察

3-1 全身血圧に及ぼす影響 36

3-2 血管周囲神経機能に及ぼす影響

(1)交感神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管収縮反応 38

② PNSによる norepinephrineの遊離量 39

③ norepinephrine注入による収縮反応 40

(2) CGRP神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管弛緩反応 41

② PNSによる CGRPの遊離量 42

③ CGRP注入による血管弛緩反応 43

3-3 考察 44

4 札、括 47

1 緒言 48

2 実験材料および実験方法

2・1 実験動物 51

2-6 使用薬物 51

2・7 全身血圧の測定 51

2-4 腸間膜動脈潅流標本の作製 51

2・5 潅流圧測定方法 52

2・6 血管周囲神経刺激(PNS) 52

2・7 norepinephrineおよび CGRP注入による血管反応の測定 52

2-8 カテコールアミン量の測定 52

2-9 統計学的検討 52

3 実験成績および考察

3・1全身血圧に及ぼす影響

3・2血管周囲神経機能に及ぼす影響

(1)交感神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管収縮反応

② PNSによる norepinephrineの遊離量

③ norepinephrine注入による収縮反応

(2) CGRP神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管弛緩反応

② CGRP注入による血管弛緩反応

3-3考察

4 小括

53

ι

寸戸、J

/

O

戸、Jζ

J

ζ

J

I

Q

o

n

y

唱i

ζJ

戸、dc

J

f

o

総括

参考文献

謝辞

JUF30ノ

f

o

f

0

7

'

本研究で使用した略記号は以下の通りである o

SHR

WKY

CGRP

NPY

ANP

BNP

ACE

ATl

AT2

ELISA

PNS

Thi

: spontaneously hypertensive rat

: Wistar Kyoto rat

: calcitonin gene-related peptide

: neuropeptide Y

: (A-type) atrial natriuretic peptide

: (B-type) brain natriuretic peptide

: angiotensin-converting enzyme

: type 1 angiotensin II receptor

: type 2 angiotensin II receptor

: enzyme linked immunosorbent assay

: periarterial nerve stimulation

: L-thienylalanine

【緒言】

血圧の調節機構

全身血圧は、おもに心拍出量と血管抵抗によって規定されるが、その

うち血管抵抗(血管緊張度)による調節が大きい役割を果たしている。

血管抵抗は主として末梢抵抗血管と呼ばれる細動脈が緊張することによ

って生じる o これまで、全身血圧の維持に重要である末梢抵抗血管の緊

張調節は、血管収縮性神経である交感神経による一重支配と考えられて

いた D すなわち、交感神経が延髄の血管運動中枢の支配下に緊張性の自

発性活動をすることによって、伝達物質 norepinephrine(NE)を神経終末

から放出して血管を収縮させ末梢抵抗血管の緊張を維持しているという

考え方である。しかし近年、抵抗血管には非アドレナリン・非コリン性

(nonadrenergic, noncholinergic : NANC)の血管拡張性神経が分布し、交感

ノvasopressin, endothelin, angiotensin n

守牟

Yasodilatioo

NO,ANP, BNP

Fig.l. 血管周囲神経による血管緊張度調節

1

神経とともに血管緊張の調節を行っている可能性が示唆されている

CFig.1J [1-3]0 この NANC神経の伝達物質としては、強力な血管弛緩

作用を持つカルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP)[2]およびー酸化窒

素 (NO)[3]が同定されている。これら交感神経と NANC神経は相反支配

(二重支配)を行って緊張度を調節していると考えられている[4,5]。

神経調節以外の主な因子として、血管収縮性の内因性物質として、カ

テコールアミン類、血管内皮細胞由来の endothelin、抗利尿ホルモンの

vasopressin、レニンーアンジオテンシン系の血管収縮ペプチド angiotensin

Eなどがあげられる o 一方、血管を弛緩させる内因性物質として、血管

内皮細胞由来の NO[3, 6]、心臓由来のナトリウム利尿ペプチド (ANP、

BNP)等 [7,8]がある oこれらの内因性物質は液性因子として血管の緊

張度を維持調節している。

血圧調節におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド含有神経の役割

CGRPは、カルシトニン(calcitonin)遺伝子の解析から推定され、 Fig.2.

のように 37個のアミノ酸残基からなるペプチドである [9]0 CGRP は

calcitoninとともに同一遺伝子上にコードされているが、構造上の類似性

は少ない。 CGRPと calcitoninの mRNAは、組織特異的なスプライシン

グによって、別々に発現され、 CGRPは神経系(主に知覚神経の脊髄後

根節)で、 calcitoninは甲状腺 C細胞で産生される CFig.3,) [9]0 CGRP

は強力な血管弛緩作用を示し、血管周囲神経にも含まれるので、内因性

CGRPは血管の機能調節に関与している可能性が示唆されている。

2

1 3 14 15 22 23 25 31 35 human CGRP 1 Ala Asp Gly Leu Val Val Asn Asn Lys

human CGRP II Ala Asn Gly Leu困 Val Asn 図 Lysrat CGRPα Asn Gly Leu Val Val Aspl Asn I Glu I rat CGRP s Asn Gly Leu Val Val Asp Asn Lys

pig CGRP Asn 的Leu固Val I Ser 困図rabbit CGRP Asn iAGsIV d Isu Val Ser Asn chicken CG RP Ala Asn IPhel Val [到 Asn Asn Lys

Fig.2. C G R Pの構造 (humanCG RP 1)

5、

~ RNA Splicing

Calcitonin mRNA ↓ hl卜d 卜.3 Iωlcitonin I 件ム~

可VTranslation

守Calcitonin Precursor

(17500 MW)

守CalcitonIn

3、

Poly A site Poly A site

¥、+

卜x2卜x3トG叶ω 件ム可V

' 可V

CGRP

Fig.3. CGRPとcalcitonInの発現犠構

3

CGRPの血管弛緩作用は、血管平滑筋細胞上の CGRP受容体を介しアデ

ニール酸シクラーゼ活性に基づく細胞内 cyclicAMPの増加と考えられて

いる[10]0その他の機序として、血管内皮依存性の弛緩や、 ATP感受性

K+チャネル開放も関与している可能性が報告されている[11,12]0 CGRP

の C末端 1から 7までのアミノ酸を欠く CGRP(8-37)は、 CGRP受容体

の遮断薬として CGRPの生理作用機序の研究に用いられている o

CGRPの分布は、抗体を用いた免疫組織学的検索によって、脳、脊

髄、脊髄後根神経節に局在する[13]0また、中枢神経以外では表皮、腸、

心臓や血管にも存在が認められるが、そのほとんどが神経であり、とく

に知覚神経に含まれる。

高血圧の薬物治療

高血圧は生活習慣病の一つであり、治療をせず放置しておくと、虚血

性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、大動脈癌、脳血管障害(脳梗塞、脳出

血)といった循環器疾患の原因となることが知られている[14]。さらに、

高血圧は動脈硬化、糖尿病、腎硬化症などの危険因子である o 高血圧治

療の目的は高血圧の持続により惹起される脳、心、腎などの臓器合併症

の発症や進展およびそれらによる死亡を阻止し、かつ qualityof life (生活

の質、 QOL)を保持することにある[15]0

高血圧患者の、約 90%は原因不明の本態性高血圧である。残りは症候

性高血圧(二次性高血圧)といわれ、原因がはっきりとしており、その

症状のーっとして高血圧を示す。このように原因のはっきりした症候性

高血圧症に対しては、それぞれの原因治療を行うことによって血圧は低

下し正常化する[16]0一方、原因不明の本態性高血圧では、対症療法が

主となり生活様式(食事、運動、ストレスの除去など)の改善とともに、

4

抗高血圧薬による薬物治療によって血圧を下げる治療が行われる[15]0

血管鉱張薬

交感神経遮断薬

事j尿薬

Tab.l. 臨床で使用される抗高血圧薬

ヒドララジンACE阻害薬

AT1箔抗薬Ca措抗薬

α2作動薬

α1遮断薬

β遮断薬

hydraJazine, cadralazine →第2章参照

→第2章参照→第1章参照

guanabenz, clonidine,α・methyldopa

urapidiJ, terazosin, doxazosin prazosin, bunazosin ceJiproJol, tilisolol, pindolol, betaxolol, bevantolol, metoprolol

サイアザイド系 trichlormethiazide,jレープ azosemide, furosemide カリウム保持性 potassiumcanrenoate, spironolactone, triamterene

現在、薬物治療に用いられる抗高血圧薬は、血管拡張薬(ヒドララジ

ン類、アンジオテンシン変換酵素 (ACE)阻害薬、アンジオテンシン E

受容体 (AT1)括抗薬、カルシウム (Ca)括抗薬)、 交感神経遮断薬

(α2アドレナリン受容体作動薬、 α1アドレナリン受容体遮断薬、。ア

ドレナリン受容体遮断薬)、手IJ尿薬(サイアザイド系、ループ、カリウ

ム保持性)、の 3種類に大別される CTab.1) 0 これらの薬は、高血圧

の程度、年齢、他の疾患との合併など様々な状態によって使われ方が異

なるが、いずれの場合もほとんどが長期投与される[15]0

本研究の目的

本態性高血圧の成因は未だ不明であるが、その原因のーっとして交感

神経機能の冗進による末梢抵抗血管の異常収縮があげられている。最近、

本態性高血圧の病態モデルである高血圧自然発症ラット(SHR)を用いた

研究で、抵抗血管の緊張度を調節している血管周囲神経である CGRP含

有血管拡張神経(CGRP神経)機能の減弱と交感神経機能の克進が起こっ

ている可能性が報告された[17]。さらに、これら神経機能に対する各種

5

抗高血圧薬の長期投与によって、 CGRP神経機能の変化が生じる可能性

が示唆されている[18,19]0 これまで多くの抗高血圧薬については、単回

投与または短期間の連続投与による薬効薬理作用については報告されて

いるが、長期投与の結果生じる薬力学的効果についての報告はほとんど

なく、特に血管の緊張調節に重要な役割を果たしている血管周囲神経機

能に及ぼす影響についての報告は少ない。

全身血圧を維持している抵抗血管が多く含まれている腸問動脈血管床

は全身の血管床の中で最も大きな血管床の一つであり、全身の循環への

関与も大きいと考えられる。このため腸間膜動脈床は全身循環調節機構

を検討する研究に多く用いられている。また、血管床を調節する血管周

囲神経(交感神経、 CGRP神経、 NANC神経)が豊富に分布し、神経性

調節の研究も多い。

そこで、本研究では高血圧の薬物治療に広く使われている抗高血圧薬

について第 1章では Ca桔抗薬、第 2章では ACE阻害薬および血管拡張

薬である hydralazineの長期投与による血管周囲神経機能の変化を検討し

た。第 3章では ACE阻害薬の抗高血圧作用機序には、 ACEの基質であ

る bradykininの関与も考えられることから、 bradykininのタイプ2受容

体の遮断薬である B2桔抗薬 (FR172357)の併用についての検討も行っ

た。

6

第 1章 カルシウム(Ca)掠抗薬の長期投与における影響

1 緒言

SHRを用いて抗高血圧薬のうち血管拡張薬であるカルシウム (Ca)括

抗薬の長期投与を行い、抵抗血管周囲神経機能に対する影響について検

討するととを目的とした。

Tab.2. 臨床で使用されているCa指抗薬

臨床適応

狭 異 向 月当J心 型 血 循症 狭 圧 環

.1 .2 』心 改Drug Tmax(h) T 1/2(h) 症 善

Phenylalkylamine verapamil 1.1 1.1 O nifedipine 1.0 1.0 O O nicardipine 1.0 1.5 O O nilvadipine 1.3 10.9 O O nitrendipine 1.8 11.2 O O manidipine 3.6 7.3 O

Dihydropyridine benidipine 2.5 1.7 O O barnidipine 6.5 11.0 O amlodipine 8.0 39.4 O O efonidipine 2.2 2.1 O

felodipine 1.4 2.7 O cilnidipine 1.8 2.5 O

Benzodiazepine diltiazem 4.4 5.0 O O O

本 1最高血中濃度到達時間取2血中濃度半減期

現在、臨床に用いられている Ca措抗薬は (Tab.2) に示すように、フ

ェニルアルキルアミン系、ジヒドロピリジン系、ベンゾジアゼピン系の

3タイプに分類される[20]0 いずれもその作用機序として Ca2+チャネル

7

を遮断することにより血管平滑筋の収縮に必要な細胞外液から細胞への

Ca2+流入を減少させ血管平滑筋の弛緩を起こす。 Ca2+チャネルには L,N,T

型の 3種類(これら以外に P,Q, R型も存在するが、循環器疾患でター

ゲットになる Ca2+チャンネルは前述の 3種)存在することが知られてお

り、そのうち血管平滑筋に存在するのは L型である。 N型 Ca2+チャネル

は神経終末上に分布し、神経伝達物質の遊離に重要な役割を果たしてい

る。 N 型 Ca2+チャネルの抑制は、伝達物質の神経性遊離を抑制する o 最

近、 Ca桔抗薬にも N 型 Ca2+チャネルの抑制作用を有する可能性が示唆

されている[21-23]0現在、臨床で繁用されている Ca措抗薬はジヒドロ

ピリジン系で、血管平滑筋の L型 Ca2+チャネルへの選択性が高く強力な

血管拡張作用を示す。しかし、一般にジヒドロピリジン系 Ca措抗薬は、

作用発現が速く (nicardipineでTmaxが1.0時間)、かつ作用持続が短い

(nicardipineでは/2が1.5時間)ため、血圧を長期間安定して降下させ

るには、頻回投与か徐放製剤にする必要があった。また副作用として、

急激な血圧降下による反射性の交感神経活動の充進(反射性頻脈、動停

など)、薬物が消失したときの reboundl (反跳)現象として急激な血圧

上昇(脳卒中)、長期投与時の腎血流量低下(腎不全)等が問題となっ

ている o このことから、作用が緩徐で持続の長い Ca措抗薬の開発が進

められ[24]、近年長時間作用(long-acting)型の Ca括抗薬が市販され、

臨床的にも優れた効果が認められている。

本章では、 long-acting型の Ca桔抗薬として amlodipineおよび近年開発

された新規化合物の pranidipineと、短時間作用 (short-acting)型の Ca措

抗薬として nicardipineを選択し、 SHRに長期投与した場合の抵抗血管周

囲神経機能に対する影響について検討した。

8

2 実験材料ならびに実験方法

2・1実験動物

実験には、 7週齢および 15週齢の雄性高血圧自然発症ラット (SHR:

日本チヤールス・リバーより購入)を用いた。動物は、飼育用プラスチ

ック製ケージ (26x 36 x 25cm) に 3-4匹ずつ飼育し、餌および水は自由

に与えた。動物飼育室の照明は 12時間の明暗サイクル(明期:7:00---19:00、

暗期:19:00---7:00) に設定し、室温は 22---240C、相対湿度は 60---70%

に維持した。

2-2使用薬物

amlodipine (住友製薬)および nicardipine (山之内製薬)は

dimethylsulfoxide (DMSO,和光純薬)に溶解し、 amlodipineは 0.01%お

よび 0.02%、nicardipineは 0.1%になるように希釈調製した。なお DMSO

の最終濃度は 1%になるよう調整した。各溶液を飲料水として与え、 8週

齢から 7週間飼育した。また、 pranidipine (大塚製薬)は、 0.0035%お

よび 0.035%を餌に混合して与えて、飲料水投与と同様 7週間飼育した。

なお各薬物の構造式を Fig.4に示した。これらの投与量は、飲料水の場

合、濃度 0.01%で 10mg/kg!day (1日当たり飲水量 10m1!100 g体重で換

算)に、混合餌の場合、濃度 0.0350らで 20mg/kg/day (1日当たり摂食量

20 g!100 g体重で換算)に相当する。

9

や/N¥

H3COOC COOC2H5

2・5灘流圧測定方法

潅流装置の概略は Fig.5に示すに、 PeristalticPump (AC-2120, A TTO)、

圧トランスジューサー (TP-200T) 、血圧アンフ (AP・641G) 、電気刺

激装置 (SEN-3301,日本光電製)からなる。

潅流液として、K.rebs-Ringerbicarbonate (K.rebs)液(組成:NaCl 120 mM,

KCl 5.0 mM, MgS04 1.2 mM, NaHCO] 25.0 mM, EDTA -2Na 0.027 mM,

CaC12 2.4 mM, Glucose 11.0 mM ; pH 7.4)を用いた。 Kerbs液は、あらか

じめ 959らO2、5%CO2の混合ガスを飽和させ、 37

0Cに温めた蛇管内を通

して加温し、標本内を 5ml/minの定流量で潅流した。また、標本の乾燥

を防ぐ目的で、Krebs液 (0.5ml/min) を標本外に流した。蛇管の側枝か

ら圧トランスジューサーにて潅流圧を測定し、圧の変化を血管緊張度変

化として、ペンレコーダ上に記録した[25]0

Nicardipine Amlodipine

H H3C H

3

MH

CH 20CH 2CH 2 NH 2

N02

Pranidipine 戸

chu

¥』/H

HT

C

2

0

0

O

H

H

C

N

Fig. 4. Chemical structures of calcium antagonist (nicardipine, amlodipine and pranidipine )

2・3全身血圧の測定

SHRをペントバルピタール (50mg/kg腹腔内投与)にて麻酔した。頚

部を切開し頚動脈を剥離した後、頚動脈にヘパリン (1000U/ml,アッフ

ジョン)で満たしたポリエチレン製カニューレを挿入し観血的に頚動脈

圧を測定した。測定には、圧トランスジューサー (TP-200T,日本光電

製)、血圧アンプ (AP-641G,日本光電製)を用いた。

2-4腸間膜動脈灘流標本の作製

全身血圧測定後、開腹し腹部大動脈の上腸間膜動脈分枝部から上腸間

膜動脈ヘポリエチレン製カニューレを挿入した。その後、K.rebs液(組

成は 2・5で後述)を注入して血管床内の血液を洗い出し、腸間膜動脈血

管床を腸管ごと摘出した。摘出した血管床の盲腸側から十二指腸側に数

えて4本の動脈を残し、他の動脈は縫合糸で結染後切断した。 4本の動

脈を腸管の近くで切りはずして腸間膜動脈血管床の濯流標本を作製した

[25]0

2・6血管周囲神経刺激 (PNS)

j雀流圧が安定した後、上腸間膜動脈付近においた白金電極を介して電

気刺激装置にて経壁電気刺激(PNS)を行った。刺激条件は、パルス幅 1

msec、電圧 50V、4.8. 12 Hzの矩形波を 30秒間通電した。この刺激に

より潅流圧の上昇が観察された(Fig.6A)。この反応は神経薬理学的解析

によって、交感神経刺激による収縮反応であることが確認されている[2]0

次に 5μMguanethidine (東京化成工業)、 5~7μM methoxamine (日本新

薬)を含むKrebs液(MG-Krebs液)を潅流して、血管を収縮させ潅流圧を

一定レベルまで上昇させた。潅流圧が一定した後、 PNSを行った。刺激

条件はパルス幅 1msec、電圧 50V、0.5,1, 2, 4, 8 Hzの矩形波を 30秒間

通電した。この PNSによって潅流圧の減少、すなわち血管拡張反応が観

察された(Fig.6C)。この反応は神経薬理学的解析によって、 CGRP神経

10 11

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Amlodipine treatment

100

A

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2 2 E E ) ど ま g ・ E 宣 伝 S M』 ω色 z g z

1--"

bコ

Fig. 6. Typical records showing effect of long-term treatment with am lodipine on vascular responses to PNS,

NE,

A(

‘h and

CG RP in the perfused mesenteric vascular bed of SII R. PNS,

periarterial nerve stimulation (企).Nt.:

, injection of

norcpi nephri ne (

. ~ 1,

2ラ5nlllol).

ACh ,

injection of acetylcholine (

. ~ 0.0

1, O.

1,

1 nl11ol).

CG f{ P , injection

01' calcitonin gene-

related peptide (. ~ 100,

200 pmol)

.

PPV、papavenne

2・7norepinephrineおよび CGRP注入による血管反応の測定

血管収縮物質として交感神経伝達物質の norepinephrine(1, 2および 5

nmol:三共)をインフュージョンポンフ (HERVARD975 , USA) を用

いてカニューレ付近の潅流液中に注入し、潅流圧の変化を測定した (Fig.

6 B)。また、 MG-Krebs液の濯流によって血管を収縮させた状態で、間後

にCGRP神経伝達物質の CGRP (100および 200pmol :ペプチド研究所)

(Fig.6D)またはコリン作動薬 acetylcholine (0.01,0.1, 1 nmol :第一製薬)

を注入し弛緩反応を観察した(Fig. 6E)。弛緩反応は実験終了時の

papaverine (100μM:大日本製薬)潅流による最大弛緩を 100%とした

時の弛緩率で示した。実際の血管収縮反応および弛緩反応の記録図を Fig.

6に示した。

社)、カラム恒温槽 ATC-300(エイコム社製)、 WE-3Gグラファイト

電極付き電気化学検出器 ECD-300(エイコム社製)からなる装置を用い

た。測定条件は、移動相 10%メタノール(関東化学)、 600mgll Sodium

1-0ctanesulfonate(SOS :ナカライテスク)、 50mg/l EDTA . 2Na (和光純

薬)を含む 0.1M リン酸 buffer(pH6.0)を流速 0.23ml/minで流し、カラ

ム温度 250C、ECDの電極には加電圧 450mV vs Ag!AgCIの条件で

norepinephrineの測定を行った。実際の測定チャートを Fig.8に示した。

2・8カテコールアミン量の測定

腸間膜動脈潅流標本を用い、Krebs液にて 5m1!minの定流量で濯流し

た。標本を経壁電気刺激し、開始直後から 3分間濯流液を集め、潅流液

中に含まれるカテコールアミン量 (norepinephrine) を以下に示すアルミ

ナ吸着法 (Fig.7)にて濃縮し、電気化学検出器付き高速液体クロマトグ

ラフ CHPLC-ECD) で測定した[26]0集めた潅流液 18mlに、活性アル

ミナ 200mg (和光純薬)、内標準物質 (3.4-dihydrobenzylamine(DHBA) 100

ng!ml CArdrich Chem.) ) 100μiおよび 1M Tris-HCl Buffer pH9.5 (ナカラ

イテスク)0.5 mlを加えて 10分間撹枠し、セパコールミニカラム(生化

学工業)に通してアルミナを回収した。 このアルミナを蒸留水約 10ml

で洗い、 1000Xgで 10分間遠心脱水し、 100!-!M EDT Aを含む 2%酢酸 200

μlにてカテコールアミンを溶出した。 HJPLC-ECDは、ポンプ EP-300(エ

イコム社製)、カラム EicompackCA-50'DS 2.1mmφX 150mm Cエイコム

Collecting Perfusale for 3 min during PNS

↓4Adding f亡A叩川M 伺.... I 1 削 ng/m耐Iinternal sUlnd由伽er吋d(DHBA)川Iω μ凶l

』ー 1M Tris.HCI Buffer pH9.5 500μl Stirring for 10 min

↓ Collecting Almina in Sepacolmini colum

↓ Centrifugation

l000Xg for 10 min (4'C) よAdding可 2% acetic acid with 100μM EDTA200μi

m

lliv

e-n a

w

Centrifugation

l側 Xgro~o m;n (4t)

HPLC・ECD(20μI of injection volume)

Fig. 7. Assay protocol for catecholamine in the perfusate

14 15

実験成績および考察3

。同一.N【〈国

ZD

3-1全身血圧に及ぼす影響

nicardipineを飲料水と

0.0035%および 0.035%pranidipineを混合餌として与えて 7週間飼

Fig. 9に示すように薬物を与えなか

....,. L 平均血圧は 218.1+ 5.8mmHgの高血圧を示した。った control群では、

いずれのCa括抗薬投与群では平均血圧は低い値を示し、

投与群にも control群との聞に有意な差が認められた。

0.1% Fig. 9に 0.01%および 0.02%amlodipine、

して、

育した SHRの平均血圧値を示した。

れに対して各NE : norepinephrine

Retention time 6.14 min

DHBA : 3,4-dihydrobenzylamine Retention time 12.36 min

Mobile phase : 0.1M Phosphate Buffer containing (pH6.0) 6∞mg!1 sodium octanesulfonate

10% methanol, and 50 mg/l EDTA

•• 200

150

100

貸出

EE)と2mgh円四唱。。

-aE32

50

Fig. 8. Typical chart of HPLC

2・9統計学的検討

得られた結果は分散分

Dunnettおよび Tukeyの多重比較検

実験の結果はすべて平均値+S.E.M.で示した。

析(analysisof variance : ANOVA)後、

二群聞の比較には Student'st-test

危険率 5%未満を有意差有りと判定した。

定法を用いて統計学的処理を行った。

を用いた。

0.1 Nicardipine

0.01 0.02

Amlodipine

Control 。

Fig. 9. Mean blood pressure following 7 weeks treatment with amlodipine, pranidipine or

nicardipine in SHR.

Each column represents the mean :t:S.E.M. (n=子7). 村 Pく0.01vs non-treated control SHR.

17

16

Pranidipine

(凶

ZEE)ZS闘

志』角田

ze一2』

ω向日

40

g-創的

auzuZ問

20

80

Amlodipine

60

(凶

ZEE)ES由明

EaEgshL包

40

3-2血管周囲神経機能に及ぼす影響

(1)交感神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管収縮反応

腸間膜動脈潅流標本の動脈周囲神経を経壁SHR 静止緊張下における

電気刺激 (PNS4, 8, 12Hz)すると刺激頻度に依存した濯流圧の上昇が観

z-uw崎縄副』

Mg同

この反応は交感神経遮断薬 guanethidine、神経毒 tetrodotoxin察された。

20 αlアドレナリン受容体遮断薬 prazoSlnまたは 6・hydroxydopamineによる

。。交感神経刺激によ交感神経の化学的除神経によって消失することから、

12 8 4

A

12 8 4 を介する血管収縮反応であることがすでnorepinephrine って遊離されたPNS (Hz) PNS (Hz)

Nicardipine

non-treated SHR control

Amlodipine 0.01 %

Amlodipine 0.02 % FD

%

1d

弓M

Y

C

AO句

3

nワ

oohHMZA

AOAoao

e』

etwptw

nnn

-E

・E・2

nrnrnv

-』

-E-E

J

U

J

U

J

U

-2

・2「

nna

qa

M

F

L

V且

ra---

P

P

N

OA企

口--

(MZEE)E222色Eぷ

60

40 的ヨセ邑522』

ω国間

20

に確認されている[27]0

交感神経性血管収縮反応におよぽす各 Ca桔抗薬の長期投Fig. 10 は、

およびpranidipine

nicardipineの Ca桔抗薬はいずれも PNSによる血管収縮反応を抑制し、

amlodipine、与による影響を示したものである。

control群との聞に有意差が認められた。

千vjo

PNS (Hz)

Fig. 10. Effect of long-term treatment with amlodipine (0.01 % and 0.02%), pranidipine (0.0035% and 0.035 %) or nicardipine (0.1 %) on vasoconstrictor responses to periarterial nerve stimulation

(PNS ; 4, 8, 12Hz) in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents the mean ::t:S.E.M. (n= 5・7).*P<O.05, * * P<O.Ol vs non-treated control SHR.

19 18

② PNSによる norepinephrine遊雌量

静止緊張下における SHR腸間膜動脈濯流標本において PNS(8 Hz)に

より潅流液中に norepinephrineが検出されたo この norepinephrine遊離に

ついては、すでに神経毒 tetrodotoxin、Krebs液中からの Ca2+除去、 6・

hydroxydopamineによる交感神経の化学的除神経によって消失すること

から、交感神経終末から Ca2+依存性に遊離されたものであることが確認

されている[27]0

Fig. 11には、 PNSによる norepinephrine遊離量に及ぼす各種 Ca括抗薬

の長期投与の影響を示した。 amlodipineおよび pranidipine投与群では、

PNSによる norepinephrine遊離量が cont:rol群に比べ有意に抑制された。

一方、 nicardipine投与群では、 control群と比較して PNS による

norepinephrine遊離量は有意に増加した。

450

400

もお

;。・診凶 300

250

色Ez E 200

150 z 。

100

control 0.01 0.02

Amlodipine

0.0035 0.035 Nicardipine

Pranidipine

Fig. 11. Effect of long-term treatment with amlodipine (0.01 % and 0.02%), pranidipine (0.0035% and 0.035%) or nicardipine (0.1 %) on norepinephrine overflow evoked by PNS (8Hz) in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each column陀 presentsthe mean :tS.E.M. (n== 5・7)..P.:::O.05,. .P<O.Ol vs non-treated control SHR.

20

③ norepinephrine注入による収縮反応

静止緊張下における SHR腸間膜動脈潅流標本においてカニューレ付

近の潅流液中に norepinephrine(1, 2, 5 nmol)を注入すると、注入量に依存

した濯流庄の上昇すなわち血管収縮反応が観察された。この反応は神経

毒 tetrodotoxinや交感神経遮断薬 guanethidine前処置、ふhydroxydopamine

による化学的除神経によっては抑制されず、 α1アドレナリン受容体遮

断薬 (prazosin)によってのみ抑制されることから、血管平滑筋上に分布

する α1アドレナリン受容体刺激による血管収縮反応であることが確

認されている[27]0

Fig. 12に、 norepinephrine注入による収縮反応に及ぼす各種 Ca拾抗薬

長期投与の影響を示した o norepinephrine注入による収縮反応は、

amlodipine投与群では control群とほとんど差はみられなかった o

pranidipine (0.035%)および nicardipine投与群では 5pmol注入による反

応が抑制される傾向がみられた。しかし、 control群との問には有意な差

は認められなかった。

21

(2) CGRP神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管弛緩反応

潅流圧を上昇させた標MG-Krebs液の潅流によって血管を収縮させ、

すなわち血管弛緩反により頻度依存性の潅流圧減少、PNS 本において、

神経ペプチド枯渇薬この反応は神経毒 tetrodotoxin、応が観察された o

CGRP(8・37)によって消失する事から、

CGRP神経刺激によって遊離された内因性 CGRPの血管弛緩反応に基づ

受容体遮断薬CGRP capsalCln、

Amlodipine Pranidipine 20

15

,、“今FM

BEEE)ZS間的ど色

Z22』』邑EωmgbE

10

5

F

3

h

s

h

o

F

(凶

ZEE)E22』色

Ega』ω色旦

ωsmEUE同

5

く反応であることが確認されている[28,29]0

PNSによる血管弛緩反応に及ぼす各 Ca桔抗薬長期投与のFig. 13は、5 2

NE (pmol)

。2 5 1

いずれの Ca拾抗薬投与群も PNSによる血管影響を示したものである。NE (pmol)

control群との聞に有意な差はみられなかった。弛緩反応には影響せず、

non-treated SHR control

Amlodipine 0.01 %

Amlodipine 0.02 %

Pranidipine 0.0035 %

Pranidipine 0.035 %

Nicardipine 0.1 %

Oム企ロ・・

Nicardipine

F

3

A

O

P

3

白リ

2

2

1

1

貸出

EE)E222晶Z222邑Eω白"と話回

5

。a 5 2 1

23

NE (pmol)

Fig. 12. EfTect of long-term treatment with amlodipine (0.01 % and 0.02 %), pranidipine (0.0035 % and 0.035%) or nicardipine (0.1 %) on vasoconstrictor responses to bolus injections of norepinephrine (NE) in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents the mean :tS.E.M. (n= 5・7).

22

b )ー出冨a。M倒ωh50 置~ 目, トE ・r

L.I • 0.51 2

Or n

-h b

ロ。.: 50 a >< ~

ω 出

‘ー&圃園田園.

0.51 2

Amlodipine

¥ミす

' 4

PNS (Hz)

Nicardipine

4

PNS (Hz)

. 8

8

-:.; 50

-・aM a ω 園町

Z醤

Pranidipine

1 1

ー • 0.51 2 4

PNS (Hz)

o Don-treated SHR control d. Amlodipine 0.01 %

企 Amlodipine0.02 %

ロPranidipine0.0035 % ・Pranidipine0.035 % ・Nicardipine0.1 %

' 8

Fig. 13. Effect of long-term treatment with amlodipine (0.01 % and 0.02 %), pranidipine (0.0035 % and 0.035 %) or nicardipine (0.1 %) on vasodilator responses to periarterial nerve stimulation (PNS ; 0.5, 1, 2,4, 8Hz) in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents the mean :tS.E.M. (n= 5・7).

24

② CGRP注入による血管弛級反応

MG-Krebs液の潅流によって血管を収縮させ、潅流圧を上昇させた標

本において、カニューレ付近の潅流液中に CGRPを注入すると注入量依

存性の濯流庄の低下、すなわち血管弛緩反応が観察された。この血管弛

緩反応は PNSによる弛緩反応と類似したパターンを示し、 CGRP受容体

遮断物質 CGRP(8・37)によって抑制されることから血管平滑筋上に分布

する CGRP受容体の刺激によって生じていることが確認されている[28]0

Fig. 14は、 CGRP注入による血管弛緩反応に及ぼす各 Ca括抗薬長期

投与の影響を示したもである o いずれの Ca措抗薬投与群も CGRP注入

による弛緩反応に影響を及ぼさず、対照群との聞に有意な差はみられな

かった。

25

3・3考察。control群と比較して有意Ca措抗薬を長期間投与した SHRの血圧は、Pranidipine Amlodipine

amlodipine しかし、 short-acting型の nicardipine投与群では、に下降した。

および pranidipine投与群と同程度の有意な血圧低下を示すには両薬物にぽ、b、

白。ヨ50M

= ω 出

これは nicardipineの血中からの消失が比べ 10倍の濃度が必要であった。

また、 pranidipineにおいては amlodipineより 1/5早いためと考えられる。

投与方法が本実験では、の低濃度で有意な血圧降下が得られた o

実際の臨床と異なるため簡単に比較することができないが、amlodipine

1∞

,蘭hr、b 、‘"g

さ 50a >< CIS ω 出

低用量での効果が期待できると考えられる[30]0で使用される際、200

CGRP (pmol)

100 品

200

CGRP (pmol)

100

用いSHR腸間膜動脈周囲神経の PNSによる交感神経性収縮反応は、Nicardipine

交感神経伝一方、た Ca括抗薬いずれの投与群でも有意に抑制された。

達物質である norepinephrine注入による収縮反応に対しては、いずれの Ca

o

Ca拾抗薬長これらの結果は、括抗薬も有意な抑制作用を示さなかった。non-treated SHR control

Amlodipine 0.01 %

Amlodipine 0.02 %

Pranidipine 0.0035 %

Pranidipine 0.035 %

Nicardipine 0.1 %

OAAD--

50

期投与が血管平滑筋上の α1アドレナリン受容体を介する収縮反応に影

(ぷ)巴。zauRaZ出

交感神経刺激による血管しかし、響を与えていないことを示している。

収縮反応は抑制されていることから、交感神経からの norepinephrine遊

本研究において long-事実、離が抑制されている可能性が示唆される。100 2∞

CGRP (pmol)

acting型 Ca括抗薬投与群では PNSによる norepinephrine遊離が有意に抑

従って、 long-acting型 Ca括抗薬は交感神経からの伝達物質制された。Fig. 14. Effect of long-term treatment with amlodipine (0.01 % and 0.02 %), pranidipine (0.0035 % and 0.035 %) or nicardipine (0.1 %) on vasodilator responses to bolus injections of CGRP in the perfused

mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents the mean ::!:S.E.M. (n= 5・7).

遊離を抑制することによって交感神経機能を抑制していると考えられる o

長期投与により交感一方、 short-acting型 Ca措抗薬の nicardipineでは、

神経刺激による血管収縮反応の抑制がみられたが、 norepinephrineの神経

性遊離量は著明に増加した。さらに nicardipine投与群では、 norepinephrine

の高濃度注入での血管収縮反応が抑制される傾向がみられた。従って、

交感神経からの伝達物質が高濃度に遊離されたため αlアドレナリン受容

27 26

体の感受性低下すなわち downregulationが生じている可能性も考えられ

る。その結果、神経からの伝達物質の遊離促進が生じているにもかかわ

らず、交感神経伝達は抑制され神経性の収縮反応は抑制されたものと考

えられる。一方、後述するように交感神経性収縮反応に括抗的に作用す

るCGRP神経は、Ca括抗薬投与群では抑制されない。本実験における PNS

は交感神経および CGRP神経を同時に刺激するため、 一方の神経の抑制

は措抗している神経の反応を増大させる o nicardipineの場合、交感神経

性の反応の抑制の結果、 CGRP神経性反応が大きくなり、 PNSによる収

縮反応の抑制が生じている可能性も考えられる。

Ca桔抗薬が血管平滑筋の L型 Ca2+チャネルを遮断して弛緩作用を発現

することはよく知られているが、神経終末にあると考えられている N 型

Ca2+チャネルに対する作用は少ないと考えられている。しかし、本研究

から long-acting型 Ca括抗薬が、交感神経の伝達物質遊離を抑制したこ

とから、 Ca措抗薬の長期投与によって N型 Ca2+チャネルが抑制された

可能性も考えられる。一方、 short-acting型 Ca括抗薬では逆に

norepinephrine遊離の促進がみられたことから、伝達物質遊離が促進され

ている可能性が考えられる o このことは、 short-acting型Ca括抗薬では、

投与中止によって rebound現象として交感神経機能の充進が起きる可能

性があることを示唆している。

SHR腸問脈動脈に分布する血管拡張性神経刺激による CGRP神経の血

管弛緩反応及びその伝達物質 CGRP注入による弛緩反応に対して、いず

れの Ca桔抗薬長期投与も影響しなかった。この結果から、 Ca桔抗薬の

長期投与は CGRP神経機能には影響しない可能性が示唆される o

CGRP神経は、伝達物質 CGRPの血管弛緩反応を介して交感神経機能

を抑制することが知られている[4,5, 31]0 一方、交感神経は伝達物質

28

CGRP神経上に作用し、 CGRP神経からの CGRP遊離を抑制して、 CGRP

神経機能を抑制していることが報告されている[4,5]0従って交感神経機

能の抑制されることによって、 CGRP神経機能が相対的に促進される o

事実、第 2章で述べるように SHRにおいて抗高血圧薬 ACE阻害薬の長

期投与によって交感神経機能の抑制と CGRP神経機能の冗進が観察され

た。本研究においては、 long-acting型 Ca括抗薬長期投与によって交感

神経機能抑制が生じているにもかかわらず、 CGRP神経機能には変化が

生じていないことが明らかとなった。おそらく long-acting型の Ca桔抗

薬は長期投与によって交感神経機能をより選択的に抑制すると考えられ

る[32,33]0 その結果、相対的に CGRP神経機能が高くなり、血管弛緩は

より強くなると予想される o 結果的には、血管周囲神経機能は改善され

ていると推定される。 long圃 acting型 Ca括抗薬の血圧降下作用は、臨床

的にも安定していることが知られているが、血管周囲神経機能の正常化

が寄与している可能性も考えられる o 一方、 short-acting型 Ca括抗薬で

は交感神経伝達は促進されており、交感神経を介した反射性頻脈や服薬

中止により重篤な副作用の危険性が予想、される o しかし、 long-acting型

の Ca措抗薬は、交感神経機能を抑制するため、そのような副作用は少

ないと考えられる o

29

4 小括

1) Ca桔抗薬長期投与によって全身血圧は非投与 control群と比較し

て有意に低下した。

2) long-acting型 Ca措抗薬 amlodipineおよび pranidipine長期投与に

よって、交感神経終末からの norepinephrineの遊離は抑制された。

3 ) 一方 short-acting型 Ca措抗薬 nicardipine長期投与では、交感神経

終末からの norepinephrineの遊離促進を起こした。

4) いずれの Ca桔抗薬も血管拡張性神経である CGRP神経機能には

影響を及ぼさなかった。

5) 以上の結果より、 long-acting型 Ca括抗薬は主に交感神経機能を

抑制し、相対的に CGRP神経機能を強めて血管拡張を起こして、

血圧降下作用に寄与していると考えられる o short -acting型 Ca括抗

薬は、交感神経伝達物質遊離が充進しており、反射性の交感神経

克進等の副作用が考えられる o 一方、 long-acting型はこのような副

作用は少ないと考えられる。

30

第 2章 アンジオテンシン変換酵素 (ACE)阻害薬 temocapril長期投与

の影響

1 緒言

SHRを用いて ACE阻害薬の長期投与を行い、抵抗血管周囲神経機能

に対する影響について Ca桔抗薬と同様に検討するととを目的とした。

現在、臨床に用いられているレニンーアンジオテンシン(RA)系を抑制

する抗高血圧薬には Tab.3[34・36]に示すように ACE阻害薬と angiotensin

E受容体 (AT1)括抗薬の 2種類がある o

Tab.3.臨床で使用されているACE阻害薬およびATl括抗薬

T/P比・1.2

Drug (文献より) Tmax (h) t 1/2 (h) 主な排権部位

alacepril 3.9 4.9 腎

imidapril 7.3 8.2 腎

temocapril 1.6 21.5 腎・肝

delapril 1.6 1.1 腎

ACE inhibitor captopril 25 腎

cilazapril 51 2.0 66.0 腎

trandolapril 50.,90 6.8 187.7 腎・肝

enerapril 7'0 4.0 14.0 腎

Iisinopril 48 7.0 33.7 腎

perindpril 75 -100 10.7 105.4 腎

losartan 2.0.3 4.2 肝 4

AT1 antagonist I candesartan 5.0 11.2 肝

yalsartan 3.0 5.0 肝

*1 降圧薬服用後の効果からプラセボ効果を差し引いた最大降圧度(peak値)と次回服用前の最小降圧度

(trough値)の比を降圧薬の作用持続性を客観的にみる指標。一般にT/P比は100%に近いほど、 24時間安定

した降圧効果が持続している薬剤と考えられる。 ・2α 、βの二相になるものについては、 t1/2β を表記

勺食後の場合4.0hrlこ延長川 Cl4ラベルしたlosartanを投与した実験では、 58%が糞中に排池された。

31

ACE阻害薬の抗高血圧作用の主な機序は angiotensin1から angiotensin

Hへの変換酵素 (ACE) を抑制して angiotensinIIの産生を抑制すること

で、これにより angiotensinIIによる血管収縮の抑制することである o ま

た、 ACEは基質として血管弛緩物質 bradykininを分解するので、 ACE抑

制は bradykinin濃度上昇を生じ、その結果として生じる NO遊離、プロ

スタグランジン(PGs)産生、内皮由来過分極因子(EDHF)遊離などを介し

ての血管弛緩が考えられている[37,38]0一方、 AT1括抗薬は angiotensin

Eの受容体を遮断して作用を示すが、 ACE以外の経路から産生された

angiotensin IIの作用をも抑制することができ、 RA系をより強力にブロッ

クすることができる。さらに ATl受容体がブロックされることによって、

フィードパック機構になって RA系が活性化され血中の angiotensinIIが

上昇し、 angiotensinn受容体のサブタイフである AT2受容体を相対的に

刺激すると考えられている o AT2受容体の刺激は AT1受容体を介する

作用とは相反する血管拡張や細胞増殖抑制などをもたらす[39-41]。

ACE阻害薬は緩徐で持続のある血圧降下が期待できるが、排t世系とし

て腎排池の占める割合が大きいので腎機能の低下した高齢者や腎不全患

者 (enaraprilでは、腎不全患者においては/2が 2倍に延長される) [42]

では使用が難しいとされていた。そのため、胆汁排池型 temocaprilが開

発されている o temocaprilは胆汁への排池が全排池の 459らであり、腎機

能の低下した高齢者でも比較的安全に使用ができる[43]0

第 2章では、胆汁排?世型の ACE阻害薬として temocaprilおよび対照薬

として血管拡張薬の hydralazineを SHRに長期投与し、抵抗血管周囲神

経機能の変化について検討した。

2 実験材料ならびに実験方法

2・1実験動物

「第 1章 2-1実験動物」と同様に行った。

2-2使用薬物

temocapril (三共製薬)および hydralazine(SIGMA Chemical Co.)を 0.1%

の NaHC03に溶解し、 temocaprilおよび hydralazineともに 0.005%になる

ように調製した。動物に各溶液を飲料水として与え、 8週齢から 8週間

飼育した。なお各薬物の構造式を、 Fig.15に示した。

SEW n

z

a

a

ra JU

VJ

H

!

Fig. 15. Chemical structures 0(' temocapril and hydralazine

2・3全身血圧の測定

「第 1章2・3全身血圧の測定」と同様に行った。

2・4腸間膜動脈濯流標本の作製

「第 1章 2-4腸間膜動脈潅流標本の作製Jと同様に行った。

2・5瀧流圧測定方法

「第 1章 2・5濯流圧測定方法」と同様に行った。

32 33

2-6血管周囲神経刺激(PNS)

「第 1章 2・6血管周囲神経刺激 (PNS)Jと同様に行った。

2・7norepinephrineおよび CGRP注入による血管反応の測定

「第 1章 2・7norepinephrineおよび CGRP注入による血管反応の測定」

と同様に行った。

2・8カテコールアミン量の測定

「第 1章 2・8カテコールアミン量の測定」と同様に行った。

2・9CGRP量の測定

腸間膜動脈潅流標本を用いて、 MG-Krebs液を 5m1!minの定流量で潅

流し、 j整流圧を上昇させた。潅流圧が安定した後、 PNSを行い、経壁電

気刺激前 3分間および開始から 3分間の潅流液を集め、潅流液中に含ま

れる CGRP量を以下に示す C18カラムを用いた固相抽出法にで濃縮し、

酵素結合免疫測定法 (enzymelinked immunosorbent assay ELISA) で測

定した。集めた潅流液 18mlをC18カラム (BONDELUT C18⑧, VARIAN

製)に 1m1!minの流速で吸着させ、 1% trifluoroacetic acidを含む 60%

acetonitrile 1 mlで抽出した。抽出溶液は減圧遠心乾燥機にて濃縮を行っ

た。

CGRP量の測定は市販の CGRP ELISA-kit (Peninsula Laboratories, Inc.

製)により測定した。このキットは測定精度を向上する目的でアビジン.

ビオチン複合体の形成、競合的抗体結合法の方式をとっているため、標

準曲線が sigmoid曲線となる。そのため、測定に際しては誤差を抑える

ためサンプル中の CGRP量を概算にて sigmoid曲線の直線部分になるよ

34

うに希釈調節した。

調整したサンプルをキットに同封されているプロトコール (Fig.16)

に従って、 CGRP量の測定を行った。

50μ1 into 96 wells immunoplah~

↓:Adding ~ Primary antisera 25μl Adding

~ 9 Biotinylated CGRP 25μi … on “伽ω川…rリ山2川均h加o:γ(什川ro…oWell washing (5 times)

↓ョ Adding Stre附山ωtedHorseradish Peroxid制

(SA-HRP solution) 100μl

Incubation 伽川1.5h恥寸γγo17了γ)Jf;!?十s( … … ture)

Well washing (5 times)

↓ 之 Adding 山山…“白町州川Eげ刷ゆyμ山山l胎b(TMBs則oωlu凶t“io卯n)川10ω0μμI

Incubation for 0.5"" 1 h~urs (room teml~erature)

I .. Addißl~: ψミ ロ 2:NHCII00μi

Measurement optical density 450 nm

Fig. 16. Enzyme linked immunosorbent assay(ELISA) procedure

2・10統計学的検討

「第 1章 2・9統計学的検討」と同様に行った。

35

Control 150 実験成績および考察

3・1全身血圧に及ぼす影響

3

Fig. 17にtemocaprilO.005%および hydralazine0.005%を飲料水として与

Fig. 17に示すようにえて 8週間飼育した SHRの平均血圧値を示した。

t Guanethidine 5 μM + M ethoxamine

-NE 2 nmol

12 Hz 。

Temocapril

2Hz

v

1 Hz

v

150

Guanethidine 5μM + M ethoxamine

szgg)どまお』LZ22℃ωLESE

平均血圧 177.4+ 3.9 mmHgの高血薬物を与えなかった control群では、

これに対して各薬物投与群では低い平均血圧を示し、 control圧を示した。

群との聞に有意な差が認められた。

••

200

150

100

Hydralazine

BEEE)EE訟と色唱。。

zssE

50

CGRP 5OSoi 4Hz

v lHz2Hz • •

12 Hz

4Hz

150

Temocapril

0.005%

Fig. 17. Mean blωd pressure following 8 weeks treatment with temocapril or hydralazine in SHR.

Each column represents the mean ~ S.E.M. (n= 5・6).** P<O.Ol vs non-treated controJ SHR.

由tvn

%

iuF3

mω AU

ou

vd H

Control

Guanethidine 5μM + M ethoxamine

Fig. 18. Typical records showing effect of long-term treatment with temoωpril or hydralazine

on vascular responses to PNS, NE and CGRFT in the perfused mesenteric vascular bed of S HR

PNS, periarterial nerve stimulation (A). NE , inJection of norepinephrine (. : 1, 2、5nmol).

CGRP吋 calcitonin!:,'ene-related peptide (・:50、100pmol). PPV. papaverine

37

36

②PNSによる norepinephrineの遊雌量3-2血管周囲神経機能に及ぼす影響

静止緊張下の腸間膜動脈濯流標本における PNSによるFig. 20 には、(1)交感神経機能に及ぼす影響

① PNSによる血管収縮反応 の長期投与の影響を示した。norepinephrine遊離量に及ぼす temocapril

PNSによる norepinephrineの神経性遊離は control群に比べて temocapril静止緊張下における腸間膜動脈潅流標本のFig. 18Aおよび Fig.19は、

特に PNS8 Hzにおいて control群との間に有意投与群において減少し、PNSによる交感神経性血管収縮反応に及ぼすtemocaprilおよび、hydralazine

な差が認められた。長期投与の影響を示したものである o temocapril投与群では、 8および 12

EコControl

区mmm~1 Temocapril 0ω5%

8 12

PNS (Hz)

$

Hzの PNSによる収縮反応は control群と比較して有意に小さかった。

250 収縮反応は control群との問に有意な差hydralazine長期投与群では、方、

200

150

100

(-Eh色)診。巴』

ω除。ω旦』』内問

ωzEZ。z

調k 酒k

0

・口

Control Temocapril 0.005 %

Hydralazine 0.005 %

は認められなかった。

80

70

60

50

40

30

20

(回国

EE)zgg』色更ぷ

24』ω色EggEω混とω巴同

Fig. 20. Effects of long-term treatmeot with temocapril 00 norepinephrioe overflow

evoked by PNS in the perfused mesentelrIC vascular bed of SHR. Each column represents the mean +S.E.M. (n= 5・6).* P<O.05 (Student's t-test)

10

。12 8 4

39

PNS (Hz)

Fig. 19. Effect of long-term treatment with temocapril or hydralazine on vasoconstrictor

responses to PNS in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents the mean ::tS.E.M. (n= 5・7).*叩く0.01vs non-treated control SHR.

38

(2)CGRP神経機能に及ぼす影響③ norepinephrine注入による収縮反応

① PNSによる血管弛緩反応静止緊張下の腸間膜動脈瀧流標本におけるFig. 18Bおよび Fig.21に、

T.1G-Krebs液潅流によって潅流圧を上昇さFig. 18Cおよび Fig.22は、norepinephrine注入による収縮反応に及ぼす temocaprilおよび hydralazine

による血管弛緩反応に及ぽすPNS せた腸間膜動脈潅流標本におけるいnorepinephrine注入による血管収縮反応は、長期投与の影響を示した。

PNS temocaprilおよび hydralazine長期投与の影響を示したものである。有意な差は認められなずれの投与群でも control群と同様な反応を示し、

control群に比べて temocapril投与群において増による血管弛緩反応は、かった。

強され、 4、8Hzによる反応は、有意な差が認められた。一方、 hydralazine

投与群では弛緩反応が増強するものの、 有意な差はみられなかった。

Control

Temocapril 0.005 %

Hydralazine 0.005 %

0

・ロ

8・

8 4

一一一

(民)g。右側一言明言出

Control

Temocapril 0.005 %

Hydralazine 0.005 %

0

・口

(凶国

EE)222』色

EAga包

ggE22g』ωZ同

30

20

10

5 2 1

100

NE (nmol)

Fig. 21. Effect of long-term treatment with temocapril or hydralazine on vasoconstrictor responses to bolus infusions of norepinephrine (NE) in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents the mean + S.E.M. (n= 5・7).

Fig. 22. Effects of long.term treatmeot with temocapriJ or hydralazine 00 vasodiJator respooses to PNS (1, 2, 4, 8Hz) in the pt!rfused mesenteric vascular bed of SHR.

Each point represents the mean +S.E.M. (n= 5・7)・**P<O.Ol vs non-treated control SHR.

41 40

②PNSによる CGRP遊陵量③CGRP注入による血管弛緩反応

MG-Krebs液潅流によって潅流圧を上昇させた腸間膜動脈潅流標本に潅流圧を上昇させた腸間膜動脈潅流標本にFig. 180および Fig.24は、

潅流液中に頻度依存性の CGRP量が増おいて、注入による血管弛緩反応に及ぼすCGRP おける

PNS (4, 8 Hz) によって、

および

temocapril投与群にお

いて CGRP100 pmol注入による弛緩反応の増大がみられ、

temocapril

h ydralazine長期投与の影響を示したものである o

Krebs液中からの Ca2+除

PNS 従って、CGRP枯渇薬 capsalcln処置によって消失する[29,44]0

この CGRP遊離は神経毒 tetrodotoxin、加した。

去control群との

外液 Ca2+に依存することが確認されによる CGRP遊離は神経性であり、

hydralazine投与群では CGRP注入によ一方、間に有意な差がみられた。

る反応は有意に抑制された。PNSによる CGRP遊離量に及ぼす temocaprilFig. 23には、ている[29]0

Control

Temocapril 0.005% Hydralazine 0.005 %

0

・ロ」一ーー . 5o 100

CG DlP (pmol)

control PNS (4, 8Hz)による CGRP遊離は、の長期投与の影響を示した。

。群と比べて temocapril投与群において有意な増加がみられた。

1.5

50

(GV)ZS百一EWZ出仁コ Control

医亙 Temocapril附 5%

100

••

1

(-E¥ちE』)bp。巴』

ω玄wh出

ouzz

0.5

Fig. 24. EfTects of long-term treatmen't with temocapril or hydralazine on vasodilator responses to bolus injection of CGRP in the perfused mesenteric vascular bed of SHR Each point represents the mean :t S.E.ML (n= 4-6). *P<O.05 vs non-treated control SHR.

43

4

PNS (Hz)

Fig. 23. Effects of long-term treatment with temocapril 00 CGRP overnow evoked by PNS in the perfused meseoterIc vascular bed of SHR. Net overf1ow = [PNS-induce release] -[spontaneous release]. Each column represents the mean ::tS.E.M. (n= 5・6).・P<O.05,*.P<O.Ol (Student's t-test)

42

3・3考察

ACE阻害薬 temocaprilを長期間投与した SHRの血圧は、 control群と

比較して有意に下降した。この降圧作用は Ca括抗薬や血管拡張薬

h ydralazineより低用量で同等以上の効果が得られた。これは、 ACE阻害

薬が Ca括抗薬に比べて作用の持続性があることに関係していると考え

られる。実際、臨床の場において ACE阻害薬は Ca桔抗薬のように製剤

的に徐放化を行わなくても、 1日1回の投与により安定した血圧下降作

用が得られている。

腸間膜動脈周囲神経の PNSによって生じる交感神経性収縮反応に対し

て、 temocapril長期投与群は有意な抑制作用を示し、交感神経終末から

の norepinephrine神経性遊離が抑制された。しかし、交感神経伝達物質

である norepinephrine注入による収縮反応に対しては有意な抑制がみら

れなかった。これらの結果より、 temocaprilの長期投与は、交感神経終

末からの norepinephrine遊離を抑制したため、動脈周囲神経の PNSによ

る交感神経性収縮反応が抑制されたと考えられる。また後述するように、

CGRP神経機能も充進していることから、 Ca桔抗薬長期投与と同様に相

対的に CGRP神経反応が大きくなったため交感神経性収縮反応が抑制さ

れたとも考えられる o 一方、 hydralazine投与では血圧降下が起こってい

るにもかかわらず、交感神経機能の抑制はみられなかった。従って、 ACE

阻害薬でみられた交感神経機能の抑制は血圧降下のために生じたもので

はないと考えられる。

レニンーアンジオテンシン (RA) 系の効果ホルモンである angiotensin

Eは特異的な受容体 (AT1および AT2受容体)を介して循環動態を維

持するもっとも重要な昇圧系である。血管拡張薬に分類される ACE阻

害薬は、強い血管収縮作用を示す angiotensinIIの生成を抑制することに

44

よって降圧効果を示すと考えられていた。しかしヒトにおいては、 ACE

非依存性の angiotensinII産生系(キマーゼ、カリクレインなど)が存在

し[45]、ACE阻害薬における降圧効果は血中の ACE活性阻害だけでは

説明ができない部分があることが知られている o 実際、正常血圧ラット

Wistar Kyoto (WKY)と比べて SHRにおいては、血中のレニン値や、 ACE

活性に差はみられないが、組織(腎、脳、心臓など)の ACE活性およ

び、angiotensinII濃度は有意にSHRで高値を示すことが報告されている[46,

47]0 また、神経による血圧維持調節機構に圧受容器反射経路が存在する

が、 SHRでは WKYに比べ感受性が低下しており、 ACE阻害薬、 ATl

3吉抗薬投与によって改善されるという報告がある[48,49]0このように RA

系は交感神経活動克進作用をはじめ、血圧・水・電解質調節にも重要な

役割を有しているため、組織 ACE活性や ATl受容体の抑制は血圧下降

に大きな役割を担っていると考えられる[50]0

血管拡張性神経である CGRP神経による血管弛緩反応及びその伝達物

質 CGRPの反応は、 temocapril長期投与により有意に増強された。また、

ACE阻害薬 captoprilでも同様の結果が報告されていることから、 ACE

阻害薬の長期投与は、 SHRの減弱した CGRP神経機能を改善する作用が

示唆される[17,18]0 SHRにおいて、 angiotensinIIは CGRP神経からの

CGRP遊離を抑制すること、さらにとの抑制作用は加齢によって増大す

ることが知られている[17,51, 52]0 従って、 ACE阻害薬の長期投与は

angiotensin IIの産生を抑制する結果、 CGRP神経機能を改善したと考え

られる o最近、脊髄電気刺激によって生じる CGRP神経性降圧反応が SHR

では低下していること、この低下した反応が ACE阻害薬 captoprilで改

善されることが明らかにされた[17]0 このことも SHRにおける CGRP神

経機能低下に angiotensinIIが関与していることを示唆している o 近年、

45

ACE阻害薬には、長期投与によって SHRにおける血管肥厚や心肥大な

どの臓器障害を改善する効果、すなわち心血管系のリモデリング作用が

あることが報告されている[53,54]0従って、 ACE阻害薬長期投与は心

血管系を支配する神経系のリモデリングを起こす可能性も考えられる。

46

4 小括

1) temocaprilおよび hydralazine長期投与によって SHRの平均血圧は

control群と比べて有意に低下した。

2) h ydralazine長期投与による交感神経機能の抑制はみられなかった。

また、 CGRP神経機能にも影響を及ぼさなかった。

3) temocapril長期投与によって、交感神経性収縮反応および交感神

経終末からの norepinephrineの神経性遊離が抑制された。

4) temocapril長期投与によって CGRP神経性血管弛緩反応の増強と

CGRP神経からの CGRP遊離量の増加がみられた。

5 )以上の結果より、 temocapril長期投与は交感神経機能の抑制と、

CGRP神経機能の冗進作用を示し、このことが安定した血圧調節に

関係していると考えられる。したがって、 SHRにおける CGRP神

経機能の低下には RA系が関与している可能性が示唆された。

47

第 3章 ACE阻害薬temocaprilとbradykininB2受容体括抗薬 FR172357

の長期併用投与の影響

1 緒言

第 2章では、 ACE阻害薬の長期投与が SHRにおいて低下した CGRP

神経機能を改善することを明らかにし、その機序として RA系の関与を

示唆した。 ACE阻害薬の血圧下降作用機序として、 angiotensinIIの産生

を抑制することにより angiotensinIIによる血管収縮の抑制、および

bradykinin分解抑制から bradykinin濃度の上昇の結果生じると考えられ

る NO、プロスタグランジン(PGs)、内皮由来過分極因子(EDHF)遊離を介

しての血管弛緩が考えられている[37,38]0

angiotensin 1

< Endothelium >

NADH Oxydase↑

cGMP 1 cAMP ↑

< Vascular smooth muscle >

Fig.25. bradykininによる血管弛緩作用(ラット踊間膜動脈)

bradykininは、炎症時に局所的に産生され、内因性発痛物質として発

痛作用、血管透過性充進作用などを有することが知られるペプチドで、

血管平滑筋に対しては血管内皮細胞を介して弛緩作用を示すことが知ら

れている CFig.25) 。また、 bradykininは ACE阻害薬による心血管系の

48

リモデリング作用、内皮機能改善作用への関与が考えられており [53・55]、

ACE阻害薬長期投与による血管周囲神経機能に対する作用を研究する上

で重要な内因性物質である o

bradykinin受容体には、 Blと B2の2種類存在するが、各受容体の分

布は異なり、また動物種、生体聞の部位によって作用が異なっている o

Bl受容体は、大動脈、腎に局在し bradykinin刺激によって血管収縮を起

こすことが知られている[56]0一方、 B2受容体は腸間膜動脈の内皮細胞、

血管平滑筋をはじめ広く存在している[57,58]0ラット腸間膜動脈血管瀧

流標本を用いた実験において、 bradykininは短時間の強い弛緩反応に続

いて、収縮反応を起こし、その後持続性の弛緩反応を示す 3相性の血管

反応が観察されている[59,60]。最初の弛緩反応は、デオキシコール酸を

用いて内皮を除去することによって消失し、 NO合成酵素阻害薬である

L-nitro-arginineによって抑制されることから内皮依存性の NOによるも

のと考えられる o 2相自の収縮反応は、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻

害薬である indomethacinによって抑制されることから、 COXにより生成

するプロスタグラジン類、およびトロンボキサン類によるものと考えら

れる[59-61]0最後の持続性のある弛緩反応は、 CGRP受容体措抗薬であ

る CGRP(8・37)によって抑制され、また capsalcln前処置により消失する

ことから CGRP神経によるものと考えられている。さらにこれらの反応

は、 Bl選択性作動薬である Des-Arg9-bradykininではみられず、 B2選択

性括抗薬である D-Arginyl-[Hyp3,Thドペ D-Phe 7]-bradykininによって抑制

されることから、 B2受容体を介した反応である[59]0 このようにラット

腸間膜動脈において bradykininは複雑な血管反応を示すので、 ACE阻害

薬長期投与による血管周囲神経機能変化に内因性 bradykininが関与して

いる可能性が考えられる D

49

第 3章では、血管周囲神経機能に及ぼす ACE阻害薬の作用における

bradykininの役割を検討する目的で、経口投与可能な非ペプチド性

bradykinin B2受容体措抗薬[62,63]である FR172357を用いて検討した。

2 実験材料ならびに実験方法

2・1実験動物

「第 1章2・1実験動物」と同様に行った。

2-2使用薬物

SHRにtemocapril0.005%溶液(調整方法は第 2章を参照)を飲料水と

して与え、 8週齢から 8週間飼育した。また、非ペプチド性 bradykininB2

受容体桔抗薬 FR172357(藤沢薬品)は 0.5%methylcelluloseに懸濁し、

胃ゾンデを用いて 20mg/kglday 経口投与を行った。なお FR172357の

構造式を Fig.26に示す。

H

H

川、、

,F,tu

問、

。Fig. 26. Chemical structure of FR172357

2・3全身血圧の測定

「第 1章 2・3全身血圧の測定」と同様に行った。

2・4腸間膜動脈濯流標本の作製

「第 1章2・4腸間膜動脈潅流標本の作製」と同様に行った。

50 51

実験成績と考察

3・1全身血圧に及ぼす影響

3

と同燥に行った。

2・5灘流圧測定方法

「第 1章 2・5i整流圧測定方法」FR172357 20mg/kg/dayおよび両薬物を併Fig. 27に temocapril0.005%、

用投与し 8週間飼育した SHRの平均血圧値を示した。 temocapril単独投

control群と比較して与群および temocaprilと FR172357併用投与群は、と同様に行った。

2・6血管周囲神経刺激 (PNS)

「第 1章 2-6血管周囲神経刺激 (PNS)J

control FR172357単独投与群では、

群と同じ値を示し血圧の変化は認められなかった。

一方、有意に低い平均血圧を示した。

(凶巴

E

2・7norepinephrineおよび CGRP注入による血管反応の測定

「第 1章 2-7norepinephrineおよび CGRP注入による血管反応の測定」

と同様に行った。

E)ど

2・8カテコールアミン量の測定

ヨ切切れW』【国唱。。-

と同践に行った。「第 1章 2-8カテコールアミン量の測定」

100

80

azRW

と同様に行った。

2・9統計学的検討

60

~ 「第 1章 2-9統計学的検討」

40

20

o FR17235720mg/kg/day + +

+ + Temocapril 0.005 %

Fig. 27. Changes in mean blood pressur'e following 8 weeks treatment with temocapril or FR172357 or 8 weeks combined treatment with temocapril and FR172357 in SHR. Each column represents the mean +S.E,M. (n= 5-7).日 Pく0.01vs non-treated control SHR.

53 52

② PNSによる norepinephrineの遊降量

PNSによる静止緊張下の腸間膜動脈潅流標本におけるFig. 29には、

3・2血管周囲神経機能に及ぼす影響

(1)交感神経機能に及ぼす影響

norepinephrine遊離量に及ぼす temocaprilとR172357の長期併用投与の影① PNSによる血管収縮反応

FR172357単独投与群および両薬物temocapril単独投与群、響を示した。Fig. 28には静止緊張下の腸間膜動脈瀧流標本における PNSによる交

併用投与群のいずれの投与群も PNSによる norepinephrine遊離を抑制し、感神経性収縮反応に対する temocapril と FR172357の長期併用投与によ

特に FR172357の単独投与群control群との聞に有意な差が認められた。temocaprilと FR172357併用投temocapril単独投与群、る影響を示した。

Hz刺激時の遊離量が 60.8+ 4.3 pg/mlとcontrol群の 148.9+14.6 8 では、PNS (8 Hz)による収縮反応が control群に比較して有意に抑制与群では、

pg!mlの半分以下となり、著明な遊離抑制が認められた。一方、 temocapril有意抑制傾向がみられたものの、FR172357単独投与群では、された。

とFR172357併用投与群における norepinephrine遊離量は各単独投与群の差はなかった。

仁コ control

蕊~ temocapril

圃盟 temocapril+削72357-四172357

250

50

200

150

100

中間であった。

(-Ehe注。巴・固ま。

hwzzz色ω回一色と。z

Control FR172357 Temocapril Temocapril + FRl72357

0

・ロ・

占"

」ー一一12 8

PNS (Hz)

80

70

60

50

40

30

20

貸出

EE)22mg包Egsh包角田宮ωEEωmgbロ同

12 8

。Fig. 28. Effect of long-term combined treatmen~~ with temocapril and FR172357 on vasoconstrictor responses to PNS in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents the mean + S.E.M. (n= 5・6).本 *pく0.01vs non-treated control SHR.

PNS (Hz)

Fig. 29. Effect of long-term combined treatment with temocapril and FR172357 on

norepinephrine overflow evoked by PNS (8, 12 Hz) in the perfused mesenteric vascular bed of SHR.

Each column represents the mean + S.E.M. (n= 5・6).*P<0.05, * *P<O.Ol.

55 54

(2) CGRP神経機能に及ぼす影響③ norepinephrine注入による血管収縮反応

① PNSによる血管弛緩反応norepinephrine 静止緊張下の腸間膜動脈潅流標本におけるFig. 30 に、

MG-Krebs f夜潅流によって潅流圧を上昇させた腸間膜動脈Fig. 31は、FR172357単独投注入による血管収縮反応に及ぼす temocapril単独投与、

神経性血管弛緩反応に及ぼすCGRP によるPNS j整流標本におけるFR172357単独投与群では、与および両薬物併用投与の影響を示した。

FR172357単独および両薬物併用投与の影響を示した。temocapril単独、収縮反応の増大がみcontrol群との聞に有意な差は認められなかったが、

control群temocapril単独投与群においては PNSによる血管弛緩反応が、norepinephrine FR172357併用投与群では、temocapril とまた、られた。

と単独および temocaprilFR172357 一方、と比べて有意に増強した。による収縮反応が有意に抑制された。

有意な差はFR172357併用投与群では control群と向程度の反応となり、

Conlrol FRl72357 Temocapril Temocapril + FRl72357

0

・ロ・

みられなかった。

+

50

(dv)

巴。=何一言宮出

Conlrol FR172357 Temocapril Temocapril + FR172357

0

・ロ・5

++

,.--.**

2 1

30

10

o

v

o

υ

4句

B

貸出

EE)zgg包

g叩盟国℃邑

ggE522』

ω白岡

Fig. 31. Effect of long-term combined treatment with temocapril and FR172357 00 vasodilator respooses to PNS (1, 2, 4, 8Hz) in the perfused mesenteric vascular bed of SHR. Each point represents thc mean :tS.E.M. (n= 5・7).事政Pく0.01vs non-treated control SHR.

+ P<0.05 vs treatmcnt with temocapril.

57

8

PNS (Hz)

4 2 1

100 NE (nmol)

Fig. 30. Effect of loog-term combioed treatme01t with temocapril aod FR1723S7 00

vasocoostrictor respooses to bolus iojectioo of 11I0repioephrioe (NE) io the perfused

meseoteric vascular bed of SHR.

Each point represents the mean + S.E.M. (n= 5・6).本志 Pく0.01vs non-treated control SHR,

+ P<0.05, ++ P<O.Ol vs treatment with temocapril + FR172357.

56

② CGRP注入による血管弛緩反応

Fig. 32は、 MG-Krebs液潅流によって潅流圧を上昇させた腸間膜動脈

潅流標本における CGRP注入による血管弛緩反応に及ぼす temocapril単

独、 FR172357単独および両薬物併用投与の影響を示した。 temocapril単

独投与群において CGRPによる弛緩反応は増大し、 CGRP100 pmol注入

時に control群と問に有意な差がみられた。一方、 FR172357単独投与お

よび両薬物併用投与群では control群と間に有意な差はみられなかった。

(ぷ)

oo --aa

oo zJ

3・3考察

bradykinin B2受容体桔抗薬 FR172357長期投与によって SHRの平均血

圧には変化はみられなかった。また、 temocapril との併用投与群と、

temocapril単独投与した群との聞にも差はみられなかった。 kinin措抗薬

では SHRの血圧を下降させないとの報告[64,65]があることから、全身

血圧に対する内因性の bradykininの影響は小さいと考えられる o従って、

temocaprilの降圧作用に内因性 bradykininの関与は少ないと考えられる。

近年、 bradykininB1受容体も血管に分布し、その刺激は血管収縮を起こ

すことが知られている[57,66]0 従って、 B2受容体を FR172357で遮断し

でも B1受容体が bradykininで刺激され、全身血圧に変化がみられなか

った可能性も否定できない。

腸間膜動脈周囲神経の PNSによる交感神経収縮反応は、 temocapril単

独および FR172357との併用投与群で有意に抑制された。一方、 FR172357

単独投与群では交感神経伝達物質である norepinephrineによる血管収縮

反応が、 control群より強く現れた。この外因性 norepinephrineによる血

管収縮反応の増強は、 FR172357長期投与によって norepinephrineの遊離

量が抑制された結果、血管平滑筋上の αlアドレナリン受容体感受性が

増大したことによるものと考えられる o bradykinin には交感神経終末か

らの norepinephrine遊離促進作用のあることが知られている[67,68]0 従

って、 FR172357投与による norepinephrine遊離の減少は、交感神経終末

上の B2受容体が長期にわたって抑制された結果とも考えられる o

Z

350 ~ h宅~

ω 出

亡コ conlrol

~ temocapril

画面 temocapril+印17幻

_ FRI

Fig. 32. Effect of long-term combined treatmelllt with temocapril and FR172357 on vasodilator responses to bolus injection of CGRP in the perfused mesenteric vascular bed of SHR.

Each column represents the mean + S.E.M (n= 5・6).*P<O.05

temocaprilと FR172357併用投与群では、交感神経からの norepinephrine

遊離量が各薬物単独投与群の中間となった。これは、おそらく bradykinin

濃度が ACE阻害薬で増加したため、 FR172357の B2受容体措抗作用が

弱められたためと考えられる。一方、両薬物の併用投与で交感神経性お

58 59

よび外因性 norepinephrineによる血管収縮反応は単独投与時よりさらに

抑制された。確かな機序は不明であるが、一つの考えとして temocapril

と FR172357による交感神経系の相加的な抑制が起こっている可能性が

考えられる。

血管拡張性神経である CGRP神経による血管弛緩反応に対して

temocapril長期単狙投与では非投与 control群と比べて有意に増大するも

のの、 FR172357との併用投与よってその作用は消失した。 bradykininは、

CGRP神経に対して CGRP遊離を促進させる働きをもつことが知られて

おり、腸間膜動脈を用いた実験では、フロスタグランジン類 (PGs) や

トロンボキサン類 (TXs) の関与が考えられている[69,70]0 FR172357

とtemocaprilとの併用によって、 CGRP神経性血管弛緩反応の temocapril

によるの増大作用が消失することから、t:emocaprilによる CGRP神経機

能改善作用には内因性 bradykininが関与していると考えられる o

temocaprilのCGRP神経性血管弛緩作用における機序の一つに、bradykinin

によって産生される PGsや TXsが関与している可能性もある o また、

temocapril長期投与後にみられた CGRP注入による血管拡張反応の増大

も FR172357によって抑制された。これらの結果も temocaprilの作用に

内因性 bardykininが関与していることを窺わせている o

60

4 小括

1) bradykinin B2桔抗薬 FR172357単独投与によって、 SHRの平均血

圧には変化は見られなかった。また、 temocapril との併用投与で

も、 temocaprilの血圧下降作用に影響を及ぼさなかった。

2) FR172357長期単独投与によって、 CGRP神経性血管弛緩反応は

影響されなかったが、交感神経終末からの norepinephrine遊離量

は著明に抑制された。 temocaprilとの併用投与では、 FR172357単

独投与群に比べて norepinephrine遊離量が増加した。

3) FR172357長期単独投与では、 CGRP神経性反応に非投与 control

群と比べて有意な変化はみられなかったが、 temocaprilとの併用

では temocapril単独投与による CGRP神経機能改善作用を抑制し

た。

4) 以上の結果より、 ACE阻害薬による抗高血圧作用に bradykininの

関与の可能性は少ないと考えられる。しかし、 ACE阻害薬による

CGRP神経機能改善作用には、 bradykininが関与しているものと考

えられる。

61

【総括】

本態性高血圧の成因は、未だに不明で、あるが、一因として末梢抵抗血

管での抵抗の増大があげられ、その原因として交感神経の活動元進が関

係していると考えられている o 一方、交感神経機能に対して措抗的に働

いている CGRP神経の機能は、本態性高血圧の病態モデルである SHR

では WKYの弛緩反応より有意に小さいことが知られている o また、加

齢に従い SHRでは、 CGRP神経機能は減弱し CFig.33) 、交感神経機能

が相対的に増大し、その結果血管抵抗を増加させることより、高血圧を

生じるという考え方が提唱されている[4,5,52]0

1ノasoconstriction Vasodilatation

<inhibition>

ノ <inh…/ ‘・H ・H ・Angiotensinn ~

CGRP

NE. NPY

Fig.33. S HRにおけるアドレナリン作動性神経とCGRP神経との関係

高血圧治療薬は、臨床上長期間投与さ;れるにもかかわらず、血圧下降

作用以外の薬力学的反応についての研究はこれまでほとんどなかった。

62

しかし近年、 Ca括抗薬[71・73]、ACE阻害薬[74,75]およびATl桔抗薬[76,

77]において大規模臨床試験が行われ、長期投与による様々な効果が報告

され、 ACE阻害薬や ATl措抗薬による心血管系のリモデリング作用が

あることが明らかとなっている。本研究では、 SHRを用いて Ca措抗薬

の長期投与による血管周囲神経機能の変化に注目して種々の検討を行っ

た結果、 CGRP神経機能の低下は長期投与で影響されないとことが明ら

かとなった。一方、交感神経機能はいずれの Ca括抗薬によって抑制さ

れた。 SHRにおける long-acting型 Ca桔抗薬長期投与による血圧下降に

は、血管平滑筋の L型 Ca2+チャネル抑制に加えて交感神経機能抑制も関

与している可能性が示唆された。さらに、 amlodipineおよび pranidipine

の長期投与では、 norepinephrineの神経性遊離が抑制され、 N型 Ca2+チャ

ネルに対する抑制作用が関与する可能性が示唆された。一方、 short-acting

型 Ca措抗薬の nicardipineでは、交感神経克進とみられる norepinephrine

遊離の増加が認められ、大量投与時にみられる交感神経冗進に関係して

いる可能性が示唆された。 Ca拾抗薬の長期投与による交感神経機能変

化の機序は不明であるが、一つの考えとして long-acting型 Ca桔抗薬の

場合、組織親和性が高いことから、長期間神経終末へ作用することによ

って N型 Ca2+チャネルの遮断作用が強化された可能性もある。実際、新

しいジヒドロピリジン系 Ca括抗薬 cilnidipineは、 N型 Ca2+チャンネル

抑制作用があり、 amlodipineにおいても弱いながらも N型 Ca2+チャンネ

ル抑制があると言われている[21,22, 78] 0

一方、 ACE阻害薬である temocaprilの長期投与において、交感神経機

能の抑制作用と CGRP神経機能克進作用がみられた。他の ACE阻害薬

である captoprilや、 ATl桔抗薬 candesartanでも同様な作用が報告され

ている。また、血管拡張薬 hydralazineではその作用がないことから、単

63

純な血管拡張による結果ではなく、 angiotensinnが関与していることが

示唆される。さらに、 bradykininB2措抗薬の併用により、 CGRP神経機

能に対する ACE阻害薬の増強作用が措抗された。したがって、 ACE阻

害薬の作用に内因性 bradykininの関与が考えられた (Fig.34) 。

Vasoconstriction Vasodilatation

NE,NPY ~ ~ ~ ......

、 ~\Bradvkioio?』、 I‘.......Aogioteosio n、amlodipioe, pranidipioe ......・~\ J司 企、(l 叫. 削 n附E唱削gドtype戸eC“aa削ot叩 nis附t( ¥ ~ t ‘‘...…..叫.叫AC E己in刷hi“刷ibiω ACE iohibitor .. CGRP .._ _!~._ -...

可I!iotensin1

+山PY| ↑令 <V…

vascular smootb musde

~.“….“...…... iohibitioo

‘-一 a舵ct伽i村va凶“o側n

Fig.34.抗高血圧藁長期投与後のSHRにおける交感神経とCGRP神経との関係

以上、本研究の結果から、 ACE阻害薬や Ca措抗薬は血圧下降作用の

みならず、その長期投与によってこれまで知られていない薬力学効果を

あらわし、それが安定した血圧降下に寄与していると推察される。特に

血管周囲神経機能に対する新たな作用発現は、新規作用機序を有する抗

高血圧薬開発につながると予想される o

64

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【謝辞】

本研究に際して、ご指導並び、にご鞭縫賜りました岡山大学大学院自然

科学研究科臨床薬学講座川崎博己教授に深く感謝いたします。また副査

の亀井千晃教授、成松鎮雄教授に心から感謝いたします。さらに、博士

論文作成にあたり助言、ご指導くださいました岡山大学大学院自然科学

研究科臨床薬学講座黒崎勇二助教授、岡山大学医学部付属病院薬剤部五

味田 裕教授、荒木博陽助教授、岡崎昌利先生、三牧祐一先生に心から

感謝いたします。

最後に、本研究に協力していただきました岡山大学自然科学研究科臨

床薬剤学講座ならびに、臨床薬学講座の方々に心から感謝いたします。

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