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  • 論 文

    電源系統の自動設計のための一手法

    非会員  浪 岡 保 男(株 式会社東芝)

    正 員  星 野 晃 彦(株 式会社東芝)

    非会員  久 利 俊 文(東 芝GEオ ートメーシ・ンシステムズ株式会社)

    非会員  福 島 航(東 芝GEオ ートメーシ・ンシステムズ株式会社)

    Automatic Design for Power Systems

    Yasuo Namioka, Non-member, Teruhiko Hoshino, Member (Toshiba Corporation), Toshifumi Kuri,

    Non-member, Wataru Fukushima, Non-member (Toshiba GE Automation Systems Corporation)

    An automatic design method for power systems, to control electrical loads provided by customers and to

    ensure the power supply for the loads, is described. This method features (I) an electrical equipment model

    including the possible connections among each electrical equipment, (II) knowledge association networks to reduce maintenance cost of knowledge-base and to improve efficiency to select/specify electrical equipment,

    (III) a planning algorithm to find electrical path to control the electrical loads and to ensure the power supply, and (IV) the reactive re-design to automate to edit the power systems. APEC3 (Advanced Plant Engineering

    Cycle tool version 3) is an automatic design tool for power systems that supports electrical engineering pro

    cesses in developing single line diagrams, specification balance statements (design rationales) and item lists.

    When engineers modify equipment specifications, APEC3 invokes the redesign function which automatically changes the specifications of all relevant equipment. To evaluate the effectiveness of the method, APEC3

    was used in designing practical power systems of steel plants. The results showed that APEC3 can reduce

    the design time to 1/8 as compared to the usual design time. Therefore, the engineers can find optimal

    specifications of the power systems by evaluating a number of possibilities.

    キー ワー ド:電 源 系統 、単 線 結線 図 、CAD、 自動 設計 、行 動計 画 問題

    1.は じ め に

    電源系統 設計 では 、顧 客か らの 電気 負荷 要求に対 応す る

    数百か ら数千 に ものぼ る電気 負荷 を選 定 し、この 電気負 荷

    を的確 に運転す るための 制御 装置 や電 源供給 装置 など を細

    かに決定 す る。 また 、設 計結 果 を網羅 す る単 線結線 図や 各

    種リス トを作成す る。この業務で は、従来 、エ ンジニアが 作

    図ツール や表計 算 ツー ルな どを用 いて きたが 、多 大 な時 間

    を要 して いた 。 これ に対 し、顧 客 か らの回答 要求 期限 や設

    計業務の コス トなどの制 約 は 、 イン ター ネ ッ トを利用 した

    顧客やベ ンダー との や りと りや 、電子 商取 り引 きの発 展に

    伴い 、今 後 いっそ う厳 し くな るこ とが 予想 され てい る。 ま

    た 、電源 系統 の 開発 全体の コス ト削 減 を行 い競 争 力 をい っ

    そ う向上 しつづ け るた め に 、設 計 の初期 段 階か らの 品 質 ・

    精度の向 上へ の要望 も高 い。

    筆者等は 、鉄 鋼プ ラ ン トに関 わるエ ンジニア リング業務 、

    特に、見 積段 階で行 う電源 系統 の設計 業務 を対 象に 、主 に、

    1.設 計 リー ド タイムの短縮 、2.設 計 品質の 向上 を目的 とし

    て、a.電 源系統の 自動設計 、b.電 源系統設 計に関す る業務

    知 識の知 識ベ ー ス化 の検討 を行 ってい る(6)。

    設計の 自動化技術 としては 、電 気機器 などの設計の ように

    構 成要素がほぼ決 まっていて 、事例の構 成要素の仕様 を調 整

    するこ とに主眼がおかれてい る問題に対 しては 、CBR (Case

    Based Reasoning) (1)手法が 有効で あ るこ とが 知 られて い

    る。 また 、ソフ トウェア工学 におけ る近 年の潮流 と しては 、

    コ ンポ ー ネン トウェアに基づ くソフ トウェア開発方法論(2)

    が あ る。 この分 野では 、 ソフ トウェア ・コ ンポ ーネ ン トを

    用 いたダ イア グ ラムを作 成す ると 、プ ログ ラム部 品が 整 っ

    て い る部 分につ いて は、開発 環境が 自動 的にプ ログ ラム を

    作 成す る とい う試みが 主流で 、ダ イア グラ ムを も自動 的 に

    作 成す るアプ ローチで は 、有望 な試みは 見あ た らないのが

    現状 であ る。

    電源系統 設計が これ まで 自動化 されて いなか った原 因は 、

    様 々な事 柄が 考 え られ るが 、筆 者 らは 、次 の よ うに と らえ

    電学論C, 120巻12号,平 成12年 1957

  • 図1 負 荷 リ ス トの 例

    Fig. 1. Example of Load List

    て い る 。

    ●電源系 統のバ リエ ーシ ョンが 非常に多 く、また、電源系

    統で 用 い られ る電 気機器 も多様 であ る為 、事 例や 設計

    パ ター ン を用 意す るアプ ローチ では 、整備す る事 例数

    が膨 大 にな る。 また 、電 気機器 の選択 知識 を単 にルー

    ル化 して も有効 な競 合解 消が 難 しい。

    ●電気 機器 の製 品 ラ インナ ップが比 較 的頻繁 に更新 され

    る。 この為 、事 例や設 計パ ター ン を用 い るアプ ローチ

    では 、製 品 ライ ンナ ップが 更新 され た ときに 、更新 さ

    れ た製 品 に関連す る事 例 を全て探 し出して修正 す る必

    要があ り、保 守 コス ト上 の課 題があ る。

    ●設 計上 の最 適性が 、プ ラン トの立 地条件 、気候 、顧 客

    の慣習 等 に よって左右 され る為 、最適性 のモデ ル化が

    難 しい。

    以上の課 題 を解 決するため 、筆 者 らは 、行動計画問題(AI

    プ ラ ンニ ング)(3)(4)(5)の 解法 の1つ で ある状態 空間の探索

    に よるプ ランニ ング手 法 に基づ いた 、電 源系統 の 自動設計

    手 法 を考案 した。 本論 文で は 、この 自動 設計 手法 を実現 す

    る次 の取 り組 み につて 述べ る。

    ●設計対象のモデルとして、電気機器と電気負荷を制御

    し電源供給する電気的経路の可能性とをモデル化した

    電気機器モデルを構築する。

    ●設計の ための知 識ベー スに 、電 気機器 の体系や電気 的 ・

    物 理 的関 係 とい った従来 の観点 とは 別に 、電気 機器 間

    の電源 系 統設計 上の 依存 関係 の観点 か ら電 気機 器 に関

    す る知 識 やデ ー タを組織 化 して推論効 率 を向上 す る知

    識 連想 ネ ッ トワー ク(6)を 導 入す る。

    ●電源系統の設計問題を、個々の電気負荷が制御及び電

    源供給を受ける電気的経路の探索問題としてとらえ、

    この問題を知識連想ネットワークを用いて効率的に解

    くアルゴ リズ ムを提 案す る。 ここで得 られ る解 は 、製

    造可能 な電気 機器 を最小 数用 い る運転 可 能な電 源系統

    とな る。本手 法で は、全 ての 電気 負荷 に対 す る解 を並

    行 して 解 くこ とで 、電気 的制 約や リソー スの競 合な ど

    に起 因す るバ ック トラ ックを回避 す る。 また 、本手法

    で はデ ザ インパ タ-ン や 事例が 不 要の 為 、製品 ラ イン

    ナ ップの更新 に際 して も、更新 され た製 品に関するデ ー

    タのみ の修正 で済 む。

    ●電 源系統 内の 電気 機器の 仕様 修正 に対す る影 響 範囲の

    再 設計 を、修 正部分 か ら電源 までの 電気 的経 路 の探 索

    問 題 と して リア クテ ィブ に解 くため 、ケ アレ ス ミスを

    大 幅に 削減 し、最適 な電 源系統 を対 話 的 に非 常 に効率

    よ く設計 で きる。

    2.電 源系統設計と自動化のための定式化

    電 源 系統 設計 の 入 力 と出力  電源 系統 の設計

    においては 、数百か ら数千 に及ぶ電気 負荷要求が 負荷 リス ト

    (図1)と して顧客か ら与 えられ る。負荷 リス ト(鉄 鋼業界 で

    はモー タ リス ト)は 、動 力 を発生す るモー タを始め 、様 々な

    形 態で電力 を消費す る電気機器 の要求 仕様 を表 わしてい る。

    エンジニアは、負荷リストの電気負荷要求に対応する数

    百から数千にものぼる電気負荷を選定し、この電気負荷を

    的確に運転するための制御装置や電源供給装置などを細か

    に決定して、設計結果を網羅する単線結線図や各種リスト

    を作成する。単線結線図は、図2の 様に簡略化した図形を

    用いて、電源系統にある電気機器の仕様と接続関係を表現

    する図面である。この図面は、紙面に出力する時のページ

    に相当する図面枠によって仕切られ、また、ページを越え

    て電気的接続関係を表現するための呼び合いを表す図形も

    含む。

    1958 T. IEE Japan, Vol. 120-C, No.12, 2000

  • 電源系統 の自動設計のための一手法

    図2 単 線 結 線 図 の 例

    Fig. 2. Example of Single Line Diagram

    図3 電 気 機 器 モ デ ル の 可 能 な接 続 関係

    Fig. 3. Possible Electrical Equipment Connections

    電 気機 器 モデ ル  電気 機器 モデ ルは 、電 源系

    統におけ るオン トロジー(7)を 表 して いる。電源 系統に用い

    られ る電 気機器 の分 類に 基づ いて電 気 機器 間の電気 的に可

    能な接 続関係 を表す と 、図3の ようなネ ッ トワー クにな る。

    最 も下にあ るMotorク ラスは、各種電気 負荷 に対 応す るク

    ラスであ り、最 も上 にあ るSLDク ラスは 、最上 位の電源 に

    対応す る クラスであ る。 図3で は 、可 能 な接 続関 係 をクラ

    スレベル で表 して い る。 設計 され る電 源系 統は 、実際の製

    品で構成 され るため 、いわば 、 インス タンス レベ ルで構 成

    す る。 ク ラスレベ ルの接 続 可能性 も複 雑 な ネッ トワー ク と

    なるが 、各 ク ラスには 具体 的な 製品の ラ インナ ップが 存在

    す るため インス タン スレベ ルの接 続 可能性 は 、いっそ う複

    雑 になる。例 えば 、クラスInverterは 、 ドラ イブ装置 の一

    種であ る周波数 変換装 置 を表 してい るが 、このInverterク

    ラスに属す る製 品ラ インナ ップ も、電気 的特性 に よ り数種

    類存在 し、その ラ インナ ップ 問で共 通の 機器 に接 続 可能性

    を持 つこ と もあれ ば 、異 なる機 器 と接 続 可能性 を持 つ場合

    もあ る。 また 、仕様 の決定 方法 も異 な る方法 を用 いる場 合

    もあ る。

    設 計過 程  電源 系統の設計は 、電気負荷のMo

    torと 最上位 の電 源のSLD間 にあ る無数 の接 続可 能性 の中

    か ら、負荷 要求 に適 した制御 及び 電源供 給 の為の電 気 的経

    路 を求め る問題 と見 るこ とが で きる。 この 設計過程 は 次の

    ようにな る。 まず は 、顧 客 の各 々の電 気負 荷要求 を実 現す

    るモ ー ター その他 の電気負荷 を選 択 しその仕様 を決 定す る

    (初期状 態の設 定)。 次 に、 これ らの 電気負 荷 を制御 す る ド

    ラ イブ装置 など を選 択 してその 仕様 を決定す るが 、この際

    には 、電気 負荷 の電圧 、周波数 、回転 数な どの様 々な電 気

    的特 性 に よ り、非常 に多 くの制御 装置 の候補 の中か ら適 切

    な装 置 を選択す る。制御 装置が 選択 され る と更 にその上 位

    に接 続 され る電 気機器 を今度 は制御 装置の 電気 的特性 など

    に よって選択す る。同様 に、電 気負 荷か ら最 上位の電 源(目

    標 状態)ま で 、段 階 的に電気 機器の選択 と仕様 決定 を行 う。

    一般 に、プ ランニ ング手法 は 、ロボ ッ トの行 動計 画か ら

    始 ま り、人工衛 星の組 み立 て行程 の立案 や 、シー ケン ス制

    御 プ ログ ラムの実 行手順 の作 成などへ の応 用(3)(4)(5)が 試

    み られて いる。多 くのプ ラ ンニ ング手 法で の問題 のモデ ル

    化は 、状態 とその 遷移 に基づ いてい る。例 えば 、 ロボ ッ ト

    の行 動計 画では 、 ロボ ッ トの位 置や姿 勢 に よって状態が 定

    義 され る。 この状 態 を遷移 させ るオペ レー タは 、 ロボ ッ ト

    の持 つ動 作 などであ る。組 み立て工 程の 手順で は 、部品の

    選択 、部 品 間の位置 関係 、組 立用 の機器 の位 置 ・姿 勢 など

    で 状態が 定義 され 、作業員 の組 み立て作 業や アー ムの動作

    が オペ レー タとなる。同様 に 、シ ーケン ス制御 の手順で は 、

    制 御対 象の状 態や 動作状 態で状 態が定 義 され 、制 御対 象 に

    対 す るオペ レ ーシ ョンが オペ レー タ とな る。 こ うしたモデ

    ル化で の要件 は、i.個 々の状態(初 期状 態 とゴ ール を含む)、

    ii.状 熊空 間 の定義 、 iii.オ ペ レー タの前 提 条件 、iv.オ ペ

    電学論C, 120巻12号,平 成12年 1959

  • レー タの 作用 であ る(3)。上述 の設計 過程は 、行 動計 画問題

    の 側面 か ら とらえ ると 、i.電 気 機器 の選択 とそ の仕様が 決

    定 され た状態 、ii.電気 機器 モデル に表 され る可能 な接 続関

    係 、iii.機 器選択 知識 、iv.機 器 仕様 決定知 識の ように対応

    す る。

    知 識連 想 ネ ッ トワ ー ク  知識連 想 ネ ットワー

    ク(6)は 、システ ム設計 のため の知 識ベ ースの フレーム ワー

    クで あ る。そ の目的 は、 システ ムの コンポ ーネ ン トに関す

    る知識 やデ ー タの重複 、分散 、不 整合 を防 ぎ保 守効率 を向

    上 す る とと もに、知 識参照 におけ る検索 及び探 索の 回数 を

    削 減 して推 論効率 を向上す る ことにあ る。

    知識 連想 ネ ッ トワー クは 、 システ ム設 計の次 の性 質に基

    づ いて い る。「シ ステ ム ・コンポー ネン トの分類体系 や物理

    的 ・電 気 的構造 とい った従 来の観 点 とは 別 に、 コンポー ネ

    ン ト間の シス テム設 計上の依 存 関係の観 点か ら 、各 々の コ

    ンポ ー ネン トは 、依 存関係が 集 中す るキー ・コ ンポ ー ネン

    トと、キ ー ・コ ンポ ー ネン トに設 計上従 属的 にな るサテ ラ

    イ ト・コンポー ネン トとに分類で きる。キー ・コンポー ネン

    トとサテ ラ イトコンポー ネン トは、相互 に依存 関係 を持つ

    ので 、キ ー コンポ ーネ ン トを選択 し仕様 を決定 す ると 、そ

    の周 囲の サテ ラ イ トコ ンポー ネン トが ほぼ連鎖 的 に選択で

    きる。」電 源系統 は 、この性 質が 比較 的強い システムの一つ

    であ る。例 えば 、 ドラ イブ装 置 の一種で あ る周波数 変換装

    置(Inverter)が 、複数台 選択 された場 合 には 、それ らの装

    置 に直流電 力 を供給 す る直 流母線(DC, BUS)、 その 共通直

    流電 源(CPE)及 び 、その トラ ンスな どの上 位 に用 い られ

    る電 気機 器が特 定 され る場 合が 多い。

    図4 知 識 連 想 ネ ッ トワ ー ク の 例

    Fig. 4. Knowledge Association Network

    図4は 、 ドラ イブ装 置 をキ ー コンポー ネ ン トとし、母線

    (DC_BUS)、CPE及 び 、 トランス をサテ ラ イ トコンポー ネ

    ン トとす る知 識連想 ネ ットワークの概略 を示 している。この

    ネ ットワー クは、ドラ イブ装 置、母線 、CPE、 トラ ンスに関

    す る機 器 選択知 識及 び機器 仕様 決定 知識 を表 してい る。選

    択 ルー ルは、キ ーコンポー ネン トに対 してのみ構 築 し、サ テ

    ラ イ トコンポ ー ネン トに対 しては 、キ ーコンポーネ ン トか ら

    連鎖的 にほぼ選択で きる性 質に よ り、選択 ルール を排 除 して

    い る。仕様 決定知 識(Inverter-SpecKn, DC_BUS_SpecKn,

    CPE_SpecKn, Tfans_SpecKn. etc.)は 、デ ー タシ ー トの相

    関の度 合いな どの知識 の関連性 の強 さや知 識の 内容 に よ り、

    キ ー ・コンポ ーネ ン トの仕 様 決定知 識 を表 す オブ ジ ェク ト

    に統 合す る ことで 、仕様 決定知 識 を参照 す る と きの 辿 りの

    オ ーバ ーヘ ッドを削 減で きる。 図4の ネ ッ トワー クで は、

    DC-BUS-SpecKnとTrans_SpecKnは 、Inverter-SpecKn

    の オプ ジエク トに統合 され ている。CPE_SpecKnは 、CPE

    の仕様決 定に別途デ ー タシー トを利 用す るな どの理 由か ら、

    Inverter_SpecKnの オブ ジェ ク トか ら連 鎖 的に接 続 され た

    独 自のオブ ジ ェク トに格納 して い る。モ ー ター は 、電気 的

    には 、 ドラ イブ 装置 と直接接 続 され るが 、 ドラ イブ 装置 と

    の設 計上 の依存 関係 は 、比 較的 希薄 であ り、 ドラ イブ 装置

    を 中心 とした知 識連想 ネ ッ トとは異 な るネ ッ トワー クに知

    識が構 築 され る。

    自動設計 に際 して 、この知 識 連想 ネ ッ トワー クは次 の働

    きをもつ 。なお 、以 下の説 明にお いて 、「仕様 の決定 」には

    単線 結線 図上で 用い る図形 部品 の決定 も含 まれ る。

    1.上 位 の機器 の選 択 と仕様 決定:モ ーター 、ドラ イブ装置 、

    母線(LV_BUS、 DC_BUS)、CPEな ど は 、そ の上 位 に接

    続す る電気 機器 の選択 と仕 様決 定 を 、Drive_Selectorオ ブ

    ジ ェ ク トに依頼 する 。

    1-1.キ ー ・コ ン ポ ー ネ ン トの 選 択 と 仕 様 決 定 の 場 合:

    Drive_Selectorオ ブ ジ ェ ク トは 、 キ ー コ ン ポ ー ネ ン トの ド

    ラ イブ 装 置 と直 接 接 続 す る モ ー ター オ ブ ジ ェ ク トか ら の 上

    位 の 機器 の 選 択 ・仕 様 決 定 の 依 頼 に 対 し て 、Drive_Selector

    に 登 録 さて い るDrive-SelectRuleの う ち 条 件(Condition

    Part)を 充 た す もの を 検 索 す る 。例 えば 、図4のT-μS250の

    選 択 ル ー ルが 発 火 す る と 、Drive-SelectRuleは 、電 気 機 器

    モ デ ル の 接 続 可 能性 の う ち 、T-μS250を 選 択 し てT-μS250

    仕 様 決 定 知 識 表 現 し て い るInverter_SpecKnオ ブ ジ ェ ク ト

    が に 、モ ー ター の 仕様 に 見 合 うT-μS250の 仕 様 を決 定 す る 。

    1-2.サ テ ラ イ ト ・コ ンポー ネン ト選択 仕様 決定 の場 合:ド

    ラ イブ装 置 、母線 、CPE等 の ドラ イブ 装置 及び そのサ テ ラ

    イ ト ・コ ンポ ー ネン トの オブ ジ ェ ク トか らの上 位機 器の 選

    択 ・仕様 決定 依頼 に対 しては 、依 頼主 オブ ジ ェ ク トの機 器

    名称か ら 、Indexを 使 ってInverter_SpecKnオ ブジ ェ ク ト

    をO(1)の 手間で直接 参照す る。例 えば 、Inverter _SpecKn

    オブ ジェ ク トは 、T-μS250に 対 して は 、 ドラ イブ 装 置 の

    上位 の 機器 と してDC_BUSを 選 択 して仕 様 決 定 を 行 う。

    DC_BUSに 対 しては 、T-ps20を 選択 して 、連鎖 的 に接 続

    されたCPE_SpecKnオ ブ ジェ ク トにCPEの 仕様 決定 を依

    頼す る 。 この よ うに、 ドラ イブ 装置 及び そ の サテ ラ イ ト ・

    コンポ ーネ ン トに対 して上位 機器 の選 択 ・仕様 決定 を行 う

    処理で は 、依存 関係の性 質 を生 か して 、検索 も探 索 もO(1)

    の 手間で 行 われ る。

    2.再 設 計:モ ー タ ー 、 ド ラ イ ブ 装 置 、 母 線(LV _BUS、

    DC_BUS)、CPE、 トラ ンス な ど は 、再 設計 をDrive _Selector

    オ ブ ジ ェ ク トに 依 頼 す る 。

    1960 T. IEE Japan, Vol. 120-C, No.12, 2000

  • 電源系統の自動設計のための一手法

    2-1.キ ー コ ンポ ーネ ン トの再 設計 の場 合: Drive_Selector

    オブ ジ ェク トは 、キー コ ンポ ー ネン トの ドラ イブ 装置 と直

    接接 続す るモ ー ターオプ ジ ェ ク トか らの再 設計依頼 に対 し

    て、1-1と 全 く同 じ処 理 を行 った 後 、再設 計前 の 機器及び

    その仕様 と比較 して違 いが あ れば 入れ 替え る。

    2-2.サ テラ イ ト ・コ ンポー ネ ン トの再 設計 の場合:ド ラ イ

    ブ装置 、母線 、CPE、 トランス等の ドラ イブ装 置及び その

    サテ ラ イ トコ ンポ ー ネン トのオブ ジ ェ ク トか らの 再設計依

    頼は 、依 頼主 オブ ジ ェク トの仕様 をエ ンジニアが 修正 した

    ときに発生 す る。 この依 頼 に対 しては 、1-2と 同様 に対応

    す る仕様 決定 知識 を参 照す るが 、エ ンジニ アが修 正 した値

    に封 して 、電気 機 器の その ほか の属性 を再 設計す るの に用

    いる。1-2の 仕様 決 定処 理 を行 った後 、再 設計 前 の属性 と

    比較 して違 いが あれば 入れ 替え る。

    知識連想 ネ ッ トワー クの構築 に際 しては 、キー ・コンポ ー

    ネン トを 中心 に コ ンポー ネン ト間の相 関の あるデ ー タシー

    トをマージ して 共有す るの で 、知識ベ ー ス内の知 識の重複

    も分散 も避 け るこ とが で きる。 この ため知 識間の 不整 合の

    発生 も防 ぐこ とが で きる。 また 、知識 連想 ネッ トワー クの

    各知識オブ ジ ェ ク トには 、関連性 の 強い知 識やデ ー タが含

    まれるため 、 各知識 オブ ジェ ク ト毎 に 、機 器名称 、図形部

    品名称 、仕様 決定 方法 の 名称 、仕 様 決定 用デ ー タシー ト、

    仕様 計算用 のパ ラ メー タ等 の知 識及 びデ ー タを表 計算 ソフ

    トのシー ト上 に展開 する だけで 、知 識の過 不足 の判定 と関

    連す る知 識 間での 矛 盾チ ェックが しや すい知 識編 集 イン タ

    フェー スを構築 す るこ とが で きる。 こうした イン タフェー

    スを利用す る と、知 識ベ ー スの保守 効率 を向上 で きる。

    定 式 化の 適 用 可 能性  本論 文の定 式化が 全て

    の種類の シ ステム設 計に 適用可 能だ とは考 えに くいが 、各

    種プ ラン トの電 源系 統や その地 の電 気 回路 の電 源周 りの設

    計へ の適 用 、更 には 、情報 通信 システ ムの設計へ の適 用 も

    考え られ る。例 えば 、コ ンピュー タ ・ネ ッ トワー クの 設計

    では 、顧客 か ら新 しい オフ ィスや オフ ィス ビルの情報 通信

    負荷として 、例えば 、OA端 末の 台数 、OA業 務の種 類や利

    用する アプ リケー シ ョン 、サ ーバ上 の ミドル ウェア などの

    要求が与 え られ る。 これ に対 して 、 クラ イアン トやサ ーバ

    となる計算 機 を選択 し仕様 を決定 した段 階 を初 期状態 とし

    て 、これ らの 計算 機 か ら 、ハブ 、上位 の高 速のハ ブ、ルー

    ター、ゲー トウェ イ、プ ロキ シーサ ーバ など段 階的に オフ ィ

    ス内の コンピ ュー タ ・ネ ッ トワー クの最 上流の 機器 まで情

    報通信の経 路 を求め る問題 として考 え るこ とが で きる。

    3.電 源系統設計の経路探索的な自動設計手順

    電 源系統の 自動 設計 手順 を具 体的 な例 を用い て説明す る。

    自動 設計 の 基本 戦略 は 、図5の 手 順 で ある 。 この 手順 は 、

    大 きく分 けて初 期状 態の 設定 と最上 位の 電源 までの 電気的

    経路 の探索 とか らなる。 また 、表1は 電気 負荷要 求(概 略)

    の例 、図6は 自動 設計 に伴 い作 成 され る電気 的経路 の導 出

    過程 の例 、図7は 設 計結果 を表 す単線 結線 図(図2)か らの

    負荷1101, 2101, 2301に 対応 す る部 分の抜 粋 で ある 。以下

    procedure Automatic Power System Design:

    Where: ELL, SHV, and HV is short for Electric Equipment List,

    Super High Voltage BUS, and High Voltage BUS, An object group

    include one or more objects.

    図5 自 動 設 計 の 為 の 基 本 戦 略

    Fig. 5. Basic Strategy of Automatic Design

    で は 、負荷2101の 例 を中心 に説明 する。

    初 期 状態 の設 定:初 期状 態 とな る電 気負荷 オブ ジェ ク ト

    は 、ステ ップ(5-9)で 次 の ように作 成 され る。5:モ ー タ

    リス トの負荷 要求デ ー タを1つ 読み 出す。6:電 気負荷 と

    しては 、大 きな分類 で も誘 導 モー タ、同期 モ ー タ、直 流

    モ ー タ、一般 負荷 などが あ り、その 中か ら負荷 の種 類 を

    選択 す る。 ここで は、簡 単の ため負 荷2101と して 、誘

    導 モー タが 選択 された もの とす る。7:モ ー タ リス トの負

    荷要 求デ ー タは 、以下の設 計 に必 要 な仕 様で も全 てが 記

    載 され るとは限 らない。 例えば 、電流値 は負 荷要求 デ ー

    タには記載 され ない ことが 多 い。 こ うした仕様 を、必 要

    に応 じて補填 す る。8:6, 7で 選択 ・決定 され た負荷 種類 ・

    仕様 に基づ いて 、負 荷 オブ ジ ェク トを作 成す る。9:EEL

    に負荷 オブ ジェ ク トを追加す る。

    以上の 処理 をモ ータ リス トの負荷 要求デ ー タ金て につ

    いて行 うと、図6の 下にあ るLeve10の オブ ジェク トが 出

    揃 う。

    最 上位 電 源 ま での 電 気的 経 路探 索: Leve10に 出揃 った負

    荷 オブ ジェク トか ら最上位 の電源 まで の電 気 的な経 路 は 、

    電学論C, 120巻12号,平 成12年 1961

  • 表1 負 荷 仕 様 の 例(抜 粋)

    Table 1. Extract of Load Specifications

    SHV: Super High Volt. BUS, HV: High Volt. BUS, LC: Load Center

    BUS, LV: Low Volt. BUS, DC: Direct Current BUS, DS: Disconnect

    Switch, VCB: Vacuum Circuit Breaker, CBS: ComBination Starter,

    PTr: PowerTrans, Tr: Transformer, CPE: Commutatoq DP: Distribu

    tion Panelboard, Cy: Cycloconverter, I: Inverter (ex. T-μS250, MCC:

    Motor Control Center Unit, and M: Motor

    図6 電 気 的 経 路 の 導 出 過 程 の 例

    Fig. 6. Example of Inference Process

    ステ ップ(11-29)で 探 索 され る。全ての電気 負荷 に対 して

    図6の 様 な各 々の電気 的経路 に より、最上位 の電源SLD

    オブ ジ ェ ク トに到達す る。 この処理 の終 了条件 は 、全て

    の電気 負荷か らの経 路が 、SLDオ ブ ジェク トに到達 す る

    か 、先 に他の負 荷のため に作成 され たSLDオ ブ ジェ ク ト

    へ の経 路 に合流 する ことで ある。以 下 、主要 な処理 の ス

    テ ップ(16-20, 27-29)は 、次の ように行 われ る。16: EEL

    か ら真 上の 電気 機器 を作 成す る オブ ジ ェ ク ト ・グ ループ

    を選択す る。BUSを 共有 する電気 機器は少 な くと も1つ

    以 上の機器 のグ ループ を作 り、その 上位 にBUSオ ブジ ェ

    ク トが 導 出され る。例 えば 、Leve10の モ ー タ2101は 、1

    つ の オブ ジェ ク トか ら真 上の 電気機 器で あ る ドラ イブ装

    置 を作成 す る。 これ に対 して 、Level 1のInverterオ ブ

    ジ ェク トは 、複 数台 選択 され て1つ の グル ープ を 成 して

    DC_BUSに 接 続 され る。 このグ ル ー ピング に際 して は 、

    合 計容量 や入 力電 圧 など の電気 的特 性か らの 制約 や 、建

    設 時の設 置上 の制 約で 同 じ製 品 ライ ンナ ップ をグル ー ピ

    ングす る等の制約が 加味 され る。こ うした 、グルー ピング

    の際 に制約の 評価 を行 うこ とで 、BUS以 上 の機器 の導 出

    において 、実際上 製造で きない仕様 決定 を防 いだ り、探索

    の行 きPOま りに よるバ ック トラ ックの発 生 を防いで い る。

    17:16の 機器グ ループに対 して真上 に接 続 され る電気機器

    を選択 す る。モ ー タ2101の 例で は 、Output=104[Kw],

    Control=AC-W等 の 仕様 か ら、図4のT-μS250の

    Drive_SelectRuleが 発火す る。18:真 上 に接 続 され る電気

    機 器の仕様 の導 出と図形部 品選択 を行 う。モー タ2101の

    例 では 、T-μS250に 対応す るInverter-SpecKnオ ブ ジェ

    ク トが 、7で 求め た電流値やOVERLOAI)に 対 して 、T-

    μS250の デ ー タシー トを参照 してT-μS250の 仕様 を決定

    す る。なお 、必ず しもデ ータシー トの みで 仕様 を決定す る

    とは限 らず 、T-μS250以 外 のInverterで は 、仕様 決定方

    法 の メタ記述 を変更 す る ことに よ り、Inverter-SpecKn

    オブジ ェ ク トが 、出力容 量や 電流 など の仕様 を計算 で求

    め る場合 もあ る。19:17で 選択 した機器 の オブ ジ ェ ク ト

    を、18で 決定 した仕 様 に基づ いて作 成す る。20:16の オ

    ブ ジェ ク ト ・グル ープ と19で 作成 した電 気機 器 オブ ジェ

    ク ト間 に電気 的接続 関係 を作 成す る。

    以 上 の 処 理 に よ り、真 上 に接 続 され る電 気 機 器 の 選 択 ・

    仕 様 決定 が 行 わ れ 、図6に お け るLevelが1つ 上 昇 す る 。

    モ ー タ2101の 例 で はT-μS250が 接 続 され て 、Level 1

    と な る 。 同 様 の 処 理 を 、T-μS250の グ ル ー プ に 対 し て 行

    う と 、DC_BUSが 作 成 され て 、Leve12へ と上 昇 す る 。以

    下, Level 3 CPE:T-ps20, Level 4 Transformer: TR for

    T-μS250, Leve15 Combination Starterと い う よ うに 電

    気 的 経 路 の 探 索 が 進 む 。 更 に 上 位 のLevel 6のHV_BUS

    は 、 負 荷2301か らの 電 気 的 経 路 と し て 先 に 求 め られ る

    の で 、 こ の 経 路 に 合 流(HV _BUSに 接 続)し て 処 理 が 終

    了 す る。 また 、顧 客 か ら供 給 され る 電 源 に よ っ て 、SHV

    か ら電 力 を供 給 す る場 合 は ス テ ッ プ(27-29)で 動 力 遮 断

    機 と動 力 トラ ン スが 作 成 され る 。

    再設 計:エ ンジ ニアの編 集操 作 に対 して リア クテ ィブ に

    再 設計 を行 う場 合に も、エ ン ジニアが 編 集 した機器 の仕

    様 修正 をお こな った段 階 を初期 状態 として設 定す る こと

    で 、図5の 手順 とほぼ 同じ手順 を用 いる ことが で きる。例

    えば 、負荷2101の 例 にあ ったDC _BUSに 接続 され てい

    るT-μS250と そ の下の 負荷 を他のDC_BUSに 移動す る

    と、図4の 知識 連想 ネ ットワー クの働 き2-2(サ テ ラ イ ト・

    コ ンポー ネン トの再設 計)が 起動 して 、双方 のDC_BUS

    の 仕様 を修正 す る。 この2つ のDC _BUSオ ブ ジ ェ ク ト

    の み を図5の 手 順のEELに 加 えて ステ ップ(11)以 降の

    処 理 を行 うことで 、編集 に関 わ る影響 範 囲に対 す る再設

    計 が 実行 され る。

    設 計上 の試行 錯誤 や代 替案 を作成す る際 に行 われ る電

    1962 T. IEE Japan, Vol. 120-C, No.12, 2000

  • 電源系統の自動設計のための一手法

    図7 単 線 結 線 図 上 の 図 形 の 抜 粋

    Fig. 7. Figures in Single Line Diagram

    源系統 の編 集で は 、修 正が 影響す る範 囲の再 設計 を もれ

    な く正確 に行 わ なけれ ばな らず 、設計 を担当 するエ ンジ

    ニアに と つて大 きな負担 とな つて きた 。 こ うした課 題に

    対 して も、行 動計 画問題 としてモデ ル化 して いる こ とか

    ら、電源 系統 内の どの電 気機 器の仕 様 を修正 して も、そ

    の修正が 影響 す る範 囲の再 設計 を、修正 部分か ら電 源 ま

    での電気 的な経 路 を新 た に求め る こ とで行 うため 、電 源

    系統の編 集 ・再 設計 を 自動 化 して 、対話 的に最 適な電 源

    系統 を非常 に効 率 よ く設計 で きる。

    自動レ イア ウ ト:ス テ ップ(30)の 自動 レ イア ウ トに よ

    り、設計 結果 を表 す単線 結線 図が 出力 され る。図2は 自

    動 レ イア ウ ト後 若干の編 集 を加 えた後 の単線 結線 図であ

    り、図7は 図2か らの 負荷1101, 2101, 2301に 対応 す る

    部分の抜粋で あ る。図7に おいて 、負荷2101に 相当す る

    モータ2101は 図の 右下に位 置し 、最上位の電源 の真 下に

    接 続 され るDisconect Switchは 、図の左 上 に位置す る。

    モー タか らDisconect Switchま で は 、設計 書類 の都 合

    上 、ペ ージ を またいで電 気 的関係 を示す ため 、SH-1, H-1

    等の呼 び 合いが 挿入 され る。

    4.イ ンプ リメ ン テ ー シ ョン と評 価

    本 手 法 の 有 効 性 を 確 認 す る た め 、APEC3 (Advanced

    Plant Engineering Cycle tool ver.3)を 開 発 し 、実 際 の

    設計 業 務 に 適 用 した 。

    APEC3 APEC3は 、エ ンジ ニ アの操 作 に

    従い 、電 源 系統 を 自動 設計 して単線結 線 図 、計 算書 、設 備

    機器 リス トを生成 す る。 エ ンジニアは この仕様 を基 に 、対

    象プ ラン トを巡 る様 々な環 境 を鑑 みて 最適 な仕様 を模 索す

    る。 この時エ ンジニアは 、負荷率 、稼働 率の調 整 、母線の

    統 合 ・分 割 、負 荷の移 動な どのAPEC3の 編 集機能 を利 用

    す る 。この操 作 に対応 して、APEC3は 、 リア クテ ィブ に

    再 設計機 能 を起 動 して 、電 源系統 内の影響 す る部分 に必要

    な修正 を行 う。

    図8 APEC3の 構 成

    Fig. 8. Function Blocks of APEC3

    APEC3の 構成 を図8に 示す。図8に おいて 、エ ンジニ ア

    が 作成す るのは 、負荷 リス トと、設計条件 な どを設定 す る

    電学論C, 120巻12号,平 成12年 1963

  • 自動生 成パ ラ メー タで あ る。 図形 部品 及び表 形式知 識ベ ー

    スは 、エ ンジニ ア本人 で も容易 に編 集で きるが 、基 本的 に

    は ツール管 理者が 保守 して共有 す るのが望 ましい。 表形式

    の知 識ベ ースは 、知識 コ ンパ イラに よ りオブ ジェ ク ト形式

    の知 識ベ ースに変換 され る。 オブ ジェ ク ト形式 の知識 ベ ー

    スは 、電気 機器 モデル や知識連想 ネ ッ トワー クなど を含 む。

    表 形式 の知 識ベ ースは 、知識編 集用 の イン タフェー スで あ

    り、製 品 ラ インナ ップ に関す るデ ー タや仕様 の決定方 法 を、

    エ ンジニ アあるいは管理者が編 集 ・更新す るのに用 いる。こ

    の よ うに 、知識 コ ンパ イラに よ り、知 識ベ ー スの 可読性 と

    推論 効 率 とを両立 し 、知識 ベ ースの構 築 ・メンテナ ン スの

    コス トを削 減す るこ とが 可能 にな る。

    推 論部 で は 、オブ ジ ェク ト形式 の知 識ベ ー スを利用 して

    電 源系 統の 自動設計 、自動 レ イアウ ト、及び 、再 設計 を行

    う。設計 結果編集 部では 、標準的 な設計結 果に対す る編集 ・

    仕様 調整(修 正)を 支 援す る。計 算書 は 、電源 系統 の各 機器

    の仕 様 を導 き出す根拠 と仕様 の妥 当性 を表 わす情報 を表 形

    式 に まとめ た もので あ り、編 集 にあた り適宜 出力 す る。 設

    備 機器 リス トは 、電気 設備 に用 い られ る機器 の仕様 を機種

    別 に ま とめ た もの であ る。APEC3で は 、負 荷 、 ドラ イブ

    装置 、 トランス 、遮 断器 に分け て リス トを作 成す る。

    APEC3は 、Autodesk社 のAutoCADの ア ド オ ン ッ ー

    ル と し てObjectARX(C++API)を 用 い て 構 築 し た 。 ま

    た 、 各 種 リス ト、表 形 式 知 識 ベ ー ス の 編 集 に は 、Microsoft

    Excelを 用 い て い る 。

    自 動設 計の 実 行 と評 価  APEC3の 有 効性 を

    確かめ るために 、数KWか ら数千KWま で様 々なモー タが

    350台 程度 用い られ るプ ラン トの負荷 リス トに対 して 、電 源

    系統の 自動設計 によ り標 準的な単線結線 図(25ペ ージ)を 自

    動生成す る実験 を行 った。なお 、こうした電源系統の設計 は、

    従来 、作 図作業だけで も少 な くとも8時 間 を要していた。本

    実験で は 、次 の計算機 を用 いた。a) PentiumH 400MHz×

    2, Windows NT 4.0 SP4, SDRAM 256MB. b) PentiumII

    350MHz, Windows 98, SDRAM 128MB. c) NINIX Pen

    tium 233MHz, Windows95 OR2, RAM 128MB.各 計 算

    機 の実験で は、それぞれ 、a) 27 sec., b) 26 Sec., c) 57 sec.

    とい う非常 に短 い時間で 自動 設計が行 わ れた。 電源 系統 の

    設計 を完了 する には 、この後 、対象 プ ラン トの環 境 条件 を

    元 に 、設計結 果の編 集 ・調整が必 要で あ るが 、この 作業 に

    おい て も、編集 ・調整操作 のつど 、APEC3が 影響 範囲 に対

    す る再 設計 を行 う、また 、調整具 合 を計算 書で確 認 す るこ

    とが で きる。この ため 、編 集途 中での ケ ア レス ミスを削減

    で きると と もに 、1時 間程 度で 単線 結線 図 を完 成 させ る こ

    とが で きる 。この為 、従来 の ドロ ーツー ルを用 いた 設計 時

    間に対 して 、APEC3を 用い る ことで 、 同等 以上 の 品質 の

    設計 を1/8程 度 に短縮 で きる と考え られ る 。 また 、編 集 ・

    調 整操 作が 自動 化 され るこ とで 、代替 案 を従来 よ りも充 分

    に練 る こ とがで きるため 、顧 客へ の シ ステム提 案の 総合 的

    な品 質 を向上で きる。

    5.ま と め

    本論 文で は 、電源 系統 の 設計業 務 を対 象 に 、主 に 、1.設

    計 リー ド タイムの短 縮 、2.設 計品 質の 向上 を 目的 として 、

    電 源系統 の 設計 自動化 手法 を提 案 した 。本 自動化 手法 に は

    次 の よ うな特 長が あ る。

    ●電源系統のモデルとして、電気機器と電気的経路の可

    能性を表す電気機器モデルを構築する。

    ●電気機器間の電源系統設計上の依存関係の性質を利用

    して知識やデータの重複、分散、不整合を防ぎ保守効

    率を向上するとともに、知識参照における検索及び探

    索の回数を削減して推論効率を向上する知識連想ネッ

    トワークを導入する。

    ●電源 系統の 設計 問題 を 、個 々の電気 負荷 が制 御 及び電

    源供 給 を受 け る電気 的 経路 の探 索 問題 と して と らえ 、

    行 動計 画問 題に帰 着 し 、一種の状 態 空 間の探 索 に基づ

    くプ ラ ンニ ング手 法 を用 いて解 く。

    ●電源系 統の修 正 及びそ の電 気機器 の仕 様 修正 に対 する

    影響範 囲の再 設計 を、修正 部分か ら電 源 まで の電 気的

    経 路の探 索問 題 と して リア クテ ィブ に解 くこ とで 、ケ

    アレ ス ミスを大幅 に削 減 し、最適 な電 源 系統 を対話 的

    に非常 に効率 よ く設計で きる。

    また 、筆 者 らは本 自動 設計 手法 に基づ い て 、APEC3 (Ad

    vanced Plant Engineering Cycle tool ver .3)を 開発 し、実

    際の設 計業 務 に適用 した 。その 結 果 、APEC3を 用 い るこ

    とで 、従来 と同等 以上 の品 質で の設計 に必 要 な設計 リー ド

    タイムを 、1/8程 度 に短縮 で きると考 え られ る。 また 、編

    集 ・調 整操 作が 自動化 され る ことで 、代替 案 を従 来 よ りも

    充分 に練 るこ とが で きるため 、顧 客へ の シ ステム提 案の 総

    合 的 な品質 を向上 で きる。

    本 システ ム設計 自動 化手 法は 、鉄鋼 プ ラ ン トの みで はな

    く、電力 プ ラン ト、製紙プ ラ ン ト、石油化 学プ ラ ン ト、上下

    水 道プ ラ ン ト、交通 シ ステ ム等の 各種プ ラン トの電 源 系統

    設 計 に適用 可能で あ る。 また 、電子 回路 ・集 積回路 の電 源

    関係の 設計 に も適 用で きる と考 え られ る。

    謝 辞

    株 式 会社 東芝在 職時 に 、本研 究の機 会 を与 えて 下 さる と

    ともに長期 にわ た り貴 重 なご指 導 をいた だ いた 、東芝 エ ン

    ジニ ア リング株 式 会社 の 丸 山昭 男氏 に深 謝 し ます 。 また 、

    本 研究 を行 うに あた り貴重 なご 助言 を いた だい た大阪 大学

    大 学 院工学研 究科 情報 システ ム工学 専攻 薦 田教授 に感 謝 し

    ます。

    (平 成11年06月04日 受 付,同12年03月03日 再受付)

    文 献

    (1) Sycara, K., et al.: CADET: a Case-based Synthesis Tool for Engineering Design, "International Journal of Expert SysteTrzs", pp. 157-188, Vol. 4, No.2, 1992.

    1964 T. IEE Japan, Vol. 120-C, No.12, 2000

  • 電源系統 の自動設計のための一手法

    (2) Brown, A. W. (Ed.): "Component-Based Software Engineering", IEEE Computer Soc. Press, 1996.

    (3) Aben, M.: "CommonKADS Inferences", ESPRIT Project P5248 KADS-II KADS-II/M2/TR/UvA/041/1.0, October, 1993.

    (4) Tate, A., et al.: TF Method: An Initial Framework for Modelling and Analysing Planning Domains, AIPS 98 Workshop on Knowledge Engineering and Acquisition for Planning, June, 1998.

    (5) Namioka, Y., et al.: Planning Method Used in Visual Programming for Sequence Control Program Design with Sequential Function Chart, IEEE Transactions on Industrial Electronics, pp. 279-288, Vol. 44, No. 3, Jun., 1997.

    (6) Namioka, Y., et al.: Knowledge-Association Networks for System Design, Proceedings on The Third IEEE International Knowledge and Data Engineering Exchange Workshop, pp. 131-138, Nov., 1999.

    (7) Gruber, T. R.: Ontolingua: A Mechanism to Support Portable Ontologies, Knowledge Systems Laboratory, Stanford Univ., Technical Report, KSL 91-66, 1991.

    浪 岡 保 男 (非 会員)1964年 生。1988年3月 中央大学理工学

    部電気工学科卒業。1990年3月 中央大学大学院理

    工学研究科電気工学専攻博士前期課程修了。1990

    年4月 株式会社 東芝に入社 。1990年4月 ~2000

    年3月 同社研究開発セン ター、2000年 一現在 、同

    社生産技術セン ターに勤務。1999年10月 、大 阪

    大学大学 院工学研 究科情報 システム工学専攻博士

    後期課程 入学。主 として、知能情 報処理、システ

    ム設計技術 などの研 究に従事。電子情報通信 学会、情 報処理学会、人

    工知能学会 、IEEE、 AAAI各 会 員。

    星 野 晃 彦  (正 員)1957年 生 まれ。1980年3月 茨城大学工

    学部 電気工学科卒業。1980年4月 株式 会社東 芝

    に入社。1980年4月 ~現 在、情報 ・社会シ ステム

    社 産業電機 システム事業部に勤務。主 として鉄鋼

    圧延設備電気品の システムエ ンジニア リング業務

    に従事。

    久 利 俊 文  (非会員)1959年 生 。1982年3月 大阪大学工学

    部産業機械工学科卒業。1984年3月 大阪大学大

    学院工学研究科産 業機械 工学専攻 博士前期課程修

    了。1984年4月 株式会社東芝に入社。2000年10

    月~現 在 、東 芝GEオ ー トメーシ ョンシステムズ

    株式 会社 勤務。主 として鉄鋼圧延 設備電気品のシ

    ステムエンジニア リング業務に従事 。

    福 島 航  (非 会員)1969年 生。1992年3月 筑波大学経営

    工学主専攻卒業。1992年4月 株式会社東 芝に入

    社。2000年10月 ~現在、東芝ジーイー ・オー ト

    メーションシステムズ株式 会社 勤務。主 として鉄

    鋼圧延設備電気品のシステムエンジニア リング業

    務に従事。

    電学論C, 120巻12号,平 成12年 1965