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個人消費の現状と展望 ~今押さえておきたい3つの勘所~ 株式会社 大和総研 シニアエコノミスト 長内 智 2018年6月21日 Japanese Economic Research

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個人消費の現状と展望 ~今押さえておきたい3つの勘所~

株式会社 大和総研

シニアエコノミスト

長内 智

2018年6月21日

Japanese Economic Research

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本日の概要

論点1:実感なき消費回復の背景

論点2:2019年10月の消費増税の影響

論点3:人口減少と高齢化という不可逆的な変化

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論点1~冴えないながらも個人消費は回復の途を辿る

実質個人消費の各種指標

◆ 2014年4月の消費増税後、個人消費は徐々に回復してきたが、実感がないとの声が多い

◆ 個人消費の増加ペースが緩やかなものに留まっていることだけで説明できるか?

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実質家計最終消費支出 CTIマクロ(実質)

消費総合指数 消費活動指数(実質、旅行収支調整済)

(2011年=100)

(年)

(出所)総務省、内閣府、日本銀行より大和総研作成

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実質家計最終消費支出

CTIマクロ(実質)

消費総合指数

消費活動指数(実質、旅行収支調整済)

(2011年=100)

(年)

【拡大図】

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論点1~マクロの所得増加の主因は雇用者要因

名目雇用者所得と実質雇用者所得の推移 実質雇用者所得(3MA)の寄与度分解

◆ マクロの雇用者所得は増加傾向にあり、それが個人消費に対してプラスに作用している

◆ 雇用者数の増加が全体を押し上げている一方で、一人当たり賃金の伸びが物足りない

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名目雇用者所得 名目雇用者所得(3MA)

実質雇用者所得 実質雇用者所得(3MA)

(2005年=100)

(年)

名目雇用者所得と実質雇用者所得の推移

(注)実質化は、CPI(持家の帰属家賃を除く総合)による。季節調整は大和総研。

(出所)厚生労働省、総務省より大和総研作成

(注)実質化は、CPI(持家の帰属家賃を除く総合)による。

(出所)厚生労働省、総務省、内閣府より大和総研作成

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所定内給与要因 所定外給与要因

特別給与要因 雇用者数要因

物価要因 名目雇用者所得の変化率

実質雇用者所得の変化率

(年/月)

(累積変化率と寄与度、%、%pt)

実質雇用者所得(3MA)の寄与度分解

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論点1~一人当たり実質賃金は2014年4月以降の落ち込みから回復できていない

一般労働者の現金給与総額(季節調整値) パートタイム労働者の現金給与総額(季節調整値)

◆ 一般労働者とパートタイム労働者のいずれも一人当たり実質賃金が低迷 ⇒ 回復の実感なし

◆ 一人当たり実質賃金を引き上げることが重要 ⇒ 生産性の向上、労働者への適切な分配が鍵

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一人当たり名目賃金 一人当たり実質賃金 (年)

(2014年3月=100)

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一人当たり名目賃金 一人当たり実質賃金 (年)

(2014年3月=100)

(注)事業所規模5人以上、点線は3ヵ月移動平均値。 季節調整は、大和総研。

(出所)厚生労働省より大和総研作成

(注)事業所規模5人以上、点線は3ヵ月移動平均値。 季節調整は、大和総研。

(出所)厚生労働省より大和総研作成

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論点1~パートタイム労働者の年収を増やすという視点

パートタイム労働者の年収、労働時間、時給

◆ パートタイム労働者の時給は堅調に増加 ⇔ 時短の動きで年収(月収)はさほど変化なし

◆ 社会保障制度・慣習により、配偶者は年収(月収)の増加を抑制 ⇒ 抜本的な改革が必要

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名目現金給与総額指数 名目実労働時間指数 名目時給指数(現金給与総額ベース) 名目時給指数(所定内給与ベース) (年)

(1994年1月=100)

1,149(円/時間)

1,117(円/時間)

118(万円/年)

19.8(時間/週)

(注)12ヵ月移動平均、12ヵ月合計ベース。

(出所)厚生労働省より大和総研作成

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論点2:想定外の下振れは避けられると見込む

2014年度の実質民間最終消費支出の成長率予測の推移 消費税の導入・引き上げによるCPI(前年比)への影響

◆ ①税率の引き上げ幅、②軽減税率の導入、③幼児教育の無償化(効果発現にはラグ?)

◆ 重要なことは、リアルタイム・データ分析の強化(予算措置) ⇒ 変調をいち早く察知する

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13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4

市場コンセンサス 低位8社平均 高位8社平均

消費税率の引き上げ

(%)

(年/月)

(注)市場コンセンサスは調査総平均ベース。

(出所)日本経済研究センターより大和総研作成

CPI(%pt)

コアCPI(%pt)

1989年4月 1.2 -

1997年4月 1.4 1.4

1.5 -

2014年4月 2.0 2.0

2.1 2.0

2.0 2.0

2019年10月軽減税率

なし1.3 1.3

軽減税率あり

1.0 1.0

大和総研

旧経済企画庁

総務省

旧経済企画庁

総務省

日本銀行

内閣府

(注1)旧経済企画庁の1989年の試算値は、物品税廃止の影響を含む。

(注2)総務省の試算値は、実績値と消費税調整済み指数との差による。いずれも経過措置の影響がなくなる5月時点の値とした。

(注3)2014年の日本銀行の試算値は、フル転嫁を仮定した場合の影響。

(注4)2014年の内閣府の試算値は、5月時点の値。(注5)2019年の大和総研の試算値は、フル転嫁を仮定した場合の影響、2018年

4月のデータをベースに計算。結果については、幅を持ってみる必要がある。(出所)旧経済企画庁、総務省、内閣府、日本銀行より大和総研作成

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論点2:将来不安が個人消費に影を落とす

将来不安と家計貯蓄率 老後の生活資金計画と家計貯蓄率

◆ 安心した老後生活に対する漠然とした不安が個人消費を抑制している可能性

◆ 財政規律の維持に努めることが大きな課題 ⇒ ただし、行き過ぎた財政緊縮には負の側面も

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老後の生活設計に不安を感じる人の割合(%)

貯蓄率(%)

1981年

2017年

1999年

2010年

(注)貯蓄率は、家計調査の「黒字率」。1998年と2000年は欠損値。

(出所)総務省、内閣府より大和総研作成

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金融資産の保有目的を「老後の生活資金」と回答した割合(%)

貯蓄率(%)

1980年

1990年

2000年

2010年

2017年

(注)貯蓄率は、家計調査の「黒字率」。

(出所)総務省、日本銀行より大和総研作成

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論点2:景気回復の恩恵を実感しにくい年金受給者

年金改定率の推移 マクロ経済スライドの仕組み

◆ 「マクロ経済スライド」という仕組みで、賃金や物価の伸びに比べて年金受給額が増えにくい

◆ 高齢化で消費増税の負の影響が増大 ⇒ 臨時給付金などの政策対応は一定程度必要か?

物価・賃金

物価・賃金

物価・賃金

スライド調整率

実際の

調整率

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CPI(除く帰属家賃) 年金改定率(除く①、②)

①スライド調整率 ②特例措置の解消

年金改定率 実質年金改定率

(年度)

(%)

年金改定率=物価・賃金の伸び

-スライド調整率

年金改定率=0(横ばい)

*物価・賃金と同じだけ調整

年金改定率=物価・賃金の伸び

*調整は行われない

【賃金・物価の上昇<スライド調整率:部分実施】

【賃金・物価が下落:実施せず】

【賃金・物価の上昇>スライド調整率:完全実施】

スライド調整率

(出所)厚生労働省資料を基に大和総研作成(注)実質年金改定率は、65歳以上無職世帯の支出額ウエイトを用いて

大和総研が試算したCPI(除く持家の帰属家賃)を利用して実質化を行った。2018年度のCPI(除く持家の帰属家賃)は大和総研予測。

(出所)厚生労働省、総務省より大和総研作成

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論点3:人口減少と高齢化という不可逆的な変化にどう立ち向かうか?

日本の人口の推移

◆ 「本格的」な人口減少社会は、これから ⇒ マクロの個人消費は、本当に維持可能か?

◆ 高齢者の比率が上昇するなかで、消費構造の変化に対応していく必要

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6,000

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12,000

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65歳以上人口(予測値):左軸 15~64歳以上人口(予測値):左軸 0~14歳以上人口(予測値):左軸

65歳以上人口(実績値):左軸 15~64歳以上人口(実績値):左軸 0~14歳以上人口(実績値):左軸

総人口(実績値):左軸 総人口(予測値):左軸 65歳以上人口比率(実績値):右軸

65歳以上人口比率(予測値):右軸

(万人)

(年)

(%)

(注)予測値は、国立社会保障・人口問題研究所(平成29年推計、出生中位・死亡中位推計)による。1989年消費税導入、1997年消費増税、2014年消費増税。

(出所)国立社会保障・人口問題研究所、総務省より大和総研作成

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論点3:先に崩れゆく地方経済への対処が喫緊の課題

都道府県別の人口変化と高齢化(2015年~2045年)

◆ 東京は2045年も人口が横ばい圏で維持される見込み ⇒ 危機意識が薄くなりやすい

◆ 地方経済への対処が早急に求められる ⇒ 全体の消費でなく、一人当たりで見る必要性?

北海道

青森

岩手

宮城

秋田

山形

福島

茨城

栃木

群馬

埼玉千葉

東京

神奈川新潟

富山石川

福井

山梨

長野

岐阜 静岡

愛知

三重 滋賀京都

大阪

兵庫

奈良

和歌山

鳥取

島根岡山

広島山口

徳島

香川

愛媛高知 福岡佐賀

長崎

熊本大分

宮崎

鹿児島沖縄

全国

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6

8

10

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14

16

18

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2015年~2045年の65歳以上人口比率の変化幅(%pt)

2015年~2045年の人口の変化率(%) 人口増加→←人口減少

高齢化進行【大】

(注)全国は都道府県の積み上げにより計算。

(出所)国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より大和総研作成

都道府県別の人口変化と高齢化(未来)

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本日のまとめ

論点1:実感なき消費回復の背景

■ マクロの賃金は緩やかに増加している一方で、ミクロの賃金は低迷

■ 生産性の向上、労働者への適切な分配を通じて持続的な賃上げの実現が重要

■ パートタイム労働者の年収増加を妨げる「壁」を壊すことも求められる

論点2:2019年10月の消費増税の影響

■ 2014年4月の消費増税時のような「想定外の下振れ」は避けられる公算

■ 政府には、リアルタイム・データ分析を一層強化することが求められる

⇒前回増税時、内閣府は「消費税率引上げ後の消費動向等について」を公表

論点3:人口減少と高齢化という不可逆的な変化

■ 長期的には、本格的な人口減少社会を迎える中で、マクロの消費の維持は困難

■ 人口の減らない東京の危機意識は薄くなりやすい一方で、地方にとっては喫緊の課題

■ いずれ、「マクロ」から「ミクロ」の消費拡大へと議論の中心をシフトさせることが重要

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~参考資料~

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たかがマインド、されどマインド

消費者マインドと実質家計消費 TOPIXと消費者マインド

◆ 個人消費のモメンタムを占う上で、消費者マインドの動向が重要な鍵となる

◆ 株価の変動は、「資産効果」と当時に、「消費者マインド」を通じて、個人消費に影響する

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消費者態度指数(暮らし向き):左軸 実質家計消費(前年比):右軸

(年)

(%)

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3.0

3.2

3.4

3.6

82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 18

TOPIX(常用対数):左軸

消費者態度指数(暮らし向き+収入の増え方):右軸

(年)

(注)シャドーは景気後退期。消費者態度指数は、旧系列と現行系列を表示している。

(出所)総務省、内閣府より大和総研作成

(注)シャドーは景気後退期。消費者態度指数は、旧系列と現行系列を表示している。

(出所)東京証券取引所、内閣府より大和総研作成

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2018年1-3月期の個人消費の弱さと消費者マインド

食料品・エネルギー価格と消費者マインド 食料品・エネルギー価格上昇に伴うマインドの悪化度合い

◆ 2018年1-3月期の実質個人消費の弱さは、食料品・エネルギー価格の上昇が要因の1つ

◆ 食料品・エネルギー価格の上昇は、消費者マインドを悪化させ、低所得者層への影響が大きい

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全体 300

万円

未満

300~

400

万円

未満

400~

550

万円

未満

550~

750

万円

未満

750~

950

万円

未満

950~

1200

万円

未満

1200

万円

以上

相関関係:左軸 影響度:右軸

(注)相関関係は、CPI(食料品・エネルギー)の前年比と消費動向調査の前年差の

相関係数、影響度は、消費動向調査の「暮らし向き」の前年差をCPI(食料・エネルギー)の前年比で回帰した際の回帰係数。2006年1月~2017年12月。

(出所)総務省、内閣府より大和総研作成

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-5

0

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15

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CPI(食料品・エネルギー)の前年比

消費動向調査の「暮らし向き」の前年差

(%、pt)

(年)

(出所)総務省、内閣府より大和総研作成

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中間層の崩壊と低所得者層の増加

所得分布(世帯)の歪み 所得分布の変化と平均消費性向(世帯)

◆ 所得分布の歪み拡大は見られない一方、所得分布は下方シフトして中間層が減少

◆ 低所得者層は節約志向が高まりやすい、そもそも消費の原資が足りず、消費を拡大させにくい

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円未

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100~

150

150~

200

200~

250

250~

300

300~

350

350~

400

400~

450

450~

500

500~

550

550~

600

600~

650

650~

700

700~

750

750~

800

800~

850

850~

900

900~

950

950~

1000

1000~

1100

1100~

1200

1200~

1500

1500~

2000

2000万

円以

平均消費性向(2015年):右軸 所得分布(1990年):左軸

所得分布(2000年):左軸 所得分布(2015年):左軸

(年間所得・年間収入)

(%) (%)

1990~2000年

中間層が減少

2000年以降

低所得者層が増加

借入制約【強】

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500

600

700

800

900

1,000

90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14

中央値:左軸 平均値:左軸

平均値-中央値:右軸

(年)

(万円) (万円)

所得分布の

歪みが拡大

所得分布の歪み拡大は

見られず

歪み拡大

歪み縮小→

(出所)厚生労働省より大和総研作成 (注)所得分布は「所得」、平均消費性向は「収入」。

(出所)厚生労働省、総務省より大和総研作成

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所得対比で見た消費の動向

平均消費性向

◆ 平均消費性向は緩やかに低下 ⇒ 所得との対比で見て、消費が抑制されている

◆ 消費者の節約志向が根強いことを示唆、モノを買わないミレニアル世代の影響も注目点

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115

120

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

平均消費性向(SNA雇用者報酬ベース):左軸 平均消費性向(SNA可処分所得+年金準備金ベース):右軸

平均消費性向(家計調査可処分所得ベース、3MA):右軸

(年)

(%) (%)

平均消費性向

(出所)総務省、内閣府より大和総研作成

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社会負担という重荷

名目調整可処分所得(純)の要因分解

◆ 社会負担の増加が可処分所得の重荷となっている ⇒ 賃上げのみに注目すべきでない

◆ 【経済統計の課題】 四半期ベースの可処分所得の公表(個人消費の分析に欠かせない)

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17

その他の経常移転(純) 財産所得(純) 社会負担(支払)

所得・富等に課される経常税(支払) 社会給付(現物) 社会給付(現物除く)

雇用者報酬(受取) 営業余剰・混合所得(純) 調整可処分所得(純)

(前年比、%、%pt)

(年)

(注1)調整可処分所得(純)=可処分所得(純)+現物社会移転(受取)、可処分所得(純)=可処分所得(総)-固定資本減耗。

(注2)社会負担(支払)と所得・富等に課される経常税(支払)は増加するとマイナスに寄与する。(出所)内閣府より大和総研作成

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過去の景気拡張期との比較(時給・労働時間)

88

90

92

94

96

98

100

102

104

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70

第12循環 第13循環 第14循環

第15循環 2012年11月~

(ヵ月)

(景気の谷からの変化、%pt)

94

96

98

100

102

104

106

108

110

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70

第12循環 第13循環 第14循環

第15循環 2012年11月~

(ヵ月)

(景気の谷からの変化、%pt)

96

97

98

99

100

101

102

103

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70

第12循環 第13循環 第14循環

第15循環 2012年11月~

(ヵ月)

(景気の谷=100)

92

94

96

98

100

102

104

106

108

110

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70

第12循環 第13循環 第14循環

第15循環 2012年11月~

(ヵ月)

(景気の谷=100)(1)名目時給(一般労働者、5MA) (2)名目時給(パートタイム労働者、5MA)

(3)名目所定内労働時間(一般労働者、5MA) (4)名目所定内労働時間(パートタイム労働者、5MA)

(注)各景気循環において谷から山までの推移を示しており、第12循環は1993年10月~1997年5月、第13循環は1999年1月~2000年11月、第14循環は2002年1月~2008年2月、

第15循環は2009年3月~2012年4月、今回は2012年11月~をグラフに示している。景気拡張期は、谷の翌月から山まで。(出所)厚生労働省、総務省より大和総研作成

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雇用から賃金への波及経路が弱まる

循環失業率と一人当たり名目雇用者報酬

◆ 労働市場の需給バランスの改善は、名目賃金の上昇に寄与する

◆ しかし、2000年以降、労働需給の改善の割に賃金が伸びにくい構造となる

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5

6

7

8

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

(一人当たり名目雇用者報酬、前年比%)

(循環失業率、%)

1981Ⅰ~1989Ⅳ

2000Ⅰ~2017Ⅰ

1990Ⅰ~1999Ⅳ

2013Ⅰ~2017Ⅰ

(出所)総務省、内閣府等より大和総研作成

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労働生産性の向上なくして、持続的な賃金上昇なし

一人当たり労働生産性と名目雇用者報酬 労働生産性の寄与度分解

■ 長期的に見て、労働生産性と賃金には右上がりの関係が存在する

■ ①資本装備率(ロボットなど)の深化、②TFP(規制緩和、AIの活用)の向上が今後の課題

-10

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

-5 0 5 10

(一人当たり名目雇用者報酬、前年比%)

(労働生産性、名目ベース、前年比%)

1981Ⅰ~1989Ⅳ

2000Ⅰ~2017Ⅱ

1990Ⅰ~1999Ⅳ

(注)労働生産性=名目GDP÷雇用者数。

(出所)総務省、内閣府より大和総研作成

0

1

2

3

4

5

6

80-89 90-99 00-12 80-89 90-99 00-12 80-89 90-99 00-12

日本経済全体 製造業 非製造業

労働の質要因 資本装備率要因

TFP上昇率 労働生産性の変化率

(%)

(年)

(注)全体と非製造業は、「住宅・分類不明を除く」ベース。

(出所)独立行政法人経済産業研究所より大和総研作成

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2014年4月の消費増税の影響(実質GDP)は、「想定内」から「想定外」へ

■ 消費増税直後も2014年度はプラス成長を維持できると予測されていた

■ その後、段階的に予測値が引き下げられ、マイナス成長まで落ち込む

2014年度の実質GDP成長率予測の推移

(注)市場コンセンサスは調査総平均ベース。

(出所)日本銀行、日本経済研究センターより大和総研作成

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4

市場コンセンサス 低位8社平均 高位8社平均 日銀政策委員

(%)

(年/月)

消費税率の引き上げ

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◆ 教育無償化の動きが進展するに伴い、その財源となる消費増税の確度が高まる

◆ ①「会合」の開催、②2019年夏の参議院議員通常選挙、などが焦点

安倍政権下での消費増税を巡る経緯

消費増税の再延期シナリオは?

2014年4月の消費増税→予定通り実施 【6ヵ月前に表明】

2013年8月26日 「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」を開催(8/26~8/31の期間に計7回開催)

2013年10月1日 安倍首相が、2014年4月1日に消費税率を8%へ引き上げると正式に表明

2014年4月1日 消費税率の引き上げ

2015年10月の消費増税→2017年4月まで1年半延期 【10ヵ月半前に表明】

2014年11月4日 「今後の経済財政動向等についての点検会合」を開催(11/4~11/18の期間に計5回開催)

2014年11月17日 2014年7-9月期の実質GDPが予想外の2四半期連続のマイナス

2014年11月18日 安倍首相が、消費増税の延期と衆議院の解散を正式に表明

2014年12月14日 衆議院議員総選挙、自民党と公明党の連立与党が勝利

2017年4月の消費増税→2019年10月まで2年半延期 【10ヵ月前に表明】

2016年3月16日 「国際金融経済分析会合」を開催(3/16~5/19の期間に計7回開催)

2016年6月1日 安倍首相が消費増税を2年半延期することを正式に表明

2016年7月10日 参議院議員通常選挙、自民党と公明党の連立与党が勝利

(出所)各種報道より大和総研作成

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消費増税延期を決定づけた想定外の「2四半期連続マイナス成長」

◆ 2014年7-9月期の実質GDP成長率(前期比):市場コンセンサス+0.5%⇒結果▲0.4%

◆ ①反動減、②実質所得減少の効果、のいずれも過少に評価されていた可能性

実質GDP(2014年11月17日時点) 実質GDP成長率の寄与度(2014年11月17日時点)

(出所)内閣府より大和総研作成

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

12 13 14

民間消費 民間住宅 民間設備 民間在庫

公的需要 輸出 輸入 実質GDP

(季節調整済み前期比、寄与度、%、%pt)

(年)

・在庫調整という「振れ」が主因だが、

住宅投資の落ち込みが続くとともに、

天候不順などで個人消費が冴えず、

増加が見込まれた設備もマイナス圏

480

490

500

510

520

530

540

10 11 12 13 14

(年)

(兆円)

11月17日 実質GDPが予想外に2四半期連続の

マイナス成長

11月18日 安倍首相が消費税増税の延期と

衆議院の解散を表明

(出所)内閣府より大和総研作成

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