消費税率引き上げ前後の個人消費の動向 - 三菱ufj …...2019 年11月5 日 murc...
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2019 年 11 月 5 日
MURC Focus
消費税率引き上げ前後の個人消費の動向
~前回よりも小幅にとどまった駆け込み需要と反動減~
調査部 研究員 藤田 隼平
○ 今回の消費税率引き上げに際しても、直前期には、宝飾品等の高額商品や自
動車、家電、軽減税率の対象とならない日用品といった財を中心に駆け込み
需要が発生した。ただし、軽減税率やキャッシュレスポイント還元等の対策
の効果もあり、トータルで見た駆け込み需要は前回 2014 年の増税時を下回
ったとみられる。
○ 一般に、消費税率の引き上げは、①駆け込み需要と反動減(代替効果)、②消
費 税 率 の 引 き 上 げ に よ り 物 価 が 上 昇 す る こ と に 伴 う 実 質 所 得 の 減 少 に よ る
効果(所得効果)の 2 つの経路を通じて個人消費に影響を及ぼす。
○ ①の代替効果については、今回も相応の駆け込み需要が生じたものの、その
規模は前回よりも小幅だったことから、その分、反動減も前回と比べて軽微
にとどまったと考えられる。ただし、クレジットカード情報やPOSデータ
等のオルタナティブデータを用いた各種指標の動向を踏まえると、10 月以降
の反動減は小幅にとどまっているが、自動車については 10 月に大きく減少
しており、今後の動向を注視する必要がある。
○ ②の所得効果についても、軽減税率や幼児教育無償化の効果により、増税に
よる物価の押し上げ幅が限定的だったことから、今回の増税による悪影響は
軽微にとどまったとみられる。
○ 年内は反動減により個人消費の落ち込みは続くものの、年明け以降は所得の
増加に併せて、個人消費は緩やかに持ち直していくと期待される。ただし、
内外経済の先行き不透明感が強まる中で、雇用・所得環境の改善の動きが鈍
ることや消費者マインドの弱さが続くことは、消費の持ち直しが想定よりも
遅れるリスクとなる。当面、消費関連の統計に加え、賃金や消費者マインド
の動向からも目が離せない状況が続こう。
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1.直前に盛り上がりを見せた駆け込み需要
消費税率が 8%から 10%へ引き上げられてから約 1か月が経過した。2019 年 8 月頃までは
目立った駆け込み需要は見られなかったが、さすがに増税直前の 9 月には駆け込み需要が発
生した。以下、業種別に動向を確認したい。
(百貨店)
経済産業省「商業動態統計」によると、9 月の百貨店販売額は前月比+19.7%の大幅増と
なった(図表 1)。内訳を見ると、酒類等の一部を除き軽減税率の対象となる「飲食料品」が
前月比+3.2%の増加だったのに対し、アクセサリー類が含まれる「衣料品」が同+20.1%、
家具等が含まれる「その他」が同+32.6%と、耐久財や半耐久財を中心に駆け込み需要が生
じた。
もっとも、前回 2014 年 3 月の販売額が前月比+24.1%の増加であったことを踏まえると、
今回の駆け込み需要は小幅にとどまった。単純に、増税前最終月とそれまでの直近 1 年間の
販売額の平均値との差を駆け込み需要の規模とみなすと、2014 年の増税時は 1290 億円程度
だったのに対し、2019 年は 1160 億円程度と約 130 億円小さくなっている。差の内訳として
は、「衣料品」の寄与が 70 億円程度と大きいことから、9 月の気温が比較的高く推移したこ
とで秋物衣料の実需が盛り上がらず、駆け込みも小さくなった可能性が指摘できる。
図表 1.百貨店販売額の推移
6917
6454
4000
4500
5000
5500
6000
6500
7000
7500
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2013 14 15 16 17 18 19
(億円、季節調整値)
直近1年間(2013年3月~14年2月)の平均値
5624億円
直近1年間(2018年9月~19年8月)の平均値
5293億円
(備考)1.経済産業省「商業動態統計」により作成。
2.公表されている2015年の商品別の販売額を2015年基準の季節調整済み指数に掛け合わせ、それらを積み上げることで販売額の季節調整値を算出。
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(スーパー)
9月のスーパー(大型スーパー)販売額は前月比+7.2%と、前月から大きく増加した(図
表 2)。内訳を見ると、「飲食料品」が前月比+3.3%の増加だったのに対し、「衣料品」が同+
10.2%、「その他」が同+23.3%の増加となった。販売額に占める食料品のシェアが大きいた
め百貨店ほどの高い伸びとはならなかったが、軽減税率の対象となる食料品以外では相応の
駆け込み需要が発生した。
ただし、百貨店と同様、前回 2014年 3月の販売額が前月比+10.5%の増加であったことを
踏まえると、今回の駆け込みの需要は小幅にとどまった。増税前最終月とそれまでの直近 1
年間の販売額の平均値との差を駆け込み需要の規模とみなすと、2014 年の増税時は 1280 億
円程度だったのに対し、2019 年は 935 億円程度と約 345億円小さくなっている。差の内訳と
しては、「飲食料品」の寄与が 230 億円程度と大きいため、軽減税率の導入による効果と考え
られる。
図表 2.スーパー販売額の推移
(コンビニ)
9 月のコンビニエンスストア販売額は前月比+0.1%と、前月からおおむね横ばいだった
(図表 3)。前回 2014 年 3月の販売額が前月比+1.9%の増加であったことを踏まえると、今
回は特段の駆け込み需要が生じなかったといえる。
コンビニはトレンドとして市場規模が拡大してきたため、その影響を考慮してこれまでと
異なり、増税前最終月とそれまでの直近 1 年間の販売額のトレンドから計算した増税前最終
月の理論値との差を駆け込み需要の規模とみなすと、2014 年の増税時は 170億円程度である
のに対し、2019年は 130 億円程度と約 40 億円程度小さくなっている。これは、前回 2014 年
3 月はタバコが含まれる「非食品」が前月比+10.4%と大きく増加したのに対し、今回 2019
11915
12162
9500
10000
10500
11000
11500
12000
12500
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2013 14 15 16 17 18 19
(億円、季節調整値)
直近1年間(2013年3月~14年2月)の平均値
1兆633億円
直近1年間(2018年9月~19年8月)の平均値
1兆1226億円
(備考)1.経済産業省「商業動態統計」により作成。
2.公表されている2015年の商品別の販売額を2015年基準の季節調整済み指数に掛け合わせ、それらを積み上げることで販売額の季節調整値を算出。
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年 9 月は同+0.3%とほとんど増えなかったことを反映したもので、背景には、キャッシュレ
スポイント還元策の効果により、コンビニにおいてタバコの販売価格が増税前後で変化せず、
慌てて駆け込む必要性が小さかったことがあるとみられる。
図表 3.コンビニ販売額の推移
(自動車小売業)
9 月の自動車小売業販売額は前月比+13.5%と、前月から大きく増加した(図表 4)。前回
は増税前の早い段階から 1年近くにわたって駆け込み需要が生じ、むしろ直前の 2014 年 3 月
には販売額が前月比▲2.2%とピークアウトしていた。しかし、今回は増税直前まで駆け込み
需要はほとんどみられず、そのことでかえって直前に需要が集中し、単月での大きな伸びに
つながった1。もっとも、駆け込みの期間が短かった分、トータルで見れば今回の駆け込み需
要は前回よりも小さかったとみられる。
このことを前向きに解釈すれば、自動車税減税の効果といえるが、実際には新車販売台数
ランキングの上位に名を連ねるような人気のハイブリッド車や軽自動車では自動車税減税の
恩恵は小さかったため、そもそも自動車需要の基調が弱い可能性がある点には注意を要する。
1 自動車販売店では登録または納車時点で売上に計上されるケースが多いとみられることから、販売店で
の駆け込みは 6 月~7 月頃に集中的に生じたものと考えられる。なお、自動車小売業には、自動車用品の販
売店も含まれており、そうした業態では増税直前に駆け込みが生じたとみられる。
8736
10232
7000
7500
8000
8500
9000
9500
10000
10500
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2013 14 15 16 17 18 19
(億円、季節調整値)
トレンドから計算した2014年3月の値
8564億円
トレンドから計算した2019年9月の値
1兆102億円
(備考)1.経済産業省「商業動態統計」により作成。
2.公表されている2015年の商品別の販売額を2015年基準の季節調整済み指数に掛け合わせ、それらを積み上げることで販売額の季節調整値を算出。
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図表 4.自動車小売業販売額の推移
(家電小売業)
9 月の家電小売業販売額は前月比+28.2%と、前月から大きく増加した(図表 5)。エアコ
ンや冷蔵庫等の生活家電やテレビ等のAV家電、パソコン等の情報家電など高額家電を中心
に駆け込み需要が発生した模様である。
7 月に天候不順の影響でエアコン等の季節家電の販売額が大きく落ち込んだため、トータ
ルの駆け込み需要は前回より小さかったとみられるものの、前回 2014 年 3 月の販売額が前
月比+23.8%の増加だったことを踏まえると、増税直前には今回も相応の駆け込み需要が生
じたといえるだろう。
(衣料品小売業)
9月の衣料品小売業販売額は前月比+1.4%と、前月から小幅の増加にとどまった(図表 6)。
前回 2014 年 3 月の販売額が前月比+7.6%の増加であったことを踏まえると、今回は目立っ
た駆け込みは生じなかったといえる。
増税前最終月とそれまでの直近 1 年間の販売額の平均値との差を駆け込み需要の規模とみ
なすと、2014年の増税時は 610億円程度であるのに対し、2019年は 330 億円程度と、今回は
前回よりも 280 億円程度小さくなっている。百貨店と同様、気温が比較的高く推移したこと
で、秋物衣料の実需に悪影響が出たものとみられる。
1.4
1.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2013 14 15 16 17 18 19
(兆円、季節調整値)
直近1年間(2013年3月~14年2月)の平均値
1.4兆円
直近1年間(2018年9月~19年8月)の平均値
1.5兆円
(備考)1.経済産業省「商業動態統計」により作成。
2.公表されている2015年の商品別の販売額を2015年基準の季節調整済み指数に掛け合わせ算出。
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図表 5.家電小売業販売額の推移
図表 6.衣料品小売業販売額の推移
7298 7589
4000
4500
5000
5500
6000
6500
7000
7500
8000
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2013 14 15 16 17 18 19
(億円、季節調整値)
直近1年間(2013年3月~14年2月)の平均値
5521億円
直近1年間(2018年9月~19年8月)の平均値
5536億円
(備考)1.経済産業省「商業動態統計」の機械器具小売業販売額により作成。
2.公表されている2015年の商品別の販売額を2015年基準の季節調整済み指数に掛け合わせ算出。
9572
9976
7500
8000
8500
9000
9500
10000
10500
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2013 14 15 16 17 18 19
(億円、季節調整値)
直近1年間(2013年3月~14年2月)の平均値
8957億円
直近1年間(2018年9月~19年8月)の平均値
9646億円
(備考)1.経済産業省「商業動態統計」の織物・衣服・身の回り品小売業販売額により作成。
2.公表されている2015年の商品別の販売額を2015年基準の季節調整済み指数に掛け合わせ算出。
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(サービス業)
各種サービスについては、購入と利用が同時点であるものが多く、財と比べて駆け込み需
要は生じにくい。しかし、サービスの中でも定期券や美術館の観覧チケット等については利
用前に購入しておくことが可能であるため、相応の駆け込み需要が生じた模様である。また、
駆け込み需要に向けて外出の機会が増えたことで、外食業界では客数の増加につながるなど、
間接的なプラス効果もあったようだ(図表 7)。
図表 7.外食売上高の推移
2.増税後の反動減は小幅で、実質所得の押し下げも軽微
一般に、消費税率の引き上げは、①駆け込み需要と反動減(代替効果)、②消費税率の引き
上げにより物価が上昇することに伴う実質所得の減少による効果(所得効果)の 2 つの経路
を通じて個人消費に影響を及ぼす2。
①の代替効果については、今回も相応の駆け込み需要が生じたものの、その規模は前回よ
りも小幅だったことから、その分、反動減も前回と比べて軽微にとどまったと考えられる。
本稿執筆時点で 10 月以降の消費動向を表す統計は十分に出そろっていないが、例えば、クレ
ジットカードの利用情報に基づくと、個人の消費支出額は 9 月上旬に前年比+4.6%、下旬に
同+11.9%と伸びを高めた後、10 月上旬には同▲6.7%と減少している(図表 8)。落ち込み
幅は駆け込みの規模と比べても相応の水準であり、駆け込み以上に落ち込んでいる様子は見
て取れない。
2 詳細は藤田(2019)を参照のこと。
9月
90
95
100
105
110
115
120
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
13 14 15 16 17 18 19
(2015年=100、季節調整値)
(備考)1.経済産業省「第3次産業活動指数」、日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」により作成。
2.第3次産業活動指数の2010年の値をもとに、外食市場動向調査の前年比を用いて延伸の上、季節調整を施した値。
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-30.0%
-20.0%
-10.0%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5
ドラッグストア(2014年)
ドラッグストア(2019年)
(前年同週比、%)
(増税日が含まれる週=0)
-30.0%
-20.0%
-10.0%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5
スーパーマーケット(2014年)
スーパーマーケット(2019年)
(前年同週比、%)
(増税日が含まれる週=0)
(備考)1.一橋大学経済研究所経済社会リスク研究機構・全国スーパーマーケット協会・株式会社インテージ「SRI一橋大学消費者購買指数」により作成。
2.消費者購買支出指数(POS-CEI)の値。各週は月曜日開始。
図表 8. クレジットカード情報に基づく消費動向(JCB 消費 NOW)
また、食品等の非耐久財に限られるものの、POSデータに基づく業種別の小売販売額を
見ると、軽減税率の対象とならない日用品を主に扱うドラッグストアの駆け込みは前回と同
程度で、その分、反動減も大きいのに対し、食料品を主に扱うスーパーマーケットでは駆け
込みはほとんど生じておらず、反動減も軽微な様子を確認できる(図表 9)。
図表 9.POSデータに基づく業種別の小売販売額(POS-CEI)
-10.0
-5.0
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上 上
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
2018 2019
合計 うち財 うちサービス
(前年比、%)
(備考)ナウキャスト「JCB消費NOW」により作成。
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ただし、自動車については、10月に大きな減少がみられた。新車販売台数(含軽)は 9月
に前月比+1.8%と増加した後、10月は同▲29.9%と大きく減少した(図表 10)。増税前の伸
びに対して大きな落ち込みとなっており、駆け込み需要の反動減だけでなく、台風等の天候
不順による影響もあるとみられるものの、今後の動向には注視が必要だろう。
図表 10.新車販売台数(含軽)の推移
次に、②の所得効果についても、今回の増税による影響は軽微にとどまったとみられる。
図表 11 は総務省「消費者物価指数(CPI)」をもとに、東京都区部のCPI(総合)の前
年比の推移を表している。これを見ると、前回 2014年 4月の東京都区部のCPI(総合)の
前年比が+2.9%と同年 3 月の同+1.3%から 1.6%pt伸びが拡大したのに対し、今回 2019 年
10月のCPI(総合)の前年比は+0.4%の上昇と 9 月から横ばいにとどまっている。
東京都区部のCPI(総合)の前年比の内訳を見ると、消費税率引き上げにより+0.72%
pt押し上げられたものの、幼児教育の無償化により▲0.55%pt押し下げられ、増税によるネ
ットでの押し上げ効果は+0.17%pt となっている(図表 12)。経過措置により電気代や通信
費など一部の品目では増税分の反映が 11 月以降となるため、増税による押し上げは今後+
0.1%pt 程度高まり、最終的には+0.3%程度となる見込みだが、それでも押し上げ幅は前回
よりも小幅にとどまる見通しである。
前述のとおり前回の消費税率引き上げ後には消費者物価が大きく上昇し、家計の実質所得
を押し下げたことで、その後の個人消費の低迷につながった。今回は消費者物価の上昇幅が
限定的となったことから、実質所得の減少による消費への悪影響はおおむね回避できたと考
えられる。年内は反動減により消費の落ち込みは続くものの、年明け以降は所得の増加に併
せて、個人消費は緩やかに持ち直していくと期待される。
28
30
32
34
36
38
40
42
44
46
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10
2013 14 15 16 17 18 19
(万台)
(備考)1.日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会により作成。
2.季節調整はMURCによる。
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図表 11.東京都区部の消費者物価(CPI総合)の推移(前年比)
図表 12.2019 年 9~10 月の東京都区部の消費者物価(CPI総合)の前年比の内訳
ただし、いくつか懸念材料もある。ひとつは、雇用のタイト感が和らいでいることである。
有効求人倍率や新規求人倍率の水準は引き続き高いものの、足元では低下している(図表 13)。
日銀短観の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)を見ると、非製造業では引き続き不足感
が強まっていることから労働市場全体の需給が大きく緩んでいるわけではないとみられるも
-1.5
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10
2013 14 15 16 17 18 19
CPI総合(東京都区部)
CPI総合(東京都区部:除く消費税)
(前年比、%)
(備考)1.総務省「消費者物価指数」により作成。
2.2014年4月~15年3月期の消費増税による影響は一律2%と仮定。
0.40.27
0.72
-0.55
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
2019年9月 10月
基調要因
消費税率引き上げ要因
幼児教育無償化要因
計
(前年比寄与度、%)
(備考)総務省「消費者物価指数」公表資料により作成。
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0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2013 14 15 16 17 18 19
有効求人倍率(含むパート)
新規求人倍率(含むパート)
(倍)
(備考)厚生労働省「一般職業紹介状況」により作成。
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
2013 14 15 16 17 18 19
大企業製造業
中小企業製造業
大企業非製造業
中小企業非製造業
(%ポイント、「過剰」-「不足」)
先行き
(備考)日本銀行「短観」により作成。
のの(図表 14)、製造業では人手不足感が和らいでおり、今後の動向には注意が必要である。
図表 13.求人倍率の推移
図表 14.雇用人員判断DIの推移
また、消費者マインドの弱さが続いていることも懸念材料である。内閣府が公表する消費
者態度指数は消費税率引き上げ後の 10 月に 36.2(前月差+0.6 ポイント)と 23 か月ぶりに
改善したものの、これまで 2 年近く悪化が続く中で水準を大きく落としており、内外経済の
先行き不透明感が強い中で、このまま下げ止まるかは不透明である(図表 15)。
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この様に雇用・所得環境の改善の動きが鈍ることや消費者マインドの弱さが続くことは、
消費の持ち直しが想定よりも遅れるリスクとなる。当面、消費関連の統計に加え、冬のボー
ナス支給額や 2020 年春闘、消費者マインドの動向等からも目が離せない状況が続こう。
図表 15.消費者態度指数の推移
参考文献(発表年・五十音順)
藤田隼平(2019)「消費税率引き上げが個人消費に与える影響~前回、前々回の増税時の
振り返りと今回の見通し~」三菱 UFJリサーチ&コンサルティング
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(ポイント、季節調整値)
(備考)内閣府「消費動向調査」により作成。