自宅で生活している認知症高齢者の排泄行動と 家族の排泄介護に … ·...

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103 Ⅰ.はじめに わが国では,超高齢社会の進展に伴い認知症高齢者 数は増加しており,2025年には260万人に,2040年に 400万人になると見込まれている 1。認知症介護は 介護負担感が強く,中でも排泄ケアにおいては,これ らの問題は在宅への復帰を困難とする原因にもなって いる 2。特に,認知症の場合,認知機能の低下や排泄 行動に障害が及ぶため機能性尿失禁を引き起こしやす 3。また,老人施設では,認知症で尿失禁のある者 7090%,脳梗塞リハビリ棟では83%と高率である 一方,在宅では11%と差があることから,尿失禁は個 人の生活環境にも大きな影響を受けているといえる 4先行研究をみると,病院や老人保健施設などに入院 (所)している認知症高齢者を対象としたケア方法に ついての研究 5678や要介護高齢者を対象とした 尿失禁ケア方法の研究 91011,認知症高齢者の家族 の介護負担感についての研究 12131415はみられる が,自宅で生活をしている認知症高齢者の家族の排泄 介護状況について研究をしたものはみられない。認知 症高齢者は,環境や状況の変化に対処することが困難 となってくる 16。自宅で生活をするということは, なじみの環境を維持することであり,認知症ケアにお いて大切なポイントの一つである。今後,自宅で生活 する認知症を持つ高齢者が増加する中で,認知症高齢 者がどのように排泄行動をとっているのか,家族はど のように排泄介護を行っているのかを調査すること, またそれらに影響する要因を明らかにすることは在宅 療養を促していくうえで重要であると考えた。 そこで,本研究の目的は,自宅で生活をしている認 知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護に影響する要 因を明らかにすることとした。 Ⅱ.研究方法 1.対象 本研究の対象は,A町およびB町で開催された「認 知症とそのケア」をテーマとした講習会に参加した 152人のうち,自宅で生活している認知症高齢者を家 族にもつ者(以下家族)で,調査に同意を得られ,調 査票を記入できる者とした。 自宅で生活している認知症高齢者の排泄行動と 家族の排泄介護に影響する要因 上 山 真 美 1) 内 田 陽 子 1) 小 泉 美佐子 1) 2008年9月30日受付,200812月8日受理) 要旨:本研究の目的は,自宅で生活をしている認知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護に影 響する要因を明らかにすることである。対象は,A町およびB町で開催された認知症の講習会 に参加し,調査に同意を得た48人とした。方法は,自記式質問紙法とした。結果,自宅で生活 をする認知症高齢者は,尿とりパッドを使用しながらトイレで排泄している者が多く,家族の 介護では,時間を見はからい声をかけている者が多かった。認知症高齢者の排泄行動や家族の 排泄介護に影響する要因としては,以下の2点が明らかとなった。①自力での排泄行動に影響 する認知症高齢者自身の要因は,「年齢が高い」,「認知症のレベルが重い」,「手足の不自由さ がある」であった。②家族の排泄介護に影響する要因は,「認知症高齢者自身に手足の不自由 さがある」,「介護する家族の年齢が高い」であった。 キーワード:排泄介護,認知症,高齢者,在宅,家族介護 1) 群馬大学医学部保健学科 群馬保健学紀要 291031092008

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103

Ⅰ.はじめに

わが国では,超高齢社会の進展に伴い認知症高齢者

数は増加しており,2025年には260万人に,2040年に

は400万人になると見込まれている1)。認知症介護は

介護負担感が強く,中でも排泄ケアにおいては,これ

らの問題は在宅への復帰を困難とする原因にもなって

いる2)。特に,認知症の場合,認知機能の低下や排泄

行動に障害が及ぶため機能性尿失禁を引き起こしやす

い3)。また,老人施設では,認知症で尿失禁のある者

は70~90%,脳梗塞リハビリ棟では83%と高率である

一方,在宅では11%と差があることから,尿失禁は個

人の生活環境にも大きな影響を受けているといえる4)。

先行研究をみると,病院や老人保健施設などに入院

(所)している認知症高齢者を対象としたケア方法に

ついての研究5・6・7・8)や要介護高齢者を対象とした

尿失禁ケア方法の研究9・10・11),認知症高齢者の家族

の介護負担感についての研究12・13・14・15)はみられる

が,自宅で生活をしている認知症高齢者の家族の排泄

介護状況について研究をしたものはみられない。認知

症高齢者は,環境や状況の変化に対処することが困難

となってくる16)。自宅で生活をするということは,

なじみの環境を維持することであり,認知症ケアにお

いて大切なポイントの一つである。今後,自宅で生活

する認知症を持つ高齢者が増加する中で,認知症高齢

者がどのように排泄行動をとっているのか,家族はど

のように排泄介護を行っているのかを調査すること,

またそれらに影響する要因を明らかにすることは在宅

療養を促していくうえで重要であると考えた。

そこで,本研究の目的は,自宅で生活をしている認

知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護に影響する要

因を明らかにすることとした。

Ⅱ.研究方法

1.対象

本研究の対象は,A町およびB町で開催された「認

知症とそのケア」をテーマとした講習会に参加した

152人のうち,自宅で生活している認知症高齢者を家

族にもつ者(以下家族)で,調査に同意を得られ,調

査票を記入できる者とした。

自宅で生活している認知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護に影響する要因

上 山 真 美1) 内 田 陽 子1) 小 泉 美佐子1)

(2008年9月30日受付,2008年12月8日受理)

要旨:本研究の目的は,自宅で生活をしている認知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護に影

響する要因を明らかにすることである。対象は,A町およびB町で開催された認知症の講習会

に参加し,調査に同意を得た48人とした。方法は,自記式質問紙法とした。結果,自宅で生活

をする認知症高齢者は,尿とりパッドを使用しながらトイレで排泄している者が多く,家族の

介護では,時間を見はからい声をかけている者が多かった。認知症高齢者の排泄行動や家族の

排泄介護に影響する要因としては,以下の2点が明らかとなった。①自力での排泄行動に影響

する認知症高齢者自身の要因は,「年齢が高い」,「認知症のレベルが重い」,「手足の不自由さ

がある」であった。②家族の排泄介護に影響する要因は,「認知症高齢者自身に手足の不自由

さがある」,「介護する家族の年齢が高い」であった。

キーワード:排泄介護,認知症,高齢者,在宅,家族介護

1)群馬大学医学部保健学科

群馬保健学紀要 29:103-109,2008

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2.調査内容と方法

1)調査方法

調査は,講習会に集まった対象者に,研究の目的と

方法を説明し同意を得て行い,自記式質問紙法を用い

た。なお,対象者が高齢者であることに配慮し,記入

時には研究者が一つ一つ丁寧に質問の説明を行った。

このとき,複数の研究者が対象者を回り,正しく記入

しているか確認を行った。

2)調査項目

質問紙の主な調査項目は,認知症高齢者と家族の背

景条件,認知症高齢者の排泄行動および家族の排泄介

護状況とした。背景条件は,認知症高齢者については,

年齢,性別,介護者との関係,手足の不自由さの有無,

認知症のレベル,利用しているサービス内容の項目を,

家族については,年齢,性別,介護年数の項目を設定

した。また,認知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介

護状況を尋ねる項目は,福島17)や諏訪18)の文献を参

考に研究者で協議を行い作成した。その調査項目は,

自宅で生活している認知症高齢者の排泄行動に関する

質問11項目と家族の排泄介護状況に関する質問11項

目,合計22項目を設定し,該当するかどうか「はい」,

「いいえ」で回答してもらった。対象は高齢者が多い

と予測されたことから,質問はわかりやすい表現を用

い,事前に数人の高齢者に確認をしてもらった。また,

調査票は回答しやすいように文字を大きくし,記載の

負担が少ないようにA3サイズの用紙一枚におさまる

ように設定した。

3.分析方法

認知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護状況およ

びその影響要因を明確にするために,背景条件との関

連についてχ2検定及びt検定を行った。統計ソフト

は SPSS ver15.0を使用した。

4.倫理的配慮

調査の目的,方法,調査への参加は自由意志である

こと,調査票は匿名であり,結果は研究以外には使用

しないこと,データは鍵のかかる場所に保管すること

について講習会の中で口頭にて説明し同意を得た。な

お,本調査は講習会の一部として行ったため,調査票

の一部に排泄介護の工夫点を記載した。家族が,自ら

の排泄介護の状況を知り,記載した工夫点を実際の介

護の中で活かせるように,調査票は2枚1セットの複

写式とし,1枚は家族の手元に残るよう配慮した。

Ⅲ.結果

1.認知症高齢者と家族の背景条件(表1)

対象は48人であった。認知症高齢者の平均年齢は,

85.5±7.9歳で,80歳以上の者が40人(83.4%)と多か

った。性別では,女性が27人(56.3%),男性が18人

(37.5%),手足の不自由さがある者が14人(29.2%),

認知症のレベルは重度な者が18人(37.5%)であった。

認知症高齢者と家族の関係は,実の父母が2 3人

(47.9%)で義理の父母が14人(29.1%)であった。サ

ービスの利用は,「デイサービス」が17人(35.4%),

「ショートステイ」10人(20.8%),「デイケア」9人

(18.8%),「訪問介護」8人(16.7%),「何も利用して

いない」は10人(20.8%)であった(複数回答)。「訪

問看護」は3人(6.3%)と利用が最も少なかった。家

族の平均年齢は,60.1±9.5歳で,性別は,女性が41人

(85.4%),男性が7人(14.6%),介護年数は,5年未

満が28人(58.3%)であった。

2.認知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護状況

(表2)

認知症高齢者の排泄場所は,「トイレで排泄してい

る者」が37人(77 .1%)と多いにもかかわらず,

「時々おむつ・パッドに排泄している者」が20人

(41.7%),「いつもおむつ・パッドに排泄している者」

が13人(27.1%)であった。家族の排泄介護状況は,

「排泄介護は全く必要ない者」は,21人(43.8%)と

半数を下回り,「自分でパッド交換をしている者」は

10人(20.8%),「自分で交換できないので,全て世話

をしている者」は,18人(37.5%)であった。排泄の

前兆からトイレまでの過程において,「いつトイレに

行ったか覚えていない者」が19人(39.6%),「声をか

けないとトイレで排泄できないことがある者」は,12

人(25.0%),「トイレ以外の場所で排泄しようとする

者」は,7人(14.6%)であった。排泄介護状況では,

「また忘れたの,だめじゃないと叱責する者」が7人

(14.6%),「時間を見はからって『トイレに行く』と

声をかけている者」は,20人(41.7%)と多かった。

一方,「排泄の前兆があってもおむつをしているので

トイレ誘導はしない者」は7人(14.6%)であった。

トイレでの動作について,認知症高齢者の排泄行動と

家族の排泄介護状況を比較してみると,「自分でズボ

ンなどの上げ下げができない者」が13人(27.1%)に

対し,「本人の羞恥心を配慮しないで介護している者」

が8人(16.7%),「便座に近づかない,座らない者」

が6人(12.5%)に対して,「無理にでも便座に座ら

せている者」6人(12.5%),「トイレットペーパーを

105

使えない者」10人(20.8%)であった。「本人の動作

が遅く待っていられない者」は,9人(18.8%)であ

った。

3.認知症高齢者の排泄行動および家族の排泄介護状

況と本人の背景条件との関連(表3)

認知症高齢者の排泄行動と背景条件との関連をみる

と,手足の不自由さがある者はない者に比べて,「自

分でズボンの上げ下げができない」(p<0.01),「ト

イレットペーパーを使えない」(p<0.05)の項目で

は該当者が多く,「自分でパッド交換をしている」

(p<0.05)の項目で該当者が少なく有意に差がみら

れた。認知症のレベルとの関連では,重度の者の方が

軽度の者に比べて,「いつもおむつ内・パットに排泄

している」(p<0.01),「声をかけないとトイレで排

泄できないことがある」(p<0.01),「汚れた下着や

おむつをたんすにしまいこむ」(p<0.05)の項目で

該当者が多く有意に差がみられた。家族との関係では,

義理の父母の方が実の父母に比べて「いつもおむつ・

パッドに排泄している」(p<0.05)の項目で該当者

が多く有意に差がみられた。

家族の排泄介護状況と認知症高齢者の背景条件との

関連をみると,認知症高齢者に手足の不自由さがある

者はない者に比べて,「本人では交換できないため全

て世話をしている」(p<0.05),「本人の動作が遅く

待っていられないためほとんどの世話をしている」

(p<0.01)の項目で該当者が多く有意に差がみられ

た。認知症のレベルとの関連では,軽度の者の方が重

度の者に比べて,「排泄の介護は全く必要がない」

(p<0.01)の項目で該当者が多く有意に差がみられ

た。

4.認知症高齢者および家族の年齢と排泄介護状況の

関連(表4)

認知症高齢者および家族の背景条件と排泄介護状況

の関連をみると,「本人の動作が遅く待っていられな

いためほとんどの介護をしている」に該当する認知症

高齢者の平均年齢は,91.3±6.7歳で,該当しない者の

平均年齢84.0±7.8歳に比べて高く有意に差がみられ

た。また,「本人は交換できないため全て世話をして

いる」に該当する家族の平均年齢は63.8±8.0歳で,該

当しない者の平均年齢57.3±2.2歳に比べて高く有意に

差がみられた。

Ⅳ.考察

1.認知症高齢者の排泄行動に影響した本人の要因

認知症高齢者の排泄行動に影響した本人の要因(背

景条件)は,手足の不自由さの有無と認知症のレベル,

家族との関係が実の父母か義理かということであっ

た。手足の不自由さのある者は,「トイレで排泄して

いる」,「本人が自分でパッド交換をしている」の項目

に該当した者は少なかった。これは,トイレでの排泄

やパッド交換は,手先の巧緻性,関節可動域や筋力,

姿勢のバランス保持が求められるため,手足の不自由

な者は,住み慣れた自宅でも排泄動作が困難であると

いえる。認知症のレベルをみると,認知症のレベルが

重度な者は,「いつもパッドに排泄している」,「声を

かけないとトイレで排泄できないことがある」,「汚れ

た下着やおむつをたんすにしまいこむ」の項目で軽度

表1 認知症高齢者と家族の背景条件

106

の者よりも該当者が多く有意な差がみられた。排泄物

を体外に排出するプロセス19)は,尿意,便意により

排尿,排便反射が起こり,それを尿,便がしたいと知

覚できることや,いつトイレに行ったら良いかを判断

すること,トイレの場所がわかる,排泄の仕方がわか

ることで構成されている。しかし,認知症のレベルが

重度であると,上記のプロセスが障害される。特に,

「汚れた下着やおむつをたんすにしまいこむ」のは,

尿意の知覚があるにもかかわらず,トイレの場所や排

泄行動の過程が混乱するためにトイレまで間に合わず

失禁し,汚れたものをどのように処理してよいかわか

らず,自分なりに処理してしまうことが原因であると

考えられる。「トイレの場所がわからない者」は,3

人と少ないにもかかわらず,「いつトイレに行ったか

覚えていない者」は,19人と多かった。アルツハイマ

ー型の認知症の代表的な症状は,エピソード記憶の障

害で,遠隔記憶は比較的保たれ,近時記憶の障害を起

こすということである20)。認知症高齢者は,自宅で

生活していることから,自宅は馴染みの環境であり,

遠隔記憶であるトイレの場所は覚えているものの,近

時記憶障害により,いつトイレに行ったのかがわから

なくなると考えられる。

家族との関係をみると,義理の父母の方が,「いつ

もおむつ・パッドに排泄している」の項目で実の父母

より該当者が多く有意な差がみられた。これは,実の

父母の場合は,気兼ねなくトイレ誘導や言葉をかける

ことができるためであると考える。介護者は,他人で

ある義理の父母に対しては,声をかけることを躊躇し

本人が訴えるのを待ち,結局おむつやパッドに排泄後,

とりかえている状況にあると考えられる。

2.排泄介護状況に影響した認知症高齢者および家族

の要因とケアの方向性

排泄介護状況に影響した要因(背景条件)は,認知

症高齢者の平均年齢と手足の不自由さ,家族の平均年

齢であった。「本人の動作が遅く,待っていられない

ためほとんどの世話をしている」の項目では,認知症

高齢者の平均年齢が高い方がこのような介護を受けて

いる者が多かった。また,認知症高齢者に手足の不自

由さのある者の方が,「本人の動作が遅く,待ってい

られないためほとんどの世話をしている」と回答した

家族が多かった。これは,介護する家族自身が高齢で

あり,本人のペースを待つよりも,自分のペースで全

て介護した方が,介護時間は短く身体的負担も少なく

なるためであると考える。「本人は交換できないため,

全て世話をしている」に該当した家族の平均年齢は,

していない者よりも有意に高かった。排泄介護は中腰

で行い,排泄回数も多いことから,介護する家族自身

の身体的負担も大きい。認知症高齢者の排泄行動は,

様々な混乱の中で考えながら行っているため,動作を

間違えたり緩慢となることが多いと考えられる。

サービスの利用状況をみると,利用は全体的に少な

表2 認知症高齢者の排泄行動と家族の排泄介護状況

107

く,一番多いデイサービスでさえ17人(35.4%),訪

問介護は8人(16.7%)と少なかった。中でも訪問看

護は3人(6.3%)と少なかった。これより,毎日の排

泄介護は,家族の手にゆだねられている状況であるこ

とがわかる。

認知症による尿失禁は,脳血管性とアルツハイマー

型ではその病態のメカニズムが異なることから,認知

症の進行具合により尿失禁の出現時期に違いがある21)。そのため,個人にあった排泄の介護方法は,認

知症のタイプや症状の進行程度,生活環境などにより

異なってくる。病院施設より退院する場合,その人個

人や生活環境にあった排泄介護方法を教えられること

は少なく,家族は手探りの状態で排泄介護を行ってい

るといえる。今後,今回行ったような認知症高齢者へ

の排泄介護方法を地域に発信し,様々な状況でのサー

ビス利用についても相談できるようなシステムが求め

られている。更に,認知症高齢者の病状や生活環境,

本人のできることとできないこと,家族の年齢や体力,

介護経験など細かくアセスメントし,サービスの調整

および相談できる場所などにつないでいくことが重要

表3 認知症高齢者の排泄行動および家族の排泄介護状況と本人の背景条件との関連

108

となる。また,訪問看護をサービスに取り入れ,個人

の状態や生活環境などを細かくアセスメントし,その

時々にあった介護方法を提案し,指導していくととも

に,訪問介護サービスを導入していくことも必要であ

ると考える。

3.本研究の限界と今後の課題

本研究は,特定の地域で講習会に参加した特定の者

を対象とし,家族の自己評価であったため,本研究の

知見を一般化することには限界がある。今後は,地域

の特性を考慮し,対象者を増加しての研究や,データ

の信頼性を高めるため,実際に訪問して評価するなど

評価方法を検討していくことが課題である。

謝辞

本研究をまとめるにあたり,ご協力いただきました

A町およびB町で講習会に参加された皆様,群馬大学

の学部生清水さゆりさんに深く感謝いたします。

文献1)厚生労働省労健局.今後の認知症対策について.平成

17年8月5日全国介護保険担当課長会議資料.2005:1-

112

2)大塚伸之:排泄障害.月刊ケア.2001,11:16-19.

3)Ouslander,JG.Uninary incontinence in the geriatric

population. Jph.Geriat.28. 1991:484-492

4)本田芳香.齊藤恵子.認知症(認知機能障害)による機能性尿失禁.Urological Nursing2006;11(9):30-35

5)岩坪暎二.西井久枝.山下博志ほか.要介護高齢者排尿障害の社会医学 北九州市の挑戦から学んだもの.日本排尿機能学会誌2007;18(2):320

6)美濃久美子.認知症高齢者の排泄自立に向けた援助.Urological Nursing 2008;13(5):490-493

7)楠永敏惠,徳田哲男,前川佳史ほか.高齢者グループホームとユニットケア施設における放尿の実態と対応.日本認知症ケア学会誌2007;6(3):503-511

8)舟山恵美,佐藤和佳子.認知症でもあきらめない 排

尿自覚刺激行動療法による排尿誘導を試みてQOL向上に成功した一事例. Urological Nursing 2007;12(12)1194-1197

9)小泉美佐子.要介護高齢者の尿失禁ケア 排尿パターンのモニタリングから.The Kitakanto Medical Journal

2005;55(2):195-196

10)森田久美子,島内 節,奥富幸至ほか.在宅要介護高齢者の自立度と健康状態の経時的変化 利用者条件によるアウトカムの評価.日本在宅ケア学会誌2005;9(2):38-46

11)梶井文子,亀井智子,久代和加子ほか.尿・便失禁のある要介護高齢者における皮膚保護清浄剤を用いた予防的臀部スキンケアプロトコルの開発.聖路加看護大学紀要2005;31:26-35

12)遠藤 忠,蝦名直美,小野寺敦志ほか.家族介護者の介護負担感と主観的QOLに関する研究 認知症の有無と要介護度別による違いについて.老年社会科学2008;30(2):331

13)山田如子,木村紗矢香,町田綾子ほか.認知症の介護負担は介護の長期化でどう変化するか 高齢者総合機能評価を用いた縦断解析.日本老年医学会雑誌2008;45(Suppl):64

14)水谷信子.家族介護者の介護負担の実態と看護介入.EB NURSING 2008;8(2):188-192

15)鹿子供宏,上野伸哉,安田 肇.アルツハイマー型老年認知症患者を介護する家族の介護負担に関する研究介護者の介護負担感,バーンアウトスケールとコーピングの関連を中心に.老年精神医学雑誌2008;19(3):333-341

16)山口晴保編著.認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント.東京:共同医書出版社,2006:72

17)福島富和.認知症高齢者標準ケアサービス.名古屋:日総研出版,2006:18-22

18)諏訪さゆり.ICFの視点を活かしたケアプラン実践ガイド.名古屋:日総研,2007:49-62

19)前掲18)49-57

20)前掲16)56-59

21)須貝佑一.痴呆症に伴う機能性尿失禁.C l i n i c a l

Pharmacotherapy.3(1),1997:35-40

表4 認知症高齢者および家族の年齢と排泄介護状況の関連

109

Factors affecting toilet behavior in older persons with dementia and their family’s continence care

Manami KAMIYAMA1), Yoko UCHIDA1), Misako KOIZUMI1)

Abstract:The purpose of this study was to identify factors affecting toilet behavior in older

persons with dementia and their family’s continence care. The subjects were 48 persons who

attended dementia care workshops in “A” and “B” towns, and agreed to participate in the study.

We conducted a self-reported questionnaire survey. As a result, many older persons with

dementia living at home used the toilet as well as urinary pads, and family caregivers reminded

them of the toilet time. The following two factors were identified as factors affecting toilet

behavior in older persons with dementia and their family’s continence care. (1) The patient

factors related to toilet behavior were “older age,” “severe dementia,” and “disability in arms

and legs.” (2) The factors related to family’s continence care were “the patient’s disability in

arms and legs” and “older age of the family caregiver.”

Key words:continence care, dementia, the elderly, home, informal caregiving

1) School of Health Science, Gunma University Faculty of Medicine