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Page 1: 遺伝的アルゴリズムとラグランジュ緩和法を併用し …...計 測 自 動 制 御 学 会 論 文 集 Vol.34, No.11, 1660/1666 (1998) 遺伝的アルゴリズムとラグランジュ緩和法を併用した

計 測 自 動 制 御 学 会 論 文 集

Vol.34, No.11, 1660/1666 (1998)

遺伝的アル ゴリズム とラグラ ンジュ緩和法 を併用 した

動的部分空間探索によるジョブ ショップスケジュー リング問題の解法†

田 村 坦 之*・柴 田 智 裕 *・益 永 健 一郎 **

鳩 野 逸 生***・富 山 伸 司*

A Dynamic Search Method for Jobshop Scheduling

Using Lagrange Relaxation Method and Genetic Algorithm

Hiroyuki TAMURA*, Tomohiro SHIBATA*, Kenichiro MASUNAGA**, Itsuo HATONO*** and Shinji TOMIYAMA*

This paper deals with an approximate solution method by decomposing a search space dynamically combined with genetic algorithm(GA) and Lagrangian relaxation(LR) method for solving a job-shop scheduling problem. In this method a subspace of a search space is constructed by using information on partial processing order rela-tions between operations which use same resources. We search these subspaces by using GA. We evaluate each subspace with lower bound obtained by using LR method and with minimum value of the set up cost obtained by the structure of subspace. We reduce the size of solution space gradually, and search a feasible solution in the subspace finally obtained. Some numerical experiments are included to evaluate the proposed method.

Key Words: genetic algorithm, lagrangian relaxation method, jobshop scheduling

1. は じ め に

組合 せ 最適化 問題 の 近似 解 法 のアプ ローチ と して,直 接 解

空間 で解 を探 索す るの で な く,解 空 間の 中で よ り良 い近似 解

が含 まれる と考 え られ る部 分 空 間 を探 索 し,探 索 空 間 を限定

した上 で近似解 の探 索 を行 うハ イブ リッド手法 が挙げ られ る.

ハ イブ リ ッド手 法 の例 と して遺 伝 的 アル ゴ リズ ム(GA)1),2)

とラグ ラ ンジュ緩 和法(LR法)3),4)を 併 用 して有望 と考 え ら

れ る部 分 空間 を探 索 し,最 終 的 に得 られ る部分 空 間 にお いて

許 容解 を求め る手 法5)が 提 案 され てい る.し か し文献5)に

お け る部分 空 間 は,時 間軸 に沿 って細 か く分 割 す る こ とに よ

り構成 されて い るた め,段 取 り替 え回数最 小 な どジ ョブの処

理順 序 に よ り変化 す るス ケ ジ ュール評価 項 目 を最適 化 す る こ

とは困難 であ る.

ま た,ジ ョブ シ ョップ ・ス ケ ジ ュー リング問 題 をLR法 を

用いることにより部分問題に分割 して準最適解を求める手

法3),4)が提案されている.し かし,これらの手法では,LR問

題に変換する際に目的関数を作業レベルの部分問題にまで分

解するため,ジ ョブの作業順序た関する情報が欠落する.そ

のため,本 論文で対象とする評価項目に段取替えが含まれる

ようなスケジューリング問題を最適化することはやはり困難

である.

本論文では,ジ ョブの処理順序により変化するスケジュー

ル評価項目を含むスケジュール評価項目を取り扱うため,ス

ケジューリング問題の解空間の部分空間を,同一リソースを

共有する作業間の処理順序関係を用いて構成する.こ の空間

表現を用いてより良い部分空間の探索を行い,こ の部分空間

を構成する処理順序関係を段階的に付加 していくことによっ

て探索空間を限定していくことにより効率的にジョブショッ

プスケジューリング問題を解くことを試みる.

本手法では文献5)と 同様に精度の高い近似解の含まれる

と考えられる部分空間の探索を,GAを 用いて行う.部分空間

の有望性の評価はLR法 によって得られる下界値と部分空間

の構成による段取替えの最小値に基づいて行 う.このような

手順で最終的に得られる部分空間において許容解を求め,近

似解を得る.本手法では文献5)と は異なり,探索する部分空

間のサイズが動的に変化する.

†生産スケジュー リングシンポジウム'96で 発表(1996・10)

*大阪大学大学院基礎工学研究科 豊 中市待兼山町1 -3

**(株)日 立製作所 半導体事業部 横浜市戸塚 区吉 田町292

***神戸大学総合情報処理 センター 神戸市灘区六甲台町1 -1

*Graduate School of Engineering Science, Osaka Univer-

sity, Toyonaka**Hitachi

, Ltd., Totsuka-ku, Yokohama***Information Processing Center , Kobe Universiry, Nada-

ku, Kobe(Received February 25, 1997)(Revised February 6, 1998)

TR 0011/98/3411-1660 (C) 1997 SICE

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計測 自動制御学会論文集 第34巻 第11号 1998年11月 1661

Fig. 1 A jobshop scheduling problem.

2. 問 題 の 定 式 化

Fig. 1に 示す 生産 設備 におけ るス ケジ ュー リング 問題 を考

え る.Fig. 1に おい て,工 程Aお よびCで は次 に処 理 す る

ジ ョブ の種類 が異 なっで い る場 合,段 取 替 えが発 生 す る.ま

た,工 程Bお よびCで は,複 数 の代 替機 械 が存在 す る もの

とす る.本 論 文 で は,対 象 とす る ス ケ ジュー リ ング問 題 を,

Fig. 1に 示す 生 産設備 におい て,納 期遅 れ,加 工待 ち時 間お よ

び段取 替 え 回数 の 重み付 き和 が最小 にな るよ うに各 ジ ョブ の

処 理 開始時 間 お よび代 替 機 械 を選択 す る問題 と して定式 化 す

る.こ の 問題 は 目的 関数 が(1)式 で制 約条件 が(2),(3)お よ

び(4)で 表 される組 合せ 最 適化 問題 と して定式 化 され る.

N:ジ ョブ数

Oi:ジ ョブiに 含 まれ る作 業 数

bij:ジ ョブiのj番 目の作 業 の処理 開始 時刻

cij:ジ ョブiのj番 目の作 業 の処理 終 了時刻

M:総 機械 数

K:考 慮 す る最 大 の時 間

Wt:納 期 遅 れ に対 す る重 み

Wf:加 工待 ち時 間 に対 す る重 み

Ws:段 取替 え回数 に対 す る重 み

tij:ジ ョブiのj番 目の作 業 の処 理時 間

pijk:ジ ョブiのj番 目の作 業 が ジ ョブiのk番 目の作 業 の

直前 の先行 関係 にあ る場合1,そ うでな い場合0

di:ジ ョブiの 納期

TiOi:ジ ョブiの 納期 遅 れ(max{0,ciOi-di})

Fij:加 工待 ち時 間(bik-cij,た だ し,kはpijk=1を 満 た

す もの とす る)

δmkij:ジ ョブiのj番 目の作 業 が時刻kに 機 械mを 使 用 中の

とき1,そ れ以 外0

Sij:も し,ジ ョブiのj番 目の作 業 が行 なわ れた機 械 の次

の作 業の段 取 りが,ジ ョブiのj番 目の段 取 りと異 って

いれ ばSij=1,そ れ以 外 はSij=0.

σij:ジ ョブiのj番 目の作 業 の段取 りの種類

mij:ジ ョブiのj番 目の 作 業 の 使 用 機 械 番 号 を 表 わす.

す な わ ち,式(2)~(3)の 条 件 を 満 た すkに 対 して

δmijkij=1で あ る もの とす る.

た だ し,本 論文 にお け る時 間 お よび時刻 は,最 初 のジ ョブ の処

理 開始 時刻 を0と す る整数 値 で ある もの とす る.

3. 本 手 法 の 概 要 と 目的

3.1 探 索の概 要

本 論 文 で は,式(1)~(4)(以 下,元 問 題 とす る)で 示 され る

ス ケ ジ ュー リング問 題 を解 くに あ た って,(i)各 工 程 におけ

る作 業の順 序 を生成 す る,(ii)各 工 程 毎 に(i)で 生成 された順

序 で計 算 され た各 作 業 の最早 開始 時刻 を用 いて実行 可能 ス ケ

ジ ュール を生 成す る,と い う方 針 で ス ケジ ュー ル を生 成す る

もの とす る.以 上 の手 法 で最 適 に近 い ス ケジ ュール を生成 す

る には,(i)に お いて,最 適 スケ ジ ュー ル にお け る作業順 と近

い作業 順序 を生 成 してお く必 要 があ る と考 え られ るが,一 般

にそ れに は多大 な計算 量 が必 要で あ る と思 わ れる.

そ こで,本 論 文 では,ジ ョブ 間 の順 序 関係 を部分 的 に固定 す

る こ とに よ り解 空 間の部 分 空 間 を構 成 し,各 個体 を1つ の 部

分 空間 に対 応 させ たGAを 用 い て最適 解 を含 む可能性 が高 い

と思 わ れ る部分 空 間 を探 索 す る.さ らにGAに よ って得 られ

た部 分 空 間群 の 中か ら最 良 の部 分空 間 を選 択 し,そ の部 分 空

間 に おい て ス ケジ ュー ルの(準)最 適 解 を現実 的 な計 算 時 間

で探 索す る ことが 可 能か ど うか を判 定す る.探 索可 能 と判定

された な らば列 挙法 あ るい は ビー ム探 索 法 を用 いて許容 解 の

探 索 を行 な う.許 容解 を探 索 す る こ とが不 可能 で ある場合 は,

さらに ジ ョブ 間の 固定す る順 序 関係 を増 やす ことに よ り部分

空間 を小 さ くし,再 びGAに よって最 適解 を含 む と思 われ る

部 分 空間 を探 索 す る.

GAに よって,最 良 の部分 空 間 を探 索す るには,そ の個体 に

対 応す る部分空 間 に(準)最 適 な解 が含 まれるか どうか を評 価

す る必 要 が ある.一 般 に,個 体 に対応 す る部分 空 間 内で(準)

最 適 なス ケ ジュー ル を探 索 し,得 られ た スケ ジ ュール の評価

値 をその個 体 の評 価値 とす る こ とが望 ま しい と考 えられるが,

部分 空 間が広 い場合,精 度 の高 い(準)最 適 スケ ジュー ル を求

め る には多大 な計 算時 間 が必 要 であ る と考 え られ る.本 論 文

で は,元 問題 で 示 され る問 題 の ラグ ラ ンジュ緩和 問題 に各個

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1662 T. SICE Vol.34 No.11 November 1998

Fig. 2 Outline of the algorithm.

体 に含 まれ る作 業順 序 を与 えた 問題 を解 くこ とに よ り得 られ

る下界 値 を,個 体 に対応 す る部分 空 間が どの程 度(準)最 適 に

近 い解 を含 む か に関す る評価 値 と して用 い る ことに よ り個体

の 評価 値計 算 に要 す る計算 時 間 を削減 す る こ とを試み る.本

手 法 のア ル ゴ リズ ムの概 要 をFig. 2に 示す.

3.2 動的 に空 間 を限定 す る 目的

文献4),5)の 手 法 で は,ラ グ ラ ンジ ュ緩 和 法 で得 られ る解

は 許容 解 とは限 らない ため,最 終 的 な許容解 を得 るため に非

許容 解 か ら許 容解 を生成 す る手 続 きを用 いて い る.文 献4),5)

にお いて,ス ケ ジ ュー リング 目的 関数 は総処 理 時 間最 小 とい

う比 較 的扱 いやす い ものであ るた め,簡 単 な ヒュー リス テ ィッ

クス に基 づ いた計 算 時 間の短 くて済 む手 続 きで 十分 良い スケ

ジ ュ ール が得 られ る こ とが 示 され て い る.し か し,本 問題 の

よ うな複 数評価 項 目の場 合,簡 単 な ヒ ュー リス テ ィクス を発

見 す る こ とは困難 で あ り,計 算 時 間の かか る探 索 的 な手法 を

用 い る必 要が あ る と考 え られ る.本 手 法 で は,最 終 的 に得 ら

れ る部分 空 間 におい て列挙 的手 段 で許容 解 を生成 す る.

本 手法 で は部分 空 間が列 挙 的手段 が 可能 な大 きさか否 かの

判 定 が必 要 となる.こ の部 分 空間 のサ イズは各 部分 空 間 の状

態 に よ って異 な るた め,そ れ を前 もって見 積 もる こ とは困難

で あ る.GAに よる部分 空 間の探 索 を終 了 す るか否 か はそ の

都 度 部 分 空 間の 大 きさ を見 積 り終了 判 定 を行 う もの とす る.

詳 し くは,後 述す る.

また,問 題 の解 空 間 を初 期状 態 か ら細 か く して いる ので は

な いた め,多 くの個 体 数 を探 索 に必 要 と しない.そ こで個体

の適応 度 算 出にLR法 を適用 す る こ とを考 慮 す る と計 算時 間

をあ る程度 抑 え る こ とが期待 され る.

4. 本 手 法 の構 成

4.1 部分 空 間の構 成 お よび限定 手 法

本探 索手 法 で は,問 題 の解 空 間の部 分 空間 を,同 一 リソー

ス(機 械)を 共 有 す る作 業 間 の先 行 関係 を用 い て構 成 す る.

Fig. 3に 投 入 す る ジ ョブ の一 例 を挙 げ る.a,b,c,dは それ

ぞ れ工 程A,B,C,Dに お け る作 業 で あ る こ とを示す.こ こで

Fig. 3 Example of jobs.

の競 合 グル ープ とは,同 工 程 の機 械 を使 用す る作 業 の集 合 を

競 合 グ ル ープ と呼 び,Gα で表 す.た だ し,α は工 程 名 であ り,

α ∈{A,B,C,D}で あ る もの とす る.さ らに,Gα におけ る作

業 間の先 行 関係 を表現 す るた め,Gα を以 下 の よ うにlの 部 分

集 合 に分 割す る.

Ga = {Gi , G2 , ... , Gl } (5)

ただ し,Gαr(1≦T≦l)は 互 い に素 なGα の部 分 集合 で あ る.

本 論 文 で は,式(5)の 形 式 で表現 され た競 合 グ ル ープ にお い

て,競 合 グ ル ープ 中の各 作業 は,Gα1>Gα2>…>Gαlと い

う先行 関係 を持 つ もの とす る.す なわち,任 意 の2つ のCα 部

分 集合Gαi,Gαj(i≠j)に おいて,i>jな らばGαiに 含 まれ る

作 業 は,Gαjに 含 まれ る作 業 よ り先行 して処 理 され るこ とを表

す もの とす る.ま た,各 々の部 分 集合 内 の作 業 間 の先 行 関係

は決定 され てい ない もの とす る.

本 論 文 で は,以 下 の手 順 を各競 合 グ ル ープA,B,C,Dに

対 して並 列 に適 用す る ことに よ り,各 競 合 グ ル ープ にお け る

作 業 間の順 序 関係 を決定 す る.

[部分空 間限 定 アル ゴ リズム]

Step 1:Gα1=Gα,n=1と す る.

Step 2:部 分 空 間分 割 アル ゴ リズ ム に よ り,そ れ ぞれ の部

分 集 合Gαi(1≦i≦n)を2つ の互 い に素 な部分 集合Gαi(1)

とGαi(2)に分割 す る.

Step 3:分 割 され た部 分 集 合Gαi1,Gαi2(1≦i≦n)を

Gαi(1)>Gαi(2)か つGαi>Gαj(i<j)を 満 たす よ うに並

べ,順 にそ れぞ れGα1,Gα2,…,Gα2nと す る.

Step 4:分 割 された部分 空 間 にお いて 列挙 法 に よ り最 適 な

作 業 間 の順序 関係 が求 め られ る と判 定 され た場 合 は,列 挙

法 で スケ ジュー ル を求 め終 了す る.そ れ以外 は,nに2nを

代 入 してStep 2に 戻 る.

Fig. 4に,Fig. 3の 工程Aに お け る作 業 の順序 関係 が限 定 さ

れ てい く様子 を優 先 グ ラフで表 現 した例 を示 す.

4.2 部 分空 間 分割ア ル ゴ リズム

本 手法 では,部 分 空 間限定 ア ル ゴ リズ ムで 用 い られ る部 分

空 間分 割 アル ゴ リズ ム をGAを 用 いて構 成 す る.本 アル ゴ リ

ズ ムにお け る各遺 伝子 は,同 一 競合 グル ープ に含 まれ る作 業,

各 々の作 業が 含 まれ る部分 集合 の番号 お よび部分 集合 中 の各

作 業 が優 先 グル ープ に含 まれ るか否 か を示 す1あ るい は-1

の数 値 の列 で 表現 され る.こ こで,あ る部分 集 合 内 で優 先 グ

ル ープ に含 まれ る作業 は,含 まれ ない作 業 よ り先 行 して処 理

される とい うこ とを表 す.各 個 体 は,す べ て の競 合 グ ル ープ

に対す る遺伝 子 の組 として構 成 され る.Fig. 5に 個 体 表現 の

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計測 自動制御学会論文集 第34巻 第11号 1998年11月 1663

Fig. 4 Reduction of the size of a search space.

Fig. 5 Example of individuals.

例 を示 す.本 論 文 で は,以 上 の よ うに して構成 された 個体 を

用 いたGAに よ り以 下 に示 す部 分空 間分 割 アル ゴ リズ ムを構

成す る.

[部分 空間 分割 ア ル ゴリズム]

Step 1:GA~GDを 用 い る こ とに よ り初 期個 体 群 を生成

す る.た だ し,各 作 業の 部分 集 合 にお いて 優先 グ ル ープ に

属 す るか ど うか を示す 数値 は,一 様 乱 数 を用 い て決 定す る

もの とす る.

Step 2:交 叉率rで1点 交 差 を行 な う.た だ し,交 差 は個

体 内 の対応 す る競 合 グル ープ 間 で行 ない,優 先 グル ープ に

属 す るか否 か を示 す数 値 のみ入 れ換 える もの とす る.

Step 3:各 個 体 に含 まれ る遺伝 子 を元 に各作 業 間の順 序 関

係 を表す 行列Pを 作成 し,元 問題 の ラグ ラン ジュ緩和 問題

にPを 与 えて緩和 問題 の評価 値 を計算 し,そ の評価 値 を各

個 体 の 評価 値 とす る.詳 細 は,次 節 で述 べ る.た だ し,Pの

ij要 素 は作業iが 作 業jに 先 行す る場合 は1,そ うで ない場

合 は0を 値 と して持 つ もの とす る.

Step 4:各 個 体 の評価値 の ルー レ ッ ト選 択 に よ り個体 の 淘

汰 を行 な う.

Step 5:優 先 グル ープ に含 まれ るか どうか を示 す1,-1の

数 値 の符 号 を突然変 移確 率 μで反 転 させ る ことに よ り突然

変 移 を行 な う.

Step 6:世 代 数 がh以 上 で あ る か,全 個 体 のR%が 最 適

個 体 と同 じ値 で あ る と き,最 適 な評価 値 を持 つ 個体 におけ

る各部 分 集合Gαiの 優 先 グル ープ に含 まれ る作業 の集 合 を

Gαi(1)とし,そ れ以外 の作 業 をGαi(2)と して終 了 す る.そ れ

以外 はStep 2へ.

5. 個 体 の 評 価

本手 法 で は,個 体 の評価 にラグ ラ ンジ ュ緩和 法3),4)を 用 い

て得 られる部分 空 間の 下界値 と,部 分 空 間 の構成 か ら得 られ

る段取 替 え の最低値 を用 い る.

5.1 ラグ ラン ジュ緩和 法 によ る個体 の評 価

各個 体 につ いて ラグ ラ ンジ ュ緩 和法(LR法)3),4)を 用 いて

得 られ る部 分 空間 の下界 値 と部分 空 間の 構成 に よって得 られ

る段 取 替 えの最 低値 を もとに適応 度 の評 価 を行 う.個 体 の情

報 を もと に先行 関係 の有無 を示 す行 列Pを 作 成 し,LR法 を

適 用す る.ま た(4)式 か ら得 られ る作業 間の先 行 関係 が個体

で 表現 される先行 関係 と矛 盾す る場 合 は,(4)式 か ら得 られる

先行 関係 を優先 す る もの とす る.そ の行 列Pを も とに生 成 し

た ラグ ラ ンジュ緩 和 問題 を式(6)に 示 す.

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1664 T. SICE Vol.34 No.11 November 1998

ただ し,pijklは,ジ ョブiのj番 目の作業 とジ ョブkのl番 目の

作 業 の先 行 関係 を表す もの とす る.ま た,oijは ジ ョブiのj

番 目の作 業,B,Cは そ れぞれ工程B,Cの 作業 の集 合 を示す.

また,rijklは,ジ ョブiのj番 目の作 業 とジ ョブkのl番 目の

作 業が と もに工 程Bの 作 業 の とき,も し くは と もに工 程Cの

作 業 の と き

rijkl=bij-bkl (9)

それ以外の場合は,

rijkl=cij+1-bkl (10)

=bij+tij-bkl (11)

と し,rijkl<0は ジ ョブiのj番 目の作 業 が ジ ョブkのl番

目の作業 に先行 す る時 の順序 制約 式 を表す.通 常,順 序 関係

が作 業 間 に存 在 す る場合,先 に処理 す る作業 の終 了 時刻 以降

に次 の作 業 は処 理 開始 され なけ れば な らな い.こ の ため,式

(11)で 示 されるrijklを 用 いる のが普 通で あ る.し か し,工 程

Cあ るい はDに 関 して は代替 機械 が存在 す るた め,同 一工 程

の作 業 間 の順 序 関係 を考 える場合,式(11)を 用 い る ことが

必 ず しも適 当 とは言 え ない.そ こで,同 一工程 の作 業 間 の順

序 関係 を考 え る場合 に は,式(11)を 用 い た順 序 制約 の式 を

導 入 す る.ま た,式(7),式(8)は ラグ ラ ンジ ュ乗 数 の更 新

の式 を表 す.

5.2 暫定 段 取替 えの評価

部 分 空 間 を構 成 す る作業 間 の優先 関係 を基 に暫定 的 な段 取

替 え コス トを算 出す る方法 を,

G={{a3,as},{al,a2,a4,a5}}(12)

の場 合 を例 に述 べ る.式(12)に 示す 部分 空 間で は作 業a3,a6

が,作 業a1,a2,a4,a5に 処理順 序が 優先す る こ とを意味す る.

この部 分 空 間 に おい て,各 作 業 の段 取 りの種 類 がFig. 6の

場合,優 先 グル ープ に属 してい る作 業 の段取 りの種類 は2種

Fig. 6 An example of calculation of minimum set up cost.

Fig. 7 An example of calculation of size of subspace.

類 で,非 優 先 グル ープ に属 す る作 業 の段取 りの種類 は1種 類

で あ る.よ って優 先 グ ル ープの 中で は最低1回 の段 取 替 えが

あ り,非 優 先 グル ープ で は段 取 替 えは0回 にな る.ま た2つ

の グル ープ 間で は共 通 の段取 りの作業 が あ るため,グ ル ープ

問 の段取 替 え は0回 とな る.以 上の ような こ とか ら,部 分 空

間 の構成 が式(12)に 示 す もので,各 作業 の段取 りの 種類 が

Fig. 6に 示 す ものの場 合,最 低1回 の段取 替 え があ る こ とに

な る.

5.3 探索 空 間の 削減 の終 了判 定

前 述 した よ うに,本 論 文 で取 り扱 うスケ ジ ュー リング 問題

にお いて 探索 空 間 を何段 階分割 した時 点で,列 挙可 能 な範 囲

の部分 空 間が得 られ るか前 もって正確 に判 断 す る こ とは困難

であ る.し か し,空 間 を削 減 す る各段 階 に おい て部分 空 間 を

構 成す る先行 関係 の情 報 を用 い て,部 分空 間 の大 き さ(組 合

せ 数)を 見 積 もる ことは あ る程 度 可能 であ る と考 え られ る.

本論 文 にお け る部 分 空 間 の 大 きさの 見積 も りは,同 一 リ

ソース を共 有す る作 業 間の処 理順 序 関係 の なかで,未 決 定 の

部分 か ら組 合せ 数 を見積 もる もの とす る.組 合 せ数 の見 積 り

の例 を,Fig. 7に 示 す.Fig. 7に 示 す例 で は,Group 1,2,

3,4の 順 に処 理 される.し か し,グ ループ 内で の処 理順 序 は

未決 定 であ る.こ こで,各 グル ープ におけ る順 列 を考 えそ の

積 を算 出す る事 で,組 合 せ数 を求 め部分 空 間 の大 きさを見積

もる.

6. 数 値 例

Table 1に 示 す5種 類 の 規模 の問題 につ いて,数 値 実験 を

行 った.ま た各 評価 項 目に対 す る重 み をTable 2に 示 す.設

定 した問題 に対 して本探 索 手 法(Method 1)とLR法 を節 点

評価 に用 いた ビーム探索 法 に よる手 法(Method 2)と の比 較

を行 な う.本 探索 手法 につ いて は,ジ ョブ 数が 少 ない 問題 に

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計測 自動制御学会論文集 第34巻 第11号 1998年11月 1665

Table 1 Scheduling problems in numerical examples.

Table 2 Weight for each schedule evaluation item.

対 す る予 備実 験 を行 な うことに よ り,GAに おけ る個 体数10,

交叉 率0.5,突 然 変異 率0.005,世 代 数30と した.た だ し世

代 数 の 上 限 は80世 代 で,全 個 体 の80%が 最適 個 体 と同 じ評

価 値 を持 つ場合 に収束 した と して処理 を終 了 して い る.ま た,

部分 空 間 の探索 におい て,組 合せ の推 定値 が200,000以 下 に

な った 時点 で 列挙 を適用 してい る.LR法 を節 点 評価 に用 い

た ビー ム探索 法 につい ては ビーム幅 を5と してい る.

以 上 の設 定の も とで,本 探索 手法 とLR法 を節 点 評価 に用

い た手法 との比較 を行 な った結果 として,Fig. 8に 評価 関数

の値 を,Fig. 9に 計 算時 間 を示す.ま ず 解 の精度 に関 しては,

両手 法 ともほ ぼ同等 の精 度の解 を得 てい る.計 算時 間 に関 し

て は,問 題 の規 模 の増大 に伴 って両手 法 の差 は顕著 にな って

い る.本 探索 手 法 では,探 索空 間 を段 階 的 に縮小 して い るの

に対 し,LR法 を併 用 した ビーム探索 法 で は,問 題 の規模 に

比 例 してLR法 の適 用 回数 が増大 してい る ため に多 くの計算

時 間 を要 してい る.

7. む す び

本論 文 で は,ジ ョブの処 理 順序 に よ り変化 す るス ケ ジ ュー

ル評 価 項 目 を含 むス ケ ジ ユール評価 項 目を取 り扱 うため,問

題 の解 空 間 の部分 空 間 を同一 リソース を共有 す る作 業 間の処

理 順 序 関係 を用 いて構 成 し,精 度 の高 い 近似 解 の含 まれ る と

考 え られる部 分空 間 の探 索 をGAを 用 い て行 い,最 終 的 に得

られ た部 分空 間 につ いて,列 挙 的 な探 索法 を適 用す る解 法 を

提 案 した.更 に,LR法 を節 点評価 に用 い た ビ ーム探 索法 と

の比較 を行 い,同 程度 の解 の精度 を よ り短 い計算 時 間で得 ら

れ るこ と を示 した.

今後 の 課題 と して は,他 のス ケジ ュー リング 問題 に適 用す

る ことに よ り,本 手 法の評価 を行 な うとと もに,GA個 体,つ

ま り部分 空 間 の評 価 にLR法 に勝 る有効 な手 法,部 分 空 間の

限 定法,切 り捨 て た部分 空 間 に対 す る再 探索 手 法 お よびGA

の パ ラ メー タ設定 法 を検 討 す るこ とが挙 げ られ る.

参 考 文 献

1) D.E. Goldberg: Genetic Algorithms in Search, Optimiza-tion & Machine Learning, Addison-Wesley (1989)

2) 西 川:GAの スケ ジュー リング問題へ の応 用,計 測 と制御, 32-1,

Fig. 8 Comparison of computation times.

Fig. 9 Comparison of the values of the schedule evaluation

function.

Page 7: 遺伝的アルゴリズムとラグランジュ緩和法を併用し …...計 測 自 動 制 御 学 会 論 文 集 Vol.34, No.11, 1660/1666 (1998) 遺伝的アルゴリズムとラグランジュ緩和法を併用した

1666 T. SICE Vol.34 No.11 November 1998

46/51 (1993)3) J. Wang and P.B. Luh: Scheduling of a Machining Center

Using Lagrangian Relaxation, Proc. of the Asian Control Conf. Tokyo, 1057/1060 (1994)

4) P.B. Luh and D.J. Hoitmt: Scheduling of Manufacturing System Using the Lagrangian Relaxation Technique, IEEE Trans. Robot. Automat., 38-7, 1066/1079 (1993)

5) 田村,平 原,鳩 野,馬 野:組 合せ最適化問題 の近似解法-遺 伝

的アル ゴリズ ムとラグランジュ緩和法 を併用 したハ イブ リッ

ド法-,計 測 自動制御学会論文集, 30-3, 329/336 (1994)

[著 者 紹 介]

田 村 坦 之(正 会員)

1940年3月9日 生.1964年 大 阪大 学 大 学 院工

学研 究 科 修 士 課 程 修 了.同 年 ~1971年 三 菱 電機

(株)中 央研 究 所勤 務,同 年 大 阪大 学工 学 部助 教 授,

1987年 同教 授,1993年4月 基 礎工 学部 教授,1997

年大 学 院 基礎 工 学研 究 科教 授 とな り,現 在 に至 る.

そ の 間,1966年 ~1968年 米 国 ス タ ン フ ォー ド大

学 大 学 院Engineering-Economic Systems学 科

に留 学,1972年 ~1973年 英 国 ケ ンブ リ ッジ 大学

客員 研 究 員,1986年 ~1988年 文 部 省 統 計 数理 研

究所 併 任.大 規模 シス テ ム解 析 の 方法 論 とそ の生

産 シ ス テ ム ・公共 シ ステ ムへ の 応 用 に関 す る研 究

に 従 事.工 学 博 士.1976年 計 測 自動 制 御 学 会論

文 賞,1990年 シス テ ム制 御 情 報 学 会 椹 木 記 念賞

論 文 賞,1991年 日本 オ ペ レー シ ョ ンズ ・リサ ー

チ学 会 事 例 研 究 奨励 賞 受 賞.シ ス テ ム制 御 情報 学

会,日 本OR学 会,環 境 経 済 ・政 策 学会,IEEE,

ORSA,SRAな どの会 員.

柴 田 智 裕

1973年3月29日 生.1997年3月 大阪大学大学

院基礎工学研究科博士前期課程修 了,同 年4月,

(株)村 田製作所 に入社 し現在に至 る.在 学時,生

産スケジュー リング問題のモデル化およびその解

法に関す る研 究に従事.

益 永 健一郎

1970年6月12日 生.1995年3月 大阪大学大学

院基礎工学研究科博士前期課程修了,同 年4月,

(株)日 立製作所 に入社,半 導体事業部勤務.在 学

時生 産スケジュー リング問題のモデ ル化お よびそ

の解法 に関す る研究 に従事.

鳩 野 逸 生(正 会員)

1961年10月24日 生.1986年3月 大阪大学大

学院工学研究科修士課程修了.同 年4月 ~1988年

7月 日本電気(株)C&Cシ ステム研 究所勤務.同

年8月 大阪大学工学部助手.1993年10月 基礎工

学部助手,1996年4月 同講師,1997年4月 基礎

工学研究科講師,1998年4月 よ り神戸大学総合情

報処理 センター助教授 とな り,現 在 に至 る.生 産

スケジュー リングお よび離散事象システムのモデ

リングに関す る研究 に従事.博 士(工 学).1992年

システム制御情報学会椹木記念賞奨励賞受賞.シ

ステム制御情報学会,情 報処理学会などの会員.

富 山 伸 司(正 会員)

1967年5月18日 生.1993年3月 京都大学大学

院工学研 究科修士課程修了.同 年4月 ~1995年

10月 日本鋼管(株)基 盤技術研究所勤務,同 年11

月大阪大学基礎工学部助手,1997年4月 大学院基

礎工学研 究科助手 とな り現在 に至る.シ ステム解

析 の方法論お よび環境 システムのモデ リングに関

す る研 究 に従事.シ ステム制御情報学会の会員.