小学校国語科における「相互向上コミュニケーション能力」 を育 … ·...
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- 1 -国語(国語力グループ)
小学校国語科における「相互向上コミュニケーション能力」
の研究を育てるための効果的な学習指導
-ディベートを取り入れた説明文の指導の工夫-
研究の概要
この研究は,国語科の学習指導の中にディベートを取り入れることで,児童の「論理的思考力」と
「相互向上コミュニケーション能力」を高め,伝え合う力の育成を図り,今日的な課題である国語力
向上を目指すものである。
キーワード
ディベート 相互向上コミュニケーション能力 論理的思考力 国語力 伝え合う力
Ⅰ 主題設定の理由
1 国語科と国語力について
「これからの時代に求められる国語力 (文化審議会答申)は,学校における国語教育が重要な役」
。 , ,割を担っているとしている 特に国語力の向上には 国語教育を中核に据えた学校教育が基本であり
「聞く・話す・読む・書く」を組み合わせた指導の充実を挙げている。その中でも国語力育成の中核
を担うのは国語科であり,その在り方として①情緒力(読書が必要 ,②論理的思考力(文章を書く)
こと,自分の意見を述べる機会を増やすこと ,③語彙力(漢字の指導)の育成が重要であるとして)
いる。国語科の領域は 「話すこと・聞くこと 「書くこと 「読むこと」と「言語事項」であり,こ, 」 」
れらを国語科の学習指導の中で総合的・計画的に指導することにより,当然国語力向上に繋がるもの
である。本研究グループでは,より効果的な教育活動として,国語力を機能的に捉え「論理的思考能
」 「 」 ,力 と 相互向上コミュニケーション能力 をはぐくむことが国語力向上に繋がる重要な要素と考え
各教科等の学習活動にその手立てを講じることを研究の柱とした。
国語は言語であり,国語力を機能面で捉えると「思考力 「伝達力」が内包されているとも述べて」
きた。そこで,国語科において論理的思考力と「相互向上コミュニケーション能力」を育てるための
効果的な学習指導として,話し合いや討論,発表場面を学習活動に取り入れること,つまり人とのか
かわり合いの場面を設定することが適当であると考えた。さらに,その論理的思考力は,人間関係の
相互コミュニケーションの中から育つものであり,それらを意図的に仕組むことができることが最適
と考えた。そこで,本研究ではこれまでの多くの研究者も述べているように論理的思考能力の育成及
びコミュニケーション能力の育成に十分効果が認められているとしている『ディベート』を手立てと
することにした。
2 ディベートについて
思考は,人と人とのかかわりの中で高まるものであり,相手の考えの違いに気付いたり,考え方が
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異なる相手を説得したりするなど,相手とのかかわりの中で,自分の過ちやつまずきに気付き,解決
・処理するため修正をしていく過程でより深まるものである。このことが論理的思考を高めることに
繋がる。ディベートは,相反する立場の両者が第三者を説得することをねらいとした架空の言語ゲー
ムである。また,ディベートは,論理的思考力と討論力を鍛えるゲームであると言われている。つま
り,国語科の授業の中にディベートを取り入れることは 「コミュニケーション能力」及び「論理的,
思考力」を育てるにはふさわしい指導方法になりうると考える。ディベートの効果について大森修氏
(日本教育技術学会理事 現代教育科学 )も 「①ディベートを通じて賛成・反対の立場で考え462 ,
ることで,物事へ多様な考え方(多様な価値観)や見方ができる力を育成することができる。②自己
の主張の正しさや間違いに気づかせたり,別の価値観に気づかせたりすることが論理的思考力を育て
ることになる。③論理的思考力を育てるには,肯定・否定の両方の立場から主張を展開するディベー
トは最適である 」と述べている。。
さらに,ディベートは,自分の考えを言葉を通じて相手に伝える力(コミュニケーション能力)を
要求される手法である。当然,ディベートを意図的に学習活動の中に取り入れることにより,相手に
対してより分かり易く,理解できるように伝えることが要求されるため,より深い読み取りが必要で
あり,確かな裏付けとなる理由付けも必要となる。また,話し手がどのように理由付けをしたか,注
意深く聞くことが要求されたり,話し手の意見に関係付けながら自分の考えをまとめ発言したりする
能力も必要となる。このことから,国語力向上の要素である論理的思考力と「相互向上コミュニケー
ション能力」を高める最も効果的な指導方法としてディベートを国語科の指導の中に取り入れること
が必要であると考えた。
Ⅱ 研究のねらい
(1) 国語科の指導過程の中にディベートを取り入れ,学習のねらいを達成するとともに 「論,
理的思考力」と「相互向上コミュニケーション能力」の育成を図る。
(2) 説明文の指導において,ディベートを取り入れることにより,より深い読み取りができる
とともに,物事を多面的に捉えられること。また,学級の中で討論することにより相手を意
識した聞き取り及び思考ができ,気付き,修正,処理,解決する中で論理的な組み立てを行
い「相互向上コミュニケーション能力」の育成が図られることを授業実践から検証する。
Ⅲ 研究の基本的な考え方
(図1)基本的なディベートの進め方1 ディベートの指導について
ディベートについて多くの実践があり,その基本的な進 ディベートの進め方
め方としては,右図(図1)のようなものがある。討論を ①肯定側立論2分
深めたり,ディベートに慣れている子どもたちが実践した ②作戦タイム1分
りする場合は,反駁(反論)の場面を繰り返す実践も多く ③否定側反対尋問4分はんばく
みられる。国語科でのディベートは,ディベートそのもの ④否定側立論2分
が目的でなく,あくまで国語科のねらいを達成することが ⑤作戦タイム1分
目的であり,ディベートは手段である。そこで,学級全体 ⑥肯定側反対尋問4分
を肯定側,否定側,審判の3グループに分けること,立論 ⑦自由討論3分
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を立てる前に審判グループも含め学級全員が教材文の読み ⑧作戦タイム3分
取りを十分に行わせること,教材文を中心とした立論・反 ⑨肯定側反駁2分
論を組み立てさせること,立論を組み立てる上で班での話 ⑩否定側反駁2分
し合いの場を確保すること,ゲーム的要素を取り入れるこ ⑪作戦タイム3分
と,作戦タイムでは思考する時間を十分取ること,判定者 ⑫否定側最終弁論2分
も意見を言うことができる場をつくること,学習のまとめ ⑬肯定側最終弁論2分
として全員に肯定側と否定側に関係なく自分の意見をもた ⑭判定
せること,ワークシート等を活用し,討論の仕方・組立方
を学習させながらディベートに当たるなど,国語科として
のディベートとなるように工夫していきたい。
2 国語科の目標とディベート
国語科の目標は 「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるととも,
に,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる 」。
である。国語科を機能面で捉えると,言葉を通して表現力と理解力を育てる教科であることから,国
語科は「伝え合う力 ( コミュニケーション能力」と言い換えられる)や国語力の基盤を育てる教」「
科であると言える。そのためにも国語科の学習指導の中で,児童生徒に「正確に理解する能力」及び
「適切に表現する能力」をはぐくむ指導は特に重要である。花田修一氏(お茶の水女子大学附属中学
校)は,ディベートを実践することで①筋道を立てて話す力。②立場をはっきりさせて話す力,③相
手を説得させながら話す力,④話し手の立場に立って聞く力,⑤話の内容を正確に聞き取る力,⑥メ
モを活用し,話の要点をとらえる力,⑦問題をとらえ,ものの見方や考え方を深める力,⑧情報を収
集し,活用する力,⑨筋道を立てて考える力(論理的思考力 ,⑩友達と協力して楽しく学ぶ力の国)
語の力が付くとしている。
また,小学校学習指導要領国語科の第5学年及び第6学年の目標に,
(1)目的や意図に応じ,考えたことや伝えたいことなどを的確に話すことや相手の意図をつかみ
ながら聞くことができるようにするとともに,計画的に話し合おうとする態度を育てる。
(2)目的や意図に応じ,考えたことなどを筋道を立てて文章に書くことができるようにするとと
もに,効果的に表現しようとする態度を育てる。
とある。
さらに,2内容のA話すこと・聞くことでは,
ア 考えたことや自分の意図が分かるように話の組立てを工夫しながら,目的や場に応じた適切
な言葉遣いで話すこと。
イ 話し手の意図を考えながら話の内容を聞くこと。
ウ 自分の立場や意図をはっきりさせながら,計画的に話し合うこと。
を指導するとある。
以上のことから,本研究の国語力向上には,論理的思考力と「相互向上コミュニケーション能力」
の育成が重要であるとする考えと,国語科のねらいである,考えたことや伝えたいことなどを的確に
話すこと・筋道を立てて文章に書くこと・意図が分かるように話の組立てを工夫しながら話すこと,
と,ディベートで育つ国語の力である,筋道を立てて話す力,立場をはっきりさせて話す力など,相
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通じるものであり,ディベートを国語科の学習活動の展開の中に取り入れた本研究は,国語科として
のねらいを達成することに有効であり,国語力を向上させることに繋がるものと考える。
Ⅳ 研究の内容と方法
1 研究の内容と方法
(1) 研究の内容
① 説明文の学習指導で論理的思考力・ 相互向上コミュニケーション能力」の向上を図る「
ディベートの在り方
② 小学校6学年の国語の説明文「生き物はつながりの中に (光村)の学習指導にディベ」
ートを取り入れた指導モデルの作成と授業実践
③ 評価の方法と評価の実際
(2) 研究の方法
① 事前・事後アンケート調査の実施,分析
② 指導モデルの授業実践
③ 研究の成果と考察
2 相互向上コミュニケーション能力とディベート
相互向上コミュニケーション能力は,お互いに考えを交わす中で,話し手と聞き手が相互に考えを
高め,より高次な価値に発達する能力と考える。その能力の育成のためには,自分の考えを整理し,
まとめ,より論理的に構築していく力が必要である。自分の考えをもつためには,まず書かれている
ものを十分理解する力も必要であり,相手側(話し手)の考えを理解する力も必要である。それらを
既習の知識と練り合わせる中で相手に正確に理解してもらえるよう,文章を構成し,話し言葉として
相手に向けて発信することである。
そこで,小学校国語科でディベートを実践するに当たり,次のように進めるものとする。
① 教材,資料等十分理解し,自分の言葉で表現できるよう理解のための時間と場の工夫
・教材文の読み取りと関連づけた論題の提示と教材解釈(ワークシートの活用,補助資料1)
・立論のための資料作りのための時間の確保,コミュニケーションのための時間の確保
・図書・インターネットの活用,大人・先生・専門家等への聞き取りによるデータの収集
・小グループによる話し合い,考えの練り合いの場の設定
② 立論のための発言パターン(ワークシート,補助資料2)の活用
③ 話し手の考えを理解・整理するためのワークシート(補助資料1)への書き込み
④ 既習の知識に新たな情報を取り入れより高い価値として発信できる場の設定
⑤ 論理的に構築し発表するためのワークシート(補助資料1)の活用
⑥ 思考→話し合い→思考→発表→思考→話し合い→発表の場を多く設定
次に 「相互向上コミュニケーション能力」の育成を考えると,ディベートの実践では,より価値,
の高い方向性をもった討論が求められる。そのためにはどのようなテーマ(課題)にするかが非常に
重要となる。討論の中で単に賛成,反対のみを討論させるのではなく,問題の解決に向けての方向性
がないと単なるゲームとしてのディベートとなってしまう。ディベートを実践する中で,ただ単に相
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手方をやりこめること(ゲームに勝つこと)に重きが置かれるのではなく,より高い価値に向けての
討論ができるように教員の指導と支援が重要である。
そこで,ディベートの論題及び支援について次のように仕組む必要がある。
① 論題は児童の新たな気付きや発展が予想されるものであること。
② 論題は児童に関心や興味があるもので討論によって新たな発展が期待できるもの。または,学
級内や学校内など身近な話題の中で討論によって問題が解決に向かうようなものであること。
③ 教員は討論の中で問題を解決に結びつけるような方向性をもたせる支援をすること。
④ 審判の判定基準として,それぞ
(図2) 「相互向上コミュニケーション能力」とディベートれの意見(考え)の優れた内容で
あることを重視すること。
⑤ 話し合いの活動の中に論理的思
考力の向上がみられることを重視
すること。
⑥ 教材の読み取りとディベートの
論題の関連を付け,ディベート後
に考えをまとめる場を設定するこ
と。
以上の考えの基に,ディベートに
取り組むこととする (図2)。
3 ディベートの進め方
相互向上コミュニケーション能力の向上を図る中で論理的思考力を伸ばす効果的な進め方として,
図2にある学習の手立てを仕組むことにする。
, , ( )そこで本研究では 小学校国語科におけるディベートとして 花田修一氏の進め方 国語教育 527
を参考に次のように行うものとする。
① 論題を決める…… 国語科の教材の中からテーマを決定する。グループメンバーを決定する。
② 情報を集める…… 教材の読み取りを通じて課題解決に必要な(論題に関わる)語句,文,文章
に着目し,事実や情報など可能な限り集める。発展的な学習として図書室の利
用・インターネット活用・インタビュー・アンケート等からも情報を集める。
。 ( ), ( )グループ内で分担して資料の収集をする 賛成側 肯定側 反対側 否定側
審判のすべての児童が情報を集める。
③ 論理を組み立てる…立論(賛成か反対か自分たちの立場を証明する。証明のための根拠を挙げて
整理する )や反対尋問(相手の立場に対する質問や疑問とその応答の予想)。
や最終弁論(立論や反対尋問を踏まえた結論)のための話の組立と内容を考え
る。
ワークシート等を活用し,読み取り内容を図式化するなどして,立論の組み
立てを考える。また,立論するために教材以外の資料やデータについても付け
加えながら,立論,予想される質問,反対意見,結論を考える。討論に入る前
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に十分にグループでの話し合いを行い,筋道を立てた立論ができるように取り組
む。
④ ディベートを行う…賛成側と反対側とに分かれて実際に論じ合う。
ディベートの過程 時間 内容 ・ 留意点
準 1 準備 5分 司会・タイマー,論題やグループメンバーの提示と確認
備 ディベートの体型,立論の根拠カードの掲示
グループごとに色カードで立場を明確にする。
2 賛成側の立論 2分 テーマに対して賛成側の意見を述べる。立論は1~2名
立 で行う。
論 3 反対側の立論 2分 テーマに対して反対側の意見を述べる。立論は1~2名
で行う。
作 4 作戦タイム 1分 相手側の立論に対して質問・反論を考える。
戦 グループでの話し合い
5 賛成側への質問・ 1分 賛成側の立論に対して反対側は疑問や問題点を質問する。
質 反論 立論に対して反論を行う。
疑 6 賛成側の応答 1分 賛成側は反対側に対して応答を行う。
応 7 反対側への質問・ 1分 反対側の立論に対して賛成側は疑問や問題点を質問する。
答 反論 立論に対して反論を行う。
8 反対側の応答 1分 反対側は賛成側に対して応答を行う。
論 作戦タイム 2分 賛成側と反対側は反論の準備をする。
戦 ※ディベートに児童がなれきた場合,または討論の状況
により反論の時間5~8をもう一度入れる。
作 9 作戦タイム 3分 結論発表のために,立論と反対意見を踏まえて論理を組
戦 み立てる。
結 賛成側の結論 2分 賛成側は最終弁論として結論を発表する。10
論 反対側の結論 2分 反対側は最終弁論として結論を発表する。11
, 。判 判定と理由 2分 審判団は判定表に記入し 1~2名が判定理由を発表する12
定 また指導者は講評を述べる。
, 。ま 自分の意見をまと 5分 賛成側と反対側の意見を聞き 自分なりの考えをまとめる13
と める 全員が賛成側と反対側に関係なく自分の考えを書く)
め
⑤ 学習のまとめ……指導者は学習のまとめをする。
4 指導モデルと授業実践
1 単元名 文章を読んで,自分の考えをもとう
2 教材名 「生き物はつながりの中に (説明文)」
3 単元の目標
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(1)自分の考えに対して理由付けを明確にしながら論理的に考えを述べることができる。
(2)相手の意見に対して関係付けながら自分の考えを高めることができるようにする。
(3)筆者の主張を理解し,より高められた自分の考えをもつことができるようにする。
4 教材及び単元について
, 「 」( ) ,本単元では 教材 生き物はつながりの中に 説明文 の学習を通して筆者の主張をつかみ
それについての自分の意見を出すことをねらいとしている。意見発表では本文に書かれている
ことを基に自分の立場を明確にし,その理由を論理的に構成し,発言ができるように指導する
ことが大切である。本教材は,ロボットのイヌと本物のイヌを比べる中で本物のイヌが外の世
界とつながりがあることから,私たち生き物は時間的,空間的つながりの中にいて,変化して
も変わらない自分を持ち続ける存在であり,人間らしい生き方をしようとまとめている。そこ
で,対比する部分についてディベート的に取り扱うことにより,生き物のつながりをより鮮明
にすると共に,筆者の意見に迫ることができると考える。また,ディベート的な学習方法を取
り入れ,ロボットのイヌと本物のイヌのよさを論題とすることで,ゲームとしてより深い読み
取りとゲームに勝つための理由付けとして論理的な構成,及び相手の考えに対する反駁が要求
され,コミュニケーション能力の育成及び論理的思考能力の育成に効果的であると考える。
5 指導内容と教材とのかかわり
国語力の向上には「相互向上コミュニケーション能力」及び論理的思考能力の育成が必要で
あることを前提として本研究に取り組んできた。前述したように,本研究のコミュニケーショ
ン能力及び思考力の育成は,学習指導要領第5学年及び第6学年の指導内容A 話すこと・聞
くことの領域において同一なものであると考える。
本単元「生き物はつながりの中に」はロボットのイヌと本物のイヌを対比しながら,生き物と
してとして生きることのすばらしさを説明している文章であり,教材の読み取りの段階でディベ
ート的な手法が有効に働くと考える。ディベート的な活動では,ゲーム性が取り入れられている
ため,自分の立場で文章を分析し,相手にその思いを伝えるためにもその内容に順序性や重要性
を考慮しながら自分なりの考えを述べることが要求される。つまり,学習指導要領第5学年及び
第6学年の指導内容(1)のアにある「考えたことや自分の意図が分かるように話の組立を工夫
しながら,目的や場に応じた適切な言葉遣いで話すこと 」のねらいに迫ることができると考え。
る。また,反対意見に対しての反論も考えておく必要があることを考えるとより深い読み取りと
同時にイの「 話し手の意図を考えながら話の内容を聞くこと 」ことに迫ることができると考。
える。さらに,ディベートは話し合いであり,小グループによる話し合いの場をもより多く設定
するため,学習指導要領第5学年及び第6学年の指導内容A 話すこと・聞くこと(1)ウの内
容にも迫ることができると考える。
6 指導計画と評価計画
(※ディベートを初めて実践する場合は1次を指導計画に入れる )指導計画 。
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次 時 目 標 学 習 活 動 指導上の留意点 評価規準 備考
・ディベートについ ①ディベートについて内容・ ビデオテープ・ディベー1 て知る。 方法を知る。 ト進行表を基にディベー
トについて理解させる。ディベートで使う学習シートの利用方法について説明する。
・話すときの心得, ・発表者の心得や聞き手 ・語 感, 言 葉の聞くときの心得を理 の心得について理解させ 使い 方に 対 する解する。 る。 感覚 など つ いて
1 ・審判,司会者,タイマ 関心 をも っ ていーについて仕事の内容と る。留意点について理解させる。
2 ・ディベートの進め ②模擬ディベートを行う。 ・教員の指導の下,模擬 ・討 論の 仕 方に方について理解する ・テーマ「学校での昼食は弁 ディベートを通してディ つい て関 心 を持。
当がよい 」で模擬ディベー ベートの方法を理解させ ち, 意欲 的 に取。トを実践する。 る。 り組 もう と して
・ワークシートの記入の いる。仕方の指導をする。
3 ・ディベートができ ③小グループによるディベー ・学級全体がディベート ・討 論を す るとる。 トを行う。 の経験ができるように小 き, 目的 や 意図
・事前調査やデータ等の準備 グループでディベートを に応 じた 構 成をがいらないテーマでのディベ 体験する。 活用 して 意 見をートを行う。 ・グループごとに賛成側 言っている。,〈テーマ例〉 反対側,審判,司会,タ「学校でシャープペンを使っ イマーになりディベートた方がよい 」 を行う。。「学校でマンガを読んでもよ ・役割を変えてディベーい 」 トを行う。。
・論題(課題)を把 ④全 文を 読 んで内容をつ か ・文 や文 章 のい1 握する。 む。 ろい ろな 構 成が
・ロボットのイヌと ・学級を「ロボットのイヌと ・ワークシートを利用し ある こと に つい,本物のイヌの違いに 本物のイヌではロボットのイ 判断と理由付けを明確に て理 解し , 活用ついて知る。 ヌの方がよい 」というテー できるようにする。 している。。
マに対して,賛成側,反対側に分ける。 ・必 要な 情 報を・賛成側と反対側の理由付け ・反対側の意見を予想し 得る ため に ,効,
・情報をもとに理由 の根拠となる文章の読み取り それに対する反駁ができ 果的 な読 み 方を2 付けができる。 と理由付けのための資料作り るように準備する。 工夫している。
を行う。・ワークシートを活用し,賛成側と反対側の意見をまとめ ・話 の組 立 を工
・ 書き込む。 夫し て話 そ うと・予想される質問や反論に対 した り, 話 し手して回答を考えシートに書き の意 図を 考 えな込む。 がら 聞き 取 ろう
とする・自 分の 立 場や意図 をは っ きりさせ なが ら 計画的に 話し 合 っている。
・既習の知識と新た ⑤思考の深化と発展に繋がる ・図書の利用,インター ・自 分の 考 えをな情報を練り合わせ 活動をする。 ネットの利用等理由付け 広げ たり 深 めた
2 る。 ・発展的な学習として理由付 について資料を収集させ りす るた め に,けについては,教材から離れ る。 必要 な図 書 やイ資料を収集する。 ・家族や大人の人との話 ンタ ーネ ッ ト情
し合いやインタビューを 報を 選ん で 読ん通して思考をさらに深め でいる。さ せ る ( 思 考 の 発 展 ・。深化) (家庭学習も可)
・考えの対立による ・各個人で集めた資料をもと ・グループ内での話し合
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( )気付きや修正,処理 にグループごとに話し合いを い コミュニケーションを行う。 行い考えを深める。 により相互に思考を高め
合 う ( 課 題 解 決 的 な 学。習)
・筋道を立てて考え ⑥立論の発表原稿作りと発表 ・論理的な立論ができる ・考 えた こ とや3 る。 の練習をする。 ように心がけさせる。 自分 の意 図 がわ
・発表をどのように順序立て かる よう に 話のてするか考える。 組立 を工 夫 して・質 問に 対 する回答も考 え いる。る。
⑦ディベートの実施 ・考 えた こ とや4 ・相互向上コミュニ ・読み取りの資料を基にディ ・論理的な思考のもとで 自分 の意 図 がわ
ケーション能力の活 ベートを行う。 立論ができたか かる よう に 話の用を図る。 組立 を工 夫 しな
・賛成側と反対側,審判,タ がら ,目 的 や場・論理的思考力の育 イマーの指名 に応 じた 適 切な成 言葉 遣い で 話し
ている。
・審判を行う。判定の理由を ・判定の基準として,い ・話 し手 の 意図述べる。 かに論理的な思考のもと を考 えな が ら話
で発言できているか判断 の内 容を 聞 いてさせる。 いる。
・ディベートを通して自分の読み取ったこと,考えたこと ・をまとめる。
・ディベートを通し ⑧筆者の考えをまとめる。 ・自 分の 考 えを3 1 て筆者が主張したか ・最終段落から筆者のメッセ もつ こと が でき
ったことをまとめる ージについて考える。 た。。
・筆者の考えに対して自分の考えをもつ。
7 単元の評価規準ア 国語への エ 言語についての
イ 話す・聞く能力 ウ 読む能力関心・意欲・態度 知識・理解・技能
国語に対する関心をもち 目的や意図に応じ,考えたこ 目的に応じ,内容や要旨 ・国語についての基礎的,計画的に話し合ったり, とや伝えたいことを的確に話 を把握しながら読む。 な事項について正確に理発言したり,学習課題に したり,相手の意図を考えな 解している。対して積極的に調べよう がら聞いたりする。 ・図書資料やインターネとする。 ット検索による資料を正
確に理解し,自分の考えを論理的に構成して発表する。
「話すこと・聞くこと」の評価規準
話す・聞く能力 言語についての知識・理解・技能国語への
関心・意欲・態度・話の組立を工夫して話 ・考えたことや自分の意図が分かるように ・語感,言葉の使い方に対する感覚なそうとしたり,話し手の 話の組立を工夫しながら,目的や場に応じ どついて関心をもっている。意図を考えながら聞き取 た適切な言葉遣いで話している。 ・文や文章のいろいろな構成があるころうとする ・話し手の意図を考えながら話の内容を聞 とについて理解し,活用している。
いている。・自分の立場や意図をはっきりさせながら計画的に話し合っている。
- 10 -国語(国語力グループ)
「話すこと・聞くこと」の評価規準の具体例
言語についての知識・理解・技能国語への
話す・聞く能力関心・意欲・態度
・学校や友達など身近な ・意図を明確に伝えるために,結論を先に ・聞き手を意識した言葉使いで話して問題を解決するために話 述べ,続いて理由を付ける組み立てで話し いる。そうとしている。 ている。 ・内容に関連付けて話をしたり,聞い・積極的にコミュニケー ・話をするときにナンバリングしたり,順 たりしている。ションを取り自分の考え 序を表す言葉を入れながら話している。 ・討論をするとき,目的や意図に応じを理論的に話そうとして ・発表や報告の時に必要な資料を提示した た構成を活用して意見を言っている。いる。 り,事例を述べながら話している。
・相手が自分に伝えたいことは何か考えながら聞いている。・自分の立場や意図をはっきりさせ,簡単な討論の形式取りながら話を聞いている。・書かれた内容を話し言葉に直しながら聞き手に分かるように話している。
「読むこと」の評価規準
読む能力 言語についての知識・理解・技能国語への
関心・意欲・態度・目的に応じた読書を通 ・自分の考えを広げたり深めたりするため ・文章構成について理解している。して考えを広めたり深め に,必要な図書やインターネット情報を選たりしようとしている。 んで読んでいる。 ・重要語句に注目して読みを深めてい
・必要な情報を得るために,効果的な読み る。方を工夫している。
「読むこと」の評価規準の具体例
言語についての知識・理解・技能国語への読む能力
関心・意欲・態度・文章の内容を的確に把 ・文章を読んで自分の考えを広げたり深め ・文章構成について理解している。握したり,論理などを押 たりして,意見発表に生かしている。 ・インターネットによる資料の収集かさえたりしながら読み, ・文章構成や文末表現,重要語句を手がか ら必要な情報を選択し,読んでいる。自分の考えを表現しよう りとして筆者の主張を読みとっている。 ・重要語句に注目して読みを深めていとしている。 ・筆者の意見や主張をとらえ,自分の立場 る。
からどのように考えるか意識して読んでい ・意見と事実との書き分け方,順序にる。 沿った述べ方など文章によって構成が
変わっていくことを理解する。
8 本時の展開(1)日 時 平成17年12月19日 月曜日(2)場 所 小学校 6学年(28名)教室(3)目 標 ・ ディベートを通して筆者や友達の考えを理解し,自分の考えをもつこと
ができる。・ 自己の意見が適切な理由付けのもとで発表できる。・ 相手の意見を正しく理解し,討論ができる。
(4)本時の展開(2次の第4時)
過程 学習活動と内容 教員の指導・支援 評価の観点,方法・備考
1 本時の学習内容の確認・論題の提示
導入論題「ロボットのイヌと本物のイヌでは,ロボットのイヌの方がよい 」 ・積極的にコミュニ。
ケーションを行い自・ディベート体型づくり ・論題の提示 分の考えを筋道を立・論題の確認 ・前時までの学習のカードの確認 てて話そうとしてい・グループの確認 ・立論に向けての練習を指示 る。・カードの提示(賛成赤,反対青) ・ディベートワークシートの準備
・ディベート進行カードの板書掲示
- 11 -国語(国語力グループ)
・判定カードの配付・判定の基準について説明
2 ディベートの開始・司会者用台本の準備 ・意図を明確に伝え
展開 ①賛成側の立論 ・司会者へのアドバイス るために,結論を先ロボットのイヌの方がよい に述べたり,ナンバ②反対側の立論 リングしたりして,本物のイヌの方がよい。 組た立てて話してい③作戦タイム る。
④賛成側への質問と反論 ・発表や報告の時に必要な資料を提示し
⑤賛成側の応答・反論 たり,事例を述べながら話している。
⑥反対側への質問と反論・作戦タイムでは小グループによる話 ・書かれた内容を話
⑦反対側の応答・反論 し合いを通して 考えをまとめさせる し言葉に直しながら, 。・ 相 手 の 聞き手に分かるよう
⑧作戦タイム 考 え を ワ に話している。ここからは質疑応答という形で討論する ー ク シ ー。⑨賛成側への反論 ト に 整 理 ・相手が自分に伝え
させる。 たいことは何か考え⑩反対側への反論 ながら聞いている。
・ 相 手 の⑪作戦タイム 考 え を 崩
。すためにどのように迫るか考えさせる⑫賛成側の結論(最終弁論) ・グループ全員が発言できるように工
夫させる。⑬反対側の結論(最終弁論)
⑭判定 ・判定と理由が聞き・司会者は反論があるか確認する。あ 手に分かるように話る場合は⑩から⑫を行う。ない場合は している。最終弁論に入る。
・判定の基準について審判団に判定理由を発表させる。・なるべく多くの判定者に判定理由を発表してもらう。
3 ディベートを通して自分の意見をま ・筆者の意見について考え,自分の考とめる。 えをワークシートにまとめさせる。 ※筆者の意見や主張・筆者の主張やディベートでの討論を をとらえ,自分の立ま と
通して自分の考えを明確にする。 場からどのように考め
えるか意識して書いている。(書くことの評価)
- 12 -国語(国語力グループ)
(5)本時の評価
・ ディベートを通して筆者や友達の考えを理解し,自分の考えをもつことができたか。
・ 自己の意見が適切な理由付けのもとで発表できたか。
・ 相手の意見を正しく理解し,討論ができたか。
(図3)コミュニケーションの能力調査5 評価方法について
(図3)(1)児童アンケートによる事前調査と事後調査
コミュニケーションの能力に関する関心・意欲,知識
理解,表現・技能についての自己評価を行い,事前と
事後を比較する。
・コミュニケーションに関する意欲・関心
・討論に対する表現・技能
・話したり聞いたりするときの知識・理解
(図4)(2)記述による事前事後調査
(図4)論理的思考調査① 課題に対して論理的に回答しているか事前と事後
の比較を通して論理的思考力の向上について評価す
る。評価の観点として次のようにする。
・自分の考えに対して理由付けができているか。
・順序立てて文章を構成しているか。
② 授業で実施したディベートの論題に対する考えを
記述し,ディベートにおける討論が,自分の考えを
(図5)音声言語アンケート高めることへの変容に繋がったかを評価する また。 ,
論理的な表現ができているかも評価する。
(図5)(3)音声言語による事前事後調査
コミュニケーション能力の変容を確認するために記述
すると共に,音声言語による評価活動も行う。そこで,
次の観点で事前と事後の比較を通して評価する。
・ 話し手の質問に対して正確に聞き取り答えようとし
ているか。
・ 課題に対して論理的に回答しているか。
① 順序立てて話しているか。
② 自分の考えに対して理由付けができているか。
③ 最初に結論を言い,後から理由を述べているか(相手に分かり易いように話しを構成し
ているか 。)
(4)授業記録による評価
授業をビデオテープに撮り,ディベートにおける討論内容を分析し,思考の流れを分析する。
- 13 -国語(国語力グループ)
Ⅴ 研究結果と考察
児童のアンケートによる調査結果1
(図6)児童アンケート調査コミュニケーション能力に関する意欲・関心,知識・理
解,また,討論に関する表現・技能についてアンケート方
式による事前・事後調査を実施した。
図6の調査から分かるように「発言することが好き」と
答えた児童が から に変化した。また 「発言を14.3% 50.0% ,
よくするか」もわずかであるが伸びている。これは,ディ
ベートを実施したことにより討論することのおもしろさが
分かり始めたことと話し合いの場の設定により自分なりの
考えをもち発表したいという意欲が出てきたものと考えら
(図7)児童アンケート調査れる。
「 」 ,次に 話すときにどんなことに注意するか については
事前では「声の大きさ・はっきりわかるように」等,やや
曖昧な内容であったが,事後については「内容を考えなが
ら,順序よく」など明らかに話しの組立を考えて発言しよ
うとする様子がうかがえた また 聞き手を意識しての 相。 , 「
手を見て発言する,分かり易く発言する」など相手を意識
しての内容が増えていることも分かる。
さらに図9から分かるように,聞くときの注意でも「伝
えようとしているポイントを考えて聞く,メモを取りなが
(図8)児童アンケート調査 図9)児童アンケート調査ら聞く」な (
ど話の内容
に集中した
り,話し手
の意見をも
とに自分の
考えを高め
たりまとめ
たりしよう
とする意欲
。が見られる
2 記述による事前事後調査結果
ディベートに取り組む前とディベート後の論題について記述内容について論理的文章表現がされて
いるかを比較した。評価の観点として,論題に対していくつかの理由を述べて回答していること,ナ
ンバリングしながら回答していること 「~だから,~である 」いう理由付けがきちんとされてい, 。
ること,理由として価値の高い内容を中心に据えていることの4点について評価した。
0 5 10 15 20
顔(目)を見て聞く
聞きのがさないように注意して
よい姿勢で
伝えようとしているポイントを考えて
自分と違いを考えて
しっかりと
メモを取りながら
聞くとき注意すること
事後 事前
発言することは好きか
0% 20% 40% 60% 80% 100%
事前
事後
好き どちらともいえない きらい
0 2 4 6 8 10 12 14
声の大きさ
はっきりと
分かり易く
ずれない・つまらない
内容を考えながら
相手を見て
順序よく
長くならない
語尾をしっかり
話すとき注意すること
事後 事前
発言をよくするか
事前
事後
よくする あまりしない ほとんどしない
- 14 -国語(国語力グループ)
「学校の昼食は給食がよいか弁当がよいかあなたの考えを書きましょう 」の問いに対して図 か。 10
ら分かるように 「判断ができているか」について事前事後の変化はあまりみられなかった。これは,
普段からの学習指導において,問題文に対して内容を十分に理解し,答えようしていることの表れだ
と考えられる。次に「順序立てて書いているか (図 )につ」 11
(図 )記述による論理的表現の調査いては,約 から に伸びている。判断の理由付け50.0% 78.6% 10
を「第一に」や「まず 「最後に」など順序性の分かる言葉」,
(ナンバリング)を表現の中に入れ,筋道を通してはっきり
順序立てて述べていくことができるようになったことを表し
ていると考える。ディベートの実践により相手に対して自分
の考えを確実に印象づけ,理解してもらおうと考え,論理的
に表現しようとしていることの表れと考える。
また,図 からも分かるように,理由付けをして判断を明12
確にしたり,順序立てて表現したり,分かりやすい内容で表
(図 )記述による論理的表現の調査現するなど 分かり易い表現で書き表している では「 」 ,42.3% 11
から へと変容している。このことからも相手を意識し88.5%
て論理的に表現しようとしていることが見てとれる。
次に,授業後に実施した論題に対する自分の考えを記述し
, ,た内容を分析すると 名中 名は自分の考えを先に書き28 25
続いてその訳を書く記述になっていた。また,内容について
もディベートでの討論を参考に考えを広めたり,深めたりし
ている記述が多く見られた。今回のディベート実践では,全
員が自分考えを述べる機会はなかったが,ディベートへの取
(図 )記述による論理的表現の調査組段階での「相互向上コミュニケーション」の活動としてグ 12
ループによる話し合いやディベートを通じて友達の考えを聞
。くことの活動によりそれぞれの考えが深まったものと考える
音声言語による評価3
コミュニケーション能力の評価ということで事前と事後に
おいて音声言語による聞き取り調査を実施した。評価の観点
として,①話し手の質問に対して正確に聞き取り答えようと
しているか。②課題に対して論理的に回答しているか (順。
(図 )音声言語による論理的表現の調査序立てて話しているか。自分の考えに対して理由付けができ 13
ているか。最初に結論を言い,後から理由を述べているか。
相手に分かり易いように話しを構成しているか )③丁寧な。
話し言葉で受け答えをしているかについて調査した。
①,③については普段からの学級担任の指導もあり,事前
事後ともよい結果であり,大きな変容はみられなかった。
②の論理的思考力の変容については,事前ではテーマに対し
て判断と理由を明確に分けたり,理由付けに対してナンバリ
判断を明確にしている
0% 20% 40% 60% 80% 100%
事前
事後
判断が書いてある。
判断がされていない
順序立てて書いている
0% 20% 40% 60% 80% 100%
事前
事後
順序立てて書いている
順序立てて書いてない
分かり易く表現か
0% 20% 40% 60% 80% 100%
事前
事後
分かりやすい
分かりにくい
順序立てて話しているか
0% 20% 40% 60% 80% 100%
事前
事後
ナンバリングして箇条的に羅列的に
- 15 -国語(国語力グループ)
ングしたり,理由をより詳しく説明しようとしたりしているかについて十分とはいえなかったが,図
で分かるように,順序立てて話そうとする児童が増えている。特に 「まず一つ目は,~二つ目は13 ,
~」など,ナンバリングしてコミュニケーションを取ろうとしている児童が %から %へと変7.1 53.6
容した。これは,相手を意識し,分かってもらおうとしていることの表れであり,論理的に物事を考
え伝えようとしていることがうかがえる。
4 授業記録による評価
名の学級を 対 の半分に分け それぞれの立場でディベートを実践した 授業実践では ロ28 14 14 , 。 「
ボットのイヌは死がないのでよい」の立論に対して「死んでしまうからかけがえのないもの 「世。」,
話をするから信頼関係が生まれてくるもの 「 というイヌは本物のイヌと変わらない 「お。」, 。」,AIBO
ばあちゃんはイヌが死んでとても悲しい思いをした 「死ぬことにより命の尊さを教えてくれる 」。」, 。
など反論をする中で考えの変容がみられた。ディベート終了後に,論題についてそれぞれの立場を離
。 ,「 」 ,「 」れて各自の自身の考えをまとめた その結果 本物のイヌがよい 名 ロボットのイヌがよい22
4名 「どちらともいえない」が2名となった。ディベートの実践で賛成側の立論がロボットのよさ,
を全面に出さずに本物イヌのよくない部分を理由としてあげたのに対して,反対側の立場で立論した
グループは 「命の大切さ 「イヌと人間の信頼関係 「イヌとのつながり」を挙げ討論に臨んだこと, 」 」
がその要因であると考える。その後の討論においても 「イヌは死んでしまう 」に対して「死んで, 。
しまうからこそかけがえのないものである 「本物のイヌは死ぬことによって命の大切さを教えて。」
くれる 」等,生き物のすばらしさを理解する深い考えに発展することができた。ディベートの実践。
により自分の考えと友達の考えの違いに気づき,さらに考えを深め,より価値の高い思考へと結びつ
いたことは,相互向上コミュニケーション能力の育成へ繋がった結果と考える。また,判定者となっ
た児童の思考の変容についても,自己の事前の読み取り学習や友達の多様な考えを聞くことにより思
考の変容があったものと考えられる。
以上,研究の結果及び考察から国語科の学習指導に教材読み取りシート,小集団話し合い,授業後
における意見文の記述を取り入れたディベートを実践することにより,積極的にコミュニケーション
を取ろうとする関心・意欲が高まり,物事を順序立てて考えたり,友達の意見に耳を傾け,自分との
考えの違いに気付き,より価値の高い考えを目指すなど「論理的思考力」の育成と「相互向上コミュ
ニケーション能力」の育成に繋がるものとなった。これは,本研究で目指している国語力であり,国
語力の向上に向けての研究の成果であると考えられる。
Ⅵ 研究のまとめ
(1)研究の成果
・ 国語力向上を目指して国語科としてどのような学習指導が効果的であるか研究を進めてきた。
論理的思考力及び「相互向上コミュニケーション能力」の向上を目指し,学習指導にディベート
を取り入れ,教材の読み取りや情報収集等,事前学習に積極的に取り組むことやディベートの実
践における活発な討論の中で論理的思考力及びコミュニケーション能力の育成に取り組んだ。研
究の結果については,調査対象者が少なかったことや短期間での取組であったことなど,十分な
データとはいえないが,一応の成果をみることができた。
- 16 -国語(国語力グループ)
・ 本研究では論理的思考力の向上として判断に対して理由付けをすること,筋道を立てて物事を
考えることを中心に評価してきた。今回のディベート取り入れた授業実践において,準備段階で
「書くこと」を通して考えを整理し,順序立てて話すことへの手助けとした。このことが論理的
に物事を考えることへのアプローチとなっていた 「書くこと」の重要性を再確認すると共に,。
さらに繰り返しディベートの実践をすることにより論理的思考力の育成に繋がるものと考える。
また ディベートは 決められたパターンの中での討論ではあるが 国語力の一能力である 伝, , , 「
え合う力 「論理的思考力」の育成には有効であることを確認することができた。」
・ 国語力向上については,国語科の基礎学力習得が大きな役割を果たしていることはいうまでも
ないが,ディベートの実践により国語科のねらい達成に向けておおいに有効であることを確認す
。 , 。ることができた 国語力向上という面おいては 他の教科等でもおおいに取り組める内容である
ゲーム感覚で学習する中で論理的思考力やコミュニケーション能力を身に付けることは,国語力
の向上に繋がる有効な学習手段と考える。国語科だけでなく,他の教科,道徳・特別活動,総合
的な学習の時間においてもディベートを実践することが重要であると考える。
(2)課題
・ 今回は国語科の説明文指導を通して国語力の向上に向けてどのような指導方法が効果的である
か研究を進めてきた。国語科としてのねらいを達成することについては,ある程度の成果をみる
ことができた。しかし,説明文指導として段落の構成やきめ細やかな読み取りの指導をすること
はできなかった。単元全体をディベートだけで指導することは難しく,活用の場面や目的を明確
にした中で取り入れることが必要である。
・ 小学校ではディベートの実践はあまり多くみられない状況にある。論理的思考力のやコミュニ
ケーション能力の育成について効果があることを考えると 小学生の実態にあったディベート デ, (
ィベート的な話し合い等)を教育活動全体の中で,教育課程へ位置づけ,時間,内容等について
工夫し取り組むことが必要である。
参考文献 ・平成 年度研究紀要16
・小学校学習指導要領 文部科学省 山梨県総合教育センター
・授業ディベート入門
岡本明人著 明治図書
・ インスタント食品と私たちの生活」の授業「
加賀美久男・桂 聖著 東洋館出版社 研究協力校
・シリーズ教室ディベート2 韮崎市立穂坂小学校 校長 大森きよ子
佐久間順子 学事出版
・教育科学国語教育№ 「初めてのディベート 研究協力員527
導入の際の留意点」花田修一著 明治図書 櫻井ひろみ 韮崎市立穂坂小学校教諭
・現代教育科学№462
大森修氏著 明治図書
・これからの時代に求められる国語力について 平成 年度 山梨県総合教育センター17
( )文化審議会答申 2004
執 筆 者 研修主事 比志 秀樹
- 17 -国語(国語力グループ)