国際語としての日本語に関する...
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阪上彩子
国際語としての日本語に関する国際シンポジウムの報告
国際語としての日本語に関する国際シンポジウム
主催:サンパウロ大学
• 日本語や日本語使用者の枠を柔軟にとらえる• 世界中の多様な日本語や日本語社会、言語接触や文化混交についての研究や提言を行うこと
• 日本語を一地域言語ではなく国際語として捉える姿勢
国際語としての日本語に関する国際シンポジウム
主催:サンパウロ大学
日本語、日本文化、社会、アイデンティティ、文化混交に関する研究発表や実践報告を行い、日本語の国際化や言語政策について議論する場を提供する
サンパウロ大学日本文化研究所講堂
スケジュール
★2015年8月9日~8月14日
・チュートリアル3本
・大会企画パネル3本
・基調講演5本・ラウンドテーブル2本
・口頭発表31本、ポスター発表21本
•日本の言語政策と敬語運用能力
•中井精一(富山大学)
大会企画パネル
•日本語は誰のものか
•小林ミナ(早稲田大学)
基調講演
•社会・コミュニティ参加をめざすことばの教育と学習者のアイデンティティ
•佐藤 慎司(プリンストン大学 )
基調講演
•移動する子どもたちの継承語問題
•Kyoko Nakagawa (かえるプロジェクト)
大会企画パネル
•ブラジルの日本語教育の30年の歴史をふり返る
•Sandra Terumi Takahashi Suenaga
口頭発表
中井精一(富山大学)
日本の言語政策と敬語運用能力
「敬語の指針」および答申の経緯
・1949年国語審議会設置:国語の改善および 国語の教育の振興に関する事項を調査審議する目的・1952年4月「これからの敬語」・2000年12月「現代社会における敬意表現」・2007年2月「敬語の指針」
国の言語政策において「敬語」は重要なテーマ
日本語敬語の地域バリエーション
・国立国語研究所のプロジェクト結果現代の日常生活で,敬語を使用しない地点(地域)全国におよそ40%
敬語教育・敬語を中心とした言語政策の成果なし
敬語運用能力と社会差
・敬語の受容やその運用能力の獲得
各地の地域特性の影響学歴や社会階層といった社会バリエーションの関係
日本語教育が育成すべき日本語能力と教師の役割を考える
小林ミナ(早稲田大学)
日本語は誰のものか?
日本語は誰のものか
• 「普通の日本語を勉強したい」• 「日本人のように話せるようになりたいです」• 「せっかく日本に留学したのに,どうして日本人の先生じゃないんですか」
「外国語学習における母語話者重視」は,日本語だけに見られる現象ではない。
「言語」としての日本語
1) 角田太作(1991)『世界の言語と日本語』
130の言語について,「語順」「格」「動詞の他動性」などを比較,検討
結論としては,日本語は世界の諸言語の中でごく普通の言語である(p.2)
「社会」としての日本語
2) 城生佰太郎・松﨑寛(1995)『日本語「らしさ」の言語学』
政治的境界区分である国家・国民と,言語の話し手がよく一致しており,かつ,話し手の数が非常
に多いこと
「社会」としての日本語
言語の話し手のなかで、その国民の占める比率
国内でその言語の話
し手の占める比率
日本語は誰のものか
「言語」とは「社会的な営み」である。 「社会的な営み」とは,「その社会の成員の間
で共有されている,習慣的な意味・用法が存在する」ことを意味している。
「日本語」は,「日本国」「日本人」と結びつきやすいのでは?
日本語は誰のものか
日本語は,「いま,ここ」にいる,コミュニケーションの当事者としての私たちのもの
RQ2 日本語教育が育成すべき日本語能力とは何かA 2 自分の日本語生活をメタ的にとらえることに
より,「私の日本語」を自ら構築できる能力
RQ3 そのために日本語教師が果たす役割とは何かA 3 静的な文法教育力ではなく,動的な文法教育力
私たちは何のために「ことば」を使っているのだろう
今日,ケイちゃんに会ったら,イ形容詞を使って話そう!
今日,ケイちゃんに会ったら,おみやげのお礼を言おう!
ある朝,起きて
「既存の文法書を読んで(理解力),覚える(暗記力)」という静的な文法教育能力
「目の前の学習者の頭の中で起きていることを知り(洞察力),自らが持っている文法知識,言語分析力を駆使し(瞬発力),相手に届くように伝えられる(説明力)」という動的な文法教育能力
事例2:「わたしのにほんご」プロジェクト
―継承語教育から外国語としての日本語教育への移行を中心に―
末永サンドラ
口頭発表:ブラジルの日本語教育の30年の歴史をふりかえる
発表の目的
• ブラジルの日本語教育に関する文献を考察• 継承語教育(JHL)から外国語としての日本語教育(JFL)への移行
• いかなる提案や実践が行われてきたのか• これからの方向性
ブラジルの日本語学習者数の推移
1970年~1980年代
• JHLからJFLへの移行の必要性認知• 文字指導、読み書きの指導 →会話• 国語の教科書 → JFL用の教材作成• JFLのための教材や教授法
1990年代
• JHL→JFLと受け入れるべきという意見と日系社会と切り離せないので、移行に賛成ではない意見
• 異文化コミュニケーション能力育成としての日本語教育
2000年代
• JHLからJFLへ移行しない要因・教授、人材や学校側の指導方針・日系人としてのアイデンティティ形成
• 学校側が情操面の教育を重視する• 文型中心に学んだり読み書きを重視したりする
ブラジルの日本語教育
1960年
•親子のコミュニケーションのツール
•言語の習得よりむしろ共同体の結束
1990年
•JHLからJFLへの一律の移行には反対
•異文化コミュニケーション能力を養成
2000年
•学習者のニーズに沿ってコミュニケーション能力を育成すべく学習環境を改善する
今後の課題
• JFLへの移行が完了したかどうかではなく、• 「何をどう教えるか」• グローバル社会で生きる若者の人間的成長• 国際交流基金サンパウロ日本文化センターの取り組み「防災や人間的成長をテーマとした活動」
ペルーの日本語教育現況
ペルーの日本語学習者数の推移
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
1993 1998 2003 2006 2009 2012
学校教育以外
初中等教育
高等教育
アンケート調査内容
ペルーで日本語を学ぶ学習者1009名
アンケート調査結果
ペルーで日本語を学ぶ学習者1009名
37%
7%10%3%
33%
2%2%
2%2% ラウニオン学校
野口英世学校インカ学院サンマルコス大学APJ UDCいちご会つるAPJワチョタクナAPJウカヤリAPJクスコ愛気
年齢
0~1554%
16~2022%
21~2514%
26~305%
31~393%
性別
男46%
女43%
無回答11%
母語
スペイン
語95%
その他1%無回
答4%
学習期間
6ヶ月以内21%
半年ー1年9%
1年ー2年11%
2年ー3年7%
3年ー
5年9%
5年以上33%
無回答10%
来日経験
あり14%
なし83%
無回答3%
日本滞在期間
1か月以内23%
1-6ヶ月19%
6ヶ月-1年8%
1年-5
年0%
5年以上19%
無回答31%
日本語能力試験
40
24 23
8
10
5
10
15
20
25
30
35
40
45
N5 N4 N3 N2 N1
日本語学習の目的
153
336
47
147
445
121
280
41
252
167
78
150
216
11986
125
35
難しい技能
224
173
89
237
106
106
161
152
94
136
185
150
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
話す
聞く
発音
書く
読む
語彙
学習したい技能
0 100 200 300 400 500 600 700 800
話す
聞く
発音
書く
読む
語彙
日本語使用するときは
0 100 200 300 400 500 600
読む
アニメや映画
親と
兄弟と
親戚と
書く
学校外友人
学校で
ネットで
通訳
翻訳家
仕事
ゲーム
日系かどうか
日系29%
非日系63%
無回答8%
日系何世か
25%
330%
434%
52%
無回答29%
日本のイメージ
0 100 200 300 400 500 600 700
勤勉
技術のある
忍耐強い
信頼できる
自己中心的だ
リーダーシップがある
協調的だ
創造性がある
尊敬できる
その他
無回答
海外における日本語音声教育事情アンケート
https://hatsuon.org/survey.html
Questionnaire about the Teaching of Japanese Pronunciation Overseas
日本語教育にとても役立つ資料をプレゼントします。