財界観測 論文 2018年11月27日「真のキャッシュレ …...財界観測 2018.11.27 3...

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財界観測 2018.11.27 Ⅰ.キャッシュレス化政策の内外格差 1. わが国で活発化するキャッシュレス化へ の動き 2. 諸外国のキャッシュレス化政策との違い Ⅱ.諸外国における決済改革 1. キャッシュレス化と決済改革 2. 統一的なモバイル送金サービスの導入 3. 小口決済の常時即時化と中央銀行の対応 4. 付加価値サービスの提供 5. FinTech の活用と参加 6. 競争と協調 7. 新たな決済ガバナンス 8. カードシステムに対する政策 9. 新たな決済法制 10. 改革へのイニシアティブ Ⅲ.諸外国における現金利用抑制策 1. 現金利用抑制の意義 2. 高額紙幣の廃止 3. 現金による高額取引の禁止 4. 小額硬貨の廃止 5. その他の政策 Ⅳ.わが国の課題 1. 実行すべき政策の多くが未実現 2. 問われる改革の司令塔 真のキャッシュレス化政策とは 要約と結論 1.諸外国では、決済改革と現金利用抑制策が進展する結果、キャッシュレス化が進展しつ つある。わが国の場合、政府がキャッシュレス化推進を掲げているにも関わらず、決済 改革は不十分であり、現金利用抑制策は議論されていない。 2.多くの国が、近年、ほぼ共通に導入している決済改革として、「統一的なモバイル送金 サービスの導入」や「小口決済の常時即時化」をはじめとする、9 項目を指摘できる。 3. 諸外国の多くは、主として不正防止やキャッシュレス化推進の観点から、現金利用抑制 策も導入している。高額紙幣の廃止、現金による高額取引の禁止、小額硬貨の廃止など の施策がある。 4. わが国において、以上の施策の多くが実現していない背景の一つとして、決済関連行政 が、複数の省庁によってばらばらに担われていることがあると考えられる。わが国が真 にキャッシュレス化を目指すならば、省庁の枠組みを超えたイニシアティブが発揮され る必要があろう。 野村資本市場研究所 淵田 康之

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財界観測 2018.11.27

目 次

Ⅰ.キャッシュレス化政策の内外格差

1. わが国で活発化するキャッシュレス化へ

の動き

2. 諸外国のキャッシュレス化政策との違い

Ⅱ.諸外国における決済改革

1. キャッシュレス化と決済改革

2. 統一的なモバイル送金サービスの導入

3. 小口決済の常時即時化と中央銀行の対応

4. 付加価値サービスの提供

5. FinTechの活用と参加

6. 競争と協調

7. 新たな決済ガバナンス

8. カードシステムに対する政策

9. 新たな決済法制

10. 改革へのイニシアティブ

Ⅲ.諸外国における現金利用抑制策

1. 現金利用抑制の意義

2. 高額紙幣の廃止

3. 現金による高額取引の禁止

4. 小額硬貨の廃止

5. その他の政策

Ⅳ.わが国の課題

1. 実行すべき政策の多くが未実現

2. 問われる改革の司令塔

真のキャッシュレス化政策とは

要約と結論

1. 諸外国では、決済改革と現金利用抑制策が進展する結果、キャッシュレス化が進展しつ

つある。わが国の場合、政府がキャッシュレス化推進を掲げているにも関わらず、決済

改革は不十分であり、現金利用抑制策は議論されていない。

2. 多くの国が、近年、ほぼ共通に導入している決済改革として、「統一的なモバイル送金

サービスの導入」や「小口決済の常時即時化」をはじめとする、9項目を指摘できる。

3. 諸外国の多くは、主として不正防止やキャッシュレス化推進の観点から、現金利用抑制

策も導入している。高額紙幣の廃止、現金による高額取引の禁止、小額硬貨の廃止など

の施策がある。

4. わが国において、以上の施策の多くが実現していない背景の一つとして、決済関連行政

が、複数の省庁によってばらばらに担われていることがあると考えられる。わが国が真

にキャッシュレス化を目指すならば、省庁の枠組みを超えたイニシアティブが発揮され

る必要があろう。

野村資本市場研究所 淵田 康之

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Ⅰ. キャッシュレス化政策の内外格差

1. わが国で活発化するキャッシュレス化への動き

昨今、わが国においてキャッシュレス化を巡る動きが活発化している。2018

年 4月には、経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、諸外国に

比べ、わが国のキャッシュレス化が遅れている現状を指摘し、キャッシュレス

化推進政策の強化を提唱した。

わが国におけるキャッシュレス化推進政策は、既に 2014年の「日本再興戦略

改訂 2014」に盛り込まれていた。しかし当時の政策は、2020年オリンピッ

ク・パラリンピック東京大会の開催に向け、海外発行カードに対応した ATM

の普及を目指すという、キャッシュレス化というよりも現金利用の促進とも言

える政策が一つの柱になっていた。他の政策も、クレジットカードなどを安全

に利用できる環境の整備、公的分野における電子決済の利用拡大という、限定

された分野の施策に留まっていた。

これに対して「キャッシュレス・ビジョン」では、インバウンド需要対応に留

まらず、労働力人口が減少するなか、わが国の生産性向上のためにも不可欠な

施策としてキャッシュレス化を位置づけ、より広範な対応が検討されている。

特に、現金を扱わないことで省力化を目指すだけではなく、支払データを活用

していくことにも注目している。また 2014年時点では、FinTechも注目され

ていなかったが、今回は、新たなテクノロジーを活用していく上でも、キャッ

シュレス化を推進しようという観点も明確となっている。

「キャッシュレス・ビジョン」を受け、2018年 7月には「キャッシュレス推

進協議会」が発足した。また 2018年 10月には、1年後に予定される消費税増

税時に、キャッシュレス決済に対してはポイント還元を実施することで、景気

後退の抑止と同時にキャッシュレス化推進を目指そうという案が浮上した。こ

れに関連し、経済産業大臣からは、中小商店が負担するカード決済手数料を引

き下げることによりキャッシュレス化を推進するとの方針も示された。

こうした政府の動向に呼応するように、企業の間で、新たなキャッシュレス決

済サービスを導入する動きが相次いでいる。とりわけ Alipay、WeChat Payな

ど、中国で普及した QRコードを用いた決済については、来日する中国人が日

本国内の店舗でも決済に利用できるようにする動きが既に活発化していたが、

最近は日本人をターゲットにしたサービスの導入も相次いでいる。

すなわち、2016年に楽天 Payや Origami Payが QRコード決済を導入し、

2017年に LINE Pay、横浜銀行の「はま Pay」、2018年には NTTドコモの「d

払い」などがこれに続いた。この他、メガバンク 3行による統一的な QRコー

ド決済、ヤフーとソフトバンクによる PayPay、アマゾンジャパンによる

Amazon Pay、メルカリによるメルペイ、KDDIによる au Payなど、同様のサ

ービスの導入ないし導入計画の発表が相次いでいる。

2. 諸外国のキャッシュレス化政策との違い

このように、キャッシュレス化に向けた動きは活発化しているが、実際に、わ

が国においてキャッシュレス化が加速していくかどうかは、現時点では不透明

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と言わざるを得ない。なぜならば、諸外国におけるキャッシュレス化に向けた

様々な動きに比べると、わが国に欠けている点が多いからである。

諸外国の動向を見る上でまず注意すべきは、必ずしも諸外国の全てが「キャッ

シュレス化」を目標とした政策運営を実施しているわけではないということで

ある。

キャッシュレス化推進を政策として明確に掲げている国としては、インド、タ

イ、シンガポールなどがあるが、例えば英国、EU、米国などでは、そのような

目標設定はされていない。

それでは、英国、EU、米国などにおいて、キャッシュレス化につながる政策が

展開されていないかというとそうではない。これらの国においては、国民の利

便性の向上や経済活動の効率性向上などのために、決済サービスを向上させる

ことが重視され、決済制度や決済インフラの改革が進んでいるのである。これ

らの改革は、結果としてキャッシュレス化に寄与することになる。

また英国、EU、米国を含む多くの国において、マネーロンダリングやテロリス

トファイナンスを含む各種の不正防止などの観点から、現金の利用に対して規

制や報告義務を設ける動きがある。これらも、結果としてキャッシュレス化に

つながる施策と言える。

すなわち「キャッシュレス化政策」は、「決済改革」と「現金利用抑制策」の

2つに分けることができるが、「キャッシュレス化政策」を明示的に掲げてい

ない国も含め、今日、世界の多くの国がこれら 2つの政策を実施しているので

ある。

これに対して、わが国は「キャッシュレス化政策」を明示的に掲げているにも

関わらず、近年、多くの国が「決済改革」の一環で採用している一連の施策の

うち、ごく一部しか実現できていない。また「現金利用抑制策」も、ほとんど

議論されていない。

わが国が、真にキャッシュレス化を目指そうというのであれば、これら未だ手

つかずになっている施策に積極的に取り組んでいく必要がある。以下では、ま

ず諸外国で実現している「決済改革」や「現金抑制策」とは何か、概観するこ

ととする1。

1 2017年前半までの、各国の詳細な動向については、淵田康之『キャッシュフリー経済』、日本経済新聞出版社、2017年参照。その後の動向については、『野村資本市場クォータリー』各号掲載の拙稿を参照されたい。また本稿で紹介した、小口決済の常時即時化と中央銀行の対応については、日本銀行決済機構局「グローバルな 24/7即時送金導入の潮流」『決済システムレポート別冊シリーズ』、2018年 7月を参照。

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Ⅱ. 諸外国における決済改革

1. キャッシュレス化と決済改革

キャッシュレス化が実現するためには、キャッシュレス決済が現金による決済

以上のメリットをもたらす必要がある。現金のメリットは、「いつでも、どこ

でも、誰とでも、特別な機器も手数料も要することもなく、現金を相手に渡す

だけで、即座に送金や決済が完了すること」である。これに対して伝統的なキ

ャッシュレス決済の手段は、現金に劣る点が多かった。

例えば、従来の銀行口座振込みや銀行口座引落しは、銀行の営業時間外には利

用できないことが多かった。またクレジットカードや電子マネーによる決済は、

店舗側が決済サービス業者と契約し、カードなどの読み取り端末の導入やサー

ビス利用のコストを負担しなければならないこと、また店舗の銀行口座に販売

代金が入金されるまでに時間を要することなどが、店舗にとって導入する上で

の障害となっていた。

このような伝統的なキャッシュレス決済のデメリットは、今、多くの国で軽減

されつつある。まずモバイル機器、特にスマートフォン(以下、スマホ)が急速

に普及した結果、人々がいつでも、どこでも、誰とでも、電子的な資金移動(し

ばしば、「ユビキタスな決済」と呼ばれる)を実行できる環境が生まれた。通信

会社や FinTech、あるいは銀行が競って、スマホで手軽に相手に送金できるサ

ービスを次々と導入するようになったためである。その多くは、無料ないし従

来の銀行振込などより低廉な手数料で提供され、また銀行口座番号などの入力

は不要で、相手の携帯電話番号やメールアドレスなどを選択することで送金可

能である。カード決済の導入をためらっていた小規模店舗や屋台などでも、こ

うしたスマホ決済を使えば、キャッシュレス化が可能となる。

これらサービスでは、送金メッセージは瞬時に相手に届くが、実際に資金の受

領者が資金を利用したり引き出したりできるのは数日後という場合もある。銀

行及び中央銀行を結ぶ既存の小口決済インフラが、即時決済に対応していない

ためである。そこで、各国で即時決済を可能とする新決済インフラの導入が進

展している。

前記のように、新たな決済サービスは、必ずしも銀行ではなく、通信会社や

FinTechも重要な担い手となっている。テクノロジーの進化を背景に、現金決

済では実現できなかった付加価値サービスも登場するようになっている。新決

済インフラの構築にあたっても、単に決済の即時化に留まらず、これら新たな

担い手を受け入れつつ、各種のイノベーションを柔軟に取り入れていくことが

重視されている。

このように、新たなプレイヤーも参加し、イノベイティブなサービスを競う環

境が目指されているが、各種のサービスが乱立し、特定のサービスの加入者同

士でしか送金・決済ができないのであれば、「いつでも、どこでも、誰とでも」

というユビキタスな世界は実現しない。そこで、多くの国では、銀行界による

統一的な送金サービスの導入や、決済改革において各種決済サービスや決済シ

ステムの「インターオペラビリティ」(interoperability、相互運用可能性)の実現

が重視されている。

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以上のような、「イノベーションのための競争」と「インターオペラビリティ

のための協調」のバランスを踏まえた決済改革を推進する上で、決済インフラ

の運営主体となる決済ガバナンス機関のあり方や、決済関連の法制度を見直す

動きも、多くの国で進展してきた。

この他、キャッシュレス決済サービスとして歴史的に重要な位置を占めてきた

クレジットカード・ネットワークについて、その手数料や規約などのあり方を

見直し、キャッシュレス決済環境の改善を図る政策も講じられている。

以上のような改革の実行に当たっては、各国の政府や中央銀行などがトップダ

ウンのイニシアティブを発揮している。この場合、なぜ、どのような部分につ

いて公的介入が必要かを吟味した上で、民間の知見やリソースを動員しつつ新

たな仕組みを導入する例が多い。

以下、キャッシュレス化につながる決済改革の 9つの項目を、諸外国の事例を

踏まえて整理することとする。

2. 統一的なモバイル送金サービスの導入

「いつでも、どこでも、誰とでも、無料で」お金をやりとりでき、決済が「即

時に完了」するのが現金の良さであるが、今日、多くの国で、携帯電話さえあ

れば、どこからでも、24 時間 365 日、相手の銀行口座番号など知らなくても、

簡易に、かつ無料ないし従来の送金方法より低コストで利用でき、さらに送金

後、すぐに受領者が資金を利用できる送金サービスが登場し、キャッシュレス

化に寄与している。

銀行口座の普及が不十分な途上国では、通信会社の店舗(銀行の支店よりも多く

存在)で携帯電話(スマホでなくても良い)のデータ通信料の前払いと同じ位置づ

けで入金した資金を、ショートメッセージを使って他者への支払いに充てるこ

とができる仕組みが普及している。受領者はその資金を、同じ仕組みで電子送

金・決済に用いることができる他、近くの通信会社の店舗で現金として引き出

すこともできる。2007年にスタートした、ケニアの M-PESAを草分けとする

この仕組みは、モバイルマネーとも呼ばれる。

一方、同じ、モバイル送金・決済でも、銀行やクレジットカードなどが相当程

度普及した国では、スマホのウォレット・アプリなどに銀行口座やクレジット

カードを登録し、スマホを用いて送金・決済可能なアプリが普及している。

途上国の仕組みも、先進国の仕組みも、個人間の送金だけではなく、商品やサ

ービスの代金支払いにも利用されている事例が多い。クレジットカード決済な

ど受付けていない小規模の店舗でも、携帯電話を保有していれば、買い手の携

帯電話から代金を送金してもらうことで、キャッシュレスで販売代金を受領で

きる。この他、国によっては、企業から個人への支払いや企業間の送金・決済、

税金の支払い、公的給付の受領などにも同じ仕組みが利用されている事例があ

る。法人の場合、携帯電話番号の代わりに法人番号が銀行口座番号の代わりに

利用されている。

こうしたサービスは、銀行や FinTechが、それぞれ独自のサービスを導入して

いる場合も多いが、多数のサービスが乱立し、異なるサービスの利用者間では

やりとりできないのでは、そのメリットは現金に遠く及ばない。

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ケニアの M-PESAや中国の Alipay、WeChat Payのように、特定企業のサービ

スが多くの国民に支持されるようになり、デファクト・スタンダードとも言え

るほど普及した事例もあるが、多くの国では、多数の銀行が統一的なサービス

を採用したことが利便性の向上につながり、普及につながっている。スウェー

デンの Swish、デンマークやノルウェーの Vipps、英国の Paym、シンガポー

ルの PayNow、タイの Prompt Payなどが、こうした銀行界主導のサービスの

例である。

3. 小口決済の常時即時化と中央銀行の対応

こうしたモバイルを使った送金は、電波が通じる場所なら取引を実行できると

いう意味で、現金の持つ「どこでも」取引が可能というメリットを再現できる。

また統一的なサービスの導入により、「誰とでも」というメリットも得られる。

そして、「無料」のサービスも多い。

しかしこのサービスを、現金と同様、「いつでも」利用でき、また「即時」に

資金受領者が資金を利用できるようにするには、工夫が必要である。

銀行界が提供する統一的モバイル送金サービスを用い、ある銀行の利用者が他

の銀行の利用者に送金をする場合、①支払側の銀行が支払者の口座に送金可能

な金額が確かに存在することを確認し、②受領側の銀行に受領者を特定できる

情報を提供し、③受領側の銀行がこれを確認する作業が必要である。送金が

「いつでも」可能となるためには、このような一連のプロセスを 24時間 365

日処理可能なシステム・インフラを銀行間で構築する必要がある。

さらに、受領者がすぐに資金を利用できるようになるためには、受領側の銀行

が受領者の口座に送金額を入金処理しなければならない。顧客の送金指示に合

わせ、支払側銀行から受領側銀行に瞬時に資金が移動し、その資金が顧客の口

座に速やかに入金されれば良いが、多くの国において、伝統的な小口決済のた

めの銀行間システムはそのような仕組みではなかった。

典型的には、小口の銀行間決済は、銀行間の支払いメッセージのやり取りの仕

組み(クリアリング)を経て、1日 1回、銀行ごとの収支尻を計算し、この収支

尻を各銀行が中央銀行に保有する口座間で決済(セトルメント)するという、バ

ッジ処理が多かった。この状況を前提とすると、受領者に対して即時に資金を

利用可能にするには、送金側の銀行からの入金が実行されていない段階で、受

領銀行が一時的に資金を立て替える必要が生じる。

小口とはいえ、24時間 365日利用可能なモバイル送金が活発化すると、平時

においても、週末などは顧客への立替払い残高が積み上がる可能性があるが、

何かのきっかけで現金を引出そうというユーザーが急増すると、受領超の銀行

において流動性リスクが顕在化しかねない。またネットで送金超となっている

銀行が、セトルメントのタイミングに合わせて入金できなくなるという信用リ

スクも内包している。

そこで統一的なモバイル送金サービスを導入した国においては、即時決済に対

応した新決済プラットフォームを構築する場合が多い。これには大きく分けて

2つの形態がある(図表 1)。

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図表 1 即時決済システムの 2つの方式

方式 Deferred Net Settlement

(英国の FPSの例)

Real Time Gross Settlement

(オーストラリアの NPPの例)

基本的な仕

組み

銀行間で、一定時間に発生した取引の債

権・債務を相殺し、収支尻を銀行が中央

銀行に保有する口座間で決済

取引一件ごとに顧客口座及び、中央銀行

口座上で即時振替

セトルメン

ト口座

バンク・オブ・イングランドにおける各

銀行の準備口座(Reserve Account)

オーストラリア準備銀行における各銀行

の Exchange Settlement Account

(ESA)

セトルメン

トのタイミ

ング

銀行営業日に 1日 3回 NPP用の中央銀行決済システム(Fast

Settlement Service、FSS)による即時決

済。24時間 365日稼働

基本的なリ

スク管理の

仕組み

各銀行が支払い超となる金額の限度額

(仕向超過限度額、Net Sender Cap)

を設定 Net Sender Cap相当の資金をバンク・

オブ・イングランドの Cash Collateral

Accountに担保として差し入れ 流動性、担保額の継続的モニタリング

銀行は、ESAのうち FSSの決済に充

てる部分(FSS Allocation)の上限、

下限を設定し、限度超過分を ESAの

大口決済用部分との間で調整 大口決済用サービスの提供時間外は、

大口決済用部分の資金は、全額 FSS

Allocationに移管 流動性の継続的なモニタリング

注: 英国の場合、ノンバンクの直接参加者も存在。ノンバンクは、バンク・オブ・イングランドに Reserve Accountではなく、Settlement Accountを開設。

出所: 各国資料より野村資本市場研究所作成

第 1の方法は、従来と同様、参加銀行間の相互の支払額、受領額を相殺した上

で、決済尻を中央銀行口座間で決済するが、より厳格なリスク管理上の工夫を

導入するものである。受領側の顧客が資金を利用できるタイミングよりも、銀

行間の決済が完了するタイミングが後になるため、DNS(Deferred Net

Settlement)方式とも呼ばれる。同方式においては、リスク管理のため、1件当

たりの送金額に限度を設ける、各銀行が支払い超となる金額への限度額(仕向超

過限度額、Net Sender Cap)を設定、事前に清算機関や中央銀行の別口座に仕

向超過限度額分の資金を預託する、セトルメント回数を 1日複数回にする、損

失発生時のロスシェアリングの仕組みを導入する、などの工夫がされている。

第 2の方法は、銀行間で発生する個々の取引を、中央銀行口座間で即座に決済

するものである。すなわち大口決済で導入されてきた RTGS(Real Time Gross

Settlement)方式を小口決済についても導入するのである。この場合、DNSの

ような信用リスク管理の仕組みは不要となるが、中央銀行口座間の決済を 1件

ごとに即時完了させる必要があるため、流動性リスク管理の仕組みは必要とな

る。

特に、既存の大口決済の RTGSが 24時間 365日稼働していない場合、小口決

済の 24時間 365日対応を実現するためには、大口決済用と小口決済用の口座

を分け、大口決済時間外に、大口決済用口座から小口決済用口座に資金移動を

可能とするなどの工夫が導入される。

DNSを採用したのが、2008年 5月に稼働した英国の FPS(Faster Payments

Service)や、2014年 3月に稼働したシンガポールの FAST(Fast And Secure

Transfers)である。RTGSを採用したのが、2018年 2月に稼働したオーストラ

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リアの NPP(New Payments Platform)、2018年 9月に稼働した香港の FPS

(Faster Payment System)、2018年 11月に稼働予定の EUの TIPS(Target

Instant Payments Scheme)、2019年末までに稼働予定のカナダの Real-Time

Railである。

米国は、今、銀行界のみならず、FinTechを含む各種の決済サービス関係者が

参集し、即時決済サービスのためのインフラを構築中であるが、2018 年 10 月、

米国の中央銀行にあたる Federal Reserve Systemは、どのようなサービスを

中央銀行として提供すべきか、意見徴集を実施している。

米国の場合、上記の例のように、各銀行が保有する中央銀行口座を決済に利用

する形態ではなく、一部の銀行が共同名義でニューヨーク連邦準備銀行にジョ

イント・アカウントを保有し、この口座に所要額を上回る資金を入金する形で

リスク管理を行いつつ、参加銀行間で管理する台帳上での RTGSセトルメント

を実施する方法が、2017 年にスタートしている。そこで、民間が中央銀行に、

今後どのような関与を期待するのか、確認を求めているのである。

また決済のみならず、携帯電話番号などで送金可能とするためのアドレス管理

のデータベースの仕組み(ダイレクトリー・サービス)や、不正検知の仕組み、

その他リスク管理の仕組みを、中央銀行が提供することも考えられるとし、こ

れらのサービスのニーズについての意見も求めている。

DNSか RTGSかについては、リスク管理という観点の他、DNSの場合、それ

ぞれ DNS方式を採用する異なる決済システム間のインターオペラビリティを

確保するのに追加的な工夫が必要となることもあり、Federal Reserve System

としては、DNSよりも RTGSが望ましいとの考えを表明している。

4. 付加価値サービスの提供

以上で見てきた「24時間 365日、無料で、即時決済が可能な統一的なモバイ

ル即時送金サービス」の確立により、電子的決済でも「いつでも、どこでも、

誰とでも、即時に無料で」資金移動が可能という、現金決済の利便性に相当程

度接近することが可能となる。しかし、仮に現金と同等レベルのメリットが実

現しても、それだけでは長年、現金決済に慣れ親しんだ多くの人々は、なかな

かキャッシュレス決済に移行しない可能性が高い。キャッシュレス化が着実に

進展するためには、電子決済のメリットが現金のメリットを上回る部分を増や

す必要があろう。

まず電話番号などで簡単に送金ができるだけではなく、「割り勘」や「支払い

リクエスト」といった便利な機能の導入が重要とされている。後者は、企業や

個人が支払いを請求するメッセージを相手のスマホなどに送付すると、相手側

は支払いボタンをクリックするだけで支払いが完了するという仕組みである。

すぐに払うのではなく、後で払うことを選択可能な仕組みもある。

毎月同じ日に給料が支払われる雇用形態が一般的だった時代は、銀行口座から

の定期的な自動引き落としが便利であったかもしれないが、フリーランスのよ

うな働き方も普及する時代となり、いつ、どの程度収入が発生するか予め決ま

っていない人も増えている。そこで、ユーザーがいつどのように支払うかを、

柔軟にコントロールできることが重要になっているのである。請求側が金額な

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どを入力し、支払者にデジタルな形で伝達するため、通常の銀行振込みのよう

に、支払者側の記入ミスを回避できる点もメリットとされる。

現金を手渡しするのと異なり、電子決済の場合、確実に相手に支払が実行され

るのか不安があることも、普及の一つの障害となっている。そこで支払いを実

行する際に、引落先の自分の銀行口座に資金が十分あるか確認できる機能、送

金するために入力した電話番号に誤りがなく、送金しようとしている先が意図

した相手で間違いないかを確認できる機能、送金後、相手が実際に受領したこ

とを確認できる機能などを提供することも、重要となっている。

これらの機能は、個々の業者のサービスの中で提供されてきた場合もあるが、

各国で近年、相次いで構築されている 24時間 365日の即時決済に対応した新

たな決済プラットフォームでは、「オーバーレイ・サービス(Overlay Service)」

として、これらの機能を含む統一的な送金サービスや、その他の付加価値サー

ビスを予め用意し、個々の決済サービス業者が決済プラットフォームの運営者

と利用契約を結ぶことで、自らの顧客に提供できるようにしている事例も見ら

れる。

例えばオーストラリアにおいては、オーバーレイ・サービスとして Oskoと呼

ばれる送金サービス(携帯電話番号などでの送金も可能)が既に導入されている

他、図表 2に示すようなサービスの導入が展望されている。

新決済プラットフォームを活用した、店舗などでの決済機能の提供の事例も多

い。この場合、例えばモバイルによる統一的な QRコード決済の仕組みや、カ

ード決済やコンタクトレス決済に対応した統一的読み取り端末を導入すること

により、広範な店舗でのキャッシュレス決済を可能としている国もある。

英国では、即時決済用の新決済プラットフォームである FPSを 2008年に導入

後、2014年に個人間モバイル送金の Paymを導入し、さらに 2015年にこの仕

組みを店舗での決済に利用できる Pay by bank appという仕組みを導入した。

ただ英国の場合、既にデビットカードやクレジットカード決済が普及していた

ため、Pay by bank appは現時点ではそれほど普及していない。

一方、インド、タイ、シンガポール、香港などでは、新決済プラットフォーム

を使って導入されたモバイル決済サービスは、送金のみならず店舗での QRコ

ード決済にも利用できる。シンガポールや香港は、統一 QRコードや統一決済

端末も導入した。

従来、時間とコストを要していたクロスボーダー送金の即時化、低コスト化も

実現しつつある。EUでは域内国間でモバイル即時送金が実現した。インド、

タイ、シンガポールなどでは、上述のようにそれぞれ、国内でモバイル即時決

済サービスが導入されているが、今後、これらのサービスを連携させ、クロス

ボーダーで利用できるようにする構想が進みつつある。

この他、決済と同時に、それが何に対する支払なのかといった情報を、相手に

デジタルで伝達できれば、企業における売掛債権消込の手間が解消し、経理事

務の効率化に寄与する。そこで、多くの国では、ISO20022という国際標準に

よる XML電文を、企業間でやりとりする仕組みを決済インフラの一つとして

導入している。この他、個人間でも、送金時にお礼の言葉や絵文字などのメッ

セージを送付できる機能は、大きな支持を集めている。

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財界観測 2018.11.27

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図表 2 オーバーレイ・サービスの事例

出所: NPP Australia, "New Payments Platform, An Introductory Guide," June 2017などより野村資本市場研究所作成

5. FinTechの活用と参加

これらキャッシュレス決済に関連した付加価値サービスを創造し、的確にユー

ザーに提供するのは、必ずしも、従来の決済サービスの主役であった銀行界に

限らない。

銀行は「預金」を提供できる唯一の業態であり、預金口座を使った決済サービ

スを提供できる立場にある。銀行界は、異なる銀行間同士でも資金決済を円滑

に実行できるよう、小切手交換所や銀行間決済システムも発展させた。

さらに銀行が担う、こうした決済サービスの重要性に鑑み、中央銀行制度や預

金保険制度も発達した。

しかし歴史的に見ても、銀行界は、このような有利な立場にありながらも、決

済サービスを独占してきたわけではない。例えば、最初にクレジットカードを

考案し、店舗でのキャッシュレス決済を可能としたのは、銀行界ではなくノン

ンバンクであった。

電子マネー(プリペイド・カード)を用いた小口決済サービスを普及させたのも、

ノンバンクである。電子マネー発行会社は、預金口座は提供できず、前払いさ

れた資金に対して金利を付与することもできないが、その資金を管理し、利便

性の高い決済サービスを提供している。

インターネットが登場すると、銀行口座やカードを使った電子商取引決済の工

夫を導入した PayPal(1998年創業)のような企業を先駆けとし、様々な FinTech

企業が登場するようになった。

従来の決済プラットフォームは銀行間決済システムとも呼ばれ、銀行界が構築

し、銀行界に閉じたインフラであった。しかし今日、多くの国においては、新

たな決済プラットフォームを構築し、そこに FinTechのアクセスを可能とする

ことで、より利便性の高いサービスを提供することが目指されるようになって

いる。

アクセスの形態としては、オーストラリアで構想されているように、様々な

FinTechが新決済プラットフォームのオーバーレイ・サービスと接続すること

消費者向け 企業向け 政府向け

携帯電話番号などを使った利便

性の高い送金サービス

実店舗決済。店舗に即時入金

自動車購入時の代金支払い、車

両登録、自動車保険の契約、税

納付等の諸手続きを、一括して

即時に実施できるサービス

年金手続や拠出、スイッチング、

年金受領の効率化、お釣り投資

が可能な機能

売掛金消込の自動化などによ

るキャッシュフロー・マネジメン

トの効率化

顧客の購買データの活用

支払リクエスト

詳細な請求情報の送付と送金

情報の受領

レジでのポイントの現金化

年金事務や企業による追加拠

出などの効率化

緊急時や災害時における迅速

な公的支出の実施

急を要する公的手当の給付

公的制度と民間制度の調整を

したうえで医療保険金を支払い

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財界観測 2018.11.27

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で、付加価値サービスを提供する姿がある。同国では、FinTechが様々なオー

バーレイ・サービスの導入実験ができるよう、2018年 10月より、サンドボッ

クス(許可されたプレイヤーが、管理された環境下で、実際のシステムやデータ

にアクセスし、新サービスをテストし改良できる枠組み)も用意された。

以上は、オーバーレイ・サービスのプロバイダーとして FinTechが決済プラッ

トフォームにアクセスする姿であるが、FinTechを決済サービスそのものの提

供者とし、決済プラットフォームに参加させる動きも始まっている。

従来は、ユーザーが決済用の資金を管理するのは銀行口座であり、決済プラッ

トフォームに参加できるのは原則として銀行のみであったが、電子マネー発行

会社などもユーザーから資金を受け入れ、決済サービスを提供している以上、

こうしたノンバンクにも決済プラットフォームへのアクセスを可能とした方が、

ユーザーの利便性は高まる。

従来の決済プラットフォームでは、銀行間決済の決済尻のセトルメントは各銀

行が中央銀行に開設した口座で実行されてきたが、新決済プラットフォームに

FinTechの参加を認める以上、中央銀行に FinTech口座の開設を認めていくこ

とも自然な流れとなる。

そのような姿が既に実現しているのが英国である。同国では、2018年、国際

送金 FinTech(法的ステイタスは、電子マネー発行機関)であるトランスファー

ワイズが、FPSの参加者となったのみならず、英国の中央銀行であるバンク・

オブ・イングランドへの口座開設が認められた最初の FinTechとなった。

2018年 9月にスタートした香港の FPSにおいても、主要な電子マネー発行会

社が、銀行と直接、決済メッセージを交換する立場(clearing participant)となる

ことができる。このため、銀行から電子マネーへの入金、電子マネーから銀行

口座への入金、さらには異なる電子マネー間の資金移動(例えば Alipayから

WeChat Payへ)も、FPSを通じて実行可能となっている。

6. 競争と協調

1) イノベーションのための競争

以上のように、一国の決済インフラにおいて FinTechを活用することが重視さ

れるようになったのは、FinTechが様々な決済サービスや決済関連サービスを

提供するようになっている現実への対応という面がまずある。しかし、そうし

た受け身のスタンスに留まらず、多くの国では、決済サービスを巡る競争を活

発化させることを意図し、FinTechの活用を積極的に推進している。

今日、世界の決済改革の先頭を走るのが英国であるが、同国における一連の改

革の出発点は、2000 年代の初頭、決済サービスが大銀行の寡占下にある結果、

非効率な状況にあり、イノベーションも遅れているとの報告書が提出されたこ

とにある。これを受け、同国の決済改革は、銀行寡占問題に対応する競争政策

の一環として、公正取引庁が主導する形で進展した経緯がある。

英国は、決済サービスを巡る競争が活発化しなければ決済のイノベーションも

実現しないという立場から、大銀行以外の銀行も決済インフラにアクセスしや

すい環境を整備するのと同時に、FinTechの活用も推進してきたのである。

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財界観測 2018.11.27

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ただ決済サービス業者間で競争が活発化する結果、様々な決済サービスが乱立

し、異なるサービスの利用者間で資金のやりとりができなくなれば、決済サー

ビスの利便性は高まらず、規模の経済、ネットワークの経済も発揮されない。

サービス乱立問題への対応としては、前記の統一的なモバイル送金サービスの

事例のように、多数の参加者が共通サービスを導入することが短期的には意義

があるが、統一的サービスのままでは競争が発揮されず、中長期的にはサービ

スの向上が遅れる懸念もある。

2) インターオペラビリティのための協調

そこで、異なる決済サービス間でも相互に資金のやりとりができるよう、イン

ターオペラビリティを確保した上で競争を推進するアプローチが、多くの国で

採用されている。

上記のように、銀行のみならず FinTechも、新たに構築された即時決済インフ

ラを共通のプラットフォームとして用いることで、各プレイヤーは顧客向けに

は異なるインターフェイスのサービスを提供しつつ、相互に資金や情報のやり

とりをすることが可能となる。

この場合、単に物理的な処理装置やネットワークを共通に用いるだけではなく、

参加者間で各種のルールや仕様が共通化されることが重要である。例えば、決

済メッセージのフォーマットについては、多くの国で ISO20022と呼ばれる国

際標準が採用されるようになっている。

英国では、今後の決済サービスのあり方に関し、競争的に提供されるべき部分

と、協調的に提供されるべき部分に分けて整理している。このうち、決済イン

フラのように各参加者が共同で利用するシステムは、協調的に提供されるサー

ビスとして分類している。ただし、システム構築者であるシステム・プロバイ

ダーについても、競争原理が発揮されるよう競争入札によって選定する。そし

てシステム稼働後も、定期的に競争入札により他のプロバイダーに乗り換える

可能性を追求する仕組みとし、競争と協調のバランスを追求している。

米国においては、現在、新たな即時決済インフラを構築中であるが、英国など

他の多くの国のように一つの共通インフラを導入するのではなく、予め定めら

れた要件を満たすインフラであれば良いとし、複数のインフラが併存し、互い

に競争する姿を選択している。重要な要件の一つが、インフラ間のインターオ

ペラビリティが確保されていることある。

シンガポールは、決済サービスのインターオペラビリティに関する規定を、

2018年成立予定の新決済法に盛り込んでいる。すなわち、決済システムや決

済業者に対し、アクセス・レジーム、共通プラットフォーム、共通スタンダー

ドという 3つのタイプの義務を課す。

アクセス・レジームとは、決済システム運営者に対して、サードパーティの業

者によるアクセスを不当に拒否してはならないとするものである。共通プラッ

トフォームの義務とは、主要決済業者(Major payment institution)に対し、共通

プラットフォームへの参加を義務付けることができるというものである。例え

ばある電子ウォレットが広範に利用され、共通プラットフォーム的な存在とな

っているにも関わらず、一部の主要決済業者が同プラットフォームに参加を拒

む結果、ユーザーに不便が生じるような場合に発動される。共通スタンダード

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の採用も、主要決済業者に対する義務で、例えば、標準 QRコードの採用が求

められる。

7. 新たな決済ガバナンス

前記のように、特に決済インフラの分野では、協調的サービス提供が重要とな

るが、そのためにも、インフラ運営の担い手のあり方が課題となる。決済イン

フラを運営し、そのルールや仕様の整備、参加者の選別など、各種の意思決定

を担う主体は、決済ガバナンス機関と呼ばれる。

従来の決済インフラは銀行間決済インフラであったため、運営も銀行界が組織

するガバナンス機関によって担われてきた。しかし FinTechも参加する新たな

決済インフラにおいては、彼らも運営に参加する必要がある。

また従来の銀行界主導の決済ガバナンス機関は、協同組織的な意思決定が一般

的であり、例えば投資余力が不十分なメンバーに配慮してイノベーションが遅

れる、意思決定プロセスが不透明、ユーザーの利害が十分反映されない、とい

った問題が指摘されてきた。

そこで、新たな決済ガバナンス機関の特徴としては、FinTechなど銀行以外の

決済サービス業者の参画、外部取締役の設置、ユーザー(消費者、企業、政府)

の参画、意思決定の透明性などがあげられる。この他、継続的なイノベーショ

ンの実現や、新たな決済サービスの普及・啓蒙などを目的とした、複数の委員

会を設置する例もある。

前記のように米国は、複数の決済インフラの併存を認めるが、これらインフラ

全体の運営を管轄する主体として、2018年 11月に新たな決済ガバナンス機関

(U.S. Faster Payments Council)を設立した。

8. カードシステムに対する政策

以上の改革は、主として既存の銀行によって担われてきた送金・決済サービス

を、FinTechが台頭する時代にふさわしい姿に変えていく動きと言える。この

結果、既存の送金・決済サービスの利便性が高まり、キャッシュレス化の推進

につながることが期待されるわけである。

決済サービスとしては、こうした銀行が担ってきたサービス以外に、カード会

社が担ってきたサービスもある。カード決済も、最終的には銀行口座によって

決済される場合が多く、またカードのイッシュアー(発行者)やアクワイアラー

(加盟店管理者)も銀行によって担われている場合が多いが、ビザやマスターカ

ードなど国際ブランドと呼ばれる機関は、イッシュアーとアクワイアラーを結

ぶ独自の国際的ネットワークを構築し、銀行間決済インフラとは異なる決済イ

ンフラにより、キャッシュレス・サービスを提供している。

従ってキャッシュレス化が進展する上では、カードシステム(国際ブランドのネ

ットワークによる決済サービス)の利便性が向上することも重要である。

カードシステムを巡る主要な政策的課題としては、不正使用など消費者保護政

策上の問題と、国際ブランドの優越的地位の濫用など競争政策上の問題が指摘

できる。

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財界観測 2018.11.27

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前者については、不正使用が横行すればカード利用も進展しないため、カード

会社が自ら不正使用対策を主体的に実施してきたが、カードが生活に欠かせな

いサービスとして普及している現状を踏まえ、米国のように、国が政策的介入

を実施する事例もある。

すなわち欧州では、1990年代にユーロペイ、マスターカード、ビザという大

手カードブランドが主導し、IC型クレジットカードの統一規格(3社の頭文字を

とり EMV と呼ばれる。なおユーロペイは後にマスターカードと合併)を導入し、

従来の磁気カードよりもセキュリティが強固なカード決済が普及したが、米国

では対応が遅れていた。そこで 2014年にオバマ大統領が大統領令を発し、

EMVに準拠した ICカードの発行を義務化した。

この他、カード利用を巡る各種のトラブルへの対応としては、消費者信用に関

する法律や電子商取引に関する法律のなかで、必要な規定を整備している国が

多い。

一方、後者、すなわち競争政策上の問題とは、国際ブランドが課す取り決めや

暗黙の影響力により、加盟店手数料が割高となっている他、加盟店におけるカ

ードの取扱いの自由度が大きく制限されているといった不満が表明されてきた

ことを指す。加盟店としては、広く普及している有力なカードブランドの受入

れを止めると売上が大きく減少しかねないため、不満があっても加盟店契約を

続けざるをえない。逆に言えば、国際ブランドはそのような立場を利用し、不

公正な取引を強いているのではないか、という議論である。

特に加盟店が支払う手数料(マーチャント・フィー)のうち、カード発行者に支

払われる手数料(インターチェンジ・フィー)については、欧米で競争制限的と

して訴訟が繰り返されてきた経緯がある。また個別の訴訟では時間がかかる他、

関係者にとって明確な行動基準が示されにくいこともあり、近年の傾向として

は、法規制によって手数料の上限を定める事例が増えている。

例えば米国では、2010年に成立したドッド・フランク法により、デビットカ

ードのインターチェンジ・フィーに対する上限規制が導入された。また EUに

おいても、2015年にデビットカード及びクレジットカードのインターチェン

ジ・フィーの上限を定める法律が導入された。

なお EUは、2018年 1月に施行された改正決済サービス指令(Payment Service

Directive 2、PSD2)において、カード決済に限らず決済サービス全般に関する

手数料を、コストに見合った適正な水準とすることを義務付けている。

英国では、これら EUの法制を適用する他、2018年 7月より、決済サービスの

監督当局である Payment Systems Regulatorが、カード・アクワイアリング・

サービスの市場に関する調査に着手している。特に商店がアクワイアラーに支

払う手数料が透明性を欠いていること、商店にとってアクワイアラー間の比較

や乗り換えが困難であること、カードブランドがアクワイアラーに課す手数料

(スキーム・フィー)が上昇していることなどが、論点となっている。

9. 新たな決済法制

以上で紹介してきた改革や政策を実現する上で、多くの国は、既存の決済関連

の法制度の見直しを行っている。

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財界観測 2018.11.27

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1) 決済サービス業に関する規制の見直し

見直しが必要とされた一つの分野は、決済サービス業に関する規制である。従

来は、銀行が送金や決済において重要な役割を果たしていたが、電子マネーや

FinTechの登場により、決済サービス業者が多様化してきた。

そこで、異なるタイプの決済サービス業者を利用しても利用者保護の環境が同

様に保たれることや、決済サービス業者間で公正な競争環境が確保されるよう

な配慮が必要となってきた。

この場合、どのようなタイプの業者であれ、同じ機能については原則として同

じ規制の枠組みを課すというファンクショナル・レギュレーションの考え方、

そして個々の規制の厳格さについては当該業者や業務がもたらすリスクの度合

いに応じたものとするというプロポーショナルなレギュレーションという考え

方が、採用される事例が見られる。

EUの場合、銀行については銀行指令で規制し、電子マネーの登場を受けて

2000年に電子マネー指令を制定したが、送金業者やカードのイッシュアー、

アクワイアラーなど、他の様々な決済関連業者については域内で規制はばらば

らであった。

そこで EU は 2007 年に決済サービス指令を制定し、銀行、電子マネー発行者、

その決済関連業者を、「決済サービス・プロバイダー(Payment Service

Provider)」と一括りに位置づけた。そして情報の開示や手数料のあり方、無権

限取引が生じた場合の責任分担など、利用者保護に係る分野に関しては統一的

な規定を設けた。一方、自己資本規制や顧客資金の保全などに関する規定は、

各業者がもたらすリスクの違いを反映した柔軟なものとした。

2) 決済システムに関する規制の見直し

決済システムに関する規制も整備されている。大口の資金決済システムなど、

システム上重要な決済システムについては、多くの国で既に規制・監督の枠組

みが整備されてきたが、小口決済システム、ATMネットワーク、カードシステ

ムなどについては、業界の自主的な規制に依存し、明確な公的規制・監督の枠

組みが無かった国も多い。

しかし決済サービスを巡る公正競争やインターオペラビリティ実現のための政

策などを実行するためには、決済システムに対する公的関与が必要となる。

EUの PSD2においては、決済システムに対して、決済サービス・プロバイダ

ーのアクセスを不当に拒否してはならないとしている。

英国の場合、2013年金融サービス(銀行改革)法において、「指定決済システ

ム」、すなわち一定の要件を満たす決済システムを、財務省が他の関係当局か

らの情報を踏まえて指定(designate)し、同法によって設立された Payment

Systems Regulatorの監督下に置き、必要な規制を課す枠組みを導入した。銀

行間決済ネットワーク、ATMネットワーク、ビザやマスターカードのネットワ

ークが同指定の対象とされ、アメリカンエクスプレスや PayPalは相対的に取

引量が少ないため、指定外とされている。

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財界観測 2018.11.27

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シンガポールの新決済法案(Payment Services Bill)も、インターオペラビリティ

の節で説明したように、決済サービス業に関する規定と、決済システムに関す

る規定の 2つを大きな柱としている。

10. 改革へのイニシアティブ

1) 公的介入の必要性とあり方

以上、諸外国で進展する決済改革を概観したが、これら改革は民間の自主的な

取組みではなく、政府の強いイニシアティブを背景に実現している。

既述の通り、決済サービスは規模の経済性やネットワークの経済性を伴うため、

民間の経済合理性に任せては最適な供給が実現しない。互換性の無いサービス

が乱立する弊害は、その典型である。

また多くの顧客を獲得した既存業者が競争上優位となり、寡占的な手数料の設

定、新規参入の阻害、イノベーションの停滞といった問題も生じうる。そこで

競争政策の観点からの公的介入も必要となる。

決済の担い手が銀行であった時代には、もともと銀行が当局の厳格な監督下に

置かれていることもあり、銀行界による決済ガバナンス機関に委ねる形でも、

公益に配慮した決済サービスが提供可能だった面もある。しかしテクノロジー

が急速に発展し、FinTechなど新たな決済サービス業者も登場するなかで、既

存の枠組みを大きく見直すためにも、公的介入が必要になっているのである。

もっとも、どのような政策目標に重点を置いて決済改革を推進するかは、国に

よって特徴がある。例えば英国の場合、特に大銀行による市場寡占の弊害が問

題視され、競争政策当局が主導する形で決済改革が進展した。EUの場合は、

域内の経済統合の推進が最優先課題である。インドなど途上国においては、金

融インクルージョン、すなわち銀行口座を持たない人にも決済サービスへのア

クセスを提供することや、現金利用に伴う脱税などの不正の排除が重要な目標

となっている。

シンガポールの場合は、デジタル化によるスマート国家を目指す一環として決

済改革が重視されたが、中国におけるスマホ決済の発展も改革への刺激となっ

た。シンガポールでは既にカード決済や電子マネーは発展していたが、互換性

の無い多数のサービスが乱立している点で中国に劣後していると認識され、イ

ンターオペラビリティを重視した改革が進んでいるのである。

米国の場合、決済改革が急速に進む英国よりも劣後しているという危機感、さ

らには、FinTechによる独自のモバイル送金サービスが各種登場し、米国の決

済サービスの分断が生じかねないという懸念を、中央銀行にあたる Federal

Reserve Systemが抱くようになった。そこで、2012年に Federal Reserve

Systemが改革のイニシアティブを取ることを宣言した。

米国でも、従来は銀行界が決済サービスの運営を主導し、Federal Reserve

Systemは間接的に関与するのみであったが、この 2012年の宣言では、

Federal Reserve Systemが決済サービスのエンド・ユーザーに焦点を当てた政

策運営に転換することを明確にした。

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財界観測 2018.11.27

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2) 当局のイニシアティブと改革プロセス

実際の改革のプロセスでは、当局がイニシアティブを発揮し、改革のビジョン

や戦略を提示した上で、銀行や FinTechなど、各種の決済サービス業者やユー

ザーが参画し、その具体化を図っていく姿が採用される事例が目立つ。すなわ

ち、かつての銀行主導型の意思決定から、これら多様なステークホルダーの意

見を踏まえつつ、具体的な提案をとりまとめて公表し、意見徴集のプロセスを

経て改革を実行していくという、透明性を重視した形で進められている。

例えば英国の場合、FPSや Paym導入の時点では、まだ銀行界の団体が決済イ

ンフラのあり方に大きな影響力をもっていたため、政府が同団体へ新サービス

導入を強く要求し、同団体が主導して改革が実現するという姿であった。

しかし、決済専門の新行政当局として Payment Systems Regulatorが設置され、

同団体も解散されてからは、新たな改革プロセスが始動した。すなわち 2015

年に Payment Systems Regulatorの下にペイメント・ストラテジー・フォーラ

ムが設置され、同フォーラムが 2016年に「21世紀のペイメント・ストラテジ

ー」を発表した。

同フォーラムを通じ、歴史上初めて、英国の決済戦略が全てのステークホルダ

ーの参加により策定されるようになったとされる。同ストラテジー策定の議論

の参加者は 500 人を超えた。英国で現在構築中の新決済インフラのデザインは、

こうして決定されたのである。また新決済インフラの運営主体として、新たな

決済ガバナンス機関も設立された。

米国でも、中央銀行が示した戦略提案に基づき、2015年に Faster Payments

タスクフォースが組成された。同タスクフォースには、決済システムに関する

知見があり、会合に相当時間出席できるといった要件を満たす数百人がメンバ

ーとして参加し、2017年に改革案を取りまとめた。米国ではこれに基づき新

決済ガバナンス機関が設立され、新決済システムの構築が進行している。

図表 3に示す通り、オーストラリア、カナダ、シンガポールなどでも、当局が

イニシアティブを発揮し、決済改革を推進している。

図表 3 諸外国における決済改革推進体制

改革推進主体 改革ビジョンや戦略 決済ガバナンス機関

英国 Payment Systems

Regulator

A Payments Strategy for the

21st Century (2016)

New Payment System

Operator (2017)

米国 Federal Reserve System

Strategies for Improving the

U.S. Payment System (2015)

Faster Payments Task Force:

Final Report (2017)

U.S. Faster Payments

Council (2018)

オーストラリア Payments System Board

(Australia Reserve Bank)

Strategic Review of Innovation

in the Payments System

(2012)

Australian Payments

Council (2014)

カナダ Department of Finance Moving Canada into the Digital

Age (2011) Payments Canada (2016)

シンガポール Monetary Authority of

Singapore

Singapore Payments Roadmap

(2016) Payments Council (2017)

注: 括弧内は、改革ビジョンや戦略の発表年、及び決済ガバナンス機関の設立年

出所: 野村資本市場研究所

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財界観測 2018.11.27

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Ⅲ. 諸外国における現金利用抑制策

1. 現金利用抑制の意義

現金利用の抑制の必要性は、不正防止という観点から国際的にも強調されてき

た。例えば、1989年のアルシュ・サミットを受けて設立された「マネーロン

ダリングに関する金融活動作業部会(Financial Action Task Force: FATF)」の勧

告でも、各国が現金の利用に代わる手段、すなわち、小切手、カード、銀行振

込など、記録の残る形での資金管理手法の導入を推進していくことが求められ

ている。

同勧告にあるように、現金利用を抑制する上では現金を代替しうる決済手段の

普及が必要であり、Ⅱ章で示した決済改革の推進が不可欠である。しかし現金

の利用を便利なままにしていては、決済改革を進めても代替的な決済手段は普

及しにくい。そこで、現金の利便性を見直すことも有効となる。諸外国では、

以下のような政策が導入されている。

2. 高額紙幣の廃止

FATFは、2005年に発表したベストプラクティスにおいて、高額紙幣が存在す

る結果、現金による不正取引が容易になっていると指摘し、各国は高額紙幣の

廃止を考慮すべきと提言している。

図表 4に示すように、近年、高額紙幣の廃止を実施した国は多い。スウェーデ

ンでキャッシュレス化が進んでいるのは、Swishなど統一的なモバイル決済の

導入だけではなく、2013 年の 1000 クローナ紙幣廃止の効果も大きいとされる。

インドが 2016年に実行した 1000ルピーと 500ルピー紙幣の廃止も、キャッ

シュレス決済の急増につながった。インドでは、この 2紙幣が流通紙幣残高(金

額ベース)の 86%を占めていたが、発表からわずか 4時間後に利用が停止され

た。

図表 4 諸外国における高額紙幣廃止事例

国名 内容

スウェーデン 2013年末に 1000クローナ(12,500円)紙幣廃止

シンガポール 2014年 10月、1万シンガポールドル紙幣(82万円)の発行中止

インド 2016年 11月、1000ルピー(1,570円)紙幣と 500ルピー(785円)紙幣を廃止

EU 2016年 5月、2018年末を目処に 500ユーロ紙幣(64,500円)の発行停止を発表

カナダ 2000年 5月、1000カナダドル(85,440円)紙幣の発行中止

注: 1.スウェーデンは、その後、新デザインの 1000クローナ紙幣を発行しているが、発行量は大幅に削減された。

2. 円換算は、2018年 11月 20日のレートを用いた。

出所: 野村資本市場研究所

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財界観測 2018.11.27

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3. 現金による高額取引の禁止

高額紙幣を廃止しても、他の額面を使うことで不正取引が続けられる可能性が

ある。そこで、経済取引において現金を利用する場合、上限額を設定する動き

がある。

特に欧州諸国において、現金による高額取引を禁止している例は多く、例えば

ベルギーは、1993年に施行されたアンチ・マネーロンダリング法において、

現金を用いた財の購入上限を 1万 5,000ユーロとした。その後、この上限は引

き下げられ、2014年 1月以降は 3,000ユーロとなり、不動産の購入について

は現金での支払いが禁止された。フランスの場合、2010年に現金支払い上限

を 3,000ユーロとしたが、テロ事件を受け、2015年には上限を 1,000ユーロに

引き下げた。

最近では、インドが Finance Act 2017において、2ラーク(20万ルピー、約 31

万円)超を現金で受領することを禁じた他、オーストラリアが 2019 年 7 月より、

1万豪ドル(約 82万円)以上の現金支払いを禁止するとしている。

4. 小額硬貨の廃止

小額硬貨の廃止は、取扱いの手間の削減の他、製造コストが額面価値を上回る、

インフレにより価値が長期的に低下した、といった理由で、過去から多くの国

で実施されている。

スウェーデンとノルウェーでは、オーレと呼ばれる 1クローナ未満の小額硬貨

があったが、1970年代に 1オーレ、2オーレ硬貨が廃止され、その後、5オー

レ、10 オーレ、50 オーレ硬貨も廃止され、クローナ未満の硬貨は全廃された。

この他、ニュージーランド、スイス、カナダの他、オランダ、ベルギーなどユ

ーロ圏のいくつかの国が小額硬貨を廃止している。また 2016年、韓国中央銀

行は、2020年までにコインレス社会を実現することを掲げ、お釣りをコイン

ではなく電子的に支払うなどの工夫により、硬貨の利用削減を目指している。

5. その他の政策

米国の場合、高額紙幣の廃止やペニー(1セント硬貨)廃止の議論が長年活発に行

われているが、反対論も強く実現していない。ただ米国においては、現金によ

る高額取引を監視する体制が導入されている。

すなわち、現金で 1万ドル以上の支払を受けた者は、内国歳入庁と FinCEN

(Financial Crimes Enforcement Networkの略。米国財務省に設置されたマネー

ロンダリング、テロリストファイナンス、その他金融犯罪防止・摘発のための

機関)に対し、支払者、受領金額、購入品目などの情報を Form 8300という様

式によりファイルする必要がある。

また韓国やスウェーデンでは、商店で現金払いをする場合、専用のレジを使用

する必要がある。同レジの取引情報は、韓国の場合、自動的に税当局に共有さ

れ、スウェーデンの場合は税当局がアクセスできる。

このように、現金を利用しても課税回避が困難な仕組みがあることは、現金利

用の抑制に一定の効果を持とう。

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この他、シンガポールの公共交通は、2020年までに完全キャッシュレス化の

実現を目指しており、まず 2017年 9月 1日より、主要な地下鉄の駅で現金に

よる EZ-Linkカード(交通系電子マネー)へのチャージができなくなった。その

後、他の駅においても段階的に同様の措置が適用されている。

またインドでは、先述の高額紙幣の廃止や現金による高額取引の禁止の他、消

費者のデジタル決済に対する宝くじ付与や、現金決済が不利となるような税制

上の規定も導入している。後者の例としては、Finance Act 2017において、現

金による 1万ルピー(約 15,700円)超の支出を経費として損金算入できないとい

う規定を導入した。従来は、2万ルピー超の経常的経費について同様の規定が

あったが、今回は資産の取得にも適用され、上限金額も引き下げられた。この

他、2017年 4月、モディ首相は 75都市をモデル都市とし、段階的に現金取引

をゼロにするプロジェクトをスタートさせた。

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Ⅳ. わが国の課題

1. 実行すべき政策の多くが未実現

以上、キャッシュレス化を目標として掲げるかどうかに関わらず、世界の多く

の国は、近年、決済改革と現金利用抑制策を活発化させており、結果として、

キャッシュレス化が進む見込みであることを示した。

これに対してわが国の場合、キャッシュレス化を目標として掲げながらも、決

済改革として紹介した 9つの項目のうち、以下で示すようにごく一部しか実現

しておらず、また現金利用抑制策は議論にもなっていない。

まず「統一的なモバイル送金サービスの導入」については、2015年 12月 2日

に開催された金融審議会の「決済業務等の高度化に関するワーキング・グルー

プ」において、全国銀行協会より、わが国においても「欧州の例に見られるよ

うな、携帯電話番号による送金など、外部性を有するサービスや銀行共通で発

生する事務について、共通基盤を活用・構築するとの発想が重要であると考え

られる」、「複数の金融機関が参加する、携帯電話番号を利用した送金サービ

スの提供について検討」するとの報告がなされた。そして 2015年 12月 22日

に発表された同ワーキング・グループの報告書においても、同サービス等の検

討に対し「IT関係者と連携・協働しながら、利用者利便等の要請に対して高い

レベルで応じていくことを期待したい」と明記された。

ところが現状、こうした「共通基盤を活用」したサービスが導入される展開と

はなっていない。2018年 6月に開催された金融庁の決済高度化官民推進会議

における全国銀行協会発表資料では、本件については、一部の銀行が実施して

いる実証実験の事例がいくつかあることを紹介しつつ、「継続対応中」とされ

ているのみである。

既述の通り、中国やケニアのように、IT企業主導のサービスがデファクト・ス

タンダードと言えるほど普及した国を除けば、多くの国において、銀行界が統

一的モバイル送金サービスの普及に大きな役割を果たしたことを考えると、わ

が国において 2年前に示された構想が実現していないのは、キャッシュレス化

推進という観点からは、マイナスと言えよう。

各国において新たな決済ガバナンス機関が設置され、透明な意思決定プロセス

が重視されるようになっていることを踏まえても、少なくとも、どのような検

討を踏まえて現状のような対応となっているのか、国民に対してわかりやすい

説明があっても良いと思われる。

現状、一部の銀行により同種のサービスが導入されつつあるのは確かだが、こ

れは 2015年時点で表明されていた「共通基盤を活用・構築する」という姿と

は本質的に異なるからである。

「小口決済の常時即時化と中央銀行の対応」については、2018年 10月より

「モアタイムシステム」が稼働したことで、全銀システムの「常時」稼働につ

いては実現した。

また「即時化」については、わが国は既に世界に先行して実現していた。ただ

し、セトルメントの部分については、近年、小口決済に RTGS方式を採用する

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国が増えているのに対し、わが国においてはそのような構想は表面化していな

い。また RTGS方式ではなく DNS方式を採用している英国でも、中央銀行に

おいて 1日 3回のセトルメントを行うなど、通常の小口決済以上にリスクへの

対応を強化させている。わが国の即時決済が現状の仕組みのままで良いか、米

国における検討状況も睨みつつ、検討していく必要があろう。

決済インフラによる「付加価値サービス」の提供としては、わが国の全銀シス

テムにおいても、2018年 12月より「全銀 EDIシステム(愛称 ZEDI)」が稼働し、

XML電文を用いて、企業が振込先に豊富な情報を送付可能となる予定である。

従来は 20桁までの情報しか送付できなかったため、新サービスにより経理業

務の効率化が期待されている。

一方、諸外国で既に導入された、ないしは導入が構想されているような、各種

の「オーバーレイ・サービス」がわが国で導入される可能性は見込めない。わ

が国では新決済インフラを構築する計画は無く、諸外国のように、FinTechが

新決済プラットフォームと接続することでユーザーにサービスを提供するとい

う構図が描けないからである。

「FinTechの活用と参加」については、わが国の場合、「為替業務」が銀行の

固有業務になっていることから、銀行以外の業者による送金は 1件 100万円ま

でに制約されるなど、決済分野の FinTechは、制度上、銀行と対等に決済・送

金機能を発揮する存在として位置づけられていない。従って、諸外国における

ように決済インフラに FinTechの参加を認めるような発想も生じない。

「競争と協調」については、まず上記の制度的制約から、銀行と FinTechが送

金サービスにおいて対等に競争することを通じて、決済サービスの向上を期待

しようという構図は不完全にしか実現しない。一方、いくつかの銀行グループ、

及び多数の FinTechが、それぞれ独自の決済サービスを構想・導入しつつある

が、これらの間でインターオペラビリティを要請するような制度的な枠組みは

無い。

2018年 7月に、経済産業省主導で「キャッシュレス推進協議会」が発足し、

QRコードの統一に向けた検討が進展しているが、あくまで関係者の自主的な

取組みに留まっている。本来は、統一 QRコードというインターフェイスの 1

形態に焦点を当てるのではなく、決済システムや決済サービス全体のインター

オペラビリティを確保するための制度的枠組み作りがまず必要と考えられる。

「決済ガバナンス」については、諸外国においては、従来の銀行主導の決済シ

ステムのあり方を見直した結果、新たな枠組みが生まれているが、わが国の場

合、為替業務は銀行の固有業務という先述の規定から出発しているため、銀行

主導の枠組みが維持されたままである。

「カードシステムに対する政策」については、諸外国と異なり、わが国では、

公正競争の観点から、カード手数料やカード関連のルールに対して訴訟や競争

政策上の介入が活発化するような動きは、従来、ほとんど生じてこなかった。

EUなどでは競争政策当局の法的権限に基づく公式の調査・分析の手続きを踏

まえた上で、インターチェンジ・フィーに対する上限規制が導入されたが、わ

が国では最近になり、法的な裏付けも不明確なまま、また何らかの調査・分析

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の実施や政策提案・意見徴集のプロセスも経ないまま、手数料引き下げが急遽、

要請される事態が生じている。

「新たな決済法制」は、わが国でも、2017年 11月より、金融審議会の「金融

制度スタディ・グループ」において議論が本格化している。ただし何らかの法

律改正が実現するとしても、まだ数年を要する見込みである。

2. 問われる改革の司令塔

このように、諸外国で進展している決済改革の多くがわが国で実現していない

のは、結局の所、「改革へのイニシアティブ」という点に大きな問題があるた

めと考えられる。

わが国では経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を発表するなど、キャ

ッシュレス化推進を主導している。また金融庁が、2014年頃より「決済業務

等の高度化」という観点から決済改革の検討を続けており、先述のモアタイム

システムや ZEDIの導入の実現にもつながっている。

しかしこのことは、わが国において、キャッシュレス化や決済改革を複数の当

局が担っており、統一的なイニシアティブが発揮されていないことを示してい

る。本稿で示した通り、キャッシュレス化とは、現金を用いず「いつでも、ど

こでも、誰とでも」資金のやりとりをできることを意味するため、「統一的な

モバイル送金」の導入が改革パッケージの不可欠な項目となるが、「キャッシ

ュレス・ビジョン」では、そうしたサービスの「検討は有効」と指摘するにと

どまり、施策の中心は実店舗決済の分野となっている。

この背景には、同ビジョンの事務局である経済産業省が、割賦販売法を管轄し

クレジットカード関連の政策を担う一方、送金分野は、銀行法と資金決済法を

管轄する金融庁の領域となっていることがある。従って、「キャッシュレス・

ビジョン」は、決済インフラや決済法制に関する分析や提言も欠いている。一

方、金融庁における「決済業務等の高度化」の議論は、わが国の決済サービス

で重要な役割を果たしているクレジットカード業務にほとんど言及しないもの

となっている。

また諸外国の場合、中央銀行が銀行間決済という領域を超え、エンド・ユーザ

ーを視野に決済改革のイニシアティブを取る事例も多いが、日本銀行にはその

ような動きは見られない。

「いつでも、どこでも、誰とでも」資金をやりとりできるようにするのが、キ

ャッシュレス化推進に不可欠であるにも関わらず、わが国では送金と決済を区

別し、またその担い手となる業態を区別し、異なる当局が責任を分け合い、自

らの担当領域にのみ焦点を当てた政策運営を行っているわけである。

結果として、わが国全体としてキャッシュレス化を進める上で必要な改革パッ

ケージが網羅的・整合的に遂行されず、またイノベーションの発展によって登

場する新たなサービスに、どの法律や当局が対応すべきか不明確な状況も生じ

ている。利用者にとっては、一見、同じキャッシュレス決済でも、どのサービ

スを用いるかで消費者保護のレベルが全く異なる状況も生まれている。

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これは個々の当局の姿勢に問題があるというよりも、現行の決済関連の法制度

の枠組みに起因しているため、省庁の枠組みを超えたイニシアティブが発揮さ

れる必要があろう。

キャッシュレス決済比率を何年後に何パーセントにするといった数値目標を設

定したり、キャッシュレス決済にポイント還元などのインセンティブを付与し

たりするのも良いが、そうした政策は、諸外国で進行している真のキャッシュ

レス化政策に比べれば、本質的なものとは言えないだろう。かえってわが国が、

世界の決済改革の潮流からも、現金利用抑制を目指す潮流からも、かけ離れた

位置にあることが浮き彫りになるばかりである。

何を実行すべきかについては、諸外国の先行事例で既に明確となっている。図

表 5に示す 10項目に真摯に取組み、改革を実現できるのか否か、これがわが

国のキャッシュレス化の行方を左右することとなろう。

図表 5 キャッシュレス化推進のための 10項目

1. 統一的なモバイル送金サ

ービスの導入主要な銀行が参加する無料サービスが基本。携帯電話番号等で送金可

2. 小口決済の常時即時化と

中央銀行の対応新決済インフラ導入。中央銀行口座でのセトルメントの工夫

3. 付加価値サービスの提供 新決済インフラのオーバーレイ・サービスとして位置づけ

4. FinTechの活用と参加 新決済インフラや中央銀行口座に FinTechもアクセス

5. 競争と協調 銀行と FinTechの公正な競争。インターオペラビリティの実現

6. 新たな決済ガバナンス 新決済インフラの運営主体に FinTechやユーザー代表も参加

7. カードシステムに対する

政策セキュリティなど消費者保護上の施策や手数料規制

8. 新たな決済法制 各種決済業者への横断的で柔軟な法制と決済システムの規制

9. 改革へのイニシアティブ 当局が主導し、FinTechやユーザーなど様々なステークホルダーを動員

10. 現金利用抑制策 高額紙幣廃止、現金での高額取引の禁止や報告義務、小額硬貨廃止

出所: 野村資本市場研究所

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びその関連会社と子会社を指し、また、日本の野村證券(「NSC」)、英国のノムラ・インターナショナル plc (「NIplc」)、米国のノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク (「NSI」)、インスティネット LLC (「ILLC」)、香港の野村国際(香港) (「NIHK」)、韓国のノムラ・フィナンシャル・インベストメント(韓国) (「NFIK」) (韓国金融投資協会(「KOFIA」)に登録しているアナリストの情報は KOFIAのイントラネット http://dis.kofia.or.kr でご覧いただけます)、シンガポー

ルのノムラ・シンガポール・リミテッド (「NSL」) (登録番号 197201440E、 シンガポール金融監督局に監督下にあります)、オーストラリアのノムラ・オーストラリア・リミテッド (「NAL」) (ABN 48 003 032 513) (オーストラリアのライセンス番号 246412、オーストラリア証券投資委員会(「ASIC」)の監督下にあります)、インドネシアのP.T.ノムラ・セキュリタス・インドネシア (「PTNSI」)、マレーシアのノムラ・セキュリティーズ・マレーシアSdn. Bhd. (「NSM」)、台湾のNIHK 台北

支店 (「NITB」)、インドのノムラ・フィナンシャル・アドバイザリー・アンド・セキュリティーズ (インディア) プライベート・リミテッド (「NFASL」)、 (登録住所: Ceejay House, Level 11, Plot F, Shivsagar Estate, Dr. Annie Besant Road, Worli, Mumbai- 400 018, India;電話: +91 22 4037 4037、ファックス: +91 22 4037 4111; CIN 番号:U74140MH2007PTC169116、SEBI登録番号(株式ブローカレッジ): BSE INB011299030、NSE INB231299034、 INF231299034、 INE

231299034, MCX: INE261299034、SEBI登録番号(マーチャントバンキング):INM000011419、SEBI登録番号(リサーチ):INH000001014)、スペインの NIplc マドリッド支店 (「NIplc, Madrid」)が含まれます。リサーチ・レポートの表紙のアナリスト名の横に記載された「CNS タイランド」の記載は、タイのキャピタル・ノムラ・セキュリティーズ・パブリック・カンパニー・リミテッド (「CNS」)に雇用された当該アナリストが、CNS及び NSL間のアグリーメントに基づき、NSLにリ

サーチ・アシスタントのサービスを行っていることを示しています。リサーチ・レポートの表紙の従業員氏名の横に記載された「NSFSPL」は、ノムラ・ストラクチャード・ファイナンス・サービシーズ・プライベート・リミテッドに雇用された当該従業員が、インタ-カンパニー・アグリーメントに基づき、特定の野村の関連会社のサポ―トを行っていることを示しています。リサーチ・レポートの表紙のアナリスト名の横に記載された「BDO-NS」(「BDO ノムラ・セキュリティー

ズ・インク」を表します)の記載は、BDOユニバンク・インク(「BDOユニバンク」)に雇用されBDO-NSに配属された当該アナリストが、BDOユニバンク、NSL及び BDO-NS間のアグリーメントに基づき、NSLにリサーチ・アシスタントのサービスを行っていることを示しています。BDO-NSはBDOユニバンクと野村グループのジョイント・ベンチャーで、フィリピンの証券ディーラーです。

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あります。野村グループは野村グループのポータル・サイト上へのリサーチ商品の掲載および/あるいはお客様への直接的な配布を含め、様々な方法によってリサーチ商品を発表しております。調査部門が個々のお客様の要望に応じて提供する商品およびサービスはお客様の属性によって異なる場合があります。

当レポートに記載されている数値は過去のパフォーマンスあるいは過去のパフォーマンスに基づくシミュレーションに言及したものである場合があり、将来のパフォーマンスを示唆するものとして信頼できるものではありません。情報に将来のパフォーマンスに関する示唆が含まれている場合、係る予想は将来のパフォーマンスを示唆するものとして必ずしも信頼できるものではありません。また、シミュレーションはモデルと想定の簡略化に基づいて行われており、

想定が過度に簡略化され、将来のリターン分布を反映していない場合があります。本資料で説明のために作成・発行された数値、投資ストラテジー、インデックスは、EU金融ベンチマーク規制が定義する"ベンチマーク"としての"使用"を意図したものではありません。

特定の証券は、その価値または価格、あるいはそこから得られる収益に悪影響を及ぼし得る為替相場変動の影響を受ける場合があります。

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金融市場関連のリサーチについて:アナリストによるトレード推奨については、以下の 2通りに分類されます;戦術的(tactical)トレード推奨は、向こう 3 ヶ月程度の見通しに基づいています;戦略的(strategic)トレード推奨は、向こう6ヶ月から 12ヶ月の見通しに基づいています。これら推奨トレードについては、経済・市場環境の変化に応じて、適宜見直しの対象となります。また、ストップ・ロスが明記されたトレードについては、その水準を超えた時点で推奨の対

象から自動的に外れます。トレード推奨に明記される金利水準や証券のプライスについては、リサーチ・レポートの発行に際してアナリストから提出された時点の、ブルームバーグ、ロイター、野村のいずれかによる気配値であり、その時点で、実際に取引が可能な水準であるとは限りません。 本資料に記載された証券は米国の 1933 年証券法に基づく登録が行われていない場合があります。係る場合、1933 年証券法に基づく登録が行われる、

あるいは当該登録義務が免除されていない限り、米国内で、または米国人を対象とする購入申込みあるいは売却はできません。準拠法が他の方法を認めていない限り、いかなる取引もお客様の地域にある野村の関連会社を通じて行う必要があります。 本資料は、NIplcにより英国および欧州経済領域内において投資リサーチとして配布することを認められたものです。NIplcは、英国のプルーデンス規制機構によって認可され、英国の金融行為監督機構とプルーデンス規制機構の規制を受けています。NIplc はロンドン証券取引所会員です。本資料は、英国の適用される規則の意味する範囲での個人的な推奨を成すものではなく、あるいは個々の投資家の特定の投資目的、財務状況、ニーズを勘案したもの

ではありません。本資料は、英国の適用される規則の目的のために「適格カウンターパーティ」あるいは「専門的顧客」である投資家のみを対象にしたもので、したがって、当該目的のために「個人顧客」である者への再配布は認められておりません。本資料は、香港証券先物委員会の監督下にある NIHKによって、香港での配布が認められたものです。本資料は、オーストラリアでASICの監督下にあるNALによってオーストラリアでの配布が認められたもの

です。また、本資料はNSMによってマレーシアでの配布が認められています。シンガポールにおいては、本資料はNSLにより配布されました。NSLは、証券先物法(第 289 条)で定義されるところの認定投資家、専門的投資家もしくは機関投資家ではない者に配布する場合、海外関連会社によって発行された証券、先物および為替に関わる本資料の内容について、法律上の責任を負います。シンガポールにて本資料の配布を受けたお客様は本資料から発

生した、もしくは関連する事柄につきましては NSLにお問い合わせください。本資料は米国においては 1933年証券法のレギュレーション Sの条項で禁止されていない限り、米国登録ブローカー・ディーラーである NSIにより配布されます。NSIは 1934年証券取引所法規則 15a-6に従い、その内容に対する責任を負っております。本資料を作成した会社は、野村グループ内の関連会社が、顧客が入手可能な複製を作成することを許可しています。 野村サウジアラビア、NIplc、あるいは他の野村グループ関連会社はサウジアラビア王国(「サウジアラビア」)での(資本市場庁が定めるところの、)「オーソライズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者への本資料の配布、アラブ首長国連邦(「UAE」)におい

ては、(ドバイ金融サービス機構が定めるところの、)「専門的顧客」以外の者への配布、また、カタール国の(カタール金融センター規制機構が定めるところの、)「マーケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」以外の者への配布を認めておりません。サウジアラビアおいては、「オーソライズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者、UAEの「専門的顧客」以外の者、あるいはカタールの「マー

ケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」以外の者を対象に本資料ならびにそのいかなる複製の作成、配信、配布を行うことは直接・間接を問わず、係る権限を持つ者以外が行うことはできません。本資料を受け取ることは、サウジアラビアに居住しないか、または「オーソライズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」であることを意味し、UAEにおいては「専門的顧客」、カタールにおいては「マー

ケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」であることの表明であり、この規定の順守に同意することを意味いたします。この規定に従わないと、サウジアラビア、UAE、あるいはカタールの法律に違反する行為となる場合があります。 カナダ投資家向け:当レポートは、Investment Industry Regulatory Organization of Canada (「IIROC」) および Canadian Investor Protection Fundの会員である Instinet Canada Limited (「ICL」)により、カナダの投資家向けに配布することを承認されています。ICLの関連会社が作成したリサーチレポート(「関連会社リサーチレポート」)は、当該関連会社の地域におけるリサーチ配布に適用される規則上の要件を満たすよう作成されており、利益相反に係る開示を

含んでいます。ICLは、IIROCが必要とするカナダにおける開示が行われていることを確認するために当関連会社リサーチレポートをレビューしました。ICLは、関連会社リサーチレポートの配布に関連して、対価を受取っていません。ICLのリサーチ配信に関するポリシー及び手順に従い、ICLは関連会社リサーチレポートを、電子的にまたは印刷された形で、ICLの現顧客および将来の顧客のみにしか提供しません。ICLは、全ての受領者が同時に関連会

社リサーチレポートを利用可能となる及びまたは配布されるよう努めます。当関連会社リサーチレポートは、推奨ではなく、また、いかなる特定の口座の投資対象、金融状況や特定のニーズを考慮しているものでもありません。 台湾上場企業に関するレポートおよび台湾所属アナリスト作成のレポートについて:本資料は参考情報の提供だけを目的としています。お客様ご自身で投資リスクを独自に評価し、投資判断に単独で責任を負っていただく必要があります。本資料のいかなる部分についても、野村グループから事前に書面で承認を得ることなく、報道機関あるいはその他の誰であっても複製あるいは引用することを禁じます。「Operational Regulations Governing Securities

Firms Recommending Trades in Securities to Customer」及びまたはその他の台湾の法令・規則に基づき、お客様が本資料を関係者、関係会社およびその他の第三者を含む他者へ提供すること、あるいは本資料を用いて利益相反があるかもしれない活動に従事することを禁じます。NIHK台湾支店が執行できない証券または商品に関する情報は、情報の提供だけを目的としたものであり、投資の推奨または勧誘を意図したものではありません。 本資料のいかなる部分についても、野村グループ会社から事前に書面で同意を得ることなく、(i)その形態あるいは方法の如何にかかわらず複製する、あるいは(ii)配布することを禁じます。本資料が、電子メール等によって電子的に配布された場合には、情報の傍受、変造、紛失、破壊、あるいは遅延もしく

は不完全な状態での受信、またはウィルスへの感染の可能性があることから、安全あるいは誤りがない旨の保証は致しかねます。従いまして、送信者は電子的に送信したために発生する可能性のある本資料の内容の誤りあるいは欠落に対する責任を負いません。確認を必要とされる場合には、印刷された文書をご請求下さい。 日本で求められるディスクレイマー レポート本文中の格付記号の前に※印のある格付けは、金融商品取引法に基づく信用格付業者以外の格付業者が付与した格付け(無登録格付け)です。

無登録格付けについては「無登録格付に関する説明書」https://www.nomura.co.jp/retail/bond/noregistered.html をご参照ください。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大 1.404%(税込み)(20 万円以下の場合は、2,808 円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等

の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内 REIT、国内 ETF、国内 ETN を含む)の売買取引には、約定代金に対し最大 1.404%(税込み)(20万円以下の場合は 2,808 円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。

国内 REIT は運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内 ETFは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大 1.026%

(税込み)(売買代金が 75万円以下の場合は最大 7,668円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取

Page 27: 財界観測 論文 2018年11月27日「真のキャッシュレ …...財界観測 2018.11.27 3 と言わざるを得ない。なぜならば、諸外国におけるキャッシュレス化に向けた

引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 信用取引には、売買手数料(約定代金に対し最大 1.404%(税込み)(20万円以下の場合は 2,808円(税込み)))、管理費および権利処理手数料をいただ

きます。加えて、買付の場合、買付代金に対する金利を、売付けの場合、売付け株券等に対する貸株料および品貸料をいただきます。委託保証金は、売買代金の 30%以上(オンライン信用取引の場合、売買代金の 33%以上)で、かつ 30万円以上の額が必要です。信用取引では、委託保証金の約 3.3 倍まで(オンライン信用取引の場合、委託保証金の約 3倍まで)のお取引を行うことができるため、株価の変動により委託保証金の額を上回る損失が生じるお

それがあります。詳しくは、上場有価証券等書面、契約締結前交付書面、等をよくお読みください。 CBの売買取引には、約定代金に対し最大 1.08%(税込み)(4,320円に満たない場合は 4,320円(税込み))の売買手数料をいただきます。CBを相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、

別途手数料をいただくことがあります。CBは転換もしくは新株予約権の行使対象株式の価格下落や金利変動等によるCB価格の下落により損失が生じるおそれがあります。加えて、外貨建てCBは、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 債券を募集・売出し等その他、当社との相対取引によってご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。債券の価格は市場の金利水準

の変化に対応して変動しますので、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込むことがあります。加えて、外貨建て債券は、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 個人向け国債を募集によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。個人向け国債は発行から 1年間、原則として中途換金はできま

せん。個人向け国債を中途換金する際、原則として次の算式によって算出される中途換金調整額が、売却される額面金額に経過利子を加えた金額より差し引かれます。(変動 10 年:直前 2 回分の各利子(税引前)相当額×0.79685、固定 5年、固定 3 年: 2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685) 物価連動国債を募集・売出等その他、当社との相対取引によって購入する場合は、購入対価のみをいただきます。当該商品の価格は市場の金利水準及

び全国消費者物価指数の変化に対応して変動しますので、損失が生じるおそれがあります。想定元金額は、全国消費者物価指数の発行時からの変化率に応じて増減します。利金額は、各利払時の想定元金額に表面利率を乗じて算出します。償還額は、償還時点での想定元金額となりますが、平成 35年度以降に償還するもの(第 17回債以降)については、額面金額を下回りません。 投資信託のお申込み(一部の投資信託はご換金)にあたっては、お申込み金額に対して最大 5.4%(税込み)の購入時手数料(換金時手数料)をいただきます。また、換金時に直接ご負担いただく費用として、換金時の基準価額に対して最大 2.0%の信託財産留保額をご負担いただく場合があります。投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用として、国内投資信託の場合には、信託財産の純資産総額に対する運用管理費用(信託報酬)(最大

5.4%(税込み・年率))のほか、運用成績に応じた成功報酬をご負担いただく場合があります。また、その他の費用を間接的にご負担いただく場合があります。外国投資信託の場合も同様に、運用会社報酬等の名目で、保有期間中に間接的にご負担いただく費用があります。 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等によ

り基準価額が変動します。従って損失が生じるおそれがあります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。また、上記記載の手数料等の費用の最大値は今後変更される場合がありますので、ご投資にあたっては目論見書や契約締結前交付書面をよくお読みください。 金利スワップ取引、及びドル円ベーシス・スワップ取引(以下、金利スワップ取引等)にあたっては、所定の支払日における所定の「支払金額」のみお受払いいただきます。金利スワップ取引等には担保を差入れていただく場合があり、取引額は担保の額を超える場合があります。担保の額は、個別取引により異なりますので、担保の額及び取引の額の担保に対する比率を事前に示すことはできません。金利スワップ取引等は金利、通貨等の金融市場におけ

る相場その他の指標にかかる変動により、損失が生じるおそれがあります。また、上記の金融市場における相場変動により生じる損失が差入れていただいた担保の額を上回る場合があります。また追加で担保を差入れていただく必要が生じる場合があります。お客様と当社で締結する金利スワップ取引等と「支払金利」(又は「受取金利」)以外の条件を同一とする反対取引を行った場合、当該金利スワップ取引等の「支払金利」(又は「受取金利」)と、当該反

対取引の「受取金利」(又は「支払金利」)とには差があります。商品毎にリスクは異なりますので、契約締結前交付書面やお客様向け資料をよくお読みください。 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引を当社と相対でお取引いただく場合は手数料をいただきません。CDS取引を行なうにあたっては、弊社との間で

合意した保証金等を担保として差し入れ又は預託していただく場合があり、取引額は保証金等の額を超える場合があります。保証金等の額は信用度に応じて相対で決定されるため、当該保証金等の額、及び、取引額の当該保証金等の額に対する比率をあらかじめ表示することはできません。CDS取引は参照組織の一部又は全部の信用状況の変化や、あるいは市場金利の変化によって市場価値が変動し、当該保証金等の額を超えて損失が生じるおそ

れがあります。信用事由が発生した場合にスワップの買い手が受取る金額は、信用事由が発生するまでに支払う金額の総額を下回る場合があります。また、スワップの売り手が信用事由が発生した際に支払う金額は、信用事由が発生するまでに受取った金額の総額を上回る可能性があります。他の条件が同じ場合に、スワップの売りの場合に受取る金額と買いの場合に支払う金額には差があります。 CDS取引は、原則として、金融商品取引業者や、

あるいは適格機関投資家等の専門的な知識を有するお客様に限定してお取り扱いしています。 有価証券や金銭のお預かりについては料金をいただきません。証券保管振替機構を通じて他の証券会社へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに 10,800 円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 142 号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会