宍道湖における底生有孔虫群集 ......key ward:benthic foraminifera,lake...

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島根大学地球資源環境学研究報告 19,65~76ページ(2000年12月) Geoscience Rept.Shimane Univ.,19,p.65~76(2000) 宍道湖における底生有孔虫群集 瀬戸 浩二*・真先 修**・田中 邦昌***・高安 克己**** Benthicf6raminifbralassemlageintheLake Koji Seto*,OsamuMasaki**,KunimasaTanaka***and KatsumiTaka Abstract Based on a result of the assemblage analysis of benthic foraminifera in Subassemblages were recognized.The foraminifera assemblages are controlled by the Shinji.餓伽η雁nαAssemblageisdistributedundertheinnuenceofShinji Lake Su㎡ace distributed under the innuence of inte㎜ediate saline water mass included Shinj ForaminiferaFacies aredistributedinく3m waterdepth in the Shinji Lake Su㎡ace Wa offresh water in Hii River.The distribution offoraminifera assemblage is varying by th water temperature and dissolved oxygen)in water mass and the movement ofwater mass The increase of A灘ηon’α“わεccαr’i”is recognaized during the investigation(Aug phenomenon is compared to Alnn!on∫αevent proposed by Nomura and Endo(1998).Alt Azη,noniαevent occured around the year1980in Lake Shinji and Lake Nakaumi,the result o appearance ofA’n〃20niαevent in the westem part ofLake Shinji has a time lag about12yea Key ward:Benthic foraminifera,Lake Shinji,Brackish water,water mass,A/n’noniαev 宍道湖は,斐伊川河口付近に位置する低鹸汽水湖であり, 日本で3番目の面積を持っている.この湖の下流には高鹸汽 水湖である中海があり,大橋川を通じて宍道湖と結ばれてい る.宍道湖の平均塩分は3~4%。であり(伊達ほか,1989), 中海から高塩分の水塊が大橋川を通じて流入することによっ て,湖の汽水環境が保たれている.これらの水塊の移動や水 塊の変化は,そこに生息する生物に多大な影響を与え,分布 を規制する要因となりうる. このような汽水環境にも原生動物の有孔虫類が分布するこ とが知られている.これまでの研究では,有孔虫の定性的な 分布(中海・宍道湖自然史研究会,1985),あるいは1測線 における定量的な分布(野村・吉川,1995)しか研究されて おらず,宍道湖のおける広域的・定量的な有孔虫の分布はま だ知られていない.島根県水産試験場三刀屋分場の汽水湖調 査の一環として1992年8月~1993年6月までの4季節にお 島根大学総合理工学部地球資源環境学科 Department of Geoscience,Shimane University,Matsue690-8504, JAPAN ** @㈱住化分析センター Sumika Chemical Amlysis Service,Sodega-ura299-0266,JAPAN *** 轄r谷建設 Aratani Civil Engineering Consultants Co.,Ltd.,Matsue690-0044, JAPAN **** ㍾ェ大学汽水域研究センター Research Center for Coastal Lagoon Environments,Shimane University,Matsue690-8504,JAPAN いて宍道湖の16観測定点において水質調査および底質試料 の採取が行われた.本研究の目的は,その調査で得られた底 生有孔虫の群集解析および同時に得られた水質データの解析 を行い,有孔虫種と有孔虫群集の分布要因を明らかにするこ とである. 調査及びサンプル処理法 サンプリング調査は,1992年8月9日,11月4日,1993 年2月8日,6月8日の4季に,島根県水産試験場所有の「は るかぜ」で行なった.調査は宍道湖中の16観測定点で行なっ た(図1).観測定点の位置は「はるかぜ」に装備されたGPS を用いて求めた.底質の採取は,エクマン・バージ型採泥器 を用いて行ない,それで得られた堆積物の表層約1cmを底 質試料とした.それと平行して,底生生物の生息環境を把握 するため,塩分,水温,溶存酸素量などの水質の測定が行わ れた. 室内に持ち帰った底質試料は,有孔虫分析用試料と粒度分 析や含水率などの底質分析用試料に分割された.有孔虫分析 用試料は,湿重量を秤量後,200メッシュのふるいで水洗し, その残渣をローズベンガルで染色した.その後,残渣は200 メッシュのふるい上で水洗し,ローズベンガルを洗い落とし, 約80℃の恒温乾燥器で乾燥させた.乾燥残渣を適度に分割 し,底生有孔虫の観察を行なった.その時,分割された試料 は全部を顕鏡し,できるだけ底生有孔虫が200個体以上ピッ クアップできるように分割した.そのうちローズベンガルで 65

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  • 島根大学地球資源環境学研究報告 19,65~76ページ(2000年12月)Geoscience Rept.Shimane Univ.,19,p.65~76(2000)

    宍道湖における底生有孔虫群集

    瀬戸 浩二*・真先 修**・田中 邦昌***・高安 克己****

    Benthicf6raminifbralassemlageintheLakeShi煽i

    Koji Seto*,OsamuMasaki**,KunimasaTanaka***and KatsumiTakayasu****

                           Abstract Based on a result of the assemblage analysis of benthic foraminifera in Lake Shinji,2Assemblages of7

    Subassemblages were recognized.The foraminifera assemblages are controlled by the distribution of water mass in Lake

    Shinji.餓伽η雁nαAssemblageisdistributedundertheinnuenceofShinji Lake Su㎡ace Water.Aln’non∫αAssemblage is

    distributed under the innuence of inte㎜ediate saline water mass included Shinji Lake Bottom Water.Poor or no

    ForaminiferaFacies aredistributedinく3m waterdepth in the Shinji Lake Su㎡ace Waterand in area underthe influence

    offresh water in Hii River.The distribution offoraminifera assemblage is varying by the change ofwater quality(salinity,

    water temperature and dissolved oxygen)in water mass and the movement ofwater mass.

     The increase of A灘ηon’α“わεccαr’i”is recognaized during the investigation(August1992to June1993).This

    phenomenon is compared to Alnn!on∫αevent proposed by Nomura and Endo(1998).Although it was considered that

    Azη,noniαevent occured around the year1980in Lake Shinji and Lake Nakaumi,the result of this study suggests that the

    appearance ofA’n〃20niαevent in the westem part ofLake Shinji has a time lag about12years.

    Key ward:Benthic foraminifera,Lake Shinji,Brackish water,water mass,A/n’noniαevent

    は じ め に

     宍道湖は,斐伊川河口付近に位置する低鹸汽水湖であり,

    日本で3番目の面積を持っている.この湖の下流には高鹸汽

    水湖である中海があり,大橋川を通じて宍道湖と結ばれてい

    る.宍道湖の平均塩分は3~4%。であり(伊達ほか,1989),

    中海から高塩分の水塊が大橋川を通じて流入することによっ

    て,湖の汽水環境が保たれている.これらの水塊の移動や水

    塊の変化は,そこに生息する生物に多大な影響を与え,分布

    を規制する要因となりうる.

     このような汽水環境にも原生動物の有孔虫類が分布するこ

    とが知られている.これまでの研究では,有孔虫の定性的な

    分布(中海・宍道湖自然史研究会,1985),あるいは1測線

    における定量的な分布(野村・吉川,1995)しか研究されて

    おらず,宍道湖のおける広域的・定量的な有孔虫の分布はま

    だ知られていない.島根県水産試験場三刀屋分場の汽水湖調

    査の一環として1992年8月~1993年6月までの4季節にお

    * 島根大学総合理工学部地球資源環境学科

      Department of Geoscience,Shimane University,Matsue690-8504,

      JAPAN**@㈱住化分析センター

      Sumika Chemical Amlysis Service,Sodega-ura299-0266,JAPAN*** 轄r谷建設  Aratani Civil Engineering Consultants Co.,Ltd.,Matsue690-0044,

      JAPAN**** ㍾ェ大学汽水域研究センター

      Research Center for Coastal Lagoon Environments,Shimane

      University,Matsue690-8504,JAPAN

    いて宍道湖の16観測定点において水質調査および底質試料

    の採取が行われた.本研究の目的は,その調査で得られた底

    生有孔虫の群集解析および同時に得られた水質データの解析

    を行い,有孔虫種と有孔虫群集の分布要因を明らかにするこ

    とである.

    調査及びサンプル処理法

     サンプリング調査は,1992年8月9日,11月4日,1993

    年2月8日,6月8日の4季に,島根県水産試験場所有の「は

    るかぜ」で行なった.調査は宍道湖中の16観測定点で行なっ

    た(図1).観測定点の位置は「はるかぜ」に装備されたGPS

    を用いて求めた.底質の採取は,エクマン・バージ型採泥器

    を用いて行ない,それで得られた堆積物の表層約1cmを底

    質試料とした.それと平行して,底生生物の生息環境を把握

    するため,塩分,水温,溶存酸素量などの水質の測定が行わ

    れた.

     室内に持ち帰った底質試料は,有孔虫分析用試料と粒度分

    析や含水率などの底質分析用試料に分割された.有孔虫分析

    用試料は,湿重量を秤量後,200メッシュのふるいで水洗し,

    その残渣をローズベンガルで染色した.その後,残渣は200

    メッシュのふるい上で水洗し,ローズベンガルを洗い落とし,

    約80℃の恒温乾燥器で乾燥させた.乾燥残渣を適度に分割

    し,底生有孔虫の観察を行なった.その時,分割された試料

    は全部を顕鏡し,できるだけ底生有孔虫が200個体以上ピッ

    クアップできるように分割した.そのうちローズベンガルで

    65

  • 66 宍道湖における底生有孔虫群集

    1330521     133。53,     133。54,     133。551     133。56覧     133。571     133。58噸     133。59,     133。001      133。Or      133。02曜     133。03t     133。04,     133。05’     133006『

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    図1調査地点位置図

    染色されたものを生体として扱っている.したがって,ここ

    でいう生体は,必ずしも採取された時点で生きていたものと

    は限らない.有孔虫数を定量化させるため,有孔虫分析用試

    料の湿重量から含水率を用いて乾燥重量を求めて,乾燥重量

    1g当りの有孔虫数を求めた.

    調査期間中の宍道湖の水質及び底質

     1.水質

     宍道湖の水塊は,塩分躍層によって,低鹸汽水の上部層と

    中鹸汽水の下部層に分かれていることが知られている.その

    躍層の水深は,夏期で,5.3-5.5mに存在している.最近の

    調査では,音響探査による音響反射面によって塩分躍層の分

    布がとらえられている(徳岡ほか,1994など).また,詳細

    な塩分・水温測定によって求められた密度の変化率に着目し

    て塩分躍層を定義し,宍道湖表層水と底層水を区分している

    (瀬戸ほか,2000など).それらの調査などから宍道湖の塩

    分躍層の位置は,季節によって変化し,なくなることも知ら

    れている.その躍層は溶存酸素の躍層でもあり,底層水の分

    布の変化は,底生生物にとって多大な影響を与えている.

     ここでは,採泥調査と平行して行なった水質測定の結果を

    中心に,宍道湖の水質環境について述べる.したがって,こ

    こでの水質環境は,それぞれの季節の一瞬でしかない.しか

    しながら,調査中に顕著な水質変化は認められないことから,

    日隔差は比較的少ないと考えられる.

     水温:調査期間中における湖水中の水温は,1992年8月

    が,27℃,11月が15~17℃,1993年2月が6℃,6月が20

    ℃であった.この調査期間の年較差は,20℃以上に達する.

    一季節の水温差は比較的小さく,多くは1~2℃である.1992

    年11月は,それよりやや大きく3℃程度あった.顕著な温

    度躍層は存在しない.11月は,中層部の温度が低く,湖底部

    と表層部が比較的高い.2月は,湖底部近くがやや高く,6

    月は,逆にやや低い.

     塩分:調査期間中においても顕著な塩分躍層が認められ,

    それを境界として宍道湖表層水と底層水に区分できる.

     湖水の大多数を占める宍道湖表層水の塩分は,1992年8

    月が6~8%。,11月が6~7脇,1993年2月が2~5脇,6月が

    5~6%・であった(図3).調査期間中の塩分は,8月がもっと

    も高く,2月がもっとも低い.その塩分差は,約3%。である.

    一般的な宍道湖の塩分が3~4%。である(伊達ほか,1989)と

    すると,調査期間の塩分は高いといえる.また,表層水の一

    般的な傾向は,大橋川に向かうにつれて緩やかに増加してい

    る.11月と6月は,その勾配が低い.2月は,斐井川側で勾

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    図2 宍道湖における水温の季節変化

  • 瀬戸 浩二・真先  修・田中 邦昌・高安 克己 67

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    図3 宍道湖における塩分の季節変化

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    図4 宍道湖における溶存酸素量の季節変化

    配が高く,湖中央から大橋川側にかけて勾配が緩やかになっ

    ている.

     宍道湖底層水は,1992年8月が11~16%。,11月が8~

    16%。,1993年2月が8%・前後,6月が8~10%。であり,調査

    期間中の塩分差は約8%。で表層水に比べて大きい.底層水の

    分布は,一般に湖中央から大橋川側に薄く分布している.

    1992年11月の底層水は比較的厚い.底層水の塩分は大橋川

    側が最も高く,湖心に向かうにつれて低くなる傾向にある.

    逆に塩分が最も低いのは1993年2月で,底層水の分布も小

    さく,湖心の底部に薄く溜まっているだけである.そのため,

    St.18,St.23などの大橋川側の湖底は調査期間中の塩分差が

    12%。以上に達する.

     溶存酸素(DO):宍道湖の溶存酸素量は,一般的に表層か

    ら底層にかけて低くなる傾向にある.表層から底層にかけて

    緩やかに低下し,湖心部では底層近くでさらに急激に減少す

    る.表層の溶存酸素量は,1992年8月が低く(6~7mg/l),

    1992年11月と1993年2月が11~12mg/1と高く,1993年6

    月が9~10mg/lと比較的低い.底層水は,8月で3~6mg/1,

    11月が3~10mgll,2月は12mg/1と高く,6月は0~7mg/l

    である.底層水の溶存酸素量は,湖心部が最も低く,11月

    の場合は大橋川側がら斐井川側に向けて溶存酸素量が低く

    なっている傾向が認められる.底層水の溶存酸素量は,2月

    だけが著しく高い.

     底層水の分布:本研究では,塩分変化の最も大きな所で表

    層水と底層水に区分した.区分した塩分は,1992年8月で

    は10賄,1992年11月では8%。,1993年2月では6%。,1993

    年6月では7%。である.底層水の分布は図5に示す.底層水

    は,湖底地形の低い水域を中心に分布している.11月は底層

    水の塩分・DOの分布から大橋川から湖心方向に流入してい

    ると考えられる.塩分は宍道湖河口側の浅部の底層で最も高

    く,湖心方向に減少している.さらに湖心付近ではもう一度

    増加していることから,底層水は波状的に流入していると思

    われる.DOも大橋川側で高く,徐々に減少している.これ

    は湖心方向に流入している間に酸素が消費され減少している

    ものと,すでに消費されている停滞した底層水と混合するこ

    とによって起こる現象と思われる.高塩分・高DOを示す底

    層水の流入は,低DOを示す中海底層水が流入したとは考え

    られない.よってこの時流入した底層水は,高塩分・高DO

    を示す中海の表層水が流入しているものと思われる.冬季の

    1993年2月では,底層水の分布が非常に小さくなり,わず

    かに湖心付近に存在している程度である.一方,6月には底

    層水の分布が大きくなっている.2-6月の間に多量の中塩

    分水塊,恐らく中海表層水が流入したと考えられる.

     2.底質

     含砂率:宍道湖における観測定点の含砂率の分布は図6に

    示した.宍道湖湖畔付近の水深3mより浅いところでは80%

    以上の高い含砂率を示す.さらに水深2m以浅では95%以

    上に達する.逆に4m以深では含砂率が低く,10%以下で

    ある.特に湖心部の東側では1%以下と低い.湖心部の西側

    でやや高いのは,斐伊川の影響である.宍道湖東部のSt.23

    では水深4.3mであるが,やや高い(7.6%)含砂率を示して

    いる.これは大橋川からの高塩分水塊の流入に起因している

    ものと思われる.

  • 68 宍道湖における底生有孔虫群集

    1992.8.9

      SURFACE WATER  Sal. 6・9伽      ロ ゆ  1=ll調。

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      SURFACE WATER  Sal. ふ5%o   む むゆの  1=ll弓1二。

    つ1993.6.8

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    %OTrOMWATERSal. 8-11伽

    DO O-2mg刈Tom.20・C

    BOTTOM WATERS畠1.  9・17偽o

    DO 2・8mgηTomp、15・16・C

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         ヰヨゆり  1コllヂ。

    .馳唖ト

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    4奥■”ロLOWSLINEWATER

    <←一一 INTERMEDIATE SALINEWATER

    図5 宍道湖における底層水の分布とその特徴

    宍道湖の底生有孔虫群集

     宍道湖の16観測定点,4季節の試料から15タクサの底生

    有孔虫が産出した(付表1).そのうち,生体を確認できたの

    は,An21non∫α“加6cαrガ’と〃∫liα〃2〃3∫nαルscαの2タクサのみ

    である.また,5タクサは殻の状態と種構成から第三紀の地

    層から再堆積した化石と思われる.

     なお,本研究で用いたA〃2nlon’α“わ8ccαrガ’は,これまでの

    多くの研究で使われてきた船脚n’αわ8ccor〃のシノニムであ

    る.NomuraandTakayanagi(2000)では,従来用いられてき

    たA.加ccα所は分類上に問題があることを指摘し,A〃1〃20n’α

    sp.としている.本研究では,それらを踏まえAln〃10n’α

    “加ccα漉”を用いることにする.

     L底生有孔虫の総個体数

     乾燥試料1g当りの底生有孔虫総個体数(生体+遺骸)を

    図7に示した.宍道湖での総個体数は,いずれの季節におい

    ても東部に多く,中部および西部では極端に少ない.また,

    宍道湖東部でも水深2m以浅の地点では個体数が少なく,産

    出してない地点もある.季節的に見ると,1992年8月が最

    も総個体数が少なく,1993年6月まで増加傾向にある.宍

    道湖西部のSt.1地点のみ1993年6月に減少する.最も個体

    数が多い地点は宍道湖東部のSt.23地点であり,他の地点と

    比較して突出して多い.St.23地点では,1992年2月で乾燥

    試料1g当り約60個体の産出が認められ,さらに1993年6

    月では1g当り約640個体に達した.一方,1992年8月での

    宍道湖中部および西部における個体数は,1g当り約1個体

    にも達していない.特に,湖心のSt.2地点では全く産出し

    ていない.1993年6月では,1g当り3~13個体に増加して

    いる.

     有孔虫生体個体数の分布は総個体数のそれと同様な傾向に

    ある(図8).しかし,最も生体個体数が多いのは1993年2

    月であり,1993年6月では減少している.生体の個体数の

    多いSt.23地点では,1992年6月における生体の個体数がl

    g当り約3個体であったものが,1992年2月では約87個体

    に達し,総個体数の55%を占める.その内訳は,ほとんど

    SandContent(%)

    2.1

     0

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    6

    図6 宍道湖観測定点における含砂率の分布と含砂率の水深プロファイル.

  • 瀬戸 浩二・真先  修・田中 邦昌・高安 克己 69

    Total population per19

    1992.8.9

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    @    ●    0.36@                    0、57    αi8                      ●

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    700

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    St.1 St,16 St.17 St.2700

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    P992  1993   1992  1993   1992   1993   1992  1993        1992  1993   1992  1993      1992  1993

    0一

    図7 宍道湖における乾燥試料1g当りの底生有孔虫総個体 数の分布と1992年8月~1993年6月における総個体数 の変化.

    Living Population per19

    1992.8.9                0

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    ツ1993.6.8                0

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                 ●@                             1.06             0、21                               ●o                    o

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    一一チ一一 1992.89

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    100

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    P.0

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    St.16 St.17 St.2100

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    P992  1993   1992  1993   1992  1993   1992  1993       1992  1993   1992   1993       1992  1993

    図8 宍道湖における乾燥試料1g当りの底生有孔虫生体個 体数の分布と1992年8月~1993年6月における生体個 体数の変化.

    がA.“わ8ccαr∫’”の4室以下の稚殻であった.1993年6月で

    は,1g当り約37個体に減少している.St.23地点以外では,

    ほとんどの地点で19当り1個体以下しか生体の有孔虫を産

    出しない.

     主要3タクサ(ん“加ccαr’∫”,〃.ルscα,Cr∫加os∫o“20’4εs

    cαnor∫8ns’s)についても乾燥試料1g当りの個体数の分布を

    示した(図9~11).多くの地点で独占的な産出を示すA.

    “加ccαr””は,底生有孔虫総個体数とほぼ同様な分布を示す

    (図9).MルSCαでは,個体数としては非常に少ない(乾燥

    試料19当りの8個体以下)が,A.“加ccαr∫’”の分布とは異

    なる傾向を示した(図10).1992年8月においては宍道湖沿

    岸付近の比較的浅い地点で産出し,生体は唯一St.12地点で

    のみ見られる.しかし,乾燥試料1g当りの総個体数が最も

    多いのは宍道湖東部のSt.23地点である.時期によっては,

    宍道湖西部のSt.16地点でもピークを示す.どの時期でも宍

    道湖中央部では非常に少ない.調査期間中では総個体数・生

    体個体数ともに1993年2月が最も多く,1993年6月では減

    少し,生体は全く見られなかった.水深2m以浅の含砂率

    の極めて高い地点では,全く産出しない.C cαnαr∫εns’sは,

    ほとんどが宍道湖東部に分布するが,遺骸のみで生体は確認

    されなかった(図11).最も多かった地点はSt.23地点で1993

    年6月で乾燥試料1g当り約15.5個体である.個体数は1992

    年11月に少なく,1993年6月に多いものの特に傾向は見ら

    れない.

     再堆積したと思われる有孔虫化石は,宍道湖北岸付近に分

    布する(図12).特にSt.13地点では,乾燥試料1g当りの約

    5個体と最も多い.この地点では80%の高い含砂率を示し

    ている.その他の産出地点では,含砂率が低く,乾燥試料1

    g当りの個体数も0.2個体以下と非常に少ない.

     2.底生有孔虫群集

     再堆積した有孔虫化石を除く乾燥重量1g当りの有孔虫総

    個体数が0.5個体以上産出した24試料についてQモードク

    ラスター分析を行い,その結果に基づいて有孔虫群集を設定

    した.クラスター分析は,Excel多変量解析ver3.0を用い,

    試料間でマハラノビスの汎距離を求め,ウォード法で統合し

  • 70 宍道湖における底生有孔虫群集

    A卿卿。吻”わθoc副”

                    ●@  ●               0、06

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    1992.8.9

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    ゥ一1iv圭ng-

    Piving+dead�

    9 宍道湖におけるA“3“10niα“加ccαri”ンの乾燥試料1g当ミ

    りの個体数の分布と1992年8月~1993年6月におけるミ個体数の変化.ミ

    伽卿傭α加・α�

    992.8.9                                     0                 ●    .          添                α08                        0.17�

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     1 2  3㎞一�

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    �一つ鼈黶@1992.8.9 

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    76543210�

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    76543210�

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      St.3 

    p2P0_ 8 11 2  6  1992 1993�

      11 2   6  8  11 2   6  8  11 2   6  8  11 2   6  8  11 2   6       8  11 2   61

    X92  1993   1992  1993   1992  1993   1992  1993   1992  1993        1992  1993一

    ゥliving+dead→黷撃奄魔奄獅�

    10 宍道湖における〃’1妨n〃3inαルscαの乾燥試料1g当ミ

    りの個体数の分布と1992年8月~1993年6月におけるミ個体数の変化.ミ

    .分析の結果得られたデンドログラムは,図13に示す.24ミ

    料の試料群は,マハラノビスの汎距離が0.7で2つの試料ミ

    に区分し,それぞれをA試料群,M試料群とした.さらミ

    距離が0.1で亜試料群に細分した.A試料群は,んn〃30n∫αミ

    わεccαr’∫”が卓越することから,A〃3〃30n’α群集とし,3つのミ

    試料群と亜試料群を形成しない2つの試料をA l~A5亜ミ

    集とした.M試料群はハ4’1’α〃3〃3∫nα血scαが卓越することかミ

    ,M’1’α〃〃ninα群集とし,2つの亜試料群をM1,M2亜群ミ

    とした.ミ

    1)A〃3配on如群集ミ

    本群集は,A.“加ccαr’∫”が卓越し,砿ルscαやCri加os∫o“10’48sミ

    侃αri8ns’sが随伴する(図14).さらにA配’no伽。麗1∫∫8s8x’8媚sミ

    Trochα1n,n’nαhα4αiがわずかながら産出する.ミ

     a)A1亜群集ミ

     本』亜群集は,A.“加ccα痂”が90%近くを占め,C.ミ

    cαnαr∫8ns’sや〃“.ルscαが随伴する.Aln“10n∫α群集の中でミ

    は,最も多様性が高い.ミ

     b)A2亜群集ミ

    本亜群集は,ん“加ccαri’”が75%近くを占め,C.ミ

    αnαr’6nsisや中海によく産出するT hα4α’などが随伴すミ

    .1992年11月のSt.17地点のみで認められた亜群集であミ

    .ミ

    c)A3亜群集ミ

    本亜群集は,A.“加CCαr””が99%近くを占める独占的ミ

    産出を示す.Ccαnαri8nsisや〃1ル5cα,A.8x∫g泥泥sがわずミ

    に産出する.今回得られた宍道湖の亜群集の中でもっとミ

    一般的なものである.ミ

    d)A4亜群集ミ本亜群集は,A.“加ccαr∫∫”が95%近くを占め,〃.ルscαミ

    随伴する.ミ

    e)A5亜群集ミ

    本亜群集は,A.“加ccα漉”が約80%を占め,〃1ルscαがミ

    8%近くを示す.1992年2月のSt.2のみで認められた亜ミ

    集である.ミ

    )餓伽〃1加nα群集ミ

    群集は,〃.ルscαが卓越し,A.“加ccαr∫∫”が随伴する(図ミ

  • 瀬戸 浩二・真先  修・田中 邦昌・高安 克己 71

    C”加。部。遡。∫485cαπα”θπ5∫s

    1992.8.9

    3。.つ

    1993.6.8

    o

    30.つ

          0

    o

    o

    。蕊

    8●1

    0

     0

    ●2

     0

    α島

    α19

    α1、

    o

     9

    ●悉 6

    α21

         ㎞

    20

    P5

    P0

    T

    1鳥

     ロ   ひ

    ● ● ● ・・》500 500・100 100・10 10・1 1・》0

    0

    一一 199去8.9

    一一一怦黶@ 1992.11.4

    一一g 19932.8

    一一U- 1993.68050

    ハ∠115St.1  St.16  St.17     St.2 St.18 St.30

    図11宍道湖におけるCr’加05∫o,no’48scαnαr∫8nsisの乾燥試

     料1g当りの個体数の分布と1992年8月~1993年6月に おける個体数の変化.

    Reworked fbssils

    。㌔2

    α18

           

     ▽㎝

    ●ユ

     5

         ひ

    ● ● ● ・・>500  500・100  100.10  10-1  1一》0

    021

         ㎞

    愚図12 再堆積化石有孔虫の分布

    Generalized distance ofMahalanobis

    3.8 3.7 3.6 3.5 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1  0

    Biotope

    14).ほかの有孔虫種は産出しない.

      a)M1亜群集

      本亜群集は,砿ルscαが全体の約2/3近くを占め,残

     り1/3をA.“加ccα漉”が占める.

      b)M2亜群集

      本亜群集は,砿ルscαが産出比のほとんどを占める産状

     を示す.A.“わ8ccαr’∫”は4%程度である.

    図13

      St.23・2

      SL23・8   Al  St.22・8

      St.17-11     A2

      St.23-6   一””””””一

      St.23-11

      St.18・8

      St.22・6

      St3・6      A3  St.18・11  St.17・6

      St.18・6

      St.14・6

      St.2・6

      St.18・2づ5づづ

    ノノ   ご  リロ 

    1獅SL16.6 A4ノノノノノノノ

    ””’” rt.2-2

      St.2■11     A5

     3.宍道湖における底生有孔虫群集の分布

     今回の底生有孔虫群集の解析をして認められた2群集7亜

    群集の分布を図15,その時の有孔虫組成を図16に示した.

     1992年8月では宍道湖東部の比較的深い水域でA1・A3

    亜群集が見られる.その他の宍道湖中央部から西部では,貧・

    無有孔虫相である.1992年11月はA〃1〃10n∫α群集が拡大し,

    宍道湖中部まで群集が認められた.宍道湖西部では,貧・無

    有孔虫相である.1993年2月は西部に〃∫1∫伽〃2∫nα群集が認

    められ,中~東部ではA’n7non’α群集である.中部ではA4

    亜群集であり,砿ルscαはA.“加coαrガ’とともに増加してい

    ることを反映している.1993年6月では宍道湖のほとんどが

    A“3脚n∫o群集であり,その中でもA.“加ccαr∫’”が独占的な

    組成を持つA3亜群集が大部分を占める.餓伽〃3顔nα群集

    (M2亜群集)は,東北部の2地点のみで認められた.また,

     .            i...SL17・2             :暉聴St.16.2  Ml

        I     …窟SL1か6    1    1         i  SL14    1                                            -

    Qモードクラスター分析の結果と区分された試料群

        Assembage

    saxa

    A」mπ,0η’8

    `ssemblage鮒”8mlm’η3

    `ssemblag●

    A1 A2 A3 A4 A5 ”1 ”2、4、拠餌。π∫〆’み8coα所”

    �セ餌〃”●παル3側

    bπ’み7roε‘o”蓼。’485σαπαπ’8πε」3

    sハ。σ加例艇’πα加吻’

    ntherspecies

            LEGEND        《1    -    20・50

            1甲2   -    50畠80        2.5   ■■■■■■■■■■■   80甲90

           5.10 - 90-95       10-20   -   95甲100

                (va口ues:%)

    図14 宍道湖における底生有孔虫群集の特徴

    斐伊川から供給される淡水のもっとも影響の強いSt.1は,

    貧・無有孔虫相である.

    考 察

    1.宍道湖におけるA〃3〃30n’α“加ccαr’∫”の分布要因

    A〃3〃20n’α“わ8ccαrゲ’は,汽水~内湾に普遍的に分布し

  • 72 宍道湖における底生有孔虫群集

    ゲ.輪

    3っ槻

    1992.8.9                       ●

                      ●

    怐@ Poor or no

    @  Fora血nifera@  Facies(PF恥●

    @      ●

    @●

    11

              ●

    p

        PFF ●

    3●つ

    1993.2.8

          ㎞

    ・曝

                         ワ ㌻瀦……1………萎髪…………1………  1停

    つ1993.6.8       PFF●

    擬灘1ぢ     ∫∫焦ジジ    o   !ノ!!!!!     ノノノノノノノ   PFF  !∫A4二づ∫     ノノヂノずノノノ     ノノノノノノノノノ    ノガタかびタジジジ一一

    つ灘欝

    図151992年8月~1993年6月における宍道湖の底生有孔 虫群集の分布と変化.

    (Matoba,1970;Ikeya,1977;中海・宍道湖自然史研究会,

    1985),特に汽水域では独占的な産状を示す(NomuraandSeto,

    1986).野村・吉川(1996)は,A.“わ6ccαri’”の生態が塩分と

    密接に関ることを指摘し,宍道湖では有機物の堆積しやすい

    泥底(TOC:3%程度)で,適度な塩分(5-10%。)で増加して

    いる(野村,1996).

     今回の宍道湖での調査におけるA.“加cc副∫”の分布は,宍

    道湖東部に多く,西方向に減少する傾向にあった.宍道湖東

    部のA.“加CCαri∫”の多い地点では,年間を通じて中塩分の宍

    道湖底層水の影響下にあるのではなく,西部と同様に多くは

    低塩分の宍道湖表層水の影響下にある.それにもかかわらず,

    中塩分を好むA.“加ccαrii”が分布することは,1993年11月

    で観測されたような大橋川から中塩分水塊の流入が,ん

    “わεccαr’i”の分布に寄与していることを示唆している.中塩

    分水塊の流入は,大橋川河口付近で高い溶存酸素量を示し,

    中央部方向に減少傾向にある.中塩分水塊が停滞している湖

    心付近で個体数が少ないことから,溶存酸素量が少ないと最

    適塩分であっても繁殖できないことを示している.

     1993年2月のSt.23地点の試料には4室未満の生体個体が

    多数見られる.その地点の2月の塩分は4%。とやや高めであ

    るが,水温は6℃前後と低い.このことは6℃前後の低温で

    も活発に繁殖できることを示唆している.1992年8月にも生

    体個体は確認されているので,A.“わ8ccαr∫∫”は6-27℃の水

    温の幅広い範囲で生息可能である.

     1992年8月の調査では,A.“加ocαr1∫”の総個体数が1個体

    /g以上産出する地点は宍道湖東部でしか見られなかった

    が,1993年6月には宍道湖全体で見られるようになった(図

    9).A.“加ccαr∫’”の遺骸は1993年6月がもっとも多く産出

    したが,生体は1993年2月の方がもっとも多かった.これ

    は,A.“わ8ccαr’∫”が2-6月急増したことを示している.た

    だし,6月に生体が少ないことから繁殖は終息している.A.

    “加ccαr∫∫”はガラス状石灰質殻であるため,物理的要因では

    壊れにくい.そのため,A.“わ8ccαr””の遺骸は保存され,累

    積として繁殖の終息した6月に遺骸個体数のピークを迎えた

    と思われる.この間,宍道湖底層水が大きく拡大し,表層水

    の塩分も高くなっていることから,大橋川の中塩分水塊が活

    発に流入したと思われる.中塩分水塊の影響下にある大橋川

    の河床では,A.“加ccαr∫i”の独占的な群集を示すことが知ら

    れている(野村・遠藤,1998;瀬戸ほか,1999).宍道湖に

    おける1993年2-6月のA.“加coαr∫∫”は増加は,もともとそ

    こに生息していたA.“わ8cc副∫”が繁殖したというより,大橋

    川で繁殖したA.“加CCαrii”が中塩分水塊の流入にともない運

    搬されて定着した可能性がある.中塩分を好むA.“加ccαr∫’”

    は,運搬されて蓄積されても,低塩分の宍道湖表層水中では

    繁殖・成長が阻害されるが,この調査期間中では表層水の塩

    分が高かったため,A.“わ80cαr’∫”が増加したものと思われる.

    野村・吉川(1995)のデータによれば,この増加したん

    “わθccαr∫∫”は,少なくとも1994年までは維持されている.

     以上のことからA.“加ccαr∫i”は,中塩分水塊の流入に関連

    して分布し,塩分・溶存酸素量などの水質条件に規制されて

    増加するものと思われる.したがって,A“加ccαrガ’は宍道

    湖底層水を含む中塩分水塊の指標種となりうる.

     2.宍道湖におけるM∫1∫α“1“2’nαルscαの分布要因

     膠着質殻を持つ〃1血scαは低塩分水域を好んで生息してい

    ることが知られている(野村・吉川,1995).宍道湖では,A.

    “加coαr∫’”と比較して個体数が少ないものの,ほぼ全域に分

    布する(図10).しかしながら,宍道湖西部の斐伊川河口付

    近および湖心付近で少ない傾向にある.このような分布は,

    宍道湖表層水の分布とほぼ一致するため,砿ルscαは宍道湖

    表層水に規制されて分布するものと思われる.また,Mルscα

    の生体,遺骸ともに含砂率の高い3m以浅の底質でも少な

    い.これは砿ルscαの殻が壊れやすいため,波浪の影響を受

    けやすい浅域には生息しにくいことを示している.

     調査期間中でMルscαの生体が多かったのは,冬季の2月

  • 瀬戸 浩二・真先 修・田中 邦昌・高安 克己 73

    Hii R.

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    & ● 0   0   (U   O   O   O

    2 0  8  6  4  2

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    19@(感冒。運。。。畠目8。。。嘱。。房

    St.1

     1

    St.16  1

    St.17  1

    1 陰 1 1● ● ●

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    ■■

    Shi取ii Lake

        St.2

          1

    St.18  1

       Oohashi R.

    St.23St.3

    1 1

    Assemblage PoororNo ForaminifbraFacies A3 A1PoorForam.

    199λ11.81  1      (100      尽      レ      雷 80      ε

          壱60      島      目

          8 40      の      .2      8 20      房

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    Assemblage

    Poor or no

    Foramh血色raFacies

    1

    PoorForam。 A2 A5 A3Pooreoram.

    1993.2.9

    0   0   0   0   0   0

    0   ΩU  6   4   2

    1

    (尽冒2転&目8麗8身

    一 1

    PoorForam.Facies

    Assemblage

         1993.6.9

           100      ハ      ぷ      ロ      唱 80      .2      温      8 60      畠      目      0 40      り      8      ■ 20      &

          の         O

    Assemblage

    M2 M1 A4 A1Pooreora】m.

    PoorForam.Facies

    PoorForam. A4 A3

         REGEND

         囲  A〃2ηzon∫α”Z)θccα7∫ガ”  [コ  ]墜ochα〃1〃2∫nαhα4α∫         [コ  other

         国〃’∫伽加〃2∫澱ルSCα 團C7∫ケOSの加0∫4εSC側αr∫8nS∫S

    図161992年8月~1993年6月の宍道湖中央測線における底生有孔虫群集と組成の変化

  • 74 宍道湖における底生有孔虫群集

    Lake ShinjiIntermediete saline wateI

    Low saline water

    Su㎡ace water

    Bottom water

    →sandmud

    ■ーコ・ ムM”,n”∫π △oαρm}、1つσρル観血“”2加α

    Assemblage

    MI M2 A5 A4

    Azη規on’αAssemblage

    A3 A1 A3

    皿皿 翅疵㎜〃吻αルscα 羅A〃2〃10π如’わεCCα7ガ’

    図17 宍道湖における底生有孔虫群集の模式的な分布

    であり,6月には生体がほとんど見られなかった.これは,

    砿ルscαが2月の6℃前後の低温でも繁殖できることを示し

    ている.一方,砿ルscαの遺骸も生体同様に2月に多く見ら

    れるが,6月までに明らかに減少している.砿ルscαの殻は

    比較的早い時期に破壊されるものと思われる.1992年の8月

    と11月に少ないのは,宍道湖の表層水の塩分が5脇以上の

    やや高い塩分であったことに起因していると思われる.

     以上のことから,〃1ルscαは低塩分(5%。以下)の宍道湖表

    層水の影響下の中深度(およそ3~5m)で繁殖し,波浪・塩

    分・水塊の分布に規制されて分布するものと思われる.した

    がって,宍道湖のおける砿ルscαは,宍道湖表層水の指標種

    となりうる.

     3.有孔虫群集の成立要因

     宍道湖での底生有孔虫群集は,2群集7亜群集が認められ,

    それらは主にA.“加CCα漉”と砿ルSCαで構成されている.〃.

    ルscαは宍道湖表層水(低塩分水塊)の影響下で分布し,A.

    “わ8cc副∫”は宍道湖底層水を含む中塩分水塊に規制されて分

    布する.宍道湖表層水は,宍道湖の表層~約5mまで影響

    を湖底に与えている.この水域は,砿ルscαが分布するポテ

    ンシャルを持つ.一方,宍道湖の中塩分水塊は,宍道湖底層

    水を除いて断続的に流入し,宍道湖中央部~東部に影響を与

    えている.この水域は,A.“わεccαr’∫”が分布するポテンシャ

    ルを持つ.A.“わ6ccαr∫∫”と〃.ルsoαの個体数の差からA.

    “加ccαr∫∫”の方が生産性が高いと考えられるので宍道湖中央

    部~東部の中塩分水塊の影響水域はA’n〃30n’α群集になり,西

    側の影響の少ない水域では,餓伽〃2加nα群集となる(図17).

    ハ4’1吻n加nα群集の分布域の東側は,宍道湖底層水の影響を

    多少受けるのでA.“わ8coαri’”がやや含まれ,M2亜群集にな

    り,ほとんど影響の受けない西側では砿ルsoαが独占する

    M1亜群集となる.A〃3〃30n∫α群集の分布域の宍道湖底層水

    の影響水域で宍道湖表層水の影響のある西側では,砿ルsco

    をやや含み,A5,A4亜群集となる.底層水の影響水域で

    のその他の分布域は,A.“加60碑∫”が独占しているA3亜群

    集である.宍道湖東部の宍道湖表層水と中塩分水塊の両方の

    影響を受ける水域では,MルsooやC6αnαr∫8ns’sを含む比

    較的多様性の高いA1亜群集になる.3m以浅の砂底では,〃.

    ルsoαが生息しにくいため,A.“わθccαr∫∫”が独占しているA3

    亜群集が認められる.ただし,この水域では中塩分水塊の活

    発な流入が必要であると思われる.3m以浅の砂底で宍道湖

    表層水の影響水域および淡水に近い斐伊川水の影響水域で

    は,有孔虫は生息しにくいので貧・無有孔虫相が認められる.

    このように宍道湖で認められる有孔虫群集は,水塊の分布と

    流入,波浪などの物理条件によって成立しているものと思わ

    れる.

     4.宍道湖における底生有孔虫の変遷とA配〃10nめイベント

     今回の調査で四季の底生有孔虫の分布を見たが,遺骸群集

    に関しては季節的変化というよりも経年的変遷を観測してい

    る.これまで宍道湖の表層堆積物における底生有孔虫の分布

    を明らかにした調査は,1982年8月に行われたものがある

    (中海・宍道湖自然史研究会,1985:長松,1985MSから作

    成).この調査は定性的ではあるが,詳細に行われている.ま

    た,1994年6月と11月には1側線であるが定量的に分布が

    明らかにされている(野村・吉川,1995).今回の結果とそ

    れらの結果を用いて宍道湖における1982年以降の経年変化

    について検討する.A.“加ocαr∫’”は,1982年8月では,宍道

    湖東部に見られるが,それ以外の水域では皆無である.1992

    年8月では,1982年8月と同様に宍道湖東部に多く,中部~

    西部ではほとんど見られない.1993年6月では宍道湖西部の

    斐伊川河口付近を除いてほぼ全域に見られるようになる.

    1994年では1993年6月とほぼ同じ分布を示すが,多産する

    水域が宍道湖湖心付近まで達している.以上のことから,A.

    “加ccαr∫∫”が増加するのは,宍道湖東部では1982年以前,宍

    道湖中部では1992年である.宍道湖西部の斐伊川河口付近

    は,A.“加coαr∫’”が1994年時点でも見られず,増加すると

    したらそれ以降ということになる.これは宍道湖におけるA.

    “加ocα漉”の増加は同年代に起こるのではなく,十数年の時

    間差が生じていることを示している.

     野村・吉川(1995)や野村(1996)は柱状試料で見られるA.

    “加ccαr∫’”の個体数の増加を始める年代を宍道湖の堆積速度

    から1980-1981年とし,ほぼ同年代に宍道湖で増加現象が

  • 瀬戸 浩二・真先  修・田中 邦昌・高安 克己 75

    起こったと見なしている.また,その年代が化学的酸素要求

    量(COD)の増加時期(CODイベント)と一致することを指摘

    した(野村,1996).大橋川においても同年代にC肋ros∫o〃20∫48s

    cα照r’8ns∫sからA.“わ8ccαr’∫”への群集交換が見られることか

    ら,この有孔虫の群集交換イベントに対し,A“3“τoniαイベ

    ントを提唱した(野村・遠藤,1998).また,中海でもAlnlnon∫α

    イベントあるいはそれに対応する有孔虫群集変化が起きてい

    る(野村・山根,1996;野村・福田,1999).その変化は1980

    年前後のほぼ同年代に起こったと考えられている.しかし,

    今回の結果ではA〃〃noniαイベントは同時間面ではなく,少

    なくとも宍道湖中西部では約12年の時間の差が生じること

    が明らかになった.これは,1980年に宍道湖及び大橋川で

    ほぼ同時に起こっているCODイベントとの間に時間差があ

    ることを示す.A〃1〃30n’αの西方移動は,野村・遠藤(1998)

    の指摘する1980年以降,活発化したといえる.

     A.“わ86Cαr∫∫”が高塩分を好むことを考慮すると,Aln’non’α

    イベントは斐伊川河口域の栄養塩類に富む高塩分化に関連し

    て起こっているものと思われる.恐らく,A〃3〃10niαイベン

    トは海に近い中海側で起こり,時間の経過とともに宍道湖に

    移動してきたと思われる.

    ま と め

     1.調査期間中において宍道湖には顕著な塩分躍層が認め

    られ,それを境界として宍道湖表層水と底層水に区分できる.

    底層水は湖底地形の低い水域を中心に分布しているが,1992

    年11月は底層水の塩分・DOの分布から大橋川から湖心方

    向に流入していると考えられる.1993年6月には底層水の分

    布が大きくなっており,2-6月の間に多量の中塩分水塊,恐

    らく中海表層水が流入したと考えられる.

     2.宍道湖での乾燥試料1g当りの底生有孔虫総個体数は,

    いずれの季節においても東部に多く,中部および西部では極

    端に少ない.また,宍道湖東部でも水深2m以浅の地点で

    は個体数が少なく,産出してない地点もある.調査期間中で

    は,1992年8月の総個体数が最も少なく,1993年6月まで

    増加傾向にある.

     3.宍道湖での底生有孔虫群集は,2群集7亜群集が認め

    られ,それらは主にA.“加ocαr’∫”と砿ルscαで構成されてい

    る.M.血scαは宍道湖表層水(低塩分水塊)の影響下で分布

    し,A.“加C6αr’i”は宍道湖底層水を含む中塩分水塊に規制さ

    れて分布する.

     4.有孔虫群集の分布と水塊構造や底質の特徴から,宍道

    湖で認められる有孔虫群集は水塊の分布と流入や波浪などの

    物理条件によって成立しているものと思われる.

     5.宍道湖における1982年から1994年の底生有孔虫の経

    年変化から,A.“わεcoαr∫∫”の増加(A〃3〃10n如イベント)は宍

    道湖の東西で約12年の時間差を生じていることが示される.

    とくにイベントのあった1980年以降にA“1“30n’oの西方への

    移動が活発化している.

    謝辞:本研究の調査の行うに際して,島根県内水面水産試験

    場三刀屋分場とは調査を共同で行うとともに調査への協力を

    いただいた.中村幹雄博士をはじめ,三刀屋分場の方々に厚

    く御礼を申し上げる.また,本研究は真先(1992MS),田中

    (1993MS)の卒業研究の一部をもとにしている.本研究を進

    めるにあたり,徳岡隆夫教授をはじめ,島根大学理学部地質

    学科地史学・資源地質学講座の教官の方々には貴重な御意見

    をいただいた.また,島根大学教育学部の野村律夫教授には,

    粗原を読んでいただくとともに報告内容について議論してい

    ただいた.この場をかりて厚く御礼を申し上げる.

    文 献

    伊達善夫・橋谷博・清家泰・近藤邦男・奥村稔・藤永薫,1989,12

     年間の定期調査からみた中海・宍道湖の水質一季節変化,経年変 化,平均値一.山陰地域研究(自然環境),5,89-102.

    Ikeya,N.,1977,Ecolgy of foraminifera in the Hamana Lake region of the

     Pacific coast of Japan.Shizuoka Univ.,Fac.Sci.,Rep.,11,131-159.

    Matoba,Y.,1970,Distribution of Recent shallow water foramlnifera of

     Matsushima Bay,Miyagi Prefecture,northeastJapan.Tohoku Univ.,ScL

     Rep.,2nd ser.(GeoL),42(1),L85.

    中海・宍道湖自然史研究会,1985,中海・宍道湖自然史研究 一そ

     の4,アトラスデソ20による宍道湖湖底の音波探査一.島根大地 質研報,4,127-132.

    Nomura,R.and Seto,K.,1992,Benthic foraminifera from brackish lake

     Nakanoumi,San-in district,Southwestem Honshu,Japan.Cεn‘8nαηノφ

     /αραnθ58ルfi6ropo180n∫010gy:227-240.

    Nomura,R.and Takayanagi,Y.,2000,Foraminifera stmctures of some

     Japanese species of the genera A’n1ηon’o and、Pαmro∫α1’α,family

     Rotaliidae(Foraminifera).Paleont.Res.,4(1),17-31.

    野村律夫,1996,湖水環境の人為的改造と底生有孔虫の群集変化:

     その4 有孔虫の群集変化に対応した化学的酸素要求量(COD)と

     宍道湖水の変化.LAGUNA(汽水域研究),3,25-31.

    野村律夫・遠藤公史,1998,汽水域における人為的改造と有孔虫群

     集の変化 一その5A〃2規on∫oイベントの提唱と2005年の宍道湖

     一.LAGUNA(汽水域研究),5,15-26.

    野村律夫・吉川恵吾,1995,湖水環境の人為的改造と底生有孔虫の

     群集変化:その2 宍道湖の中央1測線の結果.島根大学教育学 部紀要,29,3143.

    野村律夫・山根幸夫,1996,湖水環境の人為的改造と底生有孔虫の

     群集変化:その3 中海東部の過去数10年間の環境変化. LAGUNA(汽水域研究),3,B-24.

    野村律夫・福田隆弘,1999,湖水環境の人為的改造と底生有孔虫の

     群集変化:その6 塩分躍層に相当する水深でのA〃2〃↓on如イベン

     トの確認.LAGUNA(汽水域研究),6,119-122.

    奥田節夫,1997,汽水湖における水塊の移動と混合過程.沿岸海洋 研究,35(1),5-13

    瀬戸浩二・山口啓子・田中源吾,1999,中海における炭酸塩殻生物

     の潜在的分布能力.LAGUNA(汽水域研究),6,247-260.

    瀬戸浩二・中山大介・田中秀典・山口啓子,2000,宍道湖における

     アオコの発生とその地球化学的特徴.LAGUNA(汽水域研究),7,

     P.61-69.

    (受付:2000年11月15日,受理:2000年12月1日)

  • 付表1 宍道湖における底生有孔虫の産出リスト

    Stad・nNo.i St1 S‘.2 S“ 飾.11 鱗.12 餅.13 SU4 翫15i 翫.16 翫17       翫.18 餌.19 翫.20i 翫21i St22     St23Sp㏄i¢s           Datei 1992  1993 1992  1993 1992  1993 1992 1992 1992 1992 1992i 1992  1993 1992    1993    1992    1993 19921993i 1992i 1992i 19921993i1992 1993

    Status 811 2 6i 811 2 6i 811 2 6i 8 6i 8 6i 8 6i 8 6i 8i

    811 2 6i 8  11   2   6i 8  11   2   6i 8  6i 8i

    8i 8  6i811 2 6

    BENTHIC FORAMINIFERAHyaline calcareous spedes

    A〃”㎜π」α’わεccα7jj”       L 9 8 1i 5 1 21gi 8i

    18 3   13  8113 8i950 83 36D 3 4  12i 753494i 17    4gi 1

    i2i

    7465i 1i 117 481i

    2   9   1 196i186266451 435i 2 205i 1i

    46 197i165184 49 568E加h翅μ所記vσ;4        D 1

    Ro3σβπα糎1σ雇{め。の砿      D 1 1

    P・r㏄1ane・us spedes

    八朔jo’加eμαo扉。π8σ       D 1

    ρ”」π9μ8’㏄μ伽8Ψ.       D

    Ag固u血ated叩edesA㈱わσα4jf6顔8雄5     D 1 3 1C剛》■o訂。㈱躍6cαπα彪㎝3沁   D 2 1 1

    i1i

    1     1   6 1i 5  1i22 9 11 15ハ舜’如㎜加4加。σ         L 3 1 1 2 2 1 1

    D 20 1i 17 4 1i 16i 128i 1 4 4i 48 4i 6   1i     1  16   4i 8i

    5i

    1     2  1 6 1

    丑oc加㎜加4履α’       L 1

    D 1 3 4 5 1 1 3$pindet・(a8ウ          D 1

    PLANKTONIC FORAMIMFERAαoわjgε吻4覗ρ. 1

    REWORKED FOSSILS

    伽翩翩σω湘 R2gi 1

    cンdα㎜’朋卿.        R 1 1 3 1i

    1 2iC1」加05’o配。’4己鎚μ       R 1

    i1i叩・indet・(ca1ウ      R 18i

    叩・indet・(a8)      R 3i

    BENTHIC FORAMNFERAAg帥廿natedηedes 1 023 1i 020 5 11 4 0 0 01 0 16i 628i ] 1i 4 5i ol 6 050 4i 1 2 8 1i l 122 5i 0  8i

    oi 5i 6  112712 21 17

    P・τ㏄1anoous叩edes o o o oi o o o oi o o o oi o oi o oi o oi o oi oi

    o o o oi o  o  o  oi l o  o  oi o  oi oi

    oi

    o  oi O O 0 0Hyaline副care・us叩edes 3 4 012i 0844295i 22 1 268i 0 1i 1 2i o oi 7473i 1

    i 1172281i2  10   4 196i1992745644351 3 205i o

    i1i

    46 205i174234 132 604PLANKTONIC FORAMINIFERA o o o oi o o o oi o o o oi o oi o oi o oi o oi o

    io o o oi o  o o  oi l o  o  oi o  oi oi o

    io  oi O O 0 0

    REWORKED FOSSH8 o o o oi o o o oi 1 1 3 0i 0 1i@   多

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    TOTALL】VINGSPECIMENS 0 0 3 0i 010 8 1i 5 1 21gi o oi 1 0i o oi 0 8i oi

    1 020 0i 0 0 5 0i13 8113 0i o  oi oi

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    0  8i951 84 36TOTALDAED SPECコMENS 4 42013i 0943995i 21 0 04gi 017i 630i 1 1i 11470i 1i 6175285i 312 7197i188267473440i 3 213i oi 6i 52 198i192195 69 585REWORKED FOSS皿8 o o o oi o o o oi 1 1 3 0i 0 1i 1 3i 051i o oi o

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    TOTAL 4 423 13i 01044796i 27 2 568i 018i 833i 152i 11478i 1i 7177385i

    3  12  12 197i202 275 586 440i 3 213i oi

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