遺留分制度を潜脱する部分を無効と判断 相続対策の信託を ...4 no.772...

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No.772 2019.1.28 4 信託とは、委託者が受託者に対して財産を 移転し、受託者が信託目的に従って受益者の ために信託財産の管理等をすることである (信託法2条)。たとえば、委託者が所有する 賃貸物件(不動産)を受託者に信託し、受託 者がその賃貸物件を管理することにより得た 賃料収入を受益者に給付するという形で利用 される(図表1 参照)。 信託には様々な類型がみられるなか、今回 紹介する裁判事例で用いられた信託は、いわ ゆる後継ぎ遺贈型受益者連続型信託である (信託法91条)。これは、委託者兼受益者が、 受益者の死亡により順次、他の者が新たに受 益権を取得する旨を定めた信託のことを指 し、複数世代に渡って受益権を承継すること ができるものである(図表 2 参照)。 二男に家を継がせる目的で、父が信託を設定 本件の事実関係をみていくと、原告長男及 相続対策として信託を活用するケースも見受けられるなか、相続に関する信託契約の一部を無 効とする判決が下された(東京地裁平成 30 年 9 月12日判決)。委託者である父が生前に設定した 信託は、受託者である被告二男の受益権割合を 6 分の 4とする一方で、原告長男と二女の受益権 割合を各6分の1とするもの(信託財産は父所有の全不動産)。形式的には原告長男に遺留分相 当の受益権が付与されていた。だが、原告長男の訴えに対し東京地裁は、信託契約のうち経済 的利益の分配が想定されない父の居宅及び敷地等を信託財産とした部分は遺留分制度を潜脱す る意図で信託制度を利用したもので無効と判断した。一方で、原告長男が経済的利益を享受で きる賃貸物件等を信託財産とした部分は有効と判断している。本判決は確定していないものの、 信託契約の内容によっては無効とされるリスクがあることを浮き彫りにしたものといえそうだ。 ¥ 【図表1】 信託のイメージ ①委託者 ②受託者 ③受益者 賃貸物件 賃料等 所有する財産 の移転等 (信託の設定) 受託した財産 (信託財産)の 管理等 信託財産から 財産の給付 相続対策の信託をめぐり 東京地裁が注目判決 相続対策の信託をめぐり 東京地裁が注目判決 遺留分制度を潜脱する部分を無効と判断 被告二男を優遇した信託に対し、原告長男が遺留分を侵害されたと主張

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Page 1: 遺留分制度を潜脱する部分を無効と判断 相続対策の信託を ...4 No.772 2019.1.28 信託とは、委託者が受託者に対して財産を 移転し、受託者が信託目的に従って受益者の

No.772 2019.1.284

 信託とは、委託者が受託者に対して財産を移転し、受託者が信託目的に従って受益者のために信託財産の管理等をすることである

(信託法2条)。たとえば、委託者が所有する賃貸物件(不動産)を受託者に信託し、受託者がその賃貸物件を管理することにより得た賃料収入を受益者に給付するという形で利用される(図表1参照)。 信託には様々な類型がみられるなか、今回

紹介する裁判事例で用いられた信託は、いわゆる後継ぎ遺贈型受益者連続型信託である

(信託法91条)。これは、委託者兼受益者が、受益者の死亡により順次、他の者が新たに受益権を取得する旨を定めた信託のことを指し、複数世代に渡って受益権を承継することができるものである(図表2参照)。二男に家を継がせる目的で、父が信託を設定 本件の事実関係をみていくと、原告長男及

 相続対策として信託を活用するケースも見受けられるなか、相続に関する信託契約の一部を無効とする判決が下された(東京地裁平成30年9月12日判決)。委託者である父が生前に設定した信託は、受託者である被告二男の受益権割合を6分の4とする一方で、原告長男と二女の受益権割合を各6分の1とするもの(信託財産は父所有の全不動産)。形式的には原告長男に遺留分相当の受益権が付与されていた。だが、原告長男の訴えに対し東京地裁は、信託契約のうち経済的利益の分配が想定されない父の居宅及び敷地等を信託財産とした部分は遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したもので無効と判断した。一方で、原告長男が経済的利益を享受できる賃貸物件等を信託財産とした部分は有効と判断している。本判決は確定していないものの、信託契約の内容によっては無効とされるリスクがあることを浮き彫りにしたものといえそうだ。

配偶者居住権(1,000万円)預貯金1,500万円

負担付の所有権(1,000万円)預貯金1,500万円

特定事業者 経済産業局等

税 務 署

①高度省エネルギー増進設備等に関する投資計画の確認申請書の提出

②高度省エネルギー増進設備等に関する投資計画の確認書の交付(申請書提出後30日以内目途)

③税務 申告

 特別寄与料の額を定めるに当たっては、現行の寄与分(第904条の2)において、相続人が自ら被相続人に対する療養看護を行った場合と概ね同様の取扱いがされると考えられる。

【現行実務の代表的な考え方】 第三者の日当額 × 療養看護日数 × 裁量割合

※第三者に療養看護に当たらせた場合に負担すべき費用の支出を免れていると考える。※「第三者の日当額」については介護報酬基準額(注)を用いる考え方もある。※裁量割合については、介護報酬基準額が、有資格の介助者のサービスについて、介護機関に対して支払われるべきものであることを考慮し、減額をするもの。

 実務上、0.5~0.8等が一般的であるとの指摘がある。

(注)介護報酬基準額目安  身体介護(排泄、食事介助、入浴等)  20分以上30分未満 2,450円  30分以上1時間未満 3,888円  1時間 5,640円          (30分ごとに800円加算)

2,000万円

中小機構(大規模法人)

事業会社A(大規模法人)

その他(中小法人)

資本金5億円

100%

100%

出資(40%)

出資(30%)

出資(30%)

資本金5千万円

資本金3千万円

中小企業投資促進税制等の適用対象外

大規模法人の所有70%

3,000万円

配偶者居住権(1,000万円)

負担付き所有権(1,000万円)

遺 産

(出典:法務省)

(出典:法務省)

(出典:法務省)

(出典:自民党税制調査会)

建物の相続税評価額 - 下記②

×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

建物の相続税評価額

法定耐用年数(非事業用)-築年数-居住権の存続年数※1

法定耐用年数(非事業用)-築年数

土地の相続税評価額 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

×土地の相続税評価額

存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率 ×土地の相続税

評価額存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

※1 存続年数は、配偶者の平均余命年数を上限とする。※2 敷地に対する権利は、小規模宅地等の特例の対象とする。

①配偶者居住権(建物)

土地の相続税評価額 - 下記④③配偶者居住権(敷地に対する権利)※2

②建物所有権

④土地所有権

介 護

×

被相続人

長女 次男 亡き長男 長男の妻

金銭請求

措置法のみなし大企業【みなし大企業に該当する例】

法人税法のみなし大企業

事業承継ファンド

出資(100%)

大規模法人からの出資割合:70%

中小企業税制適用不可

C社(資本金1億円以下)

生活援助(掃除、洗濯、一般的な調理等) 20分以上45分未満 1,830円 45分以上 2,250円

被相続人を2年間、1日合計1時間程度介護していた場合特別寄与料=約6,000円 × 365日 × 2 年 × 0.7(裁量割合)≒約300万円※各相続人は、算定された特別寄与料に各相続人の相続分を乗じた額について支払の責任を負う。

上記の計算によった場合の算定例

◯ 同一の大規模法人に発行済株式(※)の1/2以上を直接に保有されている資本金1億円以下の法人

◯ 複数の大規模法人に発行済株式(※)の2/3以上を直接に保有されている資本金1億円以下の法人

◯ 大法人に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている資本金1億円以下の法人

◯ 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている資本金1億円以下の法人

大規模法人• 資本金1億円超の法人• 非出資で従業員数1,000人超の法人

《改正案》• 100%グループ内の大法人(資本金5億円以上の法人、相互会社・外国相互会社(注)又は受託法人)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人

大法人(注)• 資本金5億円以上の法人•相互会社、外国相互会社•受託法人(注1)いわゆる「大法人(資本金1億円超の法人)」とは異なる。

(注2)100%グループ企業の一体性に着目したもの。

(大規模法人)

みなし大企業

(大規模法人)

みなし大企業

みなし大企業

(大規模法人)

みなし大企業

(大法人)

(出典:自民党税制調査会)

(出典:自民党税制調査会)

(出典:自民党税制調査会)

(注)常時使用従業員数が1,000人超のもの。

中小機構事業会社A

(大規模法人)その他

(中小法人)

出資(40%)

出資(30%)

出資(30%)

大規模法人の所有70%

事業承継ファンド(※)

出資(100%)

中小企業税制

C社(資本金1億円以下)

※資本金1億円以下の事業者のうち、以下は大企業とみなす。 ①発行済株式等の1/2以上を同一の大規模法人が所有 ②発行済株式等の2/3以上を複数の大規模法人が所有

大規模法人の所有等株式等に含まないこととする。

(※)中小企業等経営強化法に基づく認定を受けたもの

適用可能

①中小企業投資促進税②商業・サービス業・農林水産業活性化税制③中小企業経営強化税制④被災代替資産等の特別償却⑤防災・減災設備の特別焼却【新設】

(※)発行済株式から自己株式を除くこととする。

現  行 改 正 案

現  行 改 正 案

大規模法人からの出資割合:30%

【図】事案の概要

給与等支給額

平成21年8月から平成23年6月までの期間(一定期間を除く)について、延滞税が発生。

平成21年8月納付

平成23年1月還付

平成23年6月納付

当初申告額

約4,185万円約3,035万円 約3,071万円

売買

売り手買い手 電子レシートの提供

❶減額更正❷

増額更正❸ ❹

税務署

最高裁

「増額更正に係る税額(上図③)と「減額更正に係る税額(上図②)」との差額(上図③の■部分)について、当初の法定納期限の翌日(平成21年8月)から増差税額の納期限(平成23年6月)までの期間に係る延滞税は発生しない。 納税者逆転勝訴

【図】特定事業者が申請者となる場合

【図2】

【図1】【図表1】配偶者居住権

【図表1】範囲の適正化(案)

【図表2】事業承継ファンドから出資を受けた場合の中小企業投資促進税制等の適用の特例(案)

【図表3】研究開発税制の見直し(案)

【図表3】相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(特別の寄与)

【図表3】特別寄与料の額を定める際における現行実務の代表的な考え

【図表2】配偶者居住権の相続税の評価方法

【図1】設備取得後に、当該設備の内容を記載した中長期計画書及び確認申請書を提出し    確認書の交付を受けた場合(→税制措置の対象)

A国の金融機関

外国の金融機関に口座を保有する日本居住者(個人・法人等)の情報(名前、個人番号・法人番号(マイナンバー)、口座残高、利子・配当等の年間受取総額等)が、外国の税務当局から国税庁に集まる。

【図】「別訴判決」の概要と更正の請求をめぐる東京地裁の判断

相続人(納税者)

裁判所

時価(@1,083円)と譲渡価額(@642円)の差額を関係会社へ求める訴訟を提起。

❷本件株式の評価額を@642円へ修正する旨の更正の請求。❹

更正の請求を認めず。

被相続人と関係会社との間で本件株式を@642円で譲渡する旨の合意あり。請求棄却(別訴判決)。

「別訴判決」は「判決」(通則法23②一)に該当。税務署の処分の取り消しを求める訴訟を提起。❻❼「別訴判決」は「判決」(通則法23②一)

に該当せず。請求棄却。

【表1】ウェブ掲載事項

【図表】計画制度

(国税庁資料を一部加工)

主務大臣 が基本方針を策定(関係行政機関へ協議)

都道府県知事が基本計画を策定(主務大臣に協議・同意)

市町村が実施計画を策定(都道府県知事に協議・同意)

※主務大臣:農林水産大臣、経済産業大臣、厚生労働大臣、 国土交通大臣

○○ホームセンター△△店

平成29年8月30日

A商品 ……円B商品 ……円合計 ○○○円

支払  ○○○円お釣り  ○○○円

会員No.123456789

H30/4 H31/3 H32/3

平成28年度、29年度提出の定期報告書がSクラス

中長期計画書提出

(当該設備の記載あり)

S評価(2年目)

設備取得

確認申請書提出

確認書交付

事業年度末

【図2】設備取得をした事業年度末以降に確認申請書を提出している場合   (→税制措置の対象外)

H30/4 H31/3 H32/3

平成28年度、29年度提出の定期報告書がSクラス

中長期計画書提出

(当該設備の記載あり)

S評価(2年目)

設備取得

確認申請書提出

確認書交付

事業年度末

経営主体は誰?

D社経営

B店経営

?

A店(連年損失)

私が引き継いだ

子(請求人)

父(請求人の父)

原処分調査での認定

異議調査での認定

青色申告決算書

70

確定申告書

70100

確定申告A→事業D→給与

確定申告A→給与B→事業営業許可

リース契約

注文書(保存)

青色申告決算書

70

確定申告書

70100

注文書(保存)

100 → (70)

一覧表(破棄)

Restaurant

Restaurant

親会社

吸収合併

株主

子会社 消滅会社

親会社株式の付与

〈現行制度上「適格」と認められる三角合併〉

親会社

吸収合併

株主

子会社 消滅会社

親会社株式の付与

〈改正により「適格」とすることが検討される三角合併〉

消滅会社

親会社株式の付与

株主

総額型 一般試験研究費に係る税額控除

税額控除率

控除上限

試験研究費の増減に応じ、6%~14%※(中小法人:12%~17%※)

法人税額の25%*中小法人:10%上乗せ(増加率5%超の場合)※*試験研究費が平均売上金額の10%超の場合:0~10%上乗せ※

(*:高水準型との選択)

高水準型(30年度末期限)税額控除率控除上限

(試験研究費割合-10%)×20%

法人税額の10%

オープンイノベーション型 特別試験研究費に係る税額控除

税額控除率控除上限

特別試験研究費の内容に応じ、20%or30%

法人税額の5%(一般試験研究費とは別枠)

対象範囲

総額型

税額控除率

控除上限

法人税額の25%(研究開発を行う一定のベンチャーは40%)*中小法人:10%上乗せ(増加率8%超の場合)※*試験研究費が平均売上金額の10%超の場合:0~10%上乗せ※

試験研究費の増減に応じ、6%~14%※(中小法人:12%~17%※)*試験研究費が平均売上金額の10%超の場合: 上記割合×(試験研究費割合-10%)×0.5を加算※

※平成32年度末までの時限措置 総額型の控除率については 大法人:10%超、中小法人:12%超 の部分

・国の試験研究機関等・大学との間の共同・委託研究・民間企業との共同研究、中小企業の知的財産権使用料など

オープンイノベーション型税額控除率控除上限 法人税額の10%(一般試験研究費とは別枠)

対象範囲

・国の試験研究機関等・大学との間の共同・委託研究・民間企業との共同研究、中小企業の知的財産権使用料・民間企業(研究開発型ベンチャーを含む)への委託研究のうち、一定のもの・特定用途医薬品等に関する試験研究 など

特別試験研究費の内容に応じ、20% or 25% or 30%

平均売上金額の10%超の試験研究費に係る税額控除

¥

?

【図表1】信託のイメージ

【図表2】後継ぎ遺贈型受益者連続型信託に関する受益者のイメージ

【図表3】本件信託(後継ぎ遺贈型受益者連続型信託)における受益権取得者の順位

①委託者 ②受託者 ③受益者

賃貸物件 賃料等所有する財産の移転等(信託の設定)

受託した財産(信託財産)の管理等

信託財産から財産の給付

委託者兼当初受益者(父)

父(当初受益者)

原告長男(受益権割合6分の1)

二女(受益権割合6分の1)

被告二男(受益権割合6分の4)

被告二男の子供ら(均等に取得)

二女(受益権割合6分の1)

原告長男(受益権割合6分の1)

被告二男(受益権割合6分の4)

第2次受益者(子)

第3次受益者(孫)

父の相続発生

受益権

子の相続発生

受益権

受益権取得の第1順位 受益権取得の第2順位

×

相続対策の信託をめぐり東京地裁が注目判決相続対策の信託をめぐり東京地裁が注目判決

遺留分制度を潜脱する部分を無効と判断

被告二男を優遇した信託に対し、原告長男が遺留分を侵害されたと主張

テキストボックス
最新号を含む見本誌を無料で進呈しております。下記よりご請求下さい。
テキストボックス
◉週刊T&Amaster 商品概要 https://www.sn-hoki.co.jp/shop/product/book/detail_2531.html ☎0120-6021-86  見本誌請求 http://www.lotus21.co.jp/mihonsi.html           無料立読みサイト http://www.lotus21.co.jp/ta
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No.772 2019.1.28 5

び被告二男の父は、被告二男及びその直系血族に家を継いでほしいという気持ちがあったことなどから、死亡する約2週間前に父が所有する全ての不動産と金銭300万円を信託財産として、被告二男を受託者とする本件信託(信託契約の締結)を行った。 本件信託は、信託不動産から生じる利益

(信託不動産の賃料等や売却代金)を受益者が得ることができるもので、当初の受益者を父、父死亡後の受益者の第1順位は法定相続人である原告長男(受益権割合6分の1)、二女(受益権割合6分の1)、被告二男(受益権割合6分の4)とされており、第1順位の受益者が死亡した場合の受益権取得者となる第2順位の受益者は被告二男の子供らとされていた(図表3参照)。また、受益者が複数となった場合には、受益者の一人は他の受益者に対して最新の固定資産税評価額をもって受益権の取得を請求することができるとされていた。なお、本件信託の契約日の4日前

に父は、全財産の3分の1を二女に贈与する旨の死因贈与契約を二女との間で締結するとともに、全財産の3分の2を被告二男に贈与する旨の死因贈与契約を締結している。 被告二男は、本件信託に基づき本件信託に関する不動産について、信託を原因として受託者を被告二男とする所有権移転登記及び信託登記を行った。 これに対し原告長男は、被告二男に対して本件死因贈与又は本件信託により遺留分を侵害されたとして、遺留分減殺の意思表示をした。そして裁判のなかで原告長男は、本件信託は自身が有していた遺留分減殺請求を不当に免れるものであるなどと指摘し、本件信託は公序良俗に反する無効なものであるなどと主張。原告長男は、被告二男に対して本件信託に関する不動産の所有権移転登記及び信託登記の抹消登記手続等を請求したほか、遺留分減殺を原因とした持分一部移転登記手続等を請求していた。

配偶者居住権(1,000万円)預貯金1,500万円

負担付の所有権(1,000万円)預貯金1,500万円

特定事業者 経済産業局等

税 務 署

①高度省エネルギー増進設備等に関する投資計画の確認申請書の提出

②高度省エネルギー増進設備等に関する投資計画の確認書の交付(申請書提出後30日以内目途)

③税務 申告

 特別寄与料の額を定めるに当たっては、現行の寄与分(第904条の2)において、相続人が自ら被相続人に対する療養看護を行った場合と概ね同様の取扱いがされると考えられる。

【現行実務の代表的な考え方】 第三者の日当額 × 療養看護日数 × 裁量割合

※第三者に療養看護に当たらせた場合に負担すべき費用の支出を免れていると考える。※「第三者の日当額」については介護報酬基準額(注)を用いる考え方もある。※裁量割合については、介護報酬基準額が、有資格の介助者のサービスについて、介護機関に対して支払われるべきものであることを考慮し、減額をするもの。

 実務上、0.5~0.8等が一般的であるとの指摘がある。

(注)介護報酬基準額目安  身体介護(排泄、食事介助、入浴等)  20分以上30分未満 2,450円  30分以上1時間未満 3,888円  1時間 5,640円          (30分ごとに800円加算)

2,000万円

中小機構(大規模法人)

事業会社A(大規模法人)

その他(中小法人)

資本金5億円

100%

100%

出資(40%)

出資(30%)

出資(30%)

資本金5千万円

資本金3千万円

中小企業投資促進税制等の適用対象外

大規模法人の所有70%

3,000万円

配偶者居住権(1,000万円)

負担付き所有権(1,000万円)

遺 産

(出典:法務省)

(出典:法務省)

(出典:法務省)

(出典:自民党税制調査会)

建物の相続税評価額 - 下記②

×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

建物の相続税評価額

法定耐用年数(非事業用)-築年数-居住権の存続年数※1

法定耐用年数(非事業用)-築年数

土地の相続税評価額 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

×土地の相続税評価額

存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率 ×土地の相続税

評価額存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

※1 存続年数は、配偶者の平均余命年数を上限とする。※2 敷地に対する権利は、小規模宅地等の特例の対象とする。

①配偶者居住権(建物)

土地の相続税評価額 - 下記④③配偶者居住権(敷地に対する権利)※2

②建物所有権

④土地所有権

介 護

×

被相続人

長女 次男 亡き長男 長男の妻

金銭請求

措置法のみなし大企業【みなし大企業に該当する例】

法人税法のみなし大企業

事業承継ファンド

出資(100%)

大規模法人からの出資割合:70%

中小企業税制適用不可

C社(資本金1億円以下)

生活援助(掃除、洗濯、一般的な調理等) 20分以上45分未満 1,830円 45分以上 2,250円

被相続人を2年間、1日合計1時間程度介護していた場合特別寄与料=約6,000円 × 365日 × 2 年 × 0.7(裁量割合)≒約300万円※各相続人は、算定された特別寄与料に各相続人の相続分を乗じた額について支払の責任を負う。

上記の計算によった場合の算定例

◯ 同一の大規模法人に発行済株式(※)の1/2以上を直接に保有されている資本金1億円以下の法人

◯ 複数の大規模法人に発行済株式(※)の2/3以上を直接に保有されている資本金1億円以下の法人

◯ 大法人に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている資本金1億円以下の法人

◯ 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている資本金1億円以下の法人

大規模法人• 資本金1億円超の法人• 非出資で従業員数1,000人超の法人

《改正案》• 100%グループ内の大法人(資本金5億円以上の法人、相互会社・外国相互会社(注)又は受託法人)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人

大法人(注)• 資本金5億円以上の法人•相互会社、外国相互会社•受託法人(注1)いわゆる「大法人(資本金1億円超の法人)」とは異なる。

(注2)100%グループ企業の一体性に着目したもの。

(大規模法人)

みなし大企業

(大規模法人)

みなし大企業

みなし大企業

(大規模法人)

みなし大企業

(大法人)

(出典:自民党税制調査会)

(出典:自民党税制調査会)

(出典:自民党税制調査会)

(注)常時使用従業員数が1,000人超のもの。

中小機構事業会社A

(大規模法人)その他

(中小法人)

出資(40%)

出資(30%)

出資(30%)

大規模法人の所有70%

事業承継ファンド(※)

出資(100%)

中小企業税制

C社(資本金1億円以下)

※資本金1億円以下の事業者のうち、以下は大企業とみなす。 ①発行済株式等の1/2以上を同一の大規模法人が所有 ②発行済株式等の2/3以上を複数の大規模法人が所有

大規模法人の所有等株式等に含まないこととする。

(※)中小企業等経営強化法に基づく認定を受けたもの

適用可能

①中小企業投資促進税②商業・サービス業・農林水産業活性化税制③中小企業経営強化税制④被災代替資産等の特別償却⑤防災・減災設備の特別焼却【新設】

(※)発行済株式から自己株式を除くこととする。

現  行 改 正 案

現  行 改 正 案

大規模法人からの出資割合:30%

【図】事案の概要

給与等支給額

平成21年8月から平成23年6月までの期間(一定期間を除く)について、延滞税が発生。

平成21年8月納付

平成23年1月還付

平成23年6月納付

当初申告額

約4,185万円約3,035万円 約3,071万円

売買

売り手買い手 電子レシートの提供

❶減額更正❷

増額更正❸ ❹

税務署

最高裁

「増額更正に係る税額(上図③)と「減額更正に係る税額(上図②)」との差額(上図③の■部分)について、当初の法定納期限の翌日(平成21年8月)から増差税額の納期限(平成23年6月)までの期間に係る延滞税は発生しない。 納税者逆転勝訴

【図】特定事業者が申請者となる場合

【図2】

【図1】【図表1】配偶者居住権

【図表1】範囲の適正化(案)

【図表2】事業承継ファンドから出資を受けた場合の中小企業投資促進税制等の適用の特例(案)

【図表3】研究開発税制の見直し(案)

【図表3】相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(特別の寄与)

【図表3】特別寄与料の額を定める際における現行実務の代表的な考え

【図表2】配偶者居住権の相続税の評価方法

【図1】設備取得後に、当該設備の内容を記載した中長期計画書及び確認申請書を提出し    確認書の交付を受けた場合(→税制措置の対象)

A国の金融機関

外国の金融機関に口座を保有する日本居住者(個人・法人等)の情報(名前、個人番号・法人番号(マイナンバー)、口座残高、利子・配当等の年間受取総額等)が、外国の税務当局から国税庁に集まる。

【図】「別訴判決」の概要と更正の請求をめぐる東京地裁の判断

相続人(納税者)

裁判所

時価(@1,083円)と譲渡価額(@642円)の差額を関係会社へ求める訴訟を提起。

❷本件株式の評価額を@642円へ修正する旨の更正の請求。❹

更正の請求を認めず。

被相続人と関係会社との間で本件株式を@642円で譲渡する旨の合意あり。請求棄却(別訴判決)。

「別訴判決」は「判決」(通則法23②一)に該当。税務署の処分の取り消しを求める訴訟を提起。❻❼「別訴判決」は「判決」(通則法23②一)

に該当せず。請求棄却。

【表1】ウェブ掲載事項

【図表】計画制度

(国税庁資料を一部加工)

主務大臣 が基本方針を策定(関係行政機関へ協議)

都道府県知事が基本計画を策定(主務大臣に協議・同意)

市町村が実施計画を策定(都道府県知事に協議・同意)

※主務大臣:農林水産大臣、経済産業大臣、厚生労働大臣、 国土交通大臣

○○ホームセンター△△店

平成29年8月30日

A商品 ……円B商品 ……円合計 ○○○円

支払  ○○○円お釣り  ○○○円

会員No.123456789

H30/4 H31/3 H32/3

平成28年度、29年度提出の定期報告書がSクラス

中長期計画書提出

(当該設備の記載あり)

S評価(2年目)

設備取得

確認申請書提出

確認書交付

事業年度末

【図2】設備取得をした事業年度末以降に確認申請書を提出している場合   (→税制措置の対象外)

H30/4 H31/3 H32/3

平成28年度、29年度提出の定期報告書がSクラス

中長期計画書提出

(当該設備の記載あり)

S評価(2年目)

設備取得

確認申請書提出

確認書交付

事業年度末

経営主体は誰?

D社経営

B店経営

?

A店(連年損失)

私が引き継いだ

子(請求人)

父(請求人の父)

原処分調査での認定

異議調査での認定

青色申告決算書

70

確定申告書

70100

確定申告A→事業D→給与

確定申告A→給与B→事業営業許可

リース契約

注文書(保存)

青色申告決算書

70

確定申告書

70100

注文書(保存)

100 → (70)

一覧表(破棄)

Restaurant

Restaurant

親会社

吸収合併

株主

子会社 消滅会社

親会社株式の付与

〈現行制度上「適格」と認められる三角合併〉

親会社

吸収合併

株主

子会社 消滅会社

親会社株式の付与

〈改正により「適格」とすることが検討される三角合併〉

消滅会社

親会社株式の付与

株主

総額型 一般試験研究費に係る税額控除

税額控除率

控除上限

試験研究費の増減に応じ、6%~14%※(中小法人:12%~17%※)

法人税額の25%*中小法人:10%上乗せ(増加率5%超の場合)※*試験研究費が平均売上金額の10%超の場合:0~10%上乗せ※

(*:高水準型との選択)

高水準型(30年度末期限)税額控除率控除上限

(試験研究費割合-10%)×20%

法人税額の10%

オープンイノベーション型 特別試験研究費に係る税額控除

税額控除率控除上限

特別試験研究費の内容に応じ、20%or30%

法人税額の5%(一般試験研究費とは別枠)

対象範囲

総額型

税額控除率

控除上限

法人税額の25%(研究開発を行う一定のベンチャーは40%)*中小法人:10%上乗せ(増加率8%超の場合)※*試験研究費が平均売上金額の10%超の場合:0~10%上乗せ※

試験研究費の増減に応じ、6%~14%※(中小法人:12%~17%※)*試験研究費が平均売上金額の10%超の場合: 上記割合×(試験研究費割合-10%)×0.5を加算※

※平成32年度末までの時限措置 総額型の控除率については 大法人:10%超、中小法人:12%超 の部分

・国の試験研究機関等・大学との間の共同・委託研究・民間企業との共同研究、中小企業の知的財産権使用料など

オープンイノベーション型税額控除率控除上限 法人税額の10%(一般試験研究費とは別枠)

対象範囲

・国の試験研究機関等・大学との間の共同・委託研究・民間企業との共同研究、中小企業の知的財産権使用料・民間企業(研究開発型ベンチャーを含む)への委託研究のうち、一定のもの・特定用途医薬品等に関する試験研究 など

特別試験研究費の内容に応じ、20% or 25% or 30%

平均売上金額の10%超の試験研究費に係る税額控除

¥

?

【図表1】信託のイメージ

【図表2】後継ぎ遺贈型受益者連続型信託に関する受益者のイメージ

【図表3】本件信託(後継ぎ遺贈型受益者連続型信託)における受益権取得者の順位

①委託者 ②受託者 ③受益者

賃貸物件 賃料等所有する財産の移転等(信託の設定)

受託した財産(信託財産)の管理等

信託財産から財産の給付

委託者兼当初受益者(父)

父(当初受益者)

原告長男(受益権割合6分の1)

二女(受益権割合6分の1)

被告二男(受益権割合6分の4)

被告二男の子供ら(均等に取得)

二女(受益権割合6分の1)

原告長男(受益権割合6分の1)

被告二男(受益権割合6分の4)

第2次受益者(子)

第3次受益者(孫)

父の相続発生

受益権

子の相続発生

受益権

受益権取得の第1順位 受益権取得の第2順位

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Page 3: 遺留分制度を潜脱する部分を無効と判断 相続対策の信託を ...4 No.772 2019.1.28 信託とは、委託者が受託者に対して財産を 移転し、受託者が信託目的に従って受益者の

No.772 2019.1.286

居宅及び敷地等を信託財産とした部分は無効 東京地裁は、信託財産である「①父の居宅及び敷地等、②賃貸物件、③売却済みの不動産、④無償貸与している倉庫敷地等、⑤山林」(図表4参照)について、受託者である被告二男は①父の居宅及び敷地等を売却や賃貸する意思がないこと、④無償貸与している倉庫敷地等及び⑤山林はほぼ無価値の土地で収益を上げることも現実的に不可能であることを指摘。この点を踏まえ地裁は、父は上記①、④及び⑤の不動産から得られる経済的利益を分配することを本件信託当時より想定していなかったと認めるのが相当であるとした。 さらに地裁は、父が生前に行った本件死因贈与は原告長男の遺留分を侵害するものであったこと、本件信託は原告に遺留分割合と同じ割合の受益権を与えるにとどまるものであったことからすると、仮に原告長男が遺留分減殺請求権を行使して受益権割合が増加したとしても、上記①、④及び⑤の不動産によ

り発生する経済的利益がない限り、原告長男がその増加した受益権割合に相応する経済的利益を得ることは不可能である点などを指摘。父が上記①、④及び⑤の不動産を本件信託の信託財産に含めたのは、これらの不動産に対する遺留分減殺請求を回避する目的であったと解さざるを得ないとした。 以上の点を踏まえ地裁は、本件信託のうち経済的利益の分配が想定されない上記①、④及び⑤の不動産を信託財産に含めた部分は遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したもので、公序良俗に反して無効であると判断したうえで、上記①、④及び⑤の不動産について所有権移転登記及び信託登記の抹消登記手続と遺留分減殺を原因とした持分一部移転登記手続をすること等を被告二男に命じた。一方で地裁は、本件信託のうち原告長男が経済的利益を享受することができる②賃貸物件、③売却済みの不動産、信託金銭300万円に関する部分は有効であると判断している。

【図表4】本件信託に関する信託財産(信託不動産)の内容

①父が居住していた居宅及びその敷地等(固定資産税評価額約3億5,000万円)

②賃貸物件(共同住宅2棟)とその敷地(固定資産税評価額約1億2,000万円)※ 共同住宅2棟の賃料収入は年間約1,000万円である。

③相続税納付のために売却済みの不動産(固定資産税評価額約1億2,000万円)

④無償貸与している倉庫敷地とその付近の私道敷地(固定資産税は非課税)

⑤栃木県の山林(固定資産税評価額約2万円)

遺留分減殺の対象は信託財産ではなく受益権と判断 今回紹介した裁判事例では、遺留分減殺の対象は信託財産か受益権かという点も争われていた。この点に関し地裁は、信託契約による信託財産の移転は信託目的達成のための形式的な所有権移転にすぎないため、実質的に権利として移転される受益権を遺留分減殺の対象とすべきと判断している。

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