酸窒化亜鉛を用いた 高移動度tftの開発 - nhkンジスター(tft:thin-film...

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02 38 NHK技研 R&D/No.167/2018.1 酸窒化亜鉛を用いた 高移動度TFTの開発 辻 博史  武井達哉  中田 充  宮川幹司  藤崎好英 Development of High-Mobility Zinc Oxynitride Thin-Film Transistors Hiroshi TSUJI, Tatsuya TAKEI, Mitsuru NAKATA, Masashi MIYAKAWA and Yoshihide FUJISAKI 要 約 高い移動度を有し,低温プロセスで作製可能な薄膜トラ ンジスター(TFT:Thin-Film Transistor)は,フレキシ ブル有機EL(Electroluminescence:電界発光)ディ スプレーの大画面化,低消費電力化に有効である。 今 回,半導体材料に酸窒化亜鉛(ZnON)を用いることで, プラスチック基板に適用可能な低温プロセス(200 ℃) で高移動度TFTを作製した。さらに,ZnON膜中に微量 のシリコンを添加することで,TFTのスイッチング特性お よび長期安定性を大幅に改善できることを見いだした。 ABSTRACT Thin-film transistors (TFTs), which exhibit high mobilities and can be fabricated at low temperatures, are promising for realizing large-sized, low-power- consumption flexible organic light-emitting diode displays. We have developed high-mobility TFTs by using Zn-O-N (ZnON) as a channel material at a low temperature of 200 °C. Furthermore, silicon doping into ZnON films is found to be effective at improving the switching characteristics and long-term stability of ZnON-TFTs.

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Page 1: 酸窒化亜鉛を用いた 高移動度TFTの開発 - NHKンジスター(TFT:Thin-Film Transistor)は,フレキシ ブル有機EL(Electroluminescence:電界発光)ディ

02

38 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

酸窒化亜鉛を用いた 高移動度TFTの開発辻 博史  武井達哉  中田 充  宮川幹司  藤崎好英

Development of High-Mobility Zinc Oxynitride Thin-Film Transistors

Hiroshi TSUJI, Tatsuya TAKEI, Mitsuru NAKATA, Masashi MIYAKAWAand Yoshihide FUJISAKI

要 約

高い移動度を有し,低温プロセスで作製可能な薄膜トラ

ンジスター(TFT:Thin-Film Transistor)は,フレキシ

ブル有機EL(Electroluminescence:電界発光)ディ

スプレーの大画面化,低消費電力化に有効である。今

回,半導体材料に酸窒化亜鉛(ZnON)を用いることで,

プラスチック基板に適用可能な低温プロセス(200 ℃)

で高移動度TFTを作製した。さらに,ZnON膜中に微量

のシリコンを添加することで,TFTのスイッチング特性お

よび長期安定性を大幅に改善できることを見いだした。

ABSTRACT

Thin-film transistors (TFTs), which exhibit high

mobilities and can be fabricated at low temperatures,

are promising for realizing large-sized, low-power-

consumption flexible organic light-emitting diode

displays. We have developed high-mobility TFTs by

using Zn-O-N (ZnON) as a channel material at a low

temperature of 200 °C. Furthermore, silicon doping

into ZnON films is found to be effective at improving

the switching characteristics and long-term stability

of ZnON-TFTs.

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39NHK技研 R&D/No.167/2018.1

1.はじめに

家庭に導入しやすい8Kスーパーハイビジョン(以下,8K)用ディスプレーの実現を目指し,薄くて軽くフレキシブルなシート型有機ELディスプレーの研究を進めている。有機ELディスプレーの各画素は,有機EL素子とそれを駆動するための薄膜トランジスター(以下,TFT)で構成される。大画面で超多画素な8K用ディスプレーでは,パネル駆動の安定化や低消費電力化のために,電流駆動能力(電流を流す能力)の高いTFTが求められ,TFTのチャネル材料(電流が流れる部分に用いる材料)として高移動度*1半導体材料が必要となる。また,ディスプレーの基板としてフレキシブルなプラスチックフィルムを用いるためには,ガラス基板を用いる場合に比べて,TFTを低温(300 ℃以下)で形成できることが望ましい。

近年,TFTの高移動度半導体材料として,In-Sn-Zn -O,1)2)In-Ga-O,3)In-W-O,4)In-W-Zn-O,5)Zn-O-N 6)(ZnON)等の酸化物半導体材料が検討されている。中でもZnONは電子の有効質量*2が小さい7)ため,高移動度TFTを実現する上で有望な材料の1つである。実際に,ZnONを用いたTFT(以下,ZnON-TFT)が,従来の酸化物半導体材料を用いたTFTに比べて非常に高い電界効果移動度*3(μ)(> 50 cm2/Vs)を示すことが報告されている8)〜 11)。しかしながら,ZnON-TFTはその高い移動度にもかかわらず,実用化に向けては2つの大きな課題がある。第1に,ZnON中の窒素空孔8)12)*4に起因する過剰なキャリアやトラップ*5が原因となり,負にシフトしたしきい値電圧(Vth)*6と比較的大きなサブスレッショルド係数(SS:Subthreshold Slope)*7を有する傾向がある。こうしたVthとSSの特性は,TFTの高速・低消費電力動作時のスイッチング特性の低下を招き,改善が必要となる。第2に,大気中でZnON-TFTを長時間保存した場合,その電気特性が経時的に変化してしまうという問題がある。ZnON膜からの窒素の脱離10)がこの不安定性の原因の1つと考えられる。ZnON-TFTの安定した動作を実現するためには,長期安定性の改善も必要となる。

今回,これらの2つの課題の解決を目指し,ZnON膜への微量のシリコン添加を行った。シリコンは亜鉛と比べて窒素との結合解離エネルギー*8が大きい13)〜 15)ため,ZnON膜中でのSi-N結合の形成により,窒素空孔の低減および窒素の脱離抑制が期待される。このシリコン添加の効果を検証するために,X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)*9,ホール効果測

定*10,および昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectrometry)*11を用い,ZnON膜の分析を行うとともに,シリコン添加を行ったZnON-TFTを試作し,そのスイッチング特性および長期安定性を評価した。本稿では,その結果について報告する。

2.ZnON膜へのシリコンの添加方法

ZnON膜へのシリコンの添加方法を1図に示す。スパッタリング*12 装置のチャンバー内に,Ar / O2 / N2

の混合ガス(流量比は5 : 0.5 : 10)を流し,その中で亜鉛とシリコンの2つのターゲットを用いて,共スパッタリング(複数のターゲットを用いたスパッタリング)によりZnON膜へのシリコン添加を行った。亜鉛ターゲットに加える電力は100 Wに固定し,シリコンターゲットに加える電力を0 〜 50 Wの範囲で変え,ZnON膜中のシリコン添加量(Csi)を変化させた。Csiはシリコンター

N2

O2

Ar

Ar/O2/N2(流量比5 : 0.5 : 10)

スパッタリング装置のチャンバー

亜鉛ターゲット シリコンターゲット

基板

1図 ZnON膜へのシリコンの添加方法

*1 移動度は,電子や正孔の移動のしやすさを表す値。

*2 結晶中の電子または正孔の見かけ上の質量。

*3 電界効果トランジスターの電流-電圧特性から導出した移動度。

*4 結晶格子において窒素原子の欠けた点状の欠陥。

*5 電子や正孔を捕獲する欠陥。

*6 トランジスターのドレイン電流が流れ出すときのゲート電圧。

*7 トランジスターのドレイン電流を1桁変化させるために必要なゲート電圧の変化量。

*8 化学結合における結合強度を表すエネルギー。

*9 試料表面にX線を照射し,表面の元素の組成や化学結合状態に関する情報を得る手法。

*10試料に電流を流しながら磁場を印加し,キャリア密度や移動度を測定する手法。

*11試料を昇温加熱し,試料表面や内部から発生するガスを分析する手法。

*12加速したイオン(1図ではArイオン)を成膜材料(ターゲット)に衝突させ,はじき出された材料を基板に付着させる成膜方法。

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40 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

ゲットに加える電力にほぼ比例し,0 〜 4.3 at%(原子百分率*13)の範囲となった。

3.ZnON膜の特性評価

3. 1 X線光電子分光法(XPS分析)による窒素の結合状態の評価

XPS分析を用いて,ZnON膜(厚さ100 nm,製膜後に200 ℃で加熱)中の窒素の化学結合状態を調べた。分析試料として,シリコン添加がない膜と,シリコン添加を行った膜(Csi = 2.7および4.3 at%)の計3種類を用いた。窒素の結合に関するスペクトル*14を2図(a)に示す。測定結果にGaussian-Lorentzian関数(データ解析に一般的に用いられる非線形関数)をフィッティングすることで,窒素の結合に関する2つの成分であるNI成分とNII成分を得た。それぞれの成分の割合は,2図(a)の波形の面積から求められる。396.6 eV*15のピークエネルギーを有するNI成分(窒素の結合に関する1つ目の成分)は,亜鉛と窒素の結合(Zn-N結合)に起因するものである。また,397.5 eVのピークエネルギーを有するNII成分(窒素の結合に関する2つ目の成分)は,シリコンと窒素の結合(Si-N結合)に起因するものである。2図(a)に示すように,シリコン添加量によらず,すべての膜からZn-N結合に起因するピークが観測された。一方,Si-N結合に起因するピークは,シリコンを添加した膜(Csi

= 2.7および4.3 at%)のみから観測され,さらに,2図(b)に示すように,その全結合に対する相対的な割合は,シリコン添加量とともに増加する傾向が見られた。これらの結果から,添加したシリコンがZnON膜中で窒素と結合(Si-N結合)を形成し,その割合は添加量とともに増えることが分かる。これは,シリコンと窒素の結合解離エネルギーが,亜鉛と窒素の結合解離エネルギーに比べて大きいことに起因する。

3. 2 ホール効果測定によるキャリア密度評価ZnON膜(厚さ100 nm,製膜後に200 ℃で加熱)のキャ

リア密度の測定結果を3図に示す。ホール効果測定の結果,シリコン添加量によらず,すべての膜はn型の導電性を示した。このことから,キャリアが電子であることが分かる。また,3図に示すように,シリコン添加により,キャリア密度が指数関数的に減少している。これは,2図に示したように,添加したシリコンが窒素と結合し,その結果,キャリアの供給源(ドナー)となる窒素空孔が減少したためと考えられる。この結果は,シリコン添加量を調整することで,ZnON膜中のキャリア密度の制

(b) NⅡ成分の割合のシリコン添加量依存性

(a) 窒素の結合に関するスペクトル

1 2 3 4 5

5

10

15

20

0

N Ⅱ成分(Si-N)の割合 (%)

Csi(at%)

応答強度(a. u.)

シリコン添加なし

結合エネルギー(eV)

Csi =2.7 at%

394396398400

Csi =4.3 at%

測定結果 NⅠ: Zn-N NⅡ: Si-N NⅠ+NⅡ

(a. u. :arbitrary unit)

2図 XPS分析による窒素の結合状態の評価結果

*13物質を構成するさまざまな原子の全原子数に対する,特定の原子の原子数の割合。

*14結合エネルギーごとの応答強度を表す波形。

*15electronvolt:エネルギーの単位。1eVは,1Vの電位差がある自由空間内で電子1個が得るエネルギー。

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41NHK技研 R&D/No.167/2018.1

報告 02

御が可能であることを示しており,シリコン添加によるZnON-TFTのVthの改善が期待できる。

3. 3 �昇温脱離ガス分析法(TDS分析)による�窒素の脱離温度評価

窒素の脱離温度の評価結果を4図に示す。ここでは,未加熱のZnON膜(厚さ10 nm)を用いて,昇温加熱を行って窒素の脱離温度を調べた。分析試料として,シリコン添加がない膜と,シリコン添加を行った膜(Csi = 2.7および4.3 at%)の計3種類を用いた。4図に示すように,100 〜 120 ℃および260 〜 300 ℃の温度範囲に脱離強度(放出されるガス量)のピークが観察された。それぞれの温度範囲において,シリコン添加量が増えるにつれて脱離強度のピークの温度が高くなっており,窒素が脱離しにくくなっていることが分かる。一般的に,TDS分析における脱離温度の違いは,①結合エネルギー

(結合強度を表すエネルギー)の違いや②脱離深さ(脱

離が生じる半導体膜中の深さ位置)の違いを反映している。今回は,10 nmと非常に薄い膜を分析に用いているため,4図の脱離温度の違いは①結合エネルギーの違いを反映していると考えられる。このことは,2図に示したように,シリコン添加によるZnON膜中での窒素の強い結合の形成,すなわちSi-N結合の形成と一致する結果である。以上から,シリコン添加はZnON膜からの窒素の脱離抑制に有効であり,これにより,シリコン添加によるZnON-TFTの長期安定性の向上が期待できる。

4.シリコン添加ZnON-TFTの作製と特性評価

シリコン添加の効果をさらに検証するために,ZnON-TFTを試作し,そのスイッチング特性および長期安定性を評価した。

試作したTFTの断面構造を5図に示す。TFTは熱酸化シリコン(SiO2)膜付き(厚さ100 nm)シリコンウェハー上に形成した。1図に示したように,亜鉛ターゲットとシリコンターゲットの共スパッタリングによってシリコン添加ZnON膜(厚さ10 nm)をウェハー上に形成した。その後,大気中で200 ℃に加熱した後,アルミニウムを用いてソース/ドレイン(S / D)電極(厚さ50 nm)を形成した。TFTの半導体層およびS / D電極は,シャドーマスクを用いてパターン形成を行った。最後に,塗布型の有機保護膜16)17)をスピンコート法*16 で形成し,150 ℃で加熱した。試作したTFTのチャネル長およびチャネル幅はそれぞれ80 μmおよび520 μmである。

試作したZnON-TFTのスイッチング特性を6図(a)に示す。TFTの長期安定性を評価するために,それぞれのTFTについて2回の特性評価を行った。1回目は

塗布型有機保護膜

ゲート絶縁膜(SiO2)

ゲート電極(シリコンウェハー)

半導体層(シリコン添加ZnON)

ドレイン電極(Al)

ソース電極(Al)

5図 試作したZnON-TFTの断面構造0 1 2 3

1014

1015

1016

1017

Csi(at%)

キャリア密度 (cm

-3 )

3図 キャリア密度のシリコン添加量依存性

0 50 100 150 200 250 300 35010-11

10-10

10-9

温度 (℃)

窒素分子の脱離強度 (a.u.)

シリコン添加なしCsi =2.7 at%Csi =4.3 at%

4図 TDS分析による窒素の脱離温度評価

*16基板を高速回転させることで,遠心力により薄膜を形成する成膜方法。

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42 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

TFTの作製直後(実線),2回目は大気中で1か月間保存した後(破線)に実施した。シリコン添加がないZnON-TFTは,特性が1か月間で大きく変化しており,TFT特性の不安定性を示している。その一方で,シリコン添加を実施したTFTの場合(Csi = 2.7 at%)には,作製直後(実線)と1か月後(破線)の特性の差が小さく,安定性が改善していることが分かる。

Vth,SS,μの値(TFT作製直後)(青の実線)と,1か月後のそれぞれの変化量(ΔVth,ΔSS,Δμ)(赤の破線)のシリコン添加量依存性を6図(b)に示す。添加量が増えるにつれて,Vthは負の値からゼロに近づき,改善していることが分かる。これは,3図に示したシリコン添加によるキャリア密度の低減効果により説明できる。また,SSも添加量の増加とともに改善が見られた。これは,シリコン添加により,キャリアのトラップが減少したためと考えられる。さらに,ΔVthとΔSSの改善も見られた。これは4図に示したシリコン添加による窒素の脱離抑制効果により,TFTの長期安定性が改善したためと考えられる。しかし,μについては異なる傾向が見られた。シリコン添加量が0から0.7 at%に増えると,μは53から67 cm2/Vsに増加したが,さらに添加量が4.3 at%まで増えると,μは37 cm2/Vsに減少した。これは,過剰なシリコン添加が移動度の低下をもたらすことを示している。詳細なメカニズムについては今後の更なる検討が必要であるが,添加したシリコンがキャリアの散乱源になっている可能性がある。

今回の結果から,高移動度なTFT特性を実現しつつ,良好なスイッチング特性および長期安定性を得るために

は,シリコン添加量の最適化が必要なことが分かる。6図(b)から,本実験でのシリコンの最適量は2.7 at%である。この条件でのZnON-TFT(Csi = 2.7 at%)の特性は,μが48 cm2/Vsと高く,またVth = −0.5 V,SS = 0.20 V/decと良好なスイッチング特性が得られている。さらに,ΔVthは約0.2 Vと小さく,シリコン添加がない場合の1/10未満となり,長期安定性も大幅に改善していることが分かる。

5.まとめ

XPS分析,ホール効果測定,およびTDS分析を用い,ZnON膜に対するシリコン添加の効果を調べた。その結果,シリコン添加によりZnON膜中でSi-N結合が形成され,それによりキャリア密度が低減されるとともに,窒素の脱離を抑制できることが分かった。

さらに,ZnON-TFTの試作を行い,シリコン添加がTFTのスイッチング特性と長期安定性の改善に有効であることを示した。また,過剰なシリコン添加がTFTの移動度の低下を引き起こすため,シリコン添加量の最適化が必要なことも示した。

シリコン添加はZnON-TFTの特性改善に有効であり,ディスプレーの大画面化,低消費電力化に向けて有望な技術である。今後は,スパッタ成膜条件や加熱条件等のプロセス条件の最適化に加え,半導体膜厚等のデバイス構造の検討も行い,更なるTFT特性の改善を目指す。

1 2 3 4 5

20

40

60

80

0

5

10

0Csi(at%)

µ(cm

2/Vs)

Δµ(%)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

0

20

40

60

SS(V/dec)

ΔSS(%)

-6

-4

-2

0

0

2

4

Vth(V)

ΔVth(V)

-15 -10 -5 0 5 10 15 2010-12

10-11

10-10

10-9

10-8

10-7

10-6

10-5

10-4

10-3

10-2

ゲート電圧(V)

ドレイン電流(A)

実線 : TFT作製直後破線 : 1か月後

Csi =2.7 at%

(a) スイッチング特性

(b) Vth,SS, μとそれらの変化量のシリコン添加量依存性

シリコン添加なし

6図 試作したZnON-TFTの特性

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43NHK技研 R&D/No.167/2018.1

報告 02

本稿は,AIP Advances誌に掲載された以下の論文を元に加筆・

修正したものである。

H. Tsuji, T. Takei, M. Nakata, M. Miyakawa, Y. Fujisaki and T.

Yamamoto:“Improvement in Switching Characteristics and Long-

term Stability of Zn-O-N Thin-Film Transistors by Silicon Doping,”

AIP Adv.,Vol.7,pp.065120.1-065120.6(2017)

1) S. Tomai, M. Nishimura, M. Itose, M. Matuura, M. Kasami, S. Matsuzaki, H. Kawashima, F. Utsuno and K. Yano:“High-Performance Thin Film Transistor with Amorphous In2O3–SnO2–ZnO Channel Layer,”Jpn. J. Appl. Phys.,Vol.51,pp.03CB01.1-03CB01.5(2012)

2) M. Nakata, C. Zhao and J. Kanicki:“DC Sputtered Amorphous In-Sn-Zn-O Thin-film Transistors: Electrical Properties and Stability,”Solid-State Electron.,Vol.116,pp.22-29(2016)

3) K. Ebata, S. Tomai, Y. Tsuruma, T. Iitsuka, S. Matsuzaki and K. Yano:“High-Mobility Thin-Film Transistors with Polycrystalline In-Ga-O Channel Fabricated by DC Magnetron Sputtering,”Appl. Phys. Express,Vol.5,pp.011102.1-011102.3(2012)

4) S. Aikawa, P. Darmawan, K. Yanagisawa, T. Nabatame, Y. Abe and K. Tsukagoshi:“Thin-film Transistors Fabricated by Low-temperature Process Based on Ga- and Zn-free Amorphous Oxide Semiconductor,”Appl. Phys. Lett.,Vol.102,pp.102101.1-102101.4(2013)

5) H. Tsuji, M. Nakata, Y. Nakajima, T. Takei, Y. Fujisaki, N. Shimidzu and T. Yamamoto:“Development of Back-Channel Etched In-W-Zn-O Thin-Film Transistors,”J. Disp. Technol.,Vol.12,pp.228-231(2016)

6) Y. Ye, R. Lim and J. M. White:“High Mobility Amorphous Zinc Oxynitride Semiconductor Material for Thin Film Transistors,”J. Appl. Phys.,Vol.106,pp.074512.1-074512.8(2009)

7) H. S. Kim, S. H. Jeon, J. S. Park, T. S. Kim, K. S. Son, J. B. Seon, S. J. Seo, S. J. Kim, E. Lee, J. G. Chung, H. Lee, S. Han, M. Ryu, S. Y. Lee and K. Kim:“Anion Control as a Strategy to Achieve High-mobility and High-stability Oxide Thin-film Transistors,”Sci. Rep.,Vol.3,pp.1459.1-1459.7(2013)

8) K.-C. Ok, H.-J. Jeong, H.-S. Kim and J.-S. Park:“Highly Stable ZnON Thin-Film Transistors with High Field-Effect Mobility Exceeding 50 cm2/Vs,”IEEE Electron Device Lett.,Vol.36,pp.38-40(2015)

9) J. T. Jang, J. Park, B. D. Ahn, D. M. Kim, S. J. Choi, H. S. Kim and D. H. Kim:“Study on the Photoresponse of Amorphous In-Ga-Zn-O and Zinc Oxynitride Semiconductor Devices by the Extraction of Sub-Gap-State Distribution and Device Simulation,”ACS Appl. Mater. Interfaces,Vol.7,pp.15570-15577(2015)

10) E. Lee, T. Kim, A. Benayad, H. Kim, S. Jeon and G.-S. Park:“Ar Plasma Treated ZnON Transistor for Future Thin Film Electronics,”Appl. Phys. Lett.,Vol.107,pp.122105.1-122105.5(2015)

11) C.-I. Kuan, H.-C. Lin, P.-W. Li and T.-Y. Huang:“High-Performance Submicrometer ZnON Thin-Film Transistors with Record Field-Effect Mobility,” IEEE Electron Device Lett.,Vol.37,pp.303-305(2016)

12) T. S. Kim, H.-S. Kim, J. S. Park, K. S. Son, E. S. Kim, J.-B. Seon, S. Lee, S.-J. Seo, S.-J. Kim, S. Jun, K. M. Lee, D. J. Shin, J. Lee, C. Jo, S.-J. Choi, D. M. Kim, D. H. Kim, M. Ryu, S.-H. Cho and Y. Park:“High Performance Gallium-zinc Oxynitride Thin Film Transistors for Next-generation Display Applications,”IEDM Tech. Dig.,pp.27.1.1-27.1.3(2013)

13) R. Patino, M. Campos and L. A. Torres:“Strength of the Zn-N Coordination Bond in Zinc Porphyrins on the Basis of Experimental Thermochemistry,”Inorg. Chem.,Vol.46,pp.9332-9336(2007)

14) Y. F. Wang, D. Y. Song, L. Li, B. S. Li, A. Shen and Y. Su:“Improvement of Thermal Stability of p-type ZnO:(Al,N) Fabricated by Oxidizing Zn3N2:Al Thin Films,”Phys. Status Solidi C,Vol.13,pp.585-589(2016)

15) J. A. Dean:Lange's Handbook of Chemistry, 15th edition (McGraw-Hill), p. 4.50(1998)

16) M. Nakata, G. Motomura, Y. Nakajima, T. Takei, H. Tsuji, H. Fukagawa, T. Shimizu, T. Tsuzuki, Y. Fujisaki and T. Yamamoto:“Development of Flexible Displays Using Back-channel-etched In-Sn-Zn-O Thin-film Transistors and Air-stable Inverted Organic Light-emitting Diodes,”J. Soc. Info. Display,Vol.24,pp.3-11(2016)

17) Y. Isogai, T. Katoh, K. Sugitani, T. Hirano, M. Tada, Y. Fujisaki, Y. Nakajima, T. Yamamoto and T. Suzuki:“Spin-Coatable Gate Dielectric for Organic Thin Film Transistor,”Proc. IDW ’10,pp.911-912(2010)

参考文献

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44 NHK技研 R&D/No.167/2018.1

辻つじ

博ひろ

史し

2011年入局。同年から放送技術研究所において,薄膜トランジスター,フレキシブルディスプレーの研究に従事。現在,放送技術研究所新機能デバイス研究部に所属。博士(工学)。

中なか

田た

充みつる

2010年入局。同年から放送技術研究所において,酸化物薄膜トランジスター,フレキシブルディスプレーの研究に従事。現在,放送技術研究所新機能デバイス研究部に所属。博士(工学)。

藤ふじ

崎さき

好よし

英ひで

1998年入局。京都放送局を経て,2001年から放送技術研究所において,薄膜トランジスター,駆動技術やフレキシブルディスプレーの研究に従事。現在,放送技術研究所新機能デバイス研究部上級研究員。博士(工学)。

宮みや

川かわ

幹まさ

司し

2015年入局。同年から放送技術研究所において,薄膜トランジスター,フレキシブルディスプレーの研究に従事。現在,放送技術研究所新機能デバイス研究部に所属。

武たけ

井い

達たつ

哉や

1991年入局。同年から放送技術研究所において,プラズマディスプレー,冷陰極ディスプレー,フレキシブルディスプレーの研究に従事。現在,放送技術研究所新機能デバイス研究部に所属。