感染に対する意識を高めよう › public › award › doc › 20151120.pdf2)...

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1 感染に対する意識を高めよう 大阪市 おおさかし りつ 大学医 だいがくい 学部 がくぶ 附属 ふぞく 病院 びょういん ナースエイド サークル名 ビューティーハンド隊 びゅーてぃーはんどたい 石橋 いしばし とも 1. はじめに 当院は大阪市中心部に位置し、地域医療における中核的かつ高度な総合医療機関で、特定機能病院・災害拠点 病院として市民の医療ニーズに応えるため、教育・研究体制の革命に積極的に取り組んでいる。病床数は 980 床で病床 利用率は 83%である。昨年は、公立大学法人として全国で初めて健診事業を行なうクリニックを開設した。私たちナースエイ ドは、大阪市立大学医学部附属病院に勤務する看護補助職員。現在は 22 病棟 59 名が勤務し、業務内容は主に中央 材料部物品管理・OP 物品準備と使用後の片付け及びベッド搬送・配茶・食事配膳と回収及び残飯処理・他科受診患 者搬送・退院清掃・入院準備・部署内環境整備等日々行い、看護師とコミュニケーションを取り患者の直接ケアーを実 施している。今回の QC 活動は患者に直接関わる業務が多い私たちが感染に対する意識を高め、院内感染を防ぐた め、感染管理認定看護師 2 名の協力のもと取り組んだ 2. テーマ選定 1 回感染管理認定看護師より学習会を受 けているが新人の入れ替わりが多いため、感染 防止に対しての知識や意識が低く、手指衛生 手袋着用が実施されていない事が解った ナースエイド全員が統一した感染防止対策が出来 るように取り組みたいと考え今回のテーマに決定 した 【活動概要】 (1)施設名 (大阪市立大学医学部附属病院 ナースエイド) (2)テーマの種類 □①診療治療 ■②安全 □③患者サービス/満足度向上 □④無駄削減・能率・業務環境 □⑤質管理システム □⑥その他 (3)目標(目標と目標値を含む) 改善の指標:手指消毒剤の使用量を増加する 目標値:月 600ml(1 1 15 回以上) (4)活動前後の指数の変化 実施前 手指消毒剤の使用量を各病棟 600ml 未満 実施後 手指消毒剤の使用量を各病棟 600ml 以上にする (5)活動の種類 □①職場単位のグループ活動 ■②複数の職場が連携したグループ活動 □③テーマに合せて召集されたチームプレジェクト □④その他 (6)チームの名称 ビューティーハンド隊 (7)実施期間 70 (8)所属部署(複数可) □①診療部門 ■②支援部門 □③事務部門 □④その他 (9)チームリーダー 名前(松本直子) 所属部署(看護部) (10)チームメンバーの人数 8 (11)活動回数:今回で1回目 (12)QC ストーリー ■①問題解決型 □②課題達成型 □③その他 感染防止に対しての意識が低い 18 新人の離職率が高い 14 評価項目 5 3 1 点で評価 問題

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Page 1: 感染に対する意識を高めよう › public › award › doc › 20151120.pdf2) ディスポ手袋を使用していますか?についてのアンケート結果

1

感染に対する意識を高めよう 大阪市

おおさかし

立りつ

大学医だいが く い

学部が く ぶ

附属ふ ぞ く

病院びょういん

ナースエイドな ー す え い ど

サークル名 ビューティーハンド隊び ゅ ー て ぃ ー は ん ど た い

石橋いしばし

朋とも

美み

1. はじめに

当院は大阪市中心部に位置し、地域医療における中核的かつ高度な総合医療機関で、特定機能病院・災害拠点

病院として市民の医療ニーズに応えるため、教育・研究体制の革命に積極的に取り組んでいる。病床数は980床で病床

利用率は 83%である。昨年は、公立大学法人として全国で初めて健診事業を行なうクリニックを開設した。私たちナースエイ

ドは、大阪市立大学医学部附属病院に勤務する看護補助職員。現在は22病棟59名が勤務し、業務内容は主に中央

材料部物品管理・OP物品準備と使用後の片付け及びベッド搬送・配茶・食事配膳と回収及び残飯処理・他科受診患

者搬送・退院清掃・入院準備・部署内環境整備等日々行い、看護師とコミュニケーションを取り患者の直接ケアーを実

施している。今回の QC活動は患者に直接関わる業務が多い私たちが感染に対する意識を高め、院内感染を防ぐた

め、感染管理認定看護師 2名の協力のもと取り組んだ

2. テーマ選定

年 1回感染管理認定看護師より学習会を受

けているが新人の入れ替わりが多いため、感染

防止に対しての知識や意識が低く、手指衛生

手袋着用が実施されていない事が解った

ナースエイド全員が統一した感染防止対策が出来

るように取り組みたいと考え今回のテーマに決定

した

【活動概要】 (1)施設名 (大阪市立大学医学部附属病院 ナースエイド)

(2)テーマの種類 □①診療治療 ■②安全 □③患者サービス/満足度向上

□④無駄削減・能率・業務環境 □⑤質管理システム □⑥その他

(3)目標(目標と目標値を含む) 改善の指標:手指消毒剤の使用量を増加する

目標値:月 600ml(1日 1人 15回以上)

(4)活動前後の指数の変化 実施前 手指消毒剤の使用量を各病棟 600ml未満

実施後 手指消毒剤の使用量を各病棟 600ml以上にする

(5)活動の種類

□①職場単位のグループ活動 ■②複数の職場が連携したグループ活動

□③テーマに合せて召集されたチームプレジェクト □④その他

(6)チームの名称 ビューティーハンド隊 (7)実施期間 計 70週

(8)所属部署(複数可) □①診療部門 ■②支援部門 □③事務部門 □④その他

(9)チームリーダー 名前(松本直子) 所属部署(看護部)

(10)チームメンバーの人数 8人 (11)活動回数:今回で1回目

(12)QC ストーリー ■①問題解決型 □②課題達成型 □③その他

重要性

緊急性

実現性

経済性

総合点数

感染防止に対しての意識が低い ◎ ◎ ◎ ○ 18

新人の離職率が高い ◎ ◎ △ ○ 14

評価項目

◎5点 ○3点 △1点で評価

問題

Page 2: 感染に対する意識を高めよう › public › award › doc › 20151120.pdf2) ディスポ手袋を使用していますか?についてのアンケート結果

2

3. 活動計画

4. 現状把握

1)ナースエイド全体の感染意識が低いのではないかと疑問に思い、申し送りシステムを作成しようと考えた

2)感染患者の周知方法を調査

調査方法:病棟看護師間・ナースエイド間の周知方法を 22病棟対象に調査

調査結果

看護師:患者一覧ボードを活用 68%

ナースエイド:看護師が記入する配茶一覧表を活用 46%

看護師から口頭で伝えてもらう 23%などばらつきがあることが解った

3)感染に対しての意識調査をアンケート形式で

ナースエイド 57名に実施

調査方法:感染を広げない為に、1日に何回ぐらい

手指衛生を行なっているのか

57名を対象にアンケート調査

調査結果:15回以上がわずか 30%と回答

調査方法:この回数で十分消毒が出来ている

と思うかを 57名対象にアンケート調査

調査結果:消毒出来ていないと思うが 72%

ステップ 担当 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月

テーマの選定 浦田

現状把握 QC メンバー

解析 QC メンバー

目標設定 QC メンバー

対策 松本

対策の確認 QC メンバー

歯止め QC メンバー

反省 QC メンバー

今後の取り組み 浦田

発表準備 松本・石橋

YES

28%

NO

72%

5回未

満 12%

10回

未満

25% 15回

未満

33%

15 回以上 30%

計画 実施

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4)感染管理認定看護師にナースエイドが常日頃行なっている業務内容の中でディスポ手袋・手指衛生が必要な場面を

ピックアップしてもらいアンケート調査を実施

調査方法:平成 26年 7月に 23項目の場面で手指消毒剤を使用しているかを 58名対象にアンケート調査

調査結果:必ず使用 19%、ほぼ使用 43%、使用していない 38%で手指消毒剤の効果を理解していなかった

5)調査方法:平成 26年 7月に 20項目の場面でディスポ手袋を使用しているかを 58名対象にアンケート調査

調査結果:必ず使用 51%、ほぼ使用 33%、使用していない 16%で着用は必要だと認識しているが

業務が多い為着用出来ていないことが明らかになった

6)手指消毒剤1ヶ月あたりの使用量を調査

調査方法:各階 1 フロワーに 2病棟あるが、1病棟の階が 4か所あるため 8・18階 6・7階をペアとする

1 4

3 2

9 12

7 7 7

4 5

11 3 3

15 7

14 9

18 3

24 49

25

12 10 12

22 32

12 20

24 25

42 28

25 33 34

25 34

28 39

30 25

28 6

21

45 44 43

34 17

34 31

27 26

12 25

22 22 21

18 17 16

10 10

30 6

3 12

0 10 20 30 40 50

ペーパータオルを補充する前

洗濯物を収納する前

消毒物品の洗浄

手袋を装着前

手袋を外した後

清拭・洗面タオル作成前

包交車を補充する前

清潔中央材料物品に触る前

検体スピッツに触れた後

患者搬送後

患者搬送前

残飯処理後

各患者に配茶後

部屋移動した後

ゴミ回収した後

不潔な物品に触った後

シーツ作成前

患者と接触時

退院清掃後

退院清掃前

配膳前

感染患者の部屋に退室後

感染患者の部屋に入室前

必ず使用 ほぼ使用(忘れる時もある) 使用していない

H26.7.11実施

N=58

590

720 827

1495

965

730

230

717

527

715

555

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

18東8東

17東西

16東西

15東西

14東西

13東西

12東西

11東西

10東西

9東西

7東6東

9月

(ml)

(人)

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5. 特性要因図

ブレーンストーミングを行ない分析しました。知識・ナースエイド・方法の 3つの大骨から、教育体制が出来ていない、知識

不足、申し送りがないなどの重要要因が推測出来た

6. 目標設定

平成 27年 6月 30日までに各病棟で手指消毒剤 600ml以上/月(1日 1人 15回以上)使用

【根拠】ICT とともに手指衛生が必要な場面を明らかにし、モデル病棟で 1か月使用した結果、600ml/月の

使用量が必要であることが解った。そこで 1 ヶ月 600ml/月以上を使用基準とした

7. 対策の立案

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8. 対策の実施

実施計画を 5W1Hでまとめ実施した

誰が いつ 何を どこで どうする

感染管理認定看護師が 10月中 手指衛生の学習会を 病院5階会議室で 開催した

ナースエイドの主任が 11月中 感染症患者の搬送手

順の学習会を

各病棟で 開催した

ナースエイド全員が 12月中に 手指消毒剤を 各自で 携帯した

QC メンバーが 11月中に ポスター作成し 各病棟に 掲示する

QC メンバーが 1月中に 申し送り一覧表を 各病棟に 掲示する

各病棟の感染委員に 1月中に 申し送り一覧表を 各病棟で 浸透させる

9. 対策の実施

1)感染管理認定看護師が手指衛生の学習会を行なった。内容については、ナースエイド全員が 100%よく理解できたと

回答。今まで手洗いは心掛けていたが、手指衛生の重要性が理解できていなかったことが明らかになった

2)ポスターを作成し、見やす

いところに貼った

ディスポ手袋を着用する

場面は退院清掃や

病棟内の環境整備など、

手指衛生については

手袋装着前後や患者

搬送前後 などをピック

アップし、いつでも

目につき確認しやすくした

3)ポシェットを各自携帯し、常に手指衛生が出来るようにした

4)感染症患者リスト表を作成し、

ナースエイドが 1日 1回病棟患者一覧

ボードをチェック、記入する

看護師は今まで通り、感染者が増

えたら口頭で伝え、ナースエイドが

記入することになった

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6

必ず使用

51% ほぼ使用

33%

使用して

ない

16%

H26.7.11

10. 効果の確認

1) 調査方法:手指消毒剤を使用していますか?についてのアンケート結果

調査結果:7月の時点では必ず使用・ほぼ使用しているが 62%

再度 2月に調査を実施したところ、必ず使用・ほぼ使用しているが 93%まで増加

2) ディスポ手袋を使用していますか?についてのアンケート結果

調査結果:7月の時点では必ず使用・ほぼ使用しているが 84%

2月の調査では必ず使用・ほぼ使用しているが 97%まで増加

3) 1日何回ぐらい手指衛生をしていますか?の質問については、使用回数 15回以上と答えた人は

7月の時点では 30%、11月では 67%、再度 3月に調査したところ 81%になった

必ず使用

19%

ほぼ使用

43%

使用して

ない

38%

H26.7月

必ず使用

54%

ほぼ使用

39%

使用して

ない

7%

H27.2月

5回

未満

12%

10回

未満

25%

15回

未満

33%

15回

以上

30%

H26年7月 5回

未満

0% 10回

未満

4%

15回

未満

29%

H26年11月

15回以上67%

5回・10

回未満

0%

15回未

満19%

15回以

上81%

H27年3月

必ず使用

69%

ほぼ使用

28%

使用して

ない

3%

H27.2

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4) 目標値 600ml/月と定めたが最終6月の使用頻度が少ない病棟でも 735ml/月、全体の平均では 1200ml/月以上で

大幅に目標値を超えることが出来きたので目標達成

11. 効果の確認

【有形効果】有形効果は病棟内の環境整備や包交車など毎日清掃を行ない、車椅子、汚物室など週1回清潔に

保つために清掃している。医師・看護師・清掃業者とともに努力した結果、当院1年間の黄色ブドウ球

菌に占める MRSAの割合は、全国平均 51,2%よりかなり低く、32%まで減少した

【無形効果】手指衛生以外の感染対策についても問題意識が高まった

病棟内の環境整備を行なうことにより感染防止に貢献しているという意識が高まった

【波及効果】感染症患者リスト表を作成することにより、看護師とのコミュニケーションが深まり日々の連携がさらに

取れるようになった

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

1

8

8

1

7

東西

1

6

東西

1

5

東西

1

4

東西

1

3

東西

1

2

東西

1

1

東西

1

0

東西

9

東西

7

6

9月 10月 11月 12月 6月

(ml)

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12. 歯止め

who when what whehe how

標準化 ナースエイド全員が 1か月に 1度 手指消毒剤の使

用量を

各自で 調査する

育成 ナースエイドの主任が 随時 適切な方法で 各自で スタツフに指導する

新人に指導する

教育 感染管理認定看護師が 年 1回 学習会を 会議室で 指導する

13. 反省と今後の課題

良かった点 悪かった点

テーマ選定 常日頃から感染防止対策の意識が低いのではないかと

疑問だった点に着手できてよかった

活動計画 感染防止についての意識が低いことの問題点を考え解

決策を見つけ出すことを計画した

計画を立ててから時間がなくなり

対策実施の期間が短かった

現状把握 感染患者に対しての意識が低く、病棟によって申し送り

にばらつきがあることが解った

要因解析 申し送りにばらつきがあり、ナースエイドと看護師間での意

識が異なっていることが解った

目標設定 感染防止対策への意識が高まり目標設定ができた 目標を達成するのに時間を要し

対策立案と実

感染管理認定看護師の協力を得て勉強会で知識を高

めた。手指消毒剤を携帯するようになった

効果確認 手指衛生必要時のポスターを貼り全員の意識向上に繋が

った

効果確認期間が短かった

標準化 感染症患者リスト表を作成することでナースエイド全体の統

一化が出来た

今後の課題 手指衛生を1人1日15回、必要な場面で確実に全員が行えるような仕組みを作る。

また他職種と協力し感染に対する知識向上を目標にし、感染防止に取り組んでいきたい