大豆栽培技術の現状と課題...1 大豆栽培技術の現状と課題平成18年7月...

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大豆栽培技術の現状と課題

平成 18年７月

中央農業総合研究センター

大豆生産安定研究チーム長島田信二

１．水田輪作における日本の大豆生産～大豆先進地アメリカ合衆国との比較から

近年、我が国の大豆単収は頭打ち傾向にあり、さらに気象変動により年次間変動も大きく、作付

け面積の８割を占める水田輪換畑大豆での高品質安定多収化が重要課題となっている。

近年、単収の増大が著しいアメリカ合衆国の中西部コーンベルト地帯では、トウモロコシ栽培で

地力が高まり大豆がそれを消耗させる栽培体系となっていることが知られている。トウモロコシ栽

培では、窒素肥料多投と高い作物体残渣量により土壌の有機物と有機態窒素が高まり、一方、大豆

は根粒が相当量の窒素固定を行うものの、集積した窒素の約７割は子実で持ち出され収穫後の植物

残渣も少ないため、基本的に地力を消耗させる作物であることによる。このトウモロコシとの輪作

体系における地力の維持・向上が、アメリカ合衆国の大豆単収を向上させている重要な要因である。

実取用トウモロコシ栽培では多収化のためには多量の窒素施肥が必要であるが、この窒素多投は土

壌と地下水の硝酸汚染を引き起こす。大豆はこのように「地力消耗型作物」であるため、トウモロ

コシ－大豆体系では土壌の硝酸濃度を低減させる役割も担っており、土壌の窒素収支の観点からも、

両作物の輪作体系は永続的に高い生産性と環境保全を両立させるものであると考えられる。

一方、日本の大豆作を組み入れた水田輪作体系では、水田の畑地化により土壌有機物の分解が促

進されるため、大豆の導入期間が短くても長期的には土壌有機物の消耗を引き起こして地力窒素の

低下を招き、大豆の生産性低下を引き起こしていることが明らかになってきている。このように田

畑輪換は地力低下を引き起こしているのにもかかわらず、大豆作の翌年には無機化された窒素がイ

ネの生育を促進して倒伏を助長している場合が多く、地力低下がなかなか実感されにくい。

田畑輪換体系における土壌有機物の減少は、地力窒素の減少を招くだけでなく、土壌孔隙の減少、

耕盤層の緻密化、保水力・通気性の低下等、土壌物理性の悪化を引き起こす。また、大規模化によ

る耕作機械の大型化により、以前よりも耕盤が浅く硬くなる傾向にある。水田輪換畑では一般に湿

潤な土壌環境にあり、耕盤も存在するため、畑作大豆と比較すると根系の分布がかなり浅くなりや

すい。その上、耕作機械の大型化と水田輪換による土壌有機物減少によってもたらされる物理性の

悪化は、大豆の根系の発達をさらに抑制していると推察される。このことが、養水分の吸収能力を

低下させて、減収のみならず、近年、大豆作で問題となっている青立ちやしわ粒などの大きな発生

原因となっている。

２．作物としての大豆の特徴

ア)窒素集積

大豆は子実に窒素を多量(７％程度)に含み、窒素集積量と収量との間には高い相関関係があるた

め、窒素集積が大豆多収化の重要課題と考えられるが、通常、窒素追肥による収量性向上は高い場

合でも２割程度であり、安定多収化を確約する施肥技術の普及には至っていない。その原因として、

大豆の根粒による窒素固定能力が豆科植物の中でも際だって高いことと、および施肥窒素は根粒活

性の低下を引き起こすので窒素施肥に対する大豆の反応が乏しいことがあげられる。今までの単位

2

面積当たりの根粒窒素固定量の報告、試算では、北海道 25kg/10a、広島 33kg/10a、タイ国 45kg/10a

にのぼり、理論上は 60kg/10a を超えるとする意見もある。実際、根粒窒素固定寄与率が８割を超え

る場合でも 500kg/10a 近い多収事例が日本やブラジルなどで知られている。このように大豆の根粒

窒素固定の潜在能力は相当高いといえる。

マメ科植物の根粒窒素固定活性の発現には植物体による自己調節機能が備わっており、それは根

粒着生数、根粒肥大程度、および根粒皮層の酸素透過性調節による根粒比活性の、すくなくとも３

段階で行われている。根粒比活性の調節は個々の根粒について行われ、宿主植物に窒素を供給しな

い根粒については、根粒内部への酸素供給を制限して光合成産物を無駄にしないような制御が行わ

れていることも明らかになってきている。

大豆植物体全体の窒素含有率は生育期間を通じてほぼ一定に保たれており、摘莢による窒素シン

クの減少や地上部の栄養状態の改善によって速やかに窒素固定活性が低下する。このことから、根

粒窒素固定量は、植物体の窒素必要量に応じてこれら３段階で精緻に制御されていると考えられる。

大豆個体の根粒窒素固定は好適な栽培環境下では子実肥大中期頃までは高く維持されうるものであ

り、それ以前に低下する場合があるのは、主にこのような自己調節によるものか、あるいは地温の

低下や土壌の乾湿などの環境要因によるものと考えられる。

根粒窒素固定を大きく左右する環境要因として、まず地温があげられる。地温が根粒着生やニト

ロゲナーゼ活性、ひいては地上部生育量を大きく左右することは以前より報告されていたが、その

重要性はあまり認識されてきていない。低地温は根粒着生を著しく抑制するとともに、根粒活性の

日変化は地温の変動に同調し、28℃前後までは地温が約 10℃上昇するとニトロゲナーゼ活性は倍増

する。

光合成速度は 15℃～30℃の範囲ではほとんど変化が見られないのとは対照的である。追肥効果は

一般に北海道、東北地域などの寒地、寒冷地で高く、中国、九州地域などの温暖地では低いことが

指摘されていたが、この反応性の違いに地温が大きく関係していることは明らかであり、このこと

を考慮した上で窒素施肥技術の導入を論じるべきであろう。

根粒窒素固定は土壌水分にも大きく左右さ

れる。大豆の根粒窒素固定は、他の豆科植物

と比べて干ばつ下で特に低下しやすい。実際、

関東地域では夏期の降雨が少ない年には畑作

大豆の窒素固定は開花期以降ほとんど行われ

ていない。一方、この時の地力由来窒素は気

候の変動をあまり受けていないことから、地

力向上は不良気象による根粒窒素固定低下の

影響を緩和して大豆の安定生産に寄与するこ

とを示している。

根粒窒素固定は根粒の好気的呼吸によりエ

ネルギーを獲得しているため、根圏の酸素濃

度も根粒活性に直接的に影響する(第１図)。

高日射で温暖な瀬戸内地域(広島県)で地

下水位 20cm を維持して栽培された大豆では、土壌窒素よりも土壌の通気性の方が大豆の収量を左右

していることが報告されている。また、慣行の平畝播種栽培では地力窒素によって大豆収量が左右

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 5 10 15 20 25

根圏の酸素濃度 ( % )

第１図　根圏の酸素濃度が２品種のエチレン生成速度に及ぼす影響． (島田ら　2003）

: タチナガハ

: 五葉黒豆

y = 0.14 x2 + 1.70 x + 4.73

　　

　　

エチ

レン

生成

速度

(酸素

濃度２

１％

時の値

に対す

る相対

値）

r2 = 0.98**, n=17

3

されていたものが、播種同時畝立て栽培法により湿害を回避すると土壌地力窒素の影響は見られな

くなることが明らかにされている。これらのことは、大豆の根粒窒素固定能力の潜在能力の高さと

土壌の水分、通気性の重要性を示す好例といえよう。

このように大豆の窒素固定は土壌水分そのものと根粒への酸素供給に極めて敏感であるため、根

粒窒素固定活性を大にしうる土壌水分範囲は光合成に対してよりも狭いと推定される(第２図)。

水田の畑輪換が引き起こす土壌有機物

消耗による物理性の変化は、通気性、保

水力の低下や耕盤の緻密化をもたらすの

で、根粒窒素固定をも阻害する方向に働

いていると推察される。このことも近年

の大豆生産の不安定さに関与していると

思われる。

根粒着生が異なる品種を用いたライシ

メータによる地下水位調節実験では、根

粒着生品種は比較的高い地下水位で多収

となる(松井・島田未発表)。このことか

らも根粒窒素固定を大にする土壌水分

は比較的湿潤な環境であり、かつその好

適幅は狭いことがうかがわれる。土壌水

分含量と土壌中への酸素拡散は基本的に相反する要因であるが、土壌有機物投入による団粒構造の

発達や、地下からの給水等により両者の両立は可能と考えられる。

イ)炭素集積

大豆における窒素集積は子実収量と高い正の相関関係にあるが、子実中の窒素のおよそ半分は大

豆植物体中からの再転流で補われる。他方、子実中の半分を占める炭素に関しては、茎葉中におけ

るデンプン、糖などの非構造性炭水化物が大豆は少なく、たとえ高二酸化炭素下で生育させて非構

造性炭水化物を茎葉中に増大させても、それらはあまり子実へ転流しないことが報告されている。

これらから茎葉中に一時的に蓄積された炭素の転流による子実への寄与率は１割程度と思われる。

そのため、子実中の大部分の炭素は子実肥大始期(R5)以降の光合成由来となるので、収量は子実肥

大期の乾物増加量と密接な関係を示す。

子実肥大期の高日射は基本的に光合成産物の増大、ひいては多収化に貢献するはずであるが、大

豆の生産性と気象条件との関係には明確な関係が見いだされないことが多い。その原因として晴天

日が続くと土壌水分が減少し、日射があっても光合成が低下するためであり、畑作大豆ではその傾

向が顕著に認められる。一方、水田輪換畑で生育期間中全般を通じて、好適地下水位に制御した広

島県における７カ年の圃場栽培試験では、子実肥大期間である９月の日射量と収量との間には高い

正の相関関係(r=0.96＊＊,n=7)が認められており、子実肥大期においても好適な土壌水分管理の重要

性が示唆される。イネでは出穂期前に蓄積された非構造性炭水化物の子実への寄与は５割に達する

例も報告されており、子実への炭素の安定供給の観点からも、大豆は気象変動に対して収量の高位

安定化が難しいことがうかがえる。

３．出芽の向上

日本の大豆作は水田輪換畑が主体で播種適期が梅雨時期に重なる地域が多いため、出芽期の湿害

4

不良個体

正常個体

60

40

20

07% 10% 15%

出芽

率(%)

種子含水率

種子含水率：7％：10％：15％

Peking

エンレイ

タチナガハ

ホウレイ

ハタユタカ

ナカセンナリ

タマホマレ

ミスズダイズ

ヒュウガ

全品種平均

020406080100 0 20 40 60 80 100出芽率初期生育量

ダイズ品種

による苗立ちと生育の不良は、減収だけでなく雑草繁茂を引き起こし、大豆の安定生産を阻害する

大きな原因となっている。

播種時から播種直後に発生する湿害の原因は、低酸素条件が主因ではなく、乾燥した種子が急激

に吸水することによる種子組織の物理的破壊による。種子含水率10％では湿害の受けやすさに品種

間差が認められるが、含水率を高めると品種間差はほとんど無くなり、15%程度まで高めておくと悪

条件下でも種子の苗立ちとその後の生育が大幅に向上する（第３図）。

過湿状態の圃場でも、種子含水率を高めた種子の出

芽率は含水率の低い種子に比べて大幅に向上し、出

芽個体全体に占める正常個体の割合も増加する（第

４図）。

種子含水率を調節して湿害を軽減させる手法は、操

作が簡便である上、湿害の軽減効果も高く、また、

その効果が品種にかかわらず認められるので、発芽

時の湿害を軽減するための極めて有効な技術と考え

られる。現在、この技術を大規模に展開するため、

多量の種子の含水率を簡易に調節する手法の開発を

進めている。４．中耕培土の功罪

我が国の大豆栽培において、中耕・培土作業は基

本的な技術として広く定着している。世界全体では、

第３図大豆発芽時の湿害が出芽、出芽後の初期生育に与える影響と種子

含水率調節による湿害の軽減（中山ら 2005）．大豆 9 品種の種子を 2 日間水に漬け込み、それが出芽と出芽後の初期生育に与える影

響を調べた。出芽率と初期生育量は、種子を水に浸漬しなかった時の出芽率と初期生育

量を 100％とした相対値。

第４図含水率調節による湿害軽減（圃場試験）．含水率の異なる大豆（タチナガハ）種子を、45 ミリの降雨直後の圃場に播種し、湿害の発生を調査した。（中山ら 2005）

5

大豆作において除草のための中耕は実施するところが多いが、培土はあまり一般的ではない。日本

の大豆作で培土が広く普及しているのは、台風による倒伏発生の防止が大の原因であると考えら

れる。

現在の大豆栽培における作業時間（20024 年度）では、全作業 14.1 時間のうち、中耕・除草に

4.1 時間、培土に 1.5 時間、これら合計で約４割を占めており、この中耕培土、除草の省力化が大

豆生産の低コスト化にとって不可避の課題である。ア）中耕の目的と効果

中耕の大の目的は畦間の雑草を鋤込む除草効果にある。ただし、除草を行う際に土壌が湿って

いると中耕しても雑草が死なずに後から再生することもあり、中耕時期の土壌水分に留意が必要で

ある。播種後処理除草剤の皮膜は、通常、約１ヶ月持続するが、中耕を行うとその皮膜を壊し、さ

らに土壌の撹拌により土中の雑草種子の発芽を促すので、中耕によって雑草発生を逆に促す場合も

ある。そのため、雑草抑制としての中耕作業は、狭畦栽培や輪作を含めた全体の栽培・除草体系の

中で再度見直してみる価値がある。

中耕により土壌が膨軟化して通気性が改善され、北海道では地温上昇の効果もある。また、土壌

の攪拌により土壌有機物分解が促進されて、硝酸などの植物が吸収できる養分量が増大する。これ

らの作用により、肥沃な圃場では大豆の養分吸収が向上する。中耕を行う場合は、生育初期に限定

することが肝要であり、開花期近くになると畦間にすでに根系が伸長しているため、断根による減

収を引き起こす。また、中耕は土壌有機物の分解を促進して地力低下を促進する側面もあるため、

有機物施用量が少ない圃場では地力維持の観点から中耕はなるべく控えるべきである。

イ）培土の目的と効果

培土の効果として、土寄せ部分からの不定根の発生、倒伏防止、排水、畝間灌水の良好化などが

あげられる。培土による不定根発生には土壌水分が不可欠であり、播種後 20～30 日の培土によっ

ても多くなる。不定根は養分吸収や根粒窒素固定を増やして生育増大に寄与する。ただし、この

効果発現には培土部分の適度な土壌水分が必要である。

培土による倒伏防止効果は、主茎基部の支持や不定根発生によるもので、多くの場合、大きな効

果がみられる。ただし、降雨により土壌の支持力が低下しやすい土質での実施や、徒長、蔓化し易

い品種では茎基部が培土により支持されても、それより上部ではたわんで倒れてしまい、培土効果

が見られない場合もある。

培土による作畦は、排水や畝間灌水時の水路となるため圃場表面水の管理を容易とするが、明渠

や播種前の作畦などで代替可能である。

ウ）中耕培土の功罪

中耕培土は大豆栽培におけるも基本的な栽培管理技術として位置づけられて来たが、その増

収効果は、実際には常に期待できるものではなく、実施時期や土壌、気象条件などによっては収量

に対して逆効果となる場合もある。過去 25 年間に全国の試験研究機関で実施された中耕培土に関

する主な試験研究の 47 事例のうち、増収が認められたのは21事例、効果がはっきりとは認められ

なかったのが 20事例、逆に収量低下を招いたのが6事例あった。中耕培土による収量低下は、主に

断根や地上部の損傷による。土壌が比較的粘質で地下水位が高く地下深部へ根が伸長できない圃場

条件下では、中耕培土の効果は高い。他方、火山灰土壌のように物理性が良好な圃場では効果が見

られない場合がほとんどである。

また、培土効果発現には気象と土壌水分の影響が大きく、愛知県内における6カ年の事例解析で

6

は、中耕前 10 日間の降水量が 30～50mm の適湿な土壌条件では 15～20％の増収効果が期待でき

るが、30mm 未満の乾燥条件では逆効果となることが示されている。

培土部分では土壌中の硝酸態窒素の増加がみられるが（第１表）、これは土壌中の有機物が土壌の

攪拌により微生物によって分解され、窒素が無機化されることにより放出されたものである。この

土壌有機物の分解により大豆が吸収できる養分量を増加させうるが、その一方で地力消耗を加速さ

せている。水田転作が始まった当初の大豆作では、長期間の水稲作付けと有機物投入により蓄積さ

れていた豊富な有機物を中耕培土により分解促進させ、大豆に吸収させることによる増収効果が期

待できた。しかし、水田の畑輪換は基本的に地力を低下させ、中耕培土はそれを加速させているの

で、汎用化水田の地力は長期的に低下傾向にある。そのため、転作当初よりも中耕培土による養分

供給効果は低減していると推定される。近年の育成品種は耐倒伏性が向上しており、さらに大豆作付けが頻繁な水田輪作圃場では地力

の低下により大豆の生育が全般に小さくなってきている。そのため、従来に比べて培土による倒伏

防止効果の必要性が薄れてきている。さらに培土は圃場に凹凸を設けるため、コンバイン収穫の作

業性を低下させ、汚損粒発生を助長するデメリットもある。

これらのことから、わが国の大豆作における中耕培土の導入の可否を再検証すべき段階に来てい

る。

５．新規地下灌漑システム(ＦＯＥＡＳ)

地下水位の高低は大豆の窒素栄養だけでなく光合成や生育・収量に大きな影響を与える(第５図)。

0

5

10

15

20

25

30

8/14 8/16 8/18 8/20 8/22 8/24

20cm40cm

70cm100cm無灌水

月 / 日

第３図　地下水位がみかけの光合成速度と収量に及ぼす影響.　みかけの光合成速度の縦線は６反復の標準誤差を示す.　　　　　　　　　　　　（Shimadaら 1995,1997一部改変）

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

みかけ

の光

合成

速度

（μmolm-2s-1）

収量

（g

m-2）

　　第１表　培土による土壌中の硝酸態窒素の量（加藤ら　１９５９）

処理部位無培土

　　測定日上層下層上層下層上層下層

7月19日 0.27 0.67 0.58 1 0.48 - -

8月8日 0.22 0.54 0.11 1.09 0.22 1.25 0.33

9月5日 0.28 0.42 0.29 0.28 0.28 1.39 1.15

　　注）値は乾土100g中のmg．

早期培土（７月４日）中期培土（７月１８日）晩期培土（８月５日）

第５図地下水位がみかけの光合成速度と収量に及ぼす影響．みかけの光合成速度の縦線は６反復の標準誤差を示す．（Shimada ら 1995、1997 一部改変）

7

そのため、暗渠を利用した地下灌漑が汎用化水田等で取り組まれていたが、既存の施設では広い

面積の地下水位を一定に維持出来ず、給水時に用水中に含まれる泥が暗渠管内に流入し管を詰まら

せてしまう問題等もあり、効果的ではなかった。これら問題を解決するため、構造・維持が簡易で

低コスト、かつ確実に大面積で設定水位が維持できる技術の開発が進められ、近、農業工学研究

所と(株)パディ研究所により、新規地下灌漑システム(FOEAS)が開発された(第６図)。

第６図新規地下灌漑システム(FOEAS)の概略図(藤森 2005)

この方法は、圃場に埋設した有孔管等による幹線・支線パイプ及び補助孔(弾丸暗渠等)に対して

用水を供給すると共に、用排水ボックスと地下水位を制御する水位制御器を配置することにより、

暗渠排水と地下水位制御を両立させている。また、地下灌漑で問題となっていた用水に含まれてい

る泥や砂等の堆積物の除去が簡単に行える特長を有する。FOEAS により畑輪換期間に土壌を必要以

上に乾かせ過ぎないことは、土壌有機物や暗渠もみ殻の保全にとっても好都合である。大豆栽培に

おけるFOEAS 施工圃場の効果として、出芽・苗立ちの向上と根粒窒素固定量の増加がみられ、その

結果、増収をもたらすことを明らかにしている。

FOEAS ではイネの無代掻き移植栽培も可能であり、田畑輪換を図る上でも重要な土壌の水分管

理と耕盤問題を解決する基盤的技術として、その利用が期待される。

６．まとめ

堆厩肥等の有機物の投入による地力の向上は、持続的な窒素供給を可能にして、環境に敏感な根

粒に依存するよりも安定的に多収を実現する確実な方策といえる。また、有機物多投は土壌の物理

性を改善するため、根粒窒素固定の改善にとっても重要である。しかし、地力窒素の大幅な増加は

輪換水田における良食味イネの生産を困難にするので、この対策を導入するのは現実的には難しい。

そのため、地力窒素に大きく依存しないで大豆の安定多収を図る方策として、大豆の根粒窒素固定

機能を大限に発揮させる栽培技術の確立が望まれる。

わが国の寒地、寒冷地では、本来、気温、地温が低いために、根粒着生や窒素固定能力が劣り、

また、大豆の個体群生育量も大きくなりにくいために子実へ転流させる茎葉中の窒素量の確保が困

難である。そのため、これら地域では根粒窒素固定の向上技術とともに、窒素追肥、深層施肥等の

8

窒素施肥技術と組み合わせた栽培技術の開発が必要であろう。

一方、気温、地温が高い温暖地、暖地では、大豆の根粒窒素固定能力は本来相当なポテンシャル

を有しているものの、農家圃場では、環境条件、特に土壌の水分および通気性によりその能力を発

揮しえていないと想定される。特にこれら地域では、梅雨、夏の高温・乾燥、秋雨のように、生育

期間中に大きく変動する降雨量に対応した土壌水分管理技術が特に重要である。また、耕盤形成に

よる浅根化は養水分の安定的吸収を困難とするので、代かきを省いたイネ栽培技術導入による水田

輪作体系が大豆にとっては好ましい。そのためには、これらを可能とする FOEAS 導入による水田輪

作技術の開発が大豆の安定多収、品質向上に極めて効果的と考えられ、今後の試験研究の発展と現

場への普及が期待される。

また、不耕起栽培、畝立て同時播種栽培、有芯部分耕栽培などの土壌水分を制御する栽培技術も、

地力に大きく依存しないで大豆の安定生産を図る技術となりうると考えられる。不耕起栽培、浅耕

栽培、そして無中耕・無培土栽培など、土壌の撹拌を小限にとどめる栽培技術は、省力化の目的

だけでなく有機物還元が少なくなってきている水田圃場の地力維持の観点からも重要な栽培技術で

あり、今後の技術開発の中核として位置づけていく必要がある。

参考文献

島田信二水田輪換畑作ダイズの多収化戦略日作紀 74(別 2):382-387.

島田信二中耕・培土の目的と効果. ここがポイント大豆づくり（社）全国農業改良普及支援協

会、pp28-30．

図表の引用文献

藤森新作 2005. 水田畑作の安定化を図る新しい地下灌漑システムの開発. 圃場と土壌

37(7):20-24.

加藤一郎・川原政夫・内藤文夫・谷口利策 1959. 大豆の培土に関する研究第Ⅵ報培土の高さ

及び時期に関する試験成績．東海近畿農試研報栽培２部 1:1-15.

中山則和・島田信二・高橋幹・金榮厚・有原丈二 2005. 冠水ストレスが発芽時のダイズに及ぼす

影響と種子含水率調節による冠水障害の軽減効果．日作紀 74：325-329.

Shimada, S., M. Kokubun and S. Matsui 1995. Effects of water table on physiological traits

and yield of soybean I. Effects of water table and rainfall on leaf chlorophyll content,

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Shimada, S., M. Kokubun and S. Matsui 1997. Effects of water table on physiological traits

and yield of soybean II. Effects of water table and rainfall on leaf water potential and

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島田信二・高橋幹・有原丈二・国分牧衛 2003. 通気型アセチレン還元分析法による大豆品種の根

粒活性と根圏酸素濃度. 日作紀 72(別 2):396-397.

島田信二 2004. ダイズ栽培生理研究における近の研究動向. 今月の農業 2004(4):17-20.

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水田排水技術


田畑輪換研究チーム(北陸)

足立一日出

１．はじめに

年の米の生産調整に始まり、その後の水田利用再編対策、水田農業確立対策事業1971など、水田における畑作物の栽培が行政の施策として進められてきた。一般に、湛水条件

下で生育する水稲が栽培される水田で、過湿な条件下を嫌う畑作物を栽培するためには排

水性の改善が重要な課題の一つである。

水田の排水に関する研究は、水稲生育に適した浸透の付与、水田における大型機械化作

業の導入、田畑輪換（圃場の汎用化）の推進を目的に進められ、特別研究「重粘土地帯水

田の土層改良と用排水組織に関する研究」では多くの成果（根岸ら、）が得られ、そ1972れらの成果は、田畑輪換における排水技術としても適用された（根岸、。これら成1981）果は、個別技術の組み合わせ、各種土壌への適用、施工技術の高度化を経ながら確立され

てきた現在の排水技術の基礎となっている。

一方、農林水産省の資料によると、約万の耕地面積の内、水田率は全国平均で469 ha55 17 30a 60 14約％平成年そのうち以上の標準区画に整備された水田は約％平成（）、（

47 14 15年暗渠などの整備によって圃場の汎用化が可能な面積は％平成年で平成）、（）、

年に閣議決定された土地改良長期計画では、平成～年度の５年間で約万の15 19 6.9 ha農地において暗渠排水等の整備による水田の汎用化を実施するとされている。徐々に水田

の汎用化整備が進められているものの、依然として多くの排水条件の悪い圃場が残されて

いる。

、、、、そこでここでは水田における大豆などの畑作物栽培を目的に圃場の排水性診断と

営農排水を中心にした排水対策技術について説明する。

２．排水目標

水稲単作と水田における

畑利用が行われる場合の排

水の目標は異なる(表１。）

水稲栽培の場合、田面湛水

が認められ、日で降った雨1を１日で排除できる計画で

排水施設が造られるが、畑

利用が行われる水田では４時間で降った雨を４時間で排除できるように計画される。その

ため、排水施設の能力は大きくなる。また、作物生育や機械の地耐力と関連して地下水位

の目標値が決められている。地下（暗渠）排水量は、これら目標値が達成された時に排除

できる排水能力である。

表１　排水事業の目標

水田の畑利用水稲単作

（汎用水田・転換畑） (水田）

排水対象降雨 10年に１回程度発生する降雨 10年に１回程度発生する降雨

地表排水許容湛水無湛水湛水可能

排水量４時間雨量を４時間で排除日雨量を1日で排除

地下排水地下水位

降雨後２～3日 40～50cm以下 30～40cm以下

常時（降雨後７日以降） 50～60cm以下 40～50cm以下

排水量 30～50mm/日 20～30mm/日

農林水産省構造改善局(2000)：土地改良事業計画設計基準　計画「水田」

農林水産省構造改善局(2000)：土地改良事業計画設計基準　計画「暗きょ排水」

- 2 -

３．圃場の排水性の診断

１）診断と対策の流れ

汎用圃場で大豆栽培を行う場合、圃場の排水性

を診断・評価し、大豆栽培に適した圃場の選定が

必要である。しかし、必ずしも全ての圃場で適し

ているわけではない。排水が悪い圃場では、排水

の悪い原因を診断し、それに対する排水技術の導

入が行われる。図１は排水診断と排水対策技術の

フローチャートである。

圃場の排水は、地下水位（排水路水位）などの

水理的条件と土壌の透水性などの土壌条件に大き

く左右される診断の流れは地域の地下水位排。、（

水路水位）などの広域の排水性から進められる。

これらは、地形条件と大きく関わり、排水路の整

備や排水ポンプの設置などの土木的排水技術で対

応される。地域の排水改善の方向は経済性なども

考慮しながら決められる。次に、対象とする圃場

の排水性の検討は、田面の残留水、地下水位や暗

渠排水量などから診断される。

２）地形条件と排水

一般に、平坦な水田地帯や谷地田では地下水位が高く、河岸段丘や台地では地下水位が

低い。また、扇状地では扇頂と扇端で比較的高く、扇央で低い。最近では、扇状地におい

ても下層土の砂利採取が行われているところが多く、排水条件も悪化し、下層土の水の流

れは複雑になっている。傾斜地棚田は湧水などに大きく左右される。一般に、地下水位が

高い平坦地などでは地域排水の整備が重要になる。一方、地下水位が低く、下層土の透水

性が良い水田では、耕盤によって水田の湛水が保証されている場合が多い。ここでは、耕

盤の処理はその後の作付け体系と関連して検討されなければならない。傾斜地の棚田では

湧水処理が大切である。

３）土壌・土層条件と排水

土壌タイプは、地下水位などの影響を受けて形成されるグライ層の位置や粘土の含有量

、。、、、など圃場の排水性と大きく関連している多湿黒ボク土黒ボクグライ土灰色台地土

グライ台地土、灰色低地土、グライ土、黒泥土、泥炭土のうち、土性が細粒質から中粒質

の土壌には暗渠排水が必要とされている(農林水産省、 )。三土( )は平坦な水田の2000 1976うち灰色低地土と褐色低地土を地下水型と潅漑水型水田に分けている（地下水湿性、潅漑

水湿性といわれている(小原・三土、 ))。地下水型は地下水位が高く、畑地化のため1990。、。には地下水位の低下が必要となるこれらはグライ土や地下水型灰色水田低地土である

一方、潅漑水型は、地下水位は低いが水稲期間中は耕盤などによって浸透が抑制される水

田である。ここでは、畑地化のための排水改善は耕盤などの浸透抑制層の対策が必要とな

る。

４）圃場内の排水性の違い

施設管理

排水路水位

浸入水

地表排水

地下水位

機能

暗渠

排水能力不足

施設能力増強

ブロック排水

畦畔の補強遮水壁の造成承水渠排水小溝

圃場の排水性悪い

排水口排水小溝田面均平田面傾斜化畝立て栽培浅い弾丸暗渠等

管理の改善泥さらい草刈り

暗渠施工

暗渠管清掃疎水材整備

降雨時

低下しない速やかに低下

排水性改善

良い

悪い

ある

ない

良い

悪い　(残留水多い）

低下遅い

低下速い

ない

ある悪い

弾丸暗渠心土破砕簡易暗渠土壌・土層改良

良いが排水量少ない

ブロ

ック排水

地区排水

広域排水

圃場排水

（地域の地下水位）

圃場の地下水位

図１　排水診断のフローチャート

- 3 -

同じ圃場内でも各種条件の違いで排水性は異なる。作業機械の旋回位置に当たる用水路

際と排水路際は作業機械のタイヤによる練り返しで土壌の透水性は悪化している。平坦地

においては、用水路側が悪く、特に、用水路が開水路の場合、用水路からの浸入水が排水

条件を悪化させている。一方、傾斜地圃場では、山側法尻では谷側に比べて上部圃場から

、。。の浸透水が見られ排水条件は悪いこれらの圃場では浸入水に対する対策が必要である

圃場整備によっても圃場内における排水性の違いをもたらす場合が見受けられる。圃場整

備事業における大型の施工機械の踏圧は土壌を密に締固め透水性を悪化させる。また、区

画の拡大のために行われる切土と盛土は圃場内の排水性のムラを生じている。一般に、整

備後の不等沈下を避けるため、盛土部では入念に締固めが行われ、土壌の透水性は悪化し

ている。一方、切土部の透水性は下層土（地盤）の土壌条件に左右される。

周辺の作付け条件によっても圃場内の排水条件は異なる。隣接水田(特に上流側水田)で

は、畦畔際への浸入水が発生する。

４．排水技術

排水技術は技術の主体（対

策手段、対象規模（対象の）

広がり、流れの形態（手段）

・経路）の違いから、土木

（事業）技術と営農技術、

地域排水（広域・地区・ブ

ロック）と圃場排水、地表

排水と地下排水に大別され

る(図２)。ここでは、主と

して圃場排水で営農活動の

一環として行われる営農排

水技術について紹介する。

１）地表排水

地表排水技術として、排水小溝、田面・耕盤均平および傾斜、畝立て栽培などがあげら

れる。なお、承水溝は圃場外からの浸入水を排水小溝でキャッチし排水するものである。

田面・基盤の均平や傾斜化の技術はレーザ光の利用拡大と共に精度向上が図られている

（藤森、、農村振興局 )。レーザー光の利用によって圃場長辺方向程度の2003 2005 1/1000傾斜も容易に造成でき、地表排水量も増加し、十分に排水効果を発現する。特に傾斜化圃

場は不耕起栽培などで効果を発揮するとされている。また、用水路側と排水路側に明渠を

掘ることによって排水だけでなく迅速な潅漑にも適しているとされる。

大豆の畝立て栽培は、耕耘同時施肥播種技術の確立（細川、 )と共に、降雨や土壌2005条件によって適期作業や排水改善が制約される圃場では特に有効である。ここでは、畝間

の排水を排水小溝などに連結して迅速に排水促進させることが大切である。

排水小溝はオーガートレンチャーなどを用いて畦畔際に設けられる。用水路側の浸入水

の捕捉・排除をも考慮し、圃場全体を取り囲んで造られる場合もあり、額縁明きょとも呼

んでいる。間隔を密にすることで排水は改善されるが、長辺方向に～本で十分な2 3 /30a

（対象の広がり）（手段・経路）（対策技術）（技術の詳細）（対策手段）

　広域排水　自然排水　排水路　施設整備　　事業　地区排水　草刈り・泥さらい　　営農　ブロック排水　機械排水　ポンプ排水　施設整備　　事業

　排水口　整備・管理　　事業・営農　小排水溝（明渠）　　営農

　地表排水　田面・耕盤の均平　　営農　（表面排水）　田面の傾斜　　営農

　畝立て栽培　　営農　圃場排水　承水溝　浸入水排除　　営農

　本暗渠　暗渠管整備・清掃　　事業・営農　疎水材整備　　事業・営農

　地下排水　承水渠　浸入水排除　　事業・営農　（暗渠排水）

　弾丸暗渠　　営農　補助暗渠　心土破砕　　営農

　簡易暗渠　　営農

図２　転換畑の排水技術 (最新農業技術事典、2006)

- 4 -

効果が見られる（長利、。傾斜を1987）、、持った排水小溝は流水能力は大きいが

その排水効果は排水小溝までの水の流れ

に左右される（足立ら、 )。傾斜を2005持った排水小溝に、極めて浅く(深さ

)、密な(間隔 )弾丸暗渠と組み合20cm 2mわせることで、地表排水の効果は改善さ

れた(表、図３。極めて浅く密な弾丸2 ）

暗渠は、耐久性に劣るが、その水は地表

排水小溝から排除されるため、下層土の

排水条件の影響を受けにくい。

２）地下排水

（１）本暗渠

圃場整備事業などによって、田面の残

留水や土壌中の重力水を排除する目的で

施工される暗渠を本暗渠と呼ぶ。主に、

トレンチャーやバックホーで掘削された

溝に設置された暗渠管と、土壌からの水

を暗渠管に導く疎水材よりなる(図 )。4暗渠管には合成樹脂管や素焼土管などが

用いられる。一方、疎水材としてモミガ

ラ、砕石やそだなどが用いられるが、地

域によってはチップ（北川ら、、津1996田、、貝殻（古木・長利、 )な1997 1990）

ども疎水材としての効果が認められ、実

際に使われている。これら疎水材は、透水性が良く、安価で大量に手に入り、しかも効果

60 80cmに耐久性があり取り扱いが容易であるなどによって選ばれる一般的には深さ～、。

に暗渠管が施工され、疎水材としてのモミガラは、水田の汎用利用のためには地表面まで

投入し、踏み固めることで施工される。

（２）補助暗渠

補助暗渠は、本暗渠だけでは排水目標に達しない場合、本暗渠の機能を補助する目的で

施工される排水技術である。資材を用いない無材補助暗渠（弾丸暗渠、心土破砕）と、モ

ミガラなどを用いた有材補助暗渠（弾丸暗渠、疎水材埋設簡易暗渠）があり、これらは一

、、。般に本暗渠と直交し本暗渠の疎水材と連結するように深さ～に施工される40 50cm最近では、深さ～程度に浅く、密に暗渠管を敷設する浅層暗渠（トレンチ式、40 50cm引込み式、切断式）も補助暗渠と位置付けられている。これらは本暗渠間の中央に本暗渠

と平行に施工されるか、程度の間隔で補助暗渠独自に施工される。4m一般に、補助暗渠は、深さ～に施工し、本暗渠の疎水材層と直交して、暗渠40 50cm

を経由して排水されるが、暗渠が無く、下層土の排水性が悪い圃場では、浅く施工し、直

図３　地表排水技術の排水効果

0

0.002

0.004

0.006

0.008

0.01

0 5 10 15

水収支から計算された田面貯留量　(mm)

実測

地表

排水

量　

(m3/s)

A

B

C

D

表２　圃場試験で適用した排水技術

排水小溝弾丸暗渠

圃場番号調査日幅(cm) 深さ(cm) 傾斜間隔(m)深さ(cm)間隔(m)

A No.1 2004.7.17 30～40 30～35 約1/2000 30 30～40 5

B No.2 2004.7.17 30～40 30～60 約1/300 30 30～40 5

C No.2 2005.6.28 30～40 30～60 約1/300 30 約20 2

D No.1 2005.6.28 30～40 30～35 約1/2000 10

圃場の区画は30m×100mの30a　　　本暗渠は深さ約70cm、間隔5m

地表面

作土

耕盤

疎水材

（モミガラ）

暗渠管

（吸水管）

15～20cm

60～80cm

一般的な暗渠断面

図４　暗渠断面

- 5 -

接排水路に排水するか、排水小溝に接続

し地表から排水される。

重粘土における本暗渠と浅層暗渠を組

み合わせた排水システム(図 )（トレン5チ区）では、施工直後より、長期転換で

排水性の良い構造発達区と似通った排水

能力を示し、その効果は、４年後におい

ても認められるなど、排水改善の効果を

（）。、発揮した図水田からの転換直後は6浅層暗渠からの排水が多くを占め、作土

の過剰な水分を迅速に排除し（図 )、そ7の後、畑作物栽培を続けることで、亀裂

などによる土壌の構造が発達し、本暗渠

の排水能力も回復し、地下水位の低下が

促進された(図 )。8

３）ブロック排水

バラ転の場合や、排水路の水位が高い場合、浸入水や地下水位が高いため湿害を受けや

すい。そのため、道路・水路で囲まれた圃区あるいは排水路を中心に道路で囲まれた農区

（２圃区）をまとめて転換し畑作物を栽培（集団転作）したり、復田したりする。このよ

図５　本暗渠と浅層暗渠を組み合わせた排水システム

（足立ら、2002）

図６　雨量と暗渠排水量の事例 (足立ら、2002）

1997年９月14日の事例

0

1

2

3

4

5

0 12 24 36 48

降雨開始後の経過時間　(h)

暗渠

排水

量(m

m/h

)

0

2

4

6

8

10

時間

雨量

　(m

m/h)

雨量

トレンチ区

対照区

構造発達区

2001年９月11日の事例

0

1

2

3

4

5

0 12 24 36 48

降雨開始後の経過時間　(h)

暗渠

排水

量(m

m/h)

0

2

4

6

8

10

時間

雨量

　(m

m/h)雨量

トレンチ区

対照区

構造発達区

図８　大きな降雨後の地下水位の変化　　　　　　　　　　　　　　　　(足立ら、2002)

-50-45-40-35-30-25-20-15-10-50

0 12 24 36 48 60 72 84

降雨終了後の経過時間　(h)

地下水位

　(cm

)

トレンチ区2001年

トレンチ区1997年

対照区2001年

対照区1997年

図７　大きな降雨後の土壌水分の変化　　　　　　　　　(深さ10cm)　(足立ら、2002)

0

0.25

0.5

0.75

1

1.25

1.5

1.75

0 12 24 36 48 60 72

降雨終了後の経過時間　(h)

土壌

水分

　(p

F)

トレンチ区1997年対照区1997年

トレンチ区2001年対照区2001年

- 6 -

うなブロックを対象に集団化し、排水路の水位を制御することによって、転換畑の地下水

（足立・古木、）や復田時の浸透抑制を制御できる。1983４）土壌管理（土壌・土層改善）

粘質な土壌の水田では、暗渠などの排水技術だけでは圃場の排水性の改善は十分ではな

い。一般に、暗渠によって排除できる水は、重力で排除できる大きな間隙中の水だけであ

る。また、砂質な土壌では地下水位の低下とともに暗渠への水の流れが発生するが、粘質

な土壌の水田では、作土を横流れして暗渠埋め戻し部を流下する（田淵、 )。そのた1984め、暗渠直上の透水性が重要であるとともに、下層土の土壌の改善が必要である。

畑作物栽培時の排水性を改善するため、前作水稲時に中干しの徹底や、水稲の移植間隔

を変えることによって亀裂を制御し（、、排水性を改善させようYoshida and Adachi 2001）という試みも行われている。

耕盤の存在が排水性の悪化をもたらしている場合もある。耕盤の取り扱いについては、

全面破砕、一部破砕及び部分破砕が考えられる。耕盤破砕の目的は、排水性を良くするこ

とと作土層を厚くすることにある。耕盤破砕を考える上で、破砕後の水の排除方法を検討

しておかなければならない。下層土の透水性がよい場合や暗渠などがある圃場では耕盤破

砕後に形成される間隙中の水は排除できるが、下層土の透水性が悪く、暗渠などの施設が

ない場合、耕盤の破砕は逆効果となる。また、水田に復田する場合、破砕後の浸透抑制や

地耐力の確保の検討も重要である。前者の場合、作土の土壌が粘質で代掻きで浸透抑制が

可能な場合、地域の地下水位を高く制御でき浸透量を抑制できる場合、畦シートやベント

ナイトなどによって畦畔からの浸透が抑制できる場合などが耕盤破砕が可能である。後者

は地耐力が小さい場合には水田に復田する場合、地盤の締め固めが必要になる。排水が悪

い箇所の部分破砕や間隔を持った弾丸暗渠などによって全面破砕時の地耐力に対する問題

を回避することも可能である。

５．排水施設の維持管理

１）排水路

圃場からの水を排除する排水路は、圃場からの土壌流亡、畦畔の土壌浸食・崩壊による

土壌の堆積や雑草の繁茂によって、流水断面が減少し、排水能力を低下させるとともに、

暗渠出口の閉塞を生じ圃場排水に障害をもたらす。排水路の泥上げや草刈りは排水路の管

理の基本的事項である。

２）地表排水と排水口

排水小溝の造成や畝立て栽培が行われていても、確実に排水口まで繋がっていなければ

。、。効果はないまた排水口の位置が高く排水できずに水がたまっているのが見かけられる

大きな降雨時に水の見回りに行くことによって地表排水のネックの原因が見つけられる。

３）暗渠

（１）疎水材の量と腐敗・空洞化

暗渠からの排水性を左右する最も大きな要因は、暗渠直上の埋め戻し土の透水性（石渡

- 7 -

ら、）である。粘土質の水田では、暗渠1993直上疎水材上端の深さ（暗渠直上疎水材上の

土層の厚さ）が田面からからに低13cm 20cm下すると、透水性はに低下する（吉田・1/100足立、。これらの結果は亀裂の発達程度2005）と大きく関連している。地表排水などによっ

て作土を乾かし、亀裂を発達させ土壌の透水

性を改善しなければならない。モミガラ層が

深く土層が厚く弾丸暗渠などの補助暗渠と暗

渠疎水材（本暗渠）との接続が不十分なとこ

ろでは、本暗渠と補助暗渠の交点をオーガー

で掘削しモミガラを戻してその機能を回復させる（スポット暗渠（甲谷・足立、。））1984疎水材モミガラの腐敗・空洞化が多く知られるようになった。一般的には、比較的排水

条件が良いところで多く見られているが、モミガラ層が土壌で密に詰まった場合、排水性

は悪化する。また、復田時の田植機の陥没事故などが発生している。疎水材の耐久性の調

査結果（永石、永石、清野ら、吉田ら、）によると、場所によって異,1980 ,1988 ,1994 2005なってはいるが、短いところで年程度で腐敗し、長いところでは年以上にわたって5 10

。、機能は維持されていた比較的腐敗が進みやすい排水条件の良い圃場では施工後５年程度

排水条件の悪い圃場でも年程度で疎水材の状況を確認することが望ましい。空洞や腐10敗が激しい場合には、空洞の破砕やモミガラの補充・更新が必要である。空洞が発生した

圃場では深耕ロータリーやバックホーで空洞の破砕が行われている(図 )。9（２）暗渠管の土壌・鉄の堆積と掃除

暗渠管内への土壌や酸化鉄などの堆積によって通水断面が極端に減少したものが見受け

られる。堆積物の除去の方法として、最も簡易な方法は、暗渠を閉め、地下水を上昇させ

た後、暗渠を開け、地下水位による水圧を利用して急激に排水する。直接暗渠に導水でき

るよう暗渠管上流部に立ち上がりを設けている所もある。また、動力噴霧機に逆噴射のジ

、（、）。ェットノズル付け暗渠管に挿入して管内堆積物の除去も行われている兼子ら 1995暗渠の設計基準では春、秋の年２回程度行うことを進めている。清掃が容易なように、暗

、（）。渠管立ち上がりや暗渠配置櫛形配置から直管配置へが工夫されるようになってきた

また、酸化鉄の堆積を促進させる鉄酸化細菌が酸性で多く繁殖していることから、疎水剤

を貝殻やロックウールを用いることによって中和し、鉄酸化細菌、鉄酸化物の堆積を減ら

す方法も検討されている（宍戸ら、北川ら、 )。,2002 2005

６．おわりに

多くの排水技術が提案されている。排水対策は画一した技術の導入ではなく、圃場の排

水不良原因を明らかにすると共に、各圃場に適した排水技術の選定、既存の排水技術の組

合わせが重要である。

これまで、転換畑の大きな課題の一つに排水対策があげられてきた。最近の大きな気象

の変動を考えると、これまで以上に排水技術が重要になることに加えて、灌漑技術をも充

実させ、圃場の迅速かつ適切な水管理が今まで以上に重要になるものと思われる。

空洞

地表面にできた孔暗渠断面

図９　暗渠の空洞化と補修

バックホーによる補修

- 8 -

引用・参考文献

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3 2005 17 144-145)足立一日出・谷本岳・吉田修一郎( )：重粘土転換畑における排水性の評価平成年度農土学会講要、

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300-303

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9 2005 3 8 65-66)北川巌・竹内晴信・中津敬太( )：泥流地帯における暗渠排水管閉塞の対策技術、農土誌 ( )、

10 1996 105 54-62)北川巌・横井義雄・津田真由美( )：カラマツ木材チップの暗渠疎水材への利用、水と土、、

11 1984 12, 35-44)甲谷潤・足立健夫( )：スポット暗渠(縦型暗渠)による排水技術について(第１報)、京都農研報

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)永石義隆( )：農家にできる暗渠排水、農文協14 1988

)根岸久雄・多田敦・古木敏也・守屋貢・渋谷勤治郎・菅原和夫・上村春美( )：重粘土地帯水田の土層改良と用15 1972

10 43-94排水組織に関する研究(Ⅰ)－総括編－、農土試報、

16 1981 36 529-537)根岸久雄( )：水田利用再編のための転作技術－２．排水－、農業技術、

)農業・生物系特定産業技術研究機構編( )：排水対策、最新農業技術事典、、農文協17 2006 p.1231

)農林水産省構造改善局( )：土地改良事業計画設計基準計画「暗きょ排水、農業土木学会18 2000 」

)農林水産省構造改善局( )：土地改良事業計画設計基準計画「水田、農業土木学会19 2000 」

20 2005 17 HP)農林水産省( )：平成年耕地面積、農林水産省

21 2005 HP)農林水産省( )：土地改良長期計画、農林水産省

22 HP)農林水産省農村振興局企画部事業計画課：ほ場整備事業の総合評価の概要、農林水産省

)農村振興局資源課( )：傾斜化技術適用に当たっての手引き－畑作対応水田基盤管理技術対策調査－23 2005

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25 1987 55 4 13-18)長利洋( )：圃場内排水溝による残留水の排除効果、農土誌 ( )、

)清野真人・土開義広・近野雅子・瀬野義昭( )：暗渠排水疎水材としてのモミガラの耐久性と暗渠排水機能の維26 1994

28 99-114持改善、山形県農試研報、

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73 1 11-15( )、

28 1984 50 3-6)田淵俊雄( )：粘質水田の排水改良、土壌の物理性、、

29 1997 52 7 330-335)津田真由美( )：カラマツチップの暗渠用疎水剤としての利用、木材工業 ( )、

)吉田修一郎・足立一日出・関光夫( )：重粘土水田における暗渠疎水材もみ殻の劣化と渠溝の空洞化、農土論集30 2005

235 25-33、

31 2005 235 33-41)吉田修一郎・足立一日出( )：水田における暗渠直上の浸透能の空間的変動、農土論集、

32 Yoshida, S. and Adachi, K. 2001 Effect of cropping and puddling practices on the cracking patterns in paddy fields, Soil) ( )：

Sci. Plant Nutr., 47. 519-532

我が国の大豆品種の現状

作物研究所大豆育種研究チーム

羽鹿牧太

平成１８年７月４日

Ⅰ．はじめに

（１）品種育成の基礎知識①品種とは？遺伝的に固定された集団で、得られた種子を播種する

と親と同じ形質を持つ子孫が得られます。農民によって無意識のうちに育成された「在来種」、近代育種技術によって作られた「育成品種」に大きく分けられます。近代育成品種は在来種に比べて収量性・品質等が改良されて栽培しやすくなっており、我が国の作付けの９割以上を占めています。

②品種育成の技術現在主として使われている育種技術は交配による交雑

育種法です。近代育種法が確立する前は自然交雑・突然変異などで生じた雑種集団から純系を選抜する純系淘汰が無意識のうちに行われていました。しかし純系淘汰では変異の幅が十分でなく、現在ではほとんどが交雑育種になっています。

③日本の品種育成の歴史1893 年に設立された農事試東奥支場で、大豆の在来種

の栽培試験を行い優良品種を選定したのが品種育成の始まりです。その後農事試陸羽支場でまず純系分離法、ついで交雑育種法による品種改良が開始され、近代的な品種が育成されるようになりました。

④品種育成の流れ品種育成で最も重要なものは「育種目標」です。育

種目標に沿って交配や放射線照射を行い、雑種集団を作成します。後は必要な特徴で選抜・固定していきます。

（参考１）主要な在来種：丹波黒、ダダチャマメ、鶴の卵など主要な育成品種：フクユタカ、エンレイ、タマホマレ、タチナガハ、スズユタカ、コスズなど

（参考２）大豆の野生種は我が国にも河原などで広くみられるツルマ

メです。中国の黄河流域で改良されて大豆になったとされていますが、各地で独立に品種化されたという説もあります。

（参考３）農林登録品種１３１品種のうち放射線突然変異によるもの

が６品種、純系分離が２品種、残りはすべて交配育種で育成されました。

（参考４）

○品種育成の流れ①育種目標の決定

↓ ←交配品種（交配親）の決定②交配

↓③雑種集団の育成

↓④選抜・固定化

↓ ←育成系統の評価⑤品種化

（２）日本の大豆の生産動向我が国の大豆生産は昭和 30 年代まで 30 万～ 40 万 ha の

作付け面積でしたが、輸入大豆の増加につれ、一時 10万 haを割り込むまで減少しました。その後大豆作付けの奨励に伴い、平成 13 年には 14万 4 千 haにまで回復しました。しかし、平成 15、16 年の２年連続の不作で作付面積は再び減少しています。反収は年による変動が大きく平成 12 年には 192kg/10a に

達しましたが、平成 16年は冷害・台風害等により 119kg/10aと大きく低下しました。このため生産量自体も大きく変動し、国産大豆の最大の弱点とな

っています。

（３）我が国の大豆消費の傾向我が国の大豆の需要量は約 500 万ｔで、そのうち食料用

は約 100 万ｔとなっています。消費の内訳は豆腐・油揚げ用が半分を占め、味噌、納豆がこれに続きます。最近では豆乳の伸びが目立ちます。国産大豆では豆腐の比重が高くなり、煮豆・総菜の割合も高くなっているのが特徴です。食品用大豆の多くは輸入大豆（バラエティ大豆）と見ら

れ、自給率は 15～ 20%程度です。

○日本の大豆の生産動向

○食品用大豆の用途別使用量

＊大豆に関する資料（平成 17年 8月）から抜粋

0

50

100

150

200

250

300

350

1985 1989 1993 1997 2001

作付面積(千ha) 反収(kg/10a) 生産量(千ha)

数量(千t) 割合(%) 数量(千t) 割合(%)味噌 138 13.0醤油 38 3.6豆腐・油揚 496 46.8 96 64.4納豆 139 13.1 13 8.7凍み豆腐 33 3.1 - -豆乳 35 3.3 - -その他 181 17.1 4 2.7（うち煮豆 - - (22) (14.8)合計 1060 149

用途全消費量交付金対象大豆

14 9.4

Ⅱ．日本の大豆育種の現状

（１）育種の体制大豆の育種研究は現在国研４場所、指定試験３場所で地

域分担等をして実施しています。また系統適応性検定試験を１５カ所、病虫害抵抗性に関する特性検定試験を７カ所で実施しています。

（参考）国の育種試験地

道立十勝農業試験場（指定試験地）

道立中央農業試験場（指定試験地）

九州・沖縄農業研究センター

近畿・中国・四国農業研究センター

東北農業研究センター

中信農業試験場（指定試験地）

作物研究所

道立十勝農業試験場（指定試験地）

道立中央農業試験場（指定試験地）

九州・沖縄農業研究センター

近畿・中国・四国農業研究センター

東北農業研究センター

中信農業試験場（指定試験地）

作物研究所

○大豆の育種研究体制

機関名研究室名（定員）主要分担地域

作物研究所大豆育種研究チーム（３）温暖地東部

東北農研ｾﾝﾀｰ東北サブチーム（４）寒冷地

近中四農研ｾ近中四サブチーム（３）温暖地西部

九州農研ｾﾝﾀｰ九州サブチーム（３）暖地

指十勝農試大豆科（５）寒地（北海道北東部）定試中央農試畑作第１科（３）寒地（北海道中南部）験地中信農試作物開発部（大豆係：４）温暖地

○特性検定試験地

実施場所検定特性

北海道立十勝農試シストセンチュウ抵抗性

岩手県農業研究センター立枯性病害抵抗性

山形県農試ウイルス病抵抗性

福島県農試会津支場紫斑病抵抗性

長野県中信農試ウイルス病抵抗性シストセンチュウ抵抗性

○系統適応性試験実施場所

道立北見農試、道立上川農試、道立道南農試、青森県畑園試、宮城農業ｾﾝﾀｰ、福島県農試、新潟県農試、埼玉農試、愛知県農試、三重県伊賀農業ｾﾝﾀｰ、岡山県農試北部支場、愛媛農試、福岡農総試、佐賀農研セ

（２）我が国の主要な品種作付け面積上位５位はここ 10年フクユタカ、エンレイ、

スズユタカ、タマホマレ、タチナガハが占めてきましたが、平成 13 年度にはリュウホウが初の上位５位以内に入りました。最近ではサチユタカ、ユキホマレの作付が拡大しています。農林登録した品種の作付けシェアは 85%以上で、北陸・

東海のように 90%を越えている地域もあります。

しかし、①低蛋白で実需者の評価が低い（タチナガハなど）②台風・低温被害など気象災害を受けやすい（エンレイ、トヨムスメなど）③青立ち被害が頻発する（エンレイ、タチナガハなど）④病虫害抵抗性がない（トヨムスメ、ミヤギシロメ、タンレイなど）⑤外観品質（裂皮・やや小粒）のため、用途が限られる（フクユタカなど）

などの問題点が指摘されており、これらを改善した新品種の育成が求められています。

○我が国の主要品種とその特徴

＊大豆に関する資料(H17年 8月から作成)

品種名作付面積(ha)

特性普及地域

フクユタカ 31,685高蛋白、多収、淡褐目、裂皮易、やや倒伏易

東海・四国・九州

エンレイ 16,548高蛋白、大粒、気象被害大、青立被害

北陸

タチナガハ 11,422機械化適性、大粒、蛋白やや低、青立被害

関東

リュウホウ 9,338機械化適性、シストセンチュウ(SC N)抵抗性、蛋白中

東北中部

スズユタカ 5,567病虫害抵抗性、多収、中粒、蛋白中

東北南部

おおすず 4,065機械化適性、大粒、モザイク病中、蛋白中

東北北部

ミヤギシロメ 3,983多収、大粒、晩生、倒伏易、病害虫抵抗性弱

東北中部

タンレイ 3,539耐倒伏性、蛋白含量中、モザイク病中

東北中部

トヨムスメ 2,971耐倒伏性、SC N抵抗性、耐冷性中、わいか病弱

北海道

サチユタカ 2,902耐倒伏性、高蛋白、多収、裂皮易、裂莢性易

近畿・中国

むらゆたか 2,832高蛋白、多収、裂皮易、やや倒伏易

九州

タマホマレ 2,814 機械化適性、多収、蛋白低、中粒近畿・中国

丹波黒 2,786極大粒、煮豆・枝豆加工適性高、病害虫抵抗性弱

近畿・中国

ユキホマレ 2,451耐倒伏性、SC N抵抗性、耐冷性、わいか病弱

北海道

作付合計 136,800農林登録品種 116,700 （作付面積は平成16年）（同上シェア） 85.3%

（３）育種目標大豆の育種は平成 17 年 3 月に決定された「食料・農業・農村基本計画」及び「農林水産研究基本計画」に基づいて実施されています。我が国の食品用大豆の多くは米国からの輸入バラエティ大豆が使われています。かつては品質も悪かったのですが、近年は日本向けの品種改良が盛んに進められ、品質面での差は粒大などを除いてほとんどなくなってきています。

このため、国産大豆がバラエティ大豆に代わって食品用大豆として使われるためには、

①用途に応じたさらなる高品質化②安定生産のための高度な病虫害抵抗性・ストレス耐性の付与③規模拡大、低コスト化が可能となる機械化適性の付与

などが重要な育種目標となっています。

実際の現場では育種目標は急激な社会情勢の変化にも対応できるように幅広く設定しています。また大豆は地域によって必要とされる特性が異なっていますので、地域ごとにさらに細かく育種目標を設定して育種を行っています。

○主な育種目標

・多収性・外観品質（臍色、種皮色、粒大、子葉色、etc）・成分（高蛋白、高糖分、etc）・機械化適性（耐倒伏性、高最下着莢位置、難裂莢性）・病害抵抗性（モザイク病、わい化病、紫斑病、etc）・虫害抵抗性（シストセンチュウ、ハスモンヨトウ、etc）・ストレス耐性（冷害、湿害、青立ち、etc）・早晩性（作期競合や気象災害回避）・新規成分（リポキシゲナーゼ欠失、低アレルゲン、etc）

（ミニ知識）カドミウム低吸収品種の育成現在国連の Codex 委員会で食品中のカドミウム含量の新たな基

準が検討されています。当初大豆は 0.2mg/kgの基準が提案され、緊急の対応策が求められました。そこで全国の主要品種のカドミウム吸収の品種間差異を調査した結果、我が国の主要品種は低品種と中～高品種に分けられることが分かってきました。フクユタカ、エンレイなどほとんどの品種は低グループに含まれますが、スズユタカなど一部は中～高グループに入り、栽培にあたっては土壌中のカドミウム含量に特に注意する必要があります。なお、大豆のカドミウム基準値については、新たに設けない方

向で検討がなされていますが、安全性の向上の観点から極低の遺伝資源の探索や高吸収に連鎖する DNA マーカーの開発などの基礎研究が続けられています。

（５）選抜項目

①農業特性による選抜農業特性として重要な形質としては、（ⅰ）多収性（ⅱ）機械化適性（耐倒伏性、難裂莢性、最下着莢位置

高）（ⅲ）病虫害抵抗性（モザイク病、わいか病、シストセ

ンチュウ、茎疫病等）等があげられます。特に近年は大規模化に伴いコンバイン収穫を行う農家が多くなっていますので、機械化適性は必須となってきています。選抜の過程でこれら形質は厳重にチェックされ、条件を満たしていない系統を落としていきます。

②品質評価による選抜国産大豆の重要な特徴の一つである「高品質」は、農業

特性とともに育成段階から選抜が実施されます。育成の初期には外観形質（粒大、臍色、裂皮等）、中期には成分（蛋白含量、脂肪含量等）、後期段階で加工適性による選抜が行われています。

（ミニ知識）育種にはどれだけ年月がかかるか？平成以降に育成された品種の育成年限は、最長で１９年、最短

で８年、平均で１３．８年となっています。このため、社会情勢の変化に即応して育種の方向を変えることは難しく、育種目標は情勢変化しても対応できるよう幅広く設定しています。育種の年月を短縮するために、米国では気候が逆の南米で冬の

間世代を進める世代促進を行っていますが、我が国では温室を使った小規模な世代促進が行われているにすぎず、今後は世代促進を積極的に取り入れて育種年限を短縮することが必要です。

○育成段階における品質選抜の例（九州農試）

育成段階品質選抜の指標備考(世代)

交配（両親の形質を考慮して決定）

Ｆ 1

Ｆ 2～Ｆ 3 外観品質雑種集団

Ｆ 4 外観品質、機械化適性、成熟期個体選抜

Ｆ 5 外観品質、機械化適性、成熟期、系統選抜病害虫抵抗性

Ｆ 6～外観品質、種子成分、機械化適系統適応性、成熟期、収量、病害虫抵抗性検定試性、加工適性試験等験、奨励

品種決定調査試験

品種化実需による加工適性試験（官能評価等）

注１）外観形質には粒色、粒大、臍色、裂皮等がある。注２）機械化適性は倒伏の有無、草姿等で判断する。注３）実需者による加工適性試験は有望系統のみ。

③実需者による品質評価実需者による評価は育成の最終段階、奨励品種決定調査

段階に行われています。実験室における加工適性試験では分からない現実に近い加工適性が備わっているかが調査されます。しかし、大豆は用途や嗜好が多様で、実需者毎に評価方

法が異なるため、全国に共通した品質評価システムが確立されていませんでした。平成 11 年に発足した国産大豆協議会では、豆腐・納豆

など加工品目ごとに品質評価分科会を設置し、品種育成の段階から統一的な品質評価を行っています。

（ミニ知識）用途別加工適性評価でもっとも難しいのは豆腐です。木綿豆腐、

絹こし豆腐、充填豆腐等種類が多く、「凝固剤」も硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、GDL 等多種多様な上に、地域による嗜好も様々で、きぬこしでも柔らかいものを好む地域、硬いものを好む地域などと分かれているためです。このため、豆腐加工適性は各項目の単純な良否では判定ができ

ません。豆腐用品種としては九州のフクユタカが最上とされることが多いのですが、この評価は豆腐の固まりやすさ、味等の総合で評価されています。

○国産大豆協議会における品質評価項目の例

品質評価項目標準品種

外観品裂皮の難易、百粒重、色調、へそ色、子質葉色、紫斑粒、褐斑粒、粒形、粒度

種子成蛋白質含有率、脂肪含有率、全糖含有率、分溶出固形分、灰分含有率、種皮率、吸水

率、硬実率

豆固形分抽出率、豆乳粘度、豆乳蛋白質含フクユタカ加腐有率、破断強度、色調工適煮重量増加比、硬さ、皮切れ、色調、赤変トヨムスメ、性豆程度、官能評価丹波黒等

納煮豆の重量増加比、硬さ、粒状、納豆のスズマル豆色調、硬さ、官能評価

味煮豆の重量増加比、水分、硬度、色調、エンレイ噌味噌の色調、官能評価

注）豆腐加工適性については統一的な評価法はできていない。

④新たな形質の付与大豆の需要拡大を図るため、近年成分改良を中心とした

新たな育種が行われています。大豆の青臭みの原因酵素「リポキシゲナーゼ」を完全に

欠失した品種「いちひめ」「エルスター」、アレルゲン蛋白のうち、αサブユニットを欠失した「ゆめみのり」などが育成されています。機能性成分として注目されているイソフラボン含量につ

いては遺伝的な背景は詳しく分かっていませんが、「ふくいぶき」のように通常の品種の 1.5 ～２倍程度に含量が高まった品種も育成されています。

（ミニ知識）大豆の機能性成分大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモンに似た構造を

しており、女性ホルモンの補完的作用を持つと考えられています。これまでの研究で、①骨粗鬆症の抑制、②ほてりなどの更年期障害の緩和、③ガンの抑制、④糖尿病予防などの機能性が報告されています。また米国食品医薬品局は、大豆タンパク質のもつコレステ

ロール低下作用に着目し、大豆タンパク質を１食あたり 6.25ｇ（一日当たり 25 ｇ）含む食品について「心臓病のリスクを低減する食品」という趣旨の表示をすることを認めています。このほかにもサポニン、食物繊維など大豆には豊富に機能

性成分が含まれていることが分かっています。しかし、最近サプリメントでのイソフラボンの過剰摂取が

問題となっており、サプリメントでの摂取は 75mg 以下が望ましいとされています。

○現在進められている主要な大豆成分の改良

成分名特性

リポキシゲナーゼ大豆の青臭みの原因酵素7S蛋白質含粒アミノ酸量低、高機能性11S蛋白質含粒アミノ酸量高、ゲル強度高αサブユニットアレルゲン蛋白質Bd28K蛋白質アレルゲン蛋白質（探索中）Bd30K蛋白質アレルゲン蛋白質イソフラボン機能性成分高αトコフェロール抗酸化性サポニン不快味成分、機能性成分高オレイン酸機能性

○大豆蛋白質の電気泳動像

L-1,L-2,L-3：リポキシゲナーゼアイソザイム

α,α’,β：7S蛋白質

スズユタカ

ゆめゆたか

関東102号

九州119号

いちひめ

フクユタカ

スズユタカ

ゆめゆたか

関東102号

九州119号

いちひめ

フクユタカ

（６）新品種の育成及び普及状況

大豆の品種開発は，多収性，高品質，耐冷性，耐病虫性，

機械化適性等地域の課題に対応して実施しており、農林水

産省では、これまでに 131品種を育成しています。

平成元年以降に 38 品種が育成されましたが、すべての

品種が普及しているわけではありません。

この理由として、

①新品種は上位の銘柄に指定されるまで数年かかり、農

家が新品種の導入に伴うリスクに躊躇すること

②平成５年の大冷害に伴う減反緩和により大豆生産農家

の意欲が一時減退したこと

③新品種が従来品種と比較して飛び抜けて優良な品種で

はなく、従来品種に置き換わりにくかったこと

④種子更新率が低く、普及までに時間がかかること

⑤品種の特徴を利用した製品開発が遅れていること

等が考えられています。

しかし、大豆の生産拡大の取り組みが強化されたことに

より、「おおすず」が４千ha超、「サチユタカ」「ユキホマ

レ」が２千ha超など、新品種の普及は徐々に進んでいます。

○近年育成した主要な品種

＊大豆に関する資料(H17年 8月から作成)

品種名育成年特性作付面積(ha)

普及地域

おおすず 1998機械化適性、大粒、モザイク病中、蛋白中

4,065 東北北部

あやこがね 1999耐倒伏性、多収、SM V抵抗性、蛋白中

1,017東北南部・北陸

サチユタカ 2001耐倒伏性、高蛋白、多収、裂皮易、裂莢性易

2,902近畿・中国

ユキホマレ 2001耐倒伏性、SC N抵抗性、耐冷性、わいか病弱

2,451 北海道

ふくいぶき 2002耐倒伏性、SM V･SC N抵抗性、高イソフラボン

92 東北南部

ユキシズカ 2002耐冷性強、耐倒伏性、SCN抵抗性、納豆加工適性良

81 北海道

つぶほまれ 2003極大粒、SM V抵抗性、耐倒伏性、煮豆・味噌加工適性良

64 東山

すずかおり 2004SM V抵抗性、耐倒伏性、極小粒

- 東北中部

つやほまれ 2004大粒、外観品質良、SM V抵抗性、豆腐加工適性良

167 東海

クロダマル 2004黒の極大粒、立枯病抵抗性、煮豆の製品歩留まり良

- 九州

トヨハルカ 2005大粒、低温抵抗性、機械化適性、少分枝、密植栽培適性

- 北海道

（７）現在育成中の有望系統現在、十育 241 号、東山 199 号、九州 136 号などが有望

視されています。

（８）特色ある大豆の育成

国産大豆の主要用途は豆腐、納豆、煮豆ですが、近年大豆の需要拡大、村おこしなどのために新たなタイプの大豆を育成する動きも目立ってきています。製菓原料向きの「大袖の舞」、種皮色・子葉色とも緑の

「キヨミドリ」「青丸くん」、などの有色大豆がその代表格で、それぞれ各地で地域特産物としての加工製品が開発されています。また、大豆の青臭みの原因酵素リポキシゲナーゼを完全

に欠失した「いちひめ」「エルスター」、リポキシゲナーゼと苦み成分のサポニンを欠失した「きぬさやか」、健康機能性を持つと言われるイソフラボンを強化した「ふくいぶき」、アレルゲン蛋白質の少ない「ゆめみのり」などの成分を改変した大豆の育成も行われ、需要開発が進んでいます。この他にも遊離アミノ酸含量の高い系統、小粒の黒大豆

系統等の特色ある系統の育成も行われています。

○今後育成される見込みの有望系統

系統名育成場系統の特徴主な適応地所域

十育241号十勝農試低温抵抗性、高イソフラボン、SCN 抵北海道抗性、煮豆・味噌加工適性良

東山199号中信農セ耐倒伏性、青立ち抵抗性、SMV抵抗性、東山豆腐加工適性良

九州136号九沖農セ高蛋白、耐倒伏性、成熟期の落葉揃い良、近畿豆腐加工適性良

○特色ある大豆

品種・系統名特徴

大袖の舞製菓原料用。臍色が黄色の種皮のみ緑の青大豆。製菓だけでなく、煮豆、枝豆にも適する。

いちひめ青臭みの原因酵素のリポキシゲナーゼを欠失しエルスターた大豆。豆腐臭くないため、豆乳や豆乳デザーすずさやかト類に適する。

きぬさやかリポ欠に加えて苦み成分のサポニンを欠失した大豆。良食味の豆乳類ができる。

ゆめみのり低アレルゲン大豆。主要アレルゲン蛋白質のαサブユニットを欠失した大豆。

キヨミドリ種皮・子葉色とも緑の青大豆。緑豆腐やウグイ青丸くんス黄粉を作ることができる。

ふくいぶき骨粗鬆症抑制、糖尿病予防などの機能性を持つイソフラボン含量が高い。

Ⅲ．新しい育種技術の導入近年バイオテクノロジーの急速な進歩により新たな育種

技術が発達してきています。現在のところはまだ広く使われるようにはなっていませんが、技術開発が進展すれば育種技術の革命をもたらす可能性を秘めています。

（１）DNAマーカーDNA マーカーとは目的遺伝子の近くにある DNA を目印

に選抜を行うものです。良いマーカーを見つけることができれば、選抜効率を飛躍的に向上することができます。遺伝子組み替えと違って、遺伝子の操作は行いません。我が国ではシストセンチュウ抵抗性やハスモンヨトウ抵

抗性などの DNAマーカーが現在開発されています。

（２）遺伝子組み換え技術遺伝子組み換えの研究はイネを中心に進展し、遺伝子の

構造解析や機能解析、安定的な遺伝子導入技術の開発等がなされています。我が国ではようやく遺伝子組み換え個体が安定的に作出されるようになった段階で、遺伝子組み換え品種は育成されていません。海外ではモンサントの除草剤耐性品種（ラウンドアップ

レディー）、高オレイン酸大豆などいくつかの品種が育成されており、アメリカでは作付け面積の 87%(2005 年)が遺伝子組み換え大豆であると言われています。

○現在 DNA マーカーの開発が進められている主要な形質

形質研究実施場所

シストセンチュウ抵抗性東北農セ、十勝農セ黒根腐れ病抵抗性作物研、中信農試耐湿性作物研ハスモンヨトウ抵抗性九州農セモザイク病抵抗性東北農研セ難裂莢性北農研セ高カドミ蓄積性作物研青立ち抵抗性作物研

（ミニ知識）大豆における遺伝子組み換え技術の現状これまで我が国では大豆の遺伝子組み換えは困難と言われてい

ましたが、近年パーティクルガン（遺伝子銃）法による安定した遺伝子導入系が出来てきました。今後は大豆に様々な遺伝子を導入して、耐湿性の高い大豆、病虫害に強い大豆、栄養機能性が高い大豆など画期的な品種を育成することが可能となるでしょう。なお、パーティクルガン法は海外でも盛んに用いられている手

法ですが、遺伝子断片がいろいろな部分にランダムに入ることなどから、より安全性の高いアグロバクテリウムを用いた遺伝子導入系の開発も現在行われています。

近年の大豆育成品種（昭和６３年以降）及び主な有望系統

１）道立十勝農業試験場

品　種　名登録年度来　　歴主　要　特　性適　　　地

トヨコマチ 1988 樺太１号ｘトヨスズ中生の早、中の大粒、短茎、耐冷性やや強、線虫抵抗性強、臍周辺着色抵抗性強、耐倒伏強、中蛋白・低脂肪、収量安定性高。

道央中北部、十勝、網走

カリユタカ 1991 ヒメユタカｘClarkDt2 中生、中の大粒、短茎、黒根病抵抗性強、耐倒伏強、裂莢性難、中蛋白・低脂肪、良質十勝、網走内陸および道央

大袖の舞 1992 十育186号ｘトヨスズ中生、子実は臍色黄、種皮色緑、大の小粒、短茎、線虫抵抗性強、耐倒伏強、低蛋白、良質多収、米菓用適、枝豆用適。

十勝、網走

トヨホマレ 1994キタホマレｘ十育206号

中生、中の大粒、短茎、耐冷性強、耐倒伏強、難裂皮、臍周辺着色抵抗性強、中蛋白・低脂肪。

網走、十勝の山麓・沿海、道央の一部

ハヤヒカリ 1998十系679号ｘキタホマレ

中生の早、子実は臍色暗渇、球形の中粒、短茎、耐冷性強、耐倒伏強、裂莢性難、難裂皮、低蛋白・中脂肪、豆腐、納豆、煮豆、味噌、もやしに適

十勝山麓・沿海、網走、上川、留萌

ユキホマレ 2001 十系783号ｘ十系780号中生の早、中の大粒、短茎、耐冷性強、線虫・茎疫病抵抗性強、裂莢性難、耐倒伏強、臍周辺着色抵抗性強、中蛋白・低脂肪、煮豆・納豆・味噌に適


ユキシズカ 2002 吉林15号×スズヒメ中生の早、球の小粒、短茎、淡褐莢、耐倒伏性、線虫・茎疫病抵抗性強、わい化病抵抗性中、臍周辺着色抵抗性強、中蛋白・低脂肪、納豆加工適性良。

網走、十勝、上川、石狩、空知、胆振

トヨハルカ 2005十系793号×十系6225F8

白目大粒、外観品質良、低温抵抗性強、耐倒伏性強、最下着莢位置高、分枝が少ない主茎型の草型、密植による増収効果高、煮豆、味噌及び納豆加工適性良

十勝、上川、石狩、空知

十育241号 (2006) 十系793×十系817中生の早、中の大粒、耐冷性強、臍周辺着色抵抗性中、イソフラボン含量高、線虫抵抗性、豆乳・味噌・煮豆加工適性良


２）道立中央農業試験場


スズマル 1988 十育153号×納豆小粒中生、子実は球形で小粒、ｼｽﾄｾﾝﾁｭｳ弱、納豆加工適性有、道央及び道南部

ツルムスメ 1990 中系67号×中育12号中生、子実は扁球で極大、ダイズわい化病抵抗性やや強、強茎、豆腐加工適性有道央及び道南部

いわいくろ 1998 晩成光黒×中育21号中生、子実は扁球で極大、ダイズわい化病抵抗性やや強、種皮色・臍色とも黒、煮豆加工適性有

道央及び道南部

中育52号新丹波黒×ツルムスメ晩生、極大の中粒、最下着莢節位高、低蛋白、煮豆加工適性良道央及び道南部

３）東北農業研究センター


トモユタカ 1990 東北52号×刈系102号中生の早、子実は楕円体で中粒、種皮の色は黄白、臍色は黄、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ、ﾀﾞｲｽﾞｼｽﾄｾﾝﾁｭｳとも抵抗性強、耐倒伏性、豆腐加工適性良

山形

リュウホウ 1995スズユタカ×刈交343F7

中生の早、子実は楕円体で中の大粒、種皮の色は黄白、臍色は黄、ﾀﾞｲｽﾞｼｽﾄｾﾝﾁｭｳ抵抗性強、耐倒伏性やや強、豆腐加工適性有

秋田、山形

鈴の音 1995 刈系244号×コスズ早生の晩、子実は球形で小粒、種皮の色は黄で臍は黄、耐倒伏性強、納豆加工適性有、コンバイン収穫適性有

岩手

おおすず 1998刈交296号F6×刈系237号

中生の早、子実は扁球で大粒、種皮の色は黄白、臍色は黄、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性中、耐倒伏性強、多収、煮豆・豆腐加工適性良

青森、秋田

たまうらら 1999刈交296号F6×刈系237号

中生の早、子実は球で大粒、種皮の色は黄白、臍色は黄、裂皮性やや難、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性中、耐倒伏性強、煮豆・豆腐加工適性良

栃木

ハタユタカ 1999 スズユタカ×エンレイ晩生の早、子実は扁球で大粒の小、ﾀﾞｲｽﾞｼｽﾄｾﾝﾁｭｳ・ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性ともに強、多収、煮豆・豆腐加工適性ともに適

茨城、群馬

ゆめみのり 2001刈系434号にγ線照射した突然変異品種

中生の晩、中粒の小、種皮の色は黄白、臍色は黄、裂莢性中、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性強、ｱﾚﾙｹﾞﾝの一部を欠失、含硫ｱﾐﾉ酸強化、従来法の豆腐加工は難

秋田（東北、北陸、関東北部）

ふくいぶき 2002 東北96号×デワムスメ中生の晩、子実は球で中の大粒、ﾀﾞｲｽﾞｼｽﾄｾﾝﾁｭｳ・ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性ともに強、多収、耐倒伏性、イソフラボン含量高い、豆腐加工適性適

福島（東北南部、北陸）

青丸くん 2002赤青Ｄ165×タチユタカ

中生の早、中粒、子実は球で中粒、子葉・種皮色とも緑、在来青豆より早生多収、耐倒伏性強、裂莢性難

岩手（東北中部）

すずさやか 2003スズユタカ×九交355(いちひめ)

中生の晩、子実は扁球で中粒、リポ全欠、ダイズモザイクウイルスとダイズシストセンチュウ抵抗性ともに強

秋田（東北中南部）

すずかおり 2004 778F5×コスズ中生、極小粒、耐倒伏性、SMV-ABCD抵抗性、蛋白含量中、シストセンチュウ抵抗性弱、再下着莢位置高低、納豆加工適性良

山形

きぬさやか 2005 刈系508号×0459F1リポ全欠、グループＡサポニン欠、中生の晩、中粒、SMV-ABCD抵抗性、蛋白含量中、豆乳加工適性良

東北中南部

東北146号 778F5×コスズ中生の早、極小粒、短茎、耐倒伏性、SMV-ABCD抵抗性、蛋白含量中、納豆加工適性高東北南部

４）作物研究所


ゆめゆたか 1992(ｽｽﾞﾕﾀｶ/PI86023)BC3F4／(ｽｽﾞﾕﾀｶ/早生夏)BC4F3

中生、子実は臍色黄、種皮色黄白、扁球の中粒、紫花、白毛、有限伸育型、丸葉、暗褐莢、モザイク病抵抗性強、シストセンチュウ抵抗性強、中蛋白・中脂肪、ﾘﾎﾟｷｼｹﾞﾅｰｾﾞのＬ－２及びL-3を欠失し青臭みが少ない、豆乳用適、新規用途用適

関東

関東100号(作系4号)

2002 エンレイ×Ｅｎ6500中の晩、大の小粒、根粒超着生、窒素固定能が生育期間を通じて高い、普通品種と同等の収量性、高蛋白

関東

関東103号タチナガハをゆめみのりに戻し交配４回

タチナガハよりやや遅い中の晩、大粒の小粒、耐倒伏性、ゆめみのりより多収、７Ｓグロブリンのα及びα´サブユニット欠失、高11Ｓ系統、豆乳抽出率低い、全粒豆乳向。

関東

関東105号刈系0330F4×納豆小粒中生の早、耐倒伏性、SMV抵抗性、納豆小粒より大きい小粒の大、７Ｓグロブリンのα及びα´サブユニット欠失、納豆用。

東北南部、北陸、関東北部

関東106号九系220×むらゆたか晩生、中の大粒、高蛋白、最下着莢位置高、主茎長やや長南関東・東海・近畿・中国

関東107号ほうえん×東山系V599 中生の晩、大の中粒、短茎、最下着莢位置高、蛋白含量中東北南部・北陸・関東北部

５）長野県中信農業試験場


オオツル 1988 東山80号×エンレイ中生の晩、子実は扁球で大粒、ﾀﾞｲｽﾞｼｽﾄｾﾝﾁｭｳ抵抗性弱、煮豆・味噌加工適性良群馬、山梨、富山、三重、滋賀、京都

アヤヒカリ 1991 エンレイ×東北53号中生、子実は楕円体で大粒、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性強、タンパク含量高東山

ギンレイ 1995東山系N802×スズユタカ

中生の晩、子実は球で大粒、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性極強、耐倒伏性強、味噌加工適性有長野

さやなみ 1997東山95号（タマホマレ）×小糸在来

中生の晩、子実は球で大粒、ﾀﾞｲｽﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性極強、耐倒伏性強、味噌加工適性有近畿中国

ほうえん 1997東山124号（ホウレイ）×エンレイ

中生、子実は球で大粒、ﾀﾞｲｽﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性極強、耐倒伏性強、豆腐加工適性有長野

玉大黒 1997 丹波黒×東山140号中生の早、子実は球形で極大粒、種皮色、臍色とも黒、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性極強、粒大・収量とも｢信濃早生黒｣に優る

群馬、埼玉、長野

タママサリ 1998 小糸在来×東山122号晩生の早、子実は球形で大粒、耐倒伏性強、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ、立枯性病害、紫斑病に抵抗性強、全糖含有率高、味噌・煮豆加工適性に優れる

兵庫

すずこがね 1998東山124号（ホウレイ）×エンレイ

中生、大粒の小、耐倒伏性強、裂莢性中、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性強、紫斑病抵抗性強、蛋白含量中、豆腐加工適性良

鳥取

あやこがね 1999東山124号（ホウレイ）×エンレイ

中生の晩、子実は球形で大粒、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性強、耐倒伏性強、豆腐・味噌加工適性有(｢ｴﾝﾚｲ｣並)

宮城、新潟、福井、長野

すずこまち 2001 納豆小粒×タチユタカ中生、子実は扁球で小粒、裂莢性やや難、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ、紫斑病ともに抵抗性強、｢納豆小粒｣より多収、納豆加工適性良

長野

つぶほまれ 2003東山140号/東山135号（タチナガハ）

晩生、大粒・良質、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ強、紫斑病強、煮豆・味噌加工適性高、SCN弱長野

つやほまれ 2004東山144号（オオツル）×東山154号

フクユタカより早熟、アキシロメより多収、大粒、外観品質良、難裂莢、枯れ上り良、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性、蛋白中、蔓化やや易

岐阜県

東山199号 (2006)東山149号（アヤヒカリ）×長交1-28F1

タチナガハ並熟期、大粒、蛋白含量はタチナガハよりやや高、紫斑病抵抗性、ﾓｻﾞｲｸ病抵抗性、耐倒伏性、青立ち少ない、味噌加工適性良

長野

東山204号納豆小粒×東山系U455 晩の早、小粒、モザイク病強、蛋白含量低、耐倒伏性、枝折れ、蔓化少ない南東北、関東、東山

６）九州・沖縄農業研究センター


ニシムスメ 1990 東山25号×東山95号中生の晩、子実は球形で中粒、ｳｲﾙｽ病抵抗性強、耐倒伏性強、豆腐加工適性良近畿・中国

いちひめ 1996 関系２号×ゆめゆたか中生の早、子実は扁球で中粒、ﾀﾞｲｽﾞﾓｻﾞｲｸｳｲﾙｽ抵抗性強、耐倒伏性強、ﾘﾎﾟｷｼｹﾞﾅｰｾﾞ全欠失

東北南部、関東北部

エルスター 2000(フクユタカ×九交506)×むらゆたか

晩の早、子実は扁球で中粒、ﾀﾞｲｽﾞｳｲﾙｽ病圃場抵抗性強、紫斑病抵抗性強、粗タンパク含量高、ﾘﾎﾟｷｼｹﾞﾅｰｾﾞ全欠失

九州及び西南暖地

サチユタカ 2001(フクユタカ×エンレイ)×エンレイ

中生の晩、子実は球形で大粒、耐倒伏性強、紫斑病抵抗性強、粗タンパク含量高、豆腐加工適性良

関東南部・近畿・中国

すずおとめ 2002 納豆小粒×九系50号中生の晩、小粒、青立ちが少ない、最下着莢位置高い、耐倒伏性、納豆加工適性高い、モザイク病抵抗性、福岡・熊本で実用栽培。

九州北部・東海

キヨミドリ 2002 黄粉豆-2×群馬青大豆中生の晩、大粒の小、種皮・子葉とも濃緑、風味に優れた緑豆腐に加工できる、蛋白含量やや低

九州

クロダマル 2004 坂上２号×新丹波黒新丹波黒よりやや早生で多収、極大粒、光沢のある黒豆、煮豆加工での製品歩留まりが高い、煮豆の外観品質良好、蛋白含量やや低

九州

九州136号 (2006) エンレイ×九州95号アキシロメより早生、やや大粒、高蛋白、耐倒伏性、成熟期の落葉揃い良好、SMVのA2系統に抵抗性、豆腐加工適性良

滋賀

汎用不耕起播種機による大豆不耕起播種技術

関東東海水田輪作研究チーム・浜口秀生

大豆の不耕起播種技術の研究の経過

北海道では明治期から耕起・整地後に播種する体系であったが、府県で全面を耕起・整

地後に播種する体系が普遍化するのは昭和40年代後半に水田利用再編対策が始まった後で、

それ以前は全面を耕起・整地することなく手播きする不耕起播きの体系が大部分であった。

現在の日本の大豆は主に水田転換畑に作付けられている。転換畑の大豆栽培は北海道な

ど一部の地域を除くと麦類と大豆の二毛作がすすめられている。麦と大豆の切り替えが梅

雨期にあたるため、日本の大豆の不耕起栽培や簡易耕栽培の研究の多くは、転換畑大豆を

対象とし、耕起後の降雨で播種作業が遅れることの回避技術、前後作の作期が重複する場

合の作業競合回避による適期播種及び作業能率向上の方策として研究されている。畑作大

豆では土壌浸食防止効果等を期待した例や減踏圧作業技術の可能性を検討した例がある。

これまでに試験された不耕起播種、簡易耕播種の結果をみると、収量は慣行と同等かや

や高い傾向があり、播種までの省力化に効果が高かった。他に機械の燃料費等が減少する

こと、シミュレーションから不耕起播種の導入は播種作業の遅れの回避、それによる増収、

規模拡大に有効なことが明らかにされた。一方、不利な点としては慣行に比べ除草の回数

や薬剤費が増えることなどが明らかになった。南北アメリカでは不耕起栽培は土壌浸食を

防ぐ保全的農法として普及しているが、日本で平成14年に不耕起播種された大豆は 445ha

で普及には至っていない。

汎用不耕起播種機による大豆不耕起播種

輪作体系

旧総研１チームでは、図１に示した４年６

作の輪作体系で稲敷市の現地圃場で転換２作

目と４作目の大豆を不耕起狭畦栽培を行って

いた。不耕起播種が定着している現地や出前

技術指導を利用している現地では稲・麦・大

豆の２年３作体系が多い。

圃場作業体系（図２）

通常の耕起栽培と不耕起播種が異なる

のは次のような点である。不耕起のた

め、圃場の均平、土壌改良資材施用、前

作の残さや既に発生している雑草の埋没

を大豆播種前に行うことは出来ない。麦

作時に圃場均平と土壌改良資材施用をお

こなう。大豆播種前に発生している雑草

は播種前（後）の茎葉処理除草剤で防除

する。残さや刈り株は播種作業の妨げにならないようチョッパ等で細断拡散する。

移直麦麦植 → 播 → ↓ → ↓

水水大大稲稲豆豆

図１　　４年６作水田輪作体系太字の大豆を不耕起栽培する。

麦前排水対策石灰資材耕起・整地(明渠・暗渠) 施用

麦収穫後麦稈処理明渠播種前不耕起播種

除草剤同時施肥

播種後生育期子実害虫収穫

除草剤除草剤病害防除図２　　大豆不耕起栽培の圃場作業体系

汎用不耕起播種機（図３）による播種

汎用不耕起播種機

中央農研試作で改良を続けてきた独立懸架ディスク駆動式汎用不耕起播種機が、松山

（株）から市販されている。この播種機には、凹凸のある不耕起圃場の田面に各条が追随

するため作溝部、播種部は独立懸架である、作溝ディスクを強制回転させることにより根

の生長の助長と排水性の向上に効果があるY字溝を形成する、作溝ディスクはアップカット

回転させると前作物残渣を播種溝から排除し種子と土との接触を確かにする、播種行程の

継ぎ目を正確にするために泡マーカを採用しているなど特徴がある。 60cmまたは65cm条

間の４条型と30cmまたは35cm条間の６条型があり、狭畦栽培には６条型を使用する。６条

型は水稲（乾田直播）、麦類の播種にも使用できる。使用する条数を半分にしマーカーの長

を調節すれば普通畦幅の３条の播種機として使用できる。なお、価格は６条型が約 250万、

４条型が約190万円である。

播種深度はおおよそ 3cmになるようにする。麦稈を播種溝内に入れないよう作溝ディス

クは逆転させる。作業速度は0.7～1.0m/s 程度が適当である。鎮圧輪のスクレーパの能力

が十分でないので麦稈や土が付着したらこまめに落としてやる。作業速度約0.8m/sで90ａ

の圃場を播種した時の能率は実測値では補給と枕地の播種も含めて36a/hであった。

図３汎用不耕起播種機

左上：麦跡圃場での不耕起播種．左下：播種溝の模式図．右：播種機側面図

施肥播種量

水田輪作チームでは不耕起狭畦栽培を行っている。20本／㎡の栽植密度を確保するため

に、25粒／㎡播種している。栽植密度が高いので耐倒伏性の強い品種タチナガハを用いて

いる。基肥は窒素 3kg程度を施用する。また、殺虫・殺菌剤（VCT・チウラム）を種子粉衣

して播種している。

播種機の種子、肥料の繰り出しは横溝ロール式である。また、肥料ホッパの容積が小さ

いので、一般的な3-10-10化成の100kg/10a施用の場合、10アールに１回の補給が必要にな

る。水田輪作チームでは5-20-20化成肥料を60kg/10a施用している。施肥をブロードキャス

タで行う現地もある。

不耕起播種の効果

現地試験や出前指導では耕起播種と不耕起播種を同じ日に実施する場合が多く、不耕起

播種の最大のメリットである適期播種の効果を示すことができる事例は少ないが、大豆の

不耕起播種は中央農研が把握してる分だけでも千葉、茨城、埼玉、福島等で約180ha 程度

定着しており、その効果は現地のユーザーに評価されていると思われる。昨年の筑西市の

納豆小粒の事例では、不耕起播種は７月中旬に作業が終了し、収量が約200 kg/10aあった

のに対し、耕起播種は７月下旬までずれ込み収量は約150 kg/10aであった。

出芽・苗立ちの安定化

不耕起栽培にとって収量面からも雑草防除の面からも出芽苗立ちの安定化が重要である。

これまでの現地試験や出前技術指導で出芽・苗立ち不良となった原因として湿害と病害、

乾燥、除草剤の薬害、作業機の踏圧、PTO 動力の入れ忘れ、繰り出し不良などがある。

不耕起播種は、降雨後の作業開始が早いので播種作業は雨に強いといえる。しかし、出

芽苗立ちに関しては雨に強いとは言いがたい。平らな田面に播種溝を作り播種するため排

水対策が十分でない場合は溝に水がたまりやすい。大豆播種前に圃場の耕起を欠くので土

壌の均平化、膨軟化ができない。これらのことなどから湿害や多湿条件で発生する茎疫病

などにより出芽・苗立ち不良がおこりやい。

水田輪作チームでは図４の様な排水対策を行っている。麦播種前に施工済みの弾丸暗渠

にくわえ、額縁明渠と機械の旋回であれた枕地にたまる水を圃場内部への流入させないよ

う枕地と圃場内部との境界の明渠を大豆作時に設置している。現地では枕地を浅耕するこ

ともある。

図４大豆不耕起播種のための圃場排水対策

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排水路

水田水田排水口

農道排水路

転換畑転換畑

排水路農道

転換畑転換畑農　　道

農道排水路額縁中明渠本弾丸暗渠明渠１０ａに暗 2～3m

水田水田１本程度渠間隔★ 枕地排水対策枕地（特に農道側）は作業機の走行、旋回が多く

農道や排水路で水田と転換畑を切り離す土が硬く締まったり、深い轍ができやすい。雨が多かったり漏水があると湿害を起こしやすい。

枕地との境界の明渠枕地の浅耕

技術出前現地においても枕地特に道路側の枕地に苗立ち不良が目立っており、新しい枕地

排水対策の検討をはじめる予定である（図５）。

a b c

図５大豆不耕起栽培圃場の枕地の生育状況

ａｂは同じ圃場の道路側（ａ）、排水路側（ｂ）、ｃは別圃場の道路側枕地

茎疫病菌やピシウムによる種子腐敗や苗の立ち枯れ（図６）の防除が出芽苗立ちの安定

化にとって非常に重要である。種子粉衣ができるメタラキシル水和剤は登録はあるが一般

に販売されていない。出芽後散布にオキサジキシル・銅水和剤や銅剤に登録があるが、手

遅れとなる場合もある。また、オキサジキシル・銅剤は製造中止となった。有望な複数の

薬剤が登録に向けて試験中である。それらの早期の登録を期待したい。また、抵抗性品種

の育種も進んでいない。茎疫病による出芽苗立ち不良を抑えるには排水対策を徹底すると

ともに、土壌を緊密にする連続した不耕起栽培、高水分条件でのトラクタ作業はさける。

不耕起播種後に多発した圃場に播き直すときは不耕起ではなく耕起播種する。

図６茎疫病あるいはピシウムによる立ち枯れ

土中で腐敗するものもあれば出芽後すぐに枯死するもの（左）もある。また、本葉が展開後に

に枯死するものある（右）。そのため薬散やまき直しの判断が難しい。

乾燥、除草剤の薬害は播種溝の不良、覆土不足、種子の播種溝からのとびだしなどが原

因である。圃場条件に合わせて播種機の調整や作業を確実に行えば防げるものである。

作業機の踏圧による出芽不良は播種条直上をトラクタや乗用管理機が走行すると起こる。

播種前のフレールモアによる麦稈処理は土壌がしめった条件でおこなうと土壌をしめてし

まい湿害や病害を助長するので、土が乾燥した条件で実施する。

吸湿性の強い農薬を粉衣、塗沫した種子を放置するとロールに種子がはりついて繰り出

しが不良となる。また、まれにブリッジ現象やパイプの折れ曲がりにより種子が落下しな

いことがある。

雑草防除

不耕起播種では播種前の耕起による除草ができないので、播種前あるいは播種後に非選

択性茎葉処理剤を散布する。不耕起栽培では表面に麦稈があるので土壌処理剤の地表面へ

の到達量が減り効果が減殺されると思われてきたが、一部の剤を除き、麦稈に付着した除

草剤も有効であることがわかってきた（中山．2004)。

播種作業を優先しすぎたため土除処理除草剤の散布時期を逸した事例もあるので播種と

除草剤散布のバランスをとって作業する必要がある。大豆の播種時期と生育期の除草作業

の実施時期の両方もしくは一方が梅雨期間にあたる地域が多いことから除草剤散布作業の

効率化が必要と考えている。

引用文献

農林水産省農産振興課平成１６年度大豆に関する資料

中山壮一雑草研究４９（別）76-77、2004

大豆の耕うん同時畝立て播種技術

中央農業総合研究センター北陸水田輪作研究チーム

細川寿

１．はじめに

全国の圃場の約 30％は重粘土といわれており、特に北陸や東北地域の日本海側に広く分

布している。重粘土の特徴は、粘土の割合が多いことから排水が不良となるだけでなく、

耕うん時には砕土率が大きく低下する。一方北陸地域では、水田の割合が 90％以上を占め

ているため、大豆のほとんどは重粘な水田転換畑に作付けされている。そのため、大豆栽

培では、湿害を回避し砕土率を向上させて播種後の発芽がスムーズになるようにすること

が重要である。そこで大豆を対象に重粘土転換畑で使用できる耕うん同時畝立て播種作業

技術を開発し、その効果について検討を行うとともに普及を図っている。

２．大豆の耕うん同時畝立て播種作業技術

一般的に圃場で野菜等を栽培する場合は、畝立て栽培が行われ、一度耕うんした後、畝

立て機等を利用して畝を作ることが多い。大豆の場合は、通常耕うんした平らな圃場に播

種を行うが、大豆の畝立て栽培は、最初から畝を立てて播種を行うことにより、１回目の

培土終了時と同様な形状にして、大豆の湿害を回避する技術である。作業方法としては、

一度耕うんした後に成型板等で畝を立て播種する方法（四国、鳥取、富山等）も行われて

いる。しかし重粘土の場合、特に湿った圃場条件では、成型板で畝を作ることが困難であ

る。耕うん後管理機等で畝を作る場合は、耕うんをアップカットロータリで行っても畝立

て作業により表層の砕土率が低下したり水分が高い場合の土壌の練り返しが発生する。そ

こで、耕うん軸を改良したアップカットロータリを使用して耕うんと同時に畝立て・施肥

・播種すべてを一行程で行う作業技術を開発した。

1)大豆用耕うん同時畝立て播種作業機の構造

作業機はアップカットロータリの耕うん軸を砕土性の高いホルダー型にし、耕うん爪の

曲がりを作りたい畝の中心に向けてそろえて取り付け、整地板を少し上げることにより、

耕うんと畝立てを同時に行う

ことが可能な構造である。畝

立用の成型板を溝部に取り付

けると、さらに高く畝を成型

することが可能であるが、ほ

とんどの土壌条件では、爪の

曲がりをそろえるだけで畝を

作ることが可能である。ロー

タリ後方に、回転目皿式、傾

斜ベルト式、横溝ロール式等

の施肥播種機を装着し、耕うん

畝

750

200

10050

300～350

土の移動

畝

750

200

10050

300～350

畝

750

200

10050

300～350

土の移動

650 200

30～50

850～950

650 200

30～50

850～950

1500

土の移動

図１耕うん同時畝立て播種機(左:75cm×2、右:150cm)

2006.07.04

畝立てと同時に施肥播種を行うことが可能である。また、

接地駆動輪を溝部に取り付けた場合、地表面にとどかない

場合は、畝側に少し移動している。

作業機の爪配列は、爪の曲がりの中心を 75cm の間隔

をあけて中心に向け、75cm２畝で使用する場合がほとん

どであるが、爪の配列をロータリの中心に向けて 150cm

１畝にすることも可能である（図１）。

2)畝の形状

75cm 畝の形状は、PTO 回転数を増加させることにより、

より高い畝を作ることが可能であった（表１、図２）。

成型板が無い状態では、畝高さは５～10cm 程度で、畝間

に土が残るが、成型板を取り付けると、畝間にはほとん

ど土が残らず、畝高さも 15cm 程度になった。成型板を取

り付けた場合は、整地板を下げても畝形状は変化せず、

成型板を取り付けない場合は、整地板の高さを変更する

ことにより、畝の高さを変えることが可能であった。

3)砕土率

全層の砕土率は、畝立ての場合、整地板を上げて

耕うんするために、通常の整地板を下げた耕うんに

比べてやや低下した（図３）。しかし、整地板を上

げた状態でも、畝立ては耕うん爪による土の移動で

畝中央部に土が集まるために、表層の砕土率の低下

はほとんど認めらなかった（図３）。また、場所別

の砕土率では、畝間の砕土率が畝部分より低くなる

傾向が認められた（図４）。

4)耕うん同時畝立ての所用動力

耕うんと同時に畝立てを行った場合の所用動力は、同じ作業機で爪配列を標準にした場

合に比べて減少した。整地板を上げることにより、土がロータリ外に排出されやすくなり、

畝間の砕土率や全層の砕土率の低下が発生し、所用動力が減少すると考えられた。また75cm

30

40

50

60

70

80

90

100

0 1 2 3 4 5 6 7

走行速度／耕うん軸回転数

砕土

率全

層

畝畝間整地板下げ

30

40

50

60

70

80

90

100

0 1 2 3 4 5 6 7


全層

砕土

率(2

cm

)

75cm畝標準整地板下げ標準整地板上げ

土壌含水比36～47％

30

40

50

60

70

80

90

100

0 1 2 3 4 5 6 7


表層

砕土

率(2

cm

)

75cm畝標準整地板下げ標準整地板上げ

土壌含水比36～47％

Ａ

Ｂ

Ｃ

整地板上げ

Ａ

ＢＣ

整地板下げ

表１ PTO 回転数と畝高さ

図２畝断面模式図

図４畝と畝間の砕土率

図３整地板の位置と砕土率（左：表層、右：全層）

畝高さ整地板 (cm) 畝間畝

ＡＢＣ上げ 540 18 8 25上げ 762 18 10 28上げ 944 19 10 31.5下げ 944 11 9 20

走行速度：0.16m/s、培土板：無し

ＰＴＯ回転数

耕うん深さ

2006.07.04

×２条の方が 150cm の耕うん同時畝立てに比べて畝間部分が多いため、所用動力が少なく

なった（図５）。

5)畝立て栽培の地下水位

畝立て栽培は慣行栽培に比べて、最初からの播種位置が高いため（図６）、慣行栽培で

中耕培土作業を行った後でも、75cm 畝、150cm 畝両方ともに、地下水位が低くなった（図

７）。地下水位の効果は、基盤整備済みの暗渠施

工圃場、暗渠の無い圃場とも同様の効果が認めら

れた。

6)畝立て栽培の土壌水分

畝立て栽培の土壌水分は、5cm の深さでは、常に畝立ての土壌水分が低くなり（図８）、

10cm の深さでは、特に降雨後の畝立ての土壌水分が増加しない（図９）傾向が認められた。

土壌水分への効果は、基盤整備済みの暗渠施工圃場でも暗渠の無い圃場でも同様に認めら

れた。しかし、20cm 以下の深さでは土壌水分が高く、明確な差は認められなかった。畝の

高さは、15cm だけでなく 10cm でも慣行に比べて土壌水分が低くなった（図 10）。なお、

土壌水分の測定は深さ５cm は TDR 土壌水分計（体積含水率）で、深さ 10cm 以下は水分ポ

テンシャル（pF)で測定した。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

6/20 6/25 6/30 7/5 7/10 7/15 7/20

測定日(2002)

地下

水位

(cm

)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

降水

量(m

m)

普通 75cm畝 150cm畝降水量

地表面

0

5

10

15

20

25

30

0.05 0.1 0.15 0.2 0.25

走行速度（ｍ／ｓ）

所要

動力

（ｋＷ

）

(20PS)

(40PS)

(30PS)

耕うんのみ

7 5c m畝1 5 0c m畝

地下水位－高

土壌含水比：58-71％

0

5

10

15

20

25

30

0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35

走行速度（ｍ／ｓ）

所要

動力

（ｋＷ

）

地下水位－低

土壌含水比：37-44％

耕うんのみ

75cm畝

150cm畝

畝畝間

畝立て播種慣行耕うん

地下水

地下水位畝畝間

畝立て播種慣行耕うん

地下水

地下水位

0

10

20

30

40

50

60

6/20

6/27 7/

47/

117/

187/

25 8/1

8/8

8/15

8/22

8/29 9/

59/

129/

199/

2610

/3

測定日（２００３）

体積

含水

率（％

）

0

20

40

60

80

100

降水

量（ｍ

ｍ）

75cm畝耕うんのみ降水量

5cm深さ(20ａ)地下水位30cm以下：10％

図５耕うん同時畝立ての所用動力（左：暗渠有、右：暗渠無）

図６畝立ての播種位置図７畝立て栽培の地下水位

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

6/19

6/26 7/

37/

107/

177/

247/

31 8/7

8/14

8/21

8/28 9/

49/

119/

189/

2510

/2

測定日（２００３）

土壌

水分

（ｐ

Ｆ）

0

20

40

60

80

100

降水

量（ｍ

ｍ）

75cm畝 150cm畝耕うんのみ降水量

10cm深さ

図８畝立ての土壌水分（TDR-5cm) 図９畝立ての土壌水分(pF-10cm)

2006.07.04

7)畝立て栽培の土中酸素濃度

大豆は根粒が着生しているため、土壌中の酸素濃度が高いと、生育が良好になる。酸素

濃度センサを 10cm と 20cm の深さに埋設し、酸素濃度を測定すると、通常酸素濃度は 20％

であり、降雨があると酸素濃度は低下する。しかし、耕うんのみに比べ畝を立てることに

より、排水効果に加え、側面からも空気が供給されるため、酸素濃度の低下の程度が小さ

くなると考えられた（図 11）。

8)生育量

畝立てを行うことにより、特に生育前半に

主茎長が長くなり（図 12）、生育後半はそ

の差は次第に小さくなる傾向にあった。生育

後半に降雨が多い年は、畝立てをしていない

圃場では、収穫前には早く葉が黄化したり落

葉する大豆が多く認められたが、畝立て圃場

では、順調に生育した。

9)畝立て大豆の管理・収穫作業への影響

畝立て大豆の播種後の畝形状は、最初から

１回目の中耕培土後の状態に近くなってい

る。そのため中耕培土を省略できると思われ

る場合も多いが、除草効果を考えると、培土

量は少なくても２回を目標に中耕培土作業を

行うのが良いと考えられた。中耕培土作業は、

75cm 畝は慣行栽培と同様に作業が可能であっ

たが、150cm 畝では、培土する条毎に畝間の形

状が異なるため、各条の作業機高さ調節位置を固定しない等の、調節変更が必要であった。

また、排水不良で培土ができない圃場では、やや倒伏する傾向が認められたが（表２）、

コンバインによる収穫時に問題は認められなかった。

10)大豆収量、品質

畝立てを行った場合、特に梅雨時期に相当する下位の分枝数が増加し、全体として莢数

が確保され収量が増加した。大豆収量は、2002 年の坪刈り調査では、畝立て栽培大豆が７

～12％増加した（表３）。また 2003 年のコンバインによる全刈収量の調査でも、畝立て栽

培大豆が７～23％程度収量が増加した（表４）。2004 年は降雨が多かったため、苗立ち数

0

5

10

15

20

25

6/21 6/28 7/5 7/12 7/19 7/26 8/2

測定日（２００２）

土中

酸素

濃度

（％

）

0

20

40

60

80

降水

量（ｍ

ｍ）

耕うんのみ 75cm畝 150cm畝降水量

深さ：10､20cm平均

図 11 畝立ての土中酸素濃度

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

7/13 7/18 7/23 7/28 8/2 8/7 8/12 8/17

測定日(2003年 )

主茎

長(c

m)

耕うんのみ 150cm畝 75cm畝平均

図 12 畝立て大豆の主茎長

表２畝立て大豆の倒伏程度

暗渠有暗渠無１

培土培土無培土培土標準少～中無～少中中

75cm畝少～中少少～中－150cm畝少～中無～少多中倒伏程度：大豆調査基準(1975)　無：９°以下、少：10～19°　中：20～39°､多：40～59°､甚：60°以上

暗渠有：基盤整備済、暗渠無：未整備水田

水分　暗渠無２＞暗渠無１＞暗渠有

暗渠無２

0

10

20

30

40

50

60

7/2

7/9

7/16

7/23

7/30 8/

68/

138/

208/

27 9/3

9/10

9/17

9/24

10/1

10/8

測定日（２００４）

体積

含水

率（％

）

0

10

20

30

40

50

60

70

80

降水

量（ｍ

ｍ）

畝15cm南畝10cm 平ら降水量

図 10 畝高さと土壌水分(TDR-5cm)

2006.07.04

も畝立てが良好であり、収量の差が大きくなった（表５）。畝高さ 10cm でも収量への効果

は十分にに認められた（表６）。また、初期の乾物重や主茎長、収穫時の最下着莢高さな

どの形態的特徴でも畝立てが良好であった。品質面についても、畝立て栽培では大粒の割

合が増加し、しわ粒の割合も少なくなる傾向にあった（表７）。

表６畝高さと大豆収量（坪刈り調査）

最下着莢高(N/m2) (cm)

低 69.0 51.0 353 755 28.0 13.671.5 47.9 378 786 29.6 15.572.3 45.7 401 851 * 31.5 * 15.4

高 57.7 54.1 348 734 28.6 12.266.1 65.4 375 800 28.7 1860.6 67.3 * 389 864 28.7 14.5

75cm畝150cm畝

耕うんのみ

75cm畝150cm畝耕うんのみ

莢数百粒重(N/m2) (g)(cm) (g/m2)

地下水位耕うん方法主茎長分枝数子実重

粒径7.9以上 7.3-7.9

標準 10.2 19.675cm畝 5.0 13 .1標準 16.1 24.775cm畝 9.9 13 .0標準 28.4 33.875cm畝 12.6 25 .5しわ粒：しわ粒重／全重

Ａ

Ｂ

Ｃ

しわ粒割合（％）圃場名処理

図 13 全刈り調査方法

表５ 2004 年の大豆収量（全刈り調査）

実収量大粒割合(kg/10a) (％) 根粒由来根由来

標準 236 317 668 28.9 57.2 43.4 12.6 5.975cm畝 278 398 * 742 32.0 * 53.7 70.9 15.5 5.5標準 207 292 519 31.1 33.9 54.9 11.9 5.775cm畝 255 331 * 537 35.1 ** 56.5 * 75.3 16.1 9.7標準 254 301 560 34.0 44.8 69.4 9.6 3.975cm畝 271～301 375 * 606 35.7 68.3 ** 65.7～70.1 13.0 7.7

生育期間中の地下水位30cm以下の割合 2003年（品種：エンレイ）Ａ：60%（暗渠有り）、Ｂ：10%（暗渠無し）、Ｃ：20%（暗渠無し） *,**：各圃場毎の標準との比較で５％、１％で有意実収量はコンバイン刈り取り収量/刈り取り面積、子実重は坪刈り収量、大粒は7.9mm以上、

(kg/10a) (/10a) (g) (本/m2)圃場名

Ａ

Ｂ

Ｃ

収穫期の窒素吸収量分枝数処理

子実重莢数百粒重

子実重莢数百粒重主茎長(g/m2) (/m2) (g) (cm)

15cm畝 256.2 644.8 35.3 62.310cm畝 248.9 649.3 35.3 59.4

慣行 132.9 373.7 27.7 37.4品種：’エンレイ’、播種６月６日、収穫10月15日

収　量苗立ち率最下着莢節位

(kg/10a) (本/m） (cm)畝立て１ 170 8.3 12.9畝立て２ 224 8.8 11.3慣行１ 162 6.5 7.4慣行２ 130 4.8 7.6

表３ 2002 年の大豆収量（坪刈り調査）

表４ 2003 年の大豆収量（全刈り調査＋坪刈り調査）

収　量苗立ち率最下着莢節位

(kg/10a) (本/m） (cm)畝立て 104～135 9.1～9.8 10.5～11.3

(124～164)

慣行 54～71 2.8～3.7 4.2～6.7(63～83)

表７畝立てとしわ粒の割合

2006.07.04

11) 作業能率等（作業機の大型化）

２条用作業機の作業速度は、重粘土では 0.25～0.3m/s 程度であり、作業能率は１日約１

ha 程度であった。また、砕土性の良い圃場では、0.4m/s 程度の速度で作業可能であるため、

作業能率は１日約 1.5ha 程度であった。

作業能率の向上のために、耕うん同時畝立て施肥播種作業機を２条から３条にした場合

（図 14）、作業機本体の価格、作業能率ともに約 1.5 倍となった。またロータリ幅が 2.2

～2.4ｍ、重量 700kg 程度であり（表８）、所要動力は、重粘土圃場では 0.3m/s で 50kW 以

上となるため（図 15）、一定以上の能率で作業を行うためには、80PS 程度のトラクタが必

要と考えられた。粘土がやや少ない土壌条件では、60～70PS のトラクタで作業可能であっ

た。砕土率は、２条と３条の差は認められなかった（図 16）。大豆生産組織のトラクタ保

有状況や圃場面積、大豆作付面積、作業可能人数等から導入機種の検討が必要である。

12)耕うん回数

耕うん同時畝立て播種作業を行う前の圃場処

理方法として、事前にダウンカット等で耕うん

する場合がある。事前に耕うんを行うことによ

り、所要動力が減少するため（図 17）、作業能

率が向上できる可能性が認められた。しかし、

練り返しが発生するような水分の高い状態で、

２回耕うんを行うと、直接耕うんする場合より

砕土率が低下した（図 18）。そのため、土の水

分状態や天候をみながら作業を行うことが重要

である。

畝

750

畝

750

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0 0.1 0.2 0.3 0.4

走行速度(m/s)

所要

動力

(kW

)

３条畝立て２条畝立て

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 1 2 3 4 5 6

走行速度/耕うん軸回転数

全層

砕土

率（％

）-2cm

以下

３条平面３条畝立て２条畝立て

図 14 ３条用耕うん同時畝立て播種作業機

表８畝立て作業機の仕様

図 16 ３条用と２条用作業機の砕土率図 15 ３条用作業機の所要動力

0

5

10

15

20

25

30

0 0.1 0.2 0.3 0.4

走行速度(m/s)

所要

動力

(kW

)

アップ直接ダウン後アップ

図 17 事前耕うんの有無と所要動力

ロータリ部ロータリ＋播種

機（作業時）ロータリ部ロータリ＋播種

機（作業時）全高 (mm) 1120 1200 1080 1080全幅 (mm) 1700 1700 2600 2600全長 (mm) 1520 2300 1560 2430

機体重量 (kg) 346 417 724 826耕うん爪本数（本） 36 － 52 －爪回転半径 (mm) 240 － 240 －

２条用作業機３条用作業機

機体寸法

240cm

2006.07.04

：大豆出前

：作業機導入（大豆）

：説明（大豆）

：北陸を参考

H16年度：17ヶ所39haH17年度：44ヶ所141ha

＋（導入2台30ha）

大豆連作圃場では、前年の畝跡をなくして作業機の作

業性を良くするために、ドライブハローをかけたり、麦

跡では麦稈の埋没を良くするために、事前にダウンカッ

ト耕うんを行った方が良い場合が認められた。

３．他地域における適用

本技術は、中央農研出前技術指導（図 19）で実証

を行っており、平成 16 年度の実施地域は、19 ヶ所

約 42ha であった（表９、図 20）。また、本技術を

参考に独自に畝立てを実施した地域は３ヶ所約 40ha

であった。平成 17 年度は、３条用

の作業機を加え、農政局の地域輪作

システム、中越地震復興支援等を含

めた出前技術指導は、大豆で約 43

ヶ所 140ha 以上の圃場であった。本技

術を参考に畝立てを実施した地域、試作

機を購入して実施した地域を含めると、200ha 以上の面積で畝立てが実施された（図 21）。

平成 16 年度に耕うん同時畝立て播種を行った圃場の土性は、SL,CL,LiC,HC であっ

たが、土性に影響されず作業を行うことが可能であった。さらに降雨が多く、慣行で湿

害により苗立ち数が低下する状態でも、畝立ての場合は低下せず（図 22）、収量も増加し

た（図 23）。

平成 17 年度は、播種後乾燥が続いた条件であったが、慣行栽培が隣接する実証試

験地で、耕うん同時畝立て播種の収量を調査すると、ほとんどの圃場で収量増加の

効果が確認された（図 24）。これらの結果と生産組織の利用希望により、平成 18 年

度の大豆作から市販化された。市販化の機種は２条用(条間 75-80cm:図 25)と３条用

(条間 70-75cm:図 26)の２機種で、新潟県を中心に使用されている。平成 18 年度は、

市販機による作業と出前技術指導の面積を合わせると、200ha 以上の圃場で耕うん同

時畝立て播種作業が行われている。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 2 4 6

走行速度/耕うん軸回転数

全層

砕土

率（％

）

アップカット直接ダウン後アップ

中央農業総合研究センターで開発した新技術の普及を図る。

中央農研・研究室中央農研・研究室生産者・生産組織生産者・生産組織

直接現地へ

都道府県の試験場・地域振興局（普及センター）・地元JA

連携・協力

実施組織：大豆生産組織（１７）、試験研究機関（１）、学校（１）

実施地域：新潟下越（６）、新潟中越（２）、新潟上越（７）、石川（２）、宮城（１）、茨城（１）

土壌種類：全て沖積土：強粘質（７）、粘質（４）、砂質～壌質（５）、不明（３）

図 18 事前耕うんと所要動力

図 19 出前技術指導の目的

表９出前技術指導実施内容（H16）図 20 畝立て実施地域（H16）

図 21 畝立て実施地域（H17）

2006.07.04

0

100

200

300

400

500

0 100 200 300 400 500

慣行播種の収量(kg/10a)

畝立

て播

種の

収量

(kg/

10a)

ＳＬＣＬＬｉＣＨＣ

重粘土砂壌土

収量は調査用の坪刈り収量です

　　（実収量ではありません）

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

慣行播種の苗立ち数(本/㎡)

畝立

て同

時播

種の

苗立

ち数

(本/㎡

)

SL CL LiC HC

重粘土砂壌土

図 22 異なる土性の畝立てと慣行の苗立ち数（H16）図 23 異なる土性の畝立てと慣行の収量（H16:坪刈り）

0

100

200

300

400

500

0 100 200 300 400 500

慣行栽培収量(kg/10a)

耕う

ん同

時畝

立て

収量

（kg

/10a)

坪刈り収量

図 24 平成 17 年度実証圃場の収量（坪刈り）図 25 ２条用耕うん同時畝立て播種作業機(市販型)

図 26 ３条用耕うん同時畝立て播種作業機(市販型)

2006.07.04

４．耕うん同時播種の効果

耕うんと播種を同時に行うことにより、降雨リスクが軽減され、作業人数の削減、乾燥

時の発芽の安定を図ることが可能となる。

1)作業人数の削減

土壌の砕土性が低い地域における慣行の耕うん播種体系は、耕うんはダウンカットロー

タリ（複数台）で行い、さらにドライブハローをかけ、面積がまとまった状態で播種を行

う場合が多い（図 27 左）。この体系では、耕うん（２回耕うん）、ドライブハロー、播種

等の各種作業を行う必要がある。しかし、ダウンカットに比べて、同じ砕土率を確保する

のに作業速度が速いアップカットロータリ後方に、施肥播種機を取り付け、耕うんと同時

に播種作業を行う体系（図 27 右）を導入すると、慣行作業体系に対し、同時作業はオペレ

ータが１名、もしくは肥料や種子供給補助者＋１名で作業を行うことができる。

2)安定発芽

別工程作業では、天候が良い場合は、耕うんと播種の間に土壌が乾燥して発芽が遅れて

しまう場合がある。耕うんと播種を同時に行うことにより、土壌水分が高い状態で播種さ

れるため発芽が早まる。実際の圃場においても、耕うんと播種を別に行うと、大豆が発芽

できない水分まで低下し、苗立ち率でも明らかに差が認められた（図 28、苗立ち率：同時

作業 15.3、別工程作業 12.1 本/m2）。

大豆を発芽させるためには、種子を出芽限界水

分以上で４日間保つことが必要である。播種時に

乾燥が続く場合、耕うん後にまとめて播種をした

り、耕うん後に砕土のためのドライブハローをか

けると、播種時に水分が低下している場合が認め

られた。そのため、耕うんと同時に播種を行いさ

らに強い鎮圧を行うことにより、水分が保持され

発芽がスムーズになると考えられる。

3)降雨リスクの回避

耕うんと播種を別々に行う体系では、播種前に降雨があると、耕うん土壌が水を多く保

持し、その後の播種作業が困難になったり遅延することがある。そのため、耕うんと播種

を必ず同一日にして作業を行うか、耕うんと播種を同時行程作業機で行うと、そのリスク

を軽減することができる。

同時作業による降雨リスクについて、実際に生産組織に同時作業機を導入して検討した

結果、大幅に作業期間が短縮された。この組織では、同時作業による降雨リスクの削減と、

大豆連作圃場でのアップカットによる雑草処理が、能率向上の要因であると考えられた。

ダウンカットロータリ

80PSｸﾛｰﾗ＋2.4mﾛｰﾀﾘ（1ha/日）小型ﾄﾗｸﾀ＋ﾛｰﾀﾘ

ドライブハロー

80PSｸﾛｰﾗ＋3mﾊﾛｰ小型ﾄﾗｸﾀ＋ﾊﾛｰ

ドライブハロー＋３連施肥播種機

26PSトラクタ＋2.4mﾊﾛｰ＋３連播種　　（約0.5m/s)

慣行体系降雨降雨降雨降雨

降雨リスク発生

ダウンカットロータリ４連施肥播種機

アップカットロータリ

改良型アップカット同時施肥播種機

30～50PSｾﾐｸﾛｰﾗ＋1.6mﾛｰﾀﾘ＋施肥播種機　（1ha/日、0.3m/sの場合、0.25m/s:高含水比）

耕うん同時施肥播種体系

Ｋｏ．生産組織圃場　　播種翌日表層（５cm）

　　　播種翌日の含水比：35.0％　　　数日前に耕うん：19.5％　　播種時全層含水比：　　　　　　耕うん同時播種時：49.5％　　　　　数日前に耕うん：41.5％

耕うんして放置しておくと乾燥が促進　　　↓降雨がないと発芽しない

大豆の発芽条件　含水比約20％で約４日以上

Ｔ．Ｔakahashi（北陸研究センター高橋作成）

図 27 慣行大豆播種作業体系と同時播種体系

図 28 同時作業圃場の水分変化

大豆の小明渠作溝同時浅耕播種技術

中央農業総合研究センター水田輪作研究東海サブチーム渡辺輝夫

１．はじめに国内産大豆の高収量・高品質生産を実現する大豆新栽培システムを開発するために、20

02年6月に独立行政法人農業技術研究機構（略称：農研機構）は組織内に大豆300A研究センターを設置した。東海地域の大豆収量は長い間低迷しており、2001年度の東海３県の平均収量も全国平均の８割程度しかなく、こうした収量の低さには、東海地域の土壌及び気象条件が大きく関わっていると考えられた。そこで、東海の地域特性に見合った栽培技術の開発と実証を行うため、「東海大豆研究チーム」が設置され、三重県安濃町にある野菜茶業研究所内に駐在となった。東海の地域特性として特徴付けられるものに、赤黄色土やこれを母材とする土壌がある。

これらの土壌は過度の耕耘により細かく砕土しすぎると、降雨により土粒子が分散して土壌表面にクラスト（土膜）と呼ばれる固い層が形成され、出芽と生育に悪影響が生じるといわれている。また、当地域では稲・麦・大豆の２年３作が一般的であるが、麦・大豆の本作化に伴い大豆栽培が透・排水性の不良な水田にまで拡大される傾向にある。このため、表面排水が畑作物の出芽苗立ちの確保に重要であるが、作土層が薄く暗渠の施工が困難な地域では、クラスト形成や湿害により大豆が出芽不良となる事例が多い。また、一般的に行われている額縁明渠や5～10m間隔の圃場内明渠だけでは多雨条件の表面排水が不十分な場合がある。そこで、東海大豆研究チームでは、クラスト形成や排水不良による大豆の湿害を軽減す

るため、小明渠作溝による広畦成形と浅耕播種を行う作業技術を開発することとした。

２．中型トラクタを基幹とした小明渠作溝同時浅耕播種機の概要東海地域の十数ha以上の大豆を作

付けする生産農家では、概ね40PS以上の中型トラクタを使用し、ロータリもしくはハローに装着した播種機で大豆を播種している。そこで、中型トラクタを基幹トラ

クタとして小明渠作溝と浅耕播種を一工程で行う小明渠作溝同時浅耕播種機を開発した（図１）。この作業機の構造と特徴を以下に列記する。１）小明渠作溝同時浅耕播種機は小明渠作溝と浅耕播種を同時に行う作業機である。構造は小明渠作溝部、浅耕ロータリ部、施肥播種部から構成される。２）小明渠作溝部は、耕うん幅1.8mのロータリの両サイドに取り付けた図１小明渠作溝同時浅耕播種機の概要

小明渠作溝用

サイドディスク

1.8m 幅ロータリ

施肥播種ユニット

フレーム

ロータリ側板畦成形板

サイドディスク補強材

サイドディスクロータリ側板

畦成型板

サイドディスク補強材

��

��

��

��

種子位置未耕部分小明渠

��

��

��

12cm

��

浅耕の耕深約 5cm

ロータリ耕うん幅 1.8m

小明渠間隔 2m耕うん前の圃場表面浅耕部分

��

仕様、変更点、特徴適応馬力 30～50PSロータリ松山SX1808H、耕うん幅1.8m

特徴トラクタの耕深制御機能で浅耕の耕深調節可能

サイドディスク既製品:松山NSD 400-LXR08、作溝機能フレーム既製品:サイドディスク補強材固定用

サイドディスク補強材試作、サイドディスクのねじれ防止ロータリ側板試作、ロータリ側方からの土塊飛散防止畦成形板試作、畦側面成形用

施肥播種部施肥播種ユニットアグリテクノ矢崎TFR4（4条用）全長X全幅、作業幅 2290×2150m m 、2.0m作業速度､作業能率 0.6～0.8m /s、約20分/10a

項目トラクタ

小明渠作溝同時浅耕播種機

浅耕ロータリ部

小明渠作溝部

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��

��

��

��

��

��

��

��

��

��

��

作溝を行うサイドディスク、サイドディスクのねじれを防止する補強材、ロータリ側方からの土塊飛散を防ぐロータリ側板、畦側面を成形する畦成形板から構成される。サイドディスクで作溝する小明渠の深さは約12cmとなる。小明渠を作溝するサイドディスクの中心間隔から、小明渠作溝同時浅耕播種の作業幅は２mとなる。３）浅耕ロータリ部では深さ５cm程度の浅耕を行う。耕深の制御は通常はロータリに付属するゲージ輪で行うが、本機ではトラクタとロータリの耕深制御機能により浅耕時の耕深を簡易に制御できる。４）施肥播種部は傾斜目皿式の施肥播種ユニットで構成され、大豆の点播と施肥を行う。なお、広畦の表面はフラットで播種条間を任意に設定できるため、播種ユニットを交換することで水稲跡小麦播種にも適応できる。５）生産農家がロータリと施肥播種ユニットを所有していれば、浅耕作溝機への改造に必要な資材費は約10万円であり、一般的な工作機器が有れば自作可能である。

３．小明渠作溝・浅耕播種方式の特徴１）浅耕によるクラスト形成の抑制稲・麦・大豆の２年３作地域であり大豆は麦跡の麦稈や刈り株が残っている圃場に作付

けされる。この麦跡圃場で深起こしをせずに播種時に深さ５cm程度の浅耕同時播種を行うことによって、圃場表面の土壌にのみ前作物残さである麦稈や刈り株を適度に混和することにより、表面土壌は降雨後も目詰まりを起こすことなくクラスト形成を抑制する（図２）。普通耕ではクラスト形成（クラスト硬度：370～570kPa）による出芽不良が見られたのに対して、浅耕ではクラスト硬度は60～100kPaと低い値を示し（図３）、良好な出芽が見られた。

普通耕（耕深12cm ) 浅耕（耕深5cm )

図２耕うん法によるクラスト形成の差異図３耕うん法とクラスト硬度

２）小明渠作溝・広畦成形構造による排水性の向上大豆の播種作業は梅雨時期に重なることが多く、播種後の降雨により湿害で出芽苗立ち

不良になりやすいことから、一般的な圃場内明渠間隔に比べて狭い間隔で小規模の明渠を作溝することにより播種床を広畦成形し、排水性の向上を図っている。広畦部分の未耕部頂部と小明渠底部まで約７cmの高低差があるため、浅耕部分に降った雨水は小明渠に速やかに流出し、連結された額縁明渠等を通じて圃場外に排出されることから、種子位

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��

��

��

��

07/28 08/04 08/11 08/18 08/251

10

100

1000

クラスト硬度(kPa)020406080100

降水

普通耕浅耕�� 降水量

※クラスト硬度計（D IK-5561、円錐コーン・9.8Nバネ）で測定　　　　※岐阜県揖斐川町灰色低地土圃場ﾌｸﾕﾀｶ､播種日2003年7月28日※普通耕は明渠間隔2.6m、浅耕は明渠間隔1.3m

図４小明渠・広畦・浅耕播種の模式図

��

��

��

��

種子位置未耕部分小明渠

��

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��

12cm

��

浅耕の耕深約 5cm小明渠間隔 2m

耕うん前の圃場表面

浅耕部分��

広畦部分

7cm

置である浅耕部分が過湿状態になりにくい構造である（図４）。耕うん法と明渠間隔を変えた試験から、同

じ間隔の小明渠を設置しても浅耕区では普通耕区に比べ降雨後に表層の土壌含水比が速やかに低下すること、小明渠間隔が狭いほどこの傾向が強いことが明らかになった（図５）。

３）多雨条件における生育・収量浅耕播種と狭い間隔の小明

渠を組み合わせることで、クラスト形成が抑制されるとともに降雨後の表面排水が迅速に行われるため、多雨条件時には湿害による大豆の出芽不良が改善され、大豆の収量も安定する（図６）。図６耕うん法と欠株率および大豆収量

４）地耐力維持効果耕うんは播種時にのみ浅耕を行い、耕うんしな

い未耕部分は収穫時まで存続して高い地耐力を維持するので、生育中の管理作業時の管理機や収穫時のコンバインの走行部が過度に沈み込むことがなく、精度の高い作業が可能であり轍が深く残ることも少ない。コンバイン収穫前の湿潤土壌条件における地耐

力は、普通耕に比べ浅耕では高い値を示す（図７）。

５）雑草発生抑制効果小明渠作溝同時浅

耕播種と狭畦の組み合わせでは土壌表層が乾燥しやすく、雑草発生本数は減少する（図８）。大豆の狭畦化による畦間の早期被覆と相まって高い抑草効果を示し、土壌処理との組み合わせで体系処理（土

��

��

��

��

A圃場 B圃場 A圃場 B圃場0

5

10

15

欠株率（％） 0

100

200

300

子実

普通耕欠株率�� 浅耕欠株率

�� 普通耕収量浅耕収量

※A、B圃場とも灰色低地土圃場フクユタカ（2003年)※普通耕は明渠間隔9.5m 、浅耕は明渠間隔1.5m

図５深さ0～5cmの土壌含水比の推移

��

��

��

��

��

��

��

07/18 07/25 08/01 08/080

10

20

30

40

50

含水比（％d.b.） 0

20

40

60

80

100

降水

浅耕＋1.5m間隔明渠普通耕＋1.5m間隔明渠

浅耕＋6m間隔明渠普通耕＋6m間隔明渠

�� 降水量

※土壌含水比は広畦の中央部､深さ0～5cm地点で測定した体積含　　水率から換算した値（土壌水分センサー:Decagon社EC HO -10)※三重県安濃町灰色低地土圃場ﾌｸﾕﾀｶ、播種日2004年7月23日

図７耕うん法と地耐力

��

��0

0.10.20.30.40.50.60.7

浅耕普通耕

地耐

※地耐力は深さ0～15cm の平均硬度※浅耕の深さ0～10cm の土壌含水比は32％※普通耕の深さ0～10cm の土壌含水比は40％※灰色低地土圃場にて2004年11月24日測定

図９雑草防除体系と収穫期における残存雑草量

0

10

20

30

40

50

土壌処理生育期処理土壌＋生育期処理

処理

普通耕 70cm

浅耕 70cm

浅耕 45cm

浅耕 30cm

図８耕うん法と雑草発生本数（播種22日後）

0

200

400

600

800

1000

1200

70cm 普通耕 70cm浅耕 45cm 浅耕 30cm浅耕

処理

広葉計

イネ科計

カヤツリグサ

壌処理＋生育期茎葉処理）と同等の防除効果が得られる（図９）。

６）土壌有機物分解抑制効果浅耕では普通耕に比べて土壌有機物の分解が遅く、地力維持が期待される。大豆ー小麦

体系を２カ年繰り返した条件での土壌有機物含有率（炭素含量、重量比）は0-15cmにわたって小明渠浅耕が普通耕を上回った（データ略）。

７）収穫ロス低減効果（無中耕無培土栽培時）大豆の無中耕無培土栽培では、慣行の中

耕・培土栽培に比べて最下着莢位置が高くなり、コンバイン収穫における収穫ロス（頭部損失）が低下する（図10）。また、浅耕による地耐力維持効果により、土壌水分が高くてもコンバイン作業が可能となる。ただし、狭畦・無中耕・無培土栽培には耐倒伏性に優れた品種を選ぶ必要がある。

８）麦稈適応性前作残さである麦稈量が多い場合は、深さ5cm程度の浅耕では土壌と麦稈の混和が不十

分になり出芽率が低くなることがある。麦稈量が多い場合は、浅耕の耕深を7～8cm程度に深めに設定して土壌と麦稈が十分に混和するように調整することにより、良好な出芽が得られる。

９）耕うんピッチ・切削速度と出芽率浅耕播種時の耕深以外の作業条件は、トラクタの走行変速、ＰＴＯ変速（ロータリ回転

数）、およびエンジン回転数の３種類の組み合わせで決定される。耕うんピッチと切削速度を変えた試験から、土壌水分が30～33％d.b.と比較的高い場合の耕うんピッチは10～16cm、切削速度は5～9m/s程度が適当だと考えられた（図11、図12）。

図11 耕うんピッチと出芽率図12 切削速度と出芽率

図10 栽培様式と収穫ロス

��

��

��

��

��

��

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

慣行平畦

�� 刈残し�� 裂莢�� 落莢

頭部

図１　頭部損失に及ぼす栽培方法の影響

慣行浅耕無中耕無培土

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30耕うんピッチ（cm ）

出芽率(33％)出芽率(31％)出芽率(30％)

0

20

40

60

80

100

0 5 10切削速度（m /s）

出芽率(33％)出芽率(31％)出芽率(30％)

10）作業速度・耕深と出芽率圃場表面が乾燥している場合では作業速度が

0.6～0.8m/sの場合は浅耕時の耕深は5cm程度、作業速度を1m/sの高速にする場合は耕深を7cm程度にすれば普通耕と同等の出芽率が得られることがわかった（図13）。大豆播種時に圃場表面が乾燥していると、浅

耕播種では出芽に必要な水分を大豆種子に供給できずに出芽不良を引き起こすことが懸念されていたが、乾燥時には7cm程度の耕深で出芽の安定が図られる。

11）出芽率と収量大豆の出芽率と子実収量には高い相関関係があり、出

芽の安定が収量の安定に大きく寄与している（図14）。

12）作業能率浅耕播種体系では麦収穫後に通常行われてきた前作物残さをすき込むための深起しを省

略することで、播種前の時期に降雨があっても圃場表面は乾きやすくトラクタが沈み込むことが少ない。播種作業は浅耕同時播種方式なので、通常の耕うん同時播種に比べて所要動力は少なく、作業能率の高い播種作業が可能となる。小明渠作溝同時浅耕播種の作業速度は通常は0.6m/s、圃場条件が良好な場合は0.8m/sが可能である。中型トラクタ体系における作業幅２m（ロータリ耕うん幅1.8m）の作業能率は約0.33h/10a（約20分/10a）であり、高能率な播種作業が可能である。

４．大豆・麦作の作業体系麦跡に大豆を浅耕播種する場合に必要な作業は次の通りである。まず、前作の小麦をコンバイン収穫する時に、コンバインのわら細断装置を使用して、

排出する麦稈をなるべく短く細断しておく必要がある。次に、麦収穫跡の雑草が目立つ場合は浅耕播種の２～３週間前に茎葉処理除草剤散布する。また、麦稈が圃場表面に偏って散布されていたり刈り株が高くて浅耕播種の障害になる場合は、必要に応じてフレールモアで前作物残さを細断しておく。基本的には麦収穫から浅耕播種までは耕うん作業を行わない。浅耕同時大豆播種後は速やかに土壌処理除草剤を散布して、雑草の発生を抑制することが重要である。なお、大豆作では省力的な無中耕無培土栽培を目指しており、中耕培土作業は現在のところ実施していない。ところで、湿害による大豆の出芽安定化を図るため小明渠浅耕播種技術の開発を開始し

たが、小麦も大豆に劣らず湿害に弱く、小麦播種は大豆収穫時期と重なって適期作業が難

図13 浅耕播種時の耕深と出芽率

0

20

40

60

80

100

3 5 7 12耕深（cm）

出芽

浅耕0.64m /s 浅耕0.79m /s浅耕1.06m /s 普通耕0.64m /s

※出芽率は浅耕区の深さ0～5cmの土壌含水比が29～31％時の平均値※凡例中の数字は浅耕区の作業速度設定値※三重県安濃町灰色低地土圃場のフクユタカ、播種日2005.7.28～8.3

図14 大豆出芽率と収量

050100150200250300350

0 20 40 60 80 100

出芽率（％）

浅耕播種7/7 普通耕播種7/7浅耕播種7/16 普通耕播種7/16浅耕播種7/21 普通耕播種7/21

※子実収量は坪刈り調査時の収量※凡例中の数字は播種日※三重県安濃町灰色低地土圃場Ｃ１の九州136号

しい場面がある。そこで、大豆用に開発した浅耕播種技術を水稲跡の小麦にも適応可能かどうか、栽培試

験を実施して検討を進めている。水稲跡に小麦を浅耕播種する場合に必要な作業は、麦跡大豆播種の場合と基本的に同じであるが、水稲跡は雑草が少ないため茎葉処理除草剤散布は省略できる。図15に東海地域における想定される浅耕播種作業体系を示す。

図15 東海地域水田の２年３作と想定される浅耕播種作業体系

５．普及と今後の課題ロータリの両側面に市販のサイドディスクを装着し、試作した側板・補強材・畦成型板

を取り付けた小明渠作溝同時浅耕播種機は、2005年の大豆作では三重県内の生産農家に４台導入され約60haの大豆播種に使用された。2005年の小麦作では三重県内の生産農家で６台使用され約80haの小麦播種に利用されている。比較的安価な資材費で手持ちのロータリシーダを小明渠浅耕播種機へ改造できる点が、生産農家で導入されている理由だと考えられる。この小明渠浅耕播種機の問題点として使用農家から話題になるのはサイドディスクの強

度である。小明渠を設定より深く作溝したり、作業速度を上げて作溝同時播種作業を行おうとすると、サイドディスクに過負荷がかかり破損する場合があり、作溝深さは12cm程度、圃場が硬い場合は作業速度は0.6m/s以下での使用を推奨している。この小明渠作溝同時浅耕播種技術の研究は緒についたばかりであるが、研究と並行して

普及活動も実施しており、今後も三重県農業研究部や三重県農業改良普及センターなどの関係機関と協力しながら、さらなる研究の推進と機械的改良を図って行く予定である。

水稲収穫

フレールモア処理

浅耕同時麦播種

土壌処理除草剤散布

小麦収穫

茎葉処理除草剤散布

浅耕同時大豆播種

土壌処理除草剤散布

病害虫防除

大豆収穫

フレールモア処理

水稲小麦

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

小麦大豆

休閑

病害虫防除

小麦収穫

追肥

踏圧

病害虫防除

小麦収穫

追肥

踏圧

大豆の高品質収穫・乾燥調製技術

中央農業研究センターバイオマス資源循環研究チーム梅田直円

（関東東海水田輪作研究チーム）

１．はじめに

2004 年における大豆の収穫面積はコンバインが 68%を占めており，1985 年に 70%を占めた手

刈り・刈払い機は 22%と減少してしまった。手刈り・刈払い機による作業体系では，刈り取り後，

島立て，ニオ積み，脱穀と重労働であった。コンバイン作業体系では，コンバインで脱穀した大

豆を共同乾燥施設や個人の乾燥機で乾燥するため，作業負荷が軽減し作業時間も短縮された。し

かし，コンバインによる汚粒や乾燥機による裂皮等が新たに問題となっている。

今回の研修では，コンバインを基軸とした収穫・乾燥・調製作業を中心に解説する。

２．収穫作業

大豆のコンバイン収穫作業における主な問題は，収穫損失と汚粒である。収穫損失は，頭部損

失と脱穀・選別損失に分類される。そこで，問題が発生する部位別に，頭部損失と脱穀・選別損

失，汚粒に分けて解説する。

1)頭部損失

頭部損失に関わる収穫条件としては，栽培様式（畦高，条間，裁植密度），大豆草型（主茎長，

最下着莢高，倒伏），大豆水分（茎，莢，子実），気象（時期，時刻，天候）などがあり，各種

条件と頭部損失との関係が多くの研究者によって論じられている。また，コンバイン作業条件で

は，作業速度，リール速度，刈刃速度，オーガ回転速度等について頭部損失との関係について報

告されており，市販コンバインはその結果に基づき適切な設定がされている。

今回は，頭部損失と特に関係が深く，栽培方法や収穫作業においてオペレータの注意によって

作業精度を向上させることができる，大豆主茎長，水分，作業速度と頭部損失の関係について示

す。

ア．主茎長

品種および栽培様式が異なるが主茎長を基準に頭

部損失およびその内訳を比較した（図１）。頭部損

失は主茎長が 65cm付近で最も低くなる傾向がある。

大豆は主茎長が低くなると最下着莢高も低くなり，

刈残し損失が増加した。特に，40cm 以下では 30%

を超える損失も確認された。また，培土によって主

茎長，最下着莢高が低くなり，コンバインが畦上を

走行するために操作が不安定となり刈高さが高くな

りばらつきも大きくなった結果，刈残し損失の増加

も観察された。

イ．茎水分

茎水分と頭部損失の関係を図２に示す。茎水分が高くなるほど頭部損失が低くなる傾向があり，

茎水分 30 ％以上で目標とする頭部損失 3%以下となることが推察された。しかし，汚粒を表す指

標の一つである汚れ指数は，茎水分 30 ％以上では等級検査１等の目安となる 0.4 を越え，とく

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

30 40 50 60 70 80主茎長　(cm )

収穫

図１　主茎長が収穫損失におよぼす影響

に茎水分が 60％を越えると 1.0以上の高い値を示した。

以上の結果より，頭部損失を抑えるには，茎水分 30～ 50%の範囲で収穫するのが適切である。

なお，このときでも汚粒の発生に注意して作業する必要がある。

ウ．作業速度

作業速度と頭部損失の関係を図３に示す。作業速度が速くなるほど頭部損失は高い傾向を示し

た。秋田県の調査でも 0.30m/s を超えると作業速度の上昇に伴って収穫損失は高くなる傾向があ

った。また，生研機構総合鑑定成績，任意鑑定成績の結果では，大豆用コンバインでは作業速度

が速くなるにつれて頭部損失が高くなる傾向が見られた。

以上の結果より，作業速度を抑えることによって頭部損失を低減できるものと考えられる。

2)汚粒および脱穀・選別損失

ア．汚粒の発生要因

汚粒の発生要因は，土の咬み込み，雑草，収穫時期・時刻，生育むらなどがが大きな原因であ

ることが報告されている。土の咬み込みを防止するにはオペレーターの技能によるところが大き

く，土を咬んだ場合にはすぐに土を掃き出し清掃する必要がある。また，雑草は，裁植密度を上

げる，適切な除草剤を使用するなどで極力抑えることが必要であるが，収穫作業以前に手作業等

で除去する必要がある。これらの原因を除くと汚粒の発生は大豆水分の問題となる。一方，汚粒

の発生は作業速度，刈高さ等のコンバイン使用条件と関係が深いことが知られている。営農場面

では，作業速度は可能な限り高速で使用するのが一般的である。また，刈高さは最下着莢高や培

土の有無等の圃場条件によることが多い。

そこで、コンバイン使用条件で作業中に制御可能な排塵弁角度と汚粒および脱穀・選別損失の

関係について解説する。

イ．排塵弁角度と汚粒および脱穀・選別損失の関係

排塵弁角度と汚れ指数，脱穀・選別損失との関係を図４，図５に示す。作業速度は各条件にお

ける最高速度である。また，排塵弁角度 0，19，35deg はそれぞれ供試コンバイン開度 3，7，11

に相当する。

茎水分は 66%区と 64%区で同程度であるが，66%区の方が単位面積内の茎および莢重量が重く，

茎莢含有水分，茎莢含有水分流量が高くなり汚れ指数が 0.47～ 0.61ポイント高くなった。また，

汚れ指数は，排塵弁を開くに従って低下し，64%区では 0.4 ポイント低下が見られ最も効果的で

あった。20%区でも排塵弁を開くことによって汚れ指数が低下し，等級検査１等の基準となる 0.4

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

0 20 40 60 800

1

2

3

4

5

6

7汚れ指数頭部損失

茎水分　(％)

汚れ

図２　茎水分と汚れ指数、頭部損失との関係

頭

0

2

4

6

8

10

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

作業速度　(m /s)

頭部

図３　作業速度と頭部損失との関係

を下回った。

脱穀・選別損失は排塵弁を開くに従って高くなる傾向があった。とくに，茎水分が高い区では

急激に高くなる傾向を示した。以上より，排塵弁の調整によって汚粒程度を低下させることは

できるが，脱穀・選別損失に注意しながら作業する必要がある。

3)まとめ

ア．頭部損失は，主茎長が 65cm 付近で最も低くなる。主茎長が低くなると，刈残しが増える，

リールタインによるかき込みが不完全，プラットフォーム上の茎がオーガに巻き込まれにくくな

る等の要因で頭部損失が増加する。

イ．頭部損失の発生を抑えるためには茎水分 30 ～ 50%の範囲で収穫するのがよいが汚粒の発生

に注意して作業する必要がある。

ウ．作業速度をなるべく低く抑えることによって頭部損失を低減できることが示唆された。

エ．裁植密度が高い場合，単位面積内の茎および莢重量が重くなり茎莢含有水分が高くなるため

汚粒に注意して作業する必要がある。

オ．排塵弁を開くことによって汚粒程度を低下させることはできるが，脱穀・選別損失の増加に

注意しながら作業する必要がある。

３．乾燥作業

コンバインで収穫された大豆は 15 ～ 20 ％程度あり，長期保存し品質を保つためには乾燥が必

要である。しかし，急激な乾燥は外観品質とともに加工適性の低下を招くので注意が必要である。

1)被害粒の発生要因

乾燥工程において発生する被害粒は，裂皮粒としわ粒である。被害粒の発生する過程は以下の

通りである。水分の高い大豆の乾燥を開始すると表面付近の水分が低く中心部分の水分が高い状

態になる。大豆表面の水分が低くなると表皮に引張応力が発生し，乾燥開始後 30 分から１時間

で応力は最大となり引張破壊限界を超えたとき裂皮を生じる。乾燥終了後，大豆中心部から表面

に水分が移動し，引っ張られていた表皮が再び伸びるとしわが発生する。

2)乾燥機の種類

ア．静置式乾燥機

静置式乾燥機は堆積した穀物を動かさずにすのこ下から送風して乾燥する。静置式乾燥機は平

��

��

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0 10 20 30 40

�� 66

64.0 20.0

排塵弁角度 (deg)

汚れ

図４　排塵弁角度と汚れ指数との関係

��

��

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

0 10 20 30 40

�� 66

64 20

排塵弁角度 (deg)

脱穀

図５　排塵弁角度と脱穀・選別損失との関係

型と立型があり，大豆の乾燥には平型乾燥機が個人農家で利用されている。構造が簡易であるこ

とから安価で乾燥コストが低い。ただし，穀物を静置することから乾燥むらが生じやすく，適宜

穀物をローテーションする必要がある。

イ．移動式乾燥機

移動式乾燥機は穀物を動かしながら乾燥を行うため乾燥ムラが起こりにくい利点があり，米麦

用に広く普及している。大豆では破砕や裂皮が発生するため敬遠されていたが，近年では乾燥部

やコンベア，昇降機等が改造された汎用型が開発されている。

3)留意点

大豆の乾燥では，乾燥初期に表面と内部の水分勾配によって表皮に応力が作用し被害粒が発生

するので，乾燥初期の温度を低く抑えたり送風湿度を比較的高く維持するなどの工夫が必要であ

る。

４．調製作業

調製の目的は夾雑物や被害粒を除去し，均一な品質に整えることによって市場価値を上げるこ

とにある。大豆の調製工程で使用される機械は，夾雑物，被害粒等を取り除き粒径をそろえる選

別機，汚粒を軽減する大豆クリーナ等がある。

選別作業は作付け面積の 89 ％で実施されており，64 ％が共同調製施設で実施されており，共

同調製施設では原料投入から製品に至るまでに風力，比重，形状，粒径，色彩選別機によって選

別ラインが構築されている。

1)選別機

風力選別機は吹き上げ式，吸引式や密閉式があり選別物の終端速度の違いを利用しており，虫

害粒，莢，ホコリ等の製品となる子実よりも軽いものを除去する。比重選別機は鉛直方向の風力

を利用し，小石等の子実よりも重いものを除去する。形状選別機は大豆の形状が球形であること

を利用しており，扁平粒，欠け粒，半割れ粒等の形状が悪い大豆を除去する。粒径選別機はパン

チングメタルの円形の穴の径の違いを利用し通過するものとしないもので粒径を整える。色彩選

別機は光学センサを利用しており，汚粒，紫斑粒，華美粒などの着色粒を除去する。

2)大豆クリーナ

大豆クリーナには乾式と湿式がある。乾式クリーナはドラム内部に貼り付けた研布とドラム内

部で回転する羽によって研磨する。汚れ程度によってクリーニング時間を設定するが過度に長く

なると皮切れや破砕が発生するので注意が必要である。湿式は，水分を含んだベルトで大豆の汚

れを拭きとり，乾燥部で水分を除去する。大豆条件によってはクリーニングを過度に施すと，皮

切れ粒やしわ粒が発生するので注意必要である。

参考文献

1)梅田直円(2003):普通コンバインによる大豆収穫作業技術の改善，今月の農業，48(3)

2)原令幸ら(2001)：大豆のコンバイン収穫と汚粒防止対策，北海道立農業試験場集報(80);45-50

3)神谷清之進ら(1980)：普通型コンバインによる大豆の収穫法，秋田県農業試験場研究報告 24

号;1-28

3)（社）全国農業改良普及協会(2000):大豆乾燥調製マニュアル

4)（社）全国農業改良普及協会(1999):大豆の機械化栽培とコンバイン収穫事例集

5) 農林水産省(2004):大豆に関する資料

雑草防除技術

雑草バイオタイプ・総合防除研究チーム浅井元朗

１．大豆畑に発生する雑草の種類

大豆畑に発生する雑草種は防除上の観点から，種子で繁殖する一年生雑草と栄養繁殖

をおこなう多年生雑草に類別される．大豆作で通常防除対象となるのは一年生雑草であ

り，これをさらにイネ科，非イネ科（カヤツリグサ科，広葉）に類別する．生育する草

種は地域，作期，栽培体系により異なる．地域ごとの代表的な草種を表１に示す．冷涼

な地域では温帯域で世界的に共通する草種が多く，温暖な地域ほど熱帯原産の草種の割

合が増加する．

地域による雑草種の組成の違いに大きく関与しているのは各草種の発芽，出芽適温と

作期との関係である（図１）．通常の耕起栽培では耕起後一定期間，雑草の出芽が続く．

出芽のピーク時期は草種により異なる．このため早播では発芽適温の低い広葉雑草の出

芽が多くなり，晩播では発芽適温の高いイネ科雑草の割合が多くなる．北海道では５月

中旬が播種期で，シロザ，タデ類，ツユクサ，スカシタゴボウ，タニソバなどの広葉雑

草の出芽が多い．イネ科雑草の出芽時期は遅れる．東北地方で５月中旬に播種した場合，

北海道と同様に広葉雑草は出芽盛期で，メヒシバ，イヌビエなどイネ科雑草の出芽開始

期にあたる．したがって，大豆播種直後に一斉に出芽する広葉雑草と，遅れて出芽を始

めるイネ科雑草をともに防除する必要がある．

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種組成は耕起法によっても異なる．不耕起栽培では，出芽可能深度が深く発芽に光を

要しないイネ科雑草が多くなり，耕起栽培では種子サイズの小さい広葉雑草の割合が高

くなる．関東以西では大豆播種期の温度条件が 15~20℃となるので，発芽適温の高いイ

ネ科雑草やヒユ類，スベリヒユなどの出芽期となり，シロザなどは逆に発生量が少なく

なる．

水田転換畑と普通畑でも発生する草種は異なる．水稲作を長年続けたほ場では土壌中

の雑草種子相のほとんどがヒエ類，コゴメガヤツリ，タカサブロウ類，チョウジタデな

どの湛水~湿潤条件で発芽する水田雑草で占められる．これらの草種は畑条件では発芽

できないものが多い．そのため大豆作への転換初年目は発生草種，発生量ともに少ない．

十分に排水されたほ場では転換後の年数を経るとともに，畑地に近い草種組成となる．

しかし，転作ほ場は排水が不十分な湿潤条件となることが少なくない．そのためそうし

たほ場では，次第にタデ類，アメリカセンダングサなど湿潤条件でも発芽，生育が可能

な草種が増加してくる．

このほか，ノゲシ類やヒメムカシヨモギなど風散布型のキク科雑草はほ場周辺の親個

体から種子がほ場内に侵入する．定着した実生は大豆登熟期に旺盛に生育する．特にノ

ゲシ類は茎葉の切り口から白い乳汁が出るため汚粒の原因になる．

２．雑草の競合と必要除草期間

大豆と雑草とが近接して生育すると，光，養分の奪い合いを生じて，雑草が存在しな

い場合と比較して大豆の生育，収量が減少する．生育初期は大豆，雑草の両者により空

間が占有されていないため競合は生じず，この時期の雑草は大豆の生育にはまだ影響し

ない．また，生育後期に出芽した雑草は大豆に庇陰されるために生育が劣り，徒長ない

しは枯死し大豆の生育に影響を及ぼさない．その中間の大豆と雑草が競合する時期が除

草の必要な期間となる（図２）．

大豆は畦間の遮光力が大きく比較的雑草との競合に強い作物ではある．除草必要期間

は大豆の草冠が地表面を覆うまでの期間とほぼ一致する．気温が高く，大豆の初期生育

が早いほどその期間は短く，冷涼な地域では長期間を要する．慣行の広畦栽培の場合，

北海道・東北地方では播種後 40~50 日，関東地方では 25~35 日，九州の秋大豆では 15

~20 日間が目安とされている．狭畦栽培では草冠の遮蔽までの期間が短縮されるため，

それに応じて除草必要期間も短くなる．

しかしながら，これは大豆が斉一に出芽し，地表面が完全に草冠で遮光されることを

前提とした日数である．現実には湿害，乾燥などの出芽不良環境や不均一な土壌条件，

播種作業の精度によって多少とも出芽ムラ・欠株が生じる．欠株の生じた場所は大豆に

よる雑草の被圧効果が得られないため，全生育期間を通しての雑草防除が必要となる．

この点からも高い播種精度と斉一な出芽の確保が雑草防除においても重要である．また，

除草必要期間という考え方はあくまでも当年の大豆生育収量への影響，という観点によ

るものである．大豆の収量に影響が及ばない雑草密度であっても，多くの場合それらが

生産した種子によって翌年以降の雑草密度が増加する．

生産された雑草種子のすべてが翌年，出芽するわけではない．土壌中の雑草種子は発

芽や死滅によって次第に減少する．雑草種子の減耗率は，草種や栽培体系によって異な

る．しかし，その具体的なデータはまだ限られた草種でしか得られていないこともあり，

これらを現場での防除手段の意志決定へと応用可能なレベルにはまだ研究が蓄積されて

いない．

３．基本的な除草体系

大豆作の除草体系は，播種後の土壌処理除草剤と，中耕・培土等の機械除草が一般的

である．初期生育期間が長いため除草必要期間の長い北海道・東北地方では，出芽時期

の遅いイネ科雑草を防除するために，さらにイネ科雑草用の選択性茎葉処理剤の散布が

必要となる．防除しきれなかった雑草が大豆の生育に与える影響は小さいが，収穫作業

の支障になるとともに，それによる種子生産が翌年以降の発生源となる．そのため，大

豆登熟期の手取除草（種草取り）が欠かせない場合が多い．中耕除草は雑草の出芽盛期

に行うと最も多くの雑草幼植物を埋没枯死させることができる．出芽盛期は播種後の降

雨パターンの影響を受けるため，年次間で時期が変動する．生育の進んだ雑草は中耕し

ても死滅しにくく，草種によってはその後の降雨により再生する．中耕除草による土壌

の攪乱が誘因となってその後の発芽・出芽が促進される草種もある．

暖地では大豆の初期生育が早いため除草必要期間が短く，耕起，播種，除草剤処理の

一連の作業が好適な時期に行われれば，播種後土壌処理のみで十分な防除が可能な場合

も多い．そのため雑草の発生量が少ないほ場では，除草剤を処理せず中耕のみで防除が

可能な場合もありうる．しかし，これらの作業やその後の中耕培土は降雨の多い時期に

あたり，大規模転作団地において全てを適期に作業し終えることは少ない．

大豆作において除草剤が使われる時期は，１）播種前あるいは耕起前の非選択性茎葉

処理剤，２）大豆播種後出芽前の土壌処理剤，３）大豆生育期の茎葉処理剤に大別され

る．なお，本稿では除草剤名は全て有効成分名で記述する．

（１）非選択性除草剤の大豆出芽前処理 ‒播種前の生育雑草の枯殺-

不耕起栽培での播種前や，耕起栽培における耕起前にはある程度の雑草が生育してい

る．それらが播種後に再生しないよう枯殺するためには，非選択性で土壌処理効果のな

いグリホサート系，グルホシネート，ビアラホスなどを用いる．麦跡不耕起大豆体系で

は麦類の登熟期以降に出芽したタデ類や，ほ場周辺域から種子が侵入した風散布型のキ

ク科雑草などの防除にも非選択性の茎葉処理剤を散布する必要が生じる．大豆播種後出

芽前の土壌処理剤と同時に処理することも可能である．麦－大豆体系の不耕起栽培では，

麦稈の被覆量が多いと雑草の出芽が抑制され，その効果は種子サイズの小さい広葉雑草

に対して特に大きい．

（２）播種後の土壌型除草処理剤 ‒出芽する幼植物を抑制-

大豆播種後出芽前の土壌処理型除草剤（以下，土壌処理剤）は土壌表面に均一に散布

する．除草剤の成分は一定期間，土壌表層に高濃度で存在し，発芽してくる雑草幼植物

が水分とともにこれを吸収することで生育が阻害され枯死する．除草剤の成分は降雨に

よる土壌下層部への流亡や微生物による分解などのためにその土壌中の濃度は次第に減

少し，やがて効果が消失し，雑草が抑制されなくなる．土壌処理剤はシロザ，ヒユ類な

ど種子サイズが小さく，耕起による露光を引きがねとして地表面付近から一斉に発芽・

出芽する草種に対してはきわめて大きな防除効果を発揮する．一方，ツユクサ，アサガ

オ類など，種子サイズが大きく，発芽に光を要求せず，出芽期間も長引く草種に対して

は一般的に土壌処理剤の効果は不十分である．

大豆用の土壌処理剤としては，アラクロール，メトラクロール，トリフルラリン，ペ

ンディメタリン，プロメトリン，チオベンカーブ，IPC，リニュロン，CAT，ジメテナミ

ドなどの有効成分が登録されている．いずれも種子から出芽する一年生のイネ科雑草お

よび広葉雑草の全般に対して，発芽時期に幼芽部，幼根部から吸収させ枯死させる効果

があり，処理後一定期間その効果が持続する．

ある除草剤が効果を発揮する草種の範囲を殺草スペクトルという．多くの土壌処理剤

は大豆ほ場に発生する幅広い草種に対する殺草スペクトルを有するように製剤化されて

いる．しかし，実際は有効成分ごとに殺草スペクトルは異なり，例えば，アラクロール，

メトラクロール，トリフルラリン，ペンディメタリン，ジメテナミドはイネ科草種に対

する効果が高く，一方，リニュロン，プロメトリン，CAT は広葉雑草に対する効果が高い．

実際には草種ごと・有効成分ごとに効果の程度は多少とも異なる．トリフルラリン剤の

使用上の注意には‘一年生イネ科雑草に卓効を示すが，ツユクサ，カヤツリグサ科，キ

ク科，アブラナ科雑草などに効果が劣る’と記載されているが，他にもナス科に対して

も効果が劣る．現場のユーザーが最適な除草剤を選ぶためには，そうした情報を蓄積，

共有，公開するしくみをつくることが必要であろう．

不耕起栽培では地表面に麦稈などの植物残渣が存在する．これが除草剤の効果にどの

ような影響を与えているのだろうか．植物残渣の量と除草剤の効果との関係については

いくつかの解析事例がある．いくつかの剤と草種，残渣の組合せにおいて，植物残渣に

いったん吸着された除草剤が効果発現に寄与していること，植物残渣の庇陰によって雑

草幼植物の生育が抑制されることと，水分条件など地表面環境の緩和が相加的な防除効

果をもたらすことが示唆されている．ただし植物残渣の存在は地表面環境の不均質性を

拡大させるため，除草剤が均一に地表面に到達しない確率は高くなり，それによる効果

の不安定化は生ずるだろう．

同一の有効成分の除草剤を連用すると，それに対して効果の低い草種が次第に増加す

ることと，抵抗性を有する変異型（除草剤抵抗性バイオタイプ）が出現するリスクもあ

るため，成分の異なる剤を輪番で施用することが望ましい．幸いにして日本でこれまで

に大豆作の草種が除草剤に抵抗性を獲得した例は報告されていないが，海外ではシロザ

やヒユ類でリニュロン抵抗性バイオタイプの記録がある．

（３）大豆生育期の茎葉処理型除草剤 ‒防除対象と処理適期が重要

大豆生育期の茎葉処理型除草剤（以下，茎葉処理剤）にはその殺草対象に応じてイネ

科用，広葉用，非選択性の３種に分類される．茎葉処理剤の効果は雑草のサイズと反比

例し，植物体が小さければ効果が高く，生育の進みすぎた雑草は枯死に至らず除草効果

が得られない．雑草の生育が進むと茎葉がたがいに遮蔽するために，薬剤が群落下部の

個体に付着しにくくなる．そのため高い防除効果を得るには，ラベルの記載にある生育

時期に散布することが重要である．また，茎葉処理型除草剤は効果の持続性がほとんど

なく，処理後に出芽した雑草に対しては効果がない．

イネ科雑草用除草剤

イネ科用除草剤の有効成分にはクレトジム，テプラロキシジム，セトキシジム，キザ

ロホップエチル，フルアジホップがある．使用基準ではいずれの剤もイネ科雑草３̶５葉

期となっているが，草種によってはその幅は多少異なり，現地の発生草種に最も適した

剤とその処理時期を選ぶことが求められる．これらの有効成分に対しては海外では複数

のイネ科草種において抵抗性の出現事例が確認されているが，日本では未確認である．

広葉雑草用除草剤

2005 年 4 月にベンタゾン液剤が登録された．これまで大豆作で登録された他の除草剤

と異なり，ほとんどすべての品種で明瞭な初期薬害を生じ，感受性品種では薬害により

大幅に減収することがある．初期薬害の症状と

しては斑点，褐変，縮葉があるがいずれも一過

性であり，処理後に展開する新葉には症状はあ

らわれない．現在の主要品種のほとんどは感受

性が低く，枯死にいたるものはないが，処理後

に高温・強日照が続く条件や低温，湿害で大豆

が生育不良な条件では薬害が助長される．その

ため，使用する際には必ず公的指導機関の指導

を受ける旨の注意事項が明記されている．

ベンタゾン液剤は広葉雑草を対象とする除

草剤であり，タデ類やアメリカセンダングサ等

キク科雑草への効果が高い．しかし，シロザ，

ヒユ類，イヌホオズキ類，アサガオ類，マメ科

雑草などには効果が低い（表３）．

非選択性除草剤

ビアラホス，グルホシネートの畦間処理が登

録されている．非選択性除草剤の場合は大豆の

畦間に局所散布する．大豆の茎葉に飛散すると

薬害を生じ，枯死にいたる場合もあるため，散

布位置，散布ノズル，飛散防止カバー，散布器

具の扱いには細心の注意が必要である．2006

年現在の畦間処理の登録は「大豆に飛散しない

こと」が前提であり，飛散を前提とした散布方

法はまだ認められていない．

畦間処理用の散布機材は現在も改良が加え

られており，各地の現地実証試験などの情報を

参照するとよい．

４．近年の難防除雑草

温暖地の大豆作の主要雑草は従来，イヌビエ，メヒシバ，タデ類，シロザなどであった．

近年温暖地以西の大豆作で問題雑草として複数の地域から報告されている草種がある．温

暖地以西において畑地条件で大規模に転作を継続した地域では，ここにあげる草種が蔓延

する事態が確認され，ベンタゾン剤の効果も低いことから問題の拡大が懸念される．

問題となっている草種には熱帯原産の帰化雑草が多く，現行の大豆作において防除困難

な特徴をいくつか備えている．

１．いずれも種子で繁殖するが，出芽期間が長く，中耕除草後も出芽するため，生育した

残草が大豆成熟~落葉期に問題となる．

２．出芽後，比較的早期に生殖生長を開始し，種子を生産する．

３．幼植物期に耐陰性があり，大豆草冠下でも生育が可能である．

5 22 4 10

あやこがね 8 0 8 5

いちひめ 8 0 14 3

エルスター 8 0 4 2

エンレイ(1)** 20 1 10 7

エンレイ(2)** 8 0 6 5

おおすず 8 0 9 5

キヨミドリ 8 0 2 2

サチユタカ 15 0 5 5

さやなみ 5 1 12 6

すずおとめ 17 1 20 8

すずこがね 12 0 8 6

スズコマチ 18 0 6 3

タチナガハ(1)** 5 1 8 9

タチナガハ(2)** 8 0 7 4

タチユタカ 28 4 35 24

たまうらら 12 0 20 11

玉大黒 13 0 10 4

東北126号 10 0 10 8

東北141号 7 0 12 4

トモユタカ 15 0 10 4

納豆小粒 17 2 25 14

ニシムスメ 12 0 6 4

ハタユタカ 18 0 15 11

ヒュウガ 7 0 4 2

ほうえん 5 0 8 4

ユキホマレ 20 0 17 4

ゆめみのり 17 0 23 10

リュウホウ 5 0 12 4

澁谷・浅井・與語(2006)雑草研究51(印刷中）から引用

表２.　初期薬害程度*の品種間差（2002年）

*初期薬害程度は，達観調査により無処理区に対する

生育量（薬害症状が現れている部分は生育量から減

算）の減少比率（%）で表し，0は薬害無し，100は緑

葉部分が皆無であることを示す。

**異なる圃場で試験したので別々に表記。

処理時大豆葉齢

品種名処理後日数処理後日数

４．種子・幼植物のサイズが大きく，

出芽可能深度が深いことから，土壌

処理剤による防除効果が低い．（特に

アサガオ類）

５．温暖な地域では越冬が確認され

るなど，潜在的には短命な多年生と

考えられる．そのため降霜まで生育

を続けることが多く，収穫時に支障

となるとともに，液果が収穫物に混

入することで汚粒源となる．（イヌホ

オズキ類）

ヒユ類Amaranthus spp.：日本で

はイヌビユAmaranthus lividus，ホ

ナガイヌビユA. viridis，ホソアオ

ゲイトウA. hybridusの３種が広く

分布する．イヌビユ，ホナガイヌビ

ユは小苞が花被片より短いのに対し，

他のヒユ類は小苞が長いため，花序

が刺々しく見えることが特徴である．

その特徴からイヌビユ類をイヌビユ

属Euxolusとして分けることもある．

ホソアオゲイトウは植物体全体に毛

が多く，花序の苞が目立つ．他２種

と比べて大きく，しばしば草丈1.5

~2mに達する．

“アオビユ”はホナガイヌビユの

別名とされることが多いが，ときに

（ホソ）アオゲイトウの別名と紹介

する資料がある．イヌビユとホナガイヌビユ，ホナガイヌビユと（ホソ）アオゲイトウが

混同されていたり，間違った図版が掲載されている資料も少なくない．2000年以前に刊行

されたそれらの資料にしたがった場合，ホナガイヌビユとホソアオゲイトウが混生してい

るほ場では，前者がイヌビユと，後者がアオビユと誤認されていることが少なくないだろ

う．“アオビユ”の呼称は実態の正確な把握を妨げ混乱を招くため，用いるべきではない．

イヌビユ類を除いた狭義のヒユ類－ホソアオゲイトウを含む－はハリビユA. spinosus，

イガホビユA. poweliiなど約10種の帰化が確認されている．

ナス科イヌホオズキ類Solanum spp.：イヌホオズキSolanum nigrum，オオイヌホオズ

キS. nigrescens，テリミノイヌホオズキS. americanumが大豆ほ場への蔓延が確認されて

いる．花弁の切れ込み，種子サイズおよび果実内の球状顆粒の有無が識別点となる．オオ

イヌホオズキに比べ，花（果）数が少なく，花冠，葯の小さいものをアメリカイヌホオズ

7日後 21日後 7日後 21日後

カヤツリグサカヤツリグサ 0 0 0-5 0-5

イヌタデ 0 0 0 0

オオイヌタデ 0 0 0 0

オオハルタデ 0 0 0 0

ハルタデ 0 0 0-5 0

スベリヒユスベリヒユ 0 0 0 0

アメリカタカサブロウ 0 0 10 0

アメリカセンダングサ 0 0 60 50

ブタクサ 0-50 0-30 50 70-95

ハキダメギク 40-60 70 100 95-100

イヌホオズキ 0 0 0-10 0-30

ホソバフウリンホオズキ 0 0 30-70 50-100

オオイヌホオズキ 70-80 100 80 100

ヒロハフウリンホオズキ 95 100 100 100

ホナガイヌビユ 0-5 0-90 30-90 20-80

ホソアオゲイトウ 5 30-70 90 90

イヌビユ 20-60 50-80 90 80-95

ホソバツルノゲイトウ 5 80 90 90-95

ゴウシュウアリタソウ 20 60 40-50 70-90

シロザ 50-80 40-90 90 70-90

ホシアサガオ 20-30 50 50-80 70-90

マルバルコウ 20-40 50-60 90-95 100

マルバアサガオ 20-100 20-100 95-100 100

マメアサガオ 90 95-100 90-95 100

マルバアメリカアサガオ 70-100 90-100 95-100 100

クワクワクサ 50-60 90-95 30-95 70-100

ザクロソウザクロソウ 30-50 70 95 100

エノキグサ 100 100 100 100

オオニシキソウ 100 100 100 100

マメツルマメ 100 100 100 100

*2004年ポット試験　ベンタゾン薬量150ml/10a

**生育量(%)は達観調査による無処理区に対する生育量比。最小-最大で表示。

澁谷・浅井・與語(2006)雑草研究51(印刷中）から引用

アカザ

ヒルガオ

トウダイグサ

表３. 一年生広葉夏畑雑草に対するベンタゾン処理時期と処理後の生育量の変化*

タデ

キク

ナス

ヒユ

科雑草種名

生育量**(%)

キS. ptycanthumとみなす考えがある．黒~黒紫色に熟した果実が大豆収穫時に汚粒源とな

り嫌われる．種間および種内でベンタゾン剤への感受性が異なる．

ナス科ホオズキ類 Physalis spp.:ヒロハフウリンホオズキPhysalis angulata var.

angulat），ホソバフウリンホオズキP. angulata var. lanceifoliaがこれまで大豆作で確

認されている．これらは近年までセンナリホオズキP. pubescenceと混同されてきたため，

2001年以前に出版された図鑑類ではこの分類群について正確に記載されていない．

なお，畑作の代表的土壌処理型除草剤であるジニトロアニリン系有効成分はホオズキ類

への効果が低いため，同剤が慣行的に連用されている場合，本種の蔓延を助長する可能性

がある．また北米の試験事例ではベンタゾンへの感受性も低く，大豆2~4葉期の1.12kg

a.i./ha（日本のベンタゾン製剤の280ml/10a処理に相当）の処理で残草が見られた年もあ

った．また，リニュロンの播種後土壌処理および4~6葉期の畝間処理が高い防除効果を示

した．

アサガオ類Ipomoea spp.：マメアサガオIpomoea lacunose，ホシアサガオ（I. triloba），

アメリカアサガオおよびマルバアメリカアサガオI. hederacea (=Pharbitis hederacea)，

マルバアサガオI. purpurea（=P. purpurea），マルバルコウI. coccinea（= Quamoclit

coccinea）の５種がこれまで大豆ほ場への侵入が確認されている．萼の形態が最もよい識

別点であるが，子葉の切れ込み，本葉の毛の密度，突起の有無により開花以前でも識別は

可能である．いずれも蔓を伸ばして作物にからみつき草冠を覆うため，繁茂後の除草作業

はきわめて煩わしい．

アサガオ類のベンタゾンへの感受性には種間差が存在する．最も感受性が高いのはマル

バルコウであり，ホシアサガオ，次いでマメアサガオの感受性が高く，マルバアサガオ，

アメリカアサガオは最も感受性が低い．いずれも場合も0.5kg a.i./ha程度（日本での登録

量）の一回処理では十分な防除効果がないことが確認されている．

土壌処理型除草剤による防除効果についても過去に北米で検討されている．マメアサガ

オ，アメリカアサガオ，マルバアメリカアサガオに対するアラクロール，ジウロン，リニ

ュロンおよびプロメトリンの効果を比較したところ，どの草種に対してもプロメトリンが

最も高い抑制効果を示した．また，グリホサート，パラコートとあわせて，リニュロン，

2,4-D等の畝間処理によっても高い防除効果が得られている．

５．今後の課題 ‒研究と現場をつなぐために-

今後ますます大規模・省力化が求められる大豆作においては，現在の日本の除草技術

の選択肢は十分なものではない．土壌処理型除草剤の多くはその処理時期が大豆播種後

出芽前という短期間であり，播種期が梅雨時と重なる場合には適期に散布できないこと

がしばしばある．そのため，処理時期の自由度が高い茎葉兼土壌処理剤や，生育期に処

理可能な除草剤の必要性は高い．新たな有効成分の実用化とともに，出芽時期の遅い草

種に対する防除効果を拡大するための既存剤の利用場面拡大，すなわち非選択性除草剤

のみならず土壌処理剤の生育期処理も実用化が検討されている．

その一方で耕畜連携の進展にともなって，飼料作ほ場だけでなく転作ほ場に堆肥が投

入される場合も増えており，堆肥由来と考えられる外来雑草の侵入事例も増えている．

ヒユ類，アサガオ類，ホオズキ類，イチビなどがそうであり，既存の除草剤では効果が

低い草種もある．十分完熟した堆肥であれば多くの雑草種子は熟成中に死滅しているが，

完全な効果を期待するのは非現実的である．したがって蔓延を防ぐためには侵入初期の

発見とその時点での予防的防除が最も経済的である．農道脇や水路際など，ほ場周辺域

が雑草の発生源と見受けられる地域も少なくない．ある程度以上の面積を有する転作団

地においてこうした難防除雑草の蔓延を防ぐには，ほ場内では作物収穫後の雑草による

種子生産を防止することや，ほ場周辺域を地域集団で管理するしくみを整えることが長

期的な雑草防除につながる．

現場から研究機関までの連携関係を構築し，広域的な情報の集積と研究の連携をすす

める必要がある．

１）実態の数値化

現場としてまずなすべきは実態の把握である．大豆作の雑草がどの程度発生し，それに

よりどんな被害がどれだけあるのかをできるだけ数値化する．作物の生産や防除を管轄す

る行政部局や除草剤メーカーに対して，被害面積や被害推定額などの実態の数値を提示す

ることはきわめて説得力があり，被害補償や駆除事業の予算化，新たな除草剤とそのニー

ズの検討に有用である．

２）既存剤・防除体系の効果確認と出芽時期の特定

少なくとも現地で防除が必要な草種群に対しては最も効果の高い除草剤がどれである

のか，が答えられる必要があるだろう．土壌処理剤の効果確認は，現地での出芽挙動を

再現した条件で試験を行うことが望ましい．現地試験の場合は，無処理対照区において

定期的な出芽観測を行い，出芽パターンのデータが得られれば，試験結果の解釈を補助

し，適用範囲がより明確になる．先述したアサガオ類のように北米などに既存知見が存

在するものも少なくない．そうした情報を集積，共有する場も必要である．

３）既存の土壌処理剤および非選択性茎葉処理剤の利用場面拡大北米ではラウンドアップレディ普及以前はベンタゾン以外の選択性除草剤が広葉防除の

主役であった．現状ではそうした新規有効成分の早急な登録は見込めないが，既存剤の処

理方法の拡大は検討されている．畝間処理Post emergence directed applicationは北米で

は除草剤抵抗性品種の導入以前から広く行われていた．日本においても今後，非選択性茎

葉処理剤処理法の実用化，省力化，機械化が求められる．一部の土壌処理型除草剤の反復

処理，中耕時同時処理の実用化も検討中である．

４）転作体系と発生量の関係および種子の湛水耐性と持続期間の解明田畑輪換は最高の耕種的防除といわれているが，実際には湿潤条件に適応した草種が増

加し，問題となる．輪作体系中に水稲がどの程度存在すれば（隔年，３年に１作等々）種

子が死滅するのかについては，これまで断片的な知見は存在するが不十分である．水稲作

による夏期の湛水条件は多くの雑草種子の土壌中の持続期間に大きな影響を与えるが，そ

の程度は草種によって異なるだろう．湛水頻度・期間と雑草種子の減耗率との関係を検定

する共通した実験系を確立し，広域に連携した試験を展開する必要がある．同時に現地ほ

場での継続したモニタリングも不可欠である．

５）各種耕種操作への反応とそれらを統合した総合防除モデルの例証と評価

登録済みの除草剤から最適なものを選択しても，それでは難防除雑草対策としては概し

て不十分である．そのため単独では効果の乏しい他の手段と組み合わせて雑草密度を漸減

させることが次の課題となる．これが総合的防除である．よく知られた用語ではあるが，

これが雑草防除において具体的に示され，実行されている例は多くない．

除草剤は作期に存在する雑草防除に最も影響の大きい手段の一つである．しかし，除草

剤だけが雑草の密度制御に関与しているわけではない．耕起などの圃場に対する人為攪乱

のパターンや，他の生物による影響など雑草個体群の動態にはさまざまな要因が関与して

いる（図３）．例えば結実した雑草種子は親植物上あるいは脱落後に地表面で鳥類や節足

動物などにより消費される．土壌中の種子も，土壌動物による被食や病原菌の感染により

本来の生理的寿命よりも早い時期に発芽力を失う．このような影響はこれまでブラックボ

ックス扱いされ定量化されてこなかった．化学農薬のような安定・均一な効果は期待でき

ないにしても，現場での雑草の動態に対して少なからぬ影響を及ぼしていることは疑いな

い．何らかの耕種操作でその範囲や安定性が拡大可能かを検証することは，除草剤への依

存度をできるだけ減らした雑草防除体系を確立する上で今後の大きな研究課題でもある．

総合防除のための個別の素材は，いずれも単独では十分な効果に至らないものが多く，

単年度で劇的な効果が得られることは少ないと考えるべきである．これらを適切に組み合

わせ持続することで長期的な防除効果を高めることが望まれる．考えうる全ての組合せを

圃場で試みることは非効率的でありまた不可能である．しかし，綿密に設計された実験か

らはそれぞれの要素の寄与率とそれらの組合せ効果が予測可能である．

このような試験を担うのは独立行政法人や大学農場など制御された圃場試験が可能な機

関であろう．それに県や普及センターなど現地に近い機関が現地実証体制を設計し，仮説

検証型のモニタリングを近隣の大学研究室が担うといった有機的な連携関係の構築が求め

られる．これらの結果をもとに防除コストや収量といった経営データを統合し，現地の防

除対策の意思決定指針の提示や埋土種子のモニタリングに基づいた長期的な視野で雑草管

理策が提言できれば望ましい．

- 1 -

ダイズの主要病害とその防除

平成１８年７月５日


病害抵抗性研究チーム長藤田佳克

１．ダイズの主要病害

ダイズの主要な病害としては、紫斑病、さび病、べと病、葉焼病、茎疫病、白絹病、黒根

腐病、モザイク病、褐斑病がある。このうち発生面積が最も多いのはべと病、次いで葉焼病

であるが、いずれも被害が大きくなることは少ない。防除面積は紫斑病、さび病が多く、茎

疫病、白絹病、黒根腐病等の立枯れ性病害は防除が困難である。モザイク病、わい化病等の

ウィルス病の防除は媒介昆虫である虫の防除が主体となる。ここでは発生面積、防除面積が

多く、最も大きな問題となっている紫斑病について概説する。

２．ダイズ紫斑病

病徴：紫斑病はダイズの茎、葉、莢、子実など地上部全てに発病をおこすが、品質低下を

もたらす子実の発病がもっとも重要視される。ダイズにおける病徴は、子実では特徴的な紫

斑を呈するが、葉、茎、莢では黒点病と炭疽病の病徴に、子葉、初生葉および本葉では褐紋

病の病徴に類似している。これらの病斑を 20 ～ 30 ℃の高湿度条件下に置くと２～３日で分

��

��

��

��

��

��

��

平成１６年のダイズ病害の発生面積と防除面積（ha）

0.0

20,000.0

40,000.0

60,000.0

80,000.0

100,000.0

120,000.0

紫斑病さび病立枯性病害べと病葉焼病モザイク病わい化病

�� 発生面積（ｈａ）防除面積（ｈａ）

- 2 -

生子を形成することから、病徴の診断には病斑部に形成させた分生子を確認する必要がある。

伝染環：紫斑病菌は冬期に積雪のある北日本では野外で越冬することは困難であるが、西

日本では野外の罹病植物体上で越冬できる。しかし、いずれの場合も、もっとも主要な伝染

源は罹病種子であると考えられる。罹病種子を播くと、そこから伸長した菌糸によって子葉

および胚軸が発病し、これらの病斑上に形成された分生子が初生葉、および第一、二本葉の

感染源となる。さらに下位葉の病斑に形成された分生子が上位葉、続いて莢に感染して子実

の発病を引き起こす。また、罹病葉では落葉後も分生子が形成され、茎葉や莢の伝染源とな

る。

圃場における茎葉の発病と胞子飛散は、いずれも６月下旬から８月第１半旬までは僅かな

がら連続して認められるが、高温と好天が続く８月第２、３半旬になると減少し、気温が低

下し降雨が多くなる８月第４、５半旬以降９月下旬にかけて著しく増加する。子実の発病は

成熟期 17日前頃の成熟始期に始まり、成熟期に至る過程で急速に増加した。また、６月下旬

の茎葉の発病程度ならびに８月中旬から９月第１半旬の茎葉の発病程度と胞子飛散数の推移

は紫斑粒率との相関が高かった。このため茎葉の発病と飛散胞子数の推移を調べることによ

って子実の発病率を予測することが出来ると考えられる。次に、開花６日後から 50日後まで

３日ごとに莢に紫斑病菌を接種した結果、開花 12 日後から 37 日後までの接種で発病粒率が

高くなり、この期間が子実の発病に適した莢の感染時期であると考えられた。開花直後の接

種で発病率が低いのは、気孔が未熟な莢では菌の侵入が抑制されるためであり、後期接種に

よる発病率が低いのは侵入した菌糸が成熟期までに莢の内表皮へ到達することが困難なため

と考えられる。

- 3 -

環境条件と発病：葉及び子実の病斑部における分生子形成は 27℃前後、分生子の発芽およ

び菌糸生育の適温は 20～ 30℃、葉および子実の病斑形成の適温は 20℃前後あった。また、

時期および日数を変えて散水を行うと、接種後成熟期までのいずれの時期の散水によっても

発病粒率が増加した。このため降雨は莢への菌の感染から子実への菌糸進展の全課程に影響

を及ぼすものと考えられる。このように気温および降雨は子実の発病だけでなく、病斑部に

おける分生子形成、菌糸生育および葉と莢の発病に対しても影響を及ぼし、このことが圃場

における紫斑粒の発生の年次変動を大きくしている要因の一つになっていると推察される。

菌の侵入：紫斑病菌はダイズの葉、茎、莢では気孔から侵入する。分生子の発芽は約３時

間後から始まる。発芽後７、８時間以上経った発芽管は乾燥すると伸長を停止し、水滴が出

来ると再び伸長するようになり、４日後頃からは気孔に近づくと肥大し気孔から侵入した。

発芽管の肥大およびそれによる侵入は、展開直後の葉や開花直後の莢のような未熟な気孔で

はほとんど認められなかった。名組織内における菌糸進展は、葉の海綿状組織や子実の I 型

細胞層のような細胞間隙の多い所では旺盛だが、葉の柵状組織や莢の柔組織のような細胞間

隙の少ない所では進展速度が遅く菌糸進展も病斑部に限られるなど、菌糸進展と宿主組織の

細胞間隙の有無との間には密接な関係が認められた。莢に侵入した菌糸は莢が緑色を呈して

いる間は外表皮から１～４層の柔組織内にとどまっていたが、莢が黄化し始める頃から進展

速度が速くなり、成熟期 15日前頃には内表皮へ達し子実に侵入して紫斑粒を発生させた。莢

に侵入した菌糸がこの時期まで莢の内表皮へ到達できないことは、子実の発病が成熟始期ま

で認められない要因になっていると推察される。莢の内表皮への菌糸進展方法は、縫合線部

と莢壁部とで異なっていた。すなわち、縫合線部においては菌糸は維管束周囲の柔組織内を

接種時期と発病粒率との関係（成熟期：開花７３日後）

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

６日後１５日後２４日後３４日後４４日後５０日後

接種時期（開花後日数）

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進展し内表皮へ達したのに対し、莢壁部においては厚膜組織の表皮に菌糸塊を形成してのち

に内表皮へ進展し、進展速度が遅くその率も低く、このことが子実の発病が臍部で多いこと

の要因の一つに成っていると考えられる。

葉における紫斑病菌の発芽管の肥大と気孔侵入

発芽管の肥大接種後日数（日）

ならびに侵入率１２３４５６７

発芽管の肥大率（％）ａ） 0 0 0.7 50.0 41.5 42.3 56.2

気孔侵入率（％） 0 1.7 0.7 6.9ｂ）16.7 26.7 32.7

ａ）気孔または孔辺細胞上を伸長する発芽管数に対する割合

ｂ）肥大後の気孔侵入の開始

防除法：防除法としては耕種的方法、薬剤による防除、抵抗性品種の利用がある。このうち

耕種的方法としては、罹病種子が主要な伝染源となることから健全種子の利用が重要である。

なお、外見上無病徴でも臍部には菌糸が侵入している場合がある。また、収穫時期が遅く乾

燥が不十分な場合には子実の発病率や病斑面積率が高くなることから、適期収穫と早期乾燥

を心掛ける。

紫斑病に対する抵抗性には顕著な品種間差があるが、全く発病しない品種は見られない。

子実に直接菌糸を接種しても品種間差が認められないこと、莢の発病程度と発病粒率の相関

が高いこと、抵抗性品種では莢の組織内における菌糸進展が遅いこと等から、紫斑粒率の品

種間差は莢の抵抗性によると考えられる。

薬剤防除：紫斑病によるダイズの被害は発芽率の低下や立枯れなどの生育初期の障害と、

紫斑粒の発生に伴う品質低下が主である。生育初期の障害に対しては種子消毒が高い防除効

果を示し、紫斑粒の発生に対しては茎葉散布が効果的である。防除薬剤としてはチオファネ

ートメチル剤およびボルドウ剤があり、各薬剤の散布適期は開花 21～ 42日後および 14～ 28

日後であった。このようにチオファネートメチル剤は防除効果が高く散布適期も広かった。

しかし、昭和 63年に広島県で薬剤耐性菌が発生したのを皮切りに、その後滋賀県、鳥取県、

福井県、宮城県でも発生が報告されている。向畠の報告によると、平成７年に富山県で採集

した 666 菌株のＭＩＣ（菌糸生育阻止濃度）を測定した結果、ＭＩＣ値が 6.25ug/ml 以下の

感性菌及び 100ug/ml の中等度耐性菌の比率はそれぞれ 4.1 ％及び 0.3 ％であり、1,600ug/ml

以上の高度耐性菌が 95.6 ％を占め、前年の 89 ％より増加していた。この年に薬剤の防除効

果を調べた結果、ジェトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤、ピリフェノックス水

和剤、イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤、銅粉剤の防除効果が高く、チオファネートメ

チル水和剤及び粉剤は効果が無かった。チオファネートメチル剤の防除効果の低下は、種子

消毒と茎葉散布にチオファネートメチル剤やベノミル剤が使用されたことによる薬剤耐性菌

の発生によると考えられた。

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薬剤の茎葉散布時期および回数が紫斑粒の発生に及ぼす影響

散布回数散布時期発病粒率（％）

薬剤名

チオファネートメチル 4-8式ボルドウ

１回開花期－ 14.0

開花 7日後－ 12.0

14 2.2 1.0

21 0.5 0.7

28 0.1 1.0

35 0.1 7.7

42 1.0 9.7

49 1.7 －

56 4.7 －

63 6.4 －

70 22.3 －

２回開花21，35日後 0.1 －

28，42 0.0 －

35，49 0.1 －

無散布 20.5 20.5

品種：ライデン，開花期：７月27日，成熟期：10月15日（開花79日後）

このため平成７年からベンゾイミダゾール系のチオファネートメチル剤とベノミル剤の使

用を中止した結果、平成８年から 10年にかけて耐性菌比率が急速に低下した。また、富山農

試原種圃では、薬剤を銅剤にした平成８年以降、耐性菌比率は 10 ～ 20 ％で推移した。しか

し、中止８年後の平成 15 年でも耐性菌比率は 19.1 ％であった。耐性菌比率が 10 ～ 20 ％に

低下した場所でチオファネートメチル剤を散布すると、無散布区の耐性菌率はそのままであ

ったのに対し、散布区の耐性菌率は平成 11 年、12 年、13 年の３回とも 100 ％近くに上昇し

た。このようにチオファネートメチル剤の使用を中止すると耐性菌率は減少するが、短期間

では一定レベル以下には下がらず、使用を再開すると耐性菌率は急上昇することから、当面

の使用再開は困難と考えられる。耐性菌発生時の登録薬剤としては、現在、銅剤、ジェトフ

ェンカルブ・チオファネートメチル剤（ゲッター）、イミノクタジンアルベシル酸塩剤（ベル

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クート）、シメコナゾール剤（サンリット）、アゾキシストロビン剤（アミスター）、イミベン

コナゾール剤（マネージ）があり、いずれも防除効果が高い。散布適期は開花３～５週目で

あるが、年次や品種、地域によって多少の巾があると考えられる。なお、いずれの薬剤も多

発時には１回散布では安定した防除効果が得られないことがあるため、２回散布が必要と考

えられる。

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農林水産省委託革新的農業技術習得研修資料

2006.7.5

大豆の低コスト・高品質・安定生産体系を支える最新技術－虫害防除技術－

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

中央農業総合研究センター総合的害虫管理研究チーム

守屋成一

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大豆の低コスト・高品質・安定生産体系を支える最新技術

－虫害防除技術－

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

中央農業総合研究センター総合的害虫管理研究チーム

守屋成一

１．はじめに

大豆害虫に限らず、情報化学物質を介した生物間のコミュニケーションを利用して、新

たな害虫防除法や発生予察技術を開発する研究が全国の研究機関で実施されています。

・誘引物質

特定の物質に強力に誘引される場合→ミカンコミバエに対するメチルオイゲノール：

雄除去法による根絶防除

・フェロモン／カイロモン

性フェロモン：農業害虫を含む多くの昆虫で単離同定されており、実用化が進んでい

ます→発生予察・大量誘殺・交信攪乱

集合フェロモン：同種の他個体を誘引する→発生予察・大量誘殺に使われていますが、

多くはまだ研究段階です。

カイロモン：寄生者が寄主の出すにおいに誘引される場合→研究中です。

・SOS 物質（匂い物質）：植物－寄主－寄生者の三者系で作用します→近年、急速に研

究が進展している分野です。

カメムシ類集合フェロモンの謎

雄成虫が出す集合フェロモンに雌雄成虫、時には幼虫も反応して、集まってきます。集

まってくる方は、多くの場合、そこで餌にたどり着くことができます。一方、フェロモ

ンを出している雄成虫はどんな利益を得ているのでしょうか？交尾機会の増大、集合す

ることによる摂食効率の向上、寄生者・捕食者からの逃避・防御対策などが考えられて

いますが、きちんと検証されていません。

雄成虫がフェロモンを体内で作るにはエネルギー（＝コスト）がかかります。コストを

上回る利益がない限り、フェロモンを作る性質の進化はあり得ない、というのが現代の

進化生態学の定説です。集合フェロモンの生態学的意義はまだ解明されておらず、謎に

包まれた部分が残されています。

合成集合フェロモンの不思議な現象

チャバネアオカメムシ用の合成誘引剤には、クサギカメムシ・ツヤアオカメムシなど他

の種類のカメムシが捕獲されます。ホソヘリカメムシ用では、イチモンジカメムシが捕

れます。生きた雄成虫を誘引源とするとこのようなことは起きません。「合成集合フェ

ロモン」は何かが足りないのか、何かが多すぎるのでしょうか？誘引物質の分離同定に

は、ガスクロマトグラフィー直結触角電位検出器(GC-EAD) が利用されていますが、「集

- 3 -

合」は性フェロモンで見られる配偶行動のような顕著な行動の変化が観察されにくいの

で、分離された物質が「真の」集合フェロモンかどうか、厳密に検証することが一般に

は非常に困難です。

２．ホソヘリカメムシの発生予察と防除に関する研究

中央農業総合研究センターで行われているホソヘリカメムシに関する研究を紹介します。

2-1.「天敵卵寄生蜂誘引物質の機能の解明とその特異性を利用した新防除技術の開発」

ダイズカメムシ類の天敵卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチ(以下、トビコバチ）

を特異的に誘引する(E)-2-hexenyl (Z)-3-hexenoate （以下，E2HZ3H）を防除に

利用するためには，E2HZ3H によってダイズ圃場に誘引したトビコバチ雌成虫

の寄生活動を活性化して維持する必要がある。そのためには，雌蜂の寄主探索

行動を解明するとともに，餌の供与等寄生活動を高めると予想される複数の要

因について寄生率に与える影響を明らかにする。

ホソヘリカメムシの合成誘引物質(集合フェロモン)

・フェロモンは 3物質の混合物

(E)-2-hexenyl (E)-2-hexenoate：(E)-2-hexenyl (Z)-3-hexenoate：tetradecyl isobutyrate

=E2HE2H：E2HZ3H：14:iBu (略記）

= 5 : 1 : 1（摂食中の雄成虫の空気捕集物より GC-EADによって分離・同定）

・同種の雌雄成虫と幼虫を誘引

・合成物は天敵卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチも誘引

ホソヘリカメムシ合成集合フェロモンの誘引効果

卵寄生蜂トビコバチと寄主カメムシで，誘引活性を持つ成分が異なります。トビコバチ

は E2HZ3Hに誘引されますが、カメムシは E2HZ3Hに誘引されません。そこで、E2HZ3H

をダイズ圃場に処理することによって，カメムシの密度を高めることなく，トビコバチ

の密度だけを高めることができます。

E2H Z3Hがトビコバチの寄生活動に与える影響

1)トビコバチ♀成虫の密度は，対照圃場よりも E2HZ3H処理圃場で高くなります。

2)カメムシの密度は E2HZ3H処理圃場で高くなりません。

3)♀蜂の密度が高い秋ダイズでは，E2HZ3Hによってトビコバチの寄生率が高まります。

しかし，♀蜂の密度が低い夏ダイズでは，トビコバチの寄生率は高まりません。寄生率

を安定的に高める方法を見つけ出す必要があります。

2-2.「合成誘引物質と自動カウントトラップを利用した大豆子実害虫の早期高精度発生予察技

術の開発」

ダイズ子実害虫、特にホソヘリカメムシはダイズ圃場外での生態に不明な点が多

く、圃場外から侵入した個体が収穫部位を直接加害するため、低密度でもダイズ

- 4 -

の安定生産を阻害する難防除害虫である。そこで、優れた誘引効果を示す誘引物

質等を探索し、捕獲効率の高い自動カウントトラップと組み合わせることにより、

ダイズ圃場外でのカメムシ類の発生状況を早期に把握し、圃場内への侵入の時期

と量を高精度で予測可能となる技術を開発する。さらに、トラップのデータ通信

機能を利用することにより侵入個体群の動きをリアルタイムで監視するシステム

を開発する。

ホソヘリカメムシ集合フェロモンによる同種他個体の誘引

合成集合フェロモンの利用方法

大量誘殺には不向き：誘引力があまり強くないうえに、すべての個体が誘引源へピン

ポイントに誘引されるわけではありません。

発生予察：フェロモンにはどんな虫が誘引されるのか？明確な生理的特徴が見られま

せん(性フェロモンの場合は、交尾相手を探している性的に成熟した個体です。)。

合成集合フェロモンを誘引源とするトラップの誘殺消長

・トラップでの誘殺消長とダイズ畑での発生消長に明確な相関は見られません。

トラップの誘殺消長が野外個体群の何を反映しているのかよく分からないので、フェロ

モンの機能の解明が是非とも必要です。

・設置場所によって誘殺数・消長に差があるため、複数のトラップを設置する必要があ

ります。

捕獲個体数に対するトラップの形状や色の影響

・形状

サンケイ式(コガネコール)が実用的（ただし、水の確保が必要）、粘着板は短期観察（2-

3 日）に向いています。フェンス式は捕獲個体数は多くなりますが設置のコスト（場所

・数）が問題になります。

・色の影響は少ないが（緑でやや少ない傾向あり）、黄と白は他種昆虫の混入が多くな

るので、緑色のトラップを利用しています。

参考文献

水谷信夫(2006)カメムシ類雄成虫のフェロモンとそれによる天敵捕食寄生者の誘引. 日

本応用動物昆虫学会誌 50: 87-99.

水谷信夫;和田節;樋口博也(1997)ホソヘリカメムシ合成集合フェロモンによる天敵卵寄

生蜂カメムシタマゴトビコバチの誘引. 農林水産技術研究ジャーナル 20(9): 38-43.

水谷信夫;和田節;樋口博也(1999)ホソヘリカメムシ合成集合フェロモンがダイズ圃場に

おける天敵卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチの密度および寄生率に及ぼす影響. 日

本応用動物昆虫学会誌 43: 195-202.

守屋成一;水谷信夫(2003)ホソヘリカメムシ合成集合フェロモントラップの形状の検討.

関東東山病害虫研究会報 50: 139-141.

西本佳子;水谷信夫;守屋成一(2003)ホソヘリカメムシ合成集合フェロモントラップに捕

- 5 -

獲されるホソヘリカメムシと他種昆虫に及ぼすトラップ色の影響. 九州病害虫研究会

報 49: 92-95.

塩尻かおり(2004)生態系における生物間化学情報ネットワーク.日本応用動物昆虫学会

誌 48: 169-176.

田渕研;守屋成一;水谷信夫(2005)ホソヘリカメムシ合成誘引物質を用いたトラップによ

る誘殺消長. 日本応用動物昆虫学会誌 49: 99-104.

田渕研;守屋成一;水谷信夫;伊藤健二(2006)自動計数機能付き昆虫誘殺装置を用いたホソ

ヘリカメムシの誘殺消長. 日本応用動物昆虫学会誌 50: 123-129

＊上記参考文献のうち、日本応用動物昆虫学会誌は、同学会のウェブサイト

http://odokon.org/ で、全文が閲覧可能です。

３．大豆の主要害虫

大豆栽培で問題となる害虫類のうち、カメムシ類、ハスモンヨトウ、フタスジヒメハ

ムシ、わい化病媒介アブラムシについて、インターネット上で公開されている主要な情

報源を紹介します。

・主要害虫を含むダイズ全般にわたる解説

http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/kaidai/daizuNo27/27_m.html

農林水産研究文献解題 No.27 大豆自給率向上に向けた技術開発 (2002)

上記サイトに掲げられている文献の多くは「AGROPEDIA：農学情報資源シス

テム」http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/menu_ja.htmlを利用することにより、

さらに詳しく検索したり、抄録を閲覧することが可能です。AGROPEDIA は利

用者登録が必要ですが、メールアドレスがあれば簡単にできます。

・カメムシ類(主にホソヘリカメムシ）

http://www.affrc.go.jp/ja/db/seika/data_narc/h08/narc96S079.html

ホソヘリカメムシ集合フェロモンの 1成分による天敵卵寄生蜂の誘引

総合農業試験研究推進会議平成８(1996)年度研究成果情報

http://www.affrc.go.jp/ja/db/seika/data_kyusyu/h15/2003551.html

ホソヘリカメムシ集合フェロモンに含まれるイチモンジカメムシ誘引成分

九州沖縄農業研究センター平成 15(2003)年度九州沖縄農業研究成果情報

http://www.affrc.go.jp/ja/db/seika/data_kanto/h14/kan405.html

カメムシ類に対応した自動カウント式フェロモントラップの改良

中央農業総合研究センター平成 14(2002)年度関東東海北陸農業研究成果情報

http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2002/kanto/kan327.html

集合フェロモン剤を用いたホソヘリカメムシ捕獲トラップ


- 6 -

・ハスモンヨトウ(ウイルスによる防除）

http://www.cc.rd.pref.gifu.jp/g-agri/seika/h15seika/9.pdf

岐阜県生物産業技術研究所で開発された生物農薬ハスモンヨトウ核多角体病ウイルスの

可能性

岐阜県農業技術センター平成 15(2003)年度試験研究成果検討会資料

・フタスジヒメハムシ

http://www.jppn.ne.jp/fukuoka/boujyo/futuu/1291.htm

日本植物防疫協会 JPP-NETの解説ページ

http://www.nichino.co.jp/fujinokai/useful/use_013.shtml

日本農薬の解説ページ

http://www.pref.aichi.jp/nososi/seika/hokoku/hokoku34/34_031.html

フタスジヒメハムシによるダイズ根粒被害の実態と防除

愛知県農業総合試験場研究報告(2002)

http://www.affrc.go.jp/ja/db/seika/data_kanto/h13/13/narc0113l16.html

フタスジヒメハムシによるダイズ根粒の摂食被害と対策


http://www1.affrc.go.jp/seika/data_kanto/h14/kan321.html

フタスジヒメハムシ幼虫のダイズ根粒摂食による窒素吸収量低下と収量改善


・ダイズわい化病媒介アブラムシ類

http://www.agri.pref.hokkaido.jp/chuo/kaihatsu/hatasaku/hata1/waika.htm

北海道立中央農業試験場・ダイズわい化病の解説ページ

http://www1.affrc.go.jp/seika/data_common/h14/com002.html

ジャガイモヒゲナガアブラムシが媒介するダイズわい化病の 1次感染時期

中央農業総合研究センター平成 14(2002)年度共通基盤研究成果情報

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