民間航空機に関する市場予測市場予測 2020-2039...

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民間航空機に関する市場予測 2020-2039 令和 2 3 一般財団法人 日本航空機開発協会

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  • 市場予測 2020-2039

    民間航空機に関する市場予測

    2020-2039

    令和 2 年 3 月

    一般財団法人 日本航空機開発協会

  • 市場予測 2020-2039

  • 市場予測 2020-2039

    まえがき

    航空機産業は知識集約的で産業への波及効果が大きく産業構造の高度化に有効

    なため、科学立国を目指す我が国にとって不可欠な産業としてその発展と高度化に

    は大きな努力が払われています。 今後、我が国の航空機産業をさらに発展させてゆくためには、世界の民間航空機

    市場に関する情報の収集や市場分析を継続的に行うことが不可欠であると考えら

    れることから、日本航空機開発協会(以下 JADC*という)では航空輸送、航空機材、エアライン、航空機メーカー等の世界の民間航空機市場に関する情報を収集・

    調査し、その分析結果に基づいて航空旅客、航空貨物および航空機材についての需

    要予測を実施しています。 本書はその予測結果をまとめたもので、関係方面に提供すると共にウェブサイト

    (http://www.jadc.jp)を通じて広く一般にも供するものです。

    (*: JADC : Japan Aircraft Development Corporation)

    なお、現在の世界は COVID-19 禍のパンデミック化によって混乱の淵にあり、 各国が防疫に努め、人の移動が強く制限される状況にあって、航空旅客輸送需要は

    激減しエアラインもメーカーも苦しい対応を余儀なくされています。 顧みれば世界のエアラインはこれまでにもテロや疾病等による混乱を経験して

    おり、その都度、原因の除去から数年の内に輸送需要は混乱前の長期的な成長予測

    の曲線に収束するように確実に回復してきました。 本書は、COVID-19 禍の影響に関して長期的な変化を分析する上での十分なデー

    タが未だ無い時点での予測として、現段階で見えてきた短中期的な影響のレベルを

    示すとともに、長期予測としては、混乱の収束に向けた基準として、この疫禍の影

    響を除いた予測線を過去 20 年間の実績データの分析に基づいて示しています。 本書ではこれを標準モデルとして with / post COVID-19 における輸送需要、機

    材需要への影響も推測するとともに、今回の疫禍から回復した後の世界や航空輸送

    市場が従来とは異なる性格や規模を備える可能性と関連すると考えられる要素に

    ついても整理を試みました。

    令和 2 年 3 月 一般財団法人 日本航空機開発協会

    YGR-5102

  • 市場予測 2020-2039

  • 市場予測 2020-2039

    目 次

    1. 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3. 航空業界の概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

    3.3 COVID-19 禍の終息まで ・・・・・・・・・・・・・・・ 12 3.4 COVID-19 禍の終息後 ・・・・・・・・・・・・・・・ 16

    4. 旅客機の需要予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 5. 航空旅客需要の予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 6. 航空輸送に関わる要素 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 7. 貨物機の需要予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 8. 航空貨物需要の予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 9. 地域別概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89

    10. 航空機材の販売予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125 11. 航空用エンジンの販売予測 ・・・・・・・・・・・・・・ 131 12. 予測手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133

    Appendix A 機体分類の定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 135 Appendix B エンジン分類の定義 ・・・・・・・・・・・・・・ 136 Appendix C 航空旅客需要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137 Appendix D 航空貨物需要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138 Appendix E 機材需要予測結果 ・・・・・・・・・・・・・・・ 137 Appendix F 第 2 次需要の評価 ・・・・・・・・・・・・・・・ 141 Appendix G 主要エアラインの貨物輸送実績の推移 ・・・・・・ 142

    用語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 143 略語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144 参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146

    本書は、COVID-19 禍のパンデミック化以前に過去 20 年間のデータに基づいて分析した結果を中心に説明している。COVID-19 禍の影響に関連する推定は、3.3 項と 3.4 項で説明している。

  • 市場予測 2020-2039

  • 市場予測 2020-2039

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    1. 概要 民間航空機市場の長期需要予測は、民間航空機ビジネスを行っていく上での市場リ

    スクの評価・検討および中長期事業計画や製品戦略立案に有用な情報を提供するも

    のである。JADC は、2020 年から 2039 年までの 20 年間について、航空旅客、航空貨物、機材(ジェット旅客機、ターボプロップ旅客機およびジェット貨物機)、およ

    び航空用エンジンについての需要予測を行った。

    予測期間における世界全体の経済成長率(GDP)は年平均 2.75%と見込まれる。

    航空旅客需要(RPK)は、2019 年の 8.49×1012人 km から 2039 年には 18.7×1012

    人 km と 2.2 倍になり、その間の年平均成長率は 4.0%である。 長距離路線を中心とする中東地域の成長率は既に低下している(平均年 4.1%相当に設定)ほか、所得の増加に伴って予測期間中に中国が途上国型の急成長モデルから高所得国型の緩成

    長モデルに遷移すると予測している(平均年 4.7%相当に設定)。

    ジェット旅客機の運航機数は、2019 年末の 24,015 機から 2039 年末には 41,274 機に増加する。今後 20 年間の新規納入機数は 35,541 機で、販売額は 5.58 兆ドル(2019年カタログ価格)となる。新規納入機数が最も多いのは、170-229 席クラスの 11,562機である。地域的には、北米(22%)、欧州(21%)、中国(17%)、が多く、この三者で世界の納入機数の 60%を占める。

    ターボプロップ旅客機の運航機数は、2019 年の 3,583 機から 2039 年には 5,019 機に増加する。新規納入機数は 4,078 機で、販売額は 848 億ドル(2019 年カタログ価格)となる。60-79 席クラスの新規納入機数が最も多く 1,390 機である。地域的には突出して多い地域はなく各地域であまねく求められる傾向であるが、東南アジア

    (754 機)、南アジア(640 機)で多く納入される。

    2019 実績 2039 予測 成長率 販売額(2019米億ドル)世界の経済成長率(GDP) 2.75%p.a.

    旅客需要(RPK:×109 人km) 8,486 18,664 4.0%p.a.

    ジェット旅客機運航機数 24,015 * 41,274 2.7%p.a.

    ジェット旅客機新製機納入機数および販売額 35,541 55,820

    貨物需要(RTK:×109 トンkm) 253 503 3.5%p.a.

    ジェット貨物機運航機数 2,023 * 2,896 1.8%p.a.

    ジェット貨物機新製機納入機数および販売額 846 2,603

    ジェット新製機納入機数および販売額(合計) 36,387 58,423

    ターボプロップ旅客機運航機数 3,583 * 5,019 1.7%p.a.

    ターボプロップ旅客機新製機納入機数および販売額 4,078 848

    エンジン納入基数および販売額 89,429 13,180

    (*のデータはCiriumのデータベースに拠った。)

    第 1 章は COVID-19 の影響を含まない標準モデル(第 4 章以降に示す)に基づいている。

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    航空貨物需要(RTK)は、2019 年の 253×109トン km から 2039 年には 503×109

    トン km と 2.0 倍になり、その間の年平均伸び率は 3.5%である。

    ジェット貨物機の運航機数は、2019 年の 2,023 機から 2039 年には 2,896 機に増加する。新製機需要は 846 機(この他、旅客機からの改造機は 1,571 機)で、販売額は 2,603 億ドル(2019 年カタログ価格)である。新製機需要は大型機が 450 機、中型広胴機が 396 機である。

    世界のエンジン需要(スペア用を含む)は、89,429 基、1.32 兆ドル(2019 年市場価格)である。その内、ジェットエンジンが 80,453 基、販売額 1.30 兆ドル、ターボプロップエンジンが 8,976 基、販売額 187 億ドルである。

    世界

    新製機需要

    経済(GDP) 2.75% 40,465旅客需要(RPK) 4.0% 販売額貨物需要(RTK) 3.5% 2019US$億

    運航機数 2.6% 59,270

    伸び率

    北米

    新製機需要

    経済(GDP) 1.9% 8,495旅客需要(RPK) 3.1% 販売額貨物需要(RTK) 2.6% 2019US$億

    運航機数 1.0% 11,455

    伸び率

    欧州新製機需要

    経済(GDP) 1.5% 8,188旅客需要(RPK) 4.0% 販売額貨物需要(RTK) 3.0% 2019US$億

    運航機数 2.6% 12,442

    伸び率

    アジア/太平洋新製機需要

    経済(GDP) 3.9% 16,115旅客需要(RPK) 4.8% 販売額貨物需要(RTK) 3.9% 2019US$億

    運航機数 4.0% 23,618

    伸び率

    中南米新製機需要

    経済(GDP) 2.8% 2,405旅客需要(RPK) 3.0% 販売額貨物需要(RTK) 2.0% 2019US$億

    運航機数 1.9% 2,535

    伸び率

    中東新製機需要

    経済(GDP) 2.9% 2,352旅客需要(RPK) 4.1% 販売額貨物需要(RTK) 4.6% 2019US$億

    運航機数 3.4% 5,733

    伸び率

    CIS新製機需要

    経済(GDP) 2.1% 15,390旅客需要(RPK) 2.8% 販売額貨物需要(RTK) 3.7% 2019US$億

    運航機数 1.4% 1,926

    伸び率

    アフリカ新製機需要

    経済(GDP) 3.6% 1,371旅客需要(RPK) 3.4% 販売額貨物需要(RTK) 3.8% 2019US$億

    運航機数 1.1% 1,561

    伸び率

    *運航機数伸び率、新製機需要および販売額は、ターボプロップ旅客機、ジェット旅客機およびジェット貨物機の合計である。

    (文中の用語や略語については P.143 以降に示した)

    COVID-19 に対する JADC の需要予測について

    世界のエアラインはこれまでにもテロや疾病等による混乱を経験しており、その都

    度、原因の除去から数年の内に輸送需要は混乱前の長期的な成長予測の曲線に収束す

    るように確実に回復してきた。(関連:3.3 項) 本予測は、過去 20 年間の実績データの分析に基づいて今後 20 年間の予測を行った

    長期予測であり、疫禍の混乱を脱した後の世界のエアラインと輸送需要が回復し収束

    してゆく先を考える際の「標準モデル」になり得るものと考えている。 本予測ではこの標準モデルを基準として with / post COVID-19 における輸送需

    要、機材需要への影響も推定した。(関連:3.4 項)

  • 市場予測 2020-2039

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    2. はじめに 航空機の開発は、計画段階から初号機の納入まで 10 年近い期間と数千億円を超える

    開発費を要するとともに、投資の回収にも長期間を必要とする。開発された航空機は、

    その後、いくつかの派生型の開発を経て、数十年間にわたり生産が続けられる。また、

    納入された機体は、早いものでも 10 数年、長いものでは 40 年以上の長きにわたり運航に供される息の長い製品である。このため、航空機産業は事業リスクの高い産業と言

    われている。 航空機を購入し運航するエアラインは、規制緩和や民営化によって LCC などの新規

    参入エアラインとの競争、燃油費の高騰によるコストの増大といった、その時々の経済

    状況や社会状況の影

    響を大きく受ける。

    航空機は 1 機あたり数十億円から数百億

    円と高価であり、そ

    の航空機を多数必要

    とするエアラインは

    装置産業と言えるが、

    運賃は低下の一途で

    あり今や航空券はコ

    モディティと言われ

    るまでになっている。 このような事業環

    境にあって事業リスクや市場リスクを最小化するためには、航空機産業やエアラインを

    取り巻く経済環境、社会環境等の動向を継続的に観察し分析することが重要である。 JADC では、航空機材、航空輸送、エアライン等の世界の民間航空機市場に関する情

    報の収集、調査及び分析を継続的に行い、我が国の航空機産業や関係方面が長期にわた

    る製品戦略の立案や事業計画を作成する際の資とするために、1970 年代後半から航空輸送需要および機材需要についての長期需要予測を作成している。

    この長期需要予測である「民間航空機に関する市場予測」は、今版では 2020 年から2039 年までの 20 年間について、航空旅客輸送および航空貨物輸送で使用される機材として 15 席以上のターボプロップ旅客機、20 席以上のジェット旅客機、ジェット貨物機および航空用エンジンの需要予測結果を示しており、広く一般に公開されている。

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    Intentionally Blank

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    3.航空業界の概況

    3.1 エアラインビジネスの概況

    世界の経済状況

    世界銀行の「世界経済見通し」(2020 年 1 月)によれば、2019 年の世界の実質 GDP 成長率は 2.4%であったと見られ、2008 年の世界金融危機以来最も低い水準となった。

    米中の通商摩擦によって両国間の関税が引き上げられるなどした結果、世界貿易のかな

    りの部分が保護主義的措置の対象となった。世界の貿易と投資が引き続き低迷する中で

    2019 年は先進国の 90%近くと新興市場および発展途上国(EMDE)の 60%がさまざまな程度での経済の減速を経験したとされる。

    しかし 2019 年秋以降、米中の二国間交渉によってフェーズ 1 の合意に至り、貿易の緊張が幾らか緩和され、2020 年の実質 GDP 成長率は 2.5%となる見通しである。貿易摩擦の緩和により貿易や投資が活発化すればさらに改善されると期待されるが、依然として貿易摩

    擦の再燃や貿易政策の不確実性、さらに主要国における景気後退(特にユーロ圏)や EMDEでの金融の混乱などのリスクが存在し、優勢であると考えられている。

    先進国の成長予測は、貿易と製造業が以前の予想よりも著しく弱い結果として、引き続

    き下方修正された。特にユーロ圏での投資と輸出が弱いとされている。先進国経済の実質

    GDP 成長率は、2018 年以前の数年間は 2.2%以上あったが 2019 年は 1.6%となり、2020年以降数年間は 1.4%~1.5%程度で推移すると見られている。

    EMDE の実質 GDP 成長率は、2018 年以前は 4.3%以上あったが 2019 年は 3.5%に低下した。2020 年は 4.1%に回復すると予測され、それ以降は徐々に回復して 2022 年に 4.4%で安定化すると見られている。世界的に軟調な需要等によって EMDE の回復ペースは抑制されたものであるが、目前の短期的な回復は EMDE の中の少数の大規模国の持ち直しによって促進されると見込まれている。

    (本稿は原則として COVID-19 の影響が顕在化する前の数値に拠っている。)

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    エアラインビジネスの状況

    このような状況で、IATA によれば 2019 年の世界の航空輸送需要は、旅客輸送量(RPK)

    が前年比 4.2%増、営業利益は前年比 7.4%減と見積もられている。同じく 2019 年の決算状況をみると、世界のエアラインの総売上高は 8,380 億ドルで前年比 3.2%増となったものの、純利益は 259 億ドルで昨年比 5.1%減となったと見られる。この中で、旅客売上は昨年比1.1%増加したが貨物売上が 8.1%減少して両者の和では 0.45%の減少となり、加えて燃油費が 4.7%増加*、人件費も 3.5%増加したとみられている。

    (*:燃料消費量は 1.1%増加、燃料単価は 11%低下。燃料ヘッジの影響とみられる。) 売上高に対する純利益率を地域別に見ると、北米のエアラインが 6.4%と最も高く、次い

    で欧州が 3.0%、アジア太平洋が 1.9%となっている。

    日本のエアラインについては、2019 年の航空旅客数が前年比で国内線が 2.8%増、国際線が 2.5%増となった。出国日本人数は前年比 5.9%増、訪日外客数は 2.2%増だった。

    -2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

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    0

    20

    40

    60

    80

    100

    1999 2004 2009 2014 2019

    営業利益

    RPK

    営業利益

    (×10 9 ドル)

    RPK( ×10 12 人km)航空旅客輸送量(RPK)と営業利益の推移

    Source : IATA

    -4

    -2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    アフリカ アジア/太平洋 中東 中南米 北米 欧州

    売上

    高純

    利益

    率(

    %)

    エアラインの売上高純利益率

    2018

    2019

    Source: IATA December 2019

  • 市場予測 2020-2039

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    3.2 機材の受注・納入状況

    機材の受注状況

    2019 年末時点で、世界のエアライン全体では 24,015 機のジェット旅客機、3,583 機のターボプロップ旅客機及び 2,023 機のジェット貨物機が運航されていた。

    ジェット旅客機*1及びジェット貨物機等派生型の年間受注機数*2をみると、2019 年には1,572 機で前年比 495 機の大幅減少となった。航空輸送の需要増加に対応するための機材確保や CO2 等の環境規制に対応する新型機への更新などのための需要が当然存在するにも関わらず、ボーイング社の受注減(2018 年比 682 機減、この内 737MAX が 620 機)が 2019年の受注状況を決定づけた。2018 年 10 月と 2019 年 3 月の二度にわたる墜落事故の後に運航停止となったまま既に 1 年以上が経過しており、引き続き 2020 年の実績にも大きく影響するとみられる。

    受注数の内訳は広胴機が 393 機(2019 年受注の 25%、2018 年比 130 機増)、細胴機が996 機(63%、506 機減)、リージョナルジェットが 183 機(12%、137 機減)であった。 広胴機のうち、ジェット貨物機等派生型*3の 2019 年の受注数は 49 機で前年比 34 機減、また、主要なターボプロップ旅客機の 2019 年の受注数は 73 機であった。

    (*1:コンビ機及びクイックチェンジ機を含む) (*2:名目受注機数からキャンセル分を除いた実質受注機数) (*3:ジェット貨物機、VIP 機、空中給油機などを含む)

    352589

    314 251 246 271

    939 9011102

    552240

    494809

    12701442 1404

    857 775986 925

    243

    327

    393

    341 347 355 385

    754701

    1110

    725

    407

    576

    1487822

    14571798

    1170

    949

    1217

    822

    1146163

    200

    217

    27 6673

    49 102

    114

    38

    48

    15

    8

    74

    36

    47

    27

    14

    10

    39

    10

    92

    323

    41

    87 148124

    79 213

    85

    44

    21

    54

    127

    38

    232

    78

    180

    45

    86

    209

    62

    63

    23

    13

    051 3

    342

    51

    22

    2

    75

    224

    256

    78

    18

    132

    65

    31

    72

    111

    0

    500

    1000

    1500

    2000

    2500

    3000

    3500

    4000

    1999 2004 2009 2014 2019

    機数ジェット機*1の受注機数*2の変遷

    その他

    エンブラエル

    ボンバルディア

    エアバス

    ボーイング

    3245

    2460

    3345

    2330

    18482067

    997

    1528

    926 712 866 856

    1855 1919

    2462

    1381

    718

    1214

    2655

    Source:Airbus, Boeing, Bombardier, Embraer, Cirium, JADC(一部推定を含む)

    2366

    *1) 旅客機(コンビ及びQCを含む)および貨物機等派生型*2) ネットオーダーでありキャンセル分は発注年から減じた

    1572

  • 市場予測 2020-2039

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    機材の納入状況

    2019 年のジェット機の年間納入機数は 1,377 機となり、前年の 1,764 機から 387 機減少

    した。エアバス社は 50 機増加したが、ボーイング社は 426 機減少した。 ボーイング社の減少は 2019 年 3 月以降 737MAX の納入が停止されていることが原因で

    あり、737系機種は 3月までに納入された 737MAX(57機)を含む 127機に停まった。737NGの生産と納入は 737MAX の影響を受けずに継続されているが、本来生産の終末期にあり、2019 年納入実績は 70 機と少ない。この間エアバス社は A320 系機種を 642 機納入した。

    ジェット貨物機(新造されたワイドボディ貨物機:機数はジェット機の内数)は、2019年に 52 機が納入された。また、2019 年の主要なターボプロップ旅客機の納入機数は 85 機であった。

    620492 527

    381281 285 290

    398 441 375481 462 477

    601 648723 762 748 763

    806

    380

    294

    311325

    303

    305 320378

    434453

    483

    498 510 534

    588626

    629635 695

    735

    813

    863

    82

    99147

    185

    222 175 99

    7960

    61

    5934

    47

    14

    26

    5944

    46 26

    20

    26

    97157

    154

    120

    88 135 121

    103133 162

    12297

    108

    106

    90

    92101

    108101

    90

    89

    38 48

    39

    8 11 8 4

    1 0 0

    0 0

    5

    8

    15

    28 22

    21 26

    35

    19

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    1400

    1600

    1800

    2000

    1999 2004 2009 2014 2019

    機数

    その他

    エンブラエル

    ボンバルディア

    エアバス

    ボーイング

    1531

    13171405

    1618 1651

    1131 1107 1192

    997 907 923 892 10151087 1081

    1160 1103 1171

    Source : Airbus, Boeing, Bombardier, Embraer, Cirium

    1564

    ジェット機*の納入機数の変遷

    *:旅客機(コンビとQCを含む) および貨物機等派生型

    1377

    1764

  • 市場予測 2020-2039

    9

    機材の受注残の状況

    0

    1,000

    2,000

    3,000

    4,000

    5,000

    6,000

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    2012

    2013

    2014

    2015

    2016

    2017

    2018

    2019

    (機) 地域別受注残機数欧州北⽶

    アジア太平洋

    中東

    その他

    0

    4,000

    8,000

    12,000

    16,000

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    2012

    2013

    2014

    2015

    2016

    2017

    2018

    2019

    (機) 地域別受注残機数(積上)

    その他

    中東

    アジア太平洋

    北⽶

    欧州

    0%

    20%

    40%

    60%

    80%

    100%

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    2012

    2013

    2014

    2015

    2016

    2017

    2018

    2019

    地域別受注残機数(シェア)その他

    中東

    アジア太平洋

    北⽶

    欧州

    ( 上図で 2007 年以前の中東のデータは「その他」に含まれている )

    アジア太平洋

    北米

    その他

    中東

    欧州

  • 市場予測 2020-2039

    10

    旅客機と貨物機等派生型を合わせたジェット機の 2019 年末の受注残は 14,525 機であった。原油(燃料)価格の高騰が始まった 2005 年から燃費に優れた新製機への発注が増加して生産能力を超えた結果受注残が積み上がり始め、受注バブルとも言われた 2013~2014年まで年を追って積みあがったが、原油価格が急落した 2015 年以降は受注機数も減少し、納入機数とほぼ拮抗して受注残機数は安定化した状態にある。現在の受注残 14,525 機を2015~2018 年の平均納入機数(1,649 機/年)で除すると 8.8 年となる。同様に増加開始前の 2004 年末における受注残は 7,783 機であり、2001 年の 4 社の納入機数(1,153 機)で除すると 6.8 年であった。 地域別にみれば、2000 年代に入って以降アジア太平洋地域の受注残がコンスタントに増

    えた。その結果、2000 年代初頭には北米の受注残の減少と合わせて地域別シェアの変動があったが、2008 年以降はシェアの構造が安定して目立った変化はない。

    2019 年末の主要なターボプロップ旅客機の受注残は 340 機であった。 機材生産の状況

    エアバス社、ボーイング社とも細胴機の A320 系機種や 737 系機種の受注分に応えるために 2019 年には月産 50~60 機の生産計画を立てていた。しかし、737MAX は 2019 年 3月の 2 度目の墜落事故以降、全世界で飛行停止となり納入できない状況が続いている。ボーイング社ではサプライチェーンを維持するため月産 40機で年内一杯生産を続けたがこれも 12 月末で終了し、約 400 機が完成したまま納入できず、未改修のままで滞留した状態にある。

    その後 2020 年に入って世界的に広がった COVID-19 禍によって航空輸送需要が急減し、エアラインは大打撃を受けて存続にかかわる資金難に陥っている。そのため、受領予定で

    あった機材の納入延期が多数発生しているほか、メーカーでも機材の生産計画の見直しを

    余儀なくされ各機種の減産が発表されている。

    公称⽉産機数2018 2019 2020 2021 2022

    Q1 Q2 Q3 Q4 納⼊実績 Q1 Q2 Q3 Q4納⼊実績 Q1 Q2 Q3 Q4

    年間計画 Q1 Q2 Q3 Q4

    年間計画 Q1 Q2 Q3 Q4

    年間計画

    737 580 52 127 0777 48 45787 145 158 12

    A220 33 48A320 417 430A321 201 206A330 49 53A350 93 112 9〜10 6

    524.514 14

    4.540

    47

    3平均31機/⽉

    60

    6⽉⽣産再開

    40

    10 10 8

    40

    5

    14

    2年間30以下

  • 市場予測 2020-2039

    11

    737MAX 生産再開 : 当初は月産 52 機。運航と納入の停止は 2020 年 3 月。4 月以降、出荷できない状態でサプライチェーンの維持のために月産 40機に低減して生産を続行。2020 年 1 月以来生産を停止中。2020 年下期の生産再開を計画し、2021 年は年間平均で 31 機/月の生産を予定している。 墜落原因への対策を確定させ型式証明を回復して納入可能とした後、生産ラインか

    ら新製機を送り出す傍らで、既に滞留している約 400 機に所要の改修を施して納入することになる。生産レートの原状回復までには約 2 年を要すると見られている。

    納入再開の見通しが定かでない中でも、当初約 4,500 機に上った 737MAX の確定発注分にはこれまで解約等の動きは目立たなかったが、4 月以降解約が出始めている。機材発注時の契約には納入遅延に関する項目もあり、多くは納入が 1 年程度遅れれば発注者は違約金などペナルティーを負うことなく前納金の返還を受けてその契約を離れ

    ることができるとされる。 787 減産 : 現在のボーイング社の主力製品である 787 については、COVID-19 以前か

    ら米中貿易摩擦を理由として減産が予定されていたが、COVID-19 対応のために減産幅が拡大された。 旧:月産 14(現在)→12(2020 年後半)→10(2021~2022 年) 新:月産 12(現在)→10(2020 年後半)→10~8(2021 年)→7(2022 年)

    A320 系 : エアバス A320 ファミリーの生産は月産 60 機を目指していたが 2020 年以降40 機に落とすことを決めた。

    A330 : A330neo は当初 2020 年内に 40 機の生産を予定(月産 3.3 機相当)していたが、2020 年内に 30 機以下を生産し 2021 年は月産 2 機に落とすことを決めた。

    A350 : A350XWB は当初月産 9~10 機の生産を予定していたが月産 6 機に落とすことを決めた。

  • 市場予測 2020-2039

    12

    3.3 COVID-19 禍の終息まで

    世界のエアラインはこれまでもテロや疾病等による混乱を経験したが、原因の除去の後、

    輸送需要は数年の内に混乱前の成長曲線に収束するように確実に回復してきた。ここでは

    実績データの中から読み取れる事柄を中心に COVID-19 克服までの道程と影響を推定する。

    現状

    医薬業界から示されているように、ワクチンの開発までには約 1 年の日時を要するとみられ、2020 年 3 月から起算すればまだ 9~10 か月程度は耐えねばならない。感染拡大を阻止するため各国とも人の移動は極力抑制されており、国際線を中心とする輸送需要は「蒸

    発」し、エアラインの収益も大部分が消失している。この様な状況でもエアラインの手許

    からは毎月多額の資金が流出することが止められず、エアラインの手元流動性は多い場合

    でも 3 か月程度しか持たないと見られ、運転資金の確保が喫緊の課題となっている。 そうした中で、政府からの支援を最後の支えとして期待しながら条件が折り合わずに破綻

    する例も出ており、金融機関からの融資枠の確保、保有機材の売却による現金化、一時帰

    休など手段を尽くす中で、受領予定の機材の納入延期による機材調達費用の支出先送りも

    当然行われる状況にある。 費用の構造

    Airlines for America(A4A)が示す2019Q4の米国エアラインの営業支出の内訳の中で直接運航に関わるものとしては、燃料費(18%)、輸送関連費用(13%)、着陸料(2%)がある。運航しなければこれらの合計 33%は不要とも考えられるが、なお 67%は残り*1、エアラインは一時帰休や採用抑制でこの領域にも踏み込もうとしている状況にある。

    (*1:このうちレイバーコストが 33%を占める) 機材の保有にかかるコスト(減価償却費、リース費など)は 7%となっているが、このほ

    かに発注済み機材の納入が行われれば受領の際に 1 機あたり数十億円規模*2 の資金がエアラインから流出することになる。 (*2:小型細胴機の目安として)

    需要と発注の回復

    この様に現在は発注済み新製機の納入も延期されるものが多く、メーカーもこれに対応

    して減産を決心している状況にある。 新機材の需要は、輸送市場・需要の成長による旅客機の所要機数の増加と、エアライン

    の保有機材とその退役の進行による減勢とのバランスから導かれる。しかし現在は

    COVID-19 禍によって輸送需要が消失して大部分の路線は運休となり、エアラインの手許では大多数の機材が地上にある。大幅な余剰機材を抱えた状態では新機材の需要は発生し

    ない。その後、新機材の需要の発生は輸送需要 RPK の回復を待ってからになるが、発注はさらにエアラインの財務事情が再建されてからになる。

  • 市場予測 2020-2039

    13

    過去の疫禍の例から

    過去 20 年間ほどの間に我々は SARS(2003 年)と新型インフルエンザ(Pandemic (H1N1) 2009:2009 年)という世界規模の感染症禍を 2 度にわたって経験した。その際の記録をグラフに示し振り返ると以下の様である。

    SARS(2003 年):

    名称:重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome) 症状:重症な非定型性肺炎 ヒト−ヒトの接触が密な場合に、集団発生の可能性が高い 原因:新型コロナウイルス(SARS-CoV) 発生:2002 年 11 月 16 日(中国広東省) 終息:2003 年 7 月 5 日に WHO が終息を宣言 範囲:32 の地域と国にわたる 8,096 の症例(死者 774 人)

    (NIID 国立感染症研究所の記事から抜粋) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/414-sars-intro.html

    SARS 禍は 911 事件の傷が癒えぬうちに発生し、同事件からの RPK の回復過程の最終部

    分を長引かせる形になった。 SARS 禍自体は 2003 年夏に終息が宣言された。その後の RPK の回復過程を各年の RPK

    期待値*1と比較すると、2003 年は 87%まで落ち込んでいたが 2004 年に目立った初期回復

    -6

    -4

    -2

    0

    2

    4

    6

    8

    -60

    -40

    -20

    0

    20

    40

    60

    80

    1996 2001 2006 2011 2016

    Operating ProfitNet ProfitRPKOrder

    輸送需要と利益、発注機数Profit(×10 9 US$ )

    PPK ( ×10 12 )Orders ( ×10 3 )

    Source : IATA, ICAO, Airbus, Boeing, Bomberdier, Embraer

    燃料価格高騰期

    European Debt Crisis911        SARS Financial Crisis           

    2009H1N1

    発注回復

    (2005年)RPK初期回復(2004年)

    発注回復

    (2011年)RPK初期回復(2010年)

    Pandemic 2009H1N1 後のSARS 後の

  • 市場予測 2020-2039

    14

    が行われて期待値の 95%となり、さらに(燃料価格の高騰期に入っていたが)2007 年まで漸近的に回復が続き 98.7%まで回復した*2。

    この回復過程でのエアライン業界の(少ないながら)営業黒字化は 2004 年であり、2006年には確立されて純利益も黒字化された。この間に発注は 2005 年に*3 一挙に回復し 911事件前の水準に復帰した。

    (*1:1999 年までの RPK の成長曲線を 1999 年から 2019 年までの平均成長率で外挿したもの。)

    (*2:2008 年以降は世界金融危機による混乱の影響を受けて再度損なわれた。) (*3:発注の回復は黒字化の後になるのが自然と考えるが、2005 年には原油価格の

    高騰開始が顕かになっており、営業力や資金力に余裕のあったエアラインか

    ら燃費に優れる新型機の購入必要性に早めに背中を押された可能性はある。) H1N1(2009 年):

    名称:Pandemic (H1N1) 2009 症状:咽頭痛、急激な高熱、咳、鼻水、倦怠感などで、季節性インフルエンザと区別

    できない。メキシコの報告での致死率は 0.4~0.5%ほどで、季節性インフルエンザの 0.05%より高く、アジア型インフルエンザと同程度。死亡例の半数以上は、喘息、糖尿病、心臓病、免疫機能低下状態などの基礎疾患がある。

    原因:新型インフルエンザウィルス(influenza A (H1N1)pdm:AH1pdm) 発生:2009 年 4 月 12 日(メキシコから報告) 終息:日本では 2010 年 3 月に一旦終息した。

    (NIID 国立感染症研究所の記事から抜粋) https://idsc.niid.go.jp/iasr/30/356/tpc356-j.html ほか

    H1N1 インフルエンザ禍は 2008 年の世界金融危機による混乱からの回復過程で発生し、

    その影響は金融危機によるものと、燃料価格の高騰によるものと重畳している。 H1N1 禍自体は 2010 年春に終息したが、その後の RPK の回復過程を各年の RPK 期待値

    と比較すると、2009 年が底となって 87%まで落ち込んでいたが 2010 年から 2011 年にかけて初期回復が行われ、期待値に対してそれぞれ 90.6%、92.4%まで回復した。この時期は燃料価格の高騰が常態化しており RPK の回復もその負担を負いながらのものであったが、2014 年まで漸近的に回復が続き 95.7%まで回復した。

    この回復過程でのエアライン業界の営業黒字回復は 2010 年であり、発注は 2010 年から回復を開始し 2011 年に H1N1 および金融危機前の水準に復帰した。

  • 市場予測 2020-2039

    15

    COVID-19 禍からの回復 これら 2 件の例から回復過程のパターンを読み取れば、以下の様に考えられる。

    ・疫禍の終息後、速やかに RPK の回復が始まり翌年の末までには初期回復が完了する。 SARS の際は期待値の 95%まで回復した。

    ・初期回復後さらに 3 年程度漸近的な回復が続く。SARS の際は期待値の 99%まで回復した。

    ・エアライン業界の営業利益は RPK の初期回復によって黒字化し、1 年遅れ程度で純利益の黒字化と新機材発注の回復に進む。

    これらを援用しながら COVID-19 禍からの回復過程を推測して次の様に考える。

    ・ワクチンの開発は各国で急がれているが、開発が完了しても生産と普及、接種による免

    疫の獲得には時間を要する。ワクチンの実用化を 2020 年内としても、社会的規模での免疫の確立には先進国など早い地域でも 2021 年内一杯を要すると見込む。免疫の確立状況を見ながら各国が防疫管理を緩和することで国際線・域内線の輸送需要が回復し始める。

    国内線の回復はこれよりも早い。 ・ワクチンの普及開始を受けて特に国際線の RPK は 2021 年から回復を開始するが、ワクチンの接種率と関連し、初期回復の完成は 2022 年と見込む。エアラインの資金力が回復することで発注済み機材の納入が本格的に再開されるのはこの頃になる。

    ・RPK の漸近的最終的な回復までにはさらに 3 年程度を見込み、2025 年頃になる。 ・新機材発注の回復は RPK の初期回復完成(黒字化)の翌年として、2023 年と見込む。

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    1990

    1992

    1994

    1996

    1998

    2000

    2002

    2004

    2006

    2008

    2010

    2012

    2014

    2016

    2018

    2020

    2022

    2024

    2026

    2028

    2030

    2032

    2034

    2036

    2038

    RPK(×10 9) COVID‐19によるRPKへの影響(イメージ)

    RPK(実績値)RPK(予測値:標準モデル)RPK(期待値)COVIDによる⽋損イメージ

    初期回復完了 漸近回復完了

  • 市場予測 2020-2039

    16

    3.4 COVID-19 禍の終息後 COVID-19 に対する予防・治療が可能になることで世界もエアライン業界も本格的に回

    復することになるが、COVID-19 禍は、その防疫のために人の往来ひいては産業・経済の動きを止めざるを得なかったことから、経済活動にも人々の暮らしにも、大恐慌以来とい

    われる大きな損失を与えた。GDP や RPK にもその影響は残るとみられていることから、ここでは現在得られる情報からその影響規模を概算することを試みる。 GDP~RPK への影響

    COVID-19 による世界経済(GDP)への影響の評価は現在も事象が進行する中で確定する状況にはないが、いくつかの機関から発行された報告書*から GDP の成長予想を抽出したものを下に示す。

    2022 年以降はほぼ安定して、COVID-19 以前に予想されていた成長率に復すると仮定すれば、GDP は COVID-19 以前からの予測(標準モデル)に対して約 5%低い線を描くと見込まれる。 (*:出典 OECD:OECD Economy Outlook June 2020 (2020-6/10)

    World Bank:Global Economic Prospects June 2020 (2020-6/8) IMF:World Economic Outlook, April 2020 (2020-4/14))

    上記より COVID-19 後の GDP 予測の標準モデルに対する低下率を 5%とし、併せて RPKのGDP弾力性を1.6~2.0*とすることで、RPK予測の標準モデルに対する低下率は8~10%と見込まれる。(次頁図中の緑の線) (*:1.6 は標準モデルによる予測結果から 2020 年代中頃の値として選んだもの。2.0 は過去の RPK、GDP、Yield の実績値の分析結果から代表的な値として選んだもの。)

    0.80

    0.85

    0.90

    0.95

    1.00

    1.05

    1.10

    1.15

    2019 2020 2021 2022 2023

    各機関によるGDP予測 (2019年⽐)

    GDP_IHS (2.75%ave.) GDP_IMF WEO 20200414

    GDP_OECD 0610 (single) GDP_WB GEP 0608

    各機関の報告書による

    JADCによる外挿

    約 5%低い

    基準

  • 市場予測 2020-2039

    17

    RPK は漸近回復完了の時点で標準モデルに対して 8~10%程度低下していると見込み、その後は標準モデルと同等の年 4.0%で成長するものとすればこの低下分は 2~2.5 年間の成長分に相当する。これより、以後の RPK は標準モデルに対して略 2~3 年遅れで推移する形になると見ることもできる。

    納入機数の推定

    SRAS 等の過去の例から初期回復が完了する時点がエアライン業界の営業黒字(購買資金力)が回復して既発注の機材の納入が再開される時点になると考えると、2020 年納入予定分が 2022 年以降に納入される形になり、「2 年遅れ」となる。これに基づいて標準モデルの結果から予測期間内の納入機数の変化を推測し表に示す。

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    1990

    1992

    1994

    1996

    1998

    2000

    2002

    2004

    2006

    2008

    2010

    2012

    2014

    2016

    2018

    2020

    2022

    2024

    2026

    2028

    2030

    2032

    2034

    2036

    2038

    RPK(×10 9) COVID‐19によるRPKへの影響(イメージ)

    RPK(実績値)RPK(予測値:標準モデル)RPKpostCOVID(‐10%推定線)COVIDによる⽋損イメージ

    漸近回復完了

    2〜3年遅れに相当(右へシフト)

    初期回復完了

    標準モデル 1年遅れ 2年遅れ 3年遅れNJ 24,989 機

    標準モデル WJ 7,808 機合計 32,797 機

    NJ 23,890 機1年遅れ WJ 7,354 機

    合計 31,244 機NJ 23,890 機 NJ 22,776 機

    2年遅れ WJ 6,898 機 WJ 6,898 機合計 30,788 機 合計 29,674 機

    NJ 22,776 機 NJ 21,663 機3年遅れ WJ 6,438 機 WJ 6,438 機

    合計 29,214 機 合計 28,101 機

    予測期間中の納⼊機数(2020-2039)NJ (細胴機)

    WJ(広胴機)

    COVID-19 後の RPK の回復や納入機数についての JADC の予測は、

    編集時点で入手可能であった情報に基づいて考察したものである。

    JADC では、今後、GDP 予測の改訂値などの新しい入力用情報を得て、

    次年度の更新版を作成することを予定している。

  • 市場予測 2020-2039

    18

    SARS による死者は全世界で 774 人であったが COVID-19 では既に 50 万人*を超えており、遥かに激甚な疫禍となった。それだけに、旅客輸送需要の回復を根本的に支えるのは

    ワクチンの開発普及による集団免疫の確立であると考えるが、実現までに 1~2 年の時間を要することから、各国ごとに状況を判断して国内線については国際線や域内線よりも先行

    して運航を回復させることも考えられる。その場合は広胴機よりも細胴機の納入再開がや

    や先行することも考えられる。ただし、世界の RPK の内の国内線分は 1/3 程度であって相対的に小さいことから、国際線が浮揚するまではエアライン業界の資金力の回復は遅いも

    のと考えられる。 (*:2020-7/6 https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/covid)

    その他の要素

    COVID-19 に関連して航空機材需要に影響すると考えられる要素を表に示す。

    本予測においては現在定量的に予測しうる範囲で最も確かと考えられる結果を示したが、

    こうした要素の実現の度合いによっては今後のRPKの長期的な回復水準に影響が生じることも考えられる。

    要素 注⽬点

    ⼤前提 ワクチンと治療法の確⽴と普及 確⽴の時期、普及の速度

    社会の変化 GDPの縮⼩と回復 回復の時期と程度 (RPKとGDPの関係は強い)  防疫措置(⼊国規制/移動規制) 規制終了の時期、対象  各国間関係の変化(COVIDを引き⾦に) サプライチェーンの再編成 → ⼈荷の流れの変化

    旅客の意識変化

    ⾮対⾯/遠隔メディアの活⽤(新モード)航空輸送の⽬的の⼀部を代替 → 輸送需要減少? TV会議 (代⽤会議:遠路 or 急ぐ時ほど有効) 仮想現実 (代⽤観光:安く⼿軽に)

    衛⽣意識個⼈デバイス、座席配置、機内設備、空港施設科学的・医学的根拠のある感染防⽌策の周知

    エアライン ⽣き残り策   (運転資⾦の確保)借り⼊れ⾦の増加、政府⽀援 → 再開後の負債重く、新規発注を抑制?

            (⽀出の削減)発注済機材のキャンセル、⼀時帰休/解雇 → 再開後の営業規模を制約、回復の遅れ?

    環境対応 CO2排出規制の開始 燃料消費の抑制、旧型機の更新需要のドライバー

    with/post COVID-19 でエアラインや航空機材需要に影響する要素

  • 市場予測 2020-2039

    19

    4. 旅客機の需要予測

    第 4 章では標準モデルによる旅客機の機数予測の結果について示す。 機数予測の基盤となる輸送需要(RPK)の予測は第 5 章で示す。

    4.1 機材運用の状況

    4.1.1 所得水準と運航機数

    1998 年には世界全体で 15,820 機の旅客機*が運航されていたが、2018 年には 26,365 機となり、20 年間で 10,545 機増加し、1.67 倍になった。

    (*:ジェット旅客機とターボプロップ旅客機の合計。旅客用途のみ。) 旅客機の運航機数は、経済規模の拡大と所得の増加による移動や旅行の需要の増加に対

    応して、その数を増やしている。人口百万人あたりの運航機数と一人あたりGDPの間には、国土面積や地上交通網の整備の度合等によって差はあるものの、正の相関がある。

    また、一人あたり GDP が 10,000 ドル未満の国や地域では所得の増加に伴って旅行需要が急速に増加することが知られていることから、これまで成長顕著であった中国のほかに

    も、今後は東南アジアや南アジアなどで今後航空輸送需要が高い成長率で増加し、さらに

    それら地域の人口の多さと合わせて旅客機需要の増加につながると期待される。 (AF:アフリカ、CH:中国、CI:CIS、EE:東欧、JA:日本、LA:中南米、

    ME:中東、NA:北米、NE:北東アジア、OC:オセアニア、SE:東南アジア、 SW:南アジア、WE:西欧)

    0

    1

    10

    100

    100 1,000 10,000 100,000

    ⼈⼝100万

    ⼈あたりの

    旅客機の運航機数

    GDP (real) per Capita (2015USD)

    ⼈⼝100万⼈あたりの旅客機(Jet+TP)の機数の推移(1996‐2018)

    CH

    SE

    SW

    AF

    NECI

    JA

    OC NA

    WE

    EE

    ME

    LA

    0.1

    運航中のジェット旅客機のみ。 出典:IHS, Cirium

    第 4 章以降は、COVID-19 の影響を含まない標準モデルに基づいて説明している。

  • 市場予測 2020-2039

    20

    4.1.2 路線距離区分別 ASK 分布

    エアラインが運航する旅客機は、その路線距離に適した機材が選択される。現在の定期

    運航ノンストップ路線の路線距離別 ASK 分布によれば、以下の様に運用されている。 ・ターボプロップ機は殆ど 1,000km 以下の路線で運航されピークは 400-600km である。 ・リージョナルジェット機は北米以外では主に 400-1,500km の路線で運航されるが、主

    な市場である北米では 2,000km 程度にまで伸びる。 ・細胴機は 400-4,000km の路線で運航されている。中でも 900-2,000km の路線が中心

    となり、3,500km までの路線で細胴機の ASK 全体の 90%、4,500km までの路線帯では同 98%を供給し、すべての距離帯で見れば世界の ASK 全体の 52%を供給している。

    ・広胴機は長距離から短距離の路線まで幅広く運航されているが、中でも 5,500-10,000km帯が中心で、4,500-13,000km の路線で広胴機の ASK 全体の 78%を供給している。

    4.1.3 座席区分別 ASK 分布

    路線距離区分でみた機材座席数別 ASK 分布をみると、以下の様である。 ・路線距離区分 1-1,000km では、ターボプロップ機およびリージョナルジェット機によ

    る 40-99 席の小さな山と細胴機の 120-169 席(A320、737-700/-800 等)の大きな山があり、主力は 120-169 席である。

    ・1,000-2,000km でも 120-169 席が最も多いが、他に 170-229 席の細胴機(A321、

  • 市場予測 2020-2039

    21

    737-900ER、757 等)や 230-399 席の広胴機も運航されている。 ・ 2,000-4,500kmでも主力は120-169席で、170-229席の細胴機と230-399席(A330、

    767/787 等)の広胴機が運航されている。この距離帯では、路線長が長くなることもあり、・1,000-2,000km に比べて 170-229 席の細胴機と 230-399 席の広胴機といった比較的大型の機材が増えている。

    ・4,500km 以上では、310-399 席(A340、777 等)が最多で、以下、230-309 席(A330、787 等)、500-800 席(A380)、400-499 席(747)と続く。近年の 747 の減少によって 400-499 席帯が縮小している。

    4.1.4 平均座席数の増加 (機材の多席化、大型化)

    世界の上位 50 空港の離発着回数と利用旅客の関係を 2007 年と 2019 年と比較してみると、離発着回数に大きな増減は見られないが、利用旅客数は増加している。2007 年の平均は 1 離発着あたりの乗客数は 98 人であったが、2019 年には 37%増の 134 人に増加している。この間、世界の年間ロードファクターは 76.1%から 81.9%と 5.8%増加しているが、これを考慮しても 1 機あたりの平均座席数は増加していることがわかり、エアラインが旅客数の増加に座席数の増加(高密度化)または機材の大型化で対応していることが窺える。

    旅客機 1 機あたりの平均座席数は、リージョナルジェット機の出現や長距離運航が可能な双発機の導入や小型機による多頻度運航が広く行き渡ったこともあり、2000 年代半ばまでは減少した。しかしそれ以降は、LCC の台頭(高密度充填)、空港混雑による発着枠制限(増便の困難)、エアライン合併(効率化)による重複路線の整理や便数の削減に対応して、

  • 市場予測 2020-2039

    22

    まず 2004 年頃から 2,000km 以下の路線での 1 機あたり平均座席数が増加に転じた。次いで、2005 年以降の燃油費の高騰(座席当たりコストの増大)に対処する中でロードファクターも年間平均値で 80%を超え、4 発大型機の退役も相当進行した 2012 年頃以降は2,000km を超える中距離乃至長距離路線でも一便あたりの平均座席数が増加に転じた。総じて現在は機材の多席化(高密度充填化や同一ファミリー内での大型モデルへの移行)が

    進行している状況にある。

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    0 200 400 600 800 1,000 1,200

    利用

    旅客

    数(百

    万人

    離発着回数(千回)

    世界の上位50空港の利用状況

    2007 2018

    Source :IATA WATS+  2019 & 2008

    90

    95

    100

    105

    110

    115

    120

    2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

    Inde

    x (2

    001=

    100)

    1機あたりの平均座席数の推移

    Source : OAG

    1,000-2,000km

    1,000km以下

    2,000-4,500km4,500km以上

  • 市場予測 2020-2039

    23

    4.2 機材需要予測

    4.2.1 航空旅客需要予測 (RPK:標準モデル)

    2020 年から 2039 年までの 20 年間に世界の RPK は年平均 4.0%の伸びを示し、2019 年の 8.49×1012人 km から 2039 年には約 2.2 倍の 18.7×1012人 km になる*。

    (*:項末の注記も参照方。) (RPK は第 5 章で説明する。)

    0

    4

    8

    12

    16

    20

    1999 2004 2009 2014 2019 2024 2029 2034 2039

    COVID推定標準モデル

    2.2 倍

    予 測実 績

    5.1% p.a.

    世界の航空旅客需要 (RPK) の予測航空旅客輸送量(×1012人km)

    4.0% p.a.

    2.7 倍

    0 1 2 3 4 5 6 7 8

    アフリカ

    CIS

    中南米

    中東

    北米

    (東欧)

    (西欧)

    欧州

    (日本)

    (北東アジア)

    (オセアニア)

    (南アジア)

    (東南アジア)

    (中国)

    アジア・太平洋

    2019実績2020-2039増加分

    RPK (×10 12 人km)

    地域別 航空旅客需要予測結果

    4.7%

    7.1%3.0%2.2%

    2.8%4.0%

    3.8%7.0%

    4.1%3.0%

    3.1%

    2.8%3.4%

    5.5%

    4.8%(年平均成長率)

  • 市場予測 2020-2039

    24

    地域別に見るエアラインの航空旅客需要は、北米と欧州(西欧と東欧)では市場の成熟化

    に伴い 20 年間の平均成長率は 3.1%および 4.0%であり、世界全体と同程度かよれよりも低い伸びとなる。これにより、北米エアラインの RPK は、2019 年の 1.92×1012人 km から2039 年には 3.56×1012 人 km に、欧州エアラインは、1.98×1012 人 km から 4.32×1012

    人 km に増えるが、市場シェアはそれぞれ 2019 年の 23%および 23%から 2039 年には 19%および 23%になる。

    アジア/太平洋のエアラインは、過去 20 年間に RPK ベースで年率 7.3%の旅客の伸びを経験し、この地域は世界最大の市場に成長したが、今後も中国、ASEAN 諸国およびインドが中心となって年率 4.8%の成長を続け、2019 年の 2.90×1012人 km から 2039 年には2.55 倍の 7.41×1012人 km となり、そのシェアは 34%から 40%に拡大する。

    航空旅客需要の年平均伸び率を地域別に見ると、中国エアラインは過去 20 年間の平均伸び率が 12.4%であったが最近の経済成長の減速や市場の成熟化によって今後 20 年間は4.7%に減速する。しかし依然として世界平均を超える成長率を持ち 2039 年の RPK は 3.35×1012人 km と見込まれ、2019 年の 1.33×1012人 km の 2.5 倍になる。 インドを中心とする南アジアのエアラインは年率 7.1%、東南アジアのエアラインも年率

    5.5%とそれぞれ高い成長率が期待される。両者の RPK は合わせても 2019 年には 0.92×1012で中国の 69%であるが、成長率の高さから 2039 年には 2.97×1012となり、中国の 89%にまでなる。

    地域別航空旅客輸送量シェア(RPK ベース)

    23%

    22%

    1%3%8%3%

    3%

    16%

    2%

    9%

    2%5%

    3%2019年(シェア)

    北米

    東欧

    北東アジア東南アジア

    中国

    西欧

    日本

    中東

    アフリカ

    中南米

    (23%)

    (20%)

    (34%)

    アジア/太平洋 欧州

    CIS

    (23%)

    南アジア

    オセアニア

    その他北米

    19%

    21%

    2%

    2%10%

    6%

    2%

    18%

    2%

    9%

    2%4% 3%

    2039年(シェア)

    北米

    東欧

    北東アジア東南アジア

    中国

    西欧

    日本

    中東

    アフリカ

    中南米

    (23%)

    (18%)

    (40%)

    アジア/太平洋

    欧州

    CIS

    (19%)

    南アジア

    オセアニア

    その他

    北米

  • 市場予測 2020-2039

    25

    中東のエアラインは多くの乗継客需要を取り込んで 20 年間の平均でも年 11.6%の成長率で成長してきたが、2016 年を境にして明瞭に減速している。今回の予測では年平均 4.06%の成長率を見込み、2019 年の 0.77×1012人 km から 2039 年には 1.71×1012人 km に増加し、シェアは 9%で据え置かれると見込んでいる。

    この RPK とロードファクターの予測から、今後 20 年間の世界の ASK は年平均 4.0%で

    成長し、2039 年には 2019 年の 2.2 倍にあたる 22.5×1012席 km になると見込まれる。 (注:COVID-19 後の RPK の回復や納入機数についての JADC の予測は、編集時点で入手可

    能であった情報に基づいて考察したものである。JADC では、今後、GDP 予測の改訂値などの新しい入力用情報を得て、次年度の更新版を作成することを予定している。)

    5.1

    2.7

    6.0

    3.7

    9.5

    5.0

    11.6

    3.9

    1.0

    12.4

    4.4

    6.8

    9.48.6

    4.03.1 3.0

    3.8

    7.0

    3.44.1

    3.0 2.8

    4.7

    2.2

    5.5

    7.1

    2.8

    0

    5

    10

    15

    20

    世界 北米 中南米 西欧 東欧 アフリカ 中東 オセア

    ニア

    日本 中国 北東

    アジア

    東南

    アジア

    アジア

    CIS

    2000-2019

    2020-2039

    地域別航空旅客伸び率RPK年平均伸び率 (%)

  • 市場予測 2020-2039

    26

    4.2.2 ジェット旅客機の需要予測

    減速傾向ではあるものの世界の経済の成長(実質 GDP:年平均 2.75%)によって輸送需要の増加(RPK:年平均 4.0%)が期待され、ロードファクターの上昇、機材の多席化/大型化傾向や整備作業の効率化による機材の年間飛行時間の延長などの所要機数の増加を抑制

    する要素も考慮しても、所要の ASK を賄うために必要な 2039 年の運航機数は 2019 年の24,015 機から 1.72 倍の 41,274 機に増加する。2020-2039 年の 20 年間のジェット旅客機の納入機数は 35,541 機であり、その内、18,282 機は現有機の代替需要で納入機数の 51%を占め、17,259 機は今後の航空旅客需要の増加に対応するための新規需要である。

    このうち、100 席以下のリージョナルジェット機は、2019 年末に 3,404 機が運航されて

    いたものが 2039 年には 3,080 機となり、運航機数シェアは 14.2%から 7.5%に減少する。2020-2039 年の間に 3,068 機が退役し 2,744 機が納入され、納入機シェアは 7.7%である。 現在みられるリージョナルジェット機は、80 年代前半に軍用の TF34 エンジンからの民

    需転換によって CF34 という優れたエンジンが入手可能になったことと、それによるビジネスジェット機の開発成功を経て実現した。当初は 90 年代前半に 50 席機として市場に投入され、ターボプロップ機からの代替需要、メインラインからの低需要路線の移転、さら

    に新規路線の開拓もあって受注を集め、一世を風靡するとともに 2000 年前後には 70 席級機の市場投入へと進んだ。 その後は 2001 年の米国同時多発テロ以後の航空不況や 2005 年以降の燃油費の高騰など

    の環境の中で、小型故に座席あたりコスト(CASK)の高いこのクラスの機体はより経済性に優れる 70 席級機材への移行が急がれ、さらに原型となったビジネスジェット機譲りの機

    0

    10,000

    20,000

    30,000

    40,000

    50,000

    2019 2039

    機数

    ジェット旅客機の需要予測結果

    41,274

    24,015 17,259

    18,282

    5,733

    35,541

    代替需要

    新規需要

    既存機

    49%

    51%

    納入機数

  • 市場予測 2020-2039

    27

    体構造に因る寿命の短さなどからその数を減らした。第一世代というべき CRJ100/200 やERJ 135/145等の50席以下の機体の製造は燃油費高騰が進行する中で2007年には終了し、その後は第二世代にあたるCRJ700/900やEMB170/190などの 70~100席級機材が市場に供給されている。 これらの機種はメインラインに対するフィーダーラインで多く使用されているが、その多

    くはスコープクローズの対象となってエアラインでの運航に制限が課されており、最大市

    場である北米市場では座席数は 76 席以下、最大離陸重量は 86,000lb.以下とするのが代表的な条件となっている。また、この条件があるためフィーダーラインを担当するエアライ

    ンでは十分な集客が見込めてもより経済性に優れる大型の機材への移行ができないことか

    ら、多席化・大型化の流れが堰き止められる形で 70 席級機材によるリージョナルジェット機の市場が形成されている。 燃油費が高騰して運航経済性の改善が重要な課題であった時期には多席化にむけてスコ

    ープクローズの緩和が取りざたされたこともあったが、燃油費の高騰が終息した現在では

    エアラインの経営状態も以前よりも安定しており、労使紛争の種となるスコープクローズ

    の緩和に向けた動きは聞かれなくなっている。 現在は第二世代の 70 席級機材が生産されるとともに、これまでの第一、第二世代機を支

    えた CF34 エンジンに替えて、より経済性に優れた新世代のギアードターボファンエンジンを搭載する第三世代機の開発が進められており、EMBRAER の E2 シリーズや三菱航空機の SpaceJet シリーズがこれにあたる。 なお、現在のリージョナルジェット機の供給は 70 席級以上の機材に限られている。運航

    経済性を追求して 70 席級に移行したことにも見るように、今後 50 席(以下)級の新機材が供給されるためには、50 席級ならではの事情を活かした経済性の改善策が実現されて 70席級に比肩する経済性を獲得する必要があると考えられる。しかし 50 席級の機体規模だけに当てはまる形での改善策*は当面実現の可能性は低いとみられる。 (*:燃費性能に優れた新エンジンや無人機技術を応用したワンマンオペレートなど) 今回の予測では 50 席以下のリージョナルジェット機については今後 20 年間のうちに新

    造機の供給は行われない設定を使用した。従来の予測では 50 席以下のクラスにも仮想的なリージョナルジェット機を設定して一定の需要を取らせていたが、今回はそれを行わなか

    ったため、例年の予測に比べてリージョナルジェット機の納入機数は少なくなっている。

  • 市場予測 2020-2039

    28

    100-229 席の細胴機は、2019 年末に 15,937 機が運航されていたが、2039 年には 29,171

    機となり、運航機シェアは 70.7%になる。2020-2039 年の間に 11,755 機が退役し、新たに 24,989 機が納入される。納入機シェアは 70.3%である。

    細胴機の最も小型のグループである 100-119 席級では、A220-100(CS100)の市場投入が最近の大きな話題となった。この領域にはかつては DC-9 や 737-100/200 が存在したが、両機種とも世代を重ねモデルチェンジを繰り返すうちに大型化してこの領域からはずれ、

    737-700 などの、より大型なファミリー機からの縮小短胴型はあっても運航の経済性などの観点から人気機種にはならなかった。A220 は、事実上の空白域になっていたこの領域における久々の brand-new の新型機であり、横 5 列の座席配置も、かつて横 6 列の機種が「太く短い」と言われたこのクラスの特徴に対応した選択といえる。A220 がこの空白域に最初に進入した際には米国商務省を巻き込んだ「関税 300%」騒動が惹起されたことはまだ記憶に新しいが、米国政府国際貿易委員会の裁定で関税は否定され、エアバス社の傘下に入っ

    たことや米国内で最終組み立てされることになったことなどから、一クラス上の A220-300ともども安定した事業になると期待される。100-119 席のクラスには、A220-100 とリージョナル機の拡大型である E195E2 があり、今後はこれまで 120-169 席級の機材で運航されていた旅客需要の一部を取り込むことで機数を増やすと考えられ、今後 20 年間の納入機数は 2,628 機と見込んでいる。

    3,404 3,080 2,744

    15,937 29,171 24,989

    4,674 9,023 7,808

    0%

    20%

    40%

    60%

    80%

    100%

    2019年運航機数 2039年運航機数 2020-2039年の納入機数

    シェ

    クラス別運航機数および納入機数

    リージョナルジェット機 細胴機 広胴機

  • 市場予測 2020-2039

    29

    120 席以上のクラスについては、経済性の追求や空港混雑といった問題から、A318/319

    や 737-700 よりも A320/A321 や 737-800/MAX-8 のようなやや大型の機体に人気があり、120-169 席級は特に機数が多く、170-229 席級も発注が増加している。さらに 757 の後継機あるいは 200 席クラスで大西洋横断能力のある機体を求めるエアラインもある。

    LCC は現在使用中の機材である A320 や 737 で飛行可能な4~5 時間までの短・中距離路線を主に運航しておりこれらのクラスの重要なカスタマーであるが、その市場の成熟に

    つれてより長い距離の路線への進出を模索する例も現れており、現有機より大きめでより

    長距離を飛行できる機体にも需要が広がる可能性もある。 230 席前後の領域は、かつては 757 や 767 が生産されていた領域であり、細胴機側から

    も広胴機側からもアプローチの可能性がある。広胴機に対して細胴機は CASK が低いためコストを重視するエアラインには好まれるが、単通路ゆえに座席規模が大きければ乗降に

    時間を要しすぎて限界があるとする指摘や、貨物室にコンテナを使用するうえでは胴体幅

    が必要とする指摘もあり、双通路の広胴機が有利になる可能性もある。 機数に関して今後 20 年間の需要の中心は細胴機であり、予測結果では 170-229 席機の

    納入機数が 11,562 機と最も多く、2039 年には運航機数が 12,201 機となる。従来このクラスには 120-169 席クラスから徐々に需要が移行してくると見られていたが、A321LR/XLRなどの具体的な機材が名乗りを上げ発注動向にも変動が現れたことから、最大の受注数を

    見込むに至った。一方、従来の予想で最も多かった 120-169 席機の納入機数も 10,799 機と依然多く、2039 年における運航機数では 14,230 機を見込み、引き続き最大のグループを成している。

    1,064 2

    2,340

    334 580 112

    12,534

    3,431 2,823

    639

    2,582

    755 1,697

    359 395 101 0

    2,744 2,628

    10,799

    11,562

    4,332 3,457

    19 0

    2,000

    4,000

    6,000

    8,000

    10,000

    12,000

    14,000

    16,000

    18,000

    2019 2039 2019 2039 2019 2039 2019 2039 2019 2039 2019 2039 2019 2039 2019 2039

    サイズ別 ジェット旅客機運航機数および需要予測

    残存機

    新規納入機

    2

    3,078 2,740

    14,230

    12,201

    5,087

    3,816

    120

    20-59席 60-99席 100-119席 120-169席 170-229席 230-309席 310-399席 400席以上

    広胴機細胴機リージョナル・ジェット機

    機数

    合計運航機数

    2019年末: 24,015 機 2039年末: 41,274 機 2020-2039年新規納入機数:

    35,541 機

  • 市場予測 2020-2039

    30

    また、細胴機の座席区分を50席刻みで区分して納入機数をみると、101-150席機が8,952機、151-200 席機が 14,902 機、201-230 席級が 1,950 機となる。

    230 席以上の広胴機は、2019 年末の運航機数は 4,674 機であり、2039 年には 9,023 機と

    なり、そのシェアは 19.5%から 21.9%に増加する。2020-2039 年の間に 3,459機が退役し、新たに 7,808 機が納入される。納入機数シェアは 22.0%である。

    広胴機の主要な市場は中・長距離国際線および高需要の国内幹線である。787 のような燃費が良く航続性能に優れる中型機の導入によって、747 や 777 といった大型の機材では採算がとり難かった中程度の需要の長距離路線への進出が可能となった。広胴機では 230-309 席機が最も納入機数が多く 4,332 機の納入が見込まれ、2039 年の運航機数は 5,087 機となる。310-399 席機の納入機数は 3,457 機で、2039 年の運航機数は 3,816 機となる。 広胴機の中でも 400 席以上の大型機は、最近のエアラインの中型機指向もあり受注状況は芳しくない。長期的に見れば、空港混雑による便数の制限や燃料関係費用の長期的な上

    昇への対応などから、高需要の主要都市間を結ぶ路線を中心に大型機の需要は存在すると

    の考え方もあるが、現実の受注状況に鑑みれば現在運航中の機材の更新需要が中心になる

    と考えられる。400 席以上の運航機数は、2019 年の 395 機から 2039 年には 120 機となり、A380 の生産終了(2021 年予定)の決定を承けて今後 20 年間で 19 機の納入にとどまる。

    地域別でみると、2019 年末の運航機数が最も多いのは北米で、6,697 機が運航されている。2039 年には 8,470 機に増加して、僅差で欧州に続いて第二位になる。地域別運航機シェアは 28%から 21%に減少するが、この間に 7,664 機が納入され、世界の納入機数の内の22%を占める第一位の市場である。

    欧州の運航機数は 2019 年末の 4,931 機から 2039 年には 8,628 機に増加し、そのシェアは 20.5%から 20.9%になる。この間の納入機数は 7,595 機で、納入機シェアは 21%となり、第二位の市場になる。

    中国の運航機数は 2019 年末には 3,719 機で世界第三位であり、2039 年には 7,784 機となって引き続き北米と欧州に続く第三位の市場であるが欧米の約 90%の機数を擁するまでに成長する。この間の納入機数は 6,154 機で納入機シェアは 17%である。また、この内 1,456機が広胴機(世界の広胴機の納入機数の内の 18.6%)であり、中東(1,139 機、14.6%)や北米(1,310 機、16.7%)を上回り、欧州(1,672 機、21.4%)に続く広胴機市場になる。

  • 市場予測 2020-2039

    31

    中国のエアラインは中距離(~4,500km)までの路線帯を中心に急速な成長を遂げてきた。RPK の過去 20 年間の平均成長率は 12.4%に達し、世界の機材需要を支える柱の一つとなっているが、2019 年の成長率は 8.1%に低下している。加えて、中国はちょうど一人あたりGDP が 10,000 ドルに到達した状態にあり、今後の RPK の成長は発展途上国型の急成長型から先進国型の緩成長型へ変化するものと考えられる。今回の予測では他の地域で既に起

    きた変化の実績を参考に 2023 年を変曲点として設定し、その後の成長率は世界平均に近い値とした。その結果、前回の予測に比較して 20 年間の納入機数は約 900 機の減少となった。(関連:5.3.4 項)

    東南アジア(主に ASEAN)、中東、および南アジア(主にインド)は、世界平均を上回る高い旅客需要の伸びが期待され、その運航機数も増加する。2039 年には、これら 3 地域の運航機数はそれぞれ 4,184 機、2,550 機および 2,336 機となる。納入機数はそれぞれ 3,607機、2,217 機および 2,227 機になる。なお、中東は広胴機の納入機数が 1,139 機で、これは同地域での納入機数の 51%を占める。

    中東のエアラインは特に 2003 年頃より積極的な拡大策を採り、「第 6 の自由」の形による乗り継ぎ型の長距離旅客需要を取り込んで、長距離帯(4,500km~)を中心に RPK で年間成長率 10%を優に超え一時は 20%すら超える急速な規模拡大を実現するとともに多数の広胴機を調達して市場を牽引してきた。しかし 2014 年秋以降原油価格の下落した状況の中で急速に成長率を落とし 2019 年の RPK の成長率は 2.3%(IATA)にまで低下している。今回の JADC の予測ではこの水準の成長率は直接使用せず、2015 年以降の中東の RPK の

    6,697

    806

    4,931

    1,033

    7,686

    2,823

    608 232

    3,719

    1,630 560

    161

    1,580 577 690 109 529 114

    1,328 333

    1,449 324 807 160

    1,117 254

    7,664 7,595

    13,967

    675

    6,154

    595

    3,607

    2,227 709

    2,217 1,915

    917 1,266

    0

    2,000

    4,000

    6,000

    8,000

    10,000

    12,000

    14,000

    16,000

    18,00020

    1920

    39

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    合計運航機数

    2019年末: 24,015 機 2039年末: 41,274 機 2020-2039年新規納入機数:

    35,541 機

    既存機

    地域別 ジェット旅客機の運航機数と需要予測機数

    新規納入機

    8,470

    北米 欧州 アジア

    /太平洋中東

    8,628

    16,790

    2,550

    中南米 アフリカ CIS

    2,239

    1,077 1,520

    日本オセア

    ニア

    アジア

    東南

    アジア

    北東

    アジア中国

    7,784

    4,184

    2,336

  • 市場予測 2020-2039

    32

    成長の実績も踏まえて、市場再分割型の急成長が終わって、世界市場全体並みの平均成長

    率(4.1%)になるものとして計算を行った。今後 20 年間の納入機数は前回の JADC の納入機数予測に対して減少した。エアラインは既に発注分のキャンセルや納入の延期、機種

    の見直しなどを行っており、既存機材を使い延ばす動きとも併せて、今後の実際の成長率

    の推移によっては、納入機数は大型広胴機を中心にさらに減る可能性もある。(関連:5.3.3項) 4.2.3 ターボプロップ旅客機の需要予測

    世界のエアラインで運航されている 15 席以上のターボプロップ旅客機は、1994 年の5,908 機をピークに、リージョナルジェット機の普及に押されるなどして減少し、2019 年末の運航機数は 3,583 機であった。

    現在のターボプロップ機が運航されている路線の殆どは 1,000km 以下であるが、この距離帯には社会的に最低限必要とされる交通サービスとしての路線や、技術的にジェット化

    が困難な路線もあり、不採算路線からの撤退や減便が進んでも一定量の輸送力は必要とさ

    れ維持されると考えられる。加えて、長く続いた燃油費の高騰を背景に燃費の良いターボ

    プロップ機が見直され、2005 年以降は受注状況も持ち直している。

    しかし60-79席機では依然としてリージョナルジェット機との競合があることに加えて、

    80-99席および 20-39席の帯域では新規調達に適した機材が生産されていないことから、評価の好転が実際の機数増に繋がりにくい状況にある。

    予測では、ターボプロップ機の運航機数は 2019 年末の 3,583 機から 2039 年末には 5,019機に増加する。この間、2,642 機が退役し、4,078 機が新たに納入される。

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    350

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    700

    1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2011 2016

    ジェ

    ット

    燃料価格

    (¢/ガ

    ロン

    )

    受注

    機数

    ターボプロップおよびリージョナルジェット旅客機の

    受注機数の推移

    *ジェット燃料価格は、製油所からの引渡し価格(名目値) source : EIA, Cirium

    リージョナルジェット機

    ジェット燃料価格*

    ターボプロップ機

  • 市場予測 2020-2039

    33

    地域別に見れば、北米、欧州で運航される機数はやはり多いものの、それだけではなく、

    中南米、アフリカ、オセアニア、東南アジアなどで各々300 機から 500 機前後が使用されており、あまり偏在せず幅広い地域で運航されているのが特徴と言える。

    3,583

    941

    0

    2,642

    0

    0

    1,000

    2,000

    3,000

    4,000

    5,000

    2019 2039

    機数

    ターボプロップ旅客機の需要予測結果

    1,436

    5,019

    代替需要

    既存機

    4,078 納入機数

    新規需要

    65%

    35%1,436

    672

    113

    571

    158

    1,096

    414 55

    27 74

    35 34 19

    319 164

    248 87

    366

    82 45 19

    448

    92

    520

    95 231

    50

    474 512

    1,925

    29 117 13

    754 640

    372

    47

    453 433

    234

    0

    400

    800

    1,200

    1,600

    2,000

    2,400

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    2019

    2039

    地域別 ターボプロップ旅客機の運航機数と需要予測

    合計運航機数

    2019年末: 3,583 機 2039年末: 5,019 機 2020-2039年新規納入機数:

    4,078 機

    既存機

    機数

    新規納入機

    587

    北米 欧州アジア

    /太平洋中東

    670

    2,339

    66

    545 528

    284

    中南米 アフリカ CIS日本 中国オセア

    ニア

    アジア

    東南

    アジア

    北東

    アジア

    727

    918

    454

  • 市場予測 2020-2039

    34

    ターボプロップ機は、低需要路線であっても最低限の航空サービスを必要とする路線や

    離島路線等地理的に事情のある路線では必要とされ続ける。そうした路線では 15-19 席機が今後とも運航され、今後 20 年間に 885 機が納入されると見込まれる。

    現在このクラスでは新機材の生産供給は細々と行われるのみで、エアラインは手持ちの

    機材の延命を図りながら運用することを余儀なくされている。運用されている機材の平均

    機齢こそ 28.3 歳であるが、機材の 46%が機齢 30 歳を超え、そのうちの 14%は 40 歳を超える状態にある。40 歳以上の機材の 80%は DHC-6(186 機)であり、30 歳まで広げるとDHC-6 に加えて Do228、Jetstream31、EMB110 も多い。また 30 歳から 20 歳までの範囲には Beech1900(255 機)が存在し、今後徐々に 30 歳を超え始める。

    例年の JADC の予測ではこのクラスに仮想的な機材を設定して需要を計算していたが、米国 Cessna 社が久々の新型機 SkyCourier の開発を公表し、19 席の旅客型も開発されることになったため、これを反映して納入機数の予測は前回の 346 機から大幅に増加した。なお、このクラスで吸収される機材需要が増えたため、隣接する 20-39 席級の納入機数は減少している。

    20-39 席機は、2019 年には 510 機が運航されている。このクラスでは DHC8-200 や

    SAAB340 が多く使用されており両機種でこのクラスの運航機数の 70%を占める。クラス全体の 72%が機齢 20 歳以上 30 歳未満の範囲に属しており高齢ではないが、これらの機体も2020 年代前半には経済的な寿命に達すると考えられる。そのため、特に北米エアラインで代替機を求める声があるが、現在このクラスには適当な代替機材が生産されていない。

    JADC では、このクラスについては 30 席の高速巡航型のターボプロップ機を想定して計算

    1,196

    144

    510

    18

    599

    95

    1,278

    684

    0 0

    885

    678 568

    1,390

    557

    0

    500

    1,000

    1,500

    2,000

    2,500

    2019 2039 2019 2039 2019 2039 2019 2039 2019 2039

    合計運航機数

    2019年末: 3,583 機 2039年末: 5,019 機 2020-2039年新規納入機数:

    4,078 機

    696 663

    15-19席 20-39席 40-59席

    サイズ別 ターボプロップ旅客機の運航機数と需要予測機数

    2,074

    60-79席

    1,029

    新規納入機

    既存機

    80-99席

    557

  • 市場予測 2020-2039

    35

    を行い、今後 20 年間で 678 機の新機需要があり、2039 年には 696 機が運航されると予測している。しかし実機材の供給がないため、2019 年末時点での在籍機の平均機齢は 26.3年と高齢化が進行しており、好適な機材の供給が待たれる。

    40-59 席級で運行されている機材の内、機齢 40 歳を超えるものは約 16%で An24/26 が殆どを占める。機材の内 7 割は機齢 30 歳以下の層に属し、機種はほぼ ATR42 と DHC-8-300である。このうち ATR42 は生産中であるが、年間の納入機数は平均して 5 機前後と増えない。また、DHC-8-300 は生産終了のため更新できず、エアラインによっては寿命延長改修を施すなどの対応を取る例もある。このクラスで現在運航されている機材の平均機齢は

    24.4 歳である。 60-79席級で運行�