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1 身体不自由者用の動作支援手すり 首都大学東京 健康福祉学部 教授 新田 システムデザイン学部 教授 山口 藤本 泰成 中村 篤弘

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Page 1: 身体不自由者用の動作支援手すり - JST...1 身体不自由者用の動作支援手すり 首都大学東京 健康福祉学部 教授 新田 收 システムデザイン学部

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身体不自由者用の動作支援手すり

首都大学東京

健康福祉学部 教授 新田 收

システムデザイン学部 教授 山口 亨

藤本 泰成

中村 篤弘

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背景

手すりは福祉用具の中で最も身近なものであり,導入率が高く,住宅改造に関する項目で最も基本的な住宅項目となっている.病院における患者の退院後の住宅改造項目では,トイレ,階段に関しては手すりがもっとも導入率が高くなっている.

また,手すりに関しては多く研究されてきたが,最適な形状や配置位置に関するものがほとんどである.

手すりに積極的にアシスト機能を持たせ,使用者の動作に合わせて起立を補助するものはまだ開発されていない.

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起立動作が困難になる疾患について

起立動作が困難となる疾患としては,主に片麻痺やパーキンソン病などが挙げられる.

特にパーキンソン病は人口の高齢化に伴い有病率は増え、現在人口10万人に対して100人程度と考えられている.

65歳以上に限れば200人で、全国で約5~6万人の患者がいると推定されている.今後,高齢者の増加が予想されるため,これに伴って患者数は増加すると予想される.

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高齢者の立ち上がりについて

パーキンソン病患者の姿勢は,図1のように後方に重心が溜まることが指摘されている.

また,明らかなパーキンソン病でなくても,運動機能の低下した高齢者,あるいは片麻痺患者では,後方に重心が溜まった姿勢での起立動作が日常的に観察される.

比較的運動機能の低い高齢者において,後方に重心が溜まるのは,パーキンソン病に見られるような活動性の減少,下肢筋力の低下などが考えられる.

結果的に高齢者が無意識に選択した起立動作がかえって起立時の負担を大きいものにし,起立動作をより困難にさせている.

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健常高齢者 パーキンソン患者

図1 高齢者の手すりを利用した起立動作の分析

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技術の内容

使用者の個々の症状,機能低下の程度違いや立ち上がり方法に対応し,車椅子が使用者の起立動作に同期して,前方駆動することで使用者の重心を移動させ,最適な起立を支援する装置.

車椅子付属したビデオカメラよりのフィードバックを用いることで,立ち上がり動作時の使用者の動きを推定しスピード,トルクを制御する.

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装置の概要

本装置は電動車椅子の形状をしている,しかし車椅子の乗って移動する以外に,使用者の起立動作,歩行動作を支援することができる.

車椅子のグリップを握ることにより使用者の起立から歩行までの移動動作を支援する.

本装置の使用により移動困難な高齢者を独歩可能な状態へと変化させ,日常生活動作自立を促す.

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従来の技術

起立便座,起立椅子など起立動作を補助する福祉用具も開発されている

しかし,強制的に身体を動かすため転倒の可能性が考えられる.

体全体を持ち上げる装置も開発されているが,使用者の運動機能が生かされない.

電動車椅子(電動三輪車)は移動には有用であるが,使用者本人の運動機能を後退させる.

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直動型アクチュエータ(X 軸)

手すり

フレーム

直動型アクチュエータ(Y 軸)

6 軸力覚センサ

Y 軸

X 軸

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図3手すり使用例

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新技術の特徴

・本装置は使用者の意思をセンサーし歩行動作を支援する

・人が行う介護動作に近似した効果が得られる

・安全に屋外使用が可能

・使用者の運動機能の維持・向上を期待できる.

・使用者の自主的な活動を助け,社会的自立を助ける.

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手すり使用例

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手すり使用例

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想定される用途

・運動機能が低下した高齢者の自立支援

・脳卒中後遺症に対するリハビリテーション

・パーキンソン患者の自立支援

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適応事例

男性,年齢72歳,身長162.7cm,体重49.0kgパーキンソン病・重症度Yahr分類stageⅣ日常生活一部介助,ベッドからの起立に介助が必要,杖を使って歩行可能だが不安定

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従来技術とその問題点

起立支援装置としては,「起立便座」「起立椅子」「起立車椅子」といった福祉用具は既に開発されている.

しかし,これらは座面がある高さに上がるなどの補助が多い.起立しても勢いで前に倒れるなどが考えられる.このような椅子は,動きが強制的で危険性が高い.

また,個々の症状,機能低下の程度の違いや起立パターンに対し最適な補助は異なると考えられる.従来の起立支援装置では,当然このような違いに対応できていない.

体全体を介助して持ち上げる装置も開発されているが,使用者が自力で運動をしようとしないため,介護力が大きすぎる.結果的に使用者の機能は生かされず,逆に廃用性症候を引き起こし,機能低下の原因となってしまう.

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新技術の特徴・従来技術との比較

現在開発されている多くの機器はより全面的な介助が必要な方を介助することに主眼が置かれ,機器が要介助者に対して及ぼす力が大きすぎる.要介護者が必要としているわずかな介助を超えてしまう.

このことは要介護者の運動機能維持の面からマイナスの効果となることは言うまでもない.

こうした現状を踏まえ,今回開発した「動作支援型手すり」は要介護者自身の運動機能を最大限に引き出しながら,起立動作を支援するものとした.

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想定される用途

予想される対象者

パーキンソン患者,片麻痺患者,および立ち上がりに困難を感じる虚弱高齢者

特に起立には介助を必要とするが,歩行は手すりを伝って独力で可能な者に有効

使用場所

居室,屋外.

設置施設

高齢者施設・病院・在宅

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想定される業界

高齢者施設

特別養護老人ホーム,老人保健施設,等高齢者施設

高齢者向けマンション

これら全国の施設で導入することで人件費軽減にもつながる

病院

リハビリテーション訓練用具としての導入も考えられる

在宅

介護レンタル用品となれば普及が期待できる

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実用化に向けた課題

現在開発,実験を行っている試作機は,さまざまな手すり運動を可能とし,臨床データを収集する目的で,やや大型となってる.

商品に向けて,小型,軽量化する必要性がある.

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企業への期待

商品化を考えた場合,装置の小型化を行う必要がある.この点開発力のある企業が望ましい.

首都大学東京健康福祉学部としては,高齢者・障害者の身体状況に関する豊富な知識を有しているので,装置開発に課程で専門的な情報を提供できる.

また臨床実験のフィールド確保は大学と臨床現場との関係から問題ない.

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :動作支援装置

• 出願番号 :特願2007-1958• 出願人 :公立大学法人首都大学東京

• 発明者 :新田 收,山口亨,

藤本泰成,中村篤弘

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お問い合わせ先【技術内容・ライセンスについて】

公立大学法人首都大学東京

産学公連携センター 知的財産本部

TEL 042-585 -8663

FAX 042-585 -8677

e-mail info-chizai@cc.tmit.ac.jp

【連携について】

あいち健康長寿産業クラスター推進協議会

(財)科学技術交流財団

クラスター・マネージャー 小坂 岑雄(こさか みねお)

TEL 052-231-1477

FAX:052-231-5658

e-mail cho-ju@ astf.or.jp