超大型浮体式海洋構造物メガフロート まわりの海洋環境変動...
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研究の背景
• これまでの研究から、物理的要素への影響は小さいといわれているが、それを証明するデータが十分あるとはいえない。
• 海洋の生物的要素への影響を調査したデータは少ない。
• 実海域に設置されたメガフロートの周辺海域における化学量・生物量を含めたデータ計測が極めて重要。
• 超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)を設置する場合、それが周辺海洋環境に与える影響についても考慮する必要がある。
それ自体が重要
数値シミュレーションの高精度化にも大きな役割
研究の目的 東京湾横須賀沖に設置された長さ約1㎞のメガフロートにおいて
• 水深の大きい海域で計測することにより、海水のさまざまな性質の鉛直分布について詳しく調べること。
クロロフィルa濃度
溶存酸素
植物プランクトンの現存量の指標
水質の指標・生物活動と大きく関連
• 周辺海域の海洋環境変動を把握する。
• 周辺海域への浮体の影響を把握する。
• これまでは計測されてこなかったクロロフィルa濃度、溶存酸素についても計測を行うこと。
これまでに行われた計測と比較
=D.O.(Dissolved Oxygen)
今回の計測の意義
浮体内外でのデータ計測、数値シミュレーションを通して、
水温計 塩分計 クロロフィル計 D.O.計
2m
20m
16m
10m
浮体中央部 浮体東端部
7月 9月 10月 11月 12月 1月 8月 1999 2000
海面が遮蔽 海面遮蔽が少
水深約19m 水深約22m
良いデータは得られず
(その他、採水によりクロロフィルa濃度を 中央部、東端部の各深度で随時計測)
10
14
18
22
26
30
7/19 8/8 8/28 9/17 10/7 10/27 11/16 12/6 12/26 1/15 2/4
Tempereture(℃)
計測データ 上:海水温の時系列
0.5m 1m 3m 5m
7m 9m 11m 13m
15m 17m 19m
20
22
24
26
28
30
32
34
7/19 8/8 8/28 9/17 10/7 10/27 11/16 12/6 12/26 1/15 2/4
Sal
init
y(p
su)
2m10m16mMDS 下MDS 東下DO計 上
下:塩分の時系列
塩分成層
成層が発達
上下にほぼ一様
重い海水の上に軽い海水が層状に積み重なっている
海水温逆転
河川流入などの影響
計測データ 上:クロロフィルa濃度の時系列
02468
10121416182022
7/19 8/8 8/28 9/17 10/7 10/27 11/16 12/6 12/26 1/15 2/4
Ch
loro
pyl
a(μ
g/l
)
Center 2m
02468
10121416182022
7/19 8/8 8/28 9/17 10/7 10/27 11/16 12/6 12/26 1/15 2/4
D.O
.(m
g/l
)
Center 2mCenter 16mEast 2m
下:D.O.の時系列
値、変動とも大
値、変動とも小
値小、変動大
値大、変動小
差
鉛直混合と風の関係
1166
1188
2200
2222
2244
2266
2288
3300
77//2200 77//2255 77//3300 88//44 88//99 88//1144 88//1199 88//2244 88//2299 99//33 99//88 99//1133 99//1188 99//2233 99//2288
- 12- 10- 8- 6- 4- 2024681012
7/20 7/25 7/30 8/4 8/9 8/14 8/19 8/24 8/29 9/3 9/8 9/13 9/18 9/23 9/28
0.5m 1m 3m 5m
7m 9m 11m 13m
15m 17m 19m 海水温の時系列
南西-北東方向の風速成分(南西⇒北東を正とした) Velocity(m/s)
Temp.(℃)
南西風の連吹⇒成層弱まる
弱風⇒成層強まる
南西風⇒上層の水温が低下
北東風⇒下層の水温が上昇
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4Frequency(cycle/day)
0.5m 1m 3m 5m
7m 9m 11m 13m
15m 17m 19m
海水温のスペクトル
Spectrum(℃2・day)
半日変動⇒潮汐による
変動
一日変動⇒日射による変動
下層に見られる
上層に見られる
10月~1月の約113日間の変動
00
11
22
00..0055 00..11 00..1155 00..2214日周期⇒潮汐による変動
0.5m 1m 3m 5m 7m 9m 11m13m15m17m19m0.5m0.981m 0.983m 0.965m 0.957m 0.959m 0.9411m 0.9413m 0.9415m 0.9517m 0.9519m 0.91
計測点深度(浮体東端部)
計測点深度(
浮体中央部)
0.99 0.97 0.95 0.93 0.91 0.89 0.87 0.85 0.83 0.81 0.79
全般的に相関が高い
同じ深度どうしの海水温を比較
相関がやや低い
相関が極めて高い
浮体中央部と浮体東端部の海水温の相互相関 (相互相関係数のピーク値)
日射による変動
潮汐による変動
局地的影響 急激な変動
大
小
0.5m 1m 3m 5m 7m 9m 11m13m15m17m19m0.5m0.981m 0.983m 0.965m 0.957m 0.959m 0.9411m 0.9413m 0.9415m 0.9517m 0.9519m 0.91
計測点深度(浮体東端部)
計測点深度(
浮体中央部)
0.99 0.97 0.95 0.93 0.91 0.89 0.87 0.85 0.83 0.81 0.79
浮体中央部と浮体東端部の海水温の相互相関 (相互相関係数のピーク値) 異なる深度どうしでも海水温を比較
0.5m 1m 3m 5m 7m 9m 11m13m15m17m19m0.5m0.98 0.981m 0.98 0.98 0.933m 0.92 0.96 0.895m 0.83 0.95 0.917m 0.84 0.95 0.939m 0.86 0.94 0.9211m 0.84 0.94 0.9413m 0.83 0.94 0.9115m 0.79 0.95 0.9417m 0.87 0.95 0.9219m 0.81 0.91
0.99 0.97 0.95 0.93 0.91 0.89 0.87 0.85 0.83 0.81 0.79
計測点深度(浮体東端部)
計測点深度(
浮体中央部)
異なる深度どうしでも海水温を比較
浮体中央部と浮体東端部の海水温の (相互相関係数のピーク値)
相関低い
相関高い
相互相関
浮体東端部
浮体中央部
浮体東端部
浮体中央部
海底の地形に沿って 変動している
クロロフィルa・D.O.のスペクトル
00
22
44
66
88
00..55 11 11..55 22 22..55 33 33..55 44
00
00..11
00..2200..33
00..44
00..55
00..55 11 11..55 22 22..55 33 33..55 44
Frequency(cycle/day)
Frequency(cycle/day)
Spectrum((µg)2・day)
Spectrum((mg)2・day) 一日変動⇒日射による変動 半日変動⇒潮汐による変動
1999/8/6-8/20の14日間の変動
クロロフィルaのスペクトル
D.O.のスペクトル 海水流動によって起こる水平分布にしたがった変動 光合成により昼間は増加、夜間は減少
22442255226622772288
88//1122 88//1133 88//1144 88//1155 88//1166 88//1177 88//1188 88//1199 88//2200 88//2211
TTeemm pp..((℃))
00112233445566
88//1122 88//1133 88//1144 88//1155 88//1166 88//1177 88//1188 88//1199 88//2200 88//2211
DD..OO ..((mm gg//ll))
0055110011552200
88//1122 88//1133 88//1144 88//1155 88//1166 88//1177 88//1188 88//1199 88//2200 88//2211
CChhll..aa((μgg//ll))
ピークの一致 日射がない影響 クロロフィルa、DO、水温の変動傾向が共通
8/12~8/20のクロロフィルa、DO、海水温(全て浮体中央部、水面下2m)の時系列
225522662277228822993300
88//22 88//33 88//44 88//55 88//66 88//77 88//88 88//99 88//1100 88//1111 88//1122
TTeemm pp..((℃))
0022446688
88//22 88//33 88//44 88//55 88//66 88//77 88//88 88//99 88//1100 88//1111 88//1122
DD..OO ..((mm gg//ll))
002244668811001122
88//22 88//33 88//44 88//55 88//66 88//77 88//88 88//99 88//1100 88//1111 88//1122
CChhll..aa((μgg//ll))
クロロフィルaと水温の変動が共通 クロロフィルaとDOの変動は無関係
クロロフィルa、DO、水温の変動が互いに無関係
8/2~8/11のクロロフィルa、DO、海水温(全て浮体中央部、水面下2m)の時系列
日照、気温は毎日ほぼ同じ、弱風
しかし 何らかの生物的要因が関わってい
る可能性
水温への浮体の影響
• 2カ所の温度差の頻度分布から、中央部では日射が浮体に遮られることによって、水温が上がりにくくなることが分かった。
00%%
1100%%
2200%%
3300%%
4400%%
5500%%
--00..33 --00..22 --00..11 00 00..11 00..22 00..33CC eenntteerr--EEaasstt((℃))
00..55mm
00%%
1100%%
2200%%
3300%%
4400%%
5500%%
--00..33 --00..22 --00..11 00 00..11 00..22 00..33CC eenntteerr--EEaasstt((℃))
00..55mm
全データ 強日射時
(中央部)-(東端部)の温度差の頻度分布 中央部>東端部 中央部<東端部
DO(溶存酸素)への浮体の影響
• 7,8月に中央部の水面下2mで2~6mg/lの低い値が測定されたことから、浮体による海面遮蔽の影響を受けている可能性がある。
• 12,1月に短い期間ながら、2カ所で同時計測を行なったが、東端部の値が中央部を大きく上回った。しかし、データ数が少ないことから、この結果には慎重な検討を要する。
0
2
4
6
8
10
12
14
16
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22
7/19 8/8 8/28 9/17 10/7 10/27 11/16 12/6 12/26 1/15 2/4
DO
(mg/
l)
Center 2m
Center 16m
East 2m
数値シミュレーション・モデルの説明
• 初期値・開境界条件には、平均的な夏場を想定した値をもちいた
• 浮体に近づくにつれて、水平格子幅が1620m、540m、180mと3段階に変化する
• 鉛直方向に10層の多層モデル
• 日射は日周期の関数を与えた
• 潮汐は半日周期のM2分潮のみ
• 気象条件も夏場の値を定常で与えた
• 浮体を置いた場合は、海面での熱・塩分フラックスをなくした
数値シミュレーションにみる 水温・塩分濃度の周期的変動
水温
22.0
23.0
24.0
25.0
26.0
27.0
28.0
17 18 19 20time(day)
temperature(℃)
-‐‑‒1m -‐‑‒7.5m -‐‑‒19m
塩分
32.0
32.5
33.0
33.5
17 18 19 20time(day)
salinity(‰)
-‐‑‒1m -‐‑‒7.5m -‐‑‒19m
浮体がある場合とない場合の比較
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
17 18 19 20time(day)
DO(mg/l)
浮体なし 浮体あり
-1m
- 7.5m
- 19m
DO(溶存酸素) 植物プランクトン
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
1800
2000
17 18 19 20time(day)
phytoplankton(mgC/m
3 )
浮体なし 浮体あり
-1m
-7.5m
- 19m
結論1.海洋環境の変動について
• 上層では日射による変動が卓越し、中層以下では潮汐による変動が卓越することや、風が海水の鉛直構造に大きく関わっていることが今回も確かめられた。
• クロロフィルa濃度やDOの変動は日射や風、海水温だけでは理解できず、生物的要因が大きく関わっている可能性があることが分かった。
• 中層以下の変動は地形の影響を受けることや、浮体直下でのクロロフィルa濃度やDOも日射により変動することが新たに確かめられた。